If  ~もしも…~策略?~

おかしい。
すぐにウィルたちとは合流できるであろう。
そうこちらは捉えていた。
だがしかし、先にみつけたのはウィルたちではなく、魔族セイグラムの姿。
三人の姿がみえないのに疑問は覚えるが、それよりも魔族を野放しにしておくわけにもいかない。
それゆえに、何やらわざとらしく私達に姿がみえるように屋根の上を飛んでゆくセイグラムを追いかけながら、
私とリナンとララちゃんは三人して、夜の闇夜のアトラスの街の中の道をかけてゆく。
ときどき、精神を衰弱させる技を解き放ってみるものの。
それらは全て無駄足におわっていたりする。
……目的がつかめない。
こいつの…この、セイグラムの目的は?
こちらに攻撃をしかけるわけでなく、かといって……
「こらっ!逃げてばかりいないで戦えっ!」
思わず素直な感想をそちらに叫ぶが、そのまま無視される。
…むかっ。
今は夜である。
あまり大きな技は他の町に住む人々におもいっきり迷惑になることは間違いなし。
もし、安眠を妨害した。
とでも兄ちゃんの耳にでもはいったら…私はそれこそ命ないし……
ここ、アトラス・シティって何でかゼフィーリアと多少関わりがあるからなぁ。
……なぜか。
よく、魔道士協会同士が連絡取り合ってるようだし。
そんなことをおもいつつも、しばし夜の闇の中。
セイグラムと、私とララちゃんとリナンとの四人の追いかけごっこが街の中にて続けられてゆく。
と。
どれくらいそうやっておいかけごっこをしていたであろうか。
「エリーさんっ!リナンさんっ!」
ふとみれば、道のむこうからやってくるレナンとウィルとルルちゃんの姿が見てとれる。
「レナン?ウィル?それにルルちゃん?」
とりあえず、対峙しているセイグラムに注意をむけながらもそちらにと声をかける。
セイグラムがこちらにむかってくる三人の姿をみて、
「幾度もいうが、こちらには戦う意志はない……」
いいすて。
すうっ。
そのまま闇にと掻き消える。
「「あ!まてっ!」」
私とリナンが、叫ぶがすでにおそし。
どうやら空間移動でどこかに移動したらしい。
闇の中、そのまま取り残される私達。
と。
「随分さがしましたよっ!リナンさんっ!エリーさん!タリムさんの屋敷にいってもいませんでしたし」
こちらにむかってはしってきつつ、ウィルがそんなことをいってくる。
ふとみれば、何やらルルちゃんとレナンがものすごく疲れたような顔になっているのが気にかかる。
「……何があったんだ?」
問いかけるリナンの言葉に、
「あ。そうそう。リナンさん。今回の評議長の選出はおそらくもう行われませんよ。
  聞いて驚いてください!何とあのタリムさんと、デイミアさんとかいう人が、
  本来の魔道士協会評議長をデイミアさんの屋敷の地下に幽閉していたんですよっ!?」
何やら興奮気味に私達にいってくるウィルの姿。
「「…幽閉?」」
「……というか。あれは…どちらかといえば…封印といったほうが……」
「正しいかもな。」
そんなウィルの後ろで顔色もわるくルルちゃんとレナンがそんなことをいってるし。
「何をいってるんですか。ルルさん。レナンさん。
  あんなご丁寧に破法封呪をかけた五芒星までつくりだして。
  さらには水の中の球体に評議長さんを閉じ込めていたんですよ?」
「いや。だからそれが気にかかっているんです。」
「そこまでする必要が普通はないだろう?」
何やら交互にいっているウィルとルルちゃんとレナン。
……何やらはてしなぁぁくいやぁぁな予感。
さっき何か地響きのようなものがしたけど……
「え。えっと。詳しく説明してくれない?」
