闇の行方 第10話
揺らめき、そして。
全てが無に戻り。
何もなくなってゆく世界。
「・・・・・・・・リナス様・・・。」
手をくみ、祈りを捧げる。
自分が知っている過去があって。
今がある。
だがしかし。
確実に、今に続く過去になるとも限らない。
他の場所ならば。
過去、現在、未来の干渉も簡単に出来るが。
あの世界のみは別。
いや、あの世界というよりは。
あの世界においてのみは。
すでにもはや。
あれほどあったはずの世界の数多なる光は。
完全に無と化し、消滅しているこの現状。
かろうじてこの場が残っているのも奇跡に近い。
宮殿の奥にある、この宮殿の主の部屋で。
今にも姿が消えかけている、栗色の髪の女性に金色の髪の男性。
― 今。
この現状を救えるのは。
― 過去に旅たった、今にも消滅しようとしている、二人の二番目の子供の活躍によって。
これからが決まるのは。
昔からそれはすでに分かっていたこと。
一番、過去のあの時代とつながりの深いこの世界。
・・すでに。
ここより続く未来の世界は。
・・・・もはや、完全に閉ざされている。
――過去に起こっている出来事を乗り越えてこそ。今がある。
「・・・リナ様・・・ガウリイ・・・・。あの二人は・・・まったくもう・・。」
過去の二人をおもいつつ。
溜息もつきたくなるというもの。
すでに。
もう、彼女のいる場所すらも。
その安定が不安定。
周りに無が押し寄せてきていたりする。
未来から過去への干渉は。
あまり望ましいことではない。
だが・・。
干渉せざるを得ない理由ということも。
また、実際問題として起こっているのもまた事実。
かつて、自分が経験したあの思い。
あのとき、未来の自分はこんな気持ちを抱えて。
待っていたのかと思い。
溜息一つ。
「・・・・どうか・・・」
願いは唯一つ。
・・・・・リナとガウリイが幸せになること。
彼女。
紫がかった青い髪をし、紅の瞳をしている女性は。
静かに。
今にも消えかけている、最も大切な二人をみつつ。
小さくつぶやいているのであった。
「ほう、姉妹で旅を?それはさぞかし、苦労してらっしゃることでしょう?
どうです?ここにずっといませんか?歓迎いたしますよ?リナさん?」
ねちりとした笑いを含み。
席についている、栗色の髪の女性に話しかけているのは。
この国の王子。
ぱくぱくぱく。
「・・・・・・は?」
がむしゃらに。
目の前にある料理の数々を平らげているのは。
栗色の髪に紅の瞳をしている女性。
といっても、優雅に食事マナーというかテーブルマナーに乗っ取って、綺麗に食べているのだが。
リナと呼ばれた女性の横にいるのは。
そのリナによく似ている少女。
歳のころは、十歳前後であろうか。
「申し出はありがたいんですけど。あたしは一箇所に留まれませんから・・。」
もし、一箇所で留まっていたら・・・。
間違いなく・・あいつに気づかれるから・・・。
会いたいけど二度と会ってはいけない人物を思い浮かべ。
悲しそうな顔をするリナ。
出会ってしまったら・・・もう、二度と。
自分が離れられないのが分かっているから・・。
そして。
そうなったら、自分のせいで。
彼の命が狙われるのがわかりきっているから・・。
誰よりも大切だから。
世界よりも何よりも。
・・・だから、離れた。
自分のせいで、彼が傷つくことを恐れ。
そしてまた。
置いていかれるのを怖れたために。
・・・・自分が側にいなければ。
彼は幸せになれる・・から・・。
そう自分に言い聞かせ。
リナは分かっていない。
自分が離れて、本当に彼が幸せになれるのか。
ということに。
そして。
自分がいないがために。
彼が傷ついたり、死んだりする可能性を。
完全に見落としているのだ。
リナが数日前に森の中で、助けた男性。
それが、この国の王子だったらしく。
そのお礼として、食事に招かれている、リナとリナス。
リナスというのは、リナによく似ている少女の名前。
「・・そうですか。でも、折角ですから。数日は滞在してくださいよ?
