まえがき:
こんにちわ♪今回から、リナスちゃんの登場です♪ではでは♪

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     闇の行方 ~第6話~


「ガウリイ?」
一言目がそれだった。
つかつかつか。
ばしぃぃぃぃぃんん!!!!
こぎみよい音が響く。
彼の頬に鈍い痛みが走る。
「馬鹿!!馬鹿!!どうして・・どうして!!」
どうして、リナ様を引き止めなかったのか!
そういいたいが、彼もまた、ひどく傷ついているのがその表情でわかる。
「あ・・あの?始めまして・・リナさんのお姉さん・・ですよね?」
ルナの真剣な表情に押されていたアメリアが声をだす。
「え?あ・・・ああ。確か・・彼方たちは・・そう・・・リナの・・・・。」
静かにアメリアとゼルガディスを見つめるルナ。
「ルナ義姉さん、リナの居場所・・何か何でもいいです。・・・教えてください!!―おいかけます!」
強い決心のその瞳。
リナがいないと、生きていかれない。
それは、オレの本心。
だから・・何がなんでも、リナを見つけ出す!
ガウリイのつよい決意。
リナの決意を見逃していた自分の償い。

ガウリイとアメリア、ゼルガディスは、ゼフィーアにやってきていた。
少しでもは早く、リナの手がかりを得るために・・。

「―ガウリイ=ガブリエル。剣を取りなさい。本気で稽古してあげる。
  ―リナを悲しませることにならないように。私に勝てたら・・リナの居場所・・教えてあげる・・。」
きぃぃぃぃんん・・・。
ルナがその手に、紅い剣を取りだす。
ガブリエル?
どこかで・・聞いたような気がする・・・。
ずっと・・・昔に・・その名前は?
ガウリイの頭のなかで、何かのイメージがふとうかび・・瞬く間にかき消えた。
― リナの笑顔が。
― 泣き顔が。
「あ、アメリアにゼルガディス・・だったわよね?・・・わざわざ尋ねてきてくれて・・ありがとね。」
ルナが呆然としている二人にいう。
「―スポット!!この二人、家まで案内しといて!!」
ルナがいうと、銀色に近い、獣人がでっかい首輪をして、あらわれる。
「ディルギア!?」
ぷ・・ぷくく・・。
思わず笑うゼルガディス。
「ゼルガディス!!笑うな!!」
抗議するスポット。
「とーとー・・ペットに成り果てたか・・・ぷくく・・。」
まあ、鎖と、手綱、それに、首輪。
どうみても、でっかい犬にしかそれはみえない。
「いーわね?ちゃぁぁぁんと、家に案内するのよ?分ったわね♡スポット♡」 
「はい!!!姐さん!!」
ルナに冷たい瞳で見つめられ、だくだく冷や汗かいてるスポット。
かつて、ゼルガディスとともに、赤法師の元で働いていた獣人。
「私は・・・ガウリイを・・試すから・・。」
ひたり。
ガウリイに剣をつきつけるルナ。
本気のまなざし。
―オレがたよりないから?だから、リナがいなくなったのか?
―だったら・・・全てをかけて、リナを守れるように。
「こちらこそ・・・・。お願いします。オレは・・・リナをあきらめるなんてしません!!」
きぃぃぃぃぃぃぃんんんん・・・・・・。
音だけが・・響いてゆく・・・・・。
リナの居場所を・・手がかりを。
そして・・リナの気持ちを聞きだすまでは・・あきらめない!
婚約した当時の、生易しいものじゃない。
本気のルナ。

手合いを重ねるたびに、ルナの腕はどんどんあがってゆく。
すでに、ガウリイの剣技は、竜神としてのルナをしのいでいるのだが。
ルナが本気になっているのは・・・補佐官として、・・・そして、リナの親友として・・。

本気のルナ義姉さんは・・すごかった。
だけど、俺は努力を重ねた。
手合いをするたびに、ルナ義姉さんの腕はどんどんあがっていっている。
剣を交わらすたびに。
どうやら、俺にあわせて、力をあげていっているようだが・・。
・・・だが、それでは駄目なのだ。
― 本気の・・・全開の力のルナ義姉さんに勝ってみせる。
リナのために・・・・。
そして・・・・オレのために・・・・・。

