管理人より:
アメリアちゃん、気づいてないのが楽しいですv
さて、ゼルが、あせったのは、アメリアのどのせりふ?(笑)
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アメリアの恋心 第16話
リナさん達と別れてから、わたしとゼルガディスさんは街道をそのまま進んで、とりあえず小さな街でその日の宿を取った。
別に、一足飛びでセイルーンまで転移する事もできたけど、
帰ったら今みたいに、一日中一緒にいることなんてできないし、
やっと2人きりになれたのだから、もう少しだけはこのままでいたかった。
「どうします?このままセイルーンまで転移しちゃいますか?」
とわたしが聞いたら、
「いや。1日くらい羽を伸ばしてもなんてことはないだろう。今日はこの辺りで泊まっていくか。」
とゼルガディスさんが言ってくれた。
ゼルガディスさんは、リナさん達と別れてから、すぐに姿を元に戻した。
だから、ゼルガディスさんはもういつもみたいに顔を隠したりしていない。
小さな町だけど、街道の要所だし、人通りは多い。
街に入って、いろんな人がゼルガディスさんを振り返る。
前みたいに、怪しいからとかって理由じゃなくて、ゼルガディスさんが凄くかっこいいからだと思う。
たくさんの女の人が、ゼルガディスさんを見るたびに立ち止まる。
綺麗な人もたくさんいる。
普通に見たら、わたしなんてきっと妹とかにしか見えないんだろうけど、
ゼルガディスさんが腕を組んでるわたしをそのままにしていてくれるから、恋人に見えたかもしれない。
それが嬉しかった。
まあ、人ごみが嫌いなのは、目立つからじゃなくてもともとみたいだけど。
キメラの時のゼルガディスさんより、
今のゼルガディスさんの方がずーっと目立っているような気がするのは、わたしの気のせいじゃないはず。
だって、どの女の人もわたしのこと不思議そうに見る。
「みんな見てますね。」
「そうだな・・・気にするな。放っておけば散る。」
ゼルガディスさんがさらっと言う。
「昔からそうなんだ。何が珍しいのか・・・まったく。」
「・・・慣れてますね。」
わたしの胸がチクリと痛んだ。
けど、次の言葉でそんな気持ちは全部なくなってしまう。
「まあ、お前もいるから余計に目立つんだろ。なかなかいない、美男美女のカップルだと思わないか?
一人で目立つのは勘弁して欲しいが、お前となら見せ付けてやってもいいな。」
きっと、他の誰が私の事子供だと思っても、ゼルガディスさんだけは、ちゃんと大人に見てくれる。
わたしがどんなに大人になっても、ゼルガディスさんだけは、わたしの子供の所を見逃さないんだろうな、と思う。
こうやって、わたしが不安に思ってること、すぐにわかってしまう。
見透かされてるみたいで悔しいけど、
わたしはゼルガディスさんの事これっぽっちしかわからないのが悔しいけど、それでも嬉しい。
「・・・顔が緩んでるぞ?」
「へっ?・・・あうぅ!!」
ゼルガディスさんの言葉に、わたしは慌てて顔を引き締めた。
そんなわたしを見て、ゼルガディスさんは喉で笑っている。
「酷いです!笑わないで下さい!」
「すまんすまん。」
ゼルガディスさんはそう言うけど。
ほんとは笑われた事が嫌なんじゃない。
ゼルガディスさんは、笑ったらもっともっと素敵だから、独り占めしたいだけなんだ。
こんなこと気づかれるわけにいかないから、わたしは殊更むくれてみせる。
そんな事をしているうちに、わたし達はこじんまりとした宿を見つけて入る。
「あれ・・・グレイワーズ様?もしかして、ゼルガディス=グレイワーズ様ですか?」
宿のおじさんが、驚いたようにゼルガディスさんを見た。
「あんたは・・・ああ、そうか。そういえば、この辺りにいると昔ロディマスが言っていたな。」
ゼルガディスさんが苦笑する。
懐かしそうな、でもちょっと悲しそうないつもの苦笑だった。
「ゼルガディスさん、ご存知なんですか?」
「いや・・・まあ、昔馴染みだ。」
おじさんは、人のよさそうな顔でわたしも見る。
「こちらのお嬢様は?妹さんなどはいませんでしたよね?もしかして・・・」
「ああ・・・そういうことだ。」
「かしこまりました。いい時に来てくれましたよ。一番いい部屋を用意させていただきます。もちろん、宿代はけっこうですから。」
さっさと鍵の束を手にして、階段を上っていくので、わたしは小走りでついて行った。
あれ?
