まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
何でか打ち込み開始~(かなりまて
アニメと原作が入り混じってます。
というか…アニメの1話のほうが。原作1話よりも内容が濃いような気がするのは…
何もわたしの気のせいではないとおもうんですけど…どうですかねぇ(だからまて
ちなみに。この話は、和月伸宏先生の作品のるろうに剣心のおもいっきり二次創作品ですv
私のオリキャラ、菫ちゃんがでばりまくってます(笑
一番のねっくは。彼女がかかわっている世界…ということかなぁ(笑
何はともあれ、いっきま~すvv
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ざしゅっ
『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
ぼとぼとと、地面に滴り落ちる鮮血。
そしてまた、それと同時に周囲に響き渡る悲鳴。
「ふはは…よわい。よわすぎるわっ!」
まさにこれは、自分にとっても一石二鳥。
そしてまた、兄にとっても……
簡単には終わらせない。
かつての復讐を倍にして成し遂げるその日までは………
剣客放浪記 ~始まりは想いを超えて~
「何やら気が乱れているでござるな」
「だからここに来ることにしたんじゃないv」
まだ夜も明けなわ。
辺りはまだ夜の帳と、朝の光が同時に立ち込め、いまだ薄暗い。
そんな会話をしている二つの大小の人影がひとつ。
「とりあえず。いきましょ♪」
小さいほうの人影が、もう一人のほうにと話しかけ、
「はいはい。わかったでござる。ござるが…なぜまたこれ重くしたのでござる?」
そんな小さい人影のほうに、何やら情けない口調で問いかけるもう一人の人物。
「あら?常に日々修行。でしょ?」
「……まったく。菫ちゃんにはかなわんでござる……」
そんな会話をしている最中。
やがてゆっくりと明るさがましてゆき、周囲に朝もやが立ち込めはじめ。
その二つの人影をその霧の中にと浮かび上がらせてゆく。
一人は、おそらく十代後半くらいであろうか?
その長い赤い髪がかなり目立っているが。
何よりも、朱色の服とその髪がとてもまっちしており。
さらにいうならば、なぜかその腰元には長い剣が挿されている。
廃刀令がでてすでに二年。
徳川の時代がおわり、明治となり、すでに十一年が経過している。
幕末の動乱が今ではうそのようになりかけているそんな中で。
剣を腰にさしている剣客というか侍など、はっきりいって皆無に等しい。
そんな情勢だ、というのに。
この格好がいやにしっくりとなじんでいるのは彼のもつ独特の雰囲気がゆえであろう。
そしてまた。
そんな彼に対するように話しているのは。
どうみても十歳にまだ満たない小さな少女。
そこにいる青年とはうらはらに、漆黒の長い黒髪が印象深い。
その長い黒髪を赤いリボンでポニーテールにしているところもまた。
少女の愛らしさをよりいっそうにひきたてている。
とはいえ。
一番に目を引くのは少女の容姿であろう。
言葉に言い表せない完璧な容姿。
とはまさにこのことを示すのではないか。
というほどに、思わず見惚れるてしまう。
そんな容姿の持ち主である。
見た目も雰囲気もまったく異なるそんな二人が並んで話しながら。
てくてくと、人気のない川沿いの道を歩いている様が、しばしその場において見受けられてゆく。
今日こそは!
そう思い、毎日のようにと見回りにとでている。
あれが活動し始めてから、はや二ヶ月。
すでにたくさんいた門下生はあと残り三人。
それぞれが、それぞれに見回りをしているものの。
なかなか尻尾をつかませない。
どうして自分の家の流派をアレが名乗っているのかはしらないが。
だが、そのために、父が開いた剣術が、人殺しの流派などと思われるのは好ましくない。
絶対に、命にかえても自らの手で冤罪を晴らすため。
めぼしをつけた川沿いの道を朝も開け切らぬうちにと進んでゆく一人の人物。
やがて朝もやがかかり始めたそのときに、視界にとはいってくる人影がひとつ。
その格好からして…もやのむこうにいてもわかる。
「…見つけた!」
こんな朝早く。
まだ日も昇りきっていない時刻に、腰に剣を挿して歩いている人物など。
普通いるはずがない。
彼こそ…あの、【人斬り抜刀斎】!!
きゅ。
自分自身に活をいれるため、頭にまいたハチマキをきつ締めなおし。
そして。
「みつけたわよ!人斬り抜刀斎!!」
きゅっと手にした竹刀を持つ力をこめてその人影にむかって突きつけ言い放つ。
「……?」
聞きなれない声であり、そしてまたかなり昔に聞き覚えがあるような声。
遠い思い出というか、記憶ともいえるもうひとつの人生の夢。
その中でよく聞いていたその声は、今でもよく覚えている。
覚えてはいるが…だがしかし。
どうして、今ここで。
この東京の下町で。
その名前で呼ばれなければいけないのか。
ふとみれば、横にいたはずの連れの姿が見当たらない。
「………なるほど。これか……」
思わず額に手をあててしまうのは、何も長い付き合いであるがゆえに性格がわかっているからこそ。
そんな彼の思いを知るはずもなく。
「とうとう見つけたわよ!人斬り抜刀斎!
思っていたより優男ね。でもこれで二ヶ月にも及ぶ辻斬りの凶行もこれまでよ!観念なさい!」
「…おろ?」
こちらの話をまったく聞き耳持たず。
何やら自分に対しておもいっきり殺気をもって挑んできているのは。
袴を着ている一人の少女。
その長い黒髪をポニーテールにしているところは、連れの少女と同じであるが。
「覚悟ぉぉ!」
……どうやら、まったくこちらの話を聞く耳もたず。
といった様子である。
やれやれ……
とりあえず、そのままふわりと飛び上がり、横にある防火水槽の上にと移動する。
ふわっ。
別にその程度のことはどうってことないこと。
……が。
めぎっ!
「……おろっ?」
どめぎゃっ!
