管理人より:
今回は、ゼルガディスとルナの一人称ですvはいv
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アメリアの恋心 第6話
軽い夕食を食べ、アメリアをリナに任せると、俺は街を出た。
一応街門を通るには通行証が必要なのだが、ライティング程度の魔術しか発達していないこちらの世界である。
暗くなった所を見計らって、空を飛んで行けば何のことはない。
別に宿で待っていてもよかったのだが、
スィーフィードは妹に会いたくないようだったので、街からは出ていた方がいいと思われた。
昼間、リナに話したことは嘘ではない。
だが、真実でもない。
そう思うと、どこぞのパシリ魔族のようで、気が重くなる。
まあ、リナが警戒しておくと言うのだから、よほどの事がない限り問題はないだろう。
たとえ性格がどんなでも、頼りになる事には変わりない。
今まで、リナには散々助けられてきたのだ。
自分が知る限り、リナとガウリイにかかれば、怖いものはそうそう無いのだ。
ガウリイが言わなくても、俺にもリナが情に厚く、思いやりのあるヤツだとわかる。
照れ隠しに、呪文をぶっ放すのはどうかと思うが。
今回の事も、口には出さないが、リナなりに俺達を巻き込んだと思っているに違いない。
俺もアメリアも、全くそんな事は思っていないが。
だからこそ、俺が別に行動すると知ると、すぐさまガウリイの剣などを用意したのだろう。
実際アメリアは、今の所普通に呪文は使えるが、
あの恥ずかしいネーミングの体術は・・・さすがに控えてもらいたいもんである。
そもそも妊婦は魔力が著しく落ちるため、リナからしてみればアメリアは戦力外だ。
おまけにガウリイが使えないとなると、相当不便だろう。
それは、身を持って経験している。
悪い予感・・・リナのところにゼロスが現れたとなると、リナがそう感じても不思議は無い。
何せ、頭がいいのだ。
リナは、ガウリイがクラゲのふりをしていることに気が付いていないし、
おそらくガウリイも、しばらくは気づかせるつもりはないだろう。
アメリアはあの通り、暴走してどっかの世界に行ってしまう。
だからこそ、何かあると必然的に俺が話すことになるのだが、何とかして欲しいものだ。
リナには気づかれないように、寝た振りしながら殺気を飛ばしてくるのだ、あの旦那は。
まったく、あれほど頭がいいのに、よく気づかないものだ。
俺やアメリアでさえ気がついているのに。
もっとも、リナのいない所では、ガウリイもそんな素振りを結構見せていたが。
まあ、それも旦那を信頼しているからか。
兎にも角にも、とりあえず街道を進み、適当な場所に腰を下ろす。
ほどなくして、スィーフィードが現れた。
「お待たせいたしました。」
朝と寸分違いない格好で、スーフィードは膝を折り頭を下げる。
「いや。」
「では・・・。」
「待て。その前に確認しておきたい事がある。」
俺は、呪文を唱えるスィーフィードを制した。
「何でございましょうか。」
確認しておかなければならない事がある。
少なくとも、リナ達を巻き込む事は出来ない。
おそらくリナもガウリイも、何のためらいも無く、俺達の力になろうとする。
「今回の事で、魔族と神族の連中が動かないのは事実だな。今回というか、俺達の事で、だ。」
スィーフィードは息を呑む。
「確認だ。昨日ゼロスがリナにそんな事を漏らしたらしい。」
「・・・左様でございましたか。」
「神族も魔族も手を出さない。だが、別に手を出してきかねない連中がいる。そうだな?」
溜息が、空気に溶ける。
まだ肌寒い夜風が、木の葉を揺らした。
その音だけが、辺りに響く。
「少なくとも、我々神族、魔族は動きません。
もし動く事があれば、全力で阻止するよう、獣王、海王、覇王とも話しはついております。」
噛み締めるように、ゆっくりと離す高い声が、かすかに震えている。
