闇の行方 ~第5話~
「・・・もう痛くなくなっちゃった・・・。」
ずっと痛んでいればいいのに。
ガウリイとの絆の証しでもある痛み。
そうしたら、ガウリイを身近に感じられているから・・・・。
決心しても・・・やっぱり心がスースーする。
「・・・会いたい・・けど・・・会っちゃいけない・・・。」
あふれる涙。
どうしてこんなに苦しいの?
―でも・・会えば・・二度と離れられなくなるから・・・。
そうしたら―あたしはいつかガウリイをこの手で殺してしまうかもしれない。
この世界だけでなく、完全に全てを壊してしまう。
彼方に何かあったら・・・・。
あたしの中で、どうにか抑えている魔王。
でも・・隙あらば、あたしを取り込もうとしているのがわかるから・・・。
ゆっくりと流れるあたしの人としての時間。
ルークの件より、おかしい。
とは感じていた。
肉体の時間の流れが遅くなるのを感じていた。
魔王が目覚めかけて―あたしの中の時間は。
完全に普通の人間とは異なる時間率で動いている。
あたしは―あたし。
ガウリイはそういって、いつも側にいてくれた。
魔王がいるのがわかって、『婚約破棄して』といったときも。
『リナはリナだから、誰でもないから―守るから、リナを。オレが―魔王になんかさせない。』
そういって、抱きしめてくれたガウリイの温もり。
――今は隣にいない。
これは、あたしが決めたこと。
もし、あたしの前で―ガウリイが大怪我したり・・死んだりしたら・・・・。
きっと、あたしはあたしでなくなる。
ううん。
それ以上にきっと・・・・。
とんでもないことをしてしまいそうだから。
ガウリイに抱かれた証しの痛みは・・もう・・・ない。
あたしの側にいると・・いつか・・ガウリイはあたしのせいで・・死んでしまう。
―それに・・あたしは耐えられないから・・・・。
左手の薬指に輝く婚約指輪。
―ガウリイとの婚約指輪。
これだけが――あたしの心の支え。
そして―あの初めての15日の間の出来事・・。
う//ま・・まあ、あたしとしては・・一晩・・のつもりでいったんだけど・・//
でも・・確実に彼方を感じ取れたから。
このあたしの全身で。
彼方の温もりを貰ったから。
勇気を・・・もらったから。
そして、今までのガウリイとの想いでがあるから―。
――きっと・・・あたしは・・大丈夫・・・。
あたしは、今、あれからガウリイと離れて・・。
姉ちゃんに報告してから・・・。
・・ううん、そんなことは関係ない。
あたしは、まったく別の土地へときている。
この辺りは・・あたし達が住んでいた地域ではなく。
かつての結界の外。
かつての眠れる竜の大陸があった場所よりも・・さらに離れた世界の裏側。
でも・・・・。
〃リナ=インバース〃の名前は・・・
あまりにも、魔族にも神族にも知れ渡っているから・・・・。
――だから・・・・。
これくらい・・・・許して・・・・ね?
・・・・ガウリイ・・・・・・。
『リナ=ガブリエフ』
これがあたしの名前。
ここで生きていくための・・あたしの名前・・。
名前だけでも・・・・彼方と一緒だと・・思いたいの・・・・・。
― さみしさに、負けないように。
― あたしは、これから、一人で生きてゆく。
そう自分で決めたから・・・・・。
この・・あたしが住んでいた土地とはまったく異なるこの土地で。
― だから・・・幸せになって・・・ガウリイ・・・・・。
宿をでて、リナの気配を探る。
でも・・全然その気配すら・・ない。
そういえば・・・。
あのとき。
リナを庇ってオレが怪我したとき・・・。
一瞬、リナの中の魔の力が増大した。
・・それが原因だったのか!?
オレの前から姿を消したのは!?
リナ・・・・。
「馬鹿・・やろ・・・。」
そんなことは、気にしなくてもいいのに。
リナが魔王にならないように・・だからオレが側にいるのに・・。
リナを抱いたときのリナの涙が脳裏から離れない。
あの涙の意味は・・・。
オレから離れるための・・決心の涙だったのか?
