続きですv
あの少女の正体でてきます

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         堕天使達への追悼歌  ~第2話~



「馬鹿に・・・しおって・・・・・・」
屈辱に、その顔を歪ませる男・・・評議長ゼリギス。
そのまま、手にした書類を、床にたたきつける。
「だが・・・・・・」
そのうちに湧き上がる昏い悦び・・・愉悦に、顔を更に歪ませる。
「どうなされたのですか?」
横にいるのは、リクス・・・セシリア魔道士協会の副評議長にして、彼の甥・・・『闇の前奏曲』幹部でもある青年だ。
「いや・・・なんでもない・・・細かな事だ。」
実際、けして細かくなどなかったが・・・
それは、言う訳にはいかない事だった。
「まあ良い。向こうからわざわざ出向いてくれたのだ・・・・・少々、歓迎してやるとしよう。」
「歓迎・・・ですか・・・・・・?」
「そう、歓迎だ。」
「なるほど・・・ですが、事が公になる危険性をはらんでおりますが?」
「何。対して問題はない。この町については、完璧にわが支配下にあるし・・・外との交流は、絶ってある。」
壊滅した子飼の盗賊団の数は多かったが・・・
所詮、金で雇った連中だ。
我らが崇高なる目的とは、かけ離れた所にある連中・・・大して問題はあるまい。
そう―ゼリギスは考えた。


「・・・作戦を考えなくてはいけませんね・・・・・・」
リクスが言うと、
「何、簡単な事よ。まず・・・数を集め、正面から送り込む。」
ゼリギスが答える。
「ちょ、ちょっと待って下さい伯父・・・」
「何、そう焦るな。もう一部隊作る。これは、選りすぐりの兵で構成する。はじめの隊に、奴らが手間取っている所を・・・」
「やる・・・というわけですか・・・・・・しかし、そううまくいくでしょうか?」
「そうだな・・・第一波は、最低限の人数を残して、送り込めるだけ送り込め・・
   それこそ、それだけで倒せるぐらいの人数を、な・・・・・・」
「なるほど・・・分かりました・・・・・・」
そういって、リクスは部屋を出て行く。

かつてゼリギスは、『夢』を持っていた。
だが、その『夢』は・・・到底かなえられる事ではなく・・・
彼は、力を欲した。
『力』は・・・契約により、手にし・・・
そのうち・・・よくあることだが、勘違いして暴走しだした。
まあ、今となってはそんな事を知っているのは、彼――リクスしかいないが。



「ふぅ・・・・・・」
太陽が、燦燦と照っている。
今私は、教会の裏にある公舎の、屋根の上に居る。
生憎、事情が未だ全部把握できていなかったので、視ようとしていた。
まあ、やはり未熟者という事なのだろうが――
――私は、同時に複数のことを『視る』ことが出来ない。
そして、何かを視ている最中はこっちの事は、随分とおざなりになってしまう。
逆に言えば。
自分が居る場所で、何かよっぽどの事があったりした場合、意識の先端を飛ばす事は出来ない訳で・・・
一つ、見終わって意識をこちらに戻し、別の場所に意識を飛ばそうとした瞬間・・・
私が意識を飛ばす前には存在しなかった、と、ある気配に気が付いた。
とてもよく知っている気配・・・普段だったなら、むしろ好ましいと思っただろう
――が、今の状況は、罷り間違っても普段ではない―――
「な、何で此処に・・・・・・」
しかし、その先の言葉が、彼女の口から漏れることはなかった。
理由は・・・叫んでる場合ではない。と彼女が思ったからだが。
そして、リーシェは屋根の上から飛び降りた。


