闇の行方 第18話
背後といわずに。
周りを取り囲むようにしている黄金竜や、その他の竜達。
火竜王直属の、火竜・・といってもサラマンダーではない。
一般に知られていない火属性をもつ、彼らの姿も多少見うけられる。
いくら、竜王が交代したといえども。
元、火竜王ヴラバザードがもつ、そのカリスマ性と、強い力に惹かれて。
そのまま彼と共に行動している神族も少なくない。
その度重なる所業から。
その地位を剥奪された元火竜王ヴラバザード。
その彼に仕える彼ら神族。
「・・・・・・ひさしいな。フィリア=ウル=コプトよ。大神官の娘でありながら。我らを裏切った卑怯ものよ・・。」
すいと。
そんな海上を飛んでいるフィリアの前に立ち塞がる。
フィリアよりもふた周りか大きな黄金竜。
「・・・・・・ネード・・・」
ヴラバザードの騎士であり。
そしてまた。
幼い日などには。
フィリアの剣の稽古などもしてくれていた彼。
冷たく紅い瞳がフィリアを見据える。
「このまま、その者達を渡して。そして貴様がもっているそれを我らに手渡せ。さすれば、見逃してやろう。」
そういって、すっと手をかざし。
フィリアたちを取り囲むようにと支持を出す。
「・・・な゛!あなたたち、自分達が何をしているのかわかっているんですか!?無抵抗な人を襲うなど!」
思わず叫ぶ声に力が入る。
そして、小さく。
「・・・・まあ、リナさんは無力でも何でもないですけど・・。」
ぽつりと付け加えるようにつぶやくフィリアのその言葉に。
「フィリァぁ?どういう意味かしらぁん?♡」
背中から、ぽかりと。
フィリアの頭をこずくリナ。
「・・・それはそうと、姉様?ここから退いたほうが絶対にいいとおもうけど?」
そんなリナとは対照的に。
かなり冷静なリナス。
「ふん。人は確か妊娠していると。魔力が極力使えなくなるそうだな。
あのいくら【デモンスレイヤー】として名高い、リナ=インバースといえども。
子供を身ごもっている限り我らに太刀打ちはできまい。そして・・フィリア。
無力なそんなリナ=インバースを。守ろうとしている貴様も・・・な。
貴様がもっているエンシェントドラゴンの卵ごと我らに引き渡せ!さすれば、フィリア。貴様は見逃してやる!」
高らかに言い放ち。
フィリアにむけて手を差し伸べてくるそのフィリアがネードと呼んだ。
黄金竜のその言葉に。
わなわなわな・・・。
背中にいるリナ達ですらわかるほどに。
フィリアの体が小刻みにと震え始めてゆく。
「あなたたちは!また同じ過つを繰り返すのですか!?」
小刻みに震える体。
かつて、彼ら・・・火竜王に続する黄金竜達は。
無抵抗な古代竜、エンシェントドラゴンを皆殺しにした。
それこそ、無力の子供からお年寄り、挙句はまだ生まれてもいない卵まで。
それはただ。
彼らが脅威となりえる力をもっているがゆえ。
彼らが争いに使われないように封印していたとある品物を。
理由として、それを使って脅威を世界に振りまくといった。
名義を立てにして。
彼らはそんなことなどおもってなどいなかったというのに。
そして今。
彼らは無力な・・・まあ、実際は無力でも何でもないが。
妊娠しているとわかって、それゆえに。
命を奪おうとしているのだ。
そして。
まだ生まれていない、最後のエンシェントドラゴンの生き残り。
ヴァルの卵ですら。
小刻みに震え始めるフィリアの様子を見て取り。
「・・・・そね・・・・」
それだけいって。
すっと。
フィリアの背中から離れようとするリナに。
「あ、リナ姉様、私がやるから。リナ姉様は私の手をしっかりと握っててね?」
にっこりと微笑み。
その碧い瞳が優しく微笑む。
その言葉に優しい笑みを浮かべる。
リナはリナスの笑顔が、切ないほどに愛しくてたまらない。
