闇:Wです。今回は進入ですね
ファ:・・・・・・
闇:なぜに沈黙?
ファ:気にするな
闇:?それでは、逝きます(逝くな)
####################################
黄昏の果てに望むもの W、侵入
町の裏側は眠らない......
いや、夜こそが真の面のかもしれない......
その一角、町の裏の顔とは無縁そうな一人の男が酒場に入る。
其処は、いろいろな人物が集まる地
......もちろん、それぞれがいろいろな過去を持つ物達、いろいろな経歴を持つ。
窃盗から、果てや殺人まで......
男があるテーブルにつくとすぐさま黒いローブを羽織った者が入ってくる。
ローブの中から突き出た耳が目立つ。
体格的には若いエルフ族だ。
しかし、普通のエルフであるわけがない。
裏の面にいるということは、それなりの力を持った者、
そして、黒いローブを羽織っていると言うことは、魔の力を持ったエルフ。
つまり、ダークエルフだ。
「......」
「......」
沈黙が二人に満ちる。
男は懐から一枚の上を取り出し、机の上に置く。
「......報酬は?」
彼女が様欲のない声でそう聞く。
男はもう一枚懐から包みを取り出し、
「......1000クレジット入っている」
彼女はその包みを調べ、
「わかった。了解だ。その依頼受けよう」
そう言うと立ち上がる。
すると、男が慌てたような声で言う。
「おい、わかってるだろうな。このこ......」
「わかっている。エア・アイズ・オンリー。そうだろ」
彼女はそう言って外にでる。
エア・アイズ・オンリー。
つまり、読後消去と言うわけだ。
「ふん、こう言うことのみは頼りになるな」
男はそう言うと自分も勘定を払い出ていく。
「翌日、午後12:00と共にラウンドル本社を跡形もなく爆破させよ......か」
彼女はそう言うと、自らが座っている屋根から星空を見上げる。
そして、紙を魔術で燃やし笛を取り出し静かに旋律を紡ぎだす。
鎮霊曲の旋律を......サイレンサー
......永久に沈黙させし者......
と彼女が言われているのは、一部の者しか知りえない事だ......
朝、メビウス達は支度をして、ラウンドル社の空中社の真下に来ていた。
ラーとメビウスは自分の武器を背中に背負い、手袋と『温暖』の魔術がついた服を着込んでいる。
メビウスは、右手に何かの装置のような物をつけている。
暗器と言われる物で、ワイヤーがついたナイフを発射する物だ。
杖は流石に持っていない。
「で?どうするんだシル。飛行の魔術でも届かんぞ」
ラーが不機嫌そうに聞く。
すると、
「だから、この機械を使うのよ」
そういって、彼女はブレスアーマーの様な物を取り出す。
「......」
「......」
メビウスとラーの間に沈黙が満ちる。
「......何なのだそれは?」
メビウスが聞くが、
「反重力アーマーよ。重力と逆の方向に浮かぶことが出来るという優れ物よ。あっ、コントロールはその腕輪よ」
そう彼女が言ったとき、8:00の鐘が響く。
「...悩んでも仕方ない。行くぞメビウス」
シルは、空中社に行かずに先にこの町を出るのだ。
「ああ、行こう」メビウスもそう言ってアーマーを装着する。
「気をつけてくださいよ。それ五分しか持続しませんからね」
シルが言う。
「......と言うことは五分後はつぶれたトマトの出来上がりか?」
「ミスったらな」
メビウスとラーがそう言う。
そして、二人は腕輪を制御して上に上がっていった。
「気を付けてくださいよ。一気に気圧変化してもそれで肺を守るというのは出来ないわよ」
シルが気づいたように言ったが、二人には全く聞こえてなかった。
二人はどんどん上がっていったが......
「......」
「......」
気圧が上がったせいで苦しく会話を交わしていない。
時間はどんどん過ぎていく。
「おい、時間がやばい......」
ラーが言う。時間はもう二十秒を切っている。
しかし、ラウンドル社の姿はぎりぎり掴んだくらいだ。
どうやら、設定にミスがあったようだ。
「強くしろ!」
メビウスがそう怒鳴るがどんどん時間は切れ始める。
『帰るときのために最低でも五秒は残しておいてくださいね』
シルの言葉が蘇り、彼はラーを掴み、自分のエネルギーを更に強くする。
「な、何のまね......」
「お前のエネルギーは帰りのためにとっておけ!急いで上がるぞ!」
メビウスがそう言い、一気に高度が上昇する。
しかし、時間はもう少ない。
5秒前、ラーが自分のエネルギーを切る。
4秒前、一気に上昇が始まり、やっとラウンドル社の最下部の正確な位置が掴めた。
3秒前、メビウスが出来るだけ高く手を伸ばす。
2秒前、ラーがバランスを取りながら、メビウスの邪魔にならない位置につく。
1秒前、メビウスの手の先が最下部の梯子にふれる
そして、
「届いた!」
メビウスがそう言い、右手をラウンドル社最下部の梯子を掴んだとき、一気に彼に重力がかかる。
「ぐをっ」
突如かかった重さに、手を離しそうになるが、ぎりぎりで離さない。
左手はラーを抱きかかえたままだ。
ラーも、彼の首に手を着けて墜ちないようにしている。
しかし、ここは高度200メートル。
強風が彼らの身体をゆすぶり体温を奪い、体力も奪う。
「大丈夫か!?」
ラーが聞くが、
「いいから、速く梯子を掴め!」
メビウスがそう言い、右手のみで自分の体を上昇させる。
「くっ」
ラーはそう言い、右手でどうにか掴む。
そして、そのまま器用にちゃんと梯子を掴み、
「速く登ってこい!」
右手で梯子を掴み、左手を彼に出す。
「すまん」
メビウスはそう言い、左手をどうにか上に上げるが......
