遥かなる記憶の彼方に・・・・
「・・・・・は?娘をですか?」
不安げな表情のマリア。
その金の髪がたなびく。
その深いまでの、青い瞳が。
不安にさいなまれた色をかもし出している。
「実は、娘さんが作った・・とお聞きしまして。」
かた。
テーブルの上に置かれたのは娘が作った、翻訳装置。
よく、友達に頼まれてつくっている品物。
「これ、どうやって、作っているか。ぜひ、お聞きしたいと思いましてね。
― できれば、そのノウハウを伝授させていただきたいのです。無論、それなりのお礼はいたしますが?」
支部長、クウォーツの命により。
ノクターン家にとやってきている、黒い髪の男性セカン。
「そんなことをいわれましても・・・・。娘は今、学校にいってますし・・・・。」
有名進学学校。
まだ、小等の部ではあるが。
それでも、そこは、エスカレーター式。
名門の人々などが通う場所。
まあ、宇宙空間とも行き来がある、この時代。
完全な人間だけ。
というわけでもないのであるが。
感受性を養うには、いろいろと幼いころからいろいろな人に触れたほうがいい。
という理由から。
家庭教師ではなく、学校にと通わせている。
とある伝説の女性から名前をとり。
ユニバース学園。
またの名前を、コスモス・スクール。
とも呼ぶが。
娘である、ミリーが通っているのは。
そこの、上流階級向き。
一応、形だけは別れているものの。
基本的には、平等を謡っているので。
そこに通っている子供達は、みな、平等に扱われる。
結構、ここの学校はレベルが高い。
宇宙の中で、就職が厳しい。とされている、銀河連邦機関。
その高い敷居をここの卒業生たちは、今までにも数多に就職を果たしている。
誰もが一度はあこがれる、職業。
それが、銀河連邦機関で働くこと。
「・・・・すいません。私もよくわからないんです。ただ、これを作るのに。
ミリーは、よく、宇宙空間に遊びに出て。空間を漂っている物質を拾い集めていたりはしますけど・・。」
遊びの中に、宇宙空間がある。
というのも問題のような気もしなくはないのであるが。
自ら、宇宙船などを作り出し。
その試作運航などといっては、よく星の外にと出て行っていたりするミリー。
それが、市販のものよりも抜群に性能がよかったりするものだから。
どこからかその噂を聞きつけた人々が。
ミリーにぜひ作って欲しい。
と、注文なども入っている今の現状。
それを何なくこなしているミリーもミリーなのであるが。
「あのコ、親の私がいうのも何ですけど。手先が器用な子ですから♡」
にっこりと。
微笑んでいっているマリア。
どこの親も、我が子の自慢は誉れであるのは、世界共通、変わらないらしい。
ミリーに関しては。
養女なのであるが。
すでに、マリアもリュクも、自分達の本当の子供と思っている。
・・・・起用だけという問題だろうか??
