まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
アトラス編。
残りこれで最終になるかな。
今回エリーのとんでもない秘密があきらかに(かなりまて
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If ~もしも…アトラス編11
~アトラスの余韻~
空は見事に晴れ渡っていた。
私達の心のうちは空と同じように晴れ渡ってはいないが。
街は今日もにぎわいを見せている。
いつもと人々にとっては何ら変わらぬ日常。
「まるで。あんな事件なんて起こらなかったみたいですね……」
「まあ、ウィルのおかげで大分楽に後始末はできたけどな」
あれから十日あまり。
何とかいろいろなごたごたが収まり、全てのかたがついたのが昨日のこと。
ウィルがフルネームを名乗ったとたん、
何やらいやみったらしくいってくる魔道士評議会のお偉いさんたち。
そんな彼等はもののみごとに黙り込んだ。
セイルーンの王族。
という肩書きは伊達ではない。
ルビアは初めかなりたたかれた。
ハルシフォムがやっていたことを知りつつも手をかしていたことを。
だがしかし、
私やリナンやレナンやウィルのある意味脅迫まがいの説得を彼等もまた快く引き受けてくれ、
結果として彼女の罪は不問にとわれているこの現状。
「まかせてください。こういう処理はなれてますから。
よく姉さんといっしょに街とか壊して父さんに怒られたりしてましたし」
さらりというウィルの台詞に、何やらかなり問題発言があったような気もするが。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まあナーガだからね。
「しかし…これから、ルビアさん、大変でしょうね……」
魔道士協会の関係者たちがデイミアの家にいったとき。
すでにデイミアの姿はなく、そこにただどろりと溶けた液体のようなもののみがあったらしい。
だがしかし、デイミアは自分がいた部屋になぜか記憶球を仕掛けていたらしく、
それから彼女に何があったのか関係者たちの知るところとなった。
デイミアはこの街の何でも有権者の一人娘であったらしく、
そのあたりの事情も入り。
表向きには病死と発表された。
タリムは突然死と発表されていたが。
人々の口の噂とは止められないもので、その二人の死に関しては。
様々な噂が飛び交っている今の現状。
もっとも、その中に真実が一つも含まれているものはないのだが。
あるものは、タリムはよくばって食べ物をほおばりすぎて窒息死したとか。
…あのタリムならありえるかも。
という何とも信憑性の高い噂もあったりする。
デイミアはデイミアで、自身が作り出した実験動物に殺されたのではないか?
もしくは、彼女や彼女の家を恨んでいるものの仕業ではないのか。
といった意見が大半を占めていたりするようだが。
ぽそりとつぶやくルルちゃんの台詞には。
どこかやりきれない思いがにじみ出ている。
ハルシフォムの屋敷の中にはあれ以外にも様々な記憶球があり、
魔道士協会としてはそれらを物象として押さえ、それらの検証にはいった。
そこに記録されているものは……
たしかに、ルルちゃんにとっては人事ではない内容もあったりしたのもまた事実。
ハルシフォムが命の研究に入った理由は。
赤法師レゾに言われたから。
それだけでもルルちゃんにとっては心苦しいだろうというのは聞かなくてもわかる。
そして、何よりも気になるのは……
ハルシフォムがセイグラムと契約し、そしてルビアを作り出したその後……
一つの記憶球に、私もルルちゃんもよく見知っている魔族が一体映りこんでいた。
ということ。
―――魔族、ゾロム……
それゆえに、ルルちゃんの心の中は様々な思いが入り乱れ葛藤しているはずである。
もしかして…もしかしなくても、あのハルシフォムの行動。
それ全ては…
魔王に半ばその精神も肉体も乗っ取られていたレゾの企みではなかったのではないか…と。
ま。何にしろ。それよりこれからどうするんですか?」
すでに事情聴取というか、まあウィルがいることもありほとんど穏便に済んでいるのも事実だが。
私としてはそれはかなり助かったが。
何しろ万が一、郷里に連絡を入れられでもしていたらとおもうと……
考えるだけで凍り付いてしまう。
一人、のんびりとララちゃんがそんな私達にと問いかけてくる。
「そうね……とりあえず……サイラーグにでもむかってみない?」
レゾが滅びる直前にルルちゃんにと伝えた最後の遺言。
そんな私の台詞に、
「いいの…ですか?…もしかして…何かがあるのかもしれませんのよ?」
多少戸惑いながらも私にいってくるルルちゃん。
「他に別に目的、という場所もないわけじゃないけど……まあそっちはいつでもいけるしさ」
「あ。それは私も同感です!というか、是非ともサイラーグにしましょう!