「とりあえず・・ゼフィーリアに向かおう・・。」
オレはリナが消えた宿を後にして、リナの故郷でもあるゼフィーリアへと向かう。
きっと・・・みつけだす。
・・・・だから・・まってろ・・・・リナ。
宿をでて、二週間。
あいかわらず、リナの気配はまるでない。
宿に泊まるのが、こんなにも寂しく感じるなんて・・。
いつも、隣にいたはずのリナがいない。
リナがいなくなってから・・・毎晩のように、見る夢・・・。
リナが泣いている夢・・・・。
オレの横で泣き叫んでいるリナや、すがりついて泣いているリナの夢・・。
・・・どこかで・・・夢と同じことがあったような気がする・・・。
・・・・どこかで。
オレは・・リナにはいつも笑っていてほしい。
夢の中のリナは・・いつも・・・泣いている・・。
部屋に一人いると寂しい。
隣にあるはずの笑顔がないから。
今日もまた、酒場にでむき、時間をつぶす・・・。
宿になんて・・泊まる気は・・しない。
「あれ?ガウリイ・・さん?」
そんなとき、覚えのある声が後ろからしてくる。
ガウリイが振り向くと、ここ数年、会ってなかった仲間の姿。
「ガウリイじゃないか?・・・リナはどうした?」
銀色の髪をしている白尽くめのフードをかぶっている男性がガウリイに聞いてくる。
「・・・ガウリイ・・さん?」
黒い髪の少女もまた、同じく聞いてくる。
「・・・いきなり・・いなくなった・・・・。」
ガウリイがぐいっと、グラスのウォッカを煽る。
いつもなら、こんな飲み方はしない。
だけど、リナがいなくなって・・アルコールにでも頼らないと、どうにもならなくなるから。
『・・・・・・は?』
二人が同時にいう。
かたん。
何もいわずに、ガウリイの前に座る男と女。
「・・・いなくなったって・・・・。ガウリイさんと・・リナさん・・婚約・・してたのに?」
黒い瞳を大きく見開く女性。
最後にあったときよりも、大人びて、髪が少し伸びている。
「・・・あいそでも・・つかれたか?」
「・・・・そんなんじゃ・・ない・・・・多分・・・」
フードをかぶったままの男性の言葉に、ガウリイがつぶやくようにいう。
「・・オレだって・・分からないんだ・・・。」
そう。
今さら。
どうして、今さらなんだ?リナ・・・・・。
かつて、一緒に旅していた二人の仲間は、
そんなガウリイの様子にただならぬものを感じ取る。
「・・・何が・・あったんですか?」
静かにいうアメリア。
「・・お前たちが婚約した・・というのは、風の噂に聞いてたが・・。
・・でも、婚約して・・・二年だろ?結婚もしてないとは・・・・・・・・何かあったのか?」
一人で悩んでいても仕方がない。
だから・・。
ガウリイは、今までのことを全て話すことにした。
「・・・・別かれる前に・・リナさんに変わったことは?」
黒髪の女性―アメリアがガウリイに聞く。
「・・・・わからない・・。・・・ただ・・あれほど拒んでいた・・一線を・・リナからいいと・・。」
あのとき、確かに、リナは自分の腕の中にいたのだ。
「じゃ、質問を変えよう。・・・どうして、婚約したのに、今まで、まだ結婚してないんだ?