突如起こった突風にメビウスは右手を滑らせ、彼女が掴む前に墜ちていく。
「メビウス!」
ラーがそう叫ぶ。メビウスは空中でラウンドウル社の方に右手を突きだし......
ばしゅっううううううう
がきっ
そう言う音がして、ラーの側に突き刺さる細い矢。
矢にはワイヤーが付いている。
メビウスが右手の暗器を使ったのだ。
そして、メビウスはすぐさまブレーキが止まり、空中に放り出されるように止まる。
しかし、細いワイヤー1本でどうにか支えているような状況だ。
「直ぐに引き上げるぞ!」
ラーが言うが、またしても突風が彼女を揺さぶる。
メビウスもかなり揺さぶられている。
「くっ」
彼女はそう言い、ワイヤーを掴むと自分の胴に巻き付け、離れないようにする。
「よしっ」
そう言って、自分の巻き付かせるようにしてメビウスを引き上げる。
「重いな......」
ラーはそう言い、どんどん彼を引き上げ、そして彼をついに掴む。
「おい、大丈夫か!?」
彼女はそう言い、メビウスに声を掛けるが、彼は意識がない。
墜ちるときの衝撃で気絶したのだ。
問題は、体もかなり冷たく成りだしている。
たとえ『温暖』の魔術がついた服を着ていても、
長いこと上空の冷たい空気にさらされていたのだ。
体温はかなり奪われている。
「くっ」
そう彼女は言うと、メビウスを背負いどんどん上に登っていく。
時々突風が彼女を揺さぶるが、どうにか踏み耐えるラー。
......長いようで短い時間が過ぎた......
実際の時間は5分もなかったのだが、
彼女にとっては数時間のような時間だった。
どうにか最初に決めた進入予定の永遠炉のある部屋につく。
「大丈夫か!?」
ラーがメビウスに再度声を掛けるが、反応はない。
どんどん冷たくなっていくだけだ。
このままでは......ラーの頭の中に最悪の状況が浮かび上がる。
そして、思い出したくもない記憶が浮かび上がる。
(あの時のような思いは...もうごめんだ......)
彼女はそう心に決めると、自らが着ているすべての服を脱ぎメビウスに掛ける。
まあ、ちゃんと下着はつけているが......
そして、自らもメビウスに寄り添う。
(頼む......目を覚ましてくれ......)
目をつぶりながら、ラーは祈る。
この世界の神々ではなく、世界を作った創造主にだ。
祈りが届いたかどうかはわからない。
しかし、しばらくしてメビウスは細く目を開いた。
「ここは......」
弱々しい声だが、どことなくしっかりとしている。
「大丈夫か!?」
そう聞くと、
「ああ、ラーか......ってお前どんな格好してるんだ!?」
顔を赤くしていうメビウス。
ラーもその意味に気づき、自分がどのような格好をしているかを思い出した。
「あ、あっちを向け!」
怒鳴り、メビウスに被せていた服を奪い返す。
メビウスは素直にラーと反対の方を向く。
「......」
「......」
気まずさの為か無言になる二人。
ラーは着替えを済ますと、すぐさまメビウスに小声で話し掛ける。
「おい」
「分かっている。気配があるな......でも一つだ」
メビウスはそう言い、自分が持ってきた短剣を構える。
ラーも同じようにタガーを構える。
二人の位置はすぐには見つからないように永遠炉の陰になっている。
一つの人影が近づいて来る。
「資料に書いてあった奴じゃないな」
「そうね。あの体型からしてエルフ族の女よ」
ラーとメビウスが会話をする
「どうする?」
メビウスが聞く。
「さあ、保護すればいいのか......もしかしたら私たちと同じような目的で潜り込んだのか分からないからな」
ラーが男言葉でしゃべる。
「どっちにしろコンタクトは取った方がいいか?」
「そうだな」
ラーとメビウスはそう話しをすると、すぐさま彼女の様子を観察する。
彼女は永遠炉の前で何かの作業をしている。
ここからでは陰になっていて何をやっているかは分からない。
「何をやってると思う?」
「さあ、暗すぎて分からないわ」
ラーとメビウスがお互いに聞きあう。
二人は、しばらく様子を見ていたが、どうしようもないと言う事に気づき、空の薬きょうを放り投げてみる。
かっつんっ乾いた音が静かな部屋に響いた。
明らかにエルフの女が体を震わせたのを二人は見逃さなかった。
「誰?」
警戒心を含んだ声でエルフが言う。
「あ〜、多分敵では無い。森の民よ、警戒しないでくれ。俺達は人間だ」
メビウスがどうしようもなく信用のない声で言う。
しかし、
「すみませんね。私は森の民では無いわ」
そう簡単に交わされてしまう。