ふわりと着地したせつな。
ものの見事に足元の板が壊れ、そのまま一気に体制を崩してしまう。
「おろろろ~……」
かこんっ。
ついついいつもの調子である程度は体重なども考えて着地したはず。
ではあるが。
すっかりと、つい数時間ばかりまえに重しを増やされていたことを失念していたことを思い出し。
ついついいつもの感覚と違うことを失念していた。
それゆえに、おもいっきり体制を崩していたりする。
そのまま、体制をくずし、その場に倒れたそんな彼をみて。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
思わず無言になってしまう、突っかかってきていた少女。
さもあらん。
相手は凶悪の人斬り。
そう思い込んでいた彼女にとって、目の前の人物は…どうみても、ただのどんくさい人にすぎない。
「…あなた。本当にあの伝説の人斬り?夕べも三人も斬ったっていう、あの?」
そんな彼にとあきれたように、思わず問いかける。
どうみても、そんな凶悪な人斬りにはみえない。
ましてや、今騒ぎになっている、あの伝説の人斬りだとは。
「流浪人」
そんな彼女の問いかけに、いまだに体制を崩したままで静かに言い放つ。
体制を崩して着地した。
とはいえ、別に怪我をしているわけでもなく。
彼自身にとってはどうってことのないこと。
「え?」
「流浪人。拙者はあてのない旅の剣客でござるよ。
つい先刻、この町にはついたばかりでござる。辻斬りとは何のことでござる?」
まるっきり嘘ではないが真実ではない。
この町にたどり着いたのはちょうど夜中ごろ。
「な…じゃ、じゃあ。腰の刀はどう説明する気!?いくら剣客だからって、帯刀は許されないわよ!」
すでに二年前に廃刀令が配布されて、帯刀は普通許可されていない。
いわば、違法行為。
そんな目の前の男性。
珍しい赤い髪の男性の言葉に一瞬、自分の間違いを指摘されて顔を赤くするものの、
だがそれでも負けじと問い詰める。
「この刀では人は切れぬでござるよ。」
そんな目の前の女性の台詞に軽く苦笑し、腰にさしている剣を差し出す。
「?」
いわれるままに、いぶかしりながらもその剣を手にとりすらりと引き抜く。
ずしりとした生の剣の重みが手に重くのしかかる。
だがしかし。
「…何これ!?」
思わず、鞘から刃をだして叫んでしまうのは仕方ないであろう。
「…刃が逆についてる?」
「逆刃刀でござる。見てのとおり、人は斬れぬでござるよ。第一、人を斬ったあともないであろう?」
「たしかに。刃こぼれひとつない。新品同様の刀だわ。血の匂いも脂の曇りもまったくないし」
「どうやら疑いは晴れたようでござるな」
のんびりといいつつ、たちあがる。
ぴきっ。
そんなのんびりしたそんな男性のその様子に、思わずこめかみに青筋をたてつつ、
「あなたねぇ!ここんとこ、毎日のように辻斬りがでて関係ない人を斬りまくっているというのに!
こんな時間に刀を腰にさして歩いていたら勘違いするにきまってるでしょう!?
第一、刀を帯刀するのは法律で二年前に禁じられたでしょう!?」
ちゃきっと、いまだに剣を握ったまま、赤い髪の男性にと言い放つ。
確かに、勘違いした自分が悪いというのはわかっている。
わかってはいるが、勘違いさせる行動をしていたこの男性にもいったんの責任はある。
「…いやあの……」
剣を人にむけては危ないでござるよ~……
自分にむかって突きつけられている自分の愛刀。
だがしかし、それが敵意をもってのことではない。
というのがわかっているがゆえに、別に動じることではない。
ピー!!
そんな言い合いをしている最中。
いまだ朝もやが晴れない町の中。
高らかな警笛の音が響き渡る。
「警察の呼笛!今度こそ!」
「おろ?おろおろおろ……」
その音をきき、ばっと手にもっていた剣をそのまま投げ放ち、
音がしたほうにと駆け出してゆくその女性。
そんな投げ出された剣をみつつも、おろおろとした様子でそれを手にとろうとするものの。
完全に女性の姿がみえなくなったのを確認し、落ち着いた動作で、
落ちてきた剣をそのまま、鞘の中にとストンと収め。
「…やれやれ。何やら気が乱れているとおもえば……
どうやら、拙者の知らないところで何かが起こっているでござるな」
いいつつ、ふうっとため息をひとつつく。
ひょこ。
そんな彼の真後ろから、まったく気配すら感じさせず。
「ま。彼女みてもわかるでしょうけど。例のごとくに語りさんがいるからね♪」
何ともしごく明るい声が。
「……菫ちゃん………今までどこにいたでござったか?」
思わずそんな声の主にむかってじと目でみながらも問いかける。
くすっ。
そんな彼の言葉をさらりとかわし、
「あら?そこの川辺♪それより、いきましょ。助けないと彼女、殺されておわりよ?」
さらっと何でもないように言い放つポニーテールをした長い漆黒の髪をしている少女。
「まあ。ほうっておくわけにはいかんでござろう」
過去にみたもうひとつの人生の夢。
その中で出会っていた少女がまさしく今の少女。
それはわかってはいるが、だがしかし。
このままほうっておけば、まちがいなく。
彼女は殺されてしまうであろう。
それに何よりも……
「とにかく。急ぐでござる」
いって、一番気が高ぶっている場所のほうにむかって走り出してゆく。
そんな彼の姿をみつつも、
「ま。たしかに。ほうってはおけないでしょうね」
それが、自分の意思とは関係なく。
昔の自分の志士名がもたらした出来事というのだからなおさらに。
にこやかに微笑みつつも、そんな彼のあとを追いかけてゆく少女の姿。
ざしゅ。
「…ぐ。強い。強すぎる。この強さはまさに伝説の人斬り……」
相手に一太刀もあびせることなく。
仲間が次々と斬られてゆく。
それゆえに、そんなことをぼやいている警官その一。
「弱い。よわすぎるわっ!」
いって、再び剣を構える、目の前にいる大男。
「抜刀斎!そこまでよっ!」
たあっ!
掛け声とともに、警官の後ろから竹刀を叩き込む。
が。
いともあっさりと、かわされてしまう。
「くっ!」
それをうけて、体制を整え、再び相手に対して構えをとる。
「しまった!!」
ひゅっ。
今まさに、刀が振り下ろされようとしたその刹那。
風が吹き抜けたとおもうと、壁際に追い込まれていた少女の姿が掻き消える。
刀が振り下ろされるより早く。
少し離れたところに、少女を抱き抱えて佇む先ほどの男性。
その早業におもわず目を見開き、そちらをみやる。
この男…何者?
などと辻斬りを働いていた男が思うものの。
ピ~!ピ~!!
