あうあうあう。
ウギャァァ!
これで終わられなかったら!11巻分が何と8話分にもなるぅ!
うぎゃぁぁ!
まだ先はあるのよぉぉぉぉ!(滝汗)
・・・せ・・・・せめてエデンとかの長さにはなってくれるな(汗)
などと絶叫というか叫びを上げつつ。
とりあえずいくのです・・・・。
まあ更新の隠したやつは感のいい人はわかるだろう、あはははは(まて)
#####################################
狭間の選択 ~クリムゾンの妄執~
リナの声とともに、いったい全体ガウリイが何をやったのか。
まったく意味がわからないアリアたち。
「ふっ。小ざかしい。いったい何ができるというんだ?」
何も変わってないのにきづきつつも馬鹿にしたような笑みを浮かべているカイラス。
「「??」」
アリアとディラールもガウリイが今何かしたのは何となくわかるが。
それがいったい何をしたのかまではわからない。
思わず首をかしげているアリアたち。
そして、何やら呪文を唱え始めるが。
「―な゛!?」
その手ごたえがないのに気づき驚愕の声をあげる。
それは横にいる先日戦ったゾナゲイン本体、それも同じこと。
思わず目を丸くする。
「わるいな。というか、リナには自由に力をつかってほしいからな。
―歪んだ力にてその精神世界を応用するそのひずみは。
今直させてもらった。」
あっさりとそんなことを言い放つガウリイ。
?
さらにそんな説明では意味がわからずにただただ首をかしげるディラールに。
術が発動しないことをあせりつつも同様しているカイラスたち。
「―くっ。こうなったら。」
そういいつつとある方向にと視線を走らせるカイラス。
それと同時に。
キン!
硬い音がリナの真上にて鳴り響く。
「ふっ。こんなものでこの私をどうこうしようとおもったわけ?」
不適な笑みを浮かべて言い切るそんなリナの手には。
小さな短剣が握られており。
そしてその短剣は今まさに天井より振り下ろされた黒い何かを捕らえている。
見た目は蜘蛛のような足にも見えなくはないが。
そして、カイラスが視線を向けたその先には。
「…な゛っ。」
思わずベルにしがみついたままで小さな悲鳴をあげているアリア。
アリアの目にとはいったのは、全身がまるでエメラルドのように透き通っている女性の姿。
「ふむ。これらを相手に勝てるかな?お嬢さん?
ミュカレ、ゾナゲイン-やれ。」
完全に自分の勝利を確信し。
ほくそえんでいるカイラスであるが。
そんなカイラスをあきれた視線で眺めつつ。
「…しっかし、あんた…最低ね。彼女たち…もう人の意識のこってないじゃない…」
思わず怒りがあふれ出す。
この町に入ったときに感じていた気配。
それは人に融合した魔の気配。
そして。
人の記憶とそしてその特徴などをすべて吸収しその人物になりきるそんな存在。
「おーい?リナ?そいつもまあ原因のひとつだが。一番は。」
そういいつついまだにアリアに抱きつかれたままの格好になっているベルにと視線をむけるガウリイ。
「わかってるって。でも、こいつだけは許せないのよね。
女の敵だわ。」
などといいつつ何やらぶつぶつと唱え始めているリナ。
ふと。
先ほどカイラスがいった名前にどことなく聞き覚えがあり、ふとそれがいったい、
何なのか思い出す。
「まさ…か。わたしがここの協会にいたときに、
同じくらいに入ってきた女の子の名前が…エリディア=ミュカレ…」
半ば呆然としてつぶやくアリア。
彼女とは同期であったこともあり、友達であった。
よくよく見れば透き通ったエメラルド色をしている少女には。
どことなくエリディアの面影がみてとれる。
「まさ…か!カイラス、あなたエリディアを!」
悲鳴に近い声をあげるアリアに。
「ふははは。感謝するがいい。
何しろこの娘、この私が少しかわいがってやっただけで。
そのまま自殺なんてあてつけがましいことをしおって。
せっかくだからその体を素材にさせてもらっだけのことさ。」
しれっと悪びれもなく言い放つカイラスの声。
そして。
ふん。
小さく鼻で笑いつつ。
「貴様らが倒したアイレウス、あれもそうだな。
この私の悪事をロードに話すなどいうから、あんなことになる。ふははは。」
などといいつつ、ゆっくりとアリアとそしてベルの方にと近づいてゆく。
「そんな私に力を貸してくれたのがほかでもない、なあ?ベル?
