遥かなる記憶の彼方に・・



「・・・ミレア・・・。」
それは何の前触れもなく突然で。
いつものようにベットに入り。
いつものように次の日の朝を迎えて、いつもの光景が繰り広げられる。
そのはずであった。
だがしかし。
いつもと違うのは・・。
その命の輝きが。
すでにもう長くないと悟ってしまったその瞬間。
・・結婚して、はや六十年と少し。
今までずっと互いに支えあって生きてきた。
子供達も全員成長し。
孫や曾孫に囲まれた生活。
生きている限り死は逃れられない事実。
そっと。
今にも命の火が消えそうなミレアに語りかけているのは。
ノクターン一族の一員となったがために。
その容姿は。
ミレアと結婚した当時の姿からさほど変わってはいない。
「・・今までありがとうね。アル。」
そういって。
静かに目を閉じる。
彼・・・アルテミスにとって、愛する妻。


そして。
ゆっくりと光を失ってゆくその瞳を静かにみつつ。
体から抜け出た魂をみつめ。
「・・・・・・・どうして黙ってた?」
分かっていたはずである。
自分の・・寿命が近いということは。
それを自分にも言わなかったミレアに問いかける。
「だって・・心配するでしょ?アルは優しいから・・。」
下手をすると。
自分も一緒に逝く。と言い出しかねない愛する夫。
「・・・当たり前だろうが!」
拳を握りめつつ叫ぶ。
「でも、先にいったら。私についてくると言い出しかねないしね。アルは。」
「・・・・・うっ・・。」
その言葉に思わず唸る。
「アルにはアルの役目がまだこの世界であるから。」
姉から聞いた。
アルテミスが今後。
この世界で担う役割は・・。
些細なことではあるかもしれないが。
未来に向けて重要な礎となる。
― 本来ならば。
もっと早く・・そう、六十年と少し前に。
彼はそのことを手がけるはずであった。
だがしかし。
ミレアの誕生により、この世界に多少の歪みが生じて。
本来の時間軸と異なる未来を進み始め。
今に至るこの世界。
まあ、その歪みの全ての訂正などを、とある場所に全て押し付けているユニットがいるという事実もあるが・・。

未だに渋る、アルテミスをみつつも。

「・・・・ミリアム姉様?迎えにきてくれたんでしょ?」
そういって、にっこりと。
ベットの後ろのカーテンの後ろを見つめるミレア。
「まあね。」
ゆっくりと。
その言葉に応じるかのように。
カーテンの後ろから現われる、ミリーの姿。
その姿は・・・。
学園を卒業した当時のまま。

ゆっくりとそして、アルテミスに視線を映し。
 「アル、貴方が本来、ミレアに出会う前に。計画していたことを今から実行しなさい。
   ― そうでないと、死亡することは許されないからね。」
凛とした声で静かに言い放つミリー。
ぞく。
その言葉に思わず身震いを起こすほどに。
威厳があり・・・どこか逆らえないその言葉。
思わず条件反射で。
何の疑問も抱かずに納得しまうほどの。

「じゃ、いく?ミレア?」
「うん!」
世間一般では行方不明とされている姉であるが。
こうしてずっと常に側にいてくれる。
それが今まで心強かった。
またうれしかった。

姉と・・・ミリアムと一緒なら。
何処にでも何があっても耐えられるから。


二人同時に消えてゆく、ミレアとミリーをみつつ。
後に残されたのは・・。
ベットの横に佇む、アルテミスと。
そして、その子供達のみ・・・・。



アルテミスが本来。
ミレアがいない時間軸で行いはずであった、とあること。

それは。

物質世界における空間転用術。その基礎を確定させること。
彼は・・・・元々。
とある研究をしていたのである。
ミレアと結婚しても、それは個人で続けてはいたが。
だがしかし。
本来の運命とは異なり。
それはまだ確定していない。
発表すらもしていない。

元々、この世界に【ミレア】は存在するはずのなかった命。
それが、ミリー・・いや、【宇宙の姫】その力によって誕生したに他ならない。
別にミリー、一人ならば、歪みなどもあまり関係なく。
というか、ミリーそのものが、そこにいていないようで・・でも確実にいる。
といった存在そのものであるからして。
ミリーの存在によって生じた歪み。
そしてまた、ミレアの誕生によって生じた歪み。
それは、この世界そのものに。
いい方向にその道をもたらしているという事実があるが・・。





