闇の行方 第20話
こんなにも出産が大変なのかと。
今さらながらに少し驚く。
まあ、あれだけ仲がいい、両親ではあるが。
自分と姉、兄以外に、子供がいない。
というのを少し疑問に思っていた。
まあ、兄曰く。
父様が、自分達・・つまり、子供に嫉妬して。
あまり子作りをしなかったため。
そうは聞かされていたものの。
自分としては、やっぱり、弟か妹が欲しいのが実情。
まあ、父も母も幸せそうなので、口には出さなかったが。
今、目の前で。
ここは、自分がいた未来よりも過去。
今まさに、母であるリナが。
リナスにとっては兄と姉。
ユリウスとエリアンヌを出産しようとしている今現在。
「おや?あなたは?」
巡るましく、流石に初産ということもあり。
ふと。
ばたばたする最中。
リナスがつれてきた女性の気配にふと気付く。
どことなく、リナによく似ているその女性。
何というか雰囲気が。
「あ、はじめまして。私はリナの姉です。
今、リナスから、報告を受けまして。瞬間移動であわててやってきたのですが・・・・。」
そういいつつ。
ベットの横で汗を全身にかき。
息を切らせているリナの元にそっと近づいてゆく、リナの姉を名乗った女性。
「とりあえず、ルナさんを連れてきたの・・・。ねぇ?リナ姉様?頑張って!」
「・・・・・ねえちゃ・・・・な・・・・・で・・・。」
痛みをこらえつつ。
そこにいるはずのない姿をみる。
痛みのあまりに幻影をみているのだと。
そうリナは思うが。
それでも。
無意識に手を伸ばす。
「・・・・あいつ・・・・げんきに・・しあわせに・・やってる・・よね?」
一番気にかかっていること。
痛みをこらえつつも。
幻影であると分かっいても聞かずにはいられない。
そんなリナのその言葉に少しばかり唇をかみ締めて。
「・・・・あいつは・・・リナ、あんたを捜しているわよ・・。」
「・・・・な・・・・で・・・・・。あたしが・・いたら・・・・あいつは・・・・・・・・・・・・・・。」
未だに誤解をしているリナ。
「リナ、いい加減に素直になりなさい・・。あんたは、本当にあいつから離れたかったの?」
痛みに耐えている女性にかける言葉ではないのかもしれない。
だけど。
言わずにはいられない。
そんなルナのその言葉に。
「・・・・ちがっ・・・・・そばに・・・・いたい・・・・よ・・・・・・だけ・・ど・・・。」
はあはぁはぁ。
痛みからか、感情からか涙が流れる。
一番側にいて欲しい人。
だけど別れを選んだのは自分。
彼から傷つくのが怖いから。
いいや。
違う。
自分が怖いだけ。
目の前で彼を失うことが。
・・・・・もう・・・二度と・・・。
どうしてそんなことを思うのかは分からない。
だけども。
リナスが一緒に行動を始めてからは。
みなくなった・・あの悪夢。
目の前で、何もできずに。
自分を庇って・・・・冷たくなってゆくガウリイの姿・・。
あれが現実になるのが、リナにとっては一番の恐怖。
「・・・素直になりなさい。リナ・・。いいえ、リナ様?」
そっと。
涙を流すリナの頬をゆっくりとなで、優しく言葉を発するルナのその言葉に。
「・・・・・ガウリイ・・・・・・・。」
それだけいって。
リナの瞳から。
透明な雫がつと流れ落ちる。
ルナの手を握り締め。
「は・・・う・・・・ああああああ!!!」
それと同時に。
一段とリナの叫びが強くなる。
「あ、陣痛が強まったようね。ええと、確かルナさん・・とかいいましたよね?
とりあえず、お湯とかの準備と、そして、清潔なタオルなどを。」
リナの出産を手助けしている助産婦のその言葉に従い。
「分かりましたわ。」
とにかく今は。
無事にリナが出産することが、第一。
ばたばたと。
小さな家の中。
女性たちが右往左往と駆けずり回る中。
村中に、リナの叫びが響き渡ってゆく・・・・・・・・・・・。
・・・・・ギャァ・・・・ほぎゃぁ!ほぎゃぁ!ほぎゃぁぁぁぁぁ!!