わがいとしの妻よ…」
そういってゆっくりと手を前にと差し出すが。
「ファイアー・ボール!」
どごがぁぁん!
そんなカイラスに向けてベルをかばうような格好にて術を放つアリア。
「よくも!この人でなし!姉さんだけでなくエリディアまで!」
アリアの瞳に怒りがこもる。
まあ当然の反応であろうが。
「…確かに許せないわね。人として。」
すでにもうあきれる、を通り越している。
そういいつつもリナがすいっと手をかざすと。
そこに出現する黒い何か。
「エルさん、聞いてるんでしょ?こいつそっちに送るから、
しっかりとお灸すえてくれない!」
などと天井に向かってそんな声を投げかけているリナ。
「おーい。リナ、すんなりと殺したんじゃそいつ根性直らないぞ?
まああっちに戻ってもエルさんたちがいろいろするだろうけど。
せめて生きたままつめをはぐ、とか、
精神体にのみ苦痛与えるとか。」
さりげにそんなことをいっているガウリイ。
そんなガウリイの言葉にぽんと手をうち。
「…それもそーね。こんな人間のくず。
しっかりと苦しみ味あわせてから混沌に沈めてもいいいわよね。」
そういうリナの目は完全にと据わっていたりする。
まあ気持ちはわからなくもないが。
何しろリナ達は、先日、とある少女によって、目の前にいるベルが。
どういった扱いをうけたのか脳裏に映像として見せられている。
「よくも姉さんを!そしてエリディアを!」
そういいつつ、再び呪文を唱え始めるアリアに。
「…アリア。」
ただ静かに、感情も何もこもらない声でそんなアリアにと語りかけているベル。
「姉さん、心配しないで。私が今すぐに助けてあげるから。
…こんな男に、姉さん…今まで…」
姉がどんな思いでこの男と結婚したのか、今まで何度聞いても答えてはくれなかった。
それを思うとやるせない。
「…違うわ。アリア。どうやらあなたはもう知ってるみたいね。
―そう、確かに私はその人に乱暴され…そして犯された。
そしてこともあろうにその光景を記憶球(メモリーオーブ)にと記憶され。
いうことを聞かないとバラまくぞって…。
でも…それだけじゃないの。」
そういいつつすっとアリアの顔にと手をかけるベル。
「くふふ。そう。確かに。私はベルにこういった。
妹が自分と同じ目にあってもいいのか?と。
はじめはベルの婚約者みたいになったらどうする?
という脅しだけだったんだが。
よくよく考えたら妹のお前もいい体してたしな。
しっかり楽しんで薬漬けにしてからどこかに売り飛ばしでもしたら、
さぞかしいいお金になるだろうな…とな。」
そういいつつほとんど含み笑いをしつつゆっくりとベルにと近づいてゆくカイラス。
そして、アリアが戸惑いの視線をベルに向けているそんな間に。
「だがベルは私の思いに答えてくれた。
私にこんな力まで与えてくれたのだからな。ぐふふふ。」
などといいつつベルの肩を抱き寄せるカイラス。
「…姉…さ…ん?」
「そう、私が変えたの。カイラスを…そしてすべてを…」
どこか遠くを見つめつつ感情のこもってない声で言い放つアリアに。
「な゛!何をいってるのよ!姉さん!カイラス!