再び高らかに鳴り響く警笛と。
「抜刀斎だぁ!今夜こそ逃がすなぁ!」
何やら騒がしくなっている警官たちの姿。
ちっ。
ここであの娘をしとめたかったが、邪魔がはいった。
そんなことをおもいつつ、くるりと向きをかえそのまま走り出し、
「我は抜刀斎。神谷活心流。人斬り抜刀斎!!」
これみよがしに言い放ち、警官たちの間を駆け抜けてゆく。
「まて!」
そんな男を、どうにか抱きかかえられたまま腕を伸ばし追いかけようとするものの、
「無茶でござる。」
そんな少女を軽く押しとどめる、抱きかかえているその男性。
「神谷活心流はうちの流儀よ!あいつはうちの流儀をかたって辻斬りを……」
そこまでいうものの。
斬られた傷と、気の緩みから気が遠くなってゆく。
そのまま、かくっと気を失う少女をみつつ、
「気丈な娘でござるな」
いって思わず苦笑してしまう。
その気丈さが、かつての大切だったひととダブル。
「ま。薫さんだし。さってと。剣心お兄ちゃんは彼女を連れてもどっててね。傷の手当は任せていいわよね?」
ひょっこりと、そんな彼の後ろから小さな少女が顔をだし、剣心。
と呼んだ男性の顔をみあげていたりする。
「?菫ちゃんはどうするでござるか?」
「とりあえず。そこにいる警官たちの手当てしてから向かうわ」
「わかったでござる」
未だにこの場には先ほどの辻斬りにやられた警官たちがうずくまっている。
そんな彼等をみやり、言い放つそんな菫、と呼ばれた少女の言葉にこくりとうなづき、
「とにかく。警察のやかましい詮議の前にいくとするでござるか」
捕まったりしたら、後々面倒なことになる。
この十年そうだったように。
警官たちは、こちらよりも逃げた男のほうに気をとられている。
今が好機といえば好機。
赤い髪の少年が、黒い髪の少女を抱きかかえ立ち去るのをみとどけながら。
「さってと。ほらほら。いい大人がそんな小さな傷くらいで何うずくまってるのよ」
いいながら。
ごそごそと小さな袋の中から何やら取り出して、傷を軽くふきながら、
「…くっ!!」
あまりの痛さに苦痛の声を漏らす警官達の声は何のその。
そのまま、何ごともなかったかのように薬を塗りこんでゆく。
「…つよい…強すぎる…まさにあれは伝説の……」
何やら呻いている一人の警官の言葉に、ため息一つ。
「伝説になってる彼はあんな大男じゃないわよ。
それって。警察署長さんとかにきけばわかるわよvさって、完了。次、次~」
目の前の小さな少女が何やらしったようなことをいい、
思わず目を見開き詳しく聞きだそうとするものの。
そのまま、少女は別のけが人のほうにとむかってゆく。
幕末の動乱の最中。
京都を主点とし、人斬り抜刀斎とよばれる長州派志士がいた。
修羅さながらに人をきり、その血刀をもって明治を切り開いたその男。
そんな彼についた志士名が、【人斬り抜刀斎】またの名を、【緋村抜刀斎】。
だがしかし、動乱の終わりとともに、彼は姿をけした。
その最強無比といわれた伝説を時の流れにのこし……
「たっだいま~♪」
「おかえりでござる。それで?警官のほうはどうでござったか?」
自分が彼等の手当てをしたいのは山々なれど。
だがしかし。
ここは東京。
かつての仲間と出会うことだけはあまり好ましくない。
未だに彼等は自分を探している。
というのを知っているがゆえに。
「全員命に別状はないわよ」
「…菫ちゃんの基準はあてにならないでござるのだが……」
東京下町の一角にあるとある道場。
神谷活心流。
と表に看板がでているそんな屋敷。
「ま。それはそうとして。どうする?」
「……ほうってはおけぬでござるな」
そう言うと判っているであろうというのにあえて問いかけてくるその言葉に、
思わず声が固くなる。
あの名前が、弱いもの虐げていることに使われていることにも許せない。
「名前が未だに売れてる人は大変ね♪」
「……完全に人事でござるな…菫ちゃんは……」
「あら?でも、その人生をえらんだのは。間違いなくあなただけど?」
「……そうでござる……な」
人々が平和に、差別なく暮らせる世の中のため。
だからこそ。
自分は自分の意思で生き方を選んだのだから。
「ま。とりあえず。早くその重さになれてね♪」
「……はいはい。わかってるでござるよ」
まったく。
この菫ちゃんは手加減というものがないのでござるからなぁ~……
そんなことをおもいつつ、手首につけている布をみやる。
西洋では、リストバンドとかいわれているものだが。
それが両手首。
そして足首にとつけられていたりするのだが。
それが何を意味するのか。
未だに正確に気づいているものがいない。
というのもまた事実。
「さ。とりあえず。軽くやすみましょ♪剣心お兄ちゃんは見張りね♪」
「…はいはい」
逆らっても無駄。
というのはよくわかっているがゆえに。
そのまま、後のことは彼女にまかせ。
部屋の外へとでてゆく剣心の姿が見受けられてゆく。
ちちち……
小鳥のさえずりがきこえ、ふすまから朝日の光が差し込んでくる。
「抜刀斎にやられたきず。…あの後いったい?」
どうして自分が自分の部屋で寝ているのか。
確か自分は、あの辻斬りに挑んでいって…そして……
記憶があいまいになっているものの。
ふと、そういえば……
何かあの間違えた赤い髪の男性に助けられたようなきが……
そんなことを思い出す。
そして布団から起き上がり、ここにきてようやく傷の手当てがほどこされているのに気づく。
それと同時、
ふんわりと何やら外からおいしそうな匂いが。
「…ん?おみそ汁の匂い?」
その匂いに思わず目を丸くする。
パチパチ……
庭先において、小さなかまどをつくり、ナベをかける。
すでに出汁はとり終わり、あとは具を入れるのみ。
「よいしょ。よいしょ」
火の番をしている剣心の元に、小さな女の子がふたり。
大根やねぎをそのまま切らずに原型のまま運んでくる。
「これも」
いってそのまま、なべの中にいれようとする少女たちにむかって。
「あああ。駄目でござる。そんなに」
あまりあわてた様子もみせずにとめようとするが。
ぼちゃちゃ。
そのまま、その二人の子供はなべの中にそれらをいれてしまっていたりする。
「あ~あ」
救いは土がついたままではなかった。
ということであろうが。
頭をかるくかく赤い髪の男性の姿をみとめ、
「……何してるの?あなた?」
布団からおきあがり、ふすまをひらいたその先に、