「おめでとう!まあ!一人はお母さんにそっくりよ?もう一人の子は・・・。」
産湯につけて。
まだ虚ろな目でベットに横たわるそんなリナの横に。
今、自分が産み落とした、新たな命、その二人を抱いている女性の姿をみとめ。
「・・・・・・・・ガウ・・・・リ・・・・イ・・・・」
そっと。
力のはいらない、我が子に手を伸ばす。
あれほど会いたくて。
それでも、会えない、大切な人。
彼の贈り物でもあるかのように。
一人は、自分と・・・リナにそっくりの栗色の髪に紅の瞳をしている赤ん坊。
そして・・もう一人は。
父親である、ガウリイと同じく。
金色の髪に碧い瞳の・・・男の子の赤ん坊であった。
その姿をみて、涙を流し。
長い・・・三日三晩、陣痛に耐えていたリナは。
そのまま。
無事に生まれた子供達の姿をみて、安心したのか。
やがて。
その意識は薄れていき。
闇にとリナの意識は捉われてゆく・・・・・・・・
「・・・・あら、お母さん・・というか。妹さんが目覚めるまで、側にいませんの?」
戻る準備を始めているルナに声をかけている村人の女性。
その言葉に。
「ええ。まだバイトもありますし。・・・それと、私がここに来ていたことは、リナには内緒にしていただけます?」
そういって少し悲しそうに微笑むそんなルナの様子をみてとり。
「・・・・まあ、いろいろと複雑な事情があるんだろうけど・・。
あの子の父親・・・できたら連絡とったほうがいいんじゃない?
・・・・何か死に別れ・・とかいう感じ・・・じゃないようだし・・・。」
リナがかなり相手を想っている。
というのは。
痛いほどにわかっている。
何しろ、村の若い男性などが。
ことごとくにリナに言い寄っても、まったくリナはそれに見向きもせずに。
ずっと一人の人を想っている。
というのは傍目にもわかるほど。
・・・・・まあ、実際は。
リナが言い寄られている。
という事実にまったく気付いてない。
という事情があれどもすれ。
基本的には変わらない。
・・・・まあ、もし。
言い寄られているというのが分かっていれば。
・・・・はっきりいって、リナが魔法を使うという事実を、村人全員が知っていてもおかしくない。
この辺りでは、魔法といったものはほとんど皆無。
まあ、騙りで魔道士などと名乗るものはいれどもすれ。
この辺りで発達していっているのは、科学。
自然にある物質を人の手により、人為的に力を加えて新たな力にするという事柄。
リナを心配していってくれているのはよくわかる。
その言葉に。
優しく微笑み。
「・・・まあ、そうなんですけどね・・・。
実は、あの子のために、あの子の夫が傷つくのをあの子・・怖れて。自分から離れているんですよ・・。」
詳しくはいえませんけどね・・・。
そういって悲しく微笑むルナの様子をみて。
「・・・・でも、それが夫婦というものじゃないかい?」
互いに傷つこうとも、そして、悲しい目にあっても、互いに支えあいつつ、過ごしてゆくのが。
それが、夫婦というもの。
「・・・・・あの子は・・・・弱いから・・・」
確かにそう。
どんなに傷つこうとも、二人ならば乗り越えていけることを。
全て一人で抱え込もうとする。
そのことは・・・・昔から変わらない。
だから。
そんなリナを・・・・・リロードナファレスを心配する、心から。
・・・・二人の・・・
その二人の思いから誕生したといっても過言でない一つの魂。
その魂によって、確かに。
深淵なる真の王の心は満たされた。
だが、それ以上に。
・・・・失う怖さ。
というものを確実に受け止めているのもまた事実。
「・・・・とりあえず、しばらくあの子、ここに留まるでしょうし・・。あの子のことをお願いします。」
ぺこりと。
頭を下げるそんなルナの行動に。
「・・・・まあ、いいけど・・・ね・・・。」
こればかりは。
本人の気持ち次第。
それはわかる。
彼女・・・今ルナに話しかけている女性ですら。
一度は、旅にでていたときに、夫が自分を庇って大怪我したとき。
・・・・自分がいるせいで。
という思いに駆られたことがあるのもまた事実。
こればかりは。