「ええええええええええええええええ!ぜったいぃぃぃぃぃぃに!いや!」
断固として拒否をするミレアに。
困ったように苦笑して。
「・・あのね?ミレア?普通は記憶を消して、転生するのよ?
   そもそも、貴方は始めての生だったんだから。それなりの・・・。」
ミレアが姉であるミリーに連れられてやってきたその場所は。
何でも、表では知られていないが。
連邦の一つの機関らしい。
そこの、輪廻転生部門。
なぜか。
ミリーがミレアをそこに連れて行ったときに。
周りにいるそこで働いている無数の存在が。
凍りついたように、姿勢をただし。
丁寧な口調でミレアたちを出迎えたのに、ミレアは多少疑問には思うが。
「姉様のことを忘れるくらいなら!絶対に転生なんてしない!」
断固として言い放つ。
この辺り。
ミレアは一度言い出したら。
手小でもその意見を曲げないことは、ミリーはよくわかっている。
「・・あ・・あの?姫様?特例で・・・覚えているまま・・・。でもいいですけど・・。」
はっきりいって。
彼女の転生先を選ぶのにも一苦労。
何しろ。
― 絶対に危害が加わらないような場所ねv
と直々に念を押されては・・・。
本来いなかったはずのその存在。
確定しているこの空間の中に。
異なる要素が入り込んだことにより、その亀裂は間違いなく広がりをみせかけている。
その亀裂そのものも、彼等が直す役割を果たしているのだが。
どうにか、予備の空間の隙間にミレアを入れ込み。
ミレアもこの世界の一員として扱い、ようやくその歪みは今では収まってきているその状況。
まあ、基本的には記憶を消す。
というのが基本的な規則ではあるのだが。
その魂における力の大きさで。
その記憶を持ったままの存在も少なくない。
「それか、私、ミリアム姉様とずっと一緒にいるvファーさんと同じように♡」
手小でも意見を曲げない妹・・・ミレアに。
「・・・あのね・・・。」
思わず頭を少し抑えつつも苦笑するしかないミリー。
慕われるのは悪くない。
自分を姉として慕ってくれるその思いは、今までに感じたことのないくすぐったさがある。
「あのね?ミレア?そこまでいうんだったら、教えるけど。私・・人でないのよ?」
少し考えて。
それでも。
姉として無条件に慕ってくれるミレアだからこそ。
真実は・・・。
教えておくべき。
それでたとえ・・・・自分を見る目が変わろうとも。
そう思い。
決断をくだしつつ、横にいるミレアにと語りかけているミリー。
大切な家族だから。
初めての家族ともいえる存在達だったから。
だからあえて、自らに枷をかけて。
彼等の感情などといったものを視れないようにしていた【ユニット】。
そして。
決意したように。
「・・・私の名前は。ユニット。ユニット=ユニバース。
    ・・貴方達存在が、【宇宙の姫(ユニバースオブザプリンセス)】と呼んでいる存在そのもの・・なのよ?」
知ってまえば。
もう・・。
無条件に自分を姉と慕うその感情がなくなると思うけども。
それでも、これからのミレアのことを考えると。
ここはやっぱり教えておくのが正しいというもの。
そんなことを思うミリー。
だがしかし。
「え?!そうなの!?すっごぉぃ!じゃぁ、私のミリアム姉様が宇宙の姫なんだぁ!でも姉様は私の姉様よね?」
まったくもって予想外の反応に思わず目を見開く。
「・・・・・えと・・・・ミレア?」
思わずそんなミレアに問いかけると。
「でも、ミリアム姉様がたとえ何であれv私にとっては大切な姉様だもん♡」
そういってぎゅっと。
ミリーに抱きついてくるミレア。
「・・・・・おどろか・・・ないの?」
母たちですら。
正体を知ったときには、かなり驚き・・。
娘として接するのではなく、姫として接してくるようになったというのに。
表面上は娘として接してと頼んだのでそのままではあっても。
心のどこかで。
だが、ミレアにはそういった所はひとつもなく。
ただ純粋に驚き。
その事実を受けとめているミレアがいる。

大概。
彼女の正体を知った存在は・・。
彼女のことをいくらそれまで友達としてみていても。
ある一線で引きをみせているというのにも関らず・・・。

「え?何で?」
たとえ、姉が何であろうと。
大好きで大切な自分の姉には代わりがない。
きょとんとしてみつつ。
「・・あ!じゃぁ、私、姉様の側で働きたい!」

ごげしゃ!