姉さんに何をしたのよ!」
思わず叫びそしてカイラスに向かっていこうとするアリア。
そんな周りでは。
いまだにリナ達にと攻撃をしかけようとして。
いともあっさりと撃退され。
すでにもはや原型をとどめていないゾナゲインとそしてミュカレの姿が見て取れる。
やがて。
アリアがベルとカイラスの方にと向かっていこうとしたそのせつな。
「…さて。いい加減に出てきて説明なさい!ゼロス!
それとも、何?今ガウリイが張ってる結界強化してもらって?
あんたの本体のいる辺りの精神世界にギガスレぶちこみましょうか?」
天井に向かって何やらいっているリナではあるが。
それと同時に。
「…あ…あはは。やっぱり気づいてましたか。
やはりリナさんもガウリイさんもごまかせませんねぇ。あははは。」
この場に何とも似合わないにこにことした笑顔を携えた、一人の神官が。
突如として天井の空気が揺らいだかと思うと。
そこよりとこの部屋の中にと出現してゆく。
「「…な゛!?」」
いきなり突如として出現したそのおかっぱ頭のしかも不釣合いな笑みを浮かべている男性に。
思わず驚きの声を発しているアリアとディラール。
「あははは。いゃぁ、まさかリナさんとガウリイさんがこの一件に係わり合いになられるとは。
とりあえず僕の今の命令はこの町で起こっていることがどうなるのか。
見届けるのが僕の上司よりの命令ですからvあはははは。」
にこやかに、それでいてどこかその笑みをたたえたその顔に。
一筋汗が流れ出ているのは。
芸が細かいというか何というか。
「…あ、あの?リナさん?ガウリイさん、その人はいったい?」
何かいきなり天井から突如として出現した人物である。
只人であるはずもないが。
とりあえず気にはなるので問いかける。
そんなディラールの質問に。
「ああ、こいつ?しがないバシリゴキブリ魔族よ。」
さらっと言い切るリナに。
「リ、リナさぁん!ゴキブリはないです!ごきぶりはぁ!」
「んじゃ、生ごみv」
「…しくしくしくしく。リナさんが、リナさんが僕をいじめる…しくしくしく…」
にっこり微笑むリナの言葉に。
その場にうづくまり、なぜか人魂オプションひきつれて。
床にとのの字を書き出す黒い神官服をまといどこにでもあるような錫杖をもっているその青年。
すばこぉん!
そんな青年の頭にいつのまに取り出したのか。
懐より取り出したスリッパでこぎみよい音をたてつつそんな頭を叩きのめし。
「でぇぇぇぇぃ!うっとうしい!それより!ゼロス!
あのベルさんの中にいるドゥールゴーファ!どうにかなんないの!」
そういいつつびしっと。
カイラスの横にと立っているベルにと視線をちらりとむけて言い放つそんなリナの言葉に。
「それはムリです。―リナさんもお分かりなんでしょう?
ベルさんは自らの意思でドゥールゴーファさんと同化してるんですよ?
できたとしてもそれはベルさんの命にかかわります。
あ、でも魔族としてよみがえらせるんでしたら…」
「却下!」
「…えっと、あ、それじゃあ。
一度ベルさんにはすこやかに死んでいただきまして。
そしてドゥールゴーファさんを取り出して、それで円満解決。というのは?」
「…おまえ、それじゃ、意味ないだろうが…」
などとそんなゼロスにあきれた視線を投げかけつつ。
そうリナには見えるが。
実際にはものすごいまでの殺気をゼロスには放っているガウリイ。
『―リナとなれなれしくするなよな…ゼロス…』
そんな声がゼロスの精神に直接に伝わっていたりする。
だがしかし、リナの目からは。
のほほんとしたガウリイの表情と様子にしか見えてはいない。
気づいているのはゼロスのみ。
そんなリナ達の会話に微笑みつつ。
「―そう、あなたたちは知っているのですね。
そう、この私があの人からもらったこの力。
これで反乱があったあの日から全員私が変えたの…私が。」
そうつぶやくベルに。
「ふはは。ベルはこの私にすべてのものを取り込んで力にする、
という能力を与えてくれた。これさえあれば、私の望みは完成される!
