遥かなる記憶の彼方に・・
 

「それでは、食事の後は、各自、部屋にと案内されて。それから、自由行動です。」
食事が終わり。
それぞれに。
割り当てられた部屋にと入ってゆく生徒たちの姿。
大概、四人部屋を一部屋として、彼等のためにと創られた、異空間部屋。
異空間といえども、きちんとちゃんとした部屋にはなっている。
風呂、トイレ、全ての設備付き、ついでにテレビも。
とはいえ、過去のような置くタイプではなく。
空間に立体映像として、画像が浮かび上がるのが主流となっているのだが。
ミリアムたちは仲良し組みのメンバーで部屋が割り当てられ。
ミリアム、ルビー、マリン、エメット。
この四人が同室となっていた。
これから、この部屋を拠点として。
しばらくの間。
社会見学は行われてゆく。

一クラス、四十人前後。それゆえに、一クラスで、約十部屋。


とりあえず、部屋にと案内されて、荷物を部屋にと置いて。
部屋をしばらく、見て回り。
というのも。
与えられた部屋とはいえ。
それぞれに、ちょっとした家程度の広さがあるがゆえに。
少し部屋の中を探検し。
そして。
部屋の外にと出てゆくミリー達。


「ねえ!自由時間なんだから!探検しましょ!探検!」
ルビーの言葉に。
「そうよね!やっぱり、折角来たんだし!」
「迷子にならないように、お願いねvミリーv」
方向感覚は抜群のミリーにいっているエメットに。
ルビーの言葉に同意しているマリン。
「はいはい。それじゃ、働いている人達の邪魔にならないように。」
いって。
四人が四人とも顔を見合わせ。
『四人組み探検隊!出動!』
全員の声が一致する。
この辺りは、やはりまだ子供であるのを物語っているが。

・・・・・・・・・・・・。
ひ・・・・姫様・・・・(汗)
その様子を。
はらはらと視ている小さな羽根の生えた女の子の姿。
―― ファーの姿は、当然、マリンたちの目には入っていない。
いつも。
ミリーの側に付き添うようにしてその肩の辺りに存在しているのだが。
ファーの姿はなぜか、ミリー以外には見えてはいないのである。

同じようなことを考えている子供達は殆どいるらしく。
部屋を出ると、すでに廊下に生徒がたむろしていたりする。

とりあえず。
ここは、休みなく活動している機関なので。
うろうろとしても邪魔にならないように。
それぞれ、各自が気を配り。
仕事の邪魔にならないような場所に検討をつけて。
それぞれ、自分達の好きな所を見学してゆく。


「・・・・あら?」
とりあえず、本日の生徒たちの案内役の時間が終わり。
自分の仕事をこなしていた明美は。
ふと。
書類をもって、部署から部署にと移動しているとき。
その視界の端に。
自分が受け持っている生徒たちの姿をその目にと映す。
「・・・この先は・・。」
ふと。
彼等が進んでいるその先を思い当たり。
はっとなる明美。


「あれ?行き止まり?」
ルビーが残念そうに、その先に壁が立ちはだかるのを見て取り、残念そうに声を出す。
「本当だ。」
マリンが、目の前にある、藍色の壁をみて少し残念そうにとつぶやく。
彼等の歩いてゆく、その先には、ただ壁が立ちはだかるのみ。
「・・・・へ?何いってるの?まだ道、続いてるじゃないのよ?」
そんな彼らの言葉に首をかしげつつ、キョトンとして言っているミリー。
「は?ミリーこそ、何いってるの?だって、ほら、これ。」
ぱんぱん。
手を伸ばし。
叩くと。
確かに、壁の感触と、音が伝わってゆく。
エメットの言葉に。
「え?だって・・・ほら。」
すっ。
ミリーが手を伸ばすと。
すっ。
ルビー、エメット、マリンの目には。
ミリーの手が、壁にと吸い込まれたように映り込む。
ミリーの目には。
その先にも、まだ長い廊下は続いているように映っているのであるが。
マリンたちの目には、その廊下は行き止まりにとその目に映っているのである。
視界の相違。
「私には、廊下、続いているように見えるけど?」
いって。
すたすたすたと、そのまま。
何事もないかのようにと、歩いてゆくミリー。
壁に突き当たると思われたその一瞬。
すっ。
『うそ!?』
そのまま、歩いてゆくミリーの姿が、壁にと吸い込まれるようにと消えてゆく。
そして。
「ほら、やっぱり、あるじゃない!」
いって、手を振っているミリー。
声はすれども。
姿は見えず。
やはり、目の前の壁を叩くと、硬い壁の感触があるばかり。
「ミリー!?どうなってるの!?」
叫んでいるルビー。
「ほら、皆も早くぅ!」
手招きして呼んでいるミリーの姿。
しかし、ルビーたちの目には。
ただ、ミリーの声が聞こえるのみと。
目の前には、ただ、どう触っても、たたいても硬い壁があるばかり。
「?何やってるの?」
ひょい。
あまりにこないので。
皆の所に戻っているミリー。
ミリーからすれば、彼等の前に顔を突き出しただけのことだが。
ルビーたち三人の視界からは。
壁から、にゅっと、ミリーの顔が突き出してきたようにしか映らない。
「・・・本当に、この先、廊下続いてるの?」
疑問を投げかけるエメットの言葉に。
「あるって?・・・・まさか、本当に見えないの?何で?」
『それはこっちが聞きたいわよ。』
首をかしげるミリーに。
三人の突っ込みが同時に入る。
「うーん・・。」
しばし、腕を組んで、考えつつ。
ぽん。
思いついたように手を打つミリー。
「じゃぁ、手をつないで、目をつむって。歩いてみてよ。ほら。」
にっこり笑って。
手を差し出すミリー。
とりあえず、いぶかしがりながらもミリーと手をつないで。
そのまま、目をつむり。
一歩、ニ歩・・三歩。
と、壁に向かって歩いてゆく。
壁までの距離は。
どうみても、数歩。