あいつと・・・ガウリイと同じ瞳だから。
そんなことを思いつつ。
「あ・・ありがと。」
素直にお礼をいい。
リナスの手を握る。
リナスとリナが手をつなぎ。
ふわりと。
フィリアの背中から離れたその直後。
「ならば、死をもって、我らの正義を!」
・・・・とことん。
すくいようがないというのはこのこと。
「させません!あなたたちこそ、目覚めてください!」
きっと見据えて。
彼らを見やり。
そして。
ぷつん。
彼女の中で何かがはじける。
「ラナ、ライト・・ウルコプ・・・。」
その口から、聞いたことのない呪文が漏れ出すが。
「・・・・・・あ、フィリア、竜神の魔法も使えるんだ。」
「どーせだったら、金色のお母様の力を使えばいいのに・・・」
フィリアが今唱えているのは。
この世界の光の神。
赤の竜神の力を借りた神聖呪文の一つ。
「・・・リナス、それ、多分絶対に、フィリアは使わないって・・・」
まあ、理由はわかるが。
なぜか、金色の母の力を使うのは。
竜族に限らずそれは恐れ多いこととされている。
・・・・まあ、力そのものが彼女自身であるその力の制御を誤れば。
どういう結果になるのかもわかっているからか。
はたまた。
いくらどんな力においても、彼女の力・・つまりは。
彼女の一部という形で正式にではないが降臨させて、使うことになるからか。
はっきりいって、畏怖されている。
たとえば、リナが暴走の心配がない。
といってよく使っている闇の刃は。
これはリナだから制御できるのであって。
普通ならば、その波動で、その力に術者が飲み込まれるのが必死。
普通の人間や存在であるならば。
まず桁外れに強い精神力と。
そしてまた。
あの御方に気に入られ。
力の使用を彼女に認められることが必要。
・・・そう。
普通ならば。
だが、リナもリナスも。
・・・まあ、その本質そのものが。
はっきりいって。
リナはこの世界の核そのもの。
金色の王の妹として創り出されていることもあり。
そしてまた。
リナスはリナスで。
そんなリナの・・・・いや、リロードナファレスの子供として、生を受けているからに他ならない。
・・・・リナはリナスが未来からやってきている。
自分の娘だとは夢にも知らないが・・・。
やがて。
完全に更正というか改心しようがないかつての仲間の姿をみて。
フィリアの中で。
何かがはじけ。
そのまま。
フィリアの呪文と。
そしてまた。
レーザーブレスなどが辺りに満ち溢れ。
海上にて。
一瞬のうちに、そこは黄金竜達などの戦場と化してゆく。
たった一人の小娘が。
自分達相手に。
完全に優勢に立っているのにかなり驚くしかない彼ら。
彼らは知らない。
・・・・・・女は。
特に子供を守ろうとする女性は、信じられない力を発するということを。
それが彼らの誤算。
彼らがフィリアが大切に守って、孵化をまっている。
エンシェントドラゴンの卵を抹殺する。
そういった時点で。
フィリアの中にはまけられない。
という思いが強く根付いているということを。
防壁を張り。
そんな様子を眺めているリナとリナスの方にも。
攻撃の手が加わらないわけではない。
だがしかし。
リナ達の目前にやってこようとする、彼ら・・竜たちは。
リナの目前にて。
何らかの力にはじかれるように。
見えないどうやら結界の壁がそこに張ってあるらしく。
近づこうとしては、見えない透明な壁に。
ぶつかっては虹色の波紋をなびかせて。
澄んだ音色を立ててはその結界の壁にとはじかれて。
「・・・・ふっ。リナ姉様を傷つけようだなんて・・。みのほどをわきまえてよね!!」
そう宣言するや否や。
ふわりと。
その手に腕の長さほどのロッドを出現させて。
軽く一閃するリナス。
その直後に。
ドォォ!!