さすがわが妻!」
などとこちらはいまだに操られている、だけ、ということには思いもせずに。
高らかにわらいつつそんなことをいっているカイラス。
「そうね。―そしてあなたは今ここで死ぬのよ。」
「何を!?」
ドシュ。
ベルがそういうや否や。
ベルの左手が一瞬ゆがみ。
そしてそれは。
見間違いではないであろう、黒い刃をもった一振りの剣にと形を変える。
そしてそれが出現するや否や。
その刃は。
横にいるカイラスの体をそのまま胸ごと貫いてゆく。
『―な゛!?』
その光景をみて思わず絶句しているアリアとディラール。
そして。
「おやおや、まあ、人間としては当然かもしれませんねぇ。
人に殺させるよりは自分の手で。うーん、この憎しみ、たまりませんねv」
にこやかにまったく楽しむように軽やかにいっているゼロス。
そして。
そのまま崩れるように、否。
まるでその剣にと吸い込まれるように。
「…な、なぜ…ベ…」
「なぜ?あなたは私のあの人を殺して…そして私を犯した…」
そう淡々とつぶやくベルの手の先で。
ザァァ・・・・。
やがてカイラスの姿は剣に吸い込まれるように塵と貸し、掻き消えてゆく。
そして、くるりと向き直り。
「これでよかったんです。カイラスはこうなるべきだったんです。
名誉も、そして反逆者の汚名を着て命も失う―。
この私の手であの人の仇を取りたかった…」
そうつぶやきすでにその手といったいとなっている剣をじっと見つめるベル。
「姉さん!?いったい!?」
一体全体何がどうなっているのかアリアにはわからない。
そんな姉であるベルにむかって叫んでいるアリア。
そんなアリアに。
「―だから、シェーラからそれを受け取った…
あんたわかってるの?それ、そのうちにあんた自身を…」
普通の人の精神で魔にかなうわけがない。
特殊な強い精神をもっているものですら、やがて魔に蝕まれる。
それは魔王が封じられている欠片をもつ人々にも言えること。
かつてリナは目の前で欠片が封じられている人物が。
その精神の弱さといえるのか封印が解かれたのを目の当たりにしたことがある。
まあそのときのことはあまり考えないようにはしているが。
いろんな意味で。
そんなことを思いつつ静かにそれでいて警戒を解かずにベルにと話しかけるリナ。
いつのまにかリナはアリアを自分の方にと引き寄せていたりする。
そんなリナの言葉に微笑みつつも。
「ええ。わたしね。もうあきらめているつもりでしたの。
もういいことなんてないんだ。けどそれでもかまわないって。
―でも、違ったのよ。」
そういいつつすでに視点の定まらない視線をどこともなく向けつつ言い放つベル。
「わたしの心にはすこしづつ、すこしづつ、憎しみがつもっていた。
だから、わたしはみんなを変えたのよ。みんなを変えて、そして、
カイラスを操り、彼の名前で反乱を起こさせた…
彼を操るのなんて簡単だったわ。彼は野心に燃えていたから。
わたしが力をかす、そういったら進んで協力してくれた―……」
つぶやくように歌うように言い放つベル。
すでにカイラスが消えた影響と。
無造作にリナ達、そしてアリア、ディラール。
彼らをまるでよけるかのように伸びた剣から出ている黒い何かが。
そこにいたほかのもの、つまりは先ほど倒れたゾナゲインやミュカレをも。
その闇は絡めとリ、吸収していっていたりする。
「うそよ!そんなのうそよ!だったら、だったら!