四歩、五歩・・・・六歩・・・七歩・・・八歩・・・・・。
『え!?』
はじかれたように、目を開き、振り向くと。
そこには、壁など存在せず。
そして、自分達が居たであろう場所が、歩んできた道のりの先に見えている。
そして、目の前にはまだまだ続く長い廊下。
『・・・・・・うそ!?』
本当に、あの壁・・の向こうに、道が続いてた!?
ってゆーか、何で、触ったり、たたいたりしたときは。確かに。
硬い壁しかなかったのに!?
驚愕の表情を浮かべているルビー達三人。
「いや、嘘って・・・?変な皆?」
キョトンとしているミリー。
「廊下が続いているから、歩けるに決まってるじゃないのよ?」
最もな意見を言っているミリーの言葉も。
ただただ、唖然とするしかないエメット、ルビー、マリンの三人。

ミリーには、廊下が続いているのが、見えていた。
しかし、ルビー達三人には。
そこには。
ただ壁が立ち塞がるだけで。
その壁も、幻とかでなく、確かに、硬い壁が。
目の前にと存在していたのを、三人は、三人とも壁を触っているので、実感している。
しかし。
後ろを振り向いても。
その壁事態の形跡すらも見えはしない。
『・・・・どーいうこと?』
しばし、考え込む三人。
やがて。
『・・・ま、いっか。』
それで済ませている三人の姿。
ここは、連邦機関の本部なんだから。
セキュリティの関係なんかで。
そういうことがあっても、不思議じゃないし。
まあ、何で、ミリーだけには壁が見えてなかったのか疑問だけど。
それは、ミリーの能力に関係することでしょう。
それで納得している三人。
「とりあえず!この先には、何があるのかしらね?」
わくわくどきどきv
嬉々としていっているミリーに。
「ねえ?何か、こっち。光の壁が道を塞いでるわよ?」
別れた道を指差して、言っているマリン。
廊下の先は。
数本の分かれ道にと分かれており。
そのそれぞれが。
その道の行く手を、光の壁が道を閉ざしている。
といっても。
本当の壁。
というわけでもなく。
ただ。
光が天井から、床にと降りてきている。
といった感じの壁なのであるが。
数本以上、別れているその道をみつつ。
全員で顔を見合わせて。
『・・・・どこにする?』
どの道を進むか。
相談を始めるミリーたちの姿がそこに見受けられてゆく。




書類を手渡し。
気になったので、ふと、見ていると。
そのまま、すたすたと。
たとえ、ここで働いている存在でも。
その先には、何かしらの許可がないと。
入ったことのない空域に、向かって言っている自分が任された、メンバーのうちの生徒たちの姿。
「確か、普通の存在には。あの先・・壁にしか見えないはずなのよねぇ。」
とりあえず。
行き止まりで諦めて、別の場所にといくでしょぅ。
そう簡単にと考えていた明美。
だが。
「・・・・・・・・え!?」
あっさりと、そのうちの一人は。
壁すらの存在を感じることもないかのように。
すたすたと。
廊下のその先にと進んでゆき。
しばらくすると。
全員が。
その、立ち入り禁止区域ともいえる空域に入っていけているのはどういうわけか。
「ち・・・ょっと!?」
目を丸くして驚く明美のその視界の先で。
彼等の姿は。
完全に、廊下を塞いでいる壁の奥にと掻き消えてゆく。
「・・・・・ち・・・ちょっと!?何で!?どうして!?」
ただの、人間が、あの結界を超えられるわけがないのに!?
許可を得ている彼女達ですら、壁にと手をつけてその波動を伝えないとその先に行くことなど不可能。
パサリ。
手にもっていた書類を。
パサリと落としている明美。
「と・・・とりあえず!これ、とっとと、もっていって!追いかけないと!」
一応、自分が任されている生徒たちである。
何かあったら、困るから。
しかし、今は勤務中。
とりあえず、今報告の仲介をしているこの書類だけでも。
もっていって。
急いで追いかけないと!
あわてて、散らばった、書類をかき集め。
ぱたぱたと。
元いた部署にと戻ってゆく明美の姿が見受けられていた。