足音がしない?
別に、普通のおじさんなのに。
でも、ゼルガディスさんの昔馴染みって・・・レゾさんの関係?
「一部屋でかまわないんですよね?必要なら、もう一部屋ご用意しますけど。」
「いや、かまわん。」
おじさんの言葉に、わたしの顔が赤くなる。
ゼルガディスさんそんなことちっとも気にしないで、淀みなく答えた。
「お嬢さん。後で昔話を聞かせてあげるよ。」
すれ違いざまに、おじさんはわたしにこっそりと言った。
昔話?
「後で、女房にも会ってやって下さいよ。会いたがってましたから。」
「ああ。」
おじさんがこっそり言った言葉はゼルガディスさんには聞こえなかったらしくて、
振り返りざまに言ったおじさんの言葉に、ゼルガディスさんは短く答えていた。
部屋は、小さな宿なのに広くてキレイ。
二つベッドが並んでいて、
でも、サイドテーブルのほかにちゃんとしたテーブルセットと長椅子も設えてある。
わたしは、ふと気がつく。
「ゼルガディスさん。」
「何だ?」
「わたし、宿帳に名前書かなかったんですけど、いいのでしょうか?」
別に部屋が1つでも、2人部屋だし、泊まる人間の名前はきちんと書くのが普通なのだ。
もちろん、わたしは本名を書いてしまうとまずいから、アメリア=ルーンとかってかなり省略して記入するようにしているけど。
「かまわんさ。お前の正体くらい、あいつはとっくに知ってるからな。」
「?」
「レゾの下で働いてた時の部下なんだ。主に、諜報担当の・・・な。
セイルーンの第2王女がお忍びの旅の途中で、一緒にいるのがリナ=インバースや、
かつての『白のゼルガディス』ってことくらいは、知ってても不思議じゃないさ。」
わたしは目を見張る。
「そんな・・・一応トップシークレットなんですけど。」
「蛇の道は蛇ってな。別に心配する事はない。所詮道楽程度だ。
そうでなかったら、お前を誘拐でもして身代金でも取ろうっていう馬鹿者が、もっとウヨウヨしてるぞ。
少なくとも、あいつはそんな事はしないさ。」
「はあ。」
まあ、確かにそんな噂が流れてたらすぐに大問題になってるだろうけど。
セイルーンの情報網だってけっこう凄いし。
父さんだったら、心配ないって笑い飛ばしちゃうだろうけど。
っていうか、最初から一部屋でって言ってたって事は、
もしかしてわたしがゼルガディスさんと駆け落ちしますとかって言ってたことまで知ってるのだろうか。
・・・ちょっと、まずいかもしれません。
でも、ゼルガディスさんが、はっきり大丈夫って言い切る人って。
信用してるって事ですよね。
レゾさん絡みで、いい話って、全く聞いた事がない。
悪い話すらもろくに聞いてないけど。
リナさんはもちろん何もいわないし、ゼルガディスさんからも聞いた事がない。
わたしと会う前に、戦って倒したって事くらいしか。
空気を入れ替えようと窓を開けると・・・
!!?
・・・・・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「どうした?」
窓の外を見て硬直しているわたしを見て、ゼルガディスさんも振り返った。
「・・・・・・。」
そこにいたのは、顔の上半分だけヒョコっと覗いている女の人だった。
頭をすっぽり布で覆っていて、いかにも怪しい。
ゼルガディスさんと目が合うと、にっこりと笑っている。
「はぁい♡ゼルぅ~♡お久しぶり~♡」
悪びれもなく、にこやかに手を振っている。
「お前な・・・何してるんだ?」
「覗きに決まってるでしょ♡ゼルが女の子連れで来たってゆーから、見に来てあげたのよ!えへっ♡」
嫌なものを見るような顔をして、
「いい年して可愛いこぶるな、気色悪い・・・何だ、その格好は?」
とゼルガディスさんが言うと、ヒョイっと鉄棒の要領で部屋に入ってきた。
背が高い。
頭を覆っている布と同じ色の服を着ていた。
「あら、嫌だ。相変わらずデリカシーがないのね?レディに年のことをゆーなんて!」
「・・・お前はいつからレディになった?」
「失礼ね!いつでもどこでもレディよ?どこをどー見てもそうでしょ♡」
「あの・・・ゼルガディスさん?」
「ああ、すまん。こいつも昔馴染みだ・・・心底嫌だが。」
ゼルガディスさんが溜息をつく。
「あらぁ!!可愛い♡ゼルってばこうゆーコがタイプだったのねぇ!!」
彼女はそう言って、わたしをギュウっと抱きしめた。
・・・彼女?