確かに、リナとよく似ている。
「私はあくまでも一世界の神に過ぎません。詳しい事は、存じません。
何よりも、ゼルガディス様に思い出していただく事で、活路が見出せる、というのが、私共の見解なのです。」
「では、神族、魔族以外の連中が手を出してくるという可能性は?」
「・・・・・否、とは申し上げられません。ですが、我々が全力を持って阻止する事を、お約束させていただきます。」
彼女の言っていることは、真実だろう。
しかし、彼女が全ての真実を知らされていないことも、また事実である。
ふう。
溜息をついて空を見ると、いつの間にか厚い雲に覆われている。
高位の魔族が動いているとなれば、今の自分が留まった所で、何の役にも立たない。
であれば、一刻も早く、こちらはこちらのやるべき事を終えるしかない。
「わかった。もう一つある。」
俺は、吐き出すように言った。
「何でございましょうか?」
「俺のことは、呼び捨てでかまわない。昔はともかく、今の俺は、あんたの妹の仲間のゼルガディス=グレイワーズ、だ。
俺も、あんたの事はルナ、と呼ぶ。敬語もやめろ。アメリアにもだ。あいつはそういう風に扱われるのを嫌がるんだ。」
前に、ヘルマスターに連れ去られたガウリイを助けに行くときに、アメリアが言った。
「聞きたくありません。
だって、聞いてしまったら、わたしはガウリイさんを助けに行く事を止めなくてはいけないかもしれないから。
そんなのは嫌だから、聞きたくありません。ただガウリイさんを助けに行く。それでいいじゃないですか。」
と。
仲間だから・・・その中に自分も含まれている事が、どんなに嬉しかっただろう。
全てが終ってから、たまたまリナと2人で酒を酌み交わす機会があった。
「あの時くらい、あんた達に・・・仲間ってヤツに感謝した事は無かったわ。」
と、ポツリと漏らすリナの言葉を、俺はただ聞いていた。
「だからあんたも、水臭い事考えないで、何かあったらあたし達にも声かけなさいよ。
少なくとも、あたしもガウリイもアメリアも、あんたの力になりたいって思ってるんだから。」
多少酒が入っていたからか、お互い、普段は口にしないような事を喋った。
俺は、感謝している。
あいつらの様な人間に出会えた事を。
そして、仲間だと言ってくれた事を。
そのとき、ようやく何かがふっ切れた。
「・・・・・わかったわ。」
しばしの沈黙の後、ルナはそう言った。
「じゃあ、行きましょう。早いほうがいいわ。」
ルナが手を一振りすると世界が暗転し、数瞬後、目を開くとそこは紛れも無くカタートだった。
星の配置が、紛れも無くそれを表していた。
氷漬けの魔王の元へ向かう道すがら、
「わたしの、知っている限りの事を話すわ。」
と、わたしは切り出した。
「もっとも、すぐに思い出す事でしょうけど、わたしが何を知っていて何を知らないのか、確認したいのよ。
よくわからないことが、本当にたくさんあるのよ。」
エル様とユニット様は干渉しない。
そう言っている仰っているわりに、干渉しすぎているし、こちらの慌てぶりを楽しんでいるようでもない。
「まあ、エル様とユニット様のお考えなんて、わたしには到底理解できないのだけれどね。」
そう前置きして、昼間、ゼラスやダルフィン、ゼロスに話した事を繰り返した。
ゼルガディスは、相槌を打つでもなく、ただ足早に進みながら私の話を聞いていた。
(そう呼べといわれたし、そうする事にする。)
昔・・・とは言っても2000年前、永遠の命を持つ私たちには、
つい昨日のようなものだが、わたしは始めてゼルガディスとアメリアに会った。
その時は、まだ神族も魔族も今ほど疲弊していなかったし、かと言って拮抗していたので概ね平和だった。
神族と魔族は犬猿の仲といっても、それはあくまで下っ端だけの事。
一度事が起きればぶつかり合うが、それはあくまで仕事であって、上層部はそれ以外では結託している。
では、事とは?