旦那は、リナのこと、前々から好きだったんだろうに?」
彼らは、ガウリイの想いは知っていた。
旅を一緒にしていたときから。
気づいてなかったのは・・リナくらいなものである。
「・・・・リナが心の準備ができないとかいって・・・。・・・オレはかまわなかったのに・・・。・・・リナは・・・・気にしていたようで・・。」
『???何を(です)だ?』
肝心の部分を説明し忘れているガウリイ。
「・・・・リナの中に・・・・魔王が封印されている・・という事実だ・・。」
かららん・・・。
しばらく静寂が訪れる。
がやがやと周りの賑わいも、彼らの耳にはいらなかった。
半時ほどして。
「・・・・リナ・・さ・・・ん・・・・に?」
震える声でアメリアがいい。
「・・・・そうか・・・あいつに・・。」
ゼルガディスは、もう一人の、欠片が封印されていた・・。
・・・自分の祖父を思い浮かべていた。
「婚約した直後・・あいつが・・目覚めかけた・・。・・リナはひどく気にしていた・・・。
・・・いつか・・・自分が自分でなくなるかも・・しれない・・と。
オレは、そんなリナだから・・あいつを守る・・と誓ったのに・・。」
声が痛々しい。
「・・・・ガウリイさん。確か・・リナさんが分かれる前・・。やけに、魔族の襲撃があったっていってましたよね?」
アメリアが静かにいう。
「あ?ああ。」
かららん。
グラスの中の氷がなる。
「・・・・耐えられなかったんですね・・。きっと・・・・。自分のせいで・・ガウリイさんが・・怪我するのが・・。」
「それか、あいつのことだ。自分のせいで、お前が、死んだりでもしたら、いやだ。といった、理由だろうな・・。」
「オレは!!」
自分はどうなってもよかった。
ただ・・リナが笑ってさえいてくれれば。
「ガウリイさん!!リナさんを追いかけてください!!リナさんもガウリイさんを待ってます!!」
アメリアが立ち上がりガウリイにつかみかかるようにいう。
ガウリイから説明受けたときに見た、大切な仲間であるリナの手紙。
その内容を読めば、痛いほど、リナさんの気持ちがわかるから・・。
アメリアは瞳に涙を潤ましている。
「分ってる、だから・・・・オレは、リナの手がかりを求めて・・ゼフィーリアにいくつもりだ。」
ガウリイがいうと。
「ゼフィーリア?俺達も行くところだぞ?」
ゼルガディスがいう。
どこか、ほっとした。
全て話したからだろうか。
ガウリイに余裕が生まれた。
「そういや、どうして、アメリアとゼルが一緒にいるんだ?」
ガウリイが二人に聞く。
「あ、それはですね。父さんを説得して、城を出たんです!!城にいたら、次々と縁談攻めにあうから・・。」
ちらりとゼルガディスをみるアメリア。
城にいたら、縁談ぜめの毎日。
そんなとき、神託で、魔族の動きに何か変化があったことを知った。
それを正義に置き換えて、父であるフィリオネルを説得したのだ。
ついでに、結婚は好きな人以外はするきはありません!!
と、はっきりきっばり言い切って。
魔族の動きを探る最中、ゼルガディスと合流したアメリア。
ゼルガディスもまた、ここ、一年以内の魔の動きを探っていたのだ。
二週間前。
空から、大地から、魔の気配がいちぢるしく低下したのも、何か関係があるとアメリアとゼルガディスは思っていた。
そして。
つい最近。
ゼフィーリアに、伝説の赤の竜神の騎士がいると情報を得た。
スィーフィード・ナイトならば、何か解るかもしれない。
そして、ゼルガディスの身体を元に戻す方法も。
だから、二人は、ゼフィーリアに向かっていた。
「ルナ義姉さんに?」
ガウリイが聞き返す。
「?
知らないアメリア。
「いや・・だから・・・。あっ、そっか。アメリアとゼルガディスは、知らなかったんだっけ?」
ガウリイがふと気づく。
「
がしゃん!!
