闇の行方 第13話


滅びの砂漠と呼ばれているその中心地。
そのある一角の流砂の地域のその地下に。
まず誰も入ったことのない空間が存在している。
とはいえ。
入れないといった表現の方が正しいであろう。
流砂の奥にあるのは。
周りが水晶の土で覆われた岩盤と。
そしてまた。
さらにそれを無視して進んでゆくと、そこにあるのは。
巨大な洞窟。
その洞窟に、何重にも張り巡らされた、とある結界。
さらにその奥にある、壁一面に広がる、氷の壁。
その奥に。
一人の女性が氷に氷付けになるよに。
目を閉じてそこに佇んでいる。
普通ならば、こんな封印は簡単に逃れられるのであるが。
何しろ、彼女を封印している氷と、そして、周りにある水晶は。
ここを封印の場に定めたヴラバザードが。
その力を強め、力が反射するように仕向けているがゆえに。
まず中身からは、この封印は解くことができない。
そしてまた。
その力ゆえに、対等な力をもつ存在ですら。
解けないように、下手にとこうとすると、中にいる、彼女が死亡するようにと念入りな封印。

壁の中に氷付けになっている女性をみつめ。
「・・・・目覚めなさい、シーメイ。」

バキィン!

そういいつつ。
手にした、剣を壁にと突きつけるルナ。
外部からの多少の力では、割れるはずのない、それは。
ルナが少しばかり、突きつけただけのその衝撃で。
やがて。

ピシ・・ビシピシピシ・・・・。
バキィィン!!

音を立てて、その壁が崩れてゆく。

壁の中に封じられていた女性は、橙色の髪を腰の辺りまで伸ばしている女性が一人。
彼女こそ、この地に封印されていた、シーメイ=ウル=フレアザード。
火竜王ヴラバザードの第一地位継承者。
一応、この世界の竜王の一人、火竜王ヴラバザードの、一人娘。
父親と違い、彼女は清廉潔白。
正しいことを正しいとし、悪いことは悪いといいきり。
それゆえに、父親に意見して、この地に封印されていたシーメイ。
ここは、火竜王が、かつて、研究がてらに呼び出した。
この世界の理に背くものの力などをも利用して、作り出している空間の一つ。
元々あった洞窟を利用した、天然の牢獄。
精神世界面から、物質世界面において。
ここは、完全に外部と遮断がなされている。

やがて。
その壁の前に佇むルナとアクアの見ているその前で。
壁の中に埋め込まれるように封印されていたはずの。
その女性の周りの氷が完全にはぜ割れて。
そこに、佇む一人の女性。
ゆっくりと目を見開く。
その瞳の色は、真紅。
「・・・・・・え?私は・・一体?」
確か、父親に意見して。
父親に何らかの力をうけて・・。
それ以後・・記憶がない。
目をあけつつ、ぼんやりする思考の中で。
呆然と声を紡ぎだしている橙色の髪に紅の瞳をしているその女性。
「・・・・久しぶりね。シーメイ。」
何処か聞き覚えのある声がする。
ふと、視線を前にと向けると。
そこに。
見たことのある服装に身を包んでいる一人の女性と。
どうみても懐かしい顔ぶれが一人。
「え・・・え!?『深淵の補佐官アビス・ラズ・ポート』さま!?ラグラディアさま!?」
目の前にいるのは。
紛れもなく、今は眠りについていると言われている、この世界を抱擁しているその核ともいえる、母なる存在。
深淵なる真の王に仕えているという、深淵の補佐官、ルナティックと。
そして。
よく小さいころから面倒を見てもらっている、父親の同僚の一人。
水竜王アクア=ラグラディア。
その二人の姿を認め。
どういうわけか分からずに。
ただただ、戸惑いの声を発するシーメイの姿が。
その洞窟の一角にてしばし見受けられてゆく。


「・・・おのれ・・・。」
部下達ですら、
娘を支持し。
自分についてきたのは、ほんの一部。
彼に付き従っていた部下達の殆どは。
ルナの・・・・赤の竜神の一言により。
あっさりと、そのキビスを返し、新たな地位についた娘にと。
その忠誠心を誓っていたりする。