なぜ5000千年前の神魔戦争、1000年前の降魔戦争のような事が起こるのか。
文明が頂点に達すると、人間という生き物はとんでもない事をしでかすのだ。
例えば、自分達の住まう星ごとぶち壊すような。
何世代にも渡って、生きとし生ける者全てに害を与えるような物質を作り出し、
それを乱用しようとする。
長い時間をかけた結果は、大概それである。
そうなる前に・・・ということはしない。
それはそれで、人間の進化の結果なのだから。
その後始末の為に、神と魔が動員されるのが、神と魔の戦争なのだ。
まあ、一概にそうとも言い切れない部分もあって、エル様の退屈しのぎだったり、
ちょっとした痴話喧嘩のもつれだったりする事もあるのだが、それはご愛嬌というものである。
そんなこんなで、この世界でリナス様とカウリス様が姿を消してから、
50億年、とりあえずシャブの馬鹿との口喧嘩にも飽きてきたそんな時、彼らに会った。
ゼルガディスとアメリアは、ユニット様の腹心だが、それでは言い切れないところがあった。
彼らは、ユニット様が、その力を数百億年も使えなくなるほど使って創ったのだと伝え聞く。
リナス様とカウリス様は、なんと言ってもやる事が過激である。
親しくはしてもらっていたが、とにかく過激なのである。
力を使う事を出し惜しみしたりしないし、
一度リナス様にちょっかいをかけようとする者があれば、カウリス様が暴走し、銀河の一つなど軽く消滅する。
もっとも、リナス様はその原因が自分にあることなど一向に気がつかないので、そんな事が後をたたない。
おまけに、その後の痴話喧嘩の余波が、全世界を震撼させる。
赤の世界が今の所無事なのは、運がいいとしか言えない。
そんな時の彼らを宥めるのが、
ルーカス様であったりミリーヌ様であったり、ゼルガディスやアメリアだったりするのだが。
ゼルガディスとアメリアは、ほんの些細な喧嘩をしているところすら、見たという話は聞かない。
その分、一度喧嘩をするとかぶち切れたりすると手がつけられない、
というのが上層部の意見だが、永遠を生きる存在の私たちが、
本当に稀だとか、たまにとか、久しぶりとか言えるほど、たまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁにしかそういう事はないらしい。
彼らは、ユニット様がはしゃいだ後くらいしか、その力を使わないらしい。
それ以外は、アメリアが熱く語りかけ、
ゼルガディスがフォローをすると丸く収まるというのが通例だと、
ちょっぴり引きつった顔で、リナス様が言っていた。
あまりいい思い出ではないらしい。
「いやもう、あれは一種の精神攻撃ね。
全てのやる気を失うってゆーか、あの演説を終らせる為なら全てがどうでもよくなるわ。」
というのが、リナス様の言である。
別に物静かなという訳ではないし、ゼルガディスの居城は荒くれ物が多いという噂だった。
だから結構興味もあって、
彼らが転生した後はちょくちょくアストラスサイドから除いていたのだが、なるほど、という感じだった。
確かにあれは、恥ずかしい・・・というか、見ている分には笑えるが、その場にいると全てがどうでもよくなるというのは頷けた。
なかなかおもしろいコンビである。
「つまり、神族、魔族連中が手を出すとすれば俺たちで、それはあんたとゼロスたちが手を回している。
だが、それ以外となると、狙ってくるのは俺たちだけでなく、リナとガウリイも含めての話になってくる。
さらに、その可能性が皆無とは言い切れない・・・という事だな。」
ゼルガディスの言葉に、私は頷いた。
「まだ時期尚早なのよ。向こうにしても、今は手を出してくる理由がないしね。
でも、仮にそうなった時、どのくらいの勢力なのかは、皆目見当もつかないわ。
本来なら、わたし達じゃとても勝負にならないけど、今はこの世界の存在になっているわけだしね。
だから、ゼロスの手におえないときは、獣王あたりも出てくるし、何とかなると思うわ。」
歩を進めるごとに、瘴気の渦が濃くなる。
結界を張っている為、雑魚の魔族や亜魔族が近寄ってくる事は無い。
触れようものなら一瞬にして消滅する事くらい、一応理解できているらしい。
別に、わざわざこんな辛気臭い所を歩いて進まなくても転移してしまえばすむのだが、
ゼルガディスと話す時間がほしかった。
それに、今は非常時で、神と魔が結託している事を示す必要がある。
そういうわけで、ここぞとばかりに神気を発しながら、てくてくと足を運んでいた。
その辺の事情も飲み込めているのか、ゼルガディスも何も言わずについてくる。
まったく、面倒な事この上ない。
それもこれも、シャブが魔王のくせに間抜けだからだ。
だいたい、わたしの力は大分戻ってきているのに、
さくさく残りの力の欠片を集めずに、こうやって人間の身に転生を繰り返しているのは、あの馬鹿がヘマばかりやって、
回復の暇が無いほど、エル様にお仕置きされているからである。
「面倒ね。一気に行くわよ。」
短い呪文を唱えると、シャブはすでに何とか実体化して、本体の前に佇んでいた。
ちょっと薄い所があるのは、エル様のお仕置きの名残である。
「あなたの先祖らしいけど、気にすること無いわよ?
