過去と現実Y
闇:さて、クライマックスが近づいてまいりました。
ファ:あっそ
闇:・・・・・・相変わらず冷たいですね
ファ:知るか
闇:・・・・・・それではいきます
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Y、過去との決着、そして現実の死闘
クレイはサイレンスを少し見た後、
「話は聞かせてもらった」
そう言ってもう一発ランスに弾をぶち込む。
「まさかお前がヴィソールとはね」
「・・・・・・うるさい」
サイレンスがそう言ってランスのほうを睨みつける。
ランスはショットガンの直撃を3発食らってるのに全くダメージはなさそうだ。
「ふふふふふ、異形の力を受け取っている俺にとって、そんなものはダメージにもならん!」
そう言って立ち上がるランス。
呑気にクレイが口笛を吹く、
「まじかよ。これでもプラチナの弾丸だぜ」
この世界のプラチナはある特定の魔法反応があり
精神体にもダメージを与えれるほどなのだ。
「ふっ、プラチナだろうが俺には関係は無い!」
そう言うと共に高笑いをするランス。
「ちっ」
もう一撃打ち込もうと弾丸をセットしようとするクレイの前に
サイレンスが手を突き出す。
「これは俺の勝負だ。手出しはやめてくれ」
その言葉を聞くと共にクレイは一瞬動作を止め・・・・・・
「ったく、わーたよ」
そう言うと共に後ろに下がった。
「ふふふふふ、どうだ。無駄だと解かっただろうサイレンス」
ランスがそう高笑いするが、
「いいや、その逆さ」
そう言うと共に鎧の隠しの部分に入れていた最後の短剣を取り出す。
「こいつで、すべて終わる」
そう言い、その短剣を構える。
「ふっ、何か知らないが・・・・・・無駄だ!所詮はお前といえど人間。この俺には敵うわけが無い!」
ランスがそう言い、高笑いをしようとして・・・・・・
「発動、カノン!」
そう言うと共に放たれた短剣がランスに突き刺さる。
そして、炎がランスの全身を包んだ。
カノン・・・・・・灰すら焼き尽くす火の塊
「ふふふふふ!効かぬ効かぬぞ!」
ランスがそう言って動こうとするが、
「な、何!?動けないだと!?馬鹿な!」
彼の身体はぴくりとも動かない。
「当り前だ」
そう言ってサイレンスはキル・ソードを抜き放つ。
「いくら魔力が効いてる鋼鉄とは言っても空気中で炎に触れたら錆びてしまうのは歴然としている。
それもそれまでにダイナによって振動が与えれたら内部の方はぼろぼろ。
ついでに言えばお前の異形との契約・・・・・・これが敗因だな」
そう言ってサイレンスは一度ため息をつく。
「こいつらは竜機神の祝福を受けた者達だ。異形の者には絶大なダメージを与える」
「・・・・・・馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な!」
ランスが叫びを上げだすが、
「まっ、お前と俺とではもっているものの重みが違うんだよ」
そう言ってキル・ソードを頭上に振り上げ・・・・・・
「さらばだ。心を喰われた友よ・・・・・・」
そう言って一旦目を瞑り、
「ジオ!」
そう言うと共にサイレンスはランスに振り下ろした。
「うぎゃああああああああああああああああああ」
全ての力の塊は狙いたがわず、ランスの頭に直撃し、
身体を飲み込み、そして爆発・・・・・・
後には静寂のみが戻ってきた・・・・・・
が、
ズキュゥン
一発の弾丸がサイレンスを掠める。
その先には・・・・・・
「・・・・・・」
「嘘・・・・・・」
拳銃を構えたラーと唖然としているシルの姿があった。
そして、ラーがサイレンスに止めを刺す。
「そんな姿だったとはなメビウス。いや、死んでもらおうヴィソール=ウル=デス」