虹色に近い光がほとばしったかと思うと。
まるで何かがはじけるような音と共に。
一瞬にして、数名の竜達の体の一部をなぎ払ってゆく。
本来ならば、それで、完全に消滅や殺すことができるのであるが。
未来の存在が過去の存在にあまり介入するのは好ましくはない。
そんなことをしたら・・下手に。
母たちから聞いたことがある・・あれを。
アザチェスを復活させてしまう手助けをしてしまう可能性もある。
だがしかし。
この程度なら。
つまりは、生かさず殺さずの程度であれば。
別に何も問題などはありはしない。
母を傷つけるものは許さない。
・・・・・この辺りの性格は。
・・・・・・リナスは父親からかなぁぁり濃く受け継いでいる・・・。
「あ、ずるい!リナス!」
まあ、リナスが持っている武器のロッドは。
どうやら感覚的に、自分が使うラグナブレードに感覚が似ているようなので。
いきなり何もない場所から武器を取り出しても違和感などない。
というかこれは今までにもよく見ているリナスがよく使っている武器。
あとリナスがよく使う武器はレイピア。
どうやらかなりの腕前らしく。
リナですら舌を巻くほどではある。
その剣の筋がどことなくガウリイに似ているのも。
リナは否めない。
・・・・まあ、当然といえば当然であろう。
・・・何しろ、リナスにそれらを教えているのは、未来のリナと所帯を持っているガウリイなのだから・・・
リナスが少しばかり遊んでいるのをみて。
リナもまた。
少しは自分も暴れたい衝動に駆られ。
そして。
「アビヌスレイブ!!!1」
リナがそう叫ぶと同時に。
辺りに朱金色に近い闇が。
そん光の球が一気に周りに炸裂し。
辺りを朱金色にと染めてゆく。
ほんの一時もたたずして。
やがて。
その場に浮かんでいるのは。
いつのまにか、リナスとリナ、そしてフィリア。
この三名だけになっていたりする。
他の者達は。
大概は海にと落下していき。
まあ、死亡してはいないが。
かなりの重傷を負ってはいる。
自分達で怪我は何とかするであろう。
それに、そのせいで死亡しても。
リナお母様に喧嘩をふっかけたんだからv
死んでもエル様が許さないだろうけどね♡
などと少し内心ほくそえみつつ。
そんなことを思いながら。
手に出現させていたロッドをかき消そうとして。
ふと、その手を止める。
「・・・・・・おやおや、ずいぶんと派手な何かがあったかと思えば・・。これはこれは♡」
ゆらりと。
何もなかったはずの空の上。
そこに似つかわしくないのんびりとした声。
「・・・・・・・・ゼロス・・・・。」
リナが低く唸り。
お腹を庇うようにして身構える。
そんなリナの様子を捉え。
「・・・・・おや?これはこれは♡リナさん、妊娠されているんですねぇ。
おや?おかしいですね。ガウリイさんと離れてから。もう大分絶ちますが?♡
もしかして、ガウリイさん以外のお子さんですか?♡」
にこにことした笑顔のまま。
そんなことをリナの方をみつつ言っているその言葉に。
「・・・・な゛!そんなわけあるはずないでしょ!あいつ以外の誰がいるっていうのよ!」
思わず叫び。
そして、ハットなる。
そんなことをいったら。
ガウリイと自分の子供であるこの子達に、ゼロスが・・魔族が何をするか分かったものではない。
そんなリナの言葉に目を少し細め。
「へえ、ガウリイさんとリナさんのお子さんですか・・。それは、かなり僕達にとって、戦力となりそうですねぇ♡」
何しろ。
おそらく間違いなく。
リナがガウリイと別れたときに出来た子供であろうことは明白。
まあ、あれから一年以上経過しているというにも関らず。
まだ子供が産まれていないというのは。
リナのその人としての肉体の時間率が。
その身に封じられている魔王の影響か。
変わってきている証拠。
何しろ、魔族にしろ、神族にしろ。
その身に子供を宿す場合は。
少なからず、大概三年くらいの年月を必要とする。
まあ、そんなことをわざわざするような輩もいないが。
大概、そのまま創り出せばすむこと。
だが、それは。
高位の・・・・竜神、魔王、そして・・腹心。
その辺りの地位にまで上った存在に限ること。
その言葉に身構えて。
「・・・・・この子達は・・・あんた達の好きにはさせない・・。」
リナの声が震える。
そう。
あいつの・・ガウリイとの大切な子供達。
この子達がいるから。
あたしはガウリイと離れても正気でいられる。
あたしの生きる希望のようなこの子達。
そんなことをリナは思いつつ。
ひたとゼロスを見据えてゆく。
そんなリナを守るかのようにすっと前にと突き出て。
「悪いけど。リナ姉様には好きに手出しはさせないから。」
すっとリナを庇うように、手を横に伸ばし。
前に一歩すすむリナス。
そんなリナスをみて、目を細め。
「・・・・あなた・・・・誰・・・です?」
何かこの子の纏う雰囲気は。
この時間帯のものではない。
それはわかる。
しかも、本人は隠しているのであろうが。
その隠している力に無意識に恐怖を感じて思わず後ろにと一歩下がる。
圧倒的な力の差。
それにもまして。
・・・・・・どうして、この子から。
リナとガウリイの気配。
その二つがしているのか。
リナのお腹に宿っている赤ん坊。
そして、時間帯の違うオーラを纏っているリナとガウリイによく似た雰囲気の、女の子。
ふと。
ゼロスの脳裏にあることが思い浮かび。
「・・・・もしかして・・・・あなた・・。」
リナさんの未来のお子さんですか?