・・・あれ?
確かに、声も顔も女の人なんだけど・・・。
「おい、離せ!」
ごちんっ。
ゼルガディスさんの拳骨が、その人の頭にヒットした。
「いいじゃない、けちぃ!男の嫉妬は醜いわよ!!」
「そうゆー問題じゃないだろ!!いいから出て行け!!」
そう言って、ゼルガディスさんが窓からその人を蹴り出して、バタンっと乱暴に窓を閉めた。
後に残ったのは、硬直したままのわたしと、舌打ちするゼルガディスさん。
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
しばしの沈黙の後、先に口を開いたのはゼルガディスさんだった。
「おい、あめりあ。」
「・・・・・・・はい!?」
「今見たものは全て忘れろ。」
「はい(汗)」
何だったのでしょうか、今のは。
ゼルガディスさんは溜息をついて、チョイチョイっと指でわたしを招き寄せる。
ベッドに座ったゼルガディスさんの腕の中に、わたしはすっぽりと収まった。
「お前に・・・レゾの話はした事がなかったな。」
「はい。」
「聞きたいか?」
「聞きたいです・・・話してくれるなら。」
わたしは、そのままゼルガディスさんの腕の中で、長い話を聞いた。
レゾさんの事。
ゼルガディスさんが「悪」だった時の事。
どうして強くなりたかったのか。
聞いてたら、涙が勝手に出ていた。
苦しかったのは、わたしじゃなくてゼルガディスさんなのに。
それなのに、我慢しようと思っても、いくらゼルガディスさんの服で涙を拭っても、わたしの目は乾かなかった。
ゼルガディスさんは、どんな気持ちだったかなんて1つも言わない。
でも、だから余計に心が痛かったんだと思った。
「どうして泣くんだ?」
「ゼルガディスさんが・・・泣けなかったからです。」
「・・・何でそう思う?」
「泣けたんですか?」
「どうだっただろうな・・・。もう昔の話だ。だが・・・。」
「ゼルガディスさん・・・前に言ってくれましたよね?泣く時は、ゼルガディスさんのところで泣けって。
だから、これからはゼルガディスさんが泣きたくても泣けない時は、
わたしが代わりにいくらでも泣きますから・・・だから・・・傍にいさせて下さいね。」
泣いてる所を見られるのは嫌だった。
だから、必死に我慢した。
そんなわたしに、ゼルガディスさんは
『知らないところで泣かれるのは敵わない。どうせ泣くなら、俺の前で泣け。』
って言ってくれた。
ゼルガディスさんには、そう言ってくれる人がいなかったのだと思った。
「無駄遣いだ。」
「そんなことはありません!とっても有意義な使い方です!!」
「・・・そうか。」
いっぱい泣いて目が腫れたわたしの代わりに、ゼルガディスさんが氷を取りに行ってくれた。
冷やすと冷たくて気持ちがいい。
ゼルガディスさんは、優しい言葉を言ってくれるわけじゃないけど、冷たい言葉の先には、優しい言葉がいっぱい隠れている。
泣いて疲れて眠ってしまって、起きた時には辺りはもう暗かった。
部屋の中では、ランプの明かりがユラユラと揺れていた。
ゼルガディスさんはわたしが起きるとすぐに気がついて、読んでいた魔道書から顔をあげた。
身体を元に戻す事とか関係なしに、読書家なのも変わらないみたい。
我ながら情けなくなるけど、起きた時にはお腹がペコペコで、
それだけならいいのに大きな音でお腹が鳴ってしまって、いつもみたいに笑われた。
「飯でも食いに行くか?」
「はい!!」
ゼルガディスさんの腕を引っ張って1階の食堂に行くと、もうそんなに賑わってはいない。
お酒を片手にしているばかりだった。