リナが魔王の欠片を宿していたというのを聞いたときよりも、
かなり驚いているアメリアとゼルガディス。
盛大に、机につっぷした。
「・・・・・なんか、リナさんの家族って・・・・。」
なぜか遠い目になっているアメリア。
「・・・・まあ、普通じゃ・・ないのは・・確かだな・・・。」
ある意味、最強の姉妹だ。
と、二人納得しているアメリアとゼルガディス。
「俺もルナ義姉さんの所にいくところだ。リナのことだ。
きっと、ルナ義姉さんには何かいって、いなくなっているはずだから・・。」
姉には、律儀なリナのこと。
絶対に何かの手がかりはあるはず。
もし、なければ、ないで、やみくもに、リナの気配を探すまで。
「じゃ、ガウリイさん、一緒に、いきましょ!」
アメリアがいう。
「そうだな。どうせ、目的地は同じなんだからな。」
「・・・すまない。」
二人が自分を心配して、言っているのがわかるから。
・・ガウリイは、友情というものを改めて、感謝した。
一人だと・・どうしようもなく・・不安になってゆくから・・・・。
「ラティルト!!!」
闇を青白い光が貫く。
「ひでぶ!」
どすん。
落ちてくる黒い塊。
「ゼロスさん!!!はっ!!さては、何かたくらんでますね!!」
アメリアがすうっと息を吸い込む。
ゼルガディス・アメリア・ガウリイと合流し、ゼフィーリアに向かい始めて。
三日後。
野宿のときに、闇から出現する陰一つ。
『――ゼロス!!』
ガウリイとゼルガディスが同時に剣の柄に手をかける。
「いきなり何するんですかぁ!?・・・・ちっ。やっぱり・・リナさん・・いませんか・・・・。はぁ・・。」
一応抗議して、ガウリイのほうをちらりとみるゼロス。
彼らの知り合いでもあり、そして、もっとも、会いたくない存在でもある。
「・・・・リナがどうしたって?」
鋭いまでの殺気。
ゼロスですら、怖れるほどの。
ここ、毎晩の夢見もあり、だんだんと、力が漠然と戻ってきているガウリイ。
魂自体がもつ、力に戻るのも・・時間の問題であろう。
「まあまあ、今は、ガウリイさんを殺すのはしませんよ♡
ガウリイさんを殺すのは、リナさんの前でないと、意味がありませんし♡
いえね。完全に、リナさんの気配が感じられないので。
ひょっとして、ガウリイさんの側にいれば、リナさんに会えるかなぁっと♡」
にこにこしながらいうゼロス。
「・・・リナをどうする気だ・・・。」
ガウリイが剣を抜く。
「どうするって・・決まってるじゃないですか♡魔王様に目覚めてもらうんですよ♡
それでなくても、北の魔王様が、弱体化されてしまいましたから♡」
にこにこと、人事のようにいっている。
「・・・・アメリア、やれ。」
ゼルガディスがアメリアにいう。
いつのまにか、アメリアは、ゼロスの横に移動していたりする。
「ゼロスさん!!!人生ってすばらしい!!!生きているってすばらしい!!」
「・・う゛!?」
アメリアは、丁寧にも、メガホンをもって言っている。
何を考えたのか、城にいる間に開発した、魔力のこもったメガホンで。
力を何倍にもする効力を備え付けていたりする。
「う・・うぐぐ・・。わぁ!?」
耐えられなくなった、ゼロスがかき消える。
それでなくても、北の魔王が弱体化して、魔族の力は弱っているのだ。
そこに、アメリアの正の賛歌の攻撃を受ければ。
いくら、ゼロスでも・・かなりのダメージを今ので受ける。
今のアメリアの正の賛歌によって、この辺りの精神世界の下級魔族は一層されていたりもするが。
「あ!!ゼロスさん!!逃げるなんて卑怯ですよ!!」
アメリアが虚空にむかって怒鳴る。
「・・・どうやら・・・魔族も・・リナの行方・・捜しているようだな。」
「・・・くっ・・・リナ!」
ゼルガディスがいい、ガウリイが歯ぎしりする。
こんなときに、あいつの側で守ってやれないなんて・・・。
それがガウリイには悔しくてたまらない。
魔族に狙われているのは・・リナだというのに。
「つまんないです。ゼロスさん、逃げちゃいました。」
アメリアがメガホンをしまいつつ、いう。
これで、今度こそ、ゼロスさんを更正してあげようと思ったのに・・。
と、思っているアメリア。
北の魔王が弱体化?何かあったのか?
一人、冷静に、今のゼロスがいった、言葉を分析するゼルガディスであった。
あれから、どれくらい月日がたったのか・・・。
「うっ!!!」
吐き気がした。
むかむかする。
「やろう!!」
「ファイアーボール!!!」
どおおおおおおんんんん!!!
