闇;さて、さっさと行きましょう
ファ:全部でいくつぐらいになる予定だ?
闇:さあ、10ぐらいじゃないですか?
ファ:・・・・・・
闇:それではいきます


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        祝福の都の守り神   U、暗き夜に花が咲く



ラーとメビウスは人ごみに紛れて『スプリン』に帰った。
帰るとベットの上に座って何かをしているシルの姿があった。
「何をしてるんだシル?」
ラーがシルに声をかける。
するとやっと気づいたようにシルがラーとメビウスの方に顔を向ける。
「ああ、お帰りなさい。何か解かった?」
「まあな」
メビウスはそう言うと共にベットに身を投げる。
「へ〜、こっちも面白いことが解かったわよ」
シルがそう言う。
「・・・・・・私も少しばかり気づいた事がある」
ラーもそう言ってベットの近くにおいてある椅子に座る。
「それで、誰から話す?」
メビウスが上半身を持ち上げながら聞く。
「そうね〜。じゃあメビウスからして」
シルがそう呑気に言う。
「解かった。ただ、その前に用心の為にな」
そう言うと共に彼は呪文を唱え始める。
そして、部屋全体に薄い光の幕のような物が出来上がる。
『魔力除去』と呼ばれる結界である。
「よし、じゃあ言うけど・・・・・・」
そう言って彼は昼間シスターから聞いた話しを二人にした。
「ふ〜ん、じゃあ今度は前司祭長にコンタクトを取るの?」
シルが頬杖をつきながらメビウスに言う。
「ああ、そうだな」
そう言うと共に彼は一枚の紙を取り出しそれにさっと文字を書く。
『明日の夜忍び込む』
そうその紙には書かれていた。
「まあ、しばらく様子を見てからでいいでしょう」
シルがその紙を見ながらそう言った。
「じゃあ次はシルだな」
ラーがそう言う。
「解かったわよ」
そう言うと共に彼女は一枚の地図を見せる。
メビウスが何度も見ていた地図だ。
「これは知ってると思うけど今のこの町の地図よ」
そう言って今度はその地図を置き、
「そして、こっちが図書館で見た時の五百年前の地図」
そう言うと共にシルはもう一枚の紙を見せる。
「違いが分かる?」
そう言ってメビウスとラーの前にその地図を置く。
「・・・・・・」
「・・・・・・大きさは同じだな。形も同じだし・・・・・・」
そう言ってメビウスがその地図をもう一度見比べる。が、
「・・・・・・今ならば周りに堀があるが、この時代ではその堀が無い」
ラーが呟く。
「えっ?」
驚きの声を上げてメビウスもその地図を見ると、
「確かに、そういえば堀が無いな」
そう言った。
シルはこくりと頷くと、
「その堀の由来も調べたわ。
  今から大体二百年前に周りに突如水が噴き出して三日三晩その水は出続けていたらしいわ。
  そして、噴き出すのが収まると丁度町を守る堀のようになり、今でも少しずつ水が出てると言う事よ。
  それと、この町の水の補給はすべて井戸よ」
シルがヒントを言う。
「・・・・・・なるほど、地盤沈下か」
「たぶんね」
メビウスが言ったセリフにシルが頷く。
「つまり、大量の地下水があるって訳か」
メビウスがそう言うが、
「いや、さっきのメビウスの話しを繋げて一つ思ったことがある」
ラーがそう言う。
「と言うと?」
「えっ、何々?」
メビウスとシルが興味津々と言う風に聞く。すると、
「まあ、一つの推理でしかないが・・・・・・」
そう言うと共にラーは手を上げ、
「この町の地下には大きな地底湖があるんじゃないかなとな」




