闇の行方 第19話
「よいしょ!」
「ああ!リナさん、そんな重い物をもったらだめよ!」
水桶をもつリナの手を奪うようにと横から攫い。
「まったく。そんな身重の体で、重いものをもったら駄目でしょ?リナさん?」
小さな村の中。
この辺りには魔道士などといった存在など皆無。
そんな小さな村の中。
旅の若い身重の女性とそして、よく似た女の子。
おそらく歳の離れた姉妹なのであろうが。
栗色の髪に栗色の瞳をしているうら若い女性。
その小柄で華奢な体つきに不似合いなほどにぼっこりと大きく膨れているお腹。
それは、彼女が妊娠している証でもあり。
その左手に輝く銀色の指輪が。
彼女が結婚していることを物語っている。
・・・・いるのだが。
その肝心な夫らしき人の姿がみえないことに。
少し疑問を抱くものの。
その話題に触れそうになると、悲しそうな瞳をするその女性の姿に。
何となく触れてはいなけいことなのかと思いとどまり。
出産までこの村に留まりなさいな。
という村人達の善意により。
出産のときまでここに滞在することにしているリナとリナス。
「そうよ。リナ姉様、お腹の二人に何かあったらどうするの?」
よいしょ!
リナが両手にもっていた水桶を右隣からその小さな体で持ち上げて。
少し見上げるようにしてリナの顔を見ているリナス。
その碧い瞳にリナの顔が映りこんでいる。
「う・・・・だって・・・じっとしていると退屈なのよぉぉぉお!!」
リナの絶叫が辺りにこだまする。
ここ、最近。
はっきりいって。
もう臨月ということもあり。
何をするにも。
お腹の赤ん坊に響くから。
といって、手とり足取り。
村人の女性たちがリナを手助けするもので。
・・どうやら、何か理由・・つまりは、夫と死に別れかなにかで一人で子供を産み育てなければいけない。
そう思いこんでいるらしく。
かなり、リナの手助けを村人総出でしてくれていたりするこの現状。
まあ、手助けだけならまだしも・・・。
やれ、重いものはもつなだの。
やれ、洗濯、掃除は村の別の女性がやってくれるだの。
はっきりいって、何もかも手とり足取り状態。
それでなくても。
さすがにもうすぐ生まれそうというのは何となく分かる。
だから、リナも極力。
負担にならないようにしている・・・・しているつもりではあるのだが。
リナは、大人しくしている。
というのに、かなり耐えられなくなってきていたりする。
先日など、ふと目を話した隙に。
近くに居座っているという、盗賊を壊滅し。
あわてて気付いたリナスがリナを迎えにいって。
そして、どうにか。
とりあえず、その一つだけの壊滅で済んだ。
という何ともほほえましいエピソードがあったりしたのは先日のこと。
「だってぇ・・・・。そりゃ、あたしも、丈夫な子供であってほしいとは思うけど・・。
だからって、どうしてこう、じっとしてなくちゃいけないのよ!ストレスも体に悪いじゃないのよ!」
言いくるめられて。
ベットの中に入りこんでいるそんなリナのその言葉に。
「でも、姉様?出産するときのために、少しでも、体力は必要よ?」
「・・・・・・は?」
リナスの言葉に目を点にしているリナ。
・・・・・私、聞いたことがあるのよねぇ。
母様から・・。
「・・・・ねえ?母様?私が生まれたときや、姉様達のときはどうだったの?」
ぶっ!
けほけほけほっ!
いきなり質問してくるリナスのその言葉に。
思わずむせこむ。
「うーん、リナスのときはオレもいたけど。
ユーリとエリーのときは、オレ・・リナの側にいなかったからなぁ・・。リナ、オレから逃げてたし・・・。」
そういいつつ、隣に座っている白い服に身を包んでいるリナを見ている、金色の髪に碧い瞳の男性。
「・・・うっ・・・///だから、それは・・・・・・もぅ・・・悪かったっていったじゃないのよ・・//」
未だに。
あのときのことはたまぁに言われる。
それを言われるとリナもまあ、自分が悪かったのは分かるので。
素直に謝るしか方法がない。
「まあ、あれはSが悪いよね。」
「そうよね。ユーリ。」
うんうんと。
同じくテーブルについているリナにそっくりな少女に、ガウリイにそっくりの少年。
「う・・・・・。あ、そうそう、リナスのときは・・・まあ・・その・・・//」
いっていいものであろうか・・。
「オレとやってるときに、リナ、産気づい・・・・。」
「だぁぁぁぁあ!!!!そうはっきりいわないでぇぇぇ!!///」
さらりと爆弾発言を飛ばしているそんなガウリイに。
思わず真っ赤になって口をあわてて塞さごうとしているリナ。
「・・・・そういえば、あのとき。父様、ガウン姿だったよね・・・・。」
「母様もだったよね・・・。」
そんな両親をみてつぶやいている二人のその言葉に。
「ねえ?それはそうと、ユーリ?『やってる』って???何?」
「・・・・・エリー・・・・(汗)」
未だに。
意味をよく理解してない妹のその言葉に。
思わず頭を抱えつつ。
「あ・・・・あはは///エリー、知らなくていいのよ///」
そんなの教えるようなことじゃない!///
真っ赤になって心で叫んでいたりするリナ。
「ま・・まあ・・その・・・。つまり、リナスのときは、その・・いろいろあって・・。側にガウリイもいてくれたし//」
真っ赤になりつつ、小さな消え入りそうでいっているリナのその台詞に。
「?ふぅん?」
よくわからないままにも。
おそらく父がいたから安心して産めたのだろうな?