ガウリイとルナ。
二週間にわたり、激しい攻防が繰り広げられる。
ルナは、衝撃で害が及ばないように、結界の内でそれを行っているのだが。
ガウリイは、結界を張れるルナに、すこしも疑問が浮かばなかった。
気配から、このルナが、人間でないというのは・・・。
・・・・であったときに分っていたから・・・・。
ルナのもつ、気配。
それは・・・赤の竜神としての・・フレアドラゴン・スィーフィードとしての、この世界を任されている光の・・神。
今のルナの気配は・・深淵の補佐官アビス・ラズ・ポートのもにのなっているが。
ガウリイは・・この気配もまた。
どこかで・・・覚えがある気がしていた・・・。
そして・・記憶の端に・・なつかしい・・気配もまた。
たしかに。
ルナから感じ取っていた。
だが・・まだ、完全には、全てを思い出しては・・・いない。
ただ・・気配が・・懐かしいといった感覚だけ・・・。


「リナ=ガブリエフさん♡」
「・・・はい?」
「依頼、いいですか?」
「何?変なのは却下!!!」
あたしは、今別の大陸で旅をつづけている。
一人で生きていくのに、流れの便利やみたいなものをしながら。
内容によっては、さまざまな依頼をこなしつつ。
それでも一箇所には留まらず。
そして、毎晩のように、盗賊を退治しつつ。
「そ~いうんでなくて♡その身体で一人旅する気ですか?♡」
「―・・・・・・は?」
あたしの目の前に、いきなり、依頼いいですか。
とすとんと座った少女。
歳のころなら、七歳前後。
にこにこと笑っている。
なんとなくあたしに似ている。
栗色の髪に・・・・。
・・・・・だけど、瞳の色はあいつと同じ色の・・・・。
「―赤ちゃん・・いるんでしょう?」
―――――!!!!!!!!!!!!
そう。
たったの、一回の関係。
まあ、その一回が何日にわたっていたかは・・別としても//
・・・・何回・・?/////
今だに夜になると、あのときのことを思い出す。
ガウリイが隣にいなくて、寂しくて・・・寂しくて・・・・。
何回、枕をぬらして、飛び起きたことか。あいつと別れてから、度々見る夢。
それも・・・毎回・・・あいつが・・・あたしを庇って死ぬ夢・・・・。
いや!!!!。
そんなのは・・いやぁ!!!!。
だから・・・・あたしは・・・・あいつには・・・会えない・・・。
会いたいけど・・・・会いたいけど・・・・・。
ガウリイが死ぬなんてことになるのが・・いやだから・・・・。
旅をしていても、隣にいるはずの瞳がなくて。
心にぽっかりとアナが開いているようで。
―それでも。
これはあたしの決めたことだから・・・。
あのときの15日の行為によって・・・・。
あたしには・・・命が宿っていた。
あいつとの・・・一番大切で、最も愛している人・・ガウリイとの・・子供が・・・。
でも、どうして、この子が、目の前にいる女の子がそれを知っているの?
あたしは、驚く。
七ヶ月に入っているとはいえ・・・。
普通でいくと、まだどうやら、二ヶ月か三ヶ月程度しか、あたしのお腹の子供は・・成長していない。
この様子だと、多分・・一年で生まれることは、ないはず。
二年・・いや、三年くらいはかかるかもしれない。
それほどまでに、あたしの肉体の時間率は・・変化しているから・・・。
見た目は、わかるはずもない。
全然お腹もでていないのだから。
それに、オーラもあたしは、完全に消している。
あいつら・・魔族や神族にも気づかれたらやっかいだから。
ゆっくりと流れる人としてのあたしの時間。
だから・・身ごもり期間も・・人とは・・違う。
「ルナさんに、頼まれました♡リナさんの隣にいてあげてくださいって♡」
にこにこと笑っている少女。
――え?
姉ちゃん・・が?
「リナさん、一人だと、弱いから・・・・。
  ・・・それに、身ごもっていて、何かと大変だろうからって♡……本当は、ルナさんがきたかったらしいですけど♡」
あたしをしっかりと見つめたままで、にこにこという少女。
――お願い。
その瞳で・・あたしを・・見ないで・・・。
まるで、あいつそっくしのその瞳で・・・。
「・・・・・姉ちゃん・・・・(汗)
   他に何か姉ちゃん・・いってた?」
「素直にならないと、永遠に後悔するわよ。―とだけ。」
あたしをにっこりと見つめたまま、
すごいにも、あたしと同じ量の料理を頼んでいるこの子。
――解ってる・・分ってるわよ・・・・。
後悔したくないから・・・だから、あたしは・・・今、ここにいる。
・・・ガウリイに見つからないように。
離れた土地で。
常に移動を繰り返しながら。
自分に、プロテクトをかけて、完全に魔族達からも気配を隠して。
一箇所に長く留まると・・あたしが普通の人ではないとわかってしまうから。
成長しない身体。
成長しても・・人とは大きく異なる。
二十歳の姿のまま・・・止まったようになっているあたしの姿・・・。
まあ、この辺りははっきりいって、魔法が発達してないから、リカバディやファイアーボールといった程度の呪文でも・・。
十分に生きてゆける。
「それに♡リナさん♡一人で、二人の赤ん坊、育てるの大変でしょう?♡」 
にこにこにこ。
――な゛!?
「ちょ・・・ちょっと!?!?何であんた、あたしが双子身ごもっているのを知っているのよ!!!!」
いきなり、図星を言い当てるこの子。
・・・・一体・・何者!?
「解りますって♡ルナさんから聞いてますし♡」
もぐもぐもぐ。
たべながらいっている少女。
・・・・・姉ちゃん・・(汗)
・・・・まさか、ガウリイにまでいってないでしょうねぇ・・・。
とゆーか・・・・姉ちゃん・・・あたしが妊娠してるの・・・。
あのとき・・・気づいてたの!?
姉ちゃんともあれから会ってない。
きっと・・あいつがいるかもしれないから・・・・。
今・・あたし・・・あいつの姿みたり・・・声を聞いたりしたら・・・・。
きっと・・・・。
耐えられなくなって・・・・あいつに会いに行ってしまうから・・。
そうしたら・・・二度とガウリイと離れられなくなってしまうから・・。
「私の依頼とは、リナさんと旅をすることです♡――だめですか?あ、費用は、自分のは、自分で持ちます♡」
にこにこという少女。
あいつと同じまなざしで、あたしを見つめながら・・・・。
あたしは・・・一人で・・・。
そういいたかった。
―けど・・・・
なぜだか、この子からは、あいつと・・似た感じを受けたから・・・。
あいつと同じ・・・・碧色の目・・・・・。
――ふっ。
結局、何だ、かんだといっても・・あたし・・寂しかったのかもしれない・・・。
この子といると・・・少しでも・・・寂しくないかもしれない・・・。
あたしは・・そう思ってしまった。
――だから・・。
「費用はあたしが出すわよ。――それに、あんたを追い返したら、姉ちゃんにどやされるし・・ね♡」
あたしの言葉に、ぱっと明るく笑う少女。
・・あ。
なんか、笑った感じが、あたしや・・ガウリイに似てるし・・・。
なんか他人って気が・・しない。
「どうも♡リナさん♡」
しっかし・・・・。
この子・・あたしも人のことは、いえないけど・・・。
よく食べるわネェ・・・・。
すでに、この子のお皿は・・十を軽く切っている・・。
くす。
「・・で?あんた・・名前は?」
あたしの言葉に。
「リナスっていいます♡よろしく♡リナさん♡」
「リナ・・ス・・・ね。」
あたしは、この子とともに、一緒に旅をすることにした。
あたしの旅は・・一人から二人連れになった。