その夜、
それは暗殺者達にとって一番動きやすい時間帯。
その中を一つの人影が走っている。
説明しなくてもわかると思うがメビウスである。
彼はいつもの魔導士風の服装から上からしたまで真っ黒の服装になっている。
もちろん身体にフィットしやすく、それでいて大量の暗器が仕込んであることは明白だ。
しかし、今の彼の風体を見ても誰だか分かる者は少ないであろう。
彼は仮面をしているのだ。
ヴィソール=ウル=デスである。
そう、今メビウスはメビウスであってメビウスでないのだ。彼はサイレンス。
死を運ぶ仮面の悪魔、仕事を請け負ったら成功率は99、9%の実力を誇る無情の暗殺者だ。
彼は夜の町を無音、無気配、無感情で走る。
目指すのは前司祭長チャドの家。
彼は今年でもう八十になるほどの高齢だが、まだまだ元気に余生を過ごしている。
警備兵などはチャドと話しのあう門番のみ。
チャドの寝室である。
チャドは眠れない夜を過ごし、ベットに横になりながら本を読んでいたが突如窓から現れた
一つの人影を見て近くに置いてあった杖を握った。
「何者じゃ」
チャドが言うと、
「ヴィソール=ウル=デス。この名前に心当たりは?」
低い声。通常のメビウスとはまったく違う声が仮面の下から紡がれる。
チャドはその名前を聞いた途端杖を放し、
「なるほど、君か。・・・・・・どうやら私の命を狙いに来たわけでは無いようだな」
「そうだ。それは数年前のときに知っているだろう」
メビウス。いや、サイレンスがそう言う。
「ああ、あの時には世話になった」
数年前、ヴィソールとして活躍していたメビウス、
いやサイレンスはこのチャドから神殿を食い物にしている数名の者達の調査、そして始末を頼んだのだ。
サイレンスはその依頼を相手が声を出す隙、いや指先を少し動かす間もなく一撃で命を奪ったのだ。
その忌々しき両手で・・・・・・
「一つ頼みたい」
サイレンスがそう言う。
「・・・・・・君の頼みとはね。一体なんだね」
チャドが驚きを露にしながら聞く。
サイレンスは一枚の羊皮紙をチャドに投げると、
「明日の晩結果を取りに来る」
「明日?それは急だな」
チャドが困惑を露にするが、
「内容を見れば急でもなんでもないことが分かる」
サイレンスは取り合わずににべも無く言う。チャドは困惑をまだ浮かべていたが、
「・・・・・・解かった。君がそう言うのなら間違いは無いだろう」
そう言うと共にその羊皮紙をサイドテーブルの上に置き・・・・・・
「そうそう、君酒は・・・・・・」
そう言って振り向いた時にサイレンスの姿はもう消えていた。
「・・・・・・相変わらず疾風のような奴だな」
そう言うと共にチャドは窓を閉め、テーブルのランプを灯した。
眠れない夜の時を潰す丁度いい肴がやってきた事に内心感謝しつつ・・・・・・



その頃、サイレンスはまっすぐに『スプリン』には帰らずに近くの空き地に足を向けた。
理由は簡単である。
チャドの家から出た直後尾けられたからである。
気配は三つ。
昼間の人影とは違う明らかにサイレンスを狙った刺客である。
裏幕は読めている。暗殺者ギルドから抜けたものに与えられるのは死のみ・・・・・・。
サイレンスはそう心の中で呟くと共に空き地の真ん中に立ち、
「姿を見せろ」
そう冷たく言った。
その途端、気配が止まり戸惑いの色が色濃く表れる。
それは追撃者たちにとってたった一瞬だったかもしれないが、サイレンスにとって獲物を始末するのには余りある時間だった。

ビッシャ

地面に赤い花が咲いた。やったのはサイレンスである。
一瞬で一番近くとの相手との間を詰めて上から叩き落したのである。
もちろんただ落とされただけではサイレンスが勢いをつけて手を振り落としたのだ。
彼の改造されている腕でこそできる殺し方である。
もちろん、一人目が殺されて残る二人に一気に緊張が走るが、
「遅えよ」
一瞬で間合いを詰めもう一人の頭に強烈なキックを放つ。
哀れな犠牲者は頭部が吹き飛び、そのまま数十メートルを飛んだ。
そしてサイレンスは残る一人に一連の動作でナイフを投げつける。
銃と呼ばれる兵器よりもさらに速く、破壊力がついたナイフは、
そのまま最後の犠牲者の心臓に吸い込まれるように突き刺さり、後ろの木に犠牲者を縫いとめた。
全ての動作が終わるまでに三秒も無かった。
「・・・・・・アホ共めが」
サイレンスはそう言うと興味を無くしたようにすぐさまその場から立ち去った。
後に残ったのは公園に咲く二つの赤い花と、木に縫いとめられし哀れな者のみ・・・・・・