本人の気持ち次第なのだ。
事実。
一度は夫と・・・いや、当時は恋人であった今の夫と別れようとすらもおもった。
だけども。
二人ならばつらいことも半分になる。
という彼の言葉をうけて・・・結婚したのは、十数年前。
だからこそ。
リナが大切な人を想って姿を隠している。
そう聞かされても。
痛いほどにその思いは・・・彼女には分かる。
「わかったわ。・・・でも、このままだと・・。」
いくら気丈に振舞っていても。
間違いなく、精神的にダメージを受けているのは明白。
・・・・そう。
・・・・痛みに耐えるリナの口から漏れていたのは・・・・。
リナの最も大切な人の名前。
・・・・ガウリイ。
その名前、唯一つだったのだから・・・・・。
そんな会話をし。
ルナが自分が出産時に側にいたことすら知らないまま。
ふと。
目を開けたその横に自分のその瞳にうつったのは。
自分の横に並べられている、確かに自分のおなかの中にいた赤ん坊が二人。
栗色の髪に金色の髪の男女。
「リナ姉様?こっちが兄様で、こっちが妹でもある姉様よ?」
双子の姉妹、兄弟などといったその基準は、所によって様々。
たとえば先に生まれたほうが上とするところもあれば。
そうでなく下。
と捉える場所もある。
だがしかし。
リナがいた場所と、そして、この地は。
始めに生まれたほうが下で。
そして、次に生まれたほうが上。
そういうようになっている。
まだ産後のけだるさは残っているものの。
ベットの隣で。
そんなリナのまだ汗がにじんでいるその顔を、冷たいタオルで拭いているリナスの言葉を聞いて。
「・・・・そう。じゃあ、お兄ちゃんと、妹なのね・・。」
そっと。
すやすやと眠っている我が子を見てとる。
ちなみに。
リナが気絶している間に。
助産婦がてきぱきと、産後の処理やしなくてはいけないことをスムーズに行い。
今、この家にいるのは、リナとリナス。
そしてさきほど生まれたばかりの赤ん坊が二人。
「ねえ?リナ姉様?名前は?」
目をきらきらさせて聞いてくるリナスのその言葉に。
「・・・・いったでしょ?もう、決めてるって・・。」
まさか、ここまで・・・・。
あいつとそっくりの子だとは・・・・。
ねえ?ガウリイ?
これは、あなたから、あたしへの贈り物?
少しでもあたしが寂しくないようにって・・ねぇ?
ガウリイ?
二度と会えない人のことを思い。
ふと遠くを見るリナ。
「・・・・女の子がエリー。エリアンヌ。男の子が、カウ・・・カウリイよ・・・。」
「・・・・ね?はじめまして。私の子供達・・・。」
そっと。
横で眠り二人の我が子に。
口付けするリナの姿をみて。
「・・・・これ、映像にとっておいたから。もどったときに、姉様たちのお土産にしよv」
リナの食事をつくりつつ。
そんなことを台所でリナスがそんな言葉をつぶやいているのを。
リナは知らない。
リナスにとって、実の姉と兄である。
エリーとカウリイ・・ユーリの。
誕生の瞬間でもあるのであった・・・・・。
−続くー
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まえがき:
・・・・・ふう。
よーやくリナ、出産だぁ・・・。
・・・でも、出産シーン・・・。
やっぱり表現が難しいので却下(こらまて!)
・・・リナぁ・・・・いい加減に素直になってよおぉ・・。
・・ああ・・・・まだ欝が続く・・・・・(涙)
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あとがきもどき:
薫:・・・・・なぜか。またまたネットが繋がらない。
2003年の5月23日・・・。????謎です・・・。
とりあえず、も〜一回挑戦してみて。んでだめだったら、夜にアップですね・・。
では、もうしばらくこの欝の話し・・。お付き合いくださいなのです・・・。
それでは・・・・・・。(気分が欝になるので最近は後書きが短いなぁ・・・←(笑))
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