私は、母様のこんな瞳・・みたことがなかった・・。
いつも、母様は・・笑っていた。
父様の隣で・・・。
気配を感じ取るのは、とても私には簡単。
だから・・小さな村の食堂で、母様が食事をしているところに、私は、入っていった・・・。
母様の瞳は・・・悲しみに満ちていた。
ねえ。
母様。
素直になって?
でないと、母様・・永遠に後悔するよ?
未来で消えかけている母様と父様の姿。
ここにきて、それが何を意味するのか・・。
母様の様子をみて・・私はわかった。
父様を想ってなのだろうなのだけど・・・。
母様・・・母様は父様が隣にいないと・・駄目なんだって・・・。
・・・どうして気づかないの?
まだ、父様は、母様と対をなす・・包む存在には、本質からなってなくても。
すでに、母様にとって、父様は、それ以上の存在になっているということに。
エルお母様がいってた。
リナお母様の力をつかって、ガウリイお父様の魂をリナお母様の、安らぎの存在とするにあたって。
――もし、二人の気持ちがすれ違うと・・・。  
――間違いなく・・父様の魂は・・永久消滅・・。
でも・・それでも・・・。
父様は・・きっと、エルお母様の申し出を受け入れるはず。
今、この時代で、完全に意識を閉じている・・リナお母様の力の封印を、みつけだすはず。
エルお母様から見せられたビジョン。
リナお母様の想いを・・・勘違いした、父様が、自害するビジョン・・。
そして・・・母様が消滅する・・ビジョン・・。
私は・・・・私は・・そんなの望まない!!
私の存在がなくなる。
とか、そういうんでない。
私は・・父様と、母様には・・いつも笑っていてほしいから・・・。
ねぇ?
母様?
母様が、寂しくないように・・・・。
私が、ずっと側にいるから・・・。
母様が、ちゃんと、自分に素直になるまで。
だから・・真実の道をみつけて?
それまでは・・・こんな私でよければ・・ずっと側にいるから・・・。
母様が少しでも・・寂しくないように・・・・・。
ね?リナお母様?