どうも話がつかめそうにない。
それゆえに、ここはきちんと内容をつかむためにも三人にと問い返す。
「実はですね。ルルさんとレナンさんと一緒にあの魔族をおいかけていったんですけど……」
いって、ウィルとルルちゃんとレナンが交互に説明を開始してくる。

三人の会話を要約してみれば、あのセイグラムと名乗った魔族はまるでおびくように。
それでいてあからさまにデイミア邸の中にと逃げ込んだらしい。
あまりにあからさまだから、というのでルルちゃんとレナンは何かあるかもしれない。
と止めたらしいけど、ウィルは聞く耳持たずでそのまま屋敷内部に入り込み、
そして、屋敷の奥でデイミアと遭遇したらしい。
何かまったく話が通じない人だったらしく、幾度も同じようなこと。
即ち、自分がつくった子供たち…即ち、キメラを盗みにきた。
だの、タリムがやとった暗殺者だの。
といってまったく話をきくことなく、
さらには幾度も幾度も同じことを繰り返し、高笑いを繰り返していたらしい。
……某高笑い女を思い出したのは、それはそれで別として。
そして、そのまま何やら仕掛けがほどこされていたらしく、デイミアが何かの紐をひっぱると。
三人して、そのまま屋敷の地下らしき場所に部屋の床がぬけて落とされたらしい。
あまりのとっさのことで三人とも呪文を使うことなくそのまま落ちてしまったらしいが。
問題はその後。
そのおっこちた場所、というのがかなり広い…何やら水がなみなみと張られている空間で。
さらにいうならば、その並々と水が張られている場所は綺麗な円形状。
ついでにいえば、円形を中心とするように五本の柱が聳え立っていたらしい。
ルルちゃん曰く、それはちょうど自分達が落とされた部屋の床にも同じような紋様。
つまりは、五芒星が描かれており、それとまったく対になるようにそびえていたらしい。
そして…あろうことか、その五芒星の中心地帯。
さらにいうならば、水の中に一つのエメラルド色の球体のようなものがあり、
その中に一人の男性が閉じ込められていたらしい。
ウィルは伊達に神官長の地位についているわけではないらしく、それが何なのかすぐにわかり。
その中の人物とコンタクトをとったところ、何とそれが失踪した。
といわれていたハルシフォム評議長であることが判明したとか。
「…というか。何で素手であれが壊せるのか。私には理解できません……」
「私も同じく。」
ルルちゃんとレナンがその辺りまでいって頭を抱えて何やらつぶやいているけど。
……何でもウィルは、その柱のいくつかを素手で殴り壊し、
さらには閉じ込められていたハルシフォムを救出したらしい。
「……ま、まああのフィルさんの息子だしねぇ~……」
それゆえに、そのあたりのことは深くつっこまないようにした私。
ちなみに、男性。
とおもったその人物は男性の格好をしていた女性であったことをルルちゃんがぽつりと付け加えてきたが。
「それでですね。ハルシフォムさんと一緒に屋敷の中にもどっていったら。
  素直にデイミアさんが自分の非を認めてくださりまして。
  しかも!何と、ハルシフォム評議長さんを幽閉したのは、デイミアさんとタリムさんらしいんですよっ!
  それで、今までハルシフォムさんをタリムさんの屋敷につれていって。
  私達はとりあえず、屋敷にいたあのロッドさんからリナンさんたちが、魔族をおいかけていった。
  というのをきいて追ってきたんです」
ぞわりっ。
そんなウィルの説明をききながらも、背中といわず全身に悪寒が走る。
……今、評議長の座を争っている二人で、幽閉していた?
しかも…それが何重にもほどこした五芒星の結界の中に?
