闇:手抜きで前書き抜きです


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             V、始動



運命の日・・・・・・
朝からメビウス達は一応依頼人を警護していた。
しかし、襲撃は夜なのであくまでも一応だ。
依頼人が怖がって外に出ないのが幸いである。
姿を隠して四人は一応護衛していた。
姿を消すと言っても影に隠れながら移動してるだけだが・・・・・・
「夜まで何をする事も無いのにな」
メビウスがそう言う。
「ほんとだ」
クレイがそう言って持っていた飲み物を一杯飲み、もう一つをシルに差し出す。
シルはクレイの持っていた飲み物を受け取ると、
「けど、なんていうか性格悪いわね」
「確かに・・・・・・」
クレイが同意する。
「・・・・・・」
ラーは好き勝手言っている三人を静かな目で見ているだけだった。
「・・・・・・でもさ、ヴィソール=ウル=デスってどんな奴なのかな?」
クレイが自分のナックルを整備しながら言う。
「・・・・・・そーだな。俺も会った事ねえや」
メビウスが一瞬だけ黙ってからそう言った。
そう、彼自身がヴィソール=ウル=デスなのだから知っているが会った事は無いのだ。
ウソはついてないが本当の事は言ってないという事である。
「でもヴィソール=ウル=デスは何を目的に暗殺なんてしてるんでしょうね?」
シルがその疑問を口にする。
その瞬間、メビウスの手が一瞬震えたが三人ともそれには気づかなかった。
「そーだな。金じゃねえか?やっぱり」
平然を装ってメビウスが言う。
「・・・・・・やっぱりそうなのかな?」
クレイがそう言う。
その後には沈黙のみ残った。
『この頃会話が続かないな』
クレイが心の中でそう呟いた。


そして夜・・・・・・
先鋭の何人かとメビウス達四人が依頼人と共に広場で待っていた。
外には何十人もの傭兵がたむろしている。
もちろん一人一人単独行動はしてない。
五人程度の少人数部隊で動いているのだ。
効率は悪いが確実を目指すのならそのようにした方がいいのである。
メビウス達は依頼人を囲みながら座っていた。
予告状に書かれていた時刻は夜の十二時。
今は十一時五十分である。
ラーは拳銃を隠し持ち目を閉じて時が来るのを待っている。
メビウスは何処から持ってきたのか分からないが大剣を持っている。
シルは・・・・・・普通の短剣を隠し持っている。
流石にザッハトルテは邪魔なのであろう。
クレイは愛用のナックルを装備して座っている。
時は刻一刻と迫る。
そして・・・・・・