そう問いかけようとするそんなゼロスのその言葉の前に。
「生塵!リナさんにちょっかいかけないでください!」
鋭い声がそんなゼロスに浴びせかけられ。
「・・・誰が生塵なんですか!フィリアさん!」
「生塵だから生塵といっているんです!」
「何ですってぇぇぇ!」
・・・・・フィリアのその言葉に。
思わずそちらに気をとられてしまっているゼロス。
「・・・・え・・・ええと。あ、そうそう、フィリアさん。私とリナ姉様、そろそろいくから。じゃあね。」
「・・・・え・・・ええと。フィリア、ここまでありがとね。」
二人の言い争いに巻き込まれては、たまったものではない。
それに。
ゼロスの注意がそちらに向いている今がチャンス。
一度見つかってしまったからには。
うまく隠れつついかないと。
今度はお腹にいる子供達まで危険にさらせられる。
「ですから!何度もいいますけど!生塵というのはやめてください!」
「ふん、ロートル魔王に頭が上がらないしがない魔族が何をいって・・・。」
そそくさと。
その場を離れてゆくそんなリナとリナスに気付かずに。
ぎゃいぎゃいと。
海上にて言い争っているフィリアとゼロス。
・・・・やがて。
夜が明け始め。
明るくなってきたその朝日を浴びて。
・・・・・ようやく、彼らは。
丸一日。
言い争っていることに気付くのであるが・・・・。
そのときには。
すでにリナもリナスも。
すっかりとすでにそこから離れた場所に完全に移動した後であった。
「・・・・あ、折角みつけたのに・・。ま、いいですか♡
今回僕が言われたのは。何か力が暴れているからそれの確認でしたしね♡
リナさん達のことは報告しなくても♡」
散々フィリアと言い争い。
追いかけごっこを未だに、海上でしつつ。
ふと。
ようやくリナとリナスがいなくなったことに気付いたゼロス。
だが。
からかうように逃げつつも。
そんなことをつぶやいていたりする。
・・・・あくまでお役所仕事の獣神官である・・・・・・・・。
-続くー
追記:
・・・・被害報告。
フィリアのレーザーブレスによって。
その辺りにあった小島・・・・数十個が。
海の藻屑と化したことを・・ここに述べておく・・・・・・・・
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まえがき:
・・・何か欝になるので。
打ち込んでてもついつい、他のことに向かってしまいます(笑)
・・・・・ほんとーにいつになったらハッピーエンドにいけるんだろうか・・。
!としてアップしているところまでいったら・・・。
あとはもう、ラブラブ♪なんですけど・・・ねぇ?(こらこらこら!)
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あとがきもどき:
薫:ふふふふふふふふふ!
よっし!シリアスの中のオアシスギャグ!(こらまて!)
・・・・・ふふふ・・・。よーやく次でリナが出産だよぉ。
ながかったよぉ・・。
でもまだ・・・・ガウリイとの再会は・・・程遠い・・・・しくしくしく・・・。
何はともあれ。こんな意味もなく続いている話についてきて下っている皆様v
ありがとうございますv心から感謝を込めて♡
by薫
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