梓:ゆっくりとまったりと気長に連載でも・・・と始めた月光王も今回で9話になりました。
  ・・・ふぅ・・・本当はもう少し短めにする予定だったんですけどね。
L:これ以上短くしたら、本当にあたし達の出番がなくなっちゃうって言ってるじゃない。
梓:大丈夫ですって、再会させますから。
L:本当に?
  会いたいんだからそこのシーンはちゃんと書いてくれないと、あたし、
    この新品の刺付きハンマーの威力試したくなっちゃうわ(泣き真似しながら手に持つ)
梓:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・が・・・・・・・・・・・・・・・・頑張らせてもらいます(汗)
  あ、あの、ここらへんで「きゅう」に行きましょうかっ!!


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

祭壇の前に、緑色のマントを羽織った1人の男が立っていた。
デリタやルスタと同じく、緑色の髪と緑色の瞳を薄明かりに照らさせている。
“美老人”でも“美中年”でも“美青年”でもなく、まぎれもない1人の “美少年” 。
しかし、少年が放っている威厳・・・プレッシャーはとてつもなく凄まじいもので
ディースに魔力を高めてもらったリナ達やゼロスでさえもが、少しも動けない。
だが等のディースだけは、いつものように穏やかに笑ったまま片手を上げた。
「やぁ、クリス・・・と僕達に呼ばれるのは好きじゃなかったんだっけ?
  それじゃあ改めて。
  降魔戦争以来だから一千年と十数年ぶりだね、クリスファンド=ヴェルジオール」
 クリスはディースに名前を呼ばれると、すぐさま嫌悪したような表情になる。
「慣れなれしく口を聞くな」
クリスの言葉は無視してディースはしゃべり続ける。
「最初誰かと思っちゃったよー。
  確か・・・前は中年の髭が似合うおじさんの姿だったしさ。
  ・・・あ、もしかしてフィブリゾに感化されちゃった?」
その言葉に驚いたのはリナ達である。
冥王・フィブリゾ、数年前にリナ達が対峙し、倒した魔王の腹心の1人。
(まぁ、あれは気がつかなかった事が『自業自得』としか言えないのだが・・・)
何故その彼の事が今出てくるのか分からずに首をかしげていると、それを見た
ディースがくすくすと笑ってリナ達にと人差し指を立てて言った。
「彼らが生まれた歪みを最初に見つけたのが、フィブなんだ。だからだよ。
  フィブの言った通りで、その姿だと多くの人間が油断してくれただろうね?」
嫌悪の表情を消して肯定するようにクリスが鼻でせせら笑う。
渋い顔をするリナ自身、フィブリゾのその魂胆に引っ掛かった事があるのだ。


「月光の王―キング=オブ=ザ=ムーンブラス―・・・金色の弟―ブラザーズ=オブ=ナイトメア・・・」

クリスが口を開く。

「今宵こそ、貴様を葬り、金色の魔王を葬ってみせよう・・・」



           月光王   其の9



「それは出来ない相談だね。みすみすやられてあげるわけにはいかないし」
錫杖を手でくるくると回しながらディースはにこにこと笑って言う。
冷笑していたクリスはその表情が気に入らなかったのか、声に嫌悪の色を混ぜる。
「力の落ちた貴様ごときが力のない人間ごときと、どう抗えるというのだ?」
戦闘態勢を取ったままのリナ達がディースの周りに集まり、まるで
力のない者を守るかのように、ディースの隣に立ちはだかるのを見てクリスは言う。
しかしそんな挑発にディースは乗らない。
「人間ごときとはまた酷いなぁ・・・皆は僕の仲間なんだけど?」
「ふっ!」
鼻で笑い飛ばしながら軽く振り上げた右手を、クリスは下に振り下ろす。
途端に、こちらも動けなくなっていた雑魚外族の残りが一気に襲いかかってきた。
「あー、うっとおしい!!ドラグ・スレイブ!!!!!!」
リナがそう叫びながら姿勢を変えて群れる外族に向かって放つと一撃で滅びていく。
だが、その中から逃れた1匹の外族がディースへと突進していった!
それに気がついたディースはすぐさま錫杖を構えたが、間に合わずに衝撃音とともに輪から大きくはじき飛ばされる。
リナ達がディースの方を向きディースが体制を持ち直そうとする。
その一瞬の隙を冷笑しながら見ていたクリスが、見逃すはずがなかった。
懐から1つの小さな金の球を取り出し、ディースの方に向けて