旅重なる命令無視。
―火竜王ヴラバザード、その地位を解任する!―
そう、高々と宣言され、その力全てを取り除かれた。
まさか、今までの命令無視をしていた結果。
今の今、その地位を剥奪されるとは夢にも思っていなかった彼。
だがしかし。
「・・・まあ、我があの人間を殺せば・・・。
  きっと、また我が竜王・・いや、竜王などでは生ぬるい。この世界は我の手に入るべき世界なのだ。」
そうつぶやきつつ、笑みを浮かべているのは。
地上を歩く五つの人影。
その中央にいる人物一人。
とりあえず、一番災いとなるのは。
あの人間に他ならない。
だが、今は。
少しでも、その力を取り戻すのが先決。
「・・・手っ取り早く・・・裏手段で稼ぐとするか・・。」
彼等の力の源は。
あくまで、光のその力。
だがしかし。
闇に属する力の方が、より強い力を得ることができることを。
彼はよく知っている。
別に問題はその利用方法のみ。
たとえば、人の怒りや悲しみ、といった負の感情と。
悦びや楽しみといった生の感情は。
紙一重。
つまり、一応、基本的というか表では、生の感情が。
彼等・・神族の糧の一つでもあるのだが。
だがしかし。
だからといって、負の感情が糧とならないわけでもない。
逆を言えば・・・かなり、負の感情の方が力が入る。
惑星上に満ちる、自然界の力や、精神世界面において、満ちている力、そしてまた。
この地上に生きている命の力。
それらを自らの力にと変換し。
失われた力の回復を図っている彼、ヴラバザード。
「・・・・確か、調べでは、あの国にあの娘はいたようだな。」
すでに調べはついている。
あの娘を殺すために。
あの王子を利用しようと計画を立てていたその矢先。
いきなりの解任。
まあ、それ自体は、もはや、完全に。
赤の竜神の騎士とされていたあの人間が。
隠していた気配を完全に開放し、自らが・・竜神そのものが存在している。
そう配下の存在達に知られては。
彼についていこうという部下達は、極力・・今、残っている、彼以外では四人のみ。
他は、竜神・・・・スィーフィードの言葉に従って。
新たな地位にと着いた、彼の娘。
シーメイの補佐をするべく。
新たな系統を作り始めていたりする。
「とりあえず、ヴラバザード様。
  あの人間をいいように利用して、人に殺させるように仕向けるのが得策だと思われますが?」
 かつて。
古代竜の壊滅にも賛成し、手を貸していた彼の部下。
彼がとある場所から使えそうだからといって引っ張ってきた。
・・・こともあろうに、金色の王に反旗を翻していた、存在のうちの一人。
別にそんな理由はどうでもいいこと。
ただ、力があり使えれば。
という、ヴラバザードの意見。
まあ、元々。
ヴラバザード自身もまた。
・・・竜王になる前の魂そのものが。
そんな系統というか金色の王に背くものであった。
という事実もあるのであるが。
いや、金色の王に背く・・というよりは。
金色の王と深淵なる真の王に・・といったほうがいいであろう。
この世界を作り出しているのは、他ならない、深淵なる真の王。
そして、その深淵なる真の王を創り出したのが・・他ならない、金色の王である。
まあ、その辺りの詳しいことを知っている竜族や、魔族、その他の存在は、
ごく一部しか限られた存在しか、その事実を知りえないが。
「・・・そうだな。」
その意見に笑みを深くして。
にやりと笑う彼の姿が。
その街道筋で見受けられ。
そして、そのまま。
彼等・・五人の姿は。
瞬く間に、その場から完全に溶け消えるように消え去っていた。


「・・・・くそくそくそ!」
まさか、この自分が・・・。
痴漢として、束縛されるとは。
身分が知れて、開放されたものの。
それでもやはり、気が治まらない。
「・・・あの娘・・・もう少しで手に入るはずだったのに・・。」
あの白い肌が目の奥にちらつく。
しかし。
どういうわけか。
いきなり出現した、あの女性と一緒に旅をしていたあの女の子。
間違いなく。
あの子の力で、彼があんな場所にいってしまったのは。
深く考えなくても一目瞭然。
「・・・だがしかし、他人を他の場所に飛ばせる能力など・・。」
今までそんな能力など、聞いたことがない。
まあ、この辺りは。
魔術そのものが珍しいとされている場所でもあるからして。
そういいつつ、考え込む。
「・・・・とにかく、この私は狙った獲物は、必ずゲットしているんですよ・・。逃さない・・。」
あんな極上な女性はまずこの辺りでは絶対にいない。
自分の側室の一人として、永遠にかわいがって上げるというのに。
何が不満なのか。
というか、まずは。
「・・少なくとも、あの子がいる限り・・。どうやら、あのリナさんに、近づくことは不可能のようですね・・。」
リナを守っているらしい。
というのは何となくあの一件で分かった。
あの娘があの女性を母と呼んでいたのが気にはなるが。
まあ、母親代わりのような存在なのであろう。
そう一人で解釈しているこの男性。
少し前、リナにちょっかいかけようとして。
リナスにとある場所に飛ばされてしまった、この国の王子、クォーク。

そんなこんなで、リナを再び手に入れるべく対策を練っている王子の耳に。
コンコンコン。
「王子、火竜王の神殿から、使者がお見えになっておられますが・・。」
扉をノックする音と共に。
そんな声が聞こえてくる。
「??分かった。」
少なくとも、ここには、火竜王を信仰している神殿は、多々とある。
そんな中の一つから使者がくるのは珍しいことではない。
まあ、大概は美人の巫女などが使者にあてがわれて。
暗黙の了解で王子への献上品と成り果てているこの国の現状。
・・・・大概王子に散々もてあそばれたそんな巫女たちは。
そのまま、命を閉ざしたりしているのであるが。
そんなことは・・彼、クォークには知ったことではないこと。