私たち、というか今回の反乱そのものは姉さんがやったことになるじゃない!」
首をふりつつ叫ぶアリアに。
「愛してるわ。アリア。でも…でもね。
あの人が死んだあと、求婚してきたカイラスをわたしははねつけたわ。
でもある日、カイラスは私にいったの…
お前の妹が婚約者みたいになったらどうするっ…って。
だから、一度、一度だけ…彼に付合った・・・そこで彼に襲われの…」
「そして、私を犯した後で
カイラスはいったわ。誇らしげに私を陵辱した映像をみせつつ…
妹もこんな目にあわせてやろうか?っ…ってね。
そのとき、私はあなただけにはこんな目にはあってほしくなかった。
だから…だからカイラスのいうことを聞くしかないって……」
「…とことんひどいやっだな。カイラスは…」
そんなベルの言葉をきいてそんなことを吐き捨てるようにいっているディラール。
「同感ね。まあベルさん、あなたが彼を憎むのはわかるけど。
だからって、魔の力を借りなくても、法に頼る、という方法だって。」
そういいかけるリナの言葉をさえぎるように。
「…それはムリです。リナさん。
ここのロードは逆にカイラスを援助してました。
表には出ないもののあくどいことはすべてカイラスにさせて。
そんなカイラスを保護していたのがほかならぬ領主自身なんですから。
姉さんの訴えなんか握りつぶされると思います…」
小さく震える声でそれでもまだ姉のいうことはうそだと思いたくて。
声が小刻みに震えているアリア。
「…うそでしょう?姉さん?ねえ?」
そういいつつ手を伸ばすアリアに。
静かに感情もこもっていないその声で。
「嘘じゃないわ。アリア。わたしはあなたを愛している。―けど同時に…」
愛しているからこそか憎しみはつよくなる。
妹がいなければ。とすら思うことも。
でも妹を自分と同じ目には合わせられない。
そんな感情、正と負の感情が入り混じり。
だから。愛しているから町から出した。
アリアを戦いに巻き込まないように。
憎んでいるから一人で町から出した。
一人、町を出た自分を責めさせるために。
もはやベルにもどちらが自分の心なのかつかめないほどに。
彼女の心は病んでいる、そしてまた精神もまた……
「うそよ!姉さん、魔道のことなんて何もしらなかったじゃない!」
叫ぶアリアに。
「ドゥールゴーファ。ベルさんが手にしているあれですね。
あれ、ドゥールゴーファっていうんですよ。
シェーラさん。ああ、あなたたちにはそういってもわかりませんか。
覇王将軍(ジェネラル)シェーラさんの直属の部下でありそして武器でもある。
ベルさんが手にしているのはそのドゥールゴーファなんですよ。
まあ僕たちのような高位魔族であればたやすく人間なんて変えられますし。
あはははは。」
そんなアリアににこにことしつつも答えているゼロス。
ひたりとベルをみつめつつ。
「…ま、そういうことね。この町に入ったときに気配はしてたけど。
―まさかベルさんが自らの意思で同化してるなんて…」
もはやほぼ同化しているのが視てもわかる。
つぶやくリナの言葉に。
「っつーか、だぁぁ!まったく意味がわかんねぇ!?