先ほどの魔族の行動といい。
果てしなく今まで抱いていた嫌な予感が脳裏から離れない。
「「…そ、それで?そのハルシフォム評議長は……」」
声が知らず知らずのうちにとかれているのは気のせいではないはずだ。
きっと。
そんな私とリナンの反応に少し首をかしげつつ、
「ハルシフォム評議長さんが、タリムさんと話をつけるから。というので。
  私達はそのまま別れてきたんです。…って、エリーさん?リナンさん?顔色悪いですよ?」
「……ルルちゃん。レナン。今一度確認するけど。
  あの白い仮面の魔族は、目に付くようにデイミアの屋敷の中にはいっていった。
  …それは間違いないの?」
とすれば、それが意味することは……
「すくなくとも。そうみえましたが。…それが何か?」
ルルちゃんそういいかけて、どうやらルルちゃんとレナンも気づいたらしく、はっとした表情になる。
「…っ!タリムがあぶないっ!」
もし、私やリナン…おそらくルルちゃんやレナンが抱いている危惧が現実だとすれば。
いや、おそらくそれが現実のはずである。
ならば……
そういいすて、リナン、レナン、ルルちゃんと顔を見合わせこくりとうなづき、そのまま走り出す。
「あ。リナンっ!エリー!」
「ルルさん?レナンさん?リナンさん?エリーさん?まってくださ~いっ!」
そんな私達の背後より、意味が理解できていないらしく、声をあげながらウィルとララちゃんがおってくる。
…というか、まってられるわけないわよ!

走ってゆくことしばし。
しばし走ってゆくと、タリムの屋敷に続く道。
そしてその先の坂にとぽつりとたたずんでいる一つの人影が見てとれる。
思わず身構えるが、街灯のほのかな明かりがそこにいる人物の髪を赤くてらしだしていたりする。
「…ん?」
たしか、アレは……
たしか、先日、食堂で私たちにちょっかいをかけようとしていた男のはずである。
名前は何かランツとか何とかいったようなしなくもないが。
そっちのほうもどうやらこちらに気づいたらしく、
「あ……あんたたち、いったい今までど
何やら震える声で私達に問いかけてくる。
「?何かあったんですか?」
そんな彼にむけて、ウィルが首をかしげながらもといかけてるけど。
ウィルの台詞に、彼はじりっと後ずさりながら、
「あんたら…デイミアのところにいったか?」
「デイミアさんのところに幽閉されてたハルシフォム評議長さんを救出して、
  それからデイミアさんと話して、ハルシフォム評議長さんといっしょに
  タリムさんのところに戻りましたけど。
  あ。もしかしてデイミアさん、罪を悔いて自首しました?それは何よりです!」
さらっと、しかもあっさりと答えているウィルだし。
「って、それこそまてっ!何でそこにハルシフォム評議長の名前が!?」
ウィルの言葉をきいてわめいているその男…確か、多分ランツという男性。
「何でもなにも。タリムさんとデイミアさんが凶暴してハルシフォム評議長を幽閉していた!
  という紛れも無い事実があるからにきまってるじゃないですかっ!」
…お~い。
だからぁ……そう、あっさりということかなぁ。
ある意味間違ってはいない説明なんだろうけど。
だが、今は何よりも気になるのは…ランツとかいう奴のいいようのない声に含まれている怯えである。
「…何かあったの?」
もし、私やリナンやレナンやルルちゃんの考えが正解だとすれば…もしや……
そんな私達の会話をききながら、
「……一つだけこたえろ。あんたたち、何かデイミアのやつにしたのか?」
「?ハルシフォム評議長さんがにこやかに、デイミアさんに説明をもとめてはいましたけど。
  私達はそのまますぐに屋敷でましたし。デイミアさんも素直にはなしてましたよ?