シャッシャッシャッ

フォルト神官長は箒で前庭を掃いていた・・・・・・
現実逃避と言うなかれ。
そうでもしないとやっていけやしなかったのだから。

シャッシャッシャッシャッ・・・

ただひたすら、掃く。
とはいえ、物思いに耽っているので、ちゃんと掃けている訳ではない。
何か動いていないと怖いのだ。
「あの、すみません・・・」
ただ、機械的に動いているだけだった彼の動きが止まる。
彼に声をかけてきたのは、せいぜいが5、6歳位の少女であった。
白銀の髪、白銀の瞳。肌の色も透き通るようで、髪留めも白銀一色。
やはり白銀の戦闘服?の様な服を着ている、白銀の化身の様な少女。
彼は、その少女を、其れはもう、穴が開くかというほど見つめ・・・叫んだ。
「レ、レニア!!!???」
「って、誰です?」
即答。
「あ、いや・・・そうですな、レニアの訳がない・・・んですが・・・・・・」
第一、   年齢が違う。
だがもしも・・・レニアに子供がいたとしたら
―このくらいの年齢の可能性はある―
そう考えてしまうほどに、目の前の少女は、幼き日のレニアのそっくりだった。
只、目の色を抜かして、だが。
こうまで似ていて、無関係という事は考えられない・・・。
そう考えたフォルトが、少女に話しかけ・・・もとい、とりあえず名前を聞こうとしたその瞬間。
「メェウィ!!!何で此処に居るの!!??」
と、後ろから声が聞こえた。
「あ、リーシェ様!何でって・・・ライシェルク様に・・・」
メェウィと呼ばれた少女は、
何故か突然背後に現れた(屋根から飛び降りた)リーシェに、口を塞がれて、そのまま連れて行かれてしまった。
「な、なんだったんだ、一体・・・・・・??」
「で、メェウィ、答えなさい。何で此処にきたの?ライシェがどうしたって言うの?」
「ライシェルク様に命令されてきたんです。フェリスターレスの目的が分かりました。」
ライシェルク・・・リーシェの腹心の部下に当たり、
メェウィ―メウィルオーザの、直属の上司に当たる魔族の青年(って言うのか(?))である。
そもそも、一番最初にリーシェに
フェリスターレスの一件を報告したのはライシェルクなのだ。
そしてリーシェには、確かにその際に、
ちゃんと調査をして詳しく報告するように。
と、命じた覚えがある・・・・・・
(でも・・・よりによって今来なくても・・・・・・)
そうは思っても来てしまったものはしょうがない。
今この場にL様が居ないという事を不幸中の幸いとでも思うべきだろう。
「で・・・・・・その、たぶん間違いないと思うんですけど・・・・・・」
?明らかに歯切れが悪い。
「・・・・・・フィレル様・・・みたいなんです・・・・・・。」
「・・・・・フィレル!?何が如何なってフィレルが狙われなきゃいけないのよ!!!」
その言葉に、メウィルオーザは思う。
なんでも何も、あまりにも明白だろう。と。
さすがに此処までやるような存在が居る事は考えてはいなかったが、
今の事態はある程度メウィルオーザには予想できていた事だった。
おそらく、狙われた当人であるフィレルも分かっている事だろう・・・が。
その双方の共通の主である目の前の少女
(自分の方が外見年齢も実際年齢も年下のクセに・・・)
は、予想とかどうとか言う前に、どうも根本から分かってないようだった。
「え~と、ですね。そもそもフィレルはれっきとした神族なんですから、
  魔族のフェリスターレスに命を狙われたって、別に何もおかしい事はないですし。」
「ア、そっか。(ポン)そういえばそうだったけ。
言ってる本人苦しい言い訳だと思っていた科白で、簡単に納得する。
(とはいえ、本当のところが如何だか分からないから厄介なんですよね・・)
あ、そうそう、メェウィ。」
「なんですか?」
「今此処にね、師匠がいるから。失礼無い様に。」
リーシェ様の声がかすかに震えてるような気がした―が、
「師匠?・・・・・ですか??」
師匠、師匠・・・確か昔一回だけ聞いた覚えが・・・
と、その時。
「あら、リーシェ。何を話してるの? 私も仲間に入れてくれたって良いじゃない?♪」
姿を現したのは、人間の少女。だが―少なくとも、ただの人間ではない。
栗色の髪に、赤い目。小娘といってもいい程の・・・強力な魔道士。
そして、自らの主が師と呼ぶ存在―――
メウィルオーザの中で、いくつかの符合が一致する。
「失礼しますが・・・リナ様ですか?リナ=インバース。」
如何見てもじゃれ合っている二人に、メウィルオーザは恐る恐る声をかけた。
「そうよ♡はじめまして。宜しくね。メウィルオーザ=シェードクリア♪」
笑いを含んだ声・・・何処となく、面白がっているようである。
メウィルオーザは、格段に幼く、其れゆえの純粋なる行動が彼女の救いとなった。
相手を様付けしたのは、単に自らの主が師と呼ぶ・・・
すなわち主が自分より上と認める存在なれば、自分も目上の者として扱わなくてはならない。
と思っただけだったし、自らの名―それも真名―を呼ばれたことも、訝しくは思ったが、
「リーシェ様が話したんだろう。」
位にしか思わなかった。



「リナ」はそれでずいぶん機嫌が良くなり、リーシェと『じゃれ合う』のも止めたので、
あとでリーシェから褒められたり、後なんで様付けしたのかで正直に思ったとおりのことを言ったので、やっぱり褒められたりしましたが、
メェウィちゃんには、何でだかさっぱり分かりませんでしたが、敬愛する方からお褒めの言葉を頂いたので、とっても幸せな気分に慣れました。
このお話には、子供の純粋さは、他の何よりも増して強力な武器である。
という、教訓なんだかなんだかよく分からない教訓がこめられています。
お子さんに話して聞かせてあげましょう。