力ある言葉だけで、発動する魔法。
日に日に高まっていく魔力。
全ての呪文は・・力ある言葉だけで発動する。
金色の王の力ですらも。
「ぅう~・・むかむかするぅぅぅぅ~!!」
どうにか、吐き気をこらえて、盗賊を一層するあたし。
「―うっ!!!」
げえっ・・・・・。
・・・・・・・・吐いた。
・・・・完全に。
あたし・・何も変なもの・・食べてな・・・・ま・・・・さ・・・・か!?
この数ヶ月・・ううん。
ガウリイから離れてから・・そういえば・・・・あの日が・・・・・・(汗)
つうっと伝う汗。
「・・・・ま・・・さ・・・か・・・?」
あたしは、そっとお腹に手を当てる。
とある可能性が頭に浮かび。
― とくん、とくん、とくん、とくん・・・・。
― 明らかに、あたしの心臓以外の音・・・。
― それも・・・二つ・・。
「――…っ!!!!ガウリイ!!!!」
おもわず、お腹を抱えて、うづくまるあたし。
彼方と離れてから、彼方のことを想わない日なんて・・一度もない。
会いたい・・けど・・あっちゃいけない・・・・。
世界よりも大切な人・・・・・。
たったの、一回限りの関係。
・・・まあ、その一回が・・その・・15日にも渡っていた///
という問題もあったりするけど///
しかも//連続で・・//////
・・離して・・くれなかったから・・その//ガウリイが・・/////
―あの・・・とき・・・・の!?
あのときの行為で・・・あたしの中に・・ガウリイとの命が宿っていたのだ。
ガウリイ以外には・・あたしは身を・・純潔を守り通しているから・・。
彼方以外には・・考えられないから・・・・。
「・・・・ありがとう・・。」
とめどもなくあふれる涙。
きっと、あいつがあたしが寂しくないように、与えてくれた宝物。
攻撃呪文でクレーター化と化した、元盗賊アジトの真ん中で。
―あたしは・・・声を殺して泣いた。
―・・・ありがとう。ガウリイ・・・・。
こんなあたしにこんな贈り物をくれて。
― うん。
もう平気。
― 彼方との・・確かな愛の証しが―あたしの中にいるから・・・。
ここ数ヶ月、彼方と離れ、あたしは・・寂しかった。
それでも・・ガウリイを失うよりは・・それでよかった。
でも・・・心が寂しかった。
ガウリイがいない。
というだけで・・気が狂いそうになったことも・・あった。
誘惑に負けて・・ガウリイの姿だけでも・・と・・
・・・・精神世界より覗きそうになったりした・・・。
・・・だけど・・。
ガウリイの姿を見たら・・きっと・・あたしは・・・・二度と・・・。
彼方から離れられなくなる・・と解っていたから・・・・。
さみしくない。
というのは嘘。
本当は誰よりもあいつに側にいてほしい。
一緒に生きて、一緒に笑い、悲しみ、喜びを分かち合いたい。
― だけど・・それは、あたしのわがままだから・・・・。
ゆっくりとながれるあたしの時間。
おそらく―この子達も普通と違い生まれてくるのも遅いはず。
今まで気づかなかったのが何よりの証拠。
・・・あれから・・五ヶ月は経過しているのだから・・。
―ねぇ?ガウリイ?
―あたしの・・・わがまま、聞いてくれる?
―もし・・・もしもよ?男の子だったら・・・彼方にちなんで・・・・。
―『カウリイ』って付けたいの・・・・・。
彼方が側にいる・・・・・そう・・思いたいから・・・・。
この土地で生きていくのは、とっても簡単。
何しろここは、ほとんどとしっていいほどに魔法が発達していない。
ちょっとした回復呪文なんかで、どこにいっても重宝される。
下手すると、天使に祭り上げられたりもするけど。
道具も使わずに、火を使ったときなどは、神扱いもされたっけ?
こういった、盗賊いじめも簡単にしたいほうだい♡
弱い弱い、盗賊が♡
だから、資金にも困らないし♡
・・・どこにいっても、あたしはあたしだと自分でも想うけど・・・・。
―だけど・・・・。
― ・・・ 一箇所には・・留まれないから・・・・・。
―だからあたしは― ・・・一人旅・・・・。
-続くー
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目が覚めた。
おかしい。
・・・静かすぎる。
いつも、起こしに来る女官もこない。
がばっ!!