何やら庭先で何かしているそんな彼にと問いかける。
「おきたでござるか。かわいい妹さんでござるな。すっかり拙者たち仲良くなってしまったでござる。
ちょっと庭先をお借りして朝飯をつくっていたでござる」
そんなでできた、この家の主である、神谷薫にむかって話しかける。
そして、そんな彼にぴっとりと抱きつく小さな二人の女の子。
「仲良し」
「仲良し」
「仲良し♪」
見慣れた二人の子供のほかに、もう一人。
鈴をころがしたようなかわいい声をしている少女が一人。
「……あれ?…その子…誰?」
見慣れない小さな子供。
見たところ、十歳になっているかいないか。
といった小さな女の子がそこにいる。
一瞬、その女の子の愛らしさに思わずぼ~と見惚れてしまう容姿の持ち主であるが。
「ああ。拙者の連れでござる」
そんな問いかける彼女にむかい、にこやかに返事をかえす。
それと同時
「菫っていいます♪あ、一緒にご飯どうですか?」
にっこりと、そんな目の前の女性…神谷薫にむかって話しかける菫となのった少女の姿。
色とりどりのおむすび。
形てきにもいろいろと工夫を凝らし、ウサギの形などをも形状している。
「はい」
にこやかに、それらのおむすびが差し出されたのをうけ、その一つを手にとり口にと運び、
「…ん!?これは……こ、こんなことって……」
思わず、さしだされたオニギリを一口かみしめ固まってしまう。
「く…口にあわなかったでござるか!?」
「…あたしより上手だわ。やぁね」
……ごけっ。
そんな薫の台詞に、そのままなぜかこけている男性の姿が。
「ほお。傷の手当がはやかったのと的確な処置がほどこされているようで。
すっかり傷がふさがっておるわ。たいしたもんじゃよ」
薫の腕の傷を調べつつも、感心した声をだしているのは、白いひげを生やしている初老の人物。
「でも。どうみても剣客には見えないわよね。」
「ほっほっほっ。孫の子守にぴったりじゃの。孫たちの友達もできたことじゃし」
縁側にてそんな会話をしている二人の姿。
「では。この子供たちは薫殿の妹御ではなく?」
そんな二人にと剣心が問いかけるが、
「ええ。源才先生のお孫さんよ」
傷の手当てを受けながらも返事を返す。
「わしはもう、三十年余りもこの道場の主治医でな。薫ちゃんのご両親がなくなってからは親代わりじゃ」
薫の手当てをしながらも、淡々と剣心の疑問に答える源才と名乗ったその人物。
そしてまた。
「流浪人さん。よかったらこの町をでてゆくまでこの道場にとまっていっていいわよ。
見たところ宿代もなさそうだし。それにそんな小さな子供も一緒に旅してたら何かと大変でしょうし。
一応助けてもらったことでもあるし。武士の情けよ」
手当てをうけた腕をさすりながらも、庭先で子供たちと遊んでいる剣心にと話しかける薫。
「よいのでござるか?拙者たちのことを何もしらずに……」
「旅の流浪人なんて、何かわけありなんでしょ?いろいろ聞いてもしょうがないじゃない。
誰だっていいたくない過去のひとつや二つあるはずじゃないの」
そんな彼女の台詞に思わず微笑んでしまう。
過去はけせない事柄。
だがしかし、その過去にとらわれて人を判別する人間が多い中。
こういうものいいは新鮮に感じる。
もっとも。
それが彼自身の真実をしってからも同じようにいえるかどうか。
という点はのこるものの。
「薫殿はこの道場の師範代でござるか」
「神谷活心流。幕末の動乱を活きてきた父が開いた流儀よ。活人剣がその理想なの。
殺人剣ではなく。人を活かす剣を志に。この十数年あまり、一途に頑張ってきた。
でも、そんな父も警視庁の抜刀隊として、半年前の西南戦争にかり出され、
自分の志とは違うところでこの世を去ってしまった……」
そこまでいってうつむき。
「なのに…なのに、この二ヶ月。あの殺人鬼がうちの流儀をなのって人斬りを始めてから。
一人、また一人と門下生は去っていった。抜刀斎は父の理想を汚している。許せない。
町の人たちは、抜刀斎の名をおそれてこの道場に近づこうともしない。
…あの伝説の人斬り抜刀斎は、明治の世の中になっても人々に畏怖されているのよ」
そういいきる薫の台詞に、剣心が暗い表情をしているのにはまったく気づかず。
「でもみてて。一人じゃだめだったけど。神谷道場の全員であいつをねじふせてやるわ」
「薫ちゃん。弟子たちがきたみたいじゃよ」
そんな会話をしている最中。
源才が、表に弟子たちがきたことをつげに来る。
その言葉をうけて、玄関先にとでてゆく薫の姿。
そして、一人、しばらくその場にてうつむく剣心。
いくら時が流れようとも、今、薫がいったように。
あの名前は畏怖されている…というのには変わりがない。
「みんな。よくきてくれたわね。今夜こそ抜刀斎を……」
門前にと来ている三人の弟子にと話しかける。
が。
「あ…あの。僕たち、実は今日でここをやめようと……」
「友達に後ろ指さされて。お前は辻斬りの神谷活心流なのか…って」
「母が、辻斬りに味方するような道場はやめろ。って……」
「違うといってもわかってくれなくて……続ける自信が……」
戸惑いながらも交互にいいにくそうに言い放つ。
「すいません。僕たち、この道場にのこっていた最後の三人だったのに……」
「すいません。」
いって三人が三人とも頭をさげる。
そんな様子を少し離れた場所から眺めている剣心にむかい、
「ま。人ってそんなものだからねぇ」
君子危うきに近寄らず。
ということわざのとおり。
自分の手を汚さずに、また関わることなくやりすごせばいい。
そういった根性のない人間が多いのもまた事実。
「薫さん」
「あ。喜兵衛さん」
「大丈夫ですか?何でも夕べまたあの人斬り抜刀斎がでたとか」
弟子たちが遠ざかってゆくのと入れ違いに、何やら薫にと声をかけてくる人物が一人。
そして、ふと遠ざかってゆく三人の姿をみとめ、
「彼らもとうとう立ち去りましたか。薫さん。やはりここは……」
「いやよ。心配してくれるのはありがたいけど。私は父のつくったこの道場をまもりぬくわ」
女一人で。
しかも、この道場の名前をかたり、辻斬りが跋扈しはじめ。
自分の身を心配して、この道場をうりはらって普通の暮らしをしてはどうか。
と何かと心配してくれている一人の商人。
彼とは、以前、抜刀斎に狙われていたところを助けてからの付き合いではあるが。
「そうですか。ま、何かあったらいってください」