決別の言葉だった。
サイレンスは無言でその様子を見ていた。
否、彼は小さい声で何かを唱えていたのだ。
それに気づかず、ラーは言葉を続ける。
「まさか一番追い求めていた敵が身近にいるとはな」
「・・・・・・」
「ラー、それは少し違うと思うぞ」
クレイが言おうとするが、
「・・・・・・うるさい」
冷たい声で黙らされるクレイ。
そして、サイレンスは突然手を真上に上げ・・・・・・
「しまった!」
その瞬間、何かの詠唱を終えている事に気づいてラーが飛び出す。
クレイとシルもその後に続こうとするが、
「デンジャラクトヒュジョン!」
サイレンスの手から放たれた魔法が大爆発する。
その瞬間、サイレンスは踵を返して逃げる。
「待て!」
もちろんそれを見逃すラーでは無い。
爆発の中を突っ切ってサイレンスを追いかける。
もちろん、ただで済むわけが無い。
この『デンジャラクトヒュジョン』・・・・・・
属名『無差別広範囲危険爆発呪文』はその威力ゆえにもう一つの異名をつけられている。
『破壊の雷爆』・・・・・・人間がその中に飛び込んで生きている確率は10%をきる。
「ラー!」
「だめだシル!危険すぎる!」
クレイがぎりぎりでシルを掴んで自らの方に引き寄せる。
その瞬間、大木がシルが居た場所に倒れこんだ。
「ここは危険だ。違う道を探そう!」
「・・・・・・解かったわ。ついでに走ってる途中に何でああいう結果になったか教えて貰えると公平ね」
そう言って二人は違う道を探す為に急いで走り出した。
「・・・・・・」
サイレンスは無言で走っていた。
もちろん手は抜いてない。
結構な速さで走っているのに後ろの気配はそれに追いつこうとして全く離れない。
心当たりは一つしかない。
『ラーか・・・・・・』
サイレンス・・・・・・いや、メビウスはそう心の中で呟くと一つため息をついた。
『一番この姿で合いたくなかった奴が来たか・・・・・・』
彼は一瞬目を瞑ると神経を集中させる。
そして、
『来た!』
消音機によって無音で飛んできた弾丸をメビウスは無造作に避けた。
続けて四発撃たれるが、結果は同じである。
『今の威力から見て拳銃はリボルバー式・・・・・・弾丸個数は六発・・・・・もう弾丸は底をついたな』
そう思い、木陰から彼は飛び出し・・・・・・
ズキュゥン、ズキュゥン
彼の体のすぐ脇を二発の銃弾が掠めていく。
見ると、右手にリボルバーの拳銃を、
左手にオートマチックの拳銃を持っているラーの姿が目に入った。
『二つ目の拳銃か・・・・・・オートマチックタイプ・・・・・・厄介だな』
そう思うと共に彼は一本の短剣を取り出し唱えだす。
「永遠の中に眠りし、竜機の神よ、今こそ汝が右腕に、祖の忌々しき命運尽きはつるまで、
氷雪の中に眠りし、小さき吹雪持ちしの者なり
さすれば我は求め導こう者なり、食らえ氷雪の力似て
我等が前に立ち塞がりし、全てのものに、一時の冷たき眠り与えん為に!」
そして、彼はラーの右肩を狙い思いっきり短剣を投げる。
もちろんラーもその様子を見て飛んできた短剣を右手で払おうとするが、
「ソルベ!」
そのメビウスの一言と共にラーの右手が氷に包まれる。
「くっ」
ラーが左手の拳銃でメビウスに向けて四発撃つが、すぐさま回避されてしまう。
『オートマチックタイプも弾丸を切らした・・・・・・』
そう心の中で言うと共にメビウスは少し開けた場所に出た。
メビウスはそのまま突っ切ろうかどうしようか一瞬悩み、
「止まれ!」
ラーがそう言ってメビウスに追いついた。
メビウスは素直に止まり後ろを振り返る。
その顔にもう仮面は無かった。
「・・・・・・どうしてだ」
ラーがそう言う。
「どうして!黙っていた!