ここでのんびりとしてたら下手したら国から向かえがきちゃいますし」
……つまり、やっぱり黙って旅をしている。
ということか。
あ…あの国の王族って……
さらり、と爆弾発言ともいえるウィルの台詞に思わず黙り込んでしまう。
それに…気にかかっているのはもう一つある。
ここ、アトラス・シティがあるライゼール帝国。
隣接する国にはラルティーグ王国とディルス王国があるのだが。
協会の中でこのたびの様々なごたごたなどを処理しているときにふと耳にはいった会話。
何でも、ここしばらく。
ディルス王国はなぜか、様々な魔道士や傭兵といったものを大量にと採用しているらしい。
という会話。
もし、また二十年前のような愚考を行おうとしているのならば、何としても止めねばならない。
…というか、絶対に兄ちゃんやルナさんから止めろ、という意見があるはずだ。
意見があってから動くのでは…遅いのだ。
「さ…サイラーグ…ですか?」
ん?
珍しく何やらララちゃんが戸惑いぎみだ。
かくゆう私もサイラーグにはあまりいい思いではないが心配な人たちはいるけど
「?ララちゃん?」
疑問に思い問いかける私の台詞に、
「……えっと。…もしかしたらあそこにはまた魔族がいるかもしれませんけど?」
さらり、といってくるララちゃんの台詞に思わず目が点に成り果ててるリナンたち。
「いや、ちょっとまていっ!ララ!それどういう!?」
「ララさん!?一体!?」
「またってどういうことですか!?」
同時に叫ぶ、リナンとルルちゃんとウィルの三人。
「数年前だったとおもうのですけど。
あの地に何か魔族にかかわりがあるものがあるとか何とかで。
…当時たまたま道に迷っていた私は、それを手にいれようとしていた魔族を撃退したのですけど。
そのとき、魔族の衝撃波によって北のサイラーグといわれていた場所は壊滅してしまいましたし。
あれからどうなったかはわかりませんけど。
もし、その品を諦めていなければまた魔族が関わっている可能性が……」
「ララ。それって何かわからないのか?」
「さあ?」
そんな会話をしているララちゃんとリナン。
「ほかに何にかないか?」
そんなことを聞いているレナン。
「そう云えば、確かその時にエリーに良く似ている人に会いましたわ」
……えっ。まさか。
「ララちゃん。ちょと聞くけどその私に似た人って……水色の髪に水色の目してなかった?」
「ええ。そうでしたけどそれが?」
……やっぱり。あのときの子って。
「あ゛ぁぁぁぁぁぁー」
思わず叫んでしまった。
「「「エリー?」」」
「エリーさん?」
「エリーさん?どうしたんですの?」
私の態度を疑問に思ったのか皆して聞いてくる。
「あのね……それ……私よ」
少し動揺しながら言う私。
「「「「「…………」」」」」
一瞬沈黙がその場を支配する。
「「「「「えぇぇぇぇぇー」」」」」
みんな声を合わして驚いている。
「でもエリーの髪の色は銀色で瞳の色は紫色ですわよ?」
ララちゃんがもっとな事を聞いてくる。
「まあね。普段の色はそうだけどさ。本気を出した時には本来の色である水色に変わるのよ」
「そうなんですか」
感心したように言うウィル。
「お前。今までそんな事一言も言わなかっただろ」
そんなことを言ってくるリナン。
「だって。聞かれてないもの」
「あのな。」
当たり前のことに何故か呆れているリナン。
「それにね。リナン、そのこと知らなかったのあんたとレナンの二人ぐらいよ。」
「ちょと待て、それってまさか……」
脅えた様に言っているリナン。気持ちは解らないでもないけど。
それはともかくからかう材料発見♡
「そう。そのま・さ・かよ♪」
「でえぇぇぇー。ねえちゃぁぁぁーん。そのこと知ってたのか」
案の定驚いているリナン。
あれ、レナンが驚かないわね。
「どうしたのよ。レナン、いつもならリナンと一緒に驚いてるのにさ」
「別にユーリさんから聞いてるし」
「そうなの。」
兄ちゃん、何余計なことしてるのよ。
「それにお前に宿ってるのが何か少し考えれば解ることだし」
「それもそうね。」
「言われてみれば」
そんな会話をしている。私達三人。
「あのエリーさん。宿っているのとは、なんなのですか?」
その会話を聞き私に聞いてくるルルちゃん。
「え、あのそれは、まあ言っても良いけど三人ともおおげさに驚かないって約束してくれる」
一応驚くことだから、驚かないとは約束できるような内容でもないからね。
「「ええ」」
「いいですよ」
「そう、それじゃ言うけどさ。その前に聞くけどみんな
一応聞いておく。
みんなしっていると思うけど。
「ええ。たしかゼフィーリアに居ると聞いたことが」
「以前セイルーンに来たのを見たことが有ります!!」
「スィーフィードナイトって……何ですの?」
ずごがしゃ!!