いってそのままその場を後にする。
「………」
一見したところ、そしてまた、会話をきいていても何やら人がいい人物。
としか捉えられないであろうそんな彼にたいし。
その独特の気配を感じ取り、警戒をつよくしている赤い髪の男性。
そんな男性のほうをちらり、と具間みただけでその人物はこの場を立ち去ってゆく。
パシャ……
さすがに、相手の言い分はわかるものの。
残された気持ちの沈みはどうしようもない。
それゆえに、気分を休めるためにと風呂にと入ってみるものの。
それで気持ちが晴れるわけではない。
「だめだめ。元気ださなきゃ。よぉし」
いって活をいれるためにと湯の中にともぐる。
だがしかし。
外で薪をくべていた男性にとっては、先ほどのこともあり。
自殺したのではないか。
という想いがよぎる。
「薫殿?…どうしたでござる?薫殿!?…まさか!?」
そういうことは過去にもよくあった。
だからこそ。
「はやまってはいかん。自殺など!」
いってあわてて風呂場の中にと踏み込んでゆく。
……が。
ものの見事に、湯の中から出てきた薫と目があっていたりする。
「……はっ」
「……ん!?」
しばし、二人して硬直し。
「んきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
薫の悲鳴が周囲にと響き渡ってゆく……
ギギィ…
ぱたん。
「ここで一晩。反省なさいっ!」
おなさけで、布団とまくらは手渡している。
道場の中にとある蔵の中。
その中にと赤い髪の男性を入れ、表にかんぬきをかける。
風呂を覗かれた。
というのは、それは自分の誤解で、自分を心配してくれたがゆえ。
というのはわかってはいるが。
だがしかし、見られたことには変わりがない。
それゆえの妥協なのだが。
そんな薫にむかい、
「薫殿。ひとつだけ。ここの門下生に心当たりはないでござか?左利きで、右の親指の動かぬ男」
蔵の中から、外にいる薫にと問いかける。
「あなた。じゃあ、あの辻斬りがうちの門下生だというの?
神谷活心流は、人を活かす流儀よ。その門下生が人を切ったりするはずがないわ。
あいつは人斬り抜刀斎でしょ!?血に餓えた殺人鬼よ!
私は命にかえてもあいつを倒して汚名をそそぐわ。父の流儀を守るのはそれしか……」
そう。
命にかえても、父の流儀と、そして誇りはまもってみせる。
そんな薫の台詞に、
「父上は、薫殿が命を捨ててまで流儀を守るのを望みはしないとおもうでござるよ。
なくなった父上が望むのは、薫殿の幸せ……」
伊達に…自分がかつて、幾千以上もの人を殺めていたわけではない。
今の世においては……あのような悲しみは誰にもあわせたくない。
その想いは誰にも共通するはずである。
そんな彼の想いをこめた言葉とは裏腹に、
「るろうにのあなたに何がわかるもんですかっ!知ったふうなことをいわないでよっ!」
いってそのまま、その場をたちさってゆく。
自らの手を汚したことがなく、平和に育っているからこそ譲れない想い。
だがしかし…それでいいとおもう。
これからの世は……それが当たり前なのだ。
人として。
そのために…自分たちは剣をとって戦ったのだから。
薫が遠ざかるのを確認し、ふと外をみつめ。
「……さて。いくでごさるか」
きちんと布団を中心にとおき、そのまま土蔵の中から外にとでる。
かんぬきなどは…自分にとってはなきにもひとしい。
そして、蔵からでたその場所に小さな人影をみとめ、
「薫殿の様子はどうでござるか?」
驚くことなく問いかける。
「ま。大丈夫よ♪それより、やっぱりいくんでしょ?」
どこか楽しそうな口調の言葉に、
「ほうってはおけぬでござる。それが真実でござるよ」
いって軽く苦笑する。
すべて見透かされている。
というのは……長い付き合いであるがゆえにわかっている。
何しろ…自分が頭があがらないあの師匠すら…この少女にはかなわないのだから……
「…ああもうっ!」
さぎほどのあの男性の男の台詞が頭から離れない。
自分に非があった。
というのは考えてみればわかる。
そして、彼が自分を心配していってくれた。
というのも。
気分がおちつかない。
それゆえに、起き上がり、そのまま外にとでてゆく。
すでに夜の帳がおりて昏くなり、空には星がきらめいている。
「…あの。さっきはその…いいすぎたみたい。ごめん」
「…ちゃんとあやまったからね!おきてるんでしょ!返事くらいしてくれたって!」
そこまでいってはたと気づく。
中に人の気配がまったくもって感じられない。
ということに。
きぃ……
「るろうに?」
かんぬきをはずし、蔵の扉をひらく。
だがそこには、丁寧にたたまれた布団が一組あるのみ。
「……名前くらい…きいとけばよかった……」
今になってまだ、彼の名前を聞いていなかったことに気づく。
そういえば、あの女の子の姿も見当たらない。
そんなことをおもいつも、空を見上げる。
見上げた夜空には、だたただ風が吹き抜けるのみ……
「隣町のはずれ……か」
そよそよと、夜風が周囲にここちよく肌にとふれる。
隣町のはずれにあるという鬼兵館という道場。
今では賭博やごろつきのたまり場になっていた、というその場所。
だがしかし、二ヶ月ばかりまえ、士族崩れの剣客が牛耳った。
それはすこし聞き込みをすればすぐにわかること。
身の丈、六尺五寸ほどある大男だ。
というのだから、少し考えても今勃発している辻斬りと関連づけて考えるのは当たり前。
それなのに警察は、そちらのほうは調べてはいない。
正確にいうならば、賄賂を警官の一部に手渡し、見逃してもらっている。
というのが正解なのであるが。
気をたどっていってもそちらにあの人物がいるのは明白。
伊達にさまざまな修行をつけられているわけではない。
人それぞれ。
独自の気配をもっている。
その気をたどれば、たとえどこにいようとも居場所はわかる。
もっとも、それらを使いこなす修行をしなければ身につかないが。
夜行動するのは、あまり目立ちたくないから。
そのまま、人気がないのを確認し。
目的の場所にとむかって駆け出してゆく。
もしここに第三者がいたならば、風が吹きぬけたように感じるであろう。
「たのも~、たのも~。」
「だぁぁ!うるせえ!こんな夜に!」
しつこく玄関先で何やら呼ばれれば、さすがに対応せざるをえない。
玄関先にたたずんでいるのは、何やら小柄な優男。