私がヴィソール=ウル=デスに恨みを持っているのを知っていた陰で笑っていたのか!」
「・・・・・・」
ラーが怒鳴るが、メビウスは否定も肯定もしない。
そこにあるのは無言だけ・・・・・・
「・・・・・・私がなぜヴィソールを恨んでいるか分かってるな」
「・・・・・・シルから聞いた」
メビウスが静かにそう言った。
「知っていたのになぜ何も言わなかった。
確かにこの町に入ってからおかしな点はいくつかあった。だが、なぜ・・・・・・」
「・・・・・・この町で俺は昔一つの苦い思い出がある。それだからおかしかっただけだ」
「・・・・・・そうか」
そう言うと共にラーは拳銃を構える。
メビウスは平然とその様子を見て、
「オートマチックタイプの最大弾丸個数は六発。さっきまでに六発は打ち込んでいる。
片手が使えない今のお前だったら拳銃の弾は換えれてないからもう弾丸は・・・・・・」
「確かにオートマチックタイプの最大弾丸個数は六発だが、一つだけ例外がある」
そう言うと共にラーはメビウスの心臓に狙いをつける。
「オートマチックのタイプは最初に弾丸を一発装入してから六発の弾丸のボックスを入れれば七発打てる。
だから、これが最後の一発だ」
そして、メビウスは目を瞑り、
「最後に言わせて欲しい」
「何だ?」
ラーが聞く。
メビウスは何かを決心したような顔つきになり、
「俺は確かにヴィソール=ウル=デス・・・・・・つまりサイレンスだった。だけどな・・・・・・」
そう言って胸を張り、
「今の俺はメビウス=タウだ。その名前に偽りは無い」
威厳のある声だった。
それは決心・・・・・・そして過去との完全な決別・・・・・・
「俺はメビウス=タウ。しがない魔導士だ」
そう言って目をラーに向けた。
メビウスの目は決心で澄んだ目をしていた。
ラーは何かを隠すように下を向き、
「・・・・・・信じてたのに・・・・・・お前だけは信じてたのに・・・・・・」
「・・・・・・ラー」
ラーは涙を袖で拭くと共に一言言った。
「・・・・・・さらばだ。大丈夫、一人にはしないよ。私もすぐに同じ場所に行くから」
彼は彼女の目をまっすぐに見たまま目を細めた。
そして、ラーの持っている銃のトリガーに力がかかり・・・・・・
「ラー!撃っちゃだめ―――――!」
やっとやってきたシルの声が遠くから聞こえ・・・・・・
「さよなら・・・・・・メビウス・・・・・・」
銃口から火花が散った・・・・・・
銃弾は迷うことなく一直線にメビウスの左胸を貫通し・・・・・・
「すまんな、そこははずれだ」
一瞬にして間を詰めたメビウスはラーの鳩尾に思い拳を叩き込んだ。
「がはっ」
ラーが衝撃で意識が飛びそうに成る。
しかし、不屈の精神がそれをかろうじて止める。
が、身体は前に倒れ、メビウスの片手に支えられている状態となる。
「この体が改造されてから心臓の周りには強化プラスチィックが張ってある。
銃弾が心臓を貫通する事は無い。すまんな、俺にはまだやることが残されてるんだ」
「 」
そして、ラーにかろうじて聞こえるような小さな声で言葉を紡ぎ、
無防備な首筋に手刀を軽く入れた。
ラーはそこで意識を闇に手放した・・・・・・
メビウスはしばらくラーを片手で支えていた後、ゆっくりその身体を横に寝かした。
シル達が着いた時にはメビウスが広場から姿を消す直前だった。
「メビウス!」
シルが声を掛ける。メビウスは一瞬振り返り、
「短い間だったけど・・・・・・一緒に入れて楽しかったぜ」
そして、もう一度視線を前に戻し、
「ラーが目を覚ましたらこう伝えてくれないか?」
クレイがこくりと頷いた。
メビウスはそれを気配で察知した後、
「ありがとう。今まで本当に楽しかった。と伝えてくれ」
そう言って、後を振り返らず走り出した。
彼に迷いは無い・・・・・・
やる事はまだ大量に残されているのだ。
竜機神に会いに行かなければならないし、メビウスの命を狙っている真の黒幕はまだ倒れてないのだ。
「さようなら。ドラグーン・・・・・・」
誰にも聞こえない夜の帳の中でメビウスは呟いた。
続く
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闇:次回がエピローグです
ファ:長かったな
闇:そーですね
ファ:しっかしまあ、これで終わるとはな
闇:ええっと、ランスの影が何でメビウスに言ったかという質問は
ファ:質問は?
闇:ランスの異形に心を食われる前の面がぎりぎりで生きていて、
最後の力を振り絞ってメビウスにメッセージを与えたという設定にしておきます
ファ:・・・・・・適当だな
闇:言わんでください
ファ:・・・・・・
闇:それでは、次回『過去と現実』のエピローグで会いましょう
闇&ファ:さようなら〜