『出張・あんだ〜ば〜EX』in スレイヤーズラジオ」 第17回 特番 中編



メインスクリーンの左片隅に青い船がデェフォルメ化された状態で、表示されていた…その姿にオレは思わずため息を吐く。
<うふ…うふ…うふふふふふ…>
「何泣いてるんだ?アイン?」
<泣いてない、泣いてない。笑ってるんだってば!!>
「え?そうだったのか?オレはてっきり感情システムがぶち壊れたのかと思って…
  喜び勇んで、その辺で万歳三唱でもしてみようかなって考えたくらいなんだが…」
<もしかして…あたしがおかしくなって…狂う姿を期待してたってやつ?>
「あったりまえじゃないか…」
<しくしく…>
瞬間、スクリーン上の船から簡単なマンガ的な腕が生え、いじけてのノ字を書きだす。
…あ…スクリーンの隅に青い縦線が数本…
ぴこぴこぴこぴこぴこ!
こいつの名はアイン。正式名は感情登録知性体DWSMM(ディダブルストゥーエム)変船『アイン』。
縦幅48メートル、横幅15メートル、総重量42トン、矢尻型の形をしたブルーメタリック色…
この色はアインの趣味&ラッキーカラー(機械にもラッキーカラーとかってあっていいんだろうか)…の中型宇宙船。
現在は船と一体になっているため姿を見せていないが、
船外に出ている場合は、20前後の人型(女性)アンドロイドボディで行動をとっている。
性格はお茶目でいたずら好き。
過去、キレた…ぷっつんした…回数多々。
これさえなきゃいいやつなんだけど…趣味は、機体にはデリケートに撤し、くもり一つないボディにうっとりすること…趣味と言うのか?
これって…ぴこぴこぴこぴこぴこ!…さて…ほんでもって…自己紹介が遅れてしまったが、オレは田中達也15才。
国家認定・次元セキュリティ会社『S.T.S』──に勤める最年少、”特別級資格者”のトラブルコンサルタント…
ちなみにアインもそう…である。次元は科学の発展した近未来(21世紀中旬)。
この世界の一人の科学者が異次元航行を可能にした。
そしてそのテクノロジーの発展により、さらなる発見。
それは『魔族』の存在────
みんなは魔族と聞いて、思いつくのは悪の根元を司る存在と思われるだろうが、
オレ達の言う魔族は、異次元と異次元との境目に発生する磁場の中で生活する種族たちのことを指し示している。
元々、彼らは各世界の微妙な歪みを回復させる種族(以下、純魔族と呼称)だったそうだが
…と、いってもぴんとこない者もいるだろう……えーと…ようするに…
…一つの次元の存在はメビウスの輪みたいなものだと思ってくれればいい。
一つの次元には過去、現在、未来の3つが一つの道につながっている。
それがメビウスの輪。その輪の中で時間がぐるぐる回り続けているのだが…
その時間が何度も何度も回り続けると少しずつであるが、ずれが生じてくる。
例えばどんなに精巧にできた時計でも必ず遅れたりするだろう。
それが次元の歪みになるんだ。 さて、話はそれてしまったが、とにかく彼らがその歪みを治しているのだが…
人間同様、やはり悪いやつがいるもので…その仕事をほっぽりだして、いろんな世界でいたずらをするものもいる(以下、不魔族と呼称)
たとえば無理矢理神隠しを起こしたり、ある世界でやりたい放題あばれまくったり、神になったり魔王になったり…など等々
…ちなみに異次元航行システムが世の中に一般化されてからは、似たようなことをする人間達までもが現れ始めていたりする。
そのため、最近になってからは、どんどんと歪みがひどくなり、
異次元と異次元とをつなぐトンネル(通称インフェイルホール)の…俗に言う神隠しやタイムトラベルとかの原因…
発生率が増えるつー厄介なことまでおきる始めた。
そこで、始まったのが国家認定・次元セキュリティ会社『S.T.S』─
─設立者は、異次元航行システムの生みの親、ラック=バーグスの直系にあたる。
──『S.T.S』──
実はこの会社、国家認定と言われているだけのことはあり、
社員のトラブルコンサルタント(以後、トラコン)は、どんなところにでも強制捜査が可能であり、
警察からの介入もシャットアウトさえできる特権を持つ。
つまりは国家権力以上の力を持った会社と言うことになるのかな?
ただ…多種多様の次元が存在するため、力が及ばない場所(次元)もあるのだが…
まあ…次元の数なんて物は宇宙に存在する星の数に等しいと、
どっかの学者(なんて名前だったかは覚えてない)が言っていたぐらいだし…