これが馬鹿で間抜けな、一応この世界の魔王シャブラニグドゥよ。欠片には会った事があるでしょ?」
この程度の紹介で充分である。
「スィー・・・せめて、もうちょっとマシな言い方してくれないかい・・・?」
生意気な。
紹介してやっただけでもマシである。
「何言ってんのよ。それよりあんた、ちゃんと力使えるようになってんでしょうねぇ?
この期に及んで回復してないとか言ったら、 いくらこの温厚なわたしでも、いいかげん堪忍袋の緒が切れるわよ。」
「うう・・・うちの女共といい君といい・・・女性体で造るんじゃなかった。」
「いいからとっととやりなさいよ!」
ふと見ると、ゼルガディスが呆れ顔でこっちを見ている。
まあ、一応記憶を取り戻してても、死ぬ気で戦った魔王の本体がこんなんじゃなぁ。
気が抜けるのもわかるが。
「ほら!ゼルガディスだって呆れてるじゃないのさ。」
「レイス・・・お前相変わらず尻に敷かれてるんだな。」
「そんな高尚な名前で読んでやる必要なんてないわよ!シャブで充分よ!!」
レイスというのは、こいつの名前である。
レイス=シャブラニグドゥが、フルネームなのだ。
おや?
あっ・・・・・。
まさか。
もしかして知ってるんじゃ(汗)
いや、知ってても不思議じゃないけど。
「ああ、ゼルガディス様!!!お久しぶりでございます!
ううっ・・・この苦労、ゼルガディス様はお分かりになって頂けますか!?」
「いや・・・別にどうでもいい。まあ、大変だな。お前のところも。」
ああ、やっぱり知ってる。
うううっ。
一生の不覚とはこういう事で、この間抜けな魔王が、実はわたしの亭主だったりする。
何でこんな間抜けが・・・。
何処に惚れたんだ、わたし?
「男が尻に敷かれるのが夫婦円満の秘訣とは申しましてもねぇ。
いくら人間の使う呪文とはいえ、私の力を使った竜破斬あたりの呪文を、
その辺の木の枝でぶった切ったり、フライパンで跳ね返したりされると・・・
いくら何でも沽券に関わると申しましょうか・・・たまには立てて貰いたいと思います。しくしく。」
シャブは切々と語りだす。
な・・・泣きたいのはこっちだぁぁぁぁぁあああああ!!
「あんたねえ、あんたが情けないのをこっちのせいにすんじゃないわよ!
だいだい、今回の事だって全部全部ぜーんぶあんたの尻拭いじゃない!」
「私だってよかれと思っての事です。ちょっと裏目に出ちゃっただけじゃないですか!」
こ・・・こいつ。
全然反省してやがらない。
「あんたがよかれと思ってすることは、みーんな裏目に出るのよ!余計な事なの!!」
「そんな言い方することないじゃないですか!?」
「なによ!文句あるの!?大体ゼルガディスだってねえ、こんな身体にされて散々しなくてもいい苦労してたんだからね!」
「仕方ないじゃないですか!
あの時は貴方にいきなり呪文ぶちかまされて、ちょーっと力が足りなくて、あれくらいしか方法がなかったんですから!」
うっ・・・そんなこともあったような気がするが。
いや、でもあれはこいつが悪い!
ちょっと居眠りこいてた隙に、下っ端同士がひと悶着起こしてて、
その隙にディルスでリナに金色の魔王様の存在知られたんだから。
そもそも写本とか、そっちの処分は魔族の仕事。
一緒に行ってたわたしは悪くない。
あれは不可抗力というのだ。
きっぱり。
「じゃあ、何でとっとと戻してやんなかったのよ!?」
「いや・・・それは、その。ちょっと忘れてただけです。」
ぷっちーん。
「あ・・・あっさり言うなぁぁぁぁああああああああ!!」
忘れたって、あんた。
このすっとこ魔王!!