もっとも、宿と同じで小さい食堂だから、そんなにたくさんテーブルもないのだけれど。
「遅かったですね。女房が腕によりをかけて待ってたんですよ。」
最初のおじさんが、ニコニコ顔でメニューを持って来る。
「適当に見繕って持ってきてくれ。」
「承知しました。お嬢さんは何かご希望はありますか?」
「うーん。じゃあ、お魚が食べたいです。」
「飲み物は?ゼルガディス様は、ワインなどでかまいませんよね。
お嬢さんには・・・あ、いいのがありますよ。ちょっと待っててくださいね。」
ゼルガディスさんとわたしの言葉に頷くと、飲み物を勝手に決めてさっさと行ってしまう。
持ってきてくれたのは、さっきの布をかぶった人。
今度は、ちゃんと男の人の格好をしていたので普通に見えた。
ゼルガディスさんは嫌な顔をしたけれど、かまわずにやってくる。
持っていたのは、薄いピンク色をしたジュースみたいなお酒だった。
「苺のワインなのよ。ほとんどお酒は入っていないから、これなら平気でしょ?」
ウィンクをするその人は、わたしの前にグラスを置いて、隣のテーブルに座った。
「ゼルってば睨まないでよ。いいでしょ、これくらい?昔話にお酒はつき物よ。」
「俺は、昔話なんぞするつもりはない。」
「あら?お嬢さんは聞きたいんじゃない?」
「いえっ・・・その、えっと。」
言葉に詰まったわたしに笑って、その人は自分のグラスを掲げた。
「兄貴達には悪いけど、先にやらせてもらいましょ?出会いと再開を祝して・・・乾杯!」
ゼルガディスさんは溜息をついて、わたしは何だか嬉しくなってグラスを合わせた。
チンっと涼しい音がする。
「自己紹介がまだだったわね。わたしは、メイス=ライバークよ。」
メイスさんの話し方は、そのまま地らしい。
この宿のおじさんの弟さんということは、さっきゼルガディスさんに教えてもらった。
ゼルガディスさんはぶつぶつ言っているけど、メイスさんはそんなのどこ吹く風で気にしていない。
「あっ、はい。じゃあ、わたしですね!わたしは・・・」
「すとーっぷ!!名乗るのは基本だけど、やめておくわ。
アメリアさん?ただのアメリアちゃんって呼ばせてもらってもいいかしら?」
「はい!!」
セイルーンのアメリアじゃなくて、ただのアメリアと呼んでくれる事が嬉しかった。
苺のお酒を口に含むと、甘ーい味と香りが広がる。
あっという間に飲んでしまって、
ゼルガディスさんは「いいかげんにしとけ」って言ってたけど、メイスさんは喜んで瓶ごと持って来てくれた。
次々と運ばれてくるお料理も美味しい。
わたしはお料理をメインにお酒を飲んで、ゼルガディスさんとメイスさんは、お酒をメインにお料理を食べていた。
もっぱら、話しをしているのはわたしとメイスさん。
「じゃあ、ゼルと会った時って、まだ岩と針金だったの?」
「おい。」
「そうですよー!何をどーやったらああなるのか、そればっかり気になりましたよ。
正義のヒーローみたいに窓突き破って登場したのに、見るからに怪しそうな人で・・・」
「こら待て。」
「そーよねえ。ゼルってばいかにも胡散臭いもんねぇ。」
「でもぉ、よくよく見たらとってもキレイじゃないですか。びっくりして見とれちゃいましたよ!」
「お前ら・・・」
「それで、一度仕方なく女装した時があったんですけど、あまりの綺麗さにみんなびっくりしちゃったんですよ~!!」
「なぁに、ゼル!!そんなことしてたの!?
あ、でも昔よくレゾさんにそれで遊ばれてたわよねぇ(しみじみ)・・・げっ!!」
メイスさんが青くなるのでゼルガディスさんを見ると!