翌朝、三つの死体が公園で発見されたと言うのがその町のもちきりの噂になった。
「まったく近頃物騒よね〜」
シルが気楽に言う。
「そーだな」
メビウスもその意見に賛成すると目の前においてある食料を片っ端から片づけ始めた。
ラーはその様子をコーヒーを飲みながら見ている。
「それで?今日の予定は?」
メビウスが肉にかぶりつきながら聞く。
「そうね〜。私はもう少し昨日の推理の確証を掴みに行ってみるわ。ラーはどうする?」
シルがナイフでラーを指差しながら聞く。
「・・・・・・私は色々と当たってみよう」
ラーはそれだけ言うとコーヒーを飲むのに没頭してしまう。
「ふ〜ん、まあいいけど・・・・・・メビウスは?」
シルが聞く。
「そうだね〜・・・・・・どうせだから偵察に行ってくるよ」
メビウスがそう言う。
どこの偵察かは言わなくても分かっている。
「解かったわ。じゃあ後は自由ってことで・・・・・・」
そう言うと共にシルとメビウスが毎朝のように食事の取り合いをはじめ、最終的にウゼルに制裁を加えられ、
その後ラーが鳥肌を立てると言う朝の日課が行われた。



朝の日課が終わって、ラーは一人街中を歩いていた。
街は今日の朝起こった惨劇で持ちきりだ。
ラーはその中を人ごみに流されるようにして歩いている。
色々な屋台が出て、人々に売ろうとしているのを尻目に彼女は一つの角を曲がった。
そして、数メートルほど歩くだけで
今までの喧騒が嘘のように町のもう一つの面が現れる。
スラム街。
そこは闇に通じる者達が店を開く場所。
つまり、この街の裏の面だ。
ここはあらゆるものを受け入れる。
この裏の面では治安隊等はまったくの無力だ。
闇の面では、悪魔と契約を結んでいるものも少なくは無い。
現にラーとシルは上級の悪魔と一度対峙している。
その時、一人の青年の命を代償にし辛くも勝利を収めたのである。
そして、ラーが感情を消したのはその時からである。
ラーはそこまで考えると首を横に振り今までのことを忘れる。
それは済んだ事、過去の事なのだ。
「・・・・・・まったくどうかしている」
ラーはそう言うと一つの店に足を踏み入れた。
「・・・・・・いらっしゃい」
その店には何も飾られてない。
その奥に店主がいるだけだ。
「・・・・・・欲しい物がある」
ラーが身体を完全にコートに隠しながら言う。
「何が欲しいんですかい?」
店主はそう言うとラーを舐めるように観察し始める。
ラーはその視線に気づきながらもまったく気にせず、
「銃はあるか?」
そう言った。
「・・・・・・ありますとも、けれど代償はもらいますよ」
そう言うと共に現れる何十人もの大男。
「やれ」
店主がそう命令した。



数分後、あらゆる死体の中に一人立っている者の姿がある。
店の中は血の匂いで充満している。
今では何人いたかも分からないほどに人間だった部品が転がっている。
「・・・・・・」
ラーは無言で店主がいた場所にある布から一枚の鍵を取り出し、
奥の金庫にその鍵を使って中から黒塗りの一丁の鉄の塊を取り出した。
「ま、待ちやがれ。それは使い慣れてないと・・・・・・」
店主がそう言ってよろよろとラーに近寄ろうとするが、
パシュッ
消音機つきの銃声が鳴り響くと共に店主の身体が崩れ落ちる。
「・・・・・・すまんな。こいつは使い慣れてる」
ラーはそう言うと共にその銃を自らのコートの中にしまいこんだ。
『TM−GZ』そう表面に打たれている拳銃を・・・・・・



                                            続く




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    闇:え〜、最後に出てきたTM−GZって言うのは勝手に考え出した物です。
        ちなみに弾丸は六発って言う設定です
    ファ:で?この意味は?
     闇:TECHNICALMAGNAM−GOLDENZって言うのが一応考えた名前です
    ファ:辞書引きながら言うな。ついでにMAGNAMの部分かなり適当だし・・・・・・
     闇:まあほっといて
    ファ:・・・・・・
     闇:速い話しがリボルバー式の拳銃って訳です
    ファ:リボルバーか!
     闇:ええ、一応リボルバーにしました
     ファ:・・・・・・それはお前の趣味か?
      闇:・・・・・・僕の想像しているラーにはリボルバーが合うんです!
        と言うわけで今回はこの辺で・・・・・・
     ファ:どう言う経過でというわけかは分からないがさようなら〜