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・!!
この後、小一時間。
ゼルガディスがうんざりした声で止めに入るまで、わたしとシャブの言い争いは続いた。
ちょっと呪文が乱れ飛んだのは、決して私のせいではない・・・と思う。
(リナの性格は姉譲り)
ゼルガディスがそう思っていた事を、私は知らない。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
「それで、早い所やってもらえるか?」
とりあえず、ズタボロになった魔王の神殿を修復したあと、ゼルガディスが疲れたように言った。
ちょっと眼が据わっているような気がする。
ちなみに、シャブは本体を死守するので精一杯だったらしく、
かーなーり実体が消えかけているので、わたしが直してやった。
「しょ・・・承知しました(汗)。」
シャブがちょっと長めの呪文を唱える。
やっぱり、力戻ってなかったようである。
うーむ。
呪文を唱えているときだけはいい男なのだが。
そんな事を考えていると、ゼルガディスの身体が光り、それが収束された時には、かつて見た彼の姿があった。
姿かたちは、普通の人間そのもの。
だが、鋭利な刃物を突きつけるような、
それでいて全てを飲み込んでいくかのような、底知れない虚無の力が辺りを包み込む。
世界が凍りついたのがわかる。
ほんの一瞬。
だが、気合を入れていなければ、わたしとてその一瞬の間に消滅していだろう。
カタートにいたはずの低級魔族の気配はもうない。
同時に、こちらに残っていたアストラスサイドに本体を置いている水竜王の配下の神族の気配もない。
これが・・・圧倒的な異質の力?
これでも、ほんの片鱗に過ぎない?
人身でこれほど使えるとは。
人身?
あんな物を身体に戻して、果たして人間の身体は無事なのか?
確かに、姿かたちは変わらない。
「悪いな、ずいぶんお仲間が消えたみたいだ。」
そう言って、ぽりぽりと頬を掻く彼の声も、もとのまま。
だが・・・。
「もしかして・・・人間の身体・・・滅びたわね?」
「ああ。ついでに言うと、合成されてたロックゴーレムとブロウデーモンもな。」
・・・・・・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
わたしはしばし固まった。
ついでにシャブも固まっている。
というか、耐えられなかったみたいで、本体の中に戻ったようだ。
封印を解けば、とりあえずは人身のままでも、わずかな力が使えるようになるだけだと聞き及んでいたのだが。
「いや、もともと相容れないものだからな。
人身にかけられていたエルの封印が、キメラにされたときに1/3に薄まっちまってたらしい。はじき返したみたいだな。」
は・・・はじき返す?
エル様のお力を?
そんな事できるの?
「あの・・・という事は、それは本来の姿って事よね?」
「そうだ。ああ、心配しなくても気配は隠しとくさ。」
いや、さらっと言われても。
待てよ?
今のでもしかして・・・?
もしかしなくても絶対・・・!!
ああっ、やっぱりぃぃぃぃぃぃいいいいいいいい!!!
「ちょっ・・・ちょっとシャブ!そんなトコにいないで出てきなさい!!」
わたしは、アストラルサイドから、シャブを引きずり出した。
「今ので、空間がめちゃめちゃ歪んだわよ!!」
慌てて外に転移して出ると、今にも時限の渦に飲み込まれそうになっている、ディルスが見える。
こ・・・これは(汗)
こんなの、わたし達でもとに戻せるの・・・?
いや、やるしかないけど。
「お前たちじゃこんなでかいのをすぐには無理だ。俺がやる。」
ゼルガディスが静かに言う。
「でも!貴方が力使ったら余計に!?」
「大丈夫だ。できる。こちらの力を使うから心配するな。」
返事も待たず、小さく呪文を唱える。
すると、歪みの部分を厚い雲が覆い隠す。
その下で急速に形作られていく魔方陣。
この魔方陣は・・・?
これはエル様の力を発動させる為の魔方陣!!
―混沌の海よ
―金色なりし闇の王よ
―その身胸を犯す
―全ての愚かなる物に
―我と汝が力もて
―母なる者の裁きを今ここに 印を切ると、魔方陣の頂点を雷が打つ。
これって・・・?