歓迎いたしますよ?むろん、豪華な食事もお付けしますから。何しろ命の恩人ですからね。リナさんは。」
そういいつつ。
舐めるように、リナの全身をみつめて言い放つこの国の王子。
クォーク。
その言葉に。
「じゃ、リナス、お言葉に甘えて。少し滞在しようか?最近ずっと移動してばっかりだったしね。」
そういって、隣にいる、一緒に旅をしている。
その都合上、妹として説明して旅をしている。
リナによく似ている少女。
リナスに話しかけているリナ。
リナは知らない。
このリナスが、まさか、未来からやってきている、自らの実の娘であるということを。
リナが知っているのは。
このリナス、どうやら、リナの姉のルナに言われて。
リナの側にいるように。
そういわれているということくらい。
「・・・・私としては早く出発したほうがいいと思うよ?・・・リナ姉様・・。」
ねちりとした視線をリナに浴びせている王子の視線の意味は。
まったくリナはその意味に気づいてないが。
リナスには理解ができている。
ここに留まってたら、リナ母様の身が危ないじゃないのよぉ!
そうかなり心で叫んでいるのだが。
だが、しかし。
まさか、この王子はリナ母様の躰を狙っている。
と馬鹿正直にいうわけにもいくはずもなく。
それとなく、遠まわしに出発を急ごうと促しているリナス。
「・・・ま、確かにそんなに長いできないわよね・・。」
なぜか。
ここ、最近。
あいつの気配をすぐ近くに感じるし・・。
・・・何で?
・・・ここにいるはずなんて・・ないのに・・。
そんなことを思いつつ。
最も愛しい人物のことを思い浮かべているリナ。
そして、ふと。
気がついたら、彼・・ガウリイのことを考えている自分に気づき。
あわてて、その考えを振り払い。
「とりあえず、外の雨がやむまで。ご厄介になりますわ。」
そういって、かるく微笑む。
外は、今。
大気の影響で。
かなりの土砂降りの嵐がやってきているのだ。
コンコンコン。
「・・・はい?」
部屋にと通されて。
夜着に着替えて。
今にも寝る用意をしていたリナの部屋に。
もう夜も遅いというのに。
扉がノックされる音。
「あ、リナさん?申し訳ありません。深夜、遅く。実はリナスちゃんのことで。お話がありまして・・。」
扉の向こうから聞こえてくる声。
「リナスの?」
その言葉に。
警戒心などまるでなく。
あっさりとドアの鍵を開けるリナ。
リナスは、ここの図書館にて。
誰もが解読不明であった本の解読を任されて。
というのも、その言葉を誰も読めなかったそれを。
リナスがあっさりと読んだこともあり。
その解読に追われて、今もまだ部屋にと戻ってきてはいない。
カチャリ。
扉を開けると。
そこににこやかに。
手に籠を持って立っているこの国の王子、クォークの姿が。
「あ・・あの?」
ゆったりとしたネグリジェに身を包み。
その白い肩が少しばかりのぞいている。
・・・ごくり。
少し薄い材質なのか。
透けて見える体のラインに思わずツバを飲み込む。
リナは、お腹の子供に極力負担を掛けないようにと。
妊娠が判明してからは。
いつも、ゆったりとして、体に負担のかからないような。
夜着を身に着けて寝るようにしているのだ。
そんな姿で。
首をかしげつつ、きょとんと言われれば。
まずたとえリナにその気がなくても。
普通の男性とかならば。
その気があると捉えてもおかしくはない。
「あ、これ、この国の名産でもある。とある果物の飲み物です。飲みながらでも話しませんか?」
そういって籠を差し出すその言葉に。
少し戸惑いつつも。
「とりあえず、立ち話も何ですから。どうぞ?」
・・・・・・・警戒心、まるでゼロ。
普通、女性が一人いる部屋に。
男性を招き入れるようなまねは。
・・・・普通ならばしないのが当たり前。
・・・だが。
リナは。
その手の事に関しては。
かなりとことん、天然記念物よりもかなり貴重なほどに。
・・・鈍いのである。
カチャリと彼が鍵をかけた音に。
リナは気付いていない。
とりとめのない雑談が続く。
「・・・あ・・あの?」
「まあまあ、おいしいでしょ?これ?」
いつになったら。
本題にはいるんだろ?この人?
そんなことをおもいつつ。
コップに注がれるジュースを飲み干しているリナ。
リナスのことで話しがあると言うことだったのに。
そのことにはまるで触れないクォーク。
・・・・・・あれ?