「ここの頭目……」
「比留間先生は今留守だ!出直してきな!」
言いかけた彼の言葉をいらいらしながらもさえぎる。
「ほほう。比留間という名前でござったか」
まったく殺気すら含ませず、にこやかに言い放つそんな赤い髪の男性の言葉に、
「……知らないできたのか。てめぇ」
おもわずあきれてしまう。
剣を腰にさしている。
というのだから、おそらく腕に覚えのある剣客か何かであろうが。
「いや。拙者はてっきり。辻斬り抜刀斎。という名かと……」
にこやかに、さらっといいはなつその言葉に。
ぴくっ。
思わずこめかみをひくつかせる。
「どうやら。図星でござるな」
いいながらも笑みを崩さない。
がらっ。
「どうかしたんですか。西脇さん」
何やら表の様子にきづいて、建物の中から幾人かの男たちが顔を覗かせてくる。
そして。
「誰ですか?そのちび?」
そこにいる小柄な男性の姿をみとめ、そんなことをいっていたりするが。
見ただけで相手の力量すらも測れない。
というのは彼らが力ない証拠。
とるにもたらない小物だと、確実にものがたっている。
「何。ただのねずみだ。始末しちまいな」
完全に自分たちの優位を確信し。
西脇、と呼ばれた男が、ほかの男たちにと言い放つ。
人間。
何よりも怖いのは、何もしらない無知。
ということであろう。
「……あった!」
彼に指摘され、右腕の親指が砕かれている人物。
すっかりわすれていた。
彼のことなど。
十一年前、戒めをやぶって破門された人物。
人を傷つける剣ではなく、人を活かす剣。
それが神谷活心流の流儀。
だがしかし、彼はその戒めを破り人を傷つけ、
当時師範代をしていた薫の父親が彼の右の親指を砕いて破門した。
これ以上、世にでて人を殺めさせないために。
「比留間…伍兵衛!」
カタン。
過去の弟子台帳をひっぱりだして、思い出した人物の名前を調べていたそんな中。
背後から何やらモノおとが。
おもわず、ばっと振り向くと、そこには。
「何だ。喜兵衛さんか。おどろかさないでよ。…何?こんな朝早く?」
見慣れた人物の姿をみとめ、思わずほっと胸をなでおろす。
「ええ。実は土地屋敷の売買のことで」
「?だから道場をたたむ気はないっていってるでしょう?」
相手が何をいいたいのかわからない。
それゆえに首をかしげ、話しかける薫の台詞とは裏腹に、
「ええ。でも実はこのとおり。すでに書類はまとまっているんですよ」
いって懐から一通の紙を取り出し薫にみせる。
「……喜兵衛?」
相手が何をいってるのか。
本当にわからない。
戸惑う薫の反応とは裏腹に、
「あとはお前の捺印ひとつ」
いって今まで隠していた本性を丸出しにする。
「それでこの土地屋敷は儂のものになる」
バタンっ!
そういう言葉とともに、決着壊される道場の扉。
そして、なだれ込んでくる男たちの姿が。
そして、何よりもそんななだれ込んできた男たちの先頭にいるのは……
「…おまえはっ!」
「鬼兵館頭目。比留間伍兵衛。儂の弟だ。」
「……なっ!?復習だったのね!辻斬りで父の名を貶めたのは!」
「それともうひとつ。この道場をもいただくためにな。」
「そういうことだ。忘れたことはなかったよ。この十一年。
地獄のそこで念じていたよ。神谷活心流を奈落に叩きにおとしめることをな。
お前にもみせたかったよ。この左手で十一年かけて鍛えた殺人剣をな!」
「弟の恨みもあるが。この場所は捨てがたい。儂の計算だとこの場所は。
この辺の地価は、文明開化と欧化政策の余波で五、六倍にはなるはずだ。
こんな寂れた剣術道場にはもったいない。
人斬り抜刀斎の名もよくきいてくれた。存在自体も怪しい人斬りだというのに。
その無類の無敵の強さは今も語り継がれている。おかげでわずか二ヶ月あまりでこの有様」
「お前をほうむって、この道場をつぶせば。復習は完成だ」
「たぁぁ!」
その手に木刀をもって挑んでいくものの、いともあっさりとその技はうけとめられ。
そのまま、後ろにと弾き飛ばされる。
「ゆっくりと地獄におくってやる。地べたをはいずらせてからな。
どうだ。まずはお前たちの剣に血を吸わせてやろうか」
ぐいっと、無防備な薫の襟首をひっつかみ後ろにいる仲間たちにと言い放つ。
「剣は…剣は人の命を救うためにあるものよ」
「おもしれえ」
『わはははは』
薫の台詞に、男たちが一斉に笑い始めるが。
「それならまずは、自分の命をすくってみろ。ほらほら。どうした」
くっ。
くやしい。
こんな男にまけるなんて。
だけども実力の差は明白。
自分の力のなさに悔し涙を流している最中。
「…その手を離すでござるよ」
ふと入り口のほうから声が投げかけられてくる。
ふとみれば、そこには昨日の赤い髪の男性が。
「…おまえは確か、昨日の」
「…やはり。倒しておくべきだった。最初に」
人目があるから抜かなかったが。
「だめよ。あなたにかなう相手じゃない。逃げて!」
そんな彼にと向かって、首根っこをつかまれたまま言い放つ薫の言葉に笑いを浮かべ、
「きさまも、この小娘同様。人を活かす剣などとほざく口か?」
多少、いやみをこめて言い放つ。
が。
「いや。」
即座にきっぱりはっきりそんな彼の言葉を否定する。
「剣は凶器。剣術は殺人術。どんな綺麗ごとやお題目をならべても、それが真実」
そう。
だがしかし、自分はそれでも、新しい世界のために剣をふるった。
「薫殿がいっていることは、一度も己の手を汚したことのないものがいう、甘っちょろい戯言でござるよ」
願わくば、二度と人々が己の手を汚すことがない世界。
それが望み。
「……あなた……」
「けれども。…けれども拙者は、そんな真実よりも、薫殿がいう甘っちょろい戯言のほうが好きでござるよ。
願わくば。これからの世の中。その戯言が真実になってもらいたいでござるな」
いってにっこりと微笑むその様は、嘘偽りのない事実を語っていると物語っている。
「ほざけ。…てめえら。やっちまえ」
「やむを得ぬか。だがしかし、むやみにけが人は増やしたくない。
医者通いが嫌な者はそうそうに引くでござるよ」
一応律儀にも忠告をする。
「るろうに、にげてぇ!」
相手は複数。
どう考えても目の前の男性が勝てるとはおもえない。
それも自分のせいでこれ以上。
関係のない人が傷つくのをみたくない。
それゆえに、叫ぶ薫であるが。
「けが人なんざでやしねえよ!」
「出るのは死人お前ひとりだ!」