とゆーか、…そもそもこいつ何なんだよ!?リナさん!?ガウリイさん!?」
そういいつつその場に不釣合いにもにこやかに笑っているゼロスを指差し。
問いかけているディラール。
その言葉に。
「ああ、ご紹介が遅れました。僕、獣神官(プリースト)ゼロスといーます。
これでもれっきとした魔族で獣王(グレータービースト)様に直属に使えている、
魔族ですv」
にっこりとにこやかに答えているゼロス。
『……な゛っ!?』
その言葉に思わず絶句しているアリアとディラール。
「…な、なあうそだろ?」
救いを求めるようにガウリイ達の方を見つめるそんなディラールの言葉に。
「うそでないぞ?」
「そうそう。こんなのでもこれでも一応は高位魔族だからねぇ。」
「…こんなのって、リナさん、ガウリイさん…ひどいですぅ…」
いじいじいじ。
「だぁぁぁ!いじけるなぁぁ!うっとうしい!」
そんなリナたちの言葉にまたまたいじけ始めるゼロスに突っ込みをいれているリナ。
まあ確かに目の前でいじいじされていれば鬱陶しいにもほどがあるが。
すっとゼロスをちらりとみつつ。
「そう。その人がいったのが真実。
私は魔道のことなんて何もしらないけど。
多分怖かったのね。カイラスは、私を魔道の知識に近づけないようにした。
私が力をつけてカイラスに復習することが。
自分の中の憎しみに私自身が気づいても、私には何の力もない。
―けど。あの人が私に力をくれたのよ。そう、彼女が。
そのときには名前も教えてはくれなかった。
けどあの人はわたしが力をほしがっていることに気づいてくれた。
そして私に力を貸してくれた…
その力、このドゥールゴーファの力をつかったの。
そして…みんなを変えた……」
そう淡々と話すベルの体は。
ゆっくりと、それでいてまるでその手から全身がドゥールゴーファに飲み込まれてゆくがごとくに。
そのまま。
ゆっくりと黒い何かに蝕まれてゆく。
「嘘よ!そんなの高位魔族だの、そんなのただの伝説よ!
そんなことできっこないわ!」
目の前に高位魔族がいるというのにきっぱり言い捨てているアリア。
ま、まあゼロスをみて、これが魔族、だとはまず信じられないであろうが。
間違いなく。
そんなアリアに少し微笑みつつ。
「できるのよ。アリア。これで後は…ここにいるみんなが死ねば終わるのよ。
―ごめんなさいね。関係のない人たちまで巻き込んでしまって。
でも…すぐに終わります。たとえカイラスがどんな男だったとしても、
関係のない人たちを巻き込んだ私のやり方が正しかったとは、思えません。
だから…私も死にます。
けどカイラスには反逆者の汚名を着てももらわないといけません。
だから…あなたたちもいっしょに…」
そういいつつもすでにベルの体は完全に闇一色と化している。
先ほどのミュカレに似たその容姿は、だがしかし、異なるのは、
先ほどのミュカレの色が透き通ったエメラルド色、であったのにたいし、
ベルの体は闇と同じ漆黒の闇。
「ねえ?ガウリイ?分断することって…できない?」
自分の使える聖なる力を使っても。
間違いなく、完全に同化してしまっているベルをも傷つける、否、
間違いなく殺してしまう。
そんなことを思いつつ横にいるガウリイにと問いかけているリナに。
「うーん。ミリーさんの力使えばそりゃできるけど。
オレどっちかといったらエルさんの力よりミリーさんの力の方が、
使い勝手いいし。多分母さんの影響なんだろうけど。」
「じゃ、それお願い。」
そういうリナの言葉に。
「でもオレの力だと力量不足で、多分ベルさんの精神面までは、
保護できないぞ?…その場合は…」
正気を取り戻したベルがどのようにするのか。
想像にかたくない。
「それでも、あのまま彼女が魔になるのを黙ってみているわけにはいかないでしょ?」
そういうリナのその台詞に。
「確かに…な。」
そういいつつすいっと前にでて、何をしようとしているのか。
何かの印を胸の前でその手で結んでいるガウリイ。
「って!?ガウリイさん!?その印は!?」
悲鳴に近い声をあげて。
すぐさまにその場から立ち退いているゼロス。
「すいません。皆さん-死んでください。」
そういいつつ、ベルの全身から、瘴気、とも、何ともいえない何かが噴出すのとほぼ同時。
「―歪みは正常に、正常は歪みのはてに 母なる力をもて その歪みをただしたもう。」
そういいつつガウリイがつぶやくと。
ガウリイの前に見たこともない文様が浮かび上がり。
それはやがて。
淡く輝く金色の文字となり。
そしてそれは。
目の前にいるベルにと向かって突き進む。
「「…な、何っ!!?」」
ベルの口から、ベルの声と、そしてそうでないものの声が同時にあふれ。
次の瞬間。
-カッ!!!