ふと。
リナは、とりとめのないそんなクォークの話しを聞いている最中。
ふと、目眩に襲われる。
「・・・・・あ・・。」
視界が霞む。
何で?
・・・何か・・・・気分が・・・?
そうぼんやりする思考の隅で。
そんなことをリナは思うが。
そのまま。
テーブルに突っ伏すように倒れこみ。
床にどさりと倒れるリナ。
「・・・ふむ。ようやく効いてきたな。この果物・・催淫効果が含まれているからな・・ふふ。」
そんなリナをにやりと見つめ。
そのまま。
倒れたリナをベットに運ぶクォーク。
「・・・・さて。じっくりと味わうといたしますか♡」
一度関係をもてば。
それでこの女性は自分の女として。
ずっと自分の側に・・・。
などと、とことん自分勝手のことを思っているこの男性。
「・・んっ・・・ガウ・・リィ・・・・。」
ぷちぷちと。
前ボタンを外してゆく。
眠ったままで、一人の名前を呼んでいるリナ。
リナにとって、一番何ものにも変えがたい。
最も大切な人の名前を。
その白い肌が。
ゆっくりと外気に触れられてゆき。
「・・・ごくっ。やっぱり、すごい綺麗な肌だな・・。」
軽く前をはだけさせて。
喉を鳴らしつつ。
そして。
いそいそと。
自らの服も脱ぎにかかる。
ドン!!!!!
「・・・・・・な゛!?」
ズボンを脱ぎかけたその刹那。
見えない何かに突き飛ばされて。
思いっきり壁にと叩きつけられるクォーク。
「リナ母様に何やってるのよぉぉぉぉぉお!!!」
あ・・・危なすぎるぅぅ!
ふと。
何か異様に、自分を足止めしたがる、数名の動作に気付き。
そのまま。
何か胸騒ぎを感じて。
リナのことを視てみると。
とんでもないことに。
リナの服をはだけさせて。
のしかかろうとしているこの国の王子の姿。
あわてて。
すぐさま。
一目があるにも関らずに。
瞬間移動して、リナスとリナに割り当てられている部屋にと、一瞬のうちに移動して。
思いっきり、今にもズボンを脱ぎ去り。
ベットに上がろうとしていたクォークを。
問答無用で壁にと叩きつけているリナス。
「・・・・母様に何しようとしたのよ・・・。」
ざわり。
その低い声に伴って。
周りの空気そのものが一瞬のうちに凍りつく。
彼は動かない、動けない。
たかが、目の前にいる、十歳程度の女の子に。
威圧されて、動くことが出来ないでいるのだ。
「・・・・母?」
ふと。
リナスがリナのことを母と呼んでいるのに気付いて。
そんなことをつぶやいているが。
「母様に触れようだなんて!!!身の程知らずもいいところよ!!!!」
ドン!!
そういいつつ。
リナスの叫びとともに。
そのまま、またまた吹っ飛ぶ彼。
「・・・・んっ・・・・。」
そんな横では。
未だに自分が何をされそうになっていたのか。
まったく気付くことなく眠りこけて、
身じろぎしているリナの姿がベットの上で見受けられていたりする。
「・・・・本当だったら。殺しても飽き足らないけど・・・。」
だがしかし。
相手は一応、この国の王子。
下手に殺したり、行方不明などにさせては。
それはリナに迷惑がかかる。
そういうのは、リナスは望まない。
「とりあえず、制裁は加えてもらうからね・・・。」
ひくくそうつぶやき。
次の瞬間。
リナスが何かをつぶやくと同時に。
その場から。
クォークの姿が掻き消える。
「・・・・まったく。・・・母様、危機感なさすぎ!!!(涙)」
「・・・ガウリイ・・・・。」
夢の中で、ガウリイの夢をみて。
涙を流しているリナをみつつ。
軽く溜息一つ。
「・・・・・・これからは絶対に、側・・・・離れないようにしとこっと・・。」
そういいつつ。
はだけられているリナの服を整える。
リナは自分が何をされそうになっていたのか。
当然のことながら。
まったくといっていいほどに。
欠片も気づいてないのであった。
『き・・きゃぁぁぁぁ!痴漢よぉぉぉ!?』
城下町のその一角。
一般用に儲けられている、銭湯で。
女性の悲鳴が巻起こる。
女湯というのにも関らずに。
そこの脱衣所から、風呂に入ってきた男性の姿をみて。
しかも。
全裸で・・である。
当然のことながら。
すぐさま通報を受けた兵士達が駆けつけて。
問答無用でお縄になっている男性の姿が。
その彼が。
この国の王子であるということを。
逮捕した兵士達が知り。
かなりあわて始めるのは。
朝になり、彼らの上司が出勤してきたときであった。
「うーん、よく寝た!あれ?あたし・・いつねたんだろ?」
それすらも覚えてないリナに。
「あ、リナ姉様。もう外晴れたし。早く出発しない?それと・・。リナ姉様?部屋に男性入れちゃ・・駄目よ・・。」
涙目になって、言ってくるリナスの言葉に。
「・・そーいえば、結局、あの王子の話し・・何だったんだろ?」
なぜか、話しの途中から・・記憶がないのよね。
あの王子いつ部屋からでていって。
あたしもねたんだろ?