ボーン、ボーン

柱時計が十二時を指した。
独特の雰囲気が流れ・・・・・・
「何だ。こねえじゃねえか」
一人の傭兵が立ち上がってそう言い・・・・・・
「そうでもない」


ザシュ


何かが切れる音がした。
「はへっ?」
男の首が宙を舞った。
その後ろに居るのは・・・・・
漆黒のマント、黒い服、黒い剣、そして違和感のある真っ白な仮面・・・・・・
「ヴィソール=ウル=デス!」
メビウスがそう言って立ち上がる。
その手には投塊用の鉄の塊が隠し持たれている。
しかし、メビウスがその塊を投げる前にラーとシルが動いた。
ラーは拳銃を抜かずにタガーを持って真正面から突っ込めるように構える。
シルはその背後からフォローに向かう。
クレイは一応依頼人の前に移動し呪文を唱え始める。
他の人間は一歩引くが、
「は、早く倒さんか!倒せば金貨一千枚だぞ!」
依頼人がそう言う。
「金貨一千枚・・・・・・」
一人の傭兵が舌なめずりしながら言う。
ここでの金貨は大陸共通の金貨である。
大富豪が一年間過ごすのに金貨百枚程度といわれるのである。
つまり十年間は遊んで暮らせるという事である。
その瞬間、三人の戦士がヴィソール=ウル=デスの方に突っ込む。
「金貨は頂いた!」
「あほが!金のために命捨てる気か!?」
クレイが怒鳴るが時すでに遅し、ヴィソールの右手が動いたと共に三人の体が切り刻まれる。
「気をつけろ!銀鋼線を使ってるぞ!」
メビウスが怒鳴る。
「銀鋼線だと!?・・・・・・厄介だな」
クレイが唸る。
銀鋼線・・・・・・名前の通り細い金属の糸である。
ただし、その糸には刃が着いているため目標を切り裂くことが出来る。
銀が含まれているため簡単な魔法では切り裂くことが出来る。
せいぜい『火炎球』どまりだが・・・・・・
「右手に一本、左手に二本装備してるぞ!気をつけろ!」
メビウスが怒鳴りながら隙を見て床に投塊を放つ。
リフレクトショット
・・・・・・微妙な力加減が必要だが直線に飛んでこない物を
打ち落とすのは簡単では無い。
しかし・・・・・・メビウスは微妙に左手の人差し指が動き、自分の放った塊が切り裂かれるのを見逃しては無かった。
『右眼が義眼か、いや両目共か!』
一瞬だけ赤く光った両眼をメビウスは見逃さず、迫り来る銀鋼線を剣で叩き落す。
「厄介だな」
そう言うと共に再び数十個単位でと投塊を放つ。
ラー達は銀鋼線を相手が使ってるという時点で間合いの狭い短剣でなく魔法などで攻撃している。
「煉獄!」
ラーが炎を放つがヴィソール=ウル=デスは服にミスリルでも仕込んでいるのか対して効いた様子は無い。
「風刃乱舞斬!」
クレイが明らかに人間用では無い量の風の刃を繰り出してヴィソール=ウル=デスに放つ。
それでも、一つ一つ叩き落される風の刃。
「雷撃陣!」
メビウスが一瞬の隙を見て唱えていた呪文を放つ。
その瞬間、いくつもの雷がヴィソール=ウル=デスに殺到する。
流石にそれは避けれなかったのかヴィソール=ウル=デスはその中の一筋の雷を食らい・・・・・・
「・・・・・・やはりか・・・・・・」
そう言うと共に窓枠に足をかける。
「・・・・・・さらばだ。再び会おう」
そう言うと共に窓の外に身を投げた。
「ちっ!逃げられた!」
クレイがそう言う。
ラーがすぐさま窓枠に足をかけ、
「待て!ヴィソール=ウル=デス!」
ラーがそう言って窓からその身を投じた。
すぐ後にクレイが続く。シルもその後に続く。
しかしこの時三人は見てなかった。
すぐ傍に居たはずのメビウスが何時の間にか忽然と姿を消していた事に・・・・・・



「逃がすものか・・・・・・」
皆の目が窓に向いた瞬間にメビウスは廊下に出ていた。
「闇霧」
そう言った瞬間、メビウスの姿を隠すように闇が構築される。
そして、そこから一つの人影が飛び出す。
黒い衣に黒いマント、漆黒の剣と白い仮面・・・
・・・すべて大剣を入れる鞘という名目の荷物入れに入れてきていたのだ。
サイレンス=ツア=ベムス・・・・・・『死を運ぶ仮面の悪魔』の出陣である。
「逃がすわけが・・・・・・無い」
彼は飛び出した。


暗い闇のなかでヴィソール=ウル=デスを見つけるのはサイレンスにとって優しかった。
『赤外線スコープ・・・・・・ON』
彼の目にたくさんの人が一ヶ所に向かって走っているのが手にとるように解かった。
『赤外線スコープOFF・・・・・・暗視スコープON』
彼は赤く光る目と共に再び走り出した。
「あっちだ!追え追え!」
サイレンスは物影に隠れながら高速で移動していた。
周りではさまざまな声が聞こえる。
そして・・・・・・
彼は列の先頭で追撃をし続けている三人の姿を見つけた。
そして、その前には今の自分とほとんど同じ姿の者が居る。
彼はキル・ソードと隠し持っていた短剣を抜くと共に一気にその姿を闇夜にとさらし出した。
もちろん追っ手は突然のもう一人のヴィソール=ウル=デスの出現に戸惑う。
サイレンスはその様子を見ることなく、すでに唱え終えていた呪文をもう一人のヴィソール=ウル=デスに解き放った。
「グラニト!」
重力の網がヴィソール=ウル=デスに襲い掛かるが
ヴィソールはその攻撃を避け、銀鋼線で攻撃をしてきた。
だが、義眼を発動しているサイレンスにそんな攻撃があたるはずも無い。
サイレンスは短剣を自らの衣の中にしまうとすぐさまキル・ソードを振り上げ、
「ゲイル!」
一瞬の隙を突いてサイレンスが疾風の如きに連続を放つ。
グラニト・・・・・・地属性、重力の網で敵の行動を麻痺させる。
ゲイル・・・・・・風属性、疾風の如き2連の攻撃、通常回避不能。
連続の2連に流石のヴィソール=ウル=デスも避けれず攻撃を食らい後退する。
『硬い感触・・・・・・体全体が鋼鉄か・・・・・・』
彼は頭の中でそう言葉を出すと共に
もう一撃ヴィソール=ウル=デスに入れようと再びキル・ソードを引き抜き・・・・・・
「連続暗黒砲!」
それは偶然だったのであろう。
ラーの放った暗黒砲の一つがサイレンスの左手と
ヴィソール=ウル=デスの右手を吹き飛ばした。