「・・・・よく、続くな・・。」
「・・・・ガウリイさんも必死ですね・・。」
食事もとらずに、手合いをしている二人。
そんな二人に、ルナの両親がお茶を差し出してくる。
「まったく・・。リナを泣かせるなんて・・だから、リナとの婚約を認めたくなかったんだ!」
今だに言っているリナの父。
「彼方、本気でいってるの?リナがガウリイさんから・・・放れた理由・・。・・・分っているんでしょう?」
リナの母であるセシルが夫をちらりとみる。
「分っているけど!!」
ぐいっ。
そのまま、一気にお茶を飲み干す。
リナの気持ちは・・痛いほどにわかる。
分かるから・・・だから、何よりも、ガウリイが許せない。
どうして、無理やりにでも捕まえておかなかったのか・・と。
そして、それ以上に許せないのが・・・。
「ふ・・・・・ふふふ・・・・・・。魔王のやつ・・・・」
両親もまた、ルナと同じ気持ちであるがゆえに。
今は、弱体化し、物質干渉の力もない。

それでも・・・。
リナが生まれたとき。
ルナが叫んだあの言葉。
あれが・・何を意味するのか。
問い詰めて・・問い詰めて・・・・。
自分達の娘の真実を知ったときの・・・・あの驚き。
ルナが竜神だとは知っていた。
そういう契約だったから。
生まれる前に、そういう夢で啓示があり、
それでもいい?と聞かれていたから。
信じられなかった。
いや、信じたく・・なかった。
・・・だから、普通に育てていた。
・・・・なのに。
リナが、ガウリイから離れた。
そう、ルナから連絡を受けたのは・・三ヶ月前。
ガウリイが、ゼフィーリアにたどり着くまで、三ヶ月かかったのだ。
何しろ、その途中にも、ガウリイの命を狙う、輩は多々といた。
上からの命令がなくても、以前の命令のまま。
それゆえに、たどり着くまでに時間がかかったのだ。
ガウリイ達は。


リナが生まれたあのとき・・・。
「いやぁぁぁ!!!なんであいつがリナ様の中にいるのよぉぉぉ!!!!」
半狂乱で泣き叫んでいたルナ。
追い出そうにも・・魔王は、リナの精神の一番弱い部分にもぐりこんでいた。
それは・・ガウリイを想う気持ちの部分に・・。
転生し、記憶がない状態でも、彼を想う心はいつも強く。
それゆえ、それが弱点でもあった深淵なる真の王。
そこをつつくこと。
それは・・・閉じている記憶を開放してしまう、きっかけになることに他ならない。
今の状態で・・・開放すると・・。
まず、間違いなく・・。
リナの精神は・・どこかに歪が生じるのが分かっていたから・・。
ルナは、いろいろと手をうってみた。
だが・・・精神の一番奥深い部分ともいえるところに・・
身を潜めている魔王を取り出すことは・・できなかった。
「どきなさい!!ルナ!!」
ルナの悲鳴とともに、現れた、金色に輝く女性。
金色の光に包まれても・・・。
「・・・駄目だわ・・。あんまりやると・・・リナの精神が・・。」
それほどまでに、強くガウリイを想っていたリナ。
金色の王の力も及ばないほどに。
それと知らずに・・そこを封印解除の原点としようとしていた魔王。
だから・・・。
ルナと金色の王、二人掛りで、肉体的と、精神的、できうる場所まで、魔王を封印した。
封印するしか方法がなかった。
強くやれば、できないことはないのだが。
それをやってしまうと・・・リナがリナでなくなってしまうがゆえに。
予兆は・・あった。
リナが金色の王の完全なる召喚呪文を唱えたときに。
―まずい。
と、思った。
だから・・・一度、混沌の世界に、肉体ごとつれていった。
あのときは・・ガウリイが追いかけてきて、
それで、何とか、リナの精神は・・保てたがゆえに。
だから、そのまま、二人を世界に戻した。
しかし・・・・。
リナの知り合いでもあった、ルークの身体と精神と同化した魔王は、リナ達に戦いを挑み・・。
リナは・・・完全なる賢者の石でもある・・魔血球デモンブラッドを飲み込んでしまった。
それでなくても、精神的に弱っていたリナ。
知り合いが魔王になった。
という部分で。
そして・・・その波動は・・こともあろうに、ルナの封印を破るには、十分だった。
そして・・その余波で・・金色の王の封印すらも・・・。
それは、ガウリイの大怪我。
という点で・・爆発し。
潜んでいた魔王が・・姿をみせた。
リナの最も弱い部分につけこんで。
部下ていどで!
と、金色の王とルナは、思うけど。
いる場所が場所だけに・・手がだせない。
そのはがゆい状況の中でも・・唯一の安らぎが。
ガウリイの存在。
彼がいる限り・・リナの精神は・・安定しているがゆえに。
でも・・・。
リナは、自分のせいで、ガウリイが殺されるのをおそれ・・姿を消した。
それが何を意味するのか・・・。

