第5幕~始まり~
「あたしが、ゆがみの中心?」
最初にその情報をもたらしたのは、ゼルガディス。
「ああ。奴さん、やってくれたな。おかげで1~20区域全域がここ赤星をのぞいて反乱軍に加わっちまった。」
「リナさんがゆがみの中心だなんて、嘘もいいところです!騒ぎの中心とかならともかく。」
「ア~メ~リ~ア~?!どーゆー意味かしら?んっんっん。」
「ああっ!冗談ですよっ!ええ、きっぱりはっきり、冗談ですぅぅぅぅっ!」
「じゃれあってる暇はないわ。」
すっぱり冷たく言い放ったのはミリーナ。
「反乱が大きくなりすぎてる。嘘にしろ何にしろ、こちらの軍に動揺を生むことは確かよ。」
「ミリーナの言うとおりだぜ。とにかく、噂のおおもとつきとめねぇことには…」
「無駄だ。」
ルークの言葉をさえぎって、ルビレイが言った。
「この噂、すでに混沌の都にまで及んでいる。まあ、動揺したいものには動揺させておけばいい。
お前たちのような幹部はそんな“事実”でリナを見限ったりしないだろう?
同じことだ。混沌の都にいるのは、そんなに薄情なやからか?」
かなり辛辣に言ってのける。だが、その中に隠された重要事項に最初に気づいたのはリナ。
「“事実”?どういうことよ? ルビレイ。」
さらっと流していたが、ルビレイは間違いなく“事実”と言った。
「この噂、ナスィルが流している、といえば分かるな?」
「!!まさか!」
「そのために、反乱軍に加担して!?」
ガウリイとリナが叫んだ。
「そういうことだな。ま、放って置けばゆがみはそのうち消えるでしょう。あの3人しだいですけどね。」
わけの分からない周りは説明を求める。だが、
「今はまだ話せないのよ。ごめん。でも、反乱が終わるころには、みんな分かるわよ。」
リナのこの言葉にしぶしぶそのときを待つことにする。
ところで、ヴァリルがふと気づいた。
「ルビレイ様。確か、あなたはリナ様やガウリイ様よりは位が低いはず。
なぜ、そのようにぞんざいな口調で話されるのですか?今までは思いっきり敬語だった気がしますが。」
「ん?ああ、地が出てしまったか。まあ、気にするな。これが本来の私の口調なのでね。」
と、ルビレイが適当にごまかしていると。
「ヴァリル、それは違うぞ。」
「そうそう。ルビレイはあたしたちより位が低いなんてことは全然ないわよ。」
当のガウリイとリナが助け舟を出した。
「むしろ、上なんじゃないか?」
「そうでしょ?『兄さん』。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『ええええええええええええええええええええ?!』
「ああ、気づいていたのか。なら、改めて自己紹介でもしようか。」
「私は、ルビレイ=フェノ=ツィーナ=シャブラニグドゥ。燐光神官にして、かの四皇の最初に創造した生命。」
「……うそだろ、おい。あの部下Sが、そんなたいそうなもんだったのか?!」
もはや部下Sとは似ても似つかなくなってきている。
「ちなみに、私やガウリイはリナと違って『創る』という意識化にあったから、ゆがみはない。」
一同声もない。まさか、あの部下Sがここまで。(作者も驚いている←まて)
「それより、反乱をどうするか考えたほうがいいと思うが。」
一同はっとわれに帰り、会議が再開された。
「さて、どうしようかしら。リナのほうはルビレイがかなりうまくやってくれてるし。あとは、私は行動を起こすだけでフィナーレね。」
第18区の一室で、ナスィルはシルファに戻っていた。
こん、こん、こん
(金刃神か。ちょうどいいかな?)
「どうぞ。」
声を変えようともせずシルファは言った。
「?失礼します。ナスィル殿、少しお話が……!?」
金刃神アウリトリスはそこにいる人物に驚いて、一瞬言葉を失った。
「光翼王…?!」
戸惑う金刃神のこころが手にとるように伝わってくる。
恐怖と少しばかりの憧れ、そして困惑。
「ちょうどよかった。この区域ごと、反乱軍の本部には消えてもらおうと思っていたのよ。」
どこか違和感のある、翳った微笑。
(殺され…いや、消される!)
「まだ、一度も出したことのない大技、その身で感じてみるといい。」
暗い言葉とともに、シルファは少し気を緩めた。
「無踊〈ダイ・ロンド〉」
神魔世界第18区は跡形もなく消滅した。
同時刻、混沌側の幹部たちはすさまじい喪失感を覚えた。とくに、フェスル、エル、ゼロスは。
「銀刃神は17区にいて逃れたか…。まあいい。利用するだけ利用してみなさい。ひとまず、つかまってあげてもいい……」
誰もいない、何も存在しない空間で、シルファはポツリとひとりごちた。