ベットから飛び起きる。
バタン!
部屋から出る。
しぃぃぃぃぃんんん・・・・。
まるで、誰もいない、静けさ。
いつもなら、すでに、ここは、にぎわっている。
このパレスの中は、いろいろな存在で。
「・・・・!?」
誰もいない。
静まり返る宮殿の中。
この、ギラクシーパレスは、こんなに静かなはずもないのに。
気づけば・・
いつも感じる気配すら・・ない。
「姉様!?兄様!?」
だだだ。
ばったん!!
扉を開け放つ。
ここまでくるのに、誰にもあっていない。
兄と姉の部屋にも・・誰もいない。
「何・・何・・何なの!?」
一体、何があったのか。
昨日までは・・何ごともなかったというのに。
どたどたどた!!
宮殿中を走り回る。
それでも・・・誰もいない。
いつも、いるはずの、謁見室にも、母も、父もそして・・ルナもいない。
「――…っは!!母様達の寝室!!」
そこは、まだいっていない。
まるで、蜃気楼のように、ゆらめく宮殿。
おかしい。
絶対に・・おかしい!!
走る少女の髪がたなびく。
栗色の髪に、不安な色をその碧色の瞳に携えて。
ばったん!!!
怒られてもかまわない。
何かが・・おかしい。
少女は、敏感に感じ取っていた。
「―ほっ・・。ルナ!!エリー姉様!!カウリイ兄様!!」
部屋を空けると、母と父の寝具の横で、探していた、母の側近であるルナの姿と。
母そっくりの姉の姿。
そして、父そっくりの兄の姿がそこにあった。
「おかしいの!!誰もいないの!!」
そのまま、部屋に入ってゆく・・。
『リナス(様)!?』
振り向く三人。
紫がかった、蒼い髪に紅い瞳の女性に、栗色の髪に紅の瞳の少女。
そして、金色の髪に、碧色の瞳をしている少年。
「母様・・・・母様!!!?父様!!!!!?」
少女は・・・ベットの上で、信じられない光景をまのあたりにした。
ベットの上では。
なかよく、眠っている栗色の髪の女性と金色の髪の男性。
しかし・・・二人の姿が・・掻き消えかけていた・・・・。
陽炎のように、ゆらゆらと・・・・。
父の胸の中で、寝ている母。
母を抱きかかえるように、腕枕している父の姿。
それが・・ゆらめいていた。
「・・・何・・何・・何なの!!!!?」
少女には、わけがわからない。
「リナス・・時が・・きたのよ・・・。」
「エリー姉様!!!?」
母そっくりの姉の言葉。
「過去に・・異変が起こっているんだ・・・。最大の・・試練が・・・。・・お父様と・・お母様に・・・。」
しずかにいう、父そっくりの兄の言葉。
「・・・・過去って・・・」
少女・・・リナスがいうと。
「母様と父様が、人としての最期の・・試練。・・・失敗したら・・・全ては・・幻・・。」
自分達も経験した。
あのときのことは。
今だに覚えている。
「・・・リナス、過去に・・いってくれる?母様が・・父様から・・離れたの・・・・。父様を想いながら・・・。」
姉であるエリーがいう。
「僕達では・・駄目なんだ。あのとき・・・すでに、母様のお腹に・・僕とエリーはいたから・・。」
あのとき。
すでに、母は自分達を身ごもっていた。
「同一時間軸中に、同一人物が複数存在することは、ありえない。
必ず、歪が生じ、歪みが発生する。下手すると・・世界が・・壊れるほどに。」
父と母をみつつ、兄がいう。
「過去・・・に?」
リナスが戸惑う。
「そう、母様の心の支えになってほしいの。今のままだと・・母様の・・精神は・・。」
ゆらゆらと消えかけている母の姿。
ここまでなるとは。
すでに、ちょっと先の時間では、すでに消滅しているはずである。
過去があり、今がある。
過去が変われば、未来は変わる。
まともに、過去の異変を未来は受け取る。
そして・・この時代が。
いちばん、あの時代とつながりが深いゆえに。
「過去で・・母様と父様が・・消滅・・しかかってるの・・・・。これは・・・その・・シグナル・・・。」
あのとき。
母の隣に、少女がいなかったら。
まず、まちがいなく、母は・・・精神崩壊おこし、消滅していた。