下手すると、完全に、リナの精神は・・・壊滅し、破壊してしまうという事実。
ガウリイを想うがゆえに。
彼がリナにとって、一番何よりもかけがえのない存在がゆえに。
彼を失うこと―それは・・リナの精神を破壊するに十分たる理由がゆえに・・。

「・・・二ヶ月・・たちますよ?(汗)」
アメリアが汗を流す。
未だに、ガウリイとルナは戻ってこない。
手合いをしているのは・・風にのる、音でわかる。
その間、ルナの母である、セシルは、ルナの代わりに、バイトをし。
アメリアとゼルガディスが、いやおうなく、
インバース商会の手伝いをするハメに陥っているのだが・・・・。
「・・・・何も食べずに・・大丈夫なのか!?あの二人は・・・!?」
心配しているゼルガディス。

きぃぃぃぃんんん・・。
剣が手から落ちる。
ルナの剣が。
「・・・できるようになったわね。」
静かに、それでいて、うれしそうにいうルナ。
ガウリイは・・・二ヶ月の間に、ルナから、全て一本とれるまでになっていた。
本気の・・全力のルナに。
「リナを守るためですから。」
当然のようにいうガウリイ。
ふっ。
ルナから優しい笑みがこぼれる。
今の彼なら・・大丈夫かもしれない・・・。
もう・・・チャンスは・・あまりないから・・・・。
あまりにも、自害をし、傷ついているリナの精神。
そして・・ガウリイを失う怖さで、何よりも傷ついているリナ。
ここ、百五十億兆万年、ずっと・・そうだったがゆえに。
いつも、ガウリイはリナを庇って・・死亡。
それは、人のごたごたであったり。
反逆者の手によったりはしたけれど。
それに耐えられないリナは・・ガウリイを追って・・自害。
彼とともに、再び、同じ輪廻に乗るために。
今回は・・はからずとも、すでに、二人の気持ちは・・通じ合っている。
すでに、リナはガウリイの子供まで身ごもっている。
ただ・・想いのすれ違いが・・別れという結果になっているだけ。
リナがガウリイを守りたいがゆえに、出した結論が・・間違っていただけ・・。
今回を逃すと・・二度と、もう・・・。
リナ様は・・・リナ様でいられない。
それは・・一番よくルナがわかっていた。
今に続く未来の世界。
そして、今の状況のままだと・・たどり着く未来も。
金色の王の手により、全て視せられているルナ。
だから・・・ルナは、ガウリイを鍛えた。
二度と、過去のようなことにならないように。
そして、彼の想いを確かめるために・・。