何となくそんなことを思っていたりするエリーとユーリ。
リナとガウリイの始めの子供、双子の兄妹。
「で?母様?僕達のときにはどうだったの?」
きょとんとした瞳で問いかけてくるユーリのその言葉に。
「う・・・・あれは・・その・・・しんどかったわよ・・・・。」
まさか。
出産というものが。
あんなにも大変だとは思わなかった。
しかも、初めての出産で。
しかも双子。
「そういえば、リナと再会したあと、したとき♡もう、リナ痛がらなかったしなぁv」
「~~!!!!あんたは何ていうことさらりと爆弾発言するのよぉぉ!///」
すばこぉん!
スリッパを取り出してガウリイの頭をはたくそんなリナのその手を掴み。
「リィナvおいたはいけないなぁv」
そういいつつ。
力を少しいれ、リナを自分のほうにと引き寄せて。
「・・んっ!///」
そのまま。
リナの唇を奪っていたりするガウリイ。
真っ赤になっているそんなリナを愛しそうに。
今度は完全にすっぽりと、自分の腕の中に収めて入っているそんなガウリイをみつつ。
「・・・・ええと、エリー?リナス?今日は、外で仕事しない?」
「賛成!」
いそいそと。
いつものどこくに気をきかせて。
食事も終り外にでてゆく子供達。
後には、いつものごとくに。
力の抜け切った彼らの両親であるリナとガウリイが。
再び寝室に向かってゆくのは・・。
リナスがいた場所ではいつもの光景・・・・。
まあ、よく聞き出せなかったが。
後から少しばかり聞いた時に。
首筋などにこれでもか!
といわないばかりの紅い花びらをちらせていた母が教えてくれたこと。
初めての出産だったがために。
かなりの難産だった。
というのを漠然と聞いた。
それ以上は。
リナスもそのうちに分かるわよ・・。
それだけいって母は・・リナは微笑んでいたのだが。
何でも、三日かかったとか何とか。
どうして詳しいことは教えてくれなかったのか。
今ならわかる。
自分がここにくることを・・。
リナは・・・母は知っていたのだ。
だからこそ。
過去が変わらないように、リナスには詳しいことは一言も話さなかった。
姉たちですら。
リナスに昔のことはあまり話さなかった。
まあ、それは。
今からリナスが自分で経験することなので。
話したら過去がかわる。
という懸念を抱いていたのだと。
今なら理解ができる。
「えっと。初産は大変だってよく聞くし?
ちなみに、私の母様なんか、三日三晩、陣痛の果てに。ようやく双子産んだらしいし。」
・・・まあ、その母というのが。
リナ本人ということは伏せるにしても。
「・・・・・・うっ・・・・・。(汗)」
リナスの言葉に思わず唸る。
まあ、確かに。
それでなくても出産は大変だとよく聞く。
しかも。
まあ、何となくだが。
リナはそーいうことは一度とか経験がない。
あの痛みよりもかなり痛い。
というのも何となくだが分かっている。
いるが・・・・。
あの痛みよりもさらに激しい痛みが三日も・・いや、それ以上続く。
リナの母などは、すんなりと産んだらしいが。
それは人それぞれ。
大概の一般常識は。
初産は大変だ。
ということが挙げられる。
そしてまた・・・。
リナも、例外にもれずに。
初産なのである。
リナスの言葉に。
しぶしぶながらも再びベットに横になる。
たしかに。
どれだけの痛みを伴うのか。
経験などしたことがないから分からない。
だけど。
あいつとの大切な子供だから無事に産み落としたい。
そう願うのはリナにとっては当然のこと。
「・・・・・本当は・・側にいて欲しいけど・・・・ガウリイ・・・・・。」
ふと。
リナスが水を汲みに外にでているときにもれる本音。
本当はずっと側にいたかった。
だけど。
自分が側にいることで、ガウリイの命が狙われるのがわかったあのときから。
もう、二度とあってはいけないと。
自分でそうきめたこと・・・・。
「・・・ねえ?もし、ガウリイ、あんたがここにいたら・・。何ていうかな?」
きっと・・・。
会わない。
ときめたのは自分なのに。
どうしてこんなに愛しくて、愛しくて・・・・切ないのか。
ただ、無償に会いたくて。
会えないとぽっかりと自分が自分でないような感覚で。
一人になるとそれがやけにはっきりと自覚される。
リナスが側にいるときは。
リナスがもっている雰囲気が。
その中に何となく、あいつと・・ガウリイと同じ雰囲気が感じられて。
そんなことはあまり思わないが。
「・・・・・ガウリイ・・・あたし・・・・・・・・・ふぇ・・・・。」
そのまま。
マクラに顔をうずめるように。
涙でマクラを濡らしてゆくリナの姿が。
彼女達が住んでいる部屋の一室。
つまりは寝室で。
見受けられてゆくのであった。
ばたばたばたばた!