これって呪文じゃなくて・・・。
何か嫌な予感がするんですけど・・・(汗)
隣でシャブも凍っている。
「滅せよ、時限の魔物よ」
声を荒げるでもなく、ただ空を見上げると、魔方陣が霧散し、雲が晴れたその空は、いつもの穏やかさを取り戻していた。
ぞくっ!!
底知れぬ恐怖が突き上げる。
やっぱり。
「いい度胸ね、ゼルちゃん。自分で空けた穴、わたしの力使って塞ごうなんて。」
「仕方ないだろ。俺の力をまともに使うわけにはいかないし、俺がこいつらの力使ったら、底が尽きて消滅するぞ。」
佇むのは、長い金髪を揺らす20歳前後の白皙の美女。
金色の魔王ロード・オブ・ナイトメアその人である。
やっぱりこれってぇぇぇぇぇ!!
エル様に塞げって言ってるカオスワーズだったぁぁぁぁああああ!!
「別にいいわよ。」
エル様が口を尖らせる。
よくないよくないよくないよくない!!!
よくないですぅぅぅぅううう!!
ああ、もうこれでお仕置き決定・・・。
しくしくしくしく。
「よくないだろ。まあ・・・久しぶりだな。」
そう言えば、ゼルガディスもアメリアも、昔からエル様と気兼ねなかった。
でも、わたし達はそうじゃないのよぉぅ・・・。
「ふんっ!相変わらず可愛くないわね!!まあ、いいわ。それより早くどっか適当な場所に行って次元回廊開くわよ!」
「次元回廊を?」
次元回廊?
次元回廊とは、別次元の混沌と行き来するときに使う物だった気が。
当然、わたしは使ったことなどない。
「リナスとカウリスとアメリアと・・・ついでにゼロスが飛ばされたのよ!さっきの歪みで!!いいから話しは後よ。」
目を開けると、そこはエル様の居城、混沌宮だった。
・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
-第7話へー
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おまけv
「ちょっと!?ユニット!?」
いくら話しかけても、無言のまま。
いったい…何が?
ふと、横をみれば、何やらフェアリーもが、泣きそうな顔をしているし。
いくらあたしでも、同じ存在であるユニットの心の中を知ることは不可能。
「…姫様…もしかして……」
?
どこか寂しさというか、憂いをこめたフェアリーの言葉。
ちょっと。
リナスとカウリスが面白いことになったから。
それと、この世界のパラレルワールドを作った記念に。
ユニットを呼んで、世界めぐりをしていた矢先。
いったい?
あたしが首をかしげていると。
「かーさまぁ!」
「こら、ユニット、走ったら危ないわよ?」
え?ユニット?
ふと、子供の声が聞こえ。
それと同時に聞こえてくる大人の女性の声。
ふとみれば。
そこには。
一歳前後の女の子と。
ちなみに、ユニットと同じく、赤いリボンをその頭につけてるけど。
長く伸ばした髪はきれいにポニーテールにとゆわえてある。
「だいじょーぶだもん。…あ!」
こけっ。
あ、こけた。
どうやら、この子の名前がユニット、というらしいけど。
偶然、というか、何というか…
「…ゴメン、エル、私、帰るわ。戻るわよ。フェアリー。」
それだけいって。
ふいと。
いつも見せないような、というか、あたしですら見たことないような表情をうかべ。
そのまま、あたしの世界の中から瞬時のその存在そのものが掻き消えてゆく。
いったい??????
それは、リナスとカウリスが婚約してしばらくのこと。
あたしが、そのときの理由を知ったのは…
ユニットが、力をかなりつぎ込んで、とある世界を作り出した、その後のこと…
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管理人よりのあとがき:
薫:ちと。まだ薫が打ち込んでない、スミレちゃんの過去話。あれの一部をだしてみたりv
あれを代用すれば、この設定でもなりたつ!うん(まてぃ!
しっかし。一気に投稿、いただいているのですが。
私の編集スピードが遅いがために。時間がかかっております・・・・あしからず・・・・・
(できたら、改行、とかしてくれてたら作業・・・助かるかも・・・・ぽそり・・・)
何はともあれ、それでは、また、次回にて。
(どうしても続きがきになる!という人は、いまだに編集してないですが。
貼り付けしたままの小説はアップしてあります、あしからず・・・・)