  あの?何か?」
さすがに相手の声に含まれる怯えと、その反応がおかしいとおもったのか、
首をかしげながらも問いかけているウィル。
そんなウィルや私の会話をききながら、
「…何かあったのですか?デイミアの家で?」
戸惑いながらも、その声に不安の色をにじませつつ問いかけているルルちゃん。
そんな私達の会話というかやり取りをききながら、しばし迷ったものの。
「…ほんとうに、あんたらは何もあのことはしらないのか?」
などとしつこくきいてくる。
「「…あまりしつこいと、炎の呪文の一つでもお見舞いするけど。いったい何があったんだ?」」
あまりのしつこさにひとまず平和的な意見を持ち出し問いかける。
びくっ。
そんなリナンとレナンの台詞に、しばし硬直しながらも、
「…じゃあ。本当にあんたたちは…何もしらないんだな?」
尚もさらに確認してきて、私達が顔を見合わせながら首をかしげると、大きく息をつき、
「…あ、あれをどう説明すればいいのか…おれにはわからねえ…わからねえが……
  と、とにかく。あんたたちなら何かわかるのかもしれない。…ついてきてくれ」
多少、怯えたような、それでいて懇願するような声でこちらにむかっていってくる。
「…いってみたほうがよさそうだな」
そんなリナンの言葉に。
「?つまりどういうことですの?」
…ごけっ。
意味がわかっていないらしく、きょとんとして問いかけてくるララちゃんに対し、
「「つ・ま・り!今からデイミアって人のいえにいく!いい?ララ!」」
思わず胸もとの服をつかんで叫ぶリナンとレナン。
みれば、ルルちゃんは何やらおもいっきり地面につっぷしている。
…ま、気持ちはわかる…切実に……
「……ほんとうに、どうやらあれとはあんたら…関係ないようだな」
そんな三人のやり取りをみて今度こそなぜか本当に安堵の声をだしているランツ。
……いったい全体、デイミアって人の家で何があったっていうんだろうか……
とりあえず、私達はそのまま。
ランツに先導されて、デイミア邸にむかって移動してゆくことに。


月の光を背におって、デイミア邸という場所は静かにたたずんでいたりする。
「…?何か昼間やさきほど訪れたときはとまたちがった雰囲気ですけど?」
そこに漂う違和感を感じたらしく、ぽつりとづふやくウィル。
この辺り…特に家にまとわり着いている妖気…というのであろうか。
とにかく、空気そのものの質が異なっているのは明白。
「…何かすごい雰囲気だな~……」
屋敷をみあげつつ、ぽつりとララちゃんがつぶやいているけど。
こちらはこちらであまり動じていないらしい。
…ま、あんな異界の魔王の腹心(ゴルンノヴァ)なんか通常常に扱ってたら、
そういう感覚になってもおかしくはないのかもしれない。私も人のこと言えないけど
「…いこう。…いやだけど」
最後の台詞が本気の本音であるが、ここで嫌だからといって引き返すことはできない。
ゴクリ……
そんな私の背後でランツが大きく喉を鳴らしているのが聞こえている。
どうでもいいけど、私とララちゃんとリナンとレナンが先頭にたっている。
これはまあいいとして、何で一番後ろにいるルルちゃんの背後にランツはかくれているのか。
男だったらもっとしゃっきりしなさいよっ!
と思わず一括したくなってしまう。
……今、この場でそれをする気にはただひたすらになれないが。
そのまま、私達七人は開け放たれたままのデイミア邸の門をくぐってゆく。
重く湿った冷たい空気が七人の体にまとわりつく。
前の通りと、門の内部においては空気からしてまったく別のものと成り果てている。
むせかえるような敵意、そして悲しみ、絶望感……
それらがすべて絶妙に絡み合わさった何ともいえない空気。
先日の魔王との戦いにおいて感じた気配とよく似ている。
即ち…瘴気に……
どうやらそれに気づいたらしく、ルルちゃんやウィルの顔色がかなり悪い。
そのまま誰一人とて一言も発することなく、玄関の扉にと手をかける。
ギィ……
鍵はかかっておらずに、しずかに扉は開き、屋敷内部へと私達を招き入れる準備が整う。
「…つっ」
扉を開くと同時に、思わず小さく声をあげてしまったのは仕方ないとおもう。
家の中に満ちている生臭い異臭。
「…何ですか?この匂い…さっきはこんなの…ありませんでしたけど……」
すかさずに、懐からハンカチを取り出して口元を押さえているウィル。
ルルちゃんは口元をもおおっていたマフラーで口元を押さえて空気を遮断しているようだ。
『――これは……』
『ー―まさか……』
あ。
ララちゃんが腰にさしている剣と私の剣から聞きなれた声がふと聞こえてくる。
ゴルンノヴァはどうやら多少は力の回復ができているようである。
ランツはその声に気づくこともなく、
「……こっちだ」
いって私達をそのまま屋敷の奥にと導いてゆく。
そのまま屋敷の中に入ってゆくことしばし、奥に進むにつれて異臭はどんどん強くなる。
「…タリムの旦那のところにやってきた襲撃者。あれは普通じゃない。
  だから、とりあえず屋敷の外を警護しようと出て行ったんだけど……」
いや、それはどう考えても逃げ出した。
としかいえないのでは?