ぱきんっ!
金の破片を飛び散らせながら指でかち割った。
それと同時に、水色の透き通ったクリスタルがディースの体を硬く閉じ込めた。

「・・・これでもう止められないわね・・・」
ユニットがそう言ったが、小さい声だったので誰にも聞こえなかったようだ。


「このクリスタルは・・・かつて冥王様が使っていたものと・・・同じものですね?」
「そうだ―――奴の魂をクリスタルに具現化させたのだ」
ゼロスの問いに答えられたその言葉に、4人の顔に酷く苦い表情が浮かんだ。
フィブリゾとの闘いの時。
彼はリナを残した全員を、目の前にそびえるクリスタルに閉じ込めた。
彼は怪しく笑ってリナに言ったのだ。


【―――クリスタルが砕ければ中の人間は死んじゃうんだ―――】


勝ち誇った冷笑を浮かべながらクリスタルに無造作に手を伸ばすクリス。
ビキッ・・・!
その動作に連動するように、クリスタルの表面に無数のヒビが走った。
バキンッ!ピシィッ!
そのヒビは走る事を決して止めない。
ヒピとクリスタルに反射する薄明かりのせいで、もうディースの表情は見えなくなっている。ピシンッ!
一瞬―――
ヒビが走る音が止み。
パキ―――――――――――――――――――――――ンッ!!!!!!!!!!
次の瞬間、クリスタルは澄んだ音を上げて粉々に砕け散った。
 薄明かりの光をきらきらと反射しながら、クリスタルの破片は虚空に舞い落ちる。


【―――このクリスタルはねぇ、砕ける時がすっごくキレイなんだ―――】


リナの頭の中で、しまいこんでいたはずのフィブリゾの言葉が響いた。
彼を失いそうになった前の瞬間に聞いた言葉が。
「ふ・・・ふはは・・・ふはははははははははは!!!!!!月光の王は滅びたのだ!!!!!!!
  ようやく・・・ようやっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何っ?!!!!!」
狂ったように嘲笑っていたクリスだったが、ある一点を見て驚愕する。
クリスタルが砕け散った場所に、滅ぼしたはずのディースが立っていたからだ。
いつもと何も変わらない静かな穏やかな微笑を浮かべながら、悠然と立っている。
驚愕したままのクリスは、じりっとあとずさる。
「貴様・・・何故・・・何故・・・生きて・・・!!」
「あの程度の小技で僕が滅ぼせると本気で思ったのかい、クリスファンド=ヴェルジオール?」
神殿に響いた静かな声に、もう1歩、クリスはあとずさる。
「君『ごとき』が、僕の魂全てをクリスタルに具現化出来るはずがないだろうに・・・。
  あの具現化したクリスタルは、僕の力の末端さ」
「フィ・・・フィブリゾは・・・!!」
「フィブリゾが使えたのは、相手が『人間』だったからだよ。少し考えれば分かっただろう?」
月光の王と人間では、魂、生命の力が、どんなに比べ物にならないか誰にでも分かる。
クリスはフィブリゾの力を過信し、疑いもしなかった、それだけのこと。


「僕には止められないよ?」

苦笑まじりに言うディースに、クリスはびくりと震える。

「何っ・・・?!!」

もう1歩あとずさるクリスに、ユニットが軽く溜息をついて言った。
「とうとうキレちゃったのよ。クリスがディースにしてくれた事にね」

「ま・・・まさか・・・っ!!」

「そのまさかよ(だ)」

重なる男女の、神々しいほどに綺麗に透き通る声。
虚空からふわりと地面に降り立つ、長い金髪金眼の女性と長い黒髪黒眼の男性。
ゼロスはその2人を目の当たりにするとスッと膝まついた。


「―――久しぶりだね―――姉様、兄様」
にっこりとしながら、ゆっくり言うディースの言葉に、その場にいた誰もが沈黙する。


降臨せしは



金色の魔王―ロード=オブ=ナイトメア―と


時空の海―クロノス=オブ=オーシャン―


            −続くー




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 あとがき:

梓:・・・・キレちゃいましたねー・・・クリスさん勝ち目ないでしょうねー・・・。
K:そりゃあな。特にLが容赦しないだろう。
梓:・・・ですね。
  それでは、最終話あくまでも予定の「じゅう」まで、皆さんアディオス!!
K:何故「アディオス」なんだ・・・。