『出張・あんだ~ば~EX』in 全てが集まりし世界にて
これは、とある喫茶店での出来事である。
「暇だ…」
家の隣でやっている喫茶店『夢つくし』のカウンターに顎を乗っけながら、突然、オレはそんなことをつぶやいた。
「ケーキ♪ケーキ♪ケーキのキ♪」
そんな感じで口ずさみながら、オレの隣に座る恵美は口元をクリームでべたべたにして、笑顔でケーキを食べている。
その彼女の頭で、茶色の三角お山の猫耳がぴくぴく動き…そしてお尻から伸びる茶色の猫の尻尾が左右にしぱたしぱたと振られていた。
実はこれ…ここ最近、小中学生に人気のある製品、
──『取り外し可能!これであなたも猫人間』のセット──
である。しかも着けた者の意思で耳も尻尾も自由に動かせる。
まあ、もともとは彼女が買ったのではなく、オレの妹・雪菜が買ったものでお遊び間隔で恵美が雪菜につけさせられたものだが…
その後、運が悪く──
席をはずしていたオレがいない間に舞の手作りクッキーを食べたらしく、
その影響か、取り外し可能!これであなたも猫人間』セットと融合してしまったのである。
本人の意思で、耳と尻尾を隠すことはできるようだが…大好きなケーキを食べている時は無意識に現れてるようである。
「るん♪るん♪るん♪るん♪るん♪るん♪」
ま…今は幸せということである。
それはどうでもいいとして──
「…暇だ…」
オレは再び呟いた。
「た・い・へ・ん・で・すーーーーーーーー!!!!」
べこっ
『………………』
「…ふう…暇だなあ…」
「あの~達也?」
「どした?アイン…」
「これは何でしょう?」
彼女は自分の顔を指差した。
『椅子』
全員の声がハモル。
「いや…それは解ります…何故なげるんですか?」
「暇だから」
「暇だったから投げるんですかあぁーー!」
「…結局面白くなかったからいいじゃん」
「よくないです!」
ちぇ…心の狭い奴…
「ケーキ♪ケーキ♪ケーキ追加ーーーーー♪」
『……………………』
「恵美…それでもう…40皿目…」
「やっと♪半分♪」
「半分って…」
「恵美ちゃん…それでよく太りませんね…」
「日ごろの行いがいいから♪」
…そう言う…問題じゃないだろ…
「で…アイン。何が大変なんだ?」
気を取り直して、オレが相棒のアインに問う。
「大変なんです!!!」
「だから…何が…」
「大変なんです!」
その辺でどたばたと踊りだす。
「…ほう…な・に・が・だ?」
「大変なんです!!!!!!」
「……………………ぼそぼそ…」
「あああーーーーー!!!ごめんなさい!ごめんなさい!ちゃんと話しますだから火炎球だけはあああああああ!!!!!」
ちっ!
気付きやがった…
「で?」
オレはおおらかにも魔法攻撃は中止してあげ、もう一度問い掛けてみせる。
「エル様が反逆者につかまりました!!」
「は…………?」
「だから!エル様が反逆者につかまったんだってばあ!」
「うそつけ…」
「嘘じゃありません(泣)」
信じられん…あの会長がねぇ?
「ワザとじゃないのか?」
「もしそうなら、ここまで騒いでません!」
騒ぐっつーよりかは…楽しんでたような気はするが…
「STS本社でも、正確な情報がつかめなくて大騒ぎなんですよお~(泣)」
「本社でも?」
「そうです!本社のコンピュータをハッキングしても正確な情報が取れないしぃ~」
「ハッキングってまだんなことやってるんかい…お前さんは…」
「だって!だって!だって!だって!だって!…」
アインが1人、2人とぼこぼこ増えてゆく。
『だって!だって!だって!だって!だって!…』
「だああぁぁぁぁーーー!やかましっ!必殺!どつき蹴り・連続バージョン!」
どここここここ…
『いちゃいの…』
「立体映像で分身してハモルんじゃない!!」
「しかも、立体映像まで、なんで蹴れるんですかあ~」
「人徳♡」
そして、何やかやとその日は過ぎ去っていく──
ちなみに、オレたちSTSは何も行動を取らなかったのである。
どうやら、あとで会長から連絡が来たらしい。
──『STS』は動くな動いたらお仕置きだからね♡──
STSトラコンの今日の格言──
『面倒なことはとっとと忘れろ』
以上──
<終わり>