いって、それぞれ二十数人あまり。
それぞれの手に剣をもち、目の前の男性にとむかってゆく。
…が。
ひゅっ。
一瞬、閃光がきらめき、風が吹き抜ける。
それと同時。
『うぐわっ!!』
一陣の風とともに、男たちが四方八方にと吹き飛ばされてゆく。
いったい、何がおこったのかその場にいる全員には理解不能。
どささささ……
先ほどまで、たしかに出入り口にいたはずの人物は。
ふと気づけば累々と横たわる人々の間に一人、立ちすくんでいたりする。
すでに倒れている男たちはびくりとも動いてはいない。
「……な!?…何が……!?」
相手の速さも何もみえなかった。
「…よ、妖術か?!」
などと、口々に比留間兄弟が何やら言っていたりするが。
「う~ん。今の速さがみえないなんて。まだまだねぇ」
『……な!?』
驚愕する彼らの耳に、場違いな子供の声が聞こえてくる。
その声をきき、
「まあ、そういうでないでござるよ。菫ちゃん。拙者たちの尺度はこいつらにはわからないでござろうしな。」
一瞬苦笑する。
「…な、何だ!?てめえは!?」
こんな状況の中だというのに、その女の子の愛らしさに一瞬見ほれてしまう。
と。
ふっ。
その隙を見逃すはずもなく。
その場から瞬時に掻き消える。
そして、次の瞬間。
「……な?!」
たしかに。
自分の手の中に、にっくき娘を手にしていたはずなのに。
気づいたら手の中はもぬけの殻。
そしてまた、少し離れた場所に少女の横にたたずんでいる、赤い髪の男性の手の中に。
まぎれもないこの道場の娘の姿が具間みえている。
そんな彼らの動揺は何のその。
「さて。薫殿は、菫ちゃんの横にいるでござるよ」
いって、すとん。
と少女の横に彼女を床におろしてゆく。
「……あなた…今……」
みえなかった。
動きがまったく。
戸惑いをみせる薫の様子とは関係なく。
「薫さんのことはこっちに任せてといてね。私は手出ししないから♪」
まったく動じることなく、そんな彼にと言い放っている少女の姿が。
そんな二人のやり取りをしばし呆然と眺めるものの。
「し…しゃらくせえ!…しねぇ!」
何がおこったのかはわからない。
だがしかし。
とりあえず、目の前のこの優男を叩きのめさなければ気がすまない。
そんなことをおもいつつ、剣を振り下ろそうとする。
が。
「おそいっ!」
とっん。
ふっと姿が掻き消えたかとおもうと、瞬時に彼の背後にと移動する。
そして。
「――ひとつ、いい忘れていた。
人斬り抜刀斎の振るう剣は、お前の我流ても。ましてや神谷活心流でもない。
戦国時代に端を発する一対多数の斬りあいを得意とする古流剣術。流儀名、【飛天御剣流】
こんな刀でないかぎり、確実に人を惨殺する迅速の殺人剣でござるよ」
いいながらも、その手にもっている逆刃刀を肩にと当てて言い放つ。
『―――!!??』
そんな彼の言葉に、その場にいる比留間兄弟。
そしてまた、神谷薫もまた息を詰まらせる。
「まさか……まさか、あなたがあの伝説の人斬り……」
声を枯らせてつぶやく薫の言葉に、
「かってに伝説。って人々がいってるだけですけどね。
あ。剣心お兄ちゃん。あまり時間ながびかせないでよ?わかってるでしょ?」
この現状の最中、まったく動じることなく明るい声で話しかけている少女の姿。
「ふ…ふはは!おもしろい!いつぞやの晩は相手にせなかったが、まさかこれほど強いとは!」
「お前と違って暴れるのはあまり好きじゃないんでな。
けど今は、あのとき叩いておくべきだったとおもうよ。反省してる」
「大した自信だ!だが、それはうぬぼれというもの!」
いって再び剣を構える伍兵衛。
「…どっちがうぬぼれなんだか。力量くらい見極めないと、まったく……」
そんな比留間伍兵衛の台詞に、思わずぼつりとしごく当然のごとくにつぶやく菫。
「この世に抜刀斎は二人もいらん!この俺様こそ抜刀斎を名乗るのにふさわしい!
お前を倒せば、最強の名は俺のものだ!」
いって剣を振りかぶるが。
ひゅっ。
「こっちだ」
風のうなるおととともに、頭上から聞こえる声。
頭上を振り仰ぐ暇もなく。
ガゴォォン!
メギッ!!
上空から放たれた一撃が、もののみごとに伍兵衛の剣をもった腕を直撃し、
そしてまた。
着地する寸前、彼の体に技が叩き込まれ。
どさっ……
そのまま、一言も発することなくその場に倒れ付す。
「……み…みえ……」
みえなかった。
まったく。
そうおもい、つぶやく薫の言葉をうけ、
「ま、飛天御剣流は、剣の速さ、体の動きの早さ、相手の動きを読む速さ。すべてが極められてるから♪
でもかなり手加減してるな~。剣心お兄ちゃん」
「……今ので…手加減?」
まったく動じることなく言い放つ、菫のことばに思わず唖然とする。
最小限の動きで確実に相手をしとめる。
それが飛天御剣流の理。
「まあ、あの人二度と剣はもたれないけどね。左手と右手の筋完全に絶たれたし」
呆然としている薫にと丁寧にひとまず説明している菫の姿。
一方で、
「抜刀斎の名前に、未練も愛着もないが。それでもお前のようなやからには譲れぬでござるよ」
完全に倒れて意識がない伍兵衛にむかって言い放つ。
「さって。残るは一人」
いって、その場に腰を砕いて座り込んでいる伍兵衛の兄だという喜兵衛にむかって剣をむけ。
「お前のようなやつをのさばらせていては、人々も安心してすごせんからな」
「…ひっ……」
静かに言い放った剣心の台詞に小さく悲鳴をあげ。
なぜかそのばに失禁し、気絶する。
「……やれやれ。策を弄するものほど臆病でござるな」
今も昔もかわりがない。
その手にもたれていた紙を手に取り、ぴりびりと破り捨てる。
「おわったみたいね。さって、後始末、後始末♪あ、荷車用意してるからそれにつんで運んでおこ?」
いつつも、立ち上がり、ぱたぱたと外にむかって駆け出してゆく菫とは裏腹に、
「…すまないでござるな。薫どの。拙者、だます気も、隠す気もなかった。
ただ……できれば語りたくなかったでござるよ」
振り向きざまに、いまだに座り込んだままの薫に言い放ち、
「では、達者で」
いって、菫に続いて外にむかって出てゆこうとする。
「……ば……馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁ!」
「うろ?」
いきなり罵声を浴びせられ、思わずよろめく。
「あのねぇ!私ひとりでどうやって流儀を盛り立てろっていうのよ!