その言葉に多少疑問を感じつつも。
「とりあえず、もし、お嬢さんの都合のいいときでいいですから。
ノウハウが駄目なら。同じものを数個、依頼してもいいですか?」
黒い髪に黒い瞳。
その瞳が懇願するような眼差しになり。
ひたりとマリアを見つめるセカン。
「分かりました。一応、いってはみますわ。」
「それでは・・・私はこれで・・・。」
まだ、仕事が終わっているわけではない。
仕事の一貫として、ここによっただけのこと。
星を去りつつ。
「・・・・・本当に、あの御方に関りがあるのか?」
ふと、そんなことを漏らしているセカンの姿が。
宇宙船の中の操縦席にて見受けられていた。
「ただいまぁ!」
元気に玄関から・・でなく、窓から入ってくる一人の少女。
「こら!ミリー!まぁた、玄関から入らないんだから!」
そういうマリアの目は笑っている。
「だって、ここ、飛んだほうが、早くつくしv」
別に、この星では。
人間が空を飛んでいようが、さほどに気にはされない。
そういう種族とかも住んでいるからして。
まあ、家の周りの庭が一キロ四方も庭であれば、飛んだほうが早い。
というのは、かなり分かりやすい説明ではあるが。
たまに、部屋の中にいきなり瞬間移動して、戻るときなどもあるミリーであるのだが。
俗にいう、超能力。
それは、この星では、さしては珍しいものではない。
「あれ?誰かお客さんだったの?」
ふと。
風の臭いというか、風の精霊が何かをささやいているのを耳にするミリー。
ミリーは、人々が忘れかけていた、自然の恵みたる、精霊などの声をも聞くことができる。
それは、このミリーの母親、マリアとリュクにも言えることなのであるが。
― だからこそ。
このノクターン家は。
名門という名前を保っているというのもある。
何しろ、実績的に。
砂漠化していた星などを、緑に導いた数は数しれず。
自然破壊や、そういったトラブルにも。
かなり、その影響力をもっている。
そんな一族なので。
ミリーがその声をも聞けるというのは、さしては気にはならず。
逆に、本当の親子だと、知らない人などは思いこんでいたりする。
まあ、外見も何処となく、ミリーは二人に似ているからして。
まず、親子といっても過言ではないのだが。
・・・・何しろ、人を構成している遺伝子からして似かよっているのだから。
「ええ。この前の支部長の依頼ですって。」
「ふぅぅぅん。」
いって。
ぴらり。
その机の上にと置かれていた紙を手にとっているミリー。
「ええと・・・何何?」
― 貴殿が作られし、翻訳装置。その性能のよさに。ぜひ、アドバイスを願いたく・・・・・・。 ―
つらつらと書かれているそれは。
「・・これって、私が遊びでつくってる、翻訳装置のこと?」
「じゃない?」
ミリーにとっては、お小遣い稼ぎ。
というか。
それをあげた人達は。
ただでは悪い。
というので、ある程度、お金や品物をくれるのであるが。
それらは、ミリーは、家にと入れている。
自分はまだ働けないから。という、何とも子供らしくない考えからであるのだが。
「アドバイスねぇ・・・・・。」
ピッッ。
ふと、ミリーが手を鳴らすと。
ミリーの鞄の中にあったはずのペンが、ミリーの手の中にと出現し。
そして。
とりあえず、紙は、ノートを使うのはちょっともったいなく感じ。
その辺りの空気の組織成分を変えて、紙をその場で生成しているミリー。
ミリーは分かってない。
それが、実はかなり高度な技術であるということを。
母親たるマリアもそれが当たり前に見慣れているので。
さして、すごいことだとは夢にも思ってないのであるが。
「拝啓。・・・・・。」
出だしを書いて。
とりあえず、自分がやっている工程を書いていっているミリー。
その中に。
成分の組織調整、ミクロ単位以下の原子の組み換え。
などなど・・・・。
はっきりいって。
人の手だけでは。
不可能に近いことまでをもかいているのであるが。
そして。
今だに実用化されていない。
原子や素粒子の組み換え方法など。
それらを壊し、まったく新たなる物質にと転換させるなど・・・。
どうみても、六歳の子供が書く文面ではなく。
また、六歳の子供が、知っているようなないようでもなく。
そんな工程をつらつらと、紙にと書き連ねていっているミリー。
「よっし!出来た!」
それを光の粒子に変換させ。
先日貰った、支部長にと転送させる。
「―えいv」
ぽち。
いって、送信ボタンを押しているミリー。
この機械も、ミリーが作り出したもの。
市販のものよりも。
有効範囲が、ことごとく広い。
かるく、大銀河の二十や三十。
送れることのできる機能を持ち備えていたりする。
・・・・銀河連邦で市販&配布されているその機械でも。
せいぜい、十かそこら。
常識をかなり覆している発明だとは、ミリーはこれっぽっちも知らないのであるが。
「只今戻ったぞぉ!ミリー!マリア!」
そんなことをしていると。
玄関から声がする。
「あ!!父様だ!」
そのまま、その一ミリにも満たないノート型の機械を仕舞い。
ばたばたばた!