「どれにしようかな。宇宙の意思のいうとおり・・。」
無数にある分かれ道を指差しつつ。
歌いながら、進む道を選んでいるミリー達四人。
やがて。
選び歌が、いい終わり、一つの道を指し示す。
「何か、この道、何重にも、光の壁がよく上から落ちてるね?」
疑問に思いつつ。
それでも。
すたすたと道を進んでゆく。
数個目の光のカーテンをくぐると。
そこからは。
今までの、石の廊下でなく。
どういうわけか、その、廊下に使われている材質が異なるのが、子供の目からも誰の目からもわかるほどに。
今までに見たことのない物質で、廊下も壁も形成されている、その空間。
やがて。
「何か、オーロラの中を歩いているみたい・・。」
的確な表現をしているルビー。
確かに。
周りの壁や廊下が。
ゆらゆらと、不定期に揺らめき光るその様子は。
あたかも、オーロラのようで。
向きを変えただけで、その模様の様子も、一時として、同じものなどありはしない。
「ねえ?ここの壁だけ?何か違うよ?」
いって。
ピタリと立ち止まるマリン。
マリンのその水色の髪が壁にと映りこみ、その色すらも反射して。
ゆらゆらと、光の揺らめきに溶け込みつつ。
進む彼女達四人の周りを掠めてゆく。
「あ、本当だ。」
「・・・・・綺麗・・・・。」
足を止めた、その壁には。
壁の一角。
といっても、少しばかり、広い範囲で何かしらの模様が刻み込まれ。
そして。
その中央には。
「・・・・・・・・・人?」
模様のその中央に。
少女らしき姿の模様が刻まれている。
まるで、その少女を中心に、模様全てが広がっているような、その複雑な模様。
「何か、ここに描かれてるの、銀河というか。宇宙地図に近くない?」
いって。
ミリーが、その壁にと、手をつけると。

ヴヴン・・・・・・・。

何か、小さな音がして。

その刹那。

 シュン・・・・・・・・・。

その模様が刻まれていたその壁は、瞬く間にと掻き消えてゆく。



「・・・・・・えと・・・・・・?」
キョトンとするミリー。
「ええと・・どうやら、ここ。部屋の入り口の扉だったみたいね・・。」
唖然としていっているルビー。
「どうする?」
ぽっかり開いたその壁の先の空間をみつつ、聞いているマリン。
「やっぱ、折角の探検なんだしv入るわよねv皆♡」
にっこりというエメット。
「それもそーよね。」
いいつつ。
かつん。
彼等は。
その壁の向こうの空間にと、足を踏み入れてゆく。



辺りは、深遠の闇に近い空間であるのだが。
だが、淡く、確かに、心地よい光にと包まれて視界が悪い。
ということもない。
「・・・・・・あれ?何か、この肖像がの女の子・・・。ミリーに何となくだけど、にてない?」
こつこつと、歩いてゆく、その部屋というか、廊下の壁に掲げられている少女の肖像画。
そこには。
黒い髪をポニーテールにして。
赤いリボンで髪をまとめている少女の姿の肖像画。
「まっさか、私、こんなにかわいくないわよ。」
いいつつも。
・・・・・とくん。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・駄目!
何かが、反応しそうになり。
??
何が駄目なの?
何か、自分の中で声がするような感覚にと、一瞬捕らわれてゆくミリー。
ポウ・・・・。
「・・・・って!?ミリー!?その子・・何!?」
ふと。
ミリーの顔の横に。
光る小さな光の球が浮いているのに気付き。
目を凝らすと。
その光が、人の姿をしている羽の生えた女の子の姿である。
そんな姿が、ルビーの視界に映り込む。
「・・・あれ?見えるの?この子が?」
少し驚くミリーに。
「・・・・ここなら、視えるでしょうね。」
鈴を転がしたような声が、ミリーの顔の横から響いてゆく。
「??え?ここ、知ってるの?ファー?」
きょとんと、問いかけるミリーの台詞に。
『・・・・・ミリー、その子・・・誰?』
全員の、質問が同時にと発せられてゆく。