ベルの全身を何か、まるでオーロラのような光が多い尽くしてゆく。
カラ…ン…
その光景に思わず見とれていると視界の先に転がる一振りの剣。
それがまるで霧散されるようにと空気中にと書き消えいき。
どさり。
そこに倒れる一人の女性の姿が。
いったい全体何が起こったのか理解するより早く。
「…うっ…」
気づけば、自分の中にあった力が感じられない。
「―リー…」
ただ、あるのは。
大切だったあの人の元にいきたい、という純粋なる思いのみ。
「!!!姉さん!」
ふとアリアが正気に戻るとほぼ同時。
おそらくはふところに隠し持っていたのであろう、小さな、小さな、
綺麗な細工が施されている短剣を手に。
ザシュ。
ベルは…気づくのと同時に、その首をかききっていた。
「ね…姉さぁぁぁぁん!」
床に広がる無限とも思われる赤い何か。
ぴちゃり。
そんな赤い海をかけより、あわてて姉の方にと駆け寄るアリア。
「…アリア…ゴメンネ…でも…これでようやくあの人のもとに…
はじめから…こうしていればよかったのかも…ね。」
カララン。
人の意識を取り戻したものの、
今まで自分がしていたことの記憶は当然のことながら消えず。
そしてまた。
復讐はすでに果たしている、その思いもあり。
自らを抱きしめ、そして泣き叫んでいるアリアの顔にそっと手をおき。
一言いいつつ、そのまま、アリアの腕の中で。
ベルの体温はゆっくりとそして失われ、
ずしり、とした重みがアリアの腕にとかかってゆく。
「姉さん、姉さん、いや…いやぁぁぁぁ!」
泣き叫ぶアリアの腕の中。
ベルの手からその短剣がこぼれおち、赤い海の中にところがりゆく。
―それはかつてベルが愛する婚約者からもらった思い出の短剣。
泣き叫ぶアリアに何もしてやれることなどはない。
「…やっぱり人としての精神がもたなかったか…」
つぶやくガウリイに。
「―生き返らせることは?」
つぶやくリナのその言葉に首を横にふるガウリイ。
本人がそう望んでいないのだからどうしようもない。
そんなことをしたら、彼女は自分自身の魂が消滅することを望んでいる。
そして-その望みは純粋そのもの。
ならば。
「あのベルさんは生き返ることなんて望んでいない。
ただ-すべてが終わり、そして好きな人のところにいきたい。
その思いしか。そしてそれができないのならば自分は消滅したい。
そう望んでいるようだし。」
そうつぶやくガウリイの言葉に。
「…そっか。エルさんは純粋なる思いが好きだもんね…
つまりはどっちにしても…」
つぶやくそんなリナの声に。
『-汝の願い 我聞き届けん 汝の大切なものと 今度こそその命をもて
幸せになるがよい-』
どこからともなく、神々しいまでの声が届いてくる。
「「…エルさん?」」
リナとガウリイがそうつぶやくのとほぼ同時。
「…あ…」
アリアの腕の中のベルの姿が見る間にと小さくなり。
やがて。
・・・・ぎゃぁ。おぎゃぁ!ほぎゃぁぁぁぁぁ!!
