闇:さ〜て、ついにこの章が来てしまいましたね
ファ:で?
闇:この章とこの次の章で第二部『祝福の都の守り神』編は終わりです
ファ:ほう
闇:そして、第三部『過去と現在』編になります
ファ:過去と現在?
闇:そうです。第二部で少し出たり、薫さんが興味を示していた一年前の全貌が明らかになります
ファ:全貌ね〜
闇:ちなみに、少しだけ五年前の事も出るかもしれません
ファ:・・・・・・いい加減だな
闇:まあ僕ですから
ファ:・・・・・・
闇:それではいきます!



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 祝福の都の守り神  [、DECISIVE BATTLE IN BENDITISHION






「風魔惨絶斬!」
「ザッハトルテ・ソードバージョン!」
メビウスの魔法とシルのザッハトルテが炸裂する。
シルの動きは流石に鈍くなったように見えるが
メビウスの『風魔惨絶斬』は切り裂く刃の数が多くなったように思える。
「炎魔包囲爆裂陣!」
ラーの必殺の魔法が爆発するがそれすらもたいした効き目が無いようだ。
「降魔の剣よ!」
メビウスがそう言うと共に闇が凝縮されて剣の形をとる。
マンイーターでさえ軽く切り裂いた闇の刃はソウル・イーターの咆哮と共に闇に戻った。
代わりに闇の刃をメビウスに向かって放つソウル・イーター。
それを軽々と避けてメビウスは一息つき、
「こんな奴どうしろって言うんだ!」
完全に切れながらそう言った。
流石に三十分以上魔法を打ちっぱなしの状態では誰でも怒りたくなるものである。
今現在ソウル・イーターに一番効くのはメビウス、
いやサイレンスが持っている特殊な精霊魔法のみだ。
しかし、『ジェノ』で示した通り魔力の消費がかなり激しいのだ。
魔力回復アイテムは多用すると幻影などが見えるという副作用を持っているのであまり使用はできない。
それはメビウスにも当てはまる事だった。
いくら体の60%が機械でも副作用は現れるのである。
現に彼の調子は絶不調だ。
敵がいくつも見えるのだ。
もちろんソウル・イーターがぼやけているということである。
機械でできた左眼ではちゃんと写っているのだが
生身の右目がかなりやばいのだ。
かといって右目を閉じれば
死角が多くなる分触手の攻撃に対応できないのである。
触手の攻撃に対応できない・・・・・・それつまりこの状況では死を表す・・・・・・
かといって魔法を撃つのを止めれば自分達に危険が迫るという後戻りできない状況まで追い込まれているのである。
今現在生きているつまり立っている人間はメビウス達を含めて四人しかいない。
そう、もう一人傭兵を生業としている人間が残っているのだ。
残りは・・・・・・言わなくても良いだろう。
自然界などで倒れる事・・・・・・これが意味するのは一つである。
「あんた名前は!」
メビウスが残っている傭兵らしき男に声をかける。
「クレイだ!」
そう言うと共に彼は魔法を炸裂させる。
彼の武器はナックルである。
「あんた等は!?」
クレイが聞き返す。
「俺がメビウスであっちの身長よりでかい槍かなんかぶん回してるのがシル!短剣で戦っているのがラーだ」
そう言うと共に迫り来る触手を叩ききる。
「重・光狂乱舞!」
ついにシルが魔法を解き放った。
マンイーターでさえ跡形も残さず滅ぼした魔法である。
威力は立証済みである。
しかし・・・・・・