「??!いけません!!いけません、ゼルガディスさん!!」
「離せ、アメリア。こいつはちょっとくらい燃やしても何ともないような気がするんだ。」
目・・・目が据わっちゃってるんですけど(汗)
ファイヤーボールは、ちょっとどころじゃありません!
「せめて、凍らすくらいにしてください!!そんな事をしてはリナさんと同じになってしまいます!!」
わたしの懸命な説得によって、ゼルガディスさんはハタと我に帰ってくれた。
ううっ。
リナさんに似てきたのはわたしだけじゃないです・・・。
ゼルガディスさんだってそうです。
「・・・アメリアちゃん?凍らすって?」
「いえ、凍ったくらいならお湯をかければ元に戻るので。
安心してください!わたしたち身を持って確認しましたから!!全く問題はありません!!」
あのリナさんに。
時には燃やされて。
時には凍らされて。
そんでもって、ドラグスレイブには巻き込まれるし。
「そうだな。リナのようになったらお終いだな・・・。」
我に帰ったゼルガディスさんが、グラスのお酒を飲み干した。
チラッとわたしを見た目が・・・ちょっと怖いかもしれない(汗)
「・・・あなた達、どうゆー生活してたのよ(汗)リナ=インバースって・・・噂どおりなのね。」
メイスさんがちょっと怯える。
でも、そんなの甘いです!
「いえ!噂なんて大したことありません!!それはもう恐ろしい!!
いつでもどこでも平気で呪文をぶちかまし、ちょっと嫌な事があると、
ドラグスレイブで山を吹っ飛ばしたり、食欲を満たす為ならば、
ゼルガディスさんを平気で船の碇のかわりにするような人です!!」
「それはお前も似たような・・・」
「なおかつ!言うに事欠いて、恋の相談をしたときには馬鹿にされ、
告白する時もファーストキスの時も覗かれそうになり、初夜の時は聞き耳を立てられそうになり!
大変でしたよね、ゼルガディスさん!?」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
何か、お店中が沈黙している。
ゼルガディスさんが、赤くなって震えている。
「お前は・・・そんな事をぺらぺらしゃべるなぁぁぁぁぁあああああああ!!」
あれ?
わたし・・・変な事言いました?
「いや・・・たぶん何にも考えないで言ってるんだろうけどさ。たいしたもんだね、アメリアちゃん。」
「?」
「アメリアちゃんが来てくれて、よかったわ。」
よくわからないままのわたしの肩に、メイスさんがぽんっと手をおいた。
何で、ゼルガディスさんが溜息を吐いてるんでしょうか?
結局よくわからないまま、他のお客さんには褒められて、
ようやくやって来た宿のおじさんや女将さんと楽しい時間を過ごして、わたし達は部屋に戻っていった。
ちょっとグッタリしていたゼルガディスさんが、部屋に戻るなりわたしに向き直る。
「おい、アメリア。ずいぶん言いたい放題言ってくれたな。」
言いたい放題・・・?
うっ。
お酒が入っていたとはいえ・・・ゼルガディスさんに女装の話は禁句でした。
これは・・・まずいです(汗)
「す・・・すみません。」
「別にいいさ。体よくお前が俺達の関係を暴露してくれたから、何に気兼ねする事もなくなったしな。」
ゼルガディスさん・・・酔ってます。
ってゆーか、暴露って何ですかぁ!?