そんなことを思っているリナなのだが。
「え?何で?ただあんたのことで話しがあるっていわれて。話しを少しばかりしていただけよ?
・・途中から記憶ないけど・・。」
そういいつつ、首をかしげているリナに。
「・・・あのね、リナ姉様・・も・・いい・・。」
まったく分かってないリナに。
溜息一つ。
「とりあえず、早いところ出発しましょ。」
とりあえず、ここに長いは無用とばかりに。
リナに切り出すリナス。
「そね。」
何か、あいつの夢・・・みちゃったから・・。
・・・・じっとしてたら。
会いに行きたくなるから・・それは・・駄目だから・・。
夢の中で。
いつもずっと隣にいた最も大切な人。
・・今は側にいない。
それは、リナ自身が望んだこと。
リナが自ら彼から離れたのだから。
― 彼を失うことを何よりも恐れた結果 ―
見れば、外は透き通るまでに青空が広がり。
すでに出発日和。
そのまま。
国王に挨拶だけすまして。
どこか、なぜか姿が見えないという王子には。
一応お世話になりました。
という伝言だけ兵士に言付けて。
リナとリナスは。
再び旅の空にと出発してゆく。
リナとリナスが城から出て、しばらくの後に。
王子が痴漢の罪で捕獲されている。
と、王室連絡が届いたのは。
リナとリナスがすでに。
数キロ先に移動したときのことであった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・やっぱ・・育て方・・間違った?(汗)」
リナスから、受けた報告で。
少しばかり汗を流している紫がかった青い髪の女性。
「と・・とりあえず。早いところアクア、復活させましょう・・・。」
いつまた。
あの馬鹿が。
リナ様にチョッカイかけるとも限らないし。
そう思いつつ。
彼女・・ルナは。
その手に、水色の球(オーブ)を片手に。
ぶつぶついいつつ。
とりあえず、この地での目的を果たしたので。
次なる目的地にと向かって。
一瞬のうちにと移動してゆく。
ルナの目的は。
かつての戦いにおいて。
その物質化する力をばらばらにとして。
散らばっているとある存在の欠片を集めて。
復活させること。
先に彼女の復活を果たしておいて。
それから、滅びの砂漠にいって。
あいつの後任を呼び覚ますのでも。
遅くはない。
そう判断してのるなの行動。
ルナは。
この地では。
カタート山脈と呼ばれている。
かつては、霊山であったはずのその場所たる一角にと。
足を運んでゆくのであった。
-続くー
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まえがき:
こんにちわぁ。
とりあえず。何を考えているのかな?私は・・・・。
最近、なぜか。疲れているせいか・・。
小説を打ち込む気力がなくなってきかけている私なのです・・・・。
・・・ええと・・・。
前回の9話を打ち込んだのが・・・・。
2002年の十月・・・。今・・・・2003年の4月・・・あうあうあう・・(汗)
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あとがきもどき:
薫:・・・ちなみに、前回。
今回でアクア復活といいましたが。
気分屋さんなので(こら!)
アクアの復活の後に持っていっていたはずの。
リナたちの話しを先に持ってきたりして・・(まて!)
ま、時間的にはリナ達の方が先だしねv(笑)
この王子。
・・・・懲りません(汗)
ま・・それは。
・・・・・おそらく次回かその次にでも触れるかと・・。
・・・・腹立ち紛れにんな馬鹿なことをするなよな・・。(汗)
んではでは・・・。
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