ぐをおおおおおおおおおおおお

ソウル・イーターがひと吠えすると共に光の爆発は破壊された。
「うそでしょ!」
流石のシルも絶句する。
そして、
『ふふふ、愚かなる人間よ。なぜそこまで歯向かう。死んでしまえば楽だぞ』
どこからか声が響く。
「・・・・・・」
四人が無言でソウル・イーターの方を見る。
「てめえ・・・・・・しゃべれたんなら早く言えよな」
メビウスが悪態をつくが、
『ふふふふふ、なぜそこまでは向かうんだ?所詮人間のくせに・・・・・・所詮我等に屈するくせに』
ビウスの中に一つの記憶が蘇った。
血に濡れて赤く染まった雪と自らの腕の中でついさっき息を引き取った女。
そして・・・・・・
『なぜそこまでは向かう。所詮お前は俺の下に屈するんだから無駄な足掻きだ』
忌々しき・・・・・・忘れもしない男の顔が蘇る。
そして・・・・・・
何かがメビウスの中で切れた。
「やかましい・・・・・・」
静かな声がソウル・イーターの声を遮る。
『・・・・・・なに?』
「やかましいって言ってんだよ!」
言うと共にメビウスは近くに落ちていた一本の長剣を拾い上げた。
中ほどから少しずつ曲線を画いている剣・・・・・・東洋の剣、倭刀である。
怒っていても背中の自分の剣を使わない所は流石である。
「永遠の中に眠りし、竜機の神よ、今こそ汝が右腕に、祖の忌々しき命運尽きはつまで、
  大地の底に眠りし、全ての力集わす者なり、さすれば我は求め導こう者なり、食らえ大地の力似て、
  我等が前に立ち塞がりし、全てのものを、遥か彼方に、葬り去らん為に!」
そして、剣を振り上げ・・・・・・
「ジオ!」
その瞬間、風景が振り上げた倭刀の上に集結し、膨大な力を発生させる。
しかし、この時メビウスは大きなミスを犯していた。
まず、彼自身の体が本調子ではなかったという事。
そして、キル・ソードでこそジオの圧力に耐え切っていたという事。
速さを主にし一撃必殺を狙う倭刀に『ジオ』の圧力はきつ過ぎた。

ビシッ

倭刀の鍔の少し上の部分に罅が入った直後、『ジオ』が暴発した。
もちろん持っていたメビウスは大ダメージを受けて後ろに吹き飛んだ。
「メビウス!」
「余所見をしている隙は無い!」
ラーが叫ぶがクレイがそれを指摘する。
「ラー、メビウスは後で確認できるから目の前に集中しなさい!」
シルも叫ぶ。
ラーはその言葉を聞くと共に近づいていた触手を叩ききり、
「分かってる!」
そう言って呪文を詠唱し始めた。
しかし、メビウスが倒れたという事はメビウスを庇いながらの戦いになるので今まで以上に困難を極める。
攻めるとその隙にメビウスに攻撃される。
かといって下がりっぱなしでは自分達の命が危ない・・・・・・
「まったく厄介だぜ」
そう言うと共にクレイは腕まくりする。
そして、その腕に一つの刺青が彫ってあるのをシルは見逃さなかった。
二つの頭を持つ獅子・・・・・・今では伝説となっている生物の刺青である。
それが指すのは聖戦士という意味・・・・・・
聖戦士・・・・・・どの国にも伏さない者達である。
彼らは一つの組合を作り、かなりの紳士的な者達である。
ただ実力があるだけではなれないのである。
彼らに会う事は物凄く低いのだ。
「螺旋惨滅!」
クレイがそう言うと共に軌道の読みにくい光の帯がソウル・イーターに直撃する。
しかし、あまりダメージを与えれた様子は無い。
「重・爆裂陣!」
ラーも少しずつ後退しながら魔法を放つ。
「忍び寄る闇!」
シルが闇魔法を発動させる。
闇の塊が一旦地面に沈み、次の瞬間ソウル・イーターを囲むように形成され・・・・・・そして砕けた。
何の音も出さずに塵のように消え去る魔法。
「くっ、ザッハトルテよ!突き封じよ!」
シルがそう言うと共に槍の形にしてソウル・イーターに投げつける。
ザッハトルテは一直線に飛び・・・・・・弾き返された。
「竜破四封斬!」
クレイがそう言うと共に四つの闇の球がクレイの前に現れ・・・・・・
『流石にそれは痛いゆえに壊させてもらうぞ』
そう言う声が響くと共にクレイが後方に吹き飛んだ。
すぐさま立ち上がるが右手に力が入ってないようだ。
『そろそろ遊びも飽きた・・・・・・』
そう言う声が響き、立っている三人に触手が迫り・・・・・・