この会社の主な仕事は、次元を狂わせる不魔族や人間たち犯罪者の逮捕、および歪みの修正処理…
と簡単に言ってしまったが…
この魔族ってーやつは、頭はいいは、人間たちよりも体が丈夫やら、長生きやら、おまけに魔法まで使えるときた。
そんなんこんなで、普通の人間が奴等を捕まえられるのかっつーとはっきり言って無理。
そこで会社は、純魔族である彼らや、各次元から不魔族らと対抗しえる者たちをスカウトし、
魔族専属のトラコン…彼らを”特別級資格者”と呼ぶ…で対抗した。
ちなみに、会社名である『S.T.S』とは『星とセキュリティ』の略…と言われているのが表上、組織の定説なのだが、
実は”stange to say(不思議なことには〜)”の略であると”特別級資格者”達だけは、聞かされている。
ぴこぴこぴこぴこぴこ!
「で…何をそんなに怒っていたんだ?」
<怒ってない…怒ってない…>
「あ…すまん…寝てたのか…」
<しまいにゃ…なぐるよ…>
そういうとスクリーンには大きなハンマーを掲げるディフォルメ・アインが…
ぴこぴこぴこぴこぴこ!
<………………ねえ>
「ん?」
<…達也さ…まるで…遠まわしに笑うんじゃない!って言ってるみたいな気がするんだけど…>
「…ふ…」
…解ってるじゃないか…
<ふってなに?ふって!!>
「…別に…気のせいだろ…」
<ふぇ〜ん…ぐれてやるうぅ…>
あ…サングラスをかけたアインが…ほっぺた(多分)あたりに点の傷跡見〜け…
ぴこぴこぴこぴこぴこ!
って、何だ…さっきからぴこぴこぴこぴこ…
そして、それとオレは目があった…体長30cm程の…
「…………………リナ…?」
ぴこっ!
オレの言葉を理解したのか返事をするように彼女は手をあげる。
「なんてこった…今までもチビだったが…ここまでチビになるとは…」
「爆裂陣…」
ちゅごーんっ!
「ひょえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ」
「あ〜ん〜た〜は〜人をおちょくっとんかい!」
「って………はっ!あんたは!!」
そこには等身大の…
「おおーっここは一体どこだあ?って達也じゃないか」
金髪のにーちゃんが…
「え?達也さんですか?」
黒いおかっぱ髪の女性が…
「…………………」
無言の針金髪のにーちゃん…
「リナ=インバースの偽者とその一味!!」
「誰がだ!!火炎球!!!」
きゅごーんっ!
「…ひじょい…ちょっとした…おちゃっぴーだったのにぃ…」
「やーかまし!…ってそれよりも達也…ここどこよ…」
「どこって…アインの中だけど…」
「アインってあのアインか?」
ゼルガディスさんが問いてくる。
「宇宙船バージョンのな…」
「ウチュウセンってなんだ?うまいのか…」
「無視」
「無視って達也…お前…」
「それより…リナたちこそ…何でこんなところにいるんだよ…」
「いや…ただ…普通に道を通って来たら…」
「へ?変だな…この船は今、宇宙空間にいるんだが…普通に来れるはずは…」
「でも…この子の後を追って…」
と先ほどいた…ぴこぴこと音を立てていたミニミニリナを抱きしめながらのアメリアさん。
<あ〜の〜…そのことなんですけど…>
「ん?何かしってるのか。アイン」
<え〜っとですね…その…怒りません?>
「そりゃあ…度合いによるだろ…」
<じゃなくて…リナさんたちになんですけど…>
「あたしたち?」
<リナさんたちが先ほどまでいた、部屋にぴこぴこリナちゃんがいましたよね…>
「いたけど…それが何?」
<あの〜その〜ほんとに怒りません?>
『???????』
<えっと…実はつい5時間ほど前…スレイヤーズラジオのADさんにあることをに頼まれちゃいまして…>
「あいつに?」
<ここで…火薬仕込んだ…ぴこぴこリナちゃんを製造してたかなーーーなんて…>
…おい…
『…………………』
<で…多分…リナさんたちがここにやってこれたのは…
  ぴこぴこリナちゃんを運ぶために開けといた、次空間トンネルを通ってきたからじゃないかと…>
「…ん…」
『…………………』
「ん…ふっふっふっふっふっふっふ…」
…あ…悪寒が…
「…さて…」
「あれ?達也さん…どこへいかれるんです…」
「ちょっとな…」
「…た…達也…俺もいいか?」
とゼルガディス。
「どうぞどうぞ…この先に脱出カプセルがあるんだ。乗ってくかい?」
「出来れば…ほら行くぞアメリア…」「え?あたしもですか?」

しばし──

きゅごおおおおおおぉぉぉーーーーーーーん!!!

巨大な爆発は宇宙空間で巻き起こった──



<終わり>