ララちゃんの一言に思わず、ずっこける私達。
「ら…ララさん!!!?あなた、本気ですか!?
赤竜の騎士といえば、この世界の至高神、
本当に竜神の力が使えるらしいですし!!」
ルルちゃんが力説する。
「あははは、ララちゃんそのあたりのことはあとでゴルンノヴァにでも聞いといてね。」
一応ララちゃんにそう言っておく。
「話を戻しましょう。
スィーフィード・ナイトはスィーフィードの力と知識と記憶と意識をその身に宿しているけど。
もし千年前の降魔戦争で滅んだといわれている水竜王の力と知識と記憶と意識を、
同じように宿している人が居るとしたらどうする?」
「それは……ってまさか。」
ウィル、きずいたみたいね。
「そうよ。私は水竜王ラグラディアの力と記憶と意識を宿しているのよ」
「な゛っ!!」
「素晴らしいです!!やっぱりエリーさんは、天がつかわした……」
やっぱり驚いているルルちゃんと一人感心しているウィル。
「どうりで、何か人じゃないような気配がすると思いましたわ」
「「「「「えぇぇぇーーー」」」」」
さらりと言ったララちゃんの言葉に思わず叫ぶ私達。
「……よく……わかりますわね……」
戸惑いながら言うルルちゃん。
「え、普通解りますでしょう?」
それあなただけよ。
「それ絶対、ララだけだって」
「そうそう。」
「恐るべし野生の勘」
「ララさんって……よくそういうことがわかりますね」
口々に言う私達。
「だけど知識の方はそんなに宿してないからさルルちゃん、あまり期待しないでね」
期待させちゃだめだから一応言っておく。
「どいうことですか?」
「それは、秘密♪」
そんな会話をしている私とルルちゃん。
「まあ、そんなことや魔族云々はともかくとして。一度むかってみるべきではあるわ。
それに…もしまた魔族が何かしようとしているのなら絶対に止めないと……」
二度と、ここやあの時のサイラーグのような悲劇を起こさないために。
…まあ、ほうっておけない。
というか、このまま無視しておいて何かあって、
それが兄ちゃんとルナさんの耳に入るのが一番私としては怖い。
内心をどうにかウィルたちに気取られないように、
「とりあえず。ルビアのところに挨拶にいきますか」
このまま黙って街をでる。
というのは何とも薄情極まりない。
魔道士協会などに立ち寄れば、もう少し残って欲しい。
とか言われること請負いなので立ち寄らないが。
そんな私の台詞に、全員が同意し。
ひとまず、私達はルビアのところ…即ち、元ハルシフォム邸にとよることに。
「あ。みなさん……」
屋敷の周りはやけに静かに静まり返っていたりする。
ところどころに協会から派遣されてきたのか、はたまた領主のほうから派遣されてきたのか。
ともかく、どこからか派遣されてきたらしき警備兵らしき姿も垣間見える。
気丈にも、ハルシフォムが死んだのち。
いろいろな行政などからの質問などにもきちんと答え、息もつくまもなかったであろうに、
私達が訪ねると、そんな様子を表にだすことなく微笑みながら出迎えてくるルビアの姿。
だが、その笑顔には悲しさと寂しさが入り混じっている。
そんな見た人を何やらしんみりとさせるようなそんな笑顔をしているが。
「ルビアさん。大丈夫ですか?」
そんなルビアに対し心配して声をかけているウィル。
「え…ええ。どうぞ」
か細い笑みを浮かべながらもルビアは私達を屋敷の中にと案内し、私達はひとまず屋敷の中へ。
屋敷の中でも数名の警備兵らしき姿がちらほらと目についてくる。
「まだごたごたしているようですわね」
それをみて遠慮がちに問いかけているルルちゃんであるけど。
「ええ……一応全ての機材というか実験施設がある場所は彼等にお教えしましたから……」
私達六人に紅茶を運んできて応接間の椅子にと腰掛けながらもうつむきかげんにこ答えるルビア。
全て…って。
いったいいくつ、あのハルシフォムは実験施設をもっていたのやら……
魔道士協会での噂話などを総合するとかなりの数になっているらしいが。
まだまだ手入れをしていない施設もあるらしい。
しかも、手入れをした施設でことごとく。
行方不明になっていた人々の変わり果てた姿などが見つかり、
ただいまちょっとした騒動と成り果てている今現在。
そうルビアは私達に説明し、しばらくじっとうつむいていたかとおもうと、やがて。
