「わかりやすい 反乱」第三幕・2
数日後、リナに呼ばれ、やっとシルファは開放された。
「リナ・・・ありがと・・・」
「ゼロス・・・またやってたの・・・?」
リナがあきれて言う。
確かに反乱をほうって、よくやるもんである。
「いやぁ。元気なさそうでしたから♡それに、近頃の行方不明のお仕置きもかねて。」
ゼロスの言葉に、シルファの方がぴくりと震える。
(ナスィルで行動するために・・・はなれたほうがいいわね・・・)
そんなことを考えるシルファ。
「シルファ・・・あたしたちに隠し事しないで・・・」
「エル姉、ごめん。」
(でも・・・こうしなくちゃ始まらない・・・)
「・・・悲しいな。信頼されていないのか?」
「違う!」
フェスルの言葉に、青くなって否定するシルファ。
(でも・・・裏切りに、変わりない・・・)
「では・・・なぜ隠すんです?シルファ・・・」
ゼロスの、真剣な問い。
(宵闇も・・・おいていく。)
シルファは・・・覚悟を決めた!
「ごめんなさいっ!」
シルファはいきなり転移し・・・”ナスィル“となる。
ナスィルには・・・すでに、雑念などない。
「フェリトリス、状況は?」
「ナスィル殿!・・・塩星の魔王の腹心二人がまだ降伏しません」
「ほうっておけ。あれは魔王の腹心などよりもっと強い存在だ。」
(確か、ツィーナルグルド・・・“チェリー”の桃と牡丹・・・今は、ここの天井裏にいるな・・・)
「まず、1から20区の情勢を調査させろ。乗せやすいところから行くぞ。」
「あ、はい。」
フェリトリスは急いで18名を選出し、転移させる。
「21区からはどうするのですか?」
「あせるな。後で言う。管理区域が違うから、制度や仕組みも違う。もちろん、考え方もな。
それをしっかり知った上で行かねば、逆に滅ぼされるぞ。」
(ここの転移装置、1~20区用以外は、『キー』がないと働かないし・・・)
ナスィルは、ぱぱっと指示を出し・・・その最中。
どがぁあああああああああああああん!
“チェリー”のものが装置を壊そうとする。
「ちッ・・・余計なことを!」
とはいえ、予想して合ったために、どの機械にも結界が張ってある。
1~20区用以外は壊れたように見せておくことにする。
ナスィルはそばの兵士の槍を奪い・・・
ナスィルしか知りえない、精神体の急所を一瞬で切り裂く。
やられたほうは、銀の残像しか見ぬままに滅びてゆく。
「私は残りを始末する。後は任せたぞ。」
言ってナスィルは宇宙空間へ転移した。
光のある場所にいるなら、どこにいるかなどすぐにわかる。
残っているのは梅と牡丹と躑躅のみ。
「――梅!奴がここを見つけた!」
ナスィルを見て、牡丹が叫んだ。
「――彼と光翼王。この二人は同一人物だ。」
梅の持つ通信機から、ルビレイの声が聞こえてくる。
「ああ、バレたのか。なら――本来の姿でもいいか。」
“ナスィル”が“シルファ”に代わり・・・3人の目が大きく見開かれ・・・
どづづっ!
いともあっさりと滅ぼされる。
シルファは通信機を拾い、言った。
「――ルビレイ。私の邪魔はするな。」
「わかっています。ご随意に。・・できたら、協力しますけど?」
やはり、ルビレイはさとい。
「・・・ふむ・・・じゃあ・・・――リナとガウリイは私の正体に気づくだろうけど、その2人以外にばれないようにして。
気づいているでしょうけど、ガウリイはあなたの弟。リナは妹。協力して反乱軍の情報を集めなさい。
・・・私はこちらで『朱金王は実は歪みの中心だ』とうわさを流します。」
「な・・・!?」
「もっと早くに、言っておくべきだったんだろうけど・・・。
私たちの中で、『この子を産むことは、本来してはならないこと』という意識があったみたいね。
それが影響したの。だから、エル姉やゼロスやフェスル兄の考えを改めたいの。」
「私やガウリイは、あくまでも“創る”という意識化にあったために大丈夫だった・・・と。」
「そうよ。多分、私も子をなすことができるのだと思う。無の性質があったとしても・・・。ほんと、いままでなぜ気づかなかったのか。
・・・それはともかく、リナはたぶんショックを受けると思うの・・・そのとき、支えてやって・・・」
「了解しました。・・・なるほど、さすがと言うべきですかね。」
「心配性はほっとけばいいから。ンジャ、まあ頼む。」
「はい。」
「くそっ!これでは1~20区にしか出入りできん!」
「だが、通信システムは生きてる。何とかできないか?」
「すでに古代竜一族の手が回っている可能性が高い。」
「そういえば、第19区の奴、遅いな・・・・」
「もう、他の区域のものは戻ってきたのだがな・・・」
今回はそれぞれの世界の情勢調査だけなのだ。
「・・・ほろぼされたか・・・?これは・・・」
いきなり、転移してきたナスィルが言う。
「ナスィル殿?それはどういう意味で・・・?」
「・・・いや・・・来るぞ!」
19区の担当者が、ぼろぼろの状態で出てくる。
「どうした?!何があった?」
「だ・・・ダメです!第19区は、絶対!」
担当者レートは叫んだ。
「燐光の神王、金色の魔王、闇翼王、朱金王、精霊王、燐光神官、陽緑司、
黒翼王、白翼王、神王長、魔王長、書記長2人、その他混沌の一族幹部がほとんど赤星ゼフィーリアにっ!」
『なにいいいいいいいいいいいいいい!?』
一同まともにうろたえる。
「対策本部がありました。ただ、光翼王が見当たりませんでしたが。どうも行方不明らしいです。」
「ご・・・ごくろうだったな。」
「怖いな。19区は。」
「だが、それなら今、混沌宮は手薄なんじゃないか?」
「よ、よし、至急作戦会議だ!」
ナスィルは一人、ため息をつく。
「なにやってんだあいつらは・・・(怒)」
(仕事やってないじゃないのよ!リナやガウリイはやってるみたいだし、ルビレイがフェスル兄様の分までやってるけど!
大体、混沌の都に幹部がいないってどういう了見よっ!?)
……何度も言うようだが、仕事に関することではシルファは鬼である。
しかし、今回は出て行くわけにもいかないので、
(しかたない。私が全部やっておこう……)
混沌の都のほうはルビレイに言っておけばどうとでもなる。
(この件片付いたらお仕置きしてやる…!)
鬼気迫るオーラを放ちつつ-といってもやはり抑えているが-ナスィルは会議室へと向かう。
(さあ、これからが本番よ!)