梓:私は夏が嫌いです。
L:もしもーし?梓?何をいきなり言ってるのよ・・・
梓:・・・暑いの本当に苦手なんですよ・・・私。冬の方がいいです絶対。
L:ちょっと待って。あんた寒いの苦手じゃなかったっけ??
梓:というわけで、昨日に続いて「なな」更新ですっ!!(どういうワケだよ)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「クリス達が仕掛けてくるのは、いつだと思う?」
『新月の・・・明日の夜だろう』
少しだけ不機嫌そうに問いかけたLの言葉に、鏡の向こうのKはそう答える。
「・・・そう、明日の夜に間違いないわ・・・。
  あたしが太陽、あの子が月、シャディは海、ユニットは星の力を司る・・・。
  月が出ない新月の夜は、ディースの力が衰える唯一の日だと思うのも当然なんだけどね」
 溜息をついてLが言うとKは頷き返すが、きっぱりと言った。
『そんなものまったくもって浅知恵だがな』
「えぇ、勘違いもほどがあるわね」
『どうするんだ?』
静かに微笑みを浮かべてそう言うKの言葉の意味は、幾つも考えられる。
だがLは答えの迷いは見せずに、すぐさまKに言った。
「大丈夫よ。最後になるだろうけど、行くわ」


            月光王   其の7


「そういえば・・・菫ちゃんと言ったか?どうしてその目的の通過点が、ディースなんだ・・・?」
簡単に再会の言葉や自己紹介などを終えた後、ゼルガディスも同じテーブルにつくと
ふいにユニットの方に向き直ってそう聞いた。
その問いにリナ(とガウリイ?)は微妙な顔つきをし、アメリアも「それもそうです」と同意し、
後ろが透き通る姿になってしまったゼロスにいたっては、おもむろに目線を逸らした。
聞かれたユニットはちらり、とディースを見てからくすくすと答える。
「それはもちろん、ディースが金色の魔王に多大な関係があるからに決まってるじゃない♪」
「・・・どういう事だ・・・?」
ゼルガディスが顔をしかめてディースの方を振り向く。
その視線を受け取ると、今度は静かに微笑んでディースは4人を見つめる。
そしてしばらくしてから肩をすくめて言った。
「今以上に・・・深く巻き込まれる事になるけど?」
ディースの言葉に4人は顔を見合わせるが、ふっと笑みを浮かべた。

「あたしは最初から関わってるしね」
「おう、俺もだ」
「ここで背を向けるだなんて、正義じゃありません!!」
「話を聞いた時点で充分巻き込まれてるしな」
その各々の答えに、ディースとユニットはまたくすくすと声を立てて笑い始めた。
はらはらとその光景を見ていたゼロスは、どことなく安堵したような顔である。
そしてディースと目線を交すと「定時報告に行ってきます」と虚空に消えた。
それを見届けてから、ディースは辺り一体に結界を張った。
「それじゃあ、話そうかな。僕はディース。ディース=コズミット。
  でも本名は、ディスロット=カオシェール=トゥ=ナイトメアっていうんだ」
「・・・ナイトメアって・・・まさかディースさんはっ?!」
アメリアが上げた驚愕の声に、こくり、と1つだけディースは頷く。
「混沌にただよう月は僕の事。
  司る力が月だから、別名で“キング=オブ=ザ=ムーンブラス”、つまり“月光の王”って呼ばれてるんだ」
「後は“ブラザーズ=オブ=ナイトメア”、“金色(悪夢)の弟”とも呼ばれてるわね♪」
「・・・ろ、ろーど=おぶ=ないとめあの弟・・・なるほどな・・・」
いささかテーブルに突っ伏し気味のゼルガディスが、小さめな声でそう言ったが
しかし何とか気力で顔を上げる。
ふと、今度はリナが怪訝そうな顔をしてユニットの方を向いた。

「ねぇ・・・どうして菫ちゃんはそこまで知ってるの?」

「くすくす♪あら、だって私もディースの姉のような存在なんですもの♪」
軽く言われた言葉の意味に、びしりっ!!と固まる4人。
「じゃあ私も改めて♪私は宇空菫、本名はもっと長いけど、ユニット=ユニバースって言うの♪
  “ユニバース=オブ=ザ=プリンセス”、“宇宙の姫”って呼ばれる事もあるわね♪
  あぁ、でも今まで通りに“菫”で構わないから♪」

何だかすごい人達集結中?