アリアの手の中に残されたのは一人の女の赤ん坊。
「…そっか。すべてをやり直すチャンスをエルさんはくれたんだね…」
そういいつつアリアにと近寄ってゆくリナと。
「…だぁぁあ!何がなんだかわかんねぇぇぇぇ!」
ただただ、状況にまったくついてゆけずに。
絶叫するディラールの姿が。
カイラスの屋敷にて見受けられてゆく。
カイラスの屋敷を後にし、そして、赤ん坊となったベルを抱きつつ。
リナから、ベルは新たに幸せになるために生まれ変わった。
そう聞かされ、少しは慰められ。
―私が今度は姉さんを育てて見せます。
姉さんが私を育ててくれたように。
そういって少し悲しく微笑むアリア。
すでに、町の人間は。
ことごとくベルの、いや、ドゥールゴーファの手により、変化させられていたが。
それはどうにか。
戻ってきたゼロスを脅し…もとい説得して。
人々は元通りにとなっている。
まだ混乱は冷めきらないが。
それでもこの町は新たな復興をみせてゆくであろう。
そんなことを思いつつ。
次の日。
クリムゾンの町を後にしてゆくリナとガウリイ。
ディラールは子供一人育てるのは大変だろうから、
とか何とかいって、ちゃっかりと町にとどまることを決めていたりするが。
表向きは-。
ベルも、そしてカイラスも、そして魔道士協会の人々も。
反乱に巻き込まれて死亡。
そう、正式発表がなされることが決まったのは。
首謀者を倒した、というリナの嘘ではなくも真実でもない報告をうけた、
別の魔道士協会が。
しばらくすると正式に世間にと発表するであろう。
「…しかし、本気でシェーラは何考えてるのかしら?」
つぶやくリナに。
「ああ、それでしたら簡単ですよ。
あの町にかなり力をもっている人がいましたから。
もしかしたら、とおもってドゥールゴーファさんを渡しただけのことですよ。
まあ、魔王様の欠片が宿っている人間ではなかったものの。
これはこれで結構お食事もできましたしv」
にこやかに後ろからついてきているそんなゼロスのセリフに。
「ってちょいまてぃ!
まさか魔王を目覚めさすのにあの町全体をつかったってことかぁぁ!?」
リナの絶叫が響き渡る。
「そうですよ?…って、リナさん!その手のラグナブレードはやめてくださいぃぃ!
僕たちだって必死なんですよぉぉぉ!
原因はリナさんにもあるんですからね!
あの御方とそしてそのお知り合いのあの方が、
まだリナさんの子供がみれないからっていって、北の魔王様にほぼ定期的に、
やってくるんですよ!」
「って何でそこに私が関係あるのよぉぉお!」
「いや、だって、あの御方たち、楽しみにしてらっしゃいますよ?
お二人の子供が生まれるの?」
そうあわてて説明するゼロスのセリフに。
「何にいってるのよ!こいつにはそんなやついるかもしれないけど!
まだ私には好きな人なんていないんだから!
それに私とこいつは旅の連れなんだし。
冗談でも、子供なんてできるわけがないでしょうが!
何冗談いってるのよぉぉ!」
ずべっ!
そんなリナのセリフに思わず地面とキスをしているガウリイとゼロス。
「…ガウリイさん…苦労…してますね。」
「…リナぁ…」
すでにクリムゾンの町には国王軍が入り。
復興の道を歩み始めている。
そんな町を後にして。
うららかな日差しの中。
次なる目的地に向かって歩いているリナとガウリイ、そしておまけにひとつ。
そんな会話が。
町から少しはなれた街道沿いの一角で。
見受けられてゆくのであった。
-続くー
#####################################
あとがきもどき:
薫:・・・・・・・・・ふぅ。
どうにか終わったぞ・・・っと。
どっちにしてもベルが赤ん坊になる、というのはどっちのバターンでも。
同じだったんですけどね。
いや、ゼロスとエル様。
どっちがでてきても(こらこらまてまて)
ガウリイ君、まだまだ苦労してもらいましょう。
しっかし、一番の被害者は・・・・やっぱりディラールですかねぇ?(まて)
カイラスは・・・・私はクリムゾンみたときにすでに嫌いです。
男のくずですね・・・あれは・・・。
あ゛あ゛!そんなこといってたら、時間が・・・。
それでは。また次回、12巻分でお会いしましょうv
ではではvv