「実は、われ等は・・リナ=インバースという人間を捜しておりましてな。
    あの者・・魔王を宿している可能性が高いのです。」
取りとめのない自己紹介の後。
人払いをして、のちに。
目的を切り出す人の姿をしているが。
その実質は竜であるという、その男性の言葉。
「・・・・ほう。すると・・・その人間を捕まえる、手助けをこの私にして欲しい・・と?条件がありますね。」
話しを聞いて目を輝かせているクォーク。
その目の輝きが怪しく光っているのであるが。
「条件?」
「ええ、条件です。あなた方ならば・・力を封じることも可能でしょう?
   力を封じたあの女性を・・・私の好きにしばらく・・そうですね。一週間くらい、させてくれませんか?」
その提案にしばし顔を見合わせ。
「そんなことならば、たやすいこと。」
「ならば、喜んで。すぐにでも手配をかけましょう。条件は・・・生きたまま・・でいいですね?」
死体と遊んでも面白くない。
やっぱり反応がないと。
そう思いつつ、にやりと下卑た笑いをするクォークに。
「では、我も神託として・・・あの者を捕らえるように。この辺りの人間達に下しておこう。」
それくらいの力は残っている。

リナ達の知らない場所で。
一人は、リナを殺すために。
一人はリナを手に入れるために。
共同作戦という名前の下・・・結束が成されていることを。
リナ達は知らない。



「リナ姉様!こっち!」
どういうわけか。
町や村に手配書が張り巡らされ。
その懸賞金の高さから。
リナ達を狙ってくる輩が多々と出始めてきていたりする。
「・・・・何か懐かしいわね・・」
こんな状況だというのに。
そういえば、あの時も・・。
あたし・・ガウリイといっしょに手配・・かけられたのよね。
かつて、まだガウリイと一緒に旅をしていたときの、一件。
そういえば、以前同じようなことがあった。
あの時側にいたのは・・・最も世界よりも大切な人。
・・今は、会いたいけど絶対に会えない人。
自分が側にいれば・・間違いなく。
自分が原因で・・彼を失ってしまうから。
そんな思いに駆られつつ。
リナスが取ってきた手配書の張り紙をみる。
町に入るのは、諦めて。
近くの森や山の中にある、小屋などで、夜を明かす毎日。

リナとリナス。
二人は、言われのない手配をうけて。
今、この辺りの人々から・・・追いかけられているのであった。

「・・・・・・・・・・・・本当に馬鹿なんだ・・。」
話しを以前、具間聞いていたリナスは。
リナが寝静まったのを確認し。
そんな、ヴラバザードの動向を。
空中に映し出しつつ、確認し視て。
あきれるようにとつぶやいているその姿が。
山小屋の前で見受けられてゆく。

以前。
聞いたことがある。
リナを・・リナ母様をその真実を知らずに。
自分の目的のためだけにその命を狙ったという、元火竜王ヴラバザードのことを。
それを教えてくれたのは。
確か、ガウリイ父様だったけど。
あと、ルナ。
そんなことを思いつつ。
軽く動向を確認し。
今後の対策を考えて。
やがて身震い一つ。
小屋の中にと戻ってゆく、栗色の髪に碧い瞳をしている少女。
少女の名前をリナス。
リナスレイヤー=トゥエル=ラナ=ナイトメア。

リナは知らないが。
未来からやってきている、リナとガウリイの・・・二番目に出来た娘・・・。

今リナスが来ているのは、過去の両親を助けるため。
消滅しかかっている本来、彼女がいる時代を助けるため。

だが、その事実を。
当然リナは知るはずもないのであった。


               ー続くー

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まえがき:
こんにちわ。
今回は先にワード打ち込みですv(こらこらこら!)
さて・・・・。ようやくリナ達の所まで・・いけるかな?(まてぃ!)

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あとがきもどき:
薫:・・・・とりあえず、よーやくリナ&リナス登場v
  次回で少しばかり刺客達に触れて・・・そーして。
  この大陸から逃げる二人(まて!)
  ちなみに。
  手ほどきしたのは・・ええ、誰もが知っているあの人ですv(かなりまて!)
  丁度仕入れに来ていたらしいのです(だからまてってば!)
   ・・・ちなみに。・・・・気付いたルナに・・・・思いっきり。
   制裁受けるヴラバザードは・・お約束?(爆!)
   んではでは・・・。
 
    ・・・・やっぱし・・時間は只今夜中の一時(涙)
    十二時までに打ち込めなかった(涙)

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