リナとガウリイとが別れ離れになってから・・・五ヶ月が経過していた。

「ついてきなさい。」
ルナがガウリイを案内する。
まるで、迷路のような、淡く光る空間に。
その中から・・瞬く間に、光に包まれるガウリイ。
たどり着いたのは、どこかの宮殿らしき場所。
『・・・・つれてきたの?ルナ?』
声がする。
どこかで・・聞いたことのある声が。
「・・あ・・・あんた・・は?」
たしか、この女性には、あったことがある。
・・・・そう。
確か、リナを追って入った空間で・・・・。
それと・・リナの身体を乗っ取っていた・・あの・・・。
ガウリイは目の前の金色に輝く絶世の美女に目を向ける。
「ええ、すいません。勝手な真似をして・・・でも・・。」
ルナがいう。
『ふぅ・・・。ま、いいわ。また、リナに自害されるよりは・・ね。』
リナが自害!?
どういうことだ!?
「リナに何かあったのか!!!!?」
不安がよぎる。
果てしなく。
「エル様・・・」
静かに前を見つめるルナ。
彼女の前には・・金色の王・・エルが佇んでいた。
本来、深淵なる真の王がいるべき王座に・・。
『―まあ・・今のままだと・・ね。』
ふっと、寂しく笑う金色の王。
『ガウリイ=ガブリエル。その方の素直なリナに対する気持ちをいいなさい。』
凛とした声が響く。
その威圧感よりも、何よりも、リナのことを一番に想うガウリイ。
だから。
「――オレは、リナと永遠に一緒にいたいです。――もし・・・リナがオレを拒むのなら・・。
  ――オレは、生きている意味も、存在している意味もありません。」
自分がそうでも、リナに必要されてなければ、自分は存在している意味がないのだと。
自分の素直な気持ちをいうガウリイ。
確か、リナがいっていた。
この金色に輝く女性は・・全ての万物の母なのだ・・と。
雰囲気で、リナの身体を乗っ取っていた、あの存在と同じだと分かるから・・。
『永久に・・消滅してもかまわない・・と?』
「オレの望み、そして、希望は、常にリナに笑っていてほしいことです。もし、それができるのなら・・オレは・・。」
ふぅ。
どうして、ここまでに想いあっているのに、気持ちがすれ違い続けるこの二人。
『あんたの望みは分かったわ。・・ならば、この空間の中にいるはずのリナの一部をみつけてごらんなさい。』
ふわ。
金色の王が手を伸ばす。
その先に、深淵なる闇の空間が広がる。
『・・・・この中に・・・『リナ』がいるわ。・・・・みつけられる?あんたに?
  このあたしの呼びかけにも応じない・・あの子の本体、そのものを?』
・・・・?
意味が分からないガウリイ。
だけど、リナの気配は確かに。
この深淵の闇の中から感じるから・・・。
「リナが・・この中にいるんですか?」
『正確には・・リナの精神の核・・がね。あんたがいっている・・リナとは・・違うかもね。』
「何であろうが、リナはリナです。・・・・いきます!!」
リナの肉体であろうが、魂であろうが、リナの精神であろうが。
そんなものは関係ない。
全てがリナであるのだから。
何のためらいもなく、その空間に入ってゆくガウリイ。
「・・・エル様?」
ルナが聞く。
『ルナ・・あたしの力では・・彼をリナの闇の安らぎにすることは・・あたしの力だけでは・・駄目なのよ・・。』
簡単に、普通ならできる。
だが、この世界は・・空間は、全てをリナに任せているから。
自分が手を出すと・・かなりな歪みが生じるから。
本来、普通であるはずのガウリイをリナの安らぎの存在にしようすると。
自分の力と・・そして、今、完全に意識と力を閉じている・・。
リロード=ナファレス=ドナ=ナイトメアの力も必要なのだ。
万全を期すためには。
しかし、完全に力を封じている今の状態。
あの力の結晶を・・ガウリイが持ってこれるのか・・。
かたくなに、全てを閉ざしているリナの心。
姉であり、創造主である、自分の呼びかけにも、応じないほど。
一つの、オーブに全てを封じているリナ。
その中で・・リナ・・深淵なる真の王は・・眠りについている状態。
精神のみが、ガウリイを追いかけて、人として、転生を繰り返しているのだから・・。
オーブがあれば、仮にでも、存在を変えることは、たやすい。
少し、それから力を取り出せばいいのだから。
しかし、一度でも、仮に存在を変えてしまうと・・・。
もし、リナにガウリイが拒まれたり、少しでも、疑ったりすると。
仮の状態であるガウリイは・・完全にその存在そのものが消滅する・・危険なかけ。
しかし、かといって・・・。
このままだと・・・。
この世界は・・リナは完全に消滅してしまうのが分かっているから・・。