今までのことを一通り話し終わって、メェウィは気になっていた事を言った。
「それで、あの人・・・フォルト、でしたっけ?その人が、私のことを、「レニア」って呼んだんですけれど・・・・・・」
リーシェは、「レニア」を知っていた。そりゃあもう、よぅく知っていた。
実を言うと、メウィルオーザの外見は、彼女がモデルになっているのである。
リーシェは、あくまでも沈黙を貫く気でいたことだった。
だが・・・・・・世の中、そんなに甘くは無い。
「レニアはレニアよ。
そうねぇ・・・トゥイーリアって言った方が、分かりやすいかしら?」
「トゥイーリア!!!???」
フォルト神官長は、先の神官長の三男の生まれた。
(この町では、神官長の座は世襲制)
上二人の兄が、神官長の座を巡り、諍いを起こし・・・・・・兄二人は犯罪者として捕まり・・・神官長の座は、彼に巡ってきた。
だが彼は、「人」と言うものが信じられなくなっていた。
そんな時、彼に光を与えてくれたのが、トゥイーリア。
後の彼の妻であった。
その後、生来体の弱かったトゥイーリアは、娘を生んだ後、病床へつく。
その際、彼は何一つ出来なかった。助け手となったのは・・・
「レニア」。
彼の義理の姪。
手っ取り早く言えば、トゥイーリアの双子の妹の娘である。
【リシュエル】という名だったトゥイーリアの妹は、姉より遥か先に亡くなり、レニアは父と暮らしていた。
だが、その父が亡くなり、父の親族の間を転々と盥回しにされていたレニアを、フォルトが引き取る形となった。
それ以降は、一応は幸せに暮らしていて、ネーレに到っては、レニアが実の姉ではないという事すら知らない位だった。
が、ある日トゥイーリアが死んだ。
それ自体は何年も前から覚悟していた筈の事。
だが、その直後にレニアが消え、音通不信となった。
それと同時に姿を表し始めた「闇の前奏曲」。
「ま、そんな訳で。何をどう考えたんだかはともかく、全てはレニアの所為・・・
   って言うのが、今ここでは殆ど全員が考えている事なのよ♡」
その説明を聞いて・・・メウィルオーザは首をかしげる。
「あの・・・なんでそんなに詳しいんですか?」
当然の疑問だ。
只者ではない・・・とこそ思っているが、メェウィから見れば、あくまでも相手はただの人間。
目上の者として扱っているのは、敬愛する主がそう扱っているから。というだけで、「リナ」自体の力を見たわけではない。
「メェウィ・・・・・・いいのよ別に。師匠なんだから。
『何があっても不思議じゃないから』(断言)」
「何があっても。ですか・・・・・・?」
当然の疑問。
「いい、メェウィ。とにかく何があろうと、今言った二つのことは覚えておきなさい。」
何時に無く真剣にものを言うリーシェ。
「???? ハイ。承りました。」


ちなみに。
何がなんだか分からないが、リーシェ様の言う事なら間違いないだろう。
そう思ってメェウィが肯定の返事をしたのに安心したのも束の間・・・
リーシェは、それはもう、見るもの全てを魅了する、 極上の笑みを湛えたリナさんに、連れ去られてしまいましたとさ。
 


めでたしめでたし。 お終い。





 L:・・・・・・・・・・・・って、おわってどうするっ!!!
 
(ドカバキグチャァッ!!!)



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どうもこんにちは。執筆者が原因不明の失踪と遂げたため、急遽で後書きに出演する事になった、リーシェです♪
一応言っておきますが、まだ続きます。
しかし飛鳥は、本気で此処で止めたい誘惑に駆られたそうです。
教訓云々については、れっきとした元ネタ(スレの)があります。
今は最早遺言状と化したこのメモからすると、元ネタ当てた人に先着一名様に、小説のリクエスト権がプレゼントされるそうです。 
メールで募集・・・とありますが、本人が闇に滅した今となっては、本当かどうかも怪しい所です。
更に言いますと、この話はサイド本編にあるエピソードの後日談&外伝3の裏話(?) 
としてあたためていた話が原型だったりしますので、
飛鳥の直接の知り合い数名を抜かし、かなり訳分からないエピソードがあります。
(ネーレの従姉、レニアさんについてのあたりです。)
尚当初は私については謎で通そうとしていた筈なのですが、別の場所で始めた連載作品で、諸に私の正体が
(実は少しだけなんですが)出ていますので、 基本的に書かない方針である事には変わりありませんが、
ちょっと勘のいい人なら、
かなりの範囲で気づくであろうことも普通に書く事にしたようです。  第三話は語り手をL様(と一部三人称)で通す。 
と言ってはいましたが・・・・・・
真偽の程は謎です。ん~と、これくらい言えばいいかな?
では、私は仕事がありますので、これにて♪(仕事中呼び出された)


                                      第2話へ


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