つかまれた腕が痛くて、離そうとしたらそのまま足がもつれ込んで長椅子に倒れこんだ。
「ぜ・・・ぜぜぜるがでぃすさん!!明日も早いですし、今日はゆっくり寝ましょう!!」
「そうだな、夜は長いんだ。なぁに、心配するな。
この際もう1日2日延びてもかまわんだろう。どうせ、一瞬でセイルーンには着けるんだからな。」
いつもより強引な、食べられてしまうようなキスをされて、そのまま長椅子に押し倒される。
「聞き耳立ててるヤツがいるぞ?聞かれたくないなら、自分で何とかしろ。」
「ううっ。」
そんなのできません。
こんな状態では、無理です。
いつもより、たくさん身体にキスの痕を残される。
見えるところにもたくさん。
いつもより、ずっとずっとずーっと長い夜が終る時には、もう夜が明けていた///
ゼルガディスさんが、ちゃんと声が漏れないようにしていてくれた事を知ったのは、ようやく起きてからのこと。
ちなみに、その日はホントに立てなくて・・・///
セイルーンに着いたのはその次の日の事でした。
父さんに会う前に・・・あの事はゼルガディスさんに話しておかなくてはならない。
あの事とは・・・わたしが「どうしょうもなければ駆け落ちします。」とまで言ったおかげで、もう段取りができているという事。
父さんにどうやって話すべきか考え込んでいるゼルガディスさんには申し訳ないけど。
あの時はまさか、あんなに簡単に話が進んでしまうとは思わなかった。
止めなかったのは事実だけれど。
でも、父さんは最初から反対していなかった。
むしろ・・・既成事実さえ作ってしまったら、ゼルガディスさんは大人しく婿に来るだろうから、頑張れって言われたし///
うううっ。
緘口令が敷かれているとは言え。
絶対にバレます。
こんなに勝手に話し進めてたのバレたら、ゼルガディスさん怒るだろうな。
「あのですね、ゼルガディスさん!」
「何だ?」
王都セイルーンに程近い森に転移してきたわたし達は、そこから歩いて城下に向かっていた。
「あのですね・・・お話しておかなければならない事があるんです。」
「・・・?」
わたしは拳を握り締め、宣言した。
「ゼルガディスさんお婿さんに来てください!!」
コケッ。
ゼルガディスさんが、その場にこける。
「ん・・な・何を今さら。それを頼みに行くんじゃないのか?」
「それは、そうなんですが・・・。あのですね、わたしがこの間まで王都にいたときに、
もうイヤです!お見合いなんてまっぴらですぅ!!って言ったの覚えてますか?」
ちょっと考えてからゼルガディスさんは頷く。
「・・・ああ。」
「あの時、なかなか上手く大臣達を説得できなくてですね、つい・・・」
「?」
「わたしは、ゼルガディスさん以外とは結婚する気はありません。
許してくれないなら、駆け落ちします!!って言ってしまったのですよ。」
「・・・・・。」
沈黙。
ううっ。
やっぱり。
「それでですね・・・大変申し訳ないと思ったのですが、
いろいろあって、いつの間にかゼルガディスさんの後見人まで決まってしまってまして。」
「・・・それで?」
「ホントは、ゼルガディスさんに会ったらすぐに渡すように、
父さんから与かっていたんですけど・・・父さんの許可はほれココにです!」
わたしは、ポケットの中から一枚の羊皮紙を取り出した。
わたしは、何て書いてあるのかは知らない。
ゼルガディスさんは、訝しがりながら封を切った。
・・・・・・・。
ゼルガディスさんが、固まっている。
なんて書いてあるのでしょう?
「そ・・・それでですね。あとはゼルガディスさんを緊急にゲットしてくるように!
と言われてまして・・・きっとゼルガディスさんを見たら大臣達・・・
小躍りして喜ぶと思うので・・・一応、覚悟しといて欲しいのですが。」
聞こえているでしょうか・・・?
別に、悪い事は書いていないはずなんですが。
ゼルガディスさんは溜息を吐いて、わたしに羊皮紙を見せてくれた。
そこには、
――国事に携わる覚悟が決まったら早めに来てくれ。式の準備は万端だ BYフィル♡―
――PS アメリアはしぶといから早めに諦めるが吉。身体の事は気にするでない!
まったく問題ナッシング!!どっちにしても逃げられん!!!―
「お前もお前だが・・・親父も親父だな。」
父さん。
ハートマークはないと思います・・・。
何だか、見当違いな感想を口にして、わたしとゼルガディスさんは顔を見合わせた。
「・・・式のことがリナ達の耳に入らんようにしないとな。」
「はい(汗)。」
どう説明するべきか・・・ちょっと頭を悩ませながら、わたし達はセイルーンへの道を急いだ。
実は、そこまで話が進んでいた事まではゼルガディス自身知らなかったが、
旅立ちを決める前にゼルガディスとフィルが話す席を持ったとき、
ゼルガディスも既成事実の辺りをフィルオネル殿下にちらつかされていたのは、アメリアも知らない。
-第17話へー
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管理人よりのあとがき:
薫:フィルさん・・・・さすがです(笑)
さて、次回にて、スレ小説、本編終了後に入ります。