「う〜ん、じゃあ空の民」
「それも違うわ」
「じゃあ、海の民」
「海の民はそんなに長く陸には居られないわよ」
確かにそうだ海に住むエルフはそんなに長く地上には居られない。
メビウスがう〜んと考え始めた時、
「ならば、夜の民よ警戒するな」
ラーが言った。
「あっ、そうか」
メビウスがそう言うと、
「解かったわ。あなたたちは何者?」
夜の民つまりダークエルフがそう言う。
「え〜と」
二人は目配せし、
「訳あってここに侵入をしている。ここは危険だからさっさと逃げた方がいいぞ」
メビウスがそう言う。
しかし、
「私も訳ありでね」
そう言う彼女。
「やれやれ」
ラーが聞こえないように参ったような声を出す。
「解かった。君の名前は?」
メビウスがそう言うと、しばらく沈黙があった後、
「......ルビア」
「へ?」
メビウスが聞き返す。
「ルビアよ。覚えておきなさい」
そう言うと共に姿を消してしまうルビア。
「......ルビア?」
ラーが難しい顔をしてその名前を呟く。
「どうした?」
メビウスが聞くと、
「いや、なんでもない」
そう言うと共にラーが顔を前にやり、
「さっさと上を調べてしまおう」
そう何かをごまかすように言う。
「あ、ああ」
気落とされたようにメビウスが言い二人は上に続くエレベーターに乗った。
上に出るとそこは倉庫のような一室だった。
「気配がない」
ラーがメビウスに言う。
「ああ、まったく無い」
メビウスがそう言って警戒は解かないまま自らが持ってきた魔力石を取り出し、
「大いなる神 ベクゼルの名においてメビウスが命ず この広大な天空の塔におき 命在るものの地我に教えたまえ」
そう言うと同時に彼の中に地図が出てくる。
そして、
「異様だな」
彼がそう呟き魔術の構成を消滅させる。
「どうした?」
ラーが聞くと、
「気配が一つになっている」
メビウスがそう言った。
「......は?」
ラーが聞き返すと、
「だから、昨日はいくつもあった気配が一つになってるんだよ!かなり強力になってるけど」
そう言うと、ラーが青ざめ、
「もしや......」
「合体でもしたんじゃねえか?」
メビウスがはき捨てるように言った。
「どちらでも構わん。一回で済む方がましだ。さっさと行くぞ。場所はどこだ!」
ラーが言う。
「場所は......中央のビルの最上階」
メビウスがそう言った。
「なんてこった」
ラーが悲観にくれる。恐ろしく高いのだ。
「さて......『飛行』を使うか?」
メビウスが聞くと、
「いや、歩いて最上階まで行かなければいけないだろう。奴と戦う為に魔力は残しておきたい」
ラーがそう言ってため息をついた。
「そうだな」
メビウスはそう言うとラーの方を向き、
「さっきはありがとな」
突然そう言う。
「うん?」
ラーが驚いて目を丸くすると、
「いや、暖めてくれたろ。今お礼を言っておかないとな」
メビウスが照れたようにいい、
「構わん。私一人では荷が重いからな」
ラーがそう言い歩き始める。
「まっ、良いですか」
メビウスがその後に続く。
「11:30、そろそろ仕掛けなくっちゃね」
ルビアが一人で永久炉の前に立つ。
「あの二人には申し訳ないけどこれが私の仕事だからね」
そう言うと共にバックに入れてある物を取り出す。
さまざまな所につながれたコード。
そして、どんどん減っていく時間。
『スプラッシュ』と言われる爆弾の一つである。
威力はせいぜい一軒家を爆破できる程度だが、永久炉の側でそんなものが爆破したら大惨事になるのは目に見えている。
彼女はその爆弾を永久炉の側にセットして最終調整を行った。
「コードよし、セットよし、ナンバーよし、パスワード『SILENCER』これでよし。後は脱出だけね」
そう言うと共に『通信』の魔法を使い地上とコンタクトを取り、
「じゃあ、後はちゃんと仕事してね」
爆弾に向かって言うと彼女は何かを背負いその身を宙に踊らした。
もちろん重力のとおりどんどん彼女は落ちていく。
しかし、ある高さでパラシュートが花開いた。
「サイレンサー、任務完了ね」
彼女は地面に着地するとすぐさまこの町から脱出する為に走り出した。
続く
####################################
闇:さて、『サイレンサー』=ルビアということです
ファ:見え見えの展開だな
闇:そんな〜。これでも頑張ってるんですよ
ファ:知らん
闇:知らんって......まあそろそろ終わりに近づいてます
ファ:短いな
闇:短くしてるんです
ファ:......闇:それでは、短いながらもこれにて......