いきおいよく、かけって、玄関にと走ってゆくミリー。
「お帰りなさい。あなた。」
「只今、いとしのマリア、そして、ミリー。」
ちゅっちゅっ。
ミリーには額に。
マリアには唇にキスをして。
「お帰り!父さん!あのね!あのね!きょうね!」
ミリーは、いつも。
家族がそろったら。
学校であったことを、話している。
いつもと同じ光景が。
ほのぼのとした家族団らんが始まってゆく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・普通・・・・・・・じゃない・・・・・・・・な・・・・・・。」
ふと。
光速粒子情報に、何かが送られてきたのに気付き。
みれば、送信者は。
あの子供。
ノクターン家の、ミリアム=フィラ。
その子から。
その送られてきた内容をみつつ、汗を流しているクウォーツ。
そして。
しばらく、何かを考えた後。
ピピピッ・・・・・・・。
― クウォーツです・・・・・。実は・・・・・・。
本部にと連絡をとっているクウォーツの姿が見受けられていた―。
「あ、また流れ星!」
流れ星が流れると。
なぜか、切ないような。
それでいて、嬉々としたような感覚に捕らわれるのは、物心ついたときから。
「夜って好きv」
いいつつ。
ネックレスの形にしている石を夜空にかざす。
こうすると。
まるで、石そのものが、銀河の煌きに見えるのである。
ミリーがいつものように。
そんなことをしつつ。
ベットの端に座りつつ。
窓から外を眺めていると。
シュン・・・・。
「あれ?流れ星???」
それとは少し違い。
それは、くいっとまるで何かを探しているようにとじくざくと動いている。
「・・・・何だろ?」
よくよくそれに注意を向けると。
それは。
「え・・・・え・・・ええええええええ!?」
くいっ。
向きを変えて。
ミリーのいる子供部屋にと向かって、光の球・・・といっても。
蛍よりも少し大きいくらいの大きさであるが。
野球ボールと同じか、それより一回り小さいか・・といった光の球であるが。
それが、ミリーの方向にと向きを変えて一直線にと進んでくる。
普通なら、パニックになるであろうが。
なぜか。
ミリーは落ち着いた気持ちで。
「あ・・・・何かくる。」
その程度の気持ちで。
のんびりと近づいてくる光球を眺めていたりする。
やがて。
その光に。
ミリーの来ているネグリジェの色がくっきりと照らし出されてゆく。
淡いピンク色の多少レースも入った、女の子らしい服装。
シュウン・・・・・。
「・・・・・きゃぁぁ!」
―――――ビダン!
「・・・・あ、ぶつかってる・・・・。」
窓からまるで、何かを見つけたように。
急いで入るように見えた光は。
そのまま、止まることなく。
そのまま、まっすぐに部屋を進み。
―――本棚にとぶつかって、そのまま、ずり落ちてゆく・・・・・・。
ひく・・ひくひく・・・・・。
ふと見れば。
光はすでに薄くなり。
まるで、虹というかオーロラの色をしている羽を四枚もっている小さな女の子が。
頭にこぶをつくって。
ひくひくとうごめいていた。
「・・・・・・・・・大丈夫?」
覗きこむミリー。
ふと。
その小さな女の子が目を開ける。
・・・・・・どこかで見たことのある、その漆黒の瞳。
目が合うなり。
「姫様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
がばぁぁ!
そのまま、服にしがみつかれる。
「え・・え?・・・・・?だぁれ?」
キョトンとするミリー。
「う・・・・・(汗)私ですぅ!!!!