少しくらい力を貸してくれたっていいじゃないっ!いったでしょ!?
私は人の過去にはこだわらないわよっ!」
「喜兵衛みたいなのもいるし。少しはこだわったほうがいいでござるよ」
そんな薫の言葉に苦笑しつつも、ひとまずたしなめておく。
「…そうね。そうするわ」
その言葉に確かに一理あることであるがゆえに、素直にうなづくものの、
だがしかし、あきらめそうにないその表情をみて。
「何にせよ。拙者はよしたほうがいい。
せっかく流儀の汚名も晴らせるというのに。本物の抜刀斎が居座ったのでは元もこも……」
そしてまた、これからあるであろう、騒乱に巻き込まないためにも。
「わたしは!抜刀斎にいてほしい。っていってるんじゃないのよ!
るろうにのあなたにいてほしいっていってるのよ!
第一!小さい子と一緒にあてのない旅なんでしょ!?だったら…っ!」
どうみても、一緒に旅をしている連れの菫という子の年齢は十歳にも満ちていない。
つまりは、小さい子供をつれてのあてのない旅。
ましてや……
「あ。荷車は込んできてるよ~。…って、あ、お取り込み中?」
ひょこっ。
そんな言い合いをしている最中。
ひょっこりと、表に荷車をもってきた菫が二人をみてにこやかに、
しかも、さもいたずらっぽく言い放つ。
「……も、いいわよ。いきたければすきにすれば!いきたきゃいきなさい!
……でもいくならせめて、最後に名前くらいは教えてからにしてよね。
【抜刀斎】って昔の志士名でしょ?伝説の人斬りじゃない、あなたの本当の名前。
それとも…あなたは本当の名前すらかたりたくないの?」
ふぅ。
たしかにこのまま放り出す。
というのは自分の信念が許さない。
「緋村…緋村剣心」
「…剣心。剣心、さっさといけば?」
相手が心で涙を流しているのは経験上わかる。
「……拙者も少し旅につかれた。流浪人ゆえ、またいつどこへ流れるかわからぬでござるよ?
それでもよければ、しばらくご厄介になるでござるよ」
菫がいたずらっぽく笑っているのが気にかかるが。
それはもういつものこと。
それゆえに、苦笑まじりに薫に対して答える剣心。
そんな彼の言葉に、ぱっと瞳を輝かせる薫であるが。
ん…?
今さらながらにふとあることに思い当たり、
「でも…ちょっとまったぁ!あなた幕末の志士だったんだったらいったい今全体いくつなの!?」
どうみても、十代後半にしかみえないが。
幕末からすでに明治になって十一年。
逆算しても、そんなことがありえるはずがない。
「…おろ?」
そんな薫の台詞に思わず目を丸くする。
「おろ?じゃないっ!まさかその顔で三十歳越えてるわけ!?」
そういえば……
「……そ~いえば、拙者いくつでござったかな……?ひい、ふう…みぃ……」
本気で指をおりつつ数え始めていたりする。
「自分の歳くらいちゃんとかぞえとけぇぇ!!」
くすくすくす。
「剣心お兄ちゃんは。今は28だってば。維新志士として働いていたのは、14歳から19歳の間だし。
自分の歳くらいおぼえときましょうね♪」
くすくすと笑いながらいう菫の台詞に、
「…そういう菫ちゃんはどうなんでござるか……」
「あら?女の子に年齢きくなんて、まったく。デリカシーがないわよ♪」
そんな剣心の台詞をさらりと交わす。
「……二十八ぃぃぃぃ~~!!??嘘よ!詐欺よぉぉぉぉぉぉぉ!!」
そんな会話をきき、薫の叫びが周囲にこだまする。
…どうみても、剣心の見た目は十代後半である。
それが……
自分よりもさらに年上…というのが信じられない。
ましてや…もうすぐ三十になろうか。
という年齢などとは。
「……菫ちゃんの場合は、師匠が子供のころから今の容姿なんでござるが……」
ぽそりという剣心の台詞は、今の薫には届かない。
「さ。そんなことより♪日がのぼりきるまえに、このひとたち。とっととうっちゃりにいきましょ♪」
「そうでござるな。人目が出てきても面倒でござるな」
一人、いまだに叫んでいる薫をそのままに。
二人しててきぱきと、気絶している男たちを部屋の外にと連れ出して、
どさどさと荷車の上にと積み込んでゆく剣心と菫の姿が。
小さい菫があっさりと、ひょいっと大の男を片手で持ち上げているのにも驚愕しざるをえないが。
そして、全員を荷車に積み終え。
「では、ちょっと彼らを警察署の前につれていっておくでござる。」
薫が何かをいうよりも早く。
二人してそのまま、荷車をひいて外にと出てゆく二人の姿が。
やがて。
出勤した警察署の署員たちは、
警察署の目の前に打ち捨てられたように転がっているおとこたちを目にし。
さらには、その彼らの上の壁にと貼られている壁紙によって。
彼らが今世間を騒がしていた辻斬りの一味とその犯人だ。
と知り、緊急逮捕と相成ってゆく……
赤い髪に右の頬に十字の傷をもった明治の世の中を切り開いた、維新志士。
人斬り抜刀斎こと、緋村検心。
彼は…しばらく、ここ。
神谷道場に身をおいてゆく―――
ひとつのところにとどまることなかった彼の逗留。
それは…新たな時代の流れの幕開け……
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あとがきもどき:
薫:・・・やっぱり、頭の中がうめつくされている状況では打ち込みがはやいです……
スレが頭をうめつくしてるときはスレが打ち込みはかどるし(笑
さって。次はとりあえず。アニメを先に優先して、弥彦にいくのですv
やっぱり、山県がでてくる回は、彼いたほーがいいしね(笑
何はともあれ、ではまた次回にてvではではvv
2007年1月6日(土)某日
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