管理人より:
     

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        アメリアの恋心    第14話




「なっ…なっ…なっ…なんですってぇぇぇぇええええええ!!?」
肩よりも少し長い所で切りそろえられた黒い髪、ウェイトレス姿のその女性は、手にしていた書類をグシャッと握り、絶叫した。
その顔が、どんどん青ざめる。
ぽてっ。
その手から、力なく数枚の紙がまとまって落ちた。
「ふふ・・・ふふふ・・・わたし、もうダメかもしれないわ。」
長い金髪の女性が、それを拾い上げ読み上げる。
「この度の事、主犯格は解任された火竜王の一族の神族なり。」
ヨロヨロと座り込むその女性は、知る人ぞ知る、赤の竜神ルナ=スィーフィード。
いや、仮に見知っていたとしても、精彩を欠き憔悴しきった彼女の姿を、信じられる者があろうか!?
おそらくいない。
先日、エル様より勅命を持って命じられた馬鹿どもの身元の確認だったが、
あっけないほど早く身元が割れ、意気揚揚と魔王シャブラニグドゥの元に足を運んだときだった。
ルナは、先日あまりに無能な部下、火竜王を凄惨たるお仕置きをした後に解任した。
公表こそしていないが、後任も決まっている。
本人には承諾を取っていないが、まあそれはどうでもいい。
つい二日ほど前、リナ=インバースら一向に牙を向けた犯人。
それが、その火竜王の一派だったとは!
どういうつながりかはわからないが、いつの間にかレティウスというバックと結びつき、力を得たに違いない。
何故か・・・ひとえに、自分とリナ=インバースの一派への復習である。
レティウス自身は、それでリナ本人がどうにかなるとは思っていないだろう。
リナの本質は、金色の魔王の腹心の一人なのだから。
様子見がてら、力を与えたのだろうが。
頭が頭なら、部下も部下。
頭が滅んでも、部下は残る。
それは当然のことなのだが、まさか…。
「スィー・・・死ぬなよ。」
レイスの言葉が重く響く。
これはもう、エル様にお仕置き決定。
しくしくしくしく。
ルナの瞳から、滝のような涙が流れる。
「とりあえず、大至急でゼルガディス様に報告してくれ。相手の力の程はわかっているのか?」
「神官や将軍クラスではお話にならないですわね。まともに戦えるのは、私達くらいでしょうか。」
レイスの言葉に、海王ダルフィンが応えた。
「早々に手配するのは難しいかと思われます。グラウが何か策動をしているようですし、彼はあてになりません。
  かと言って、天竜王、地竜王に出てきてもらうとなると・・・どちらにしてもゼルガディス様の指示を頂くのが賢明かと存じます。」
ダルフィンに頷きつつ、ゼラスは魔王に奏上する。
「では報告はゼラス、お前がやってくれ。わたし達は…スィー、わたしも一緒に混沌宮へ行こう。
  どちらにしても、一蓮托生だ。わたし達が戻ってくるまで、ゼルガディス様の指示に従ってくれ。」
いつ戻ってこれるかはわからないが・・・。
声にはせずに呟いて、レイスは空を仰いだ。
上司が竜神を伴って姿を消すと、2人の部下は合掌した。
ご愁傷様です・・・と。
翌日の夕刻には、ゼルガディスからの通信がゼラスの城に入った。
翌早朝、時空回廊があの場所で開く事。
それまでに、急に彼らが現れても何の不都合もないように、例の宿の手配をしておくこと。
その夜に、関係者に事の詳細を明らかにすること。
それらの事が、伝えられた。
とりあえずは、胸を撫で下ろす事ができた。
アメリアの無事がゼルガディスの口から伝えられ、ゼルガディスが殴りこんでくると言う事は回避できそうであるから。
リナ=インバースと行動を共にしていた彼なので、度々アストラルサイドから垣間見る事はあったが、
彼の性格から言ってこちらの世界が崩壊するとか、ゼラス等をベラボウにこき使うと言う事もないだろう。
これから起こりうる事を知っていればこそ、この世界の魔族や神族が疲弊するわけにはいかないのだ。
覇王はすでに策動を始めている。
彼らがあちらでどのくらいの時を過ごすのかは定かでない。
とりあえず今はゼルガディスが司令塔である事には変わりないので、
ゼラスはダルフィンと共に、当面の仕事をかたずける事にした。
天竜王と地竜王にも連絡をとり、満たない部分がないかを確認しつつ、時が過ぎるのを待つ。
火竜王の件はスィーフィードのミスだが、こればかりは仕方がない。
スィーフィード自身が、普段何かと間抜けな我らが上司のフォローをして回っているのも事実なのだから。
面白くはなくても、上からの命令には逆らえない、魔族といえば縦社会なのである。



                      -第15話へー




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管理人よりのあとがき:
        薫:今回は、ルナさんたちのサイトのお話ですね。
          がんばれ!ルナ!死んだら、おそらくは。
          代理として、甘えん坊のエメロードがやってくるぞ!(かなりまて!
          まあ、冗談はほどほどにして・・・・・次、いくのです・・・