そして・・・その少女は・・。
今・・・。
「リナス様・・・リナ様・・リナ=インバースとして生きておられた時代に・・。異変が起こっているんです。
リナ様が、ガウリイ様から離れて・・一人で生きることを決めたから・・。これは・・その・・シグナル・・。」
説明する母の側近である
「シグナル・・・って!?じゃあ、母様と父様が過去で・・消滅しかかっているっていうの!?」
リナスの叫び。
こくん。
うなづく三人。
「そ・・そんな!!!?母様!!!父様!!!!」
頭をふる少女―リナス。
「だから・・側にいてあげて・・・。時空回廊・・開くから・・。」
「・・・頼んだよ・・リナス・・・。」
「・・・・リナス様・・頼みます・・・私達は・・あの時代には・・いけないんです・・。」
リナスには、選択の余地は・・なかった。
こくん。
「母様と父様は、絶対に助ける!!」
強い決心。
ほっ。
安心するリナスの兄と姉。
るぅぅぅぅ・・・・・。
時空回廊が開かれる。
本来ならば、母か父でしか開かれることのない、それが。
エリーとカウリイの手によって。
「リナス様、まず、エル様の所に行ってください。」
「わかったわ!!」
『お願いね。リナス・・』
「エリー姉様とカウリイ兄様も、父様と母様をお願い!!」
くるり。
かっ!!
光か・・少女を・・飲み込んでゆく・・・。
がくっ・・。
「エリー様!!!!カウリイ様!!!!」
ルナが悲鳴を上げる。
無事に出発し、過去へ旅立った妹を完全に見送って。
二人はひざをつく。
姿が・・消えかけていた・・・。
「・・・これまでの・・ようね・・・。」
「・・・ルナ・・・母様たちを・・お願い・・。」
「いやぁぁぁ!!!!!!」
二人の姿が掻き消えてゆく。
父と母の姿が・・存在が消えかかっているのだ。
とうぜん・・その娘と息子の存在も・・・・。
すでに、この世界そのものは、完全に凍りついたように、動かなくなっている。
そう。
世界の核である、存在が消滅しかかっているがゆえに。
「・・大丈夫・・きっと・・リナスが・・。」
「僕らの・・妹だもの・・それに・・リナス姉・・だ・・か・・ら・・・。」
自分達が知っている過去ならば、
きっと大丈夫。
心配ないよ。
二人は、そうにっこりといって・・。
しゃらぁぁん・・・。
ガラスが割れるかのような音をたてて・・存在から消失した。
「いやぁぁぁ!!!!エリアンヌ様!!!カウリイ様ぁぁぁぁ!!!!」
今、この世界で。
動けるのは。
ルナだけになっていた。
他の存在は・・全て消失したか・・・凍りついたように、動かない・・・・。
深淵なる闇の王が消滅しかかっているがゆえに。
昔、エル様とともにみたビジョン。
あれが・・現実に・・ならないで!!
ルナの悲鳴ともいえる叫びが、ただただ、響いてゆく・・・。
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まえがき:
こんにちわ♪
闇の行方も、はや第5話・・・・(汗)
どんどん暗くなってゆくゥ・・・・。しくしくしく・・・・。
ま・・・どうにかなる・・多分。
頭の中では完結してるのに・・頭と手が追いつかない・・しくしくしく・・・・。
ちなみに。始めはリナ視点です。
ではでは♪
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あとがき:
薫:ラビットvvラビットvvちびうさ♡あ、ちびちびでもいいや(まて!)
さあ、このリナスの母と父って・・だぁれだ(爆!)(・・って、ばればれだって・・汗)
ちなみに、次回は、ガウリイ達のゼフィーリアと。リナ視点からです。
ではでは・・・・。(今だに好きなんです♪セーラー○ーン♡)
設定がいいですよねぇ♡
(輪廻転生話が好きな人・・爆!)
ではでは♪
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