「コア!」
その声と共に放たれた一筋の赤い閃光がソウル・イーターを貫いた。



少し時を遡る。
メビウスは叩きつけられた後一分もしないうちに目が覚めていた。
体の六割が機械だというのがこういうときに役に立つのである。
そして、自分がうつ伏せに成っていることにも気づいた。
自分に攻撃の矛先が向いてないと知るとこれ幸いとばかりに休んでいたのだ。
そして、一つの疑問が彼の頭を掠めた。
『なぜ俺の攻撃だけ当たるのか・・・・・・』
考えれば簡単である。
呪文の一節・・・・・・
『永遠の中に眠りし、竜機の神よ』
これはつまり竜機神の加護を受けた者達を使っているからである。
『つまり、地下にあった通り神族や魔族の攻撃はあいつに有効という事か・・・・・・』
そして、彼は左眼を発動させる。
『魔力識別・・・・・・』
左眼が薄く赤く光り、ソウル・イーターを分析する。
『識別終了、目標を囲むようにして超重力の力場が発生』
その報告と共に彼はセンサーを切った。
『超重力の力場か・・・・・・ジオじゃ無理だな・・・・・・かといって『スー』を発動さえる隙もない。
   『ゼロ』は・・・・・・わざわざこちらが無防備になる必要は無い。となれば後は一つ・・・・・・』
そう心の中で言うと共にメビウスは小声で呪文の詠唱を始める。
「永遠の中に眠りし、竜機の神よ、今こそ汝が右腕に、祖の忌々しき命運尽きはつまで、煉獄の底に眠りし、
  全てのもの貫き通す者なり、さすれば我は求め導こう者なり、
  食らえ火炎の力似て、我等が前に立ち塞がりし、全てのものを、貫き、滅ぼしたまえ」
『柄だけなった剣に用は無い』
そう思いながら一緒に吹き飛んだのであろう
倭刀の先の刃の部分を素手で握り締め・・・・・・
『チャンスは一度きり・・・・・・奴が攻撃をしてきた直後!』
メビウスは静かに切り先をソウル・イーターの方に向け・・・・・・
『そろそろ遊びも飽きた・・・・・・』
ソウル・イーターがそう言うと共に攻撃を立っている三人に向け・・・・・・
「コア!」
メビウスがそう言うと同時に倭刀が砕け、赤い光が一直線にソウル・イーターを貫いた。

『コア』
・・・・・・あらゆるものを貫く力を持つサイレンスの特殊魔法の中で炎系の最強攻撃魔法。



『グヲオオオオオオオォォォォォォ』
ソウル・イーターが叫び声を上げる。
流石に竜機神の祝福を受けたものの直撃を受けたら効くであろう。
「メビウス!大丈夫なのか!?」
クレイがメビウスに肩を貸してそう言う。
「ああ、少し休憩を取らせてもらったおかげでな」
そして、不敵にメビウスは笑った。
『・・・・・・その笑い・・・・・・貴様名を何と言う』
ソウル・イーターがそう言って倒れていた身体を立ち上がらせた。
「メビウス=タウだ」
フルネームで自分の名前を言った瞬間、大きな痛みが三つ彼を襲った。
もちろんアホなことをした制裁に三人がげんこつを食らわしただけだが・・・・・・
「・・・・・・教訓が生かされてないね」
とうの本人は平然としていたが、三人は自分の手を抱えるはめになってしまった。
『メビウスだと・・・・・・』
ソウル・イーターがそう言い、しばらく沈黙を続けた後、
『我は一旦引く。だが、次に会った時こそおまえ達の名を持つものの墓場だ!』
そう言うと共にソウル・イーターは空中に飛び上がりそして消えた。
空間を移動したのであろう。
「引いた?」
「まあ、どうにかなったね」
シルがそう言ってクレイが地面に座る。
「・・・・・・魔物たちは?」
ラーが辺りに気を配るが、
「あいつ等はソウル・イーターがいたから町を囲んでいただけであって、
  ソウル・イーターがいなくなった今はソウル・イーターの後を追いつづけてるよ」
メビウスはそう言うと共に座り込み、
「!!!メビウス、その髪は!」
シルがそう言う。ラーも驚きで目を丸くしている。
「?髪?」
そう言うと共に彼は自らの髪を目の前に持ってきて・・・・・・
「ありゃりゃ」
彼の髪は銀色に染まっていた。
「多分『ジオ』とか撃ちまくったせいの副作用だ」
そう言うと共に彼は地面に倒れ・・・・・・
「疲れた・・・・・・少し眠らせてくれ」
そう言うと共に目を閉じた。




                                    続く




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     闇:さて、次がエピローグです
    ファ:・・・・・・終わるんだろうな
     闇:はい
    ファ:・・・・・・
     闇:ちなみに、タイトルの意味は
      『決戦、ヴィンディティシオン』
      という意味のはずです。(自信ない)それではこれにて・・・・・・