「・・・・・・」
義腕の左手は証拠さえも残らず消え去った。
「ちっ」
ヴィソール=ウル=デスが一歩後退し、塀を越えて姿を消した。
『左義腕消滅・・・・・・戦線を離脱するのが得策か・・・・・・』
サイレンスはそう思うと共に走ってきたラー達から逃げるようにして塀を飛び越えた。



「ただい・・・・・・うどわっ!」
メビウスが扉を通ると共に椅子が飛んでいった。
「・・・・・・?何で椅子が・・・・・・」
そして、恐る恐る飛んできた方を向くと・・・・・・
「くそっ」
ラーが荒れていた。
あれから後・・・・・・ラー達は死者達を埋葬し、そして屋敷の部屋に戻ってきたのだ。
メビウスは追っかけたが途中で吹き飛ばされたという風に言い訳している。
本当は誰もいない通りで左手の別の義腕をつけていたのだが・・・・・・
「お帰り〜」
「・・・・・・早くこっちに来た方がいいぞ〜」
シルとクレイがベットの下から顔を出してメビウスにそう言う。
メビウスは被害に遭わないうちにベットの下に潜り込んだ。
上からガシャンだのバキだの音がする。
「・・・・・・どーやら条件反射で投げたようだな」
「そーらしいわね」
「いや、そんな簡単に言われてもこっちは何が起こってるやら・・・・・・」
クレイとシルがしみじみ呟くがメビウスは突っ込むだけ・・・・・・
「できれば詳しい話しが聞きたいんだけど・・・・・・」
メビウスがちょっと泣きながらそう言う。
クレイとシルは顔を見合わせため息をついた。



「つまりラーは昔恋人をヴィソール=ウル=デスに殺されたと・・・・・・」
「恋人じゃないんだけどね。プロポーズは受けてたらしいわ」
全ての事情を聞き終えたメビウスがそう言った。
一部をシルが否定する。
「どちらにしてもラーはかなりの恨みをヴィソール=ウル=デスに持ってるんだ」
クレイがそう言った。
「しっかし一年前とはね〜」
メビウスの脳裏に言葉が浮かぶ。
『丁度ルキーナとランスが殺されて半年・・・・・・俺が地方で心を失っていた時か・・・・・・』
メビウスの脳裏に薄汚れた小屋の内部が蘇る。
『確か・・・・・・そうだ、あの時クレード博士と再開したんだ』
クレード博士・・・・・・五年前のある作戦の重要人物とされていた者。
そして、五年前死にかけていたサイレンスを奇跡的な大手術・・・
・・・サイボーグ化という事によって生き延びさせた者である。
言うならば、今のメビウスがここに居れると言うことを作り出した者である。
残念な事に一年前に田舎のある場所にて死亡・・・・・・原因は老衰である。
死ぬ前に全ての医学、機械学、魔法学などの知識をある人物に教えたと言われているがそれは定かでは無い。
まあこの話しはまたの機会に・・・・・・
「どうしたメビウス?」
クレイが心配そうにメビウスの様子を見ている。
「顔色が悪いわよ」
シルもそう言って心配する。
メビウスはにっこり笑うと、
「どーでも良いけどいい加減ラー止めなきゃならねえな」
「・・・・・・そうね」
こうして三人は猛獣と成っているラーと格闘するはめになってしまったのだった。



                                 続く




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  闇:さて・・・・・・これで一年前の事が大体理解してもらえたでしょうか?
  ファ:で?次回からどうなるんだ?
   闇:それは次回からのお楽しみです。という訳で今回はこれにて・・・・・・