ガウリイが、深淵の空間に、入っていってしばらくして。
「エルお母様!!!!!」
栗色の髪に、碧瞳の少女がいきなり、淡い光とともに、出現する。
「リナお母様が!!!ガウリイお父様が!!!」
泣いている少女。
「リナ・・ス・・様?」
とまどうルナ。
未来にいるはずの、リナの二人目の子供。
『・・・とうとう、消えかけたのね?そっちの世界が?』
分かっている金色の王。
「―!!!未来が!?」
それが何を意味するか。
最悪の結果に向かっている前兆に他ならない。
ルナが悲鳴を上げる。
「エルお母様!?一体、何が起こっているの!?」
すがるように、聞く、面影はリナとガウリイによく似ている少女。
『―・・・・リナス・・・・視なさい・・・・。』
静かに、リナスの額に手を当てる。
リナスの脳裏に・・・。
風景が広がる。
父である、ガウリイの自害・・。
それを追って・・・母が自分を責めて・・自分の全てを呪って・・自害。
瞬く間に、かき消える世界そのもの・・・。
何もない、状態で、金色の王のもとに戻り行く・・世界。
存在も、魂も、精神すらも、一つも残らずに。
全てが・・始めから何もなかったかのごとくに。
「い・・・いやぁぁぁぁ!!!!!」
リナスが頭をかぶる。
今のままでは、確実に現実となる未来の風景。
それを金色の王は、視せたのだ。
はぁはあ・・・・。
「父様は!?」
「ガウリイなら・・・・。今・・・リナ様の・・精神を探しに・・・。深淵なる闇の空間に入られました・・」
リナを想う心が強いゆえに、肉体のまま、そこでも、保っているガウリイ。
純粋なる想いであるがゆえに。
肉体も、精神も、全てが純粋にリナを強く想っているがゆえに。

昔。
ちらっと聞いたことがある。
父様は、もともと、普通の精神・・存在にすぎなかったと。
でも・・母様と、エルお母様の力があって。
母様を包み込む存在になれたのだ・・・ということを。
失敗したら、どうするつもりだったのよ//馬鹿ガウリイ・・////
真っ赤になって、うつむき照れていた母の姿。
それを優しく抱擁し、キスしている父様の姿。
今が・・そのときなのだ。
失敗したら・・・・。
父様の精神・・魂は・・永久に消滅していたという・・あの・・・。
リナスははっとなった。
自分が知っている未来は、この時代のつみかさね。
正しい方向にいかないと・・・全ては・・まぼろしのごとくにかき消える。

『リナス、リナの側にいなさい。何があっても、リナの支えになるように。
  ――…でも、分かっているわね?強い介入はだめよ?
  歪みが生じてしまうから。本来、貴女は、ここにいるべきでない存在。
  強い介入は・・時空に乱れを生じさせ、未来も変化させてしまう。』
凛として、目の前の、妹と、そして、その夫の面影をつよく映している、二人目の子供、リナスにいう金色の王。
「エリアンヌ様と、カウリイ様は、すでにリナ様は、身ごもっておられますから。」
ルナが説明する。

自分の兄と姉。 
二卵性の双子として、生まれたらしい姉と兄は。
母と父瓜二つ。
人として、始めは誕生しているせいか、
見た目は、力はあまり強くないように、感じられている。
でも。
その本質である魂に含まれている力は並大抵の力でない。
長年の、父と母の想いの初めての結晶であるがゆえに。
自分が誕生したのは・・。
母が全てを思い出し。
父が、母様を包み込むべき存在へと正式になってから。
だから。
リナスは、この過去の出来事は・・しらない。
何があったのかは、また聞きだけ。
兄であるカウリイも、姉であるエリアンヌも多くは語っていない。
なぜなら。
自分達の知っている過去であるなれば。
このリナスが鍵を握っているから。
全てを教えるわけには・・いかなかったのだ。
しっていれば、何か異なった行動にでもでたら、いけないがゆえに。
「リナお母様の・・側に?」
『そう、リナは今、かなり傷ついているわ。そして―不安になっている。
  身ごもっているのもあるけど。何より、ガウリイと離れているから・・・。』
  離れているがゆえに、過去の・・昔のガウリイが死ぬ風景を、
何度も、何度も夢でうなされているリナ。
そのたびに・・発狂しそうになることも・・この五ヶ月。
多々とあった。
それでも・・リナをどうにか保っていたのは・・。
ガウリイとの思い出が、自分の身体で感じ取れていたから・・。
契りを交わした、その思い出があるから・・・。
そして、今は、自分の中に・・ガウリイの子供がいる。
と分かったから・・。
それでも・・・。
夜は、完全には寝れていない。
寝るたびに、悪夢がリナを際悩ます。
ガウリイの死・・という、リナにとって、もっとも苦痛である悪夢が。
「リナ母様・・素直じゃ・・ないの?」
『というか、あんた達の時代のリナが、少し素直になってるのよ。
  ガウリイの存在もあって。・・もともとは、今、この時代のリナが、リナだったからねぇ・・。』