「そんなとき、そこのあんたたち三人の姿がみえて、おいかけたのさ。
  そのうちに見失っちまって……で、とにかくこの辺りを警戒しつつ歩いていたら何か声がして……
  それも一つや二つじゃなかった。声がしたほうこうがこのデイミア邸でもあったこともあり。
  あの襲撃者だろ?もしかして手ひどくやられたあいつらがけしかけた張本人のところにもどって、
  何かしでかしてるんじゃないか。とおもったわけさ。ところが…だ。
  デイミア邸についてみれば、人っ子一人の姿もみえずに、この有様。
  周囲にはわかるだろうけど、こんな何ともいえないおかしな雰囲気がただよっているしよ……
  おっかなびっくりしつつも、はいってみれば……このありさまだ……」
いいつつも、辺りを見渡すランツ。
ところどころ左右についている扉の中には開きっぱなしになっているものもある。
「……悪趣味、というか、これは……」
思わずその中の一つをのぞきこんで素直な感想をぽつりと漏らす。
床は奇妙な何ともいえない色の液体で水浸しになっており、砕けてちった無数のクリスタル瓶の破片。
その中に、いまだうごめきつづけているいくつもの肉塊……
目も体毛もない、猫のような生き物。
床に横倒しになったまま、低いうなり声をあげ異様に短い手足をばたばたさせている。
「こんなっ!やっぱりあのデイミアってひとは悪ですっ!命を粗末にあつかっているなんてっ!」
ウィルもその光景をめにして目に何ともいえない涙をためて思わず叫んでいたりする。
そう。
ここにいるのはおそらくは、デイミアの実験材料として使われていた動物たちのなれの果て。
つまりは、合成獣(キメラ)を作る為の材料となった生物たち。
「……呪霊四王縛アストラル・ブレイク
ぽそりと何やらしばしその光景をみて黙っていたルルちゃんが小さくつぶやくと同時。
水浸しになっている部屋全体が一瞬光輝いたかとおもうと、次の瞬間。
バシュ……
あとかたもなく、実験材料として使われていたそれらの姿は精神世界面から干渉されてその体ごと消滅する。
おそらく、ルルちゃんは実験として扱われていた様々な動物たちを苦しませないように一撃で葬ったのだろう。
たしかに、みるに耐えない光景ではあったが……
「行こう。…目的の場所はここじゃねえ……」
ランツもまた、今のルルちゃんの行動に対しては何もいわない。
彼とて思いは同じなのだろう。
助からないのならば、せめても楽に…と。
ただ、その手段方法を彼はもっていなかっただけ。
誰も好き好んで罪がないと思われる動物たちを切刻もう。
という人間はそうはいない。
中にはそういう趣味の人間もいるにはいるのも事実だが。
そのまま、私達を促してさらに奥にと移動してゆくランツ。
そのまま、あまり気に留めないようにしてどんどん屋敷の奥に奥にと進んでゆく。
何ともいえない重たい雰囲気がずしりと重くのしかかってくる。
おそらく、ララちゃんがもっているゴンルノヴァと私のもっているアルテマは私達の負の気や、そしてこの場に満ちている気。
それらを吸収していることだろう。
世界が異なるとはいえ…魔族の本来の糧となるのは、負の力。
なのだからして……


                              -続く?-