いきなりいなくな・・・あら。姫様・・・・。・・・・・・記憶封じておられるし・・・・。」
ぶつぶついい始めるその小さな女の子。
「?????????もしかして、この石の精霊?」
ぴらり。
手にもっていた石を掲げるミリー。
この子から感じる気配は、紛れもなくこの【石】と同質のもの。
「えっと・・・・ファー?」
ふと、何気なくもれたその言葉に。
「姫さまぁぁぁ!うわぁぁぁん!」
なぜか。
そのまま、すがり付いて、しばらく、
感激の涙を流しているその小さな羽根の生えている女の子は、すぐに落ち着きを取り戻し。
「・・・・まったく・・・・。完全に気配を隠してこんなことしてらっしゃるとは・・・」
潤んだ瞳でひたりとミリーをみる。
「?」
何か大切なことを忘れているような気もするが。
「まあまあ、細かいことは、気にしないで。ね。ファー。」
なぜか。
この子の名前が、ファーである。
というのは、聞いてもいないのに、ミリーは確信がもてている。
「・・そうですよね・・姫様は・・・どこまでいっても・・そうなんですよね・・・・。それでこそ姫様なんでしょうけど・・・。」
ぶつぶつぶつ。
しばらく何か小言を言っている精霊、ファー。
「ふわぁぁぁ・・・・・。」
夜も遅いので、あくびがでてくる。
「とりあえず、今日はもう寝るから・・・・。お話・・・あしたにしよ・・・・おやすみぃ・・・・・・」
ぐぅ・・・・・。
パチン。
横になりつつ指を鳴らす。
それだけで、部屋の電気が一瞬にして書き消えてゆく。
かなり寝つきがよく。
そのまま、爆睡してゆくミリーの姿。
ゆら・・・・。
しばらくのちに。
ふと、目覚める『ミリー』。
『よくわかったわね。ここが。フェアリー。』
いつもの口調。
「かなり捜しましたよ・・・・。また別の世界に行かれているのではと・・。心配したんですから・・。」
その口調にほっとする。
『まあまあ、ここの両親・・かなり純粋な願い。もってたから。それを聞き届けるのも私の役目だからね。』
にっこりと笑うその青い瞳の中の黒い瞳孔は、ほのかに金色にと光っている。
そして、神々しいまでの近寄りがたい雰囲気をかもし出していたりする。
「・・・・それは建前というものでは?姫様?」
『ふふ。細かいことは気にしないの。とりあえず、私は・・・しばらく、このままでいるつもりだから。了解?』
悪戯っぽく笑いつついわれる言葉には、逆らえない。
というか、逆らう気も毛頭ないのであるが。
「分かりました。では・・何とお呼びしますか?」
さすがに。
ここは。
正確でなくとも、『彼女』のことを知っている。
それゆえに。
なるべく、面倒なことは避けたい。
ファー・・・フェアリーの言葉に。
『私の名前。ここでは。ミリアム=フィラ=ノクターンだから。ファーの好きなように呼んでいいわよ♡』
紡ぎだされるその言葉は。
実は、ファーにしか聞こえていない、凛とした声。
「では、フィラ様・・・とお呼びします。それでいいですか?」
『分かったわ。とりあえず・・・意識・・・・閉じてるから・・・・・。じゃvvいつものようにあとはよろしくvv』
すっ。
そのまま目を閉じ。
そののまま再び横になる。
そこには。
先ほどまでの雰囲気はどこにやら。
そこに眠っているのは。
ただの、六歳の女の子。
ただそれだけの存在―。
「何かないように、常になるべく側にいましょ・・。」
こういうとき。
自分が何であるのか。
それを知られずに過ごすのが、いつもの『彼女』のやり方。
― ならば。
自分はそれに従うのみ―。
「とりあえず、一度、本体に戻りましょう・・・・。」
スッ・・・・・。
そういうが否や。
姿は、まるで蜃気楼のように。
ミリーが胸につけている。
神秘的な色合いをしている石にと姿が吸い込まれてゆき。
そこには。
始めから、何ごともなかったかのように。
いつもの子供部屋の様子が。
月明かりに照らされていた。
-続くー
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あとがき:
薫:フェアリーvv登場vv
知っている人は、知っているvvこのフェアリーvv
まあ、スレイヤーズで、かなりすみれちゃんと、このファー・・・。
使いまくっているからなぁ・・・(爆!)←お゛い(笑)
次回から、学園生活偏♪(なのか!?そーなのか!?)
それでは♪
また♪