「…ご迷惑でなければ…話をきいてもらえますか?」
ぽつりとそんなことをいってくる。
その口調から、誰かに聞いてもらいたいけど、話すのにためらわれる。
そんな感情が読み取れる。
人は誰でも、自分の中のみで溜め込んでいたら壊れそうになることがある。
そんなとき、誰かにその話をすることで少しは気が楽になる。
ということも。
そしてそのためにまた、他人に言ってしまった。
と思い悩むのもまた人の特徴ともいえよう。
そんなルビアの台詞に、私達六人は顔を見合わせこくりと同時にうなづく。
そんな私達の様子をみて、ほっとしたような表情になり、
そして、その視線をじっと手にしているコップの中の紅茶にとそそぎつつ、
「……全ての始まりは……父が…本物のルビアの父親がなくなったことにあったんです……」
ルビアは静かにどうしてこのような顛末になったのかを私達にと語り始める。
誰かに知っておいてもらいたい。
その気持ちは痛いほどわかる。
だがしかし…おいそれと誰かまわずに話せる内容ではないのだろう。
そして…口調からして、この話は…魔道士協会や、そしてまた領主の取調べなどでも話していない。
というのは…一目瞭然……
かつて、まだ若かりしころのハルシフォムは若いながらも薬草などの効能を研究していた。
どちらかといえば研究よりの魔道士であったらしい。
薬草と、そして魔法。
それらの組み合わせによる人への影響。
病や怪我。
さらには手におえない不治の病。
といわれているそれらを直す術や薬の開発に日々研究に研究を重ねていたらしい。
ハルシフォムの母親が、当時の領主の娘でもあり、それゆえに一般の魔道士として存在していた、
ハルシフォムの父親の資産は研究費などに費やしてもまだおつりがくるほどだったとか。
……何でも、領主の娘が貧乏していた魔道士をみつめ、一目ぼれして結婚にこぎつけたとか何とか…
それがよかったのか悪かったのか私にはわからない。
ま、それは当人同士の問題でもあることだし。
そして…ある日。
いつものように薬草を探索しにいくためにラルティーグ王国に出向いた先で。
そこで行き倒れている一人の男性を見つけたらしい。
彼は記憶を一切なくしており、そんな彼を連れ帰りかいがいしく介抱し…
そして、やがて二人は結ばれ…一人娘たるルビアが誕生した。
男性は自分の身元を思い出すことはなかったらしいが。
それでも、ときおり何かに怯えているような行動は常にとっていたらしい。
そして…ある日。
町外れの別荘で家族と静かに夏場であるがゆえに避暑を楽しんでいた彼等のもとに。
いきなり、レッサーデーモンたちの群れが別荘にと襲い掛かってきた。
ルビアの父親は、ハルシフォムとルビアを隠し部屋の中にと押し込め、
そして外にと自分が囮になるためかでていき…そして、命を落とした。
「…あの魔族に号令をかけていたのは……赤い髪の男であった。
と母はよく酔うといっていました……そして……」
何やらその男は『ようやく一つ目』とか何とかいっていたらしいが。
その意味は当然、ハルシフォムにも、そしてまた。
話をきく私以外の五人にもわからない。
「それからです。母が…必要に研究に没頭しはじめていったのは……」
そんなとき、ハルシフォムにいろいろと知識を提供してくれる人が出現したらしく。
それをうけ、ハルシフォムはどんどんと私財全てをつぎ込んでまで新しい研究を始めていった。
即ち…命の研究。
初めは、花々をいかにして生きたまま保存してゆく。
という実用性の高いものから。
かつて、家族全員で温室で花を育てて花屋を営みたい。
というのがルビアの父親の希望であったとか。
やがて、それは普通の生きた存在にと移動していき…やがては。
「……そのうちに、母は…様々な動物。そして人。それらの肉片の一端を用いて、
そのときの、本当のルビアの気持ちはいかばかりだったでしょうね……
そういって悲しく微笑むルビアに私達は何もいいかえせなかった。
たしかに。
実の母親がどんどんと危険な方向に研究を向けてゆくのをどんな気持ちでみていたのか……
「そして…そして、あの事件がおこったんです……あの事故が……」
どう考えても起こりえるはずのない事故だった。
まず爆発するような実験は行っていなかったのだから。
それなのに事故は起こり…ルビアは瓦礫の下敷きになり。