いつも、真っ赤になりつつも、常に父様の隣にいる母様。
ときどき、父様がやきもちやいて、部屋に閉じこもり、
子供である、自分達が、大変な目にあってたりもするけど。
確かに。
すこし、父様の前では・・母様は不器用だと想う。
でも・・この時代では・・さらに不器用だったの!?
・・・・・・・・父様・・苦労したんだろうなぁ・・・・・。
リナスは、自分の知っている父と母の姿を思い浮かべる。

いつだったか、
母様が、部下のお仕置きにいって、睡眠薬入りの飲み物をのまされて、
母様が、
『何、砂糖と、間違えてるのよ!』
と、とことん、分かってなくて、その部下にお仕置きして。
なにげなくいった、その母様の言葉に、父様が、三億年くらい、
母様を部屋に連れていったことがあったけど・・・・。
母様に、睡眠薬なんて・・関係ないのに。
どうも、母様に、よこしまな想い抱いた部下だったようなんだけどねぇ・・。
当然、その世界は、あっという間に、父様が、消滅させてたけど。
・・・・母様、その辺りのことは・・・疎いから・・・。
この時代、どうやら、エルお母様の言葉からすると。
まだ、それ以上に疎いらしいから・・・・。
リナスは、すこし、父と母の馴れ初めを見た気がした。
だから、あんなに仲がいいのだと。
でも・・・。
それも、この時代をのりきってこそ。 

「分かった!!私、母様の隣で、何があっても支える!!それに・・♪兄様と姉様の赤ちゃんのときの姿もみれるし♡」
少し、それがうれしいリナス。
なにせ、この時代・・まだ、兄と姉は・・まだ、母のお腹にいるのだ。


「たのみましたね。リナス様・・・。私が側にいてもいいのですが・・・・。そうしたら・・・・よけいにリナ様は・・・。」
自分が側にいれば、よけいに、意地になるのは、ルナには分かっていたから。
―だから。
「分かった!!いってくる!!!きっと、私のいた時代の未来にしてみせる!!」
くるり。
『・・・いきなさい・・・・。リナス・・』
ふわり。
リナスの身体が金色の光に包まれる。
行き先は・・・リナのいる大陸・・・・・・。

「・・・・頼みました・・・リナス様・・・。」
『・・・・リナス・・しっかり・・。・・さて・・ガウリイの方は・・・。』
見送る、ルナと金色の王。

ガウリイは・・・深淵の広い空間で・・・。
一つのオーブを見つけていた。
朱金色に淡く輝くそれ。
まるで、全てを拒絶するかのように、闇に隠れていたそれを。
「・・・・・・リナ?」
ふっ。
手を伸ばす。
確かに、このオーブは・・『リナ』だ。
ガウリイには分かった。
この感じは・・以前・・どこかで・・・・。
そうだ・・・あの夢の中の・・リナと・・・同じ・・なんだ。
この感じは・・。
いつも、物心ついたときから、幾度となく見ている夢。
その夢の中の少女。
いつのころか、姿のはっきりしない、その少女の姿はリナとなった。
その夢の中のリナと・・このオーブは・・同じ感じがする。
ふわ。
まるで、ガウリイに吸い寄せられるように、ガウリイの手の中に入ってゆくそれ。
いくら、姉である金色の王が呼びかけても、ルナが呼びかけても。
絶対に姿をみせなかった、リナの本体をかたどっているともいえる、記憶と、力を、
閉じ込めてある・・深淵の球ギャラクシアオーブ
それは・・心から、ガウリイを想っている証拠。
愛している証拠。
リナが・・深淵なる真の王としてでなく、一つの存在として・・・・。
リナとして、ガウリイを・・愛しているという・・その証拠。
ガウリイがすんなりとそれを手にできたということは。
だが、ガウリイは・・それは・・わからなかった。
・・・ガウリイは、まだ。
リナの真実を・・・思い出してはいないがゆえに・・・・。

                       -続くー

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あとがき:
薫:ううん。ガウリイの仮の存在へ変換と。ゼルとアメリアの登場。
  ルナが世界にもどって、ゼルを元に戻すのは・・次回ですね(汗)
   ちなみに。ガウリイ、今だに、リナの真実を思い出してません。
   ・・・・思い出したら、あんなことは、しでかしませんって・・(汗)
   (リナと出会ってから・・・ガウリイが勘違いして・・汗)
   それでは・・・・(汗)
   ああ・・・・くらいぃぃぃぃぃぃ・・・・・・・(涙)
   ・・・・気分転換に、また違う話でもいくかな?(かなりまてぃぃぃ!!!)
   ではでは・・・・・。

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