その言葉に思わずその場にこける。

その場にいたほかのそこにいた存在全てが。
こけ伏していたりするのだが。

「だったら、ずっと姉様と今度こそ、一緒にいられるし!」
ガッツポーズをとりつつ、にっこりと微笑むミレアの言葉に。
「ミミミレアぁあ!?!」
思わず驚きの声を出す。
そして。
少し瞳を潤ませて。
「・・・・・だって・・姉様・・いつも何処か・・さびしそうだったんだもん・・。」
その言葉にはっとなる。
いくら、記憶を封じて力も封じて生活していても。
どこかで一線を引いていたのは、他ならないミリー自身。
終わりのない自らの存在理由。
理由があるのかないのかも不明なほどに。
ただ・・・。
今は、ともかく。
様々に世界を作り出し、それを見守ることでその安らぎを得ている。
今のようにその世界に降臨し。
様々に自ら自身で見歩くことをし始めたのはいつのことだったか。
常にミリーの側にいる、石の精霊だというファー。
彼女もまた、ミリーの瞳に宿る寂しさを知っているのはミレアにも分かっていた。

― だから、常に願っていた。
― 私達が側にいるよ?
――と。

その思いは・・・。
互いに立場が違えども。

・・・・・本質的には、直接。
ユニットに創られたといっても過言でない、フェアリーとミレア。
その思いは・・・二人は同じ。


「・・・いいんじゃないですか?姫さま?ミレア様が側にいたら、姫様も心休まるでしょうし?」
その思いが痛いほどわかるからこそ。
ミレアのその意見に、助け舟を出しているフェアリー。


・・未だに、その場の存在達は。
中には、完全に姿を成すことが不可能となり。
消滅しかかったり、死んだり滅びかけたりしていたりするが。


「ね?ファーさんもこういってるし・・・駄目?ミリアム姉様ぁ・・・・。」
「・・・・うっ!」
涙をためて、うるうるとした瞳で、すがるように自分を見つめてくるミレア。

・・・・この表情に。
長いこと、姉妹として暮らしていたミリーは・・・・かなり弱かったりする。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぅ。ああもう!分かったから!分かったから泣かないの!ミレア!」

結局。
ミリーは、ミレアに甘いのである。

最後には、ミリーが折れて。
ミレアの提案を受け入れざるを得なくなっている光景が。


しばらく数時間後に。
そこで見受けられているのであった。



存在そのものの、本質の名前というか。
真名。
【ミレア=パール=マリルッシュティン】
その名前をミリー・・いや、ユニットから貰いうけ。
今ここに。
新たな道を歩み始めるミレア。
これより、ミレアはその新たな役割と共に。
人の世の中にいく度か転生を繰り返しつつ。
ユニットに仕えるある存在として。

以後の生をまっとうしてゆくこととなるのであった。


 
                              -続くー


    

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まえがき:
  ・・・・何か未だに早くに目が覚めて・・。
   んでもってなかなかねつけられない・・・(涙)
   ・・・・さすがにインパクト・・・つよかったんだろうなぁ・・。
   あれ・・・・・しくしくしく・・・・。
   昨日も寝たのが一時ごろなのに・・。
   目が覚めたら・・・六時前の私って・・。
   体壊すぞ・・(滝汗)
   ま、何はともあれ。
   とりあえず。
   どれか一つでも完結させなきゃ・・・(汗)
   とか何とかおもいつつ。
   無謀にも、ユリの話しとか。
   はたまた連邦創立の話しとか。
   打ち込んでやろうかなぁ?
   などと思い始めている今の状況・・(こらこらこら!)
   一応、区切りがいいはずのこれを。
   スミレちゃんの話しでは。
   始めに打ち込み始めたんですけど・・ねぇ?(笑)
   
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   あとがきもどき:
       薫:・・・・・一気に話しを飛ばしましたねぇ?(まてまてまて)
         ミリー・・・妹に弱いです。はい(笑)
         というか、基本的には、スミレちゃんは優しいですからv
         ちなみに。
         スレイヤーズの希望シリーズで出てきた、ミレア。
         あの当時はまだ。
         数回の転生を繰り返した後の姿です。
         とりあえず。
         人としていく度か転生を繰り返しつつ。
         魂そのものに力を付けてゆくことになるミレアでした(まてこら!)
         ・・・・後半部分・・・どっちかというと、ミレアが主人公?(汗)
         に近くなっているよーな気がする・・。
         ま。
         いっか。(よくない!)
         次回でようやくミリー偏、エピローグですぅ!
         長かったよぉ・・。
         ・・・自分的には短いように感じてたのに・・・あう・・・・・・・。
         ・・・・・・ユリの話しを先にしたほーが・・。
         短かかったかなぁ・・(汗)
        でも、ミレアは他の人にもその存在・・・教えてたからなぁ(こらこらこら!)
         んではでは。
         またv次回でvv