息を引き取った直後の娘の脳を使い、ハルシフォムはルビアの人造人間を作り上げた。
娘を生き返らせるために……
いくら、娘の脳を利用した、といっても。
本当にそれがルビア本人のままなのか。
それは誰にもわからない。
精神を別の器に移動させる研究もしていたらしいがそれはまだ不完全で。
その研究もルビアの死体と、器となる新たな肉体にほどこしたらしいが。
成功したのかどうかは、目の前のルビア本人ですらわからないということらしい。
まあ、たしかに。
自分がルビア本人です。
というか自分が本当は誰です。
ときちんと明確にいえる人間などは…世の中にいないであろう。
自分が…本当は何なのか。
というのを明確に説明できるものなどは…私はいないとおもう。
人は誰にしろ多面性をもっているのだから。
そして…そして、今いる『ルビア』は誕生した。
それ以後は……ハルシフォムはさらなる研究として、不死の研究にと没頭していった。
そして…魔族とかりそめの不死の契約までをも結んだのだ。
しばし、ルビアのそんなハルシフォムとルビア自身のかかわり。
そしてまた…ハルシフォムがどうしてあのようになったのか。
そんな内容が私達にとルビアの口から語られてゆく……
何となく重苦しい空気に包まれながらも、街を後にする私達。
ひとまず、ルビアの話を聞き終え、私達はそのままアトラスの街をでることにした。
ルビアは…あの家で、ずっと母親の…ハルシフォムの家にとどまり、
そして…かつて初めのころに両親たちが願っていたこと。
即ち…花屋を営む。
というその目標にむけてがんばってみるとか。
一人でどこまでできるかはわからないけど。
それでも、亡くなったハルシフォム。
そして本当の娘でもあるルビアのためにもやり遂げたい。
と。
彼女の決意はとても固かった。
それでも…彼女の進む道は簡単なものではないであろう。
「ルビアさん…頑張って欲しいですね」
「だな」
「ですわね」
「何か後味わるいな~」
「まあ、彼女なら大丈夫でしょ」
「だな」
街を後にしながらもぽつりとそんな会話を交わす私達。
結局、私達は何ができたのだろう?
もしかしたら…
……私達がこの街にこなければ、もしかするとあのような結末にはなっていなかった可能性もある。
その思いがあるからこそ、後味が余計に悪いのかもしれないが。
「ま。いくら過ぎたことを考えても、どうにもならないし。ともかく。いきましょ!」
ぱっんっ!
どうにか気持ちを切り替えるべく自分の顔を軽くたたきながらも活をいれる。
そう。
時はまってはくれない。
やり直しは効かない。
それが人生というもの。
「たしか。サイラーグ。ですよね?」
「レゾがいっていた研究所…あればいいのですけども……」
ウィルの声に重なるように小さくつぶやいているルルちゃん。
「ま、何ごともいってみないとわからない。…ってね」
出たとこ勝負。
ともいうけども。
ともあれ、私達は後ろめたさというか後ろ髪を引かれるような思いをしながらも、
それぞれアトラスの街を後にする。
私達の行く手にこれから一対何が待ち受けているのか…
それは誰にも…、私や郷里の兄ちゃんやルナさんならばわかるけど、
今のところは私以外の五人の誰にもわからないのだから……
とりあえずいまはサイラーグに急ぎましょう、レゾのコピーを止めないと。
セイルー
も心配だけどウィルが居る限り絶対行くからね。
-続く?-
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あとがきもどき:
龍:さてさて。ルビアが記憶させられている、というかハルシフォムによってインプットされてる、
「ルビア」としての記憶と、そしてまた、ハルシフォム家族の過去。
赤い髪の男…はい魔竜王です。
この話、様々な事柄や回りの思惑などが絡み合っています。
当然、リナンたちはそんな周りで何がおこっているのか。
たとえば、魔竜王が魔王から謀反を起こして離反してたりとか。
さらには魔竜王が魔王との戦いをすすめる準備をしているとか。
挙句は魔王側とすれば欠片を見つけ出して完全復活をたくらんでいるとか…
そういった事情、まったくもって知りません。
エリーは知っているけど。
サイラーグで起こっている事当然アレです。
2007年3月某日