すと。
床にと降り立ち。
ふわ。
パァァァァ・・・・・・。
手を軽く前で組み。
目を閉じる。
それと同時に。
淡い不可思議な色にと包まれて。
やがて、光の退いたその後には。
ミリー達と同じ大きさの女の子の姿がそこに出現する。
そして。
目を見開く。
その目は、深い深遠の色をし。
それでいて、特質すべきなのは、その髪の色。
目の色も、髪の色と同様に。
ルビー達が知っている色では表現できないような、不可思議に輝いている。
背中の羽は、虹色に近いが。
それ以上に神秘的。
そんな、まるで、透き通るような羽が、四枚生えた女の子の姿。
どことなく、肖像画の少女と、似通った雰囲気も感じられないことはない。
そして。
にっこりと、ルビー達三人にと微笑みかける。
「始めまして。いつも、フィラ様がお世話になっております。
   私は、ファー。フィラ様がお持ちになっている、とある『石』の精霊です。」
にっこりと笑って、丁寧にお辞儀をする。
「そーいや、説明してなかったっけ?何か、私がずっともってる、この石の精霊みたいよ?」
しゃらり。
いって。
今は、首飾りの形式にしているそれを、首から取り出しているミリー。
『聞いてない!ずるい!ミリー!そういうことは、早く教えてよ!』
ミリーの言葉に。
三人の同時の突っ込みが同時になされてゆく。
驚く場所が違うような気もするのであるが。
しかし。
今、この場に。
それを指摘するようなものは、誰一人としていなかった。


彼女達は。
ミリーが、捨てられていたときから。
彼女達は、ミリーが捨て子であったことを知っている。
その石だけをもっていた。
というのは、本人から聞かされている。


しばらくの、自己紹介の間。
核心につく質問には。
全て、にっこりと微笑んで、交わしてゆくファーの姿。
その羽は、自在に出現させることも、なくすこともできるらしく。
今は、普通の彼女達と同じ女の子として。
一緒に部屋の中の廊下を歩いてゆく。


「ここが、一番奥の部屋です。」
いって。
ファーが指し示したその先には。
淡く金色にと輝く、一つの扉。
そこに、何かが描かれているようだが。
それが何を意味するのか、四人の子供達には分かるはずもなく。
「ふぅん。」
いって。
ルビーがその扉にと手をつけると。
なぜか。
ばっ!
あわてて、手を放す。
無意識下で。
何か、恐怖を確かに感じた。
自分の手をまじまじとみつつ、そして、その扉と見比べているルビー。
「奥の部屋って・・?」
ミリーが手を当てると。

シャラァァァン・・・・・・・。

何かが、揺れる音がしたかと思うと。
扉は。
そのまま、姿を消してゆく。

すと。
部屋に足を踏み入れると。


『・・・・・すごい!!!!!』


まず、全員の感嘆の叫びが一致してゆく。



「・・・・・・・・・・何か・・・・なつかしい?」
一人、首をかしげているミリーの姿があるものの。

彼等の、足元と言わず。
その部屋全ては。
宇宙の空間。といっても過言でなく。
しかも、圧縮された、まるで、宇宙地図の中心に立っているかのごとくに。
彼女達が知っている銀河の姿や。
まだ、地図にものっていないであろう、場所の銀河に至るまで。
部屋の空間の中に、浮かび上がるようにと映し出されているのである。

まるで。
宇宙の中に、放り出されたように。
所かしこで、消滅する星の姿。
それらが。
そして、銀河が誕生してゆく過程であろう、うまれたばかりの姿が。
部屋にと入った、彼女達の前で繰り広げられてゆく。


「一箇所を拡大するの、できたりして♡」
何の気なしに。
すたすたと。
部屋の中心まであるいていき、ミリーが手をかざすと。
ポウ・・・・・・。
部屋のその中心に、一つの、虹色の水晶が出現する。
これね。
「これで、確か、調整ができるはず。」
無意識に発せられたその言葉に。
「???ミリー、知ってるの?この部屋のこと?」
「・・・・あれ?何で私・・・分かるんだろ??」
マリンの質問に、ようやく、自分がこの部屋の使い方の仕組みをなぜか、分かっていることに気付き。
首をかしげるミリーの姿がそこに見受けられていたりする。
「・・・・えと・・・・何で??」
「それは、フィラ様ですから。」
首をかしげまくるミリーに、にっこりと微笑んでいっているファー。

― この部屋は。姫様でないと、入ることも、コントロールすらも。出来ない場所なんですから・・・・。


そう、心でつぶやいているファーの言葉には。
当然誰にも、届いているはずもないのであった……


                                           -続くー


    

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     次回v本部は大騒動v
     といっても、関係者には口止めv
     というわけで。
     明美さん。
     しばらく、ミリーのお目付け役にとおしつけ・・・とと。
     光栄な役目を上から申し付けられたりv
     それではv
     また・・・・・・。