あわただしく小さな家の中を走り回る女達。
「はぁはぁはぁ・・・・。」
「リナ姉様!?頑張って!」
「・・・ガウ・・・リ・・・・イ・・・・・・」
眠っているその最中。
いきなり、鋭い痛みがリナを襲った。
これが噂にきく陣痛なのかと。
感心する暇もなく。
動けないほどに痛みに襲われているリナ。
あわてて。
隣、近所の人に知らせて。
出産の準備を整えている村人・・いや、村に住んでいる女性たち。
リナスはまだ小さいというか子供なので。
リナの側についていてあげて。
という言葉にしたがって。
リナの手をしっかりと握り締めている。
痛みに襲われながらも。
ガウリイの・・・父の名前を呼ぶその姿に。
「・・・・・本当に素直じゃないんだから・・・・リナ母様は・・・。」
そんなに想っているならば、離れなければいいこと。
・・・・だけど。
今のリナにはそこまで割り切る余裕はない。
息もあらく呼吸も荒い。
全身に流れている汗に。
かなりの苦しみ。
「・・・うーん。これは難産になりそうだね・・・。」
リナの赤ん坊を取り上げようと、呼ばれている助産婦が。
そんなことをリナのお腹に手をあてつつ、つぶやいていたりするが。
それでなくても小柄なリナ。
だがしかし。
お腹にいる子供は通常よりも少し育っているらしく。
うまく産道にのるかどうかが山と。
そう説明しているが。
リナにはすでに痛みでその意味すらも分からない。
「うーん。リナさんの旦那さんとか、家族は?」
その言葉に。
「・・・・とりあえず、私、ルナ姉さん、呼んできます!」
そういって。
そこから。
ふいといきなり掻き消えるリナスに少し驚くが。
「あら?・・・あ、それより、お湯を早く沸かしてよ!」
リナに気をとられて。
リナスがそこから掻き消えたのに気づいていなかったりするのが現状。
ばたばたと。
ベットの上で。
陣痛の苦しみに耐えているリナの回りでは。
親切な村の女性たちが。
リナの出産の手助けをするために。
殆ど総出で。
手伝いに来ていたりする、今のこの家の状態。
「ルナぁぁぁぁぁぁ!」
あわてて、いきなり。
しかも、バイト先のレストランのその天井部分から女の子が降ってくれば。
まあ、誰でも驚くであろうが・・・。
「・・・・って、リナス・・さま?一体?」
まったく動じていない紫がかった青い髪の女性。
回りにいる客なども。
「・・・・おや?ルナちゃんとこの親戚?」
「というか、リナちゃんとガウリイ君によく似てるねぇ。娘でもとおるんじゃない?」
などと。
まあ、ルナに関る人々などは。
よくこういったいきなり出現する人間(?)なども多々といるので。
あまり動じていないこの町の人々。
ここ、ゼフィール・シティでは。
さほど珍しくない光景なのである。
人がいきなり消えたり出現したり・・ということ程度などは。
「リナお母様が!産気づいたの!」
「えええ!!!!?それは急がないと!マスター!」
「おう、いってきな!」
ここ、数年。
戻ってない、ルナの妹夫婦。
まあ、旅に出ているというのは分かっているが。
そんな会話をちらりときいて。
「そうかぁ、あのリナちゃんがとうとう母親にねぇ。」
「きっとかわいい子が生まれるわよ。何しろ、母親も父親もかなりいい素材だもの♡」
口々に。
リナとガウリイのことを思い浮かべ。
いきなり、少女と同じように忽然とその場から掻き消えてゆくルナをみても。
何の反応も示さずに。
ここ、ゼフィール・シティの中に位置している、レストラン・リアランサー。
ここは、いつものとおりに平和そのものであった。
-続くー
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まえがき:
こんにちわ。・・・・うう・・・・。
まだまだ、ハッピー箇所はどこぉぉ!!?(爆!)
と、またまた欝になるのを覚悟での打ち込みです・・・・。
あう・・・・・。
(・・ええと・・・前回・・どこまで打ち込んだっけ・・・←おい!!!(-_-;))
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あとがきもどき:
薫:・・・・打ち込んでたら十二時、いつものごとくに過ぎました(爆!)
いやぁ、最近は毎日メッセでお話してますv
感謝なのですvちやさんv星野さんv
んではでは・・。
・・・・・さぁて、リナの出産シーン・・きちんと表現・・できる・・かな?(汗)
んでは、またv
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