「話を戻そうか。
  ・・・神魔戦争の時に出来た歪みの中で生まれた奴ら・・・僕らは外族って呼んでるんだけど。
  チャンスがあれば姉様の存在を滅ぼして自分達が全ての者の上に立ってやろうっていう
  まったく馬鹿げた考えを持ってるんだよねぇ。
  その時、丁度僕がその歪みの近くにいて、僕という存在の事を知られちゃったわけなんだ。
  “月光の王”という存在が知られると・・・厄介な事に僕は人質になっちゃうんだ」
「人質・・・?」
首をかしげてガウリイが問うと、ディースは苦々しく笑って頷く。
「そう。姉様の対なす力を持つ僕という存在は、外族に言わせると姉様の弱点にもなる。
  だから、通過点として僕を滅ぼしてから姉様を滅ぼすっていう寸法なんだよ。
  降魔戦争の時、この戦法で1回攻めてきたんだ。
  まぁ、その時は結構あっけなく歪みに帰ってもらったけどね・・・。
  僕はその時から今までずっと、存在を知られないために異世界に身を隠してたんだけども。
  ・・・さて・・・これ以上に僕の存在が知れ渡るとどうなると思う?」
ディースが溜息をついて4人に問い掛けると、アメリアが真剣な顔で言った。
「・・・“金色の魔王”を良く思っていない者達が、それと同じ戦法で攻めてきます・・・」
「当たりよ、アメリアさん。何も学ばないっていうのは、本当にこういう事をいうのよねぇ」
その当時を思い出したのか、疲れたようなディースに代わってユニットが答えた。
ディースは話を続けていく。
「デリタとルスタからは同じ気配がしたよ。・・・今回は、その時と同じ外族みたいだ。
  ボスの、首謀者の名前はクリス。クリスファンド=ヴェルジオールだよ。」
そこでいったん言葉を区切るディースに、誰も何も言葉を出せなかった。
しかし、その微妙な沈黙を破ったのは帰って来たゼロス。
ゼロスはどこかで負の感情でも調達してきたのか、もう姿は薄くなかった。

「タイミング良かったみたいですね」


先ほどまで自分が座っていた席に戻ると、ゼロスはそう言う。
苦笑してディースは頷き返す。
そして、先ほどよりは真剣な顔付きへと直してから、口を開いた。
「襲撃は多分・・・いや、100%の確実で明日の夜だよ」
「何故だ?」
ゼルガディスの問いかけに、ディースは答える。
「言っただろう?僕は“月光の王”、司る力は月・・・。
  明日は新月。月が出ない夜は僕の力がいつもの僕の力より衰える、
  クリスはそう考えてると思うから。・・・あ、でもそれは浅知恵だからね?
  月が出ないといっても、それは地上でだけの話だからね」

新月。

それは、月が、太陽の後ろに廻る事によって、銀河の法則で起こされるもの。

遠い昔・・・その事を知らなかった地上では、月がなくなってしまったと、騒ぎが起こったという。

しかし―――月は、見えないだけでそこにあるのだ。

月が、なくなってしまうはずがない。

太陽の方を向いている月は、いつも銀色に光り輝いているのだから。

 
               −続くー


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

あとがき:

梓:区切りのいい10話で終わらせる予定なんですが・・・終われるでしょうか。
K:お前のまとめかた次第なのだろう?私に聞くな。
梓:・・・ごもっともです。
K:それにしても、今回の話はディースの秘密大暴露しまくっているな・・・。
  と、言っても私の話こそは出ていないが・・・。
梓:いやあのまあ・・・大丈夫です、L様と一緒にK様も後で出す予定ですので!!
K:・・・ならいいが。
梓:えーっと、それでは皆様「はち」でお会いましょうっ!!