遥かなる記憶の彼方に・・・

透明なテラスから、太陽の光が注ぎ込む。
中からは、外が透けてみえるが、外からは、ただの煉瓦。
広々とした空間に、その中央に設けられている数個のテーブル。
その一角に。

「ええ!?そうなんですか!」
目をきらきらとさせて、話を聞いているルビー。
この星の代表者の長女でもある。
真紅の髪と真紅の瞳がきらきらと輝く。
「やっぱ、本当にいるのよねぇ。あの御方って・・。」
うっとり。
目を潤ませながら。
「でも、あこがれちゃうなぁ。そんな人だったら。何もかも思い通りにできるんだろうし。」
ルビーが話しの途中にそんなことを言っていると。
「・・そうかな?案外、退屈かもよ?」
ふと。
今まで、ケーキをパクパクと食べていたミリアムが口を開く。
そんなミリーの様子に。
「どういうことだい?お嬢ちゃん?」
このあたりを管轄している支部長であるクォーツが問いかける。
さわさわさわ。
透明な壁の外では、風で木々がそよそよとなびいている。
「今の話からすると。だって、組織を挙げて、保護しようとしてるんでしょう?
   そんなの思い上がりじゃない?私だったら・・・・自分のために、無駄な命を捨てる。なんていやだけどな・・。」
「な゛!?無駄とはどういう!?」
クォーツがその言葉に一瞬叫ぶが。
「どういう意味かな?聞かせてくれるかい?」
にこにこと。
クォーツの兄であり、彼の長官であるクオレュがその言葉をさえぎって。
じっとミリーをみつめる。
「え?だって、そうでしょう?話からすると、この宇宙そのもの。
  そんな人というか存在をただの一存在が、どうこうできるはずないし。
  それを保護しようなんて。お門違いもいいとろなんじゃあ?」
ずずっ。
紅茶をのみつついうミリー。


― あのねぇ・・はぁ・・・。何回もいうようだけど。この私に護衛なんていらないってば・・・・。
  私は死ぬようなことはまずないから。本質的には私のこと、理解してないわね? ―


資料に残っている彼女の言葉。
その映像があるからこそ。
彼らは、世界の成り立ち・・つまり、彼女が誰であるのかを知っている。
そして、彼女が、どのような存在だ。
ということも。

ふと。
上層部に行けば、必ずといっていいほどにみせられる、トップシークレットの機密事項。
それを。
さらり。
と、この目の前の少女は同じようなことを言っているのである。
「え?ミリー?そうなの?あの宇宙の姫って。世界の全てを創り出した創造主でしょ?」
「え?だって、今の会話から、そう私は捉えたけど?」
「ええ!?私、そんなのわからなかったわよ!?」
ミリーの言葉に、少しルビーが驚く。
??
「え??いいました・・よね?」
きょとん。
としているミリー。
「い・・いや、言ってないが・・・。」
「???」
というか。
自分達は、今の会話の中で、そんなに詳しくは話してはいない。
ただ。
ルビーが。
『伝説の姫って本当にいるんですか!?』
と、好奇心旺盛に聞いてきたので。
いる。
と答え。
そして、彼女が、この世界を創り出した張本人。ということしか話してはいない。
まあ、このあたりは、世界創造の神話にも語られていることなのだから。
まず、誰もが御伽噺の一貫として、そのことは知っている。
そう。
ただ、詳しくは話していない。
伝記にあるようなちょっとした話だけ。
それで。
でも、この目の前の少女は・・・・。
普通、あの伝説を知っていて。
まず、宇宙空間を創り出した。
と、結びつけるものはまずいない。
勘のいいものはわかるであろうが。
でも・・それでも。
そして。
気になるのは、先ほどの光。
もしかして・・・この子?
何らかの・・・・。
ふと。
彼の脳裏に、その可能性が浮かぶ。

「そうだ!連邦平和組織に将来、入ってみたいって。君、言ってたよね?
  じゃあ、今、ここで、差しさわりのない。この前の試験、受けてみるかい?
  どのようなテストがあるのか知るだけでも。結構役にたつんじゃないかい?」
がさ。
ちょうど。
ここに参加する前に。
この前行われた入試テストの問題を、今、ちょうど持っている。
そして・・・。
がさがさと、懐から、小さなパソコンを取り出す。
携帯用のパソコンを。
「ええ!?どんなのかやってみたい!ね!ミリー!」
「あ゛~・・・・。ルビーは言い出したら聞かないから・・。」
そんな幼馴染をみつつ、苦笑するミリー。
その金色の髪が、光に照らされてきらきらと煌く。
「ちょ・・長官!?」
クォーツの言葉も聞こえないように。
そのまま無視して。
「じゃあ、二人でやってみればいい。なぁに、本当に受けるわけでなく。どんなのか一回、経験することも、勉強だよvv」
にっこりと二人に語りかけるクオレュ。
「ちょ!!?」
止めようとするクウォーツに。
ぼそぼそぼそ。
耳元でささやく。
「いいか、あの話だけで、あそこまで理解できるとは。
  只者じゃないぞ?もしかしたら・・先ほどの光に何か、関りがあるやも・・いや、ひょっとしたら・・。」
「!?まさか!?」
ありえないことではない。
何らかの関りをこの子がもっていても。
確か、この子は。
捨て子でありながら。
あらゆるネットワークを使っても、その親が現れていない。
いや、見つかってすらもいない。
さらに不可思議なことに。
遺伝子情報が。
・・・同じなのだ。
ノクターン夫妻と。
かなりの確率で。
血のつながりのないこの子が、そんなのをもっている。
それだけでも、まあ、ごく稀に、そんなこともあるのは知っているが。
偶然、というにはあまりに出来すぎているこの偶然。
「あの子の方に渡したのは、初期のと。それと、難しい上層部の試験もいれてある。」
ぼそぼそぼそ。
ひそひそ話をしているその横では。

「うわぁ!!感激!って・・・・全然わかんなぃぃぃぃ!!!」
ぽち。
開いてみたはいいものの。
初期の問題は、ルビーにも分かったものの。
その、千問に近い量の始めの問題で悲鳴を上げているルビー。
かきかきかき。
「・・とりあえず、試験の鉄則。」
何か書いておく。
それに、こんな問題なんだ。
と、
初心者向けの筆記試験の内容をみつつ。
「うーん・・私には無理かなぁ・・。」
「ほらほら、いきなり挫折してどうするのよ?ルビー?これは、ただの遊び。今から、猛勉強でもすればいいでしょ?」
あまりの問題の難易度の高さにまだ、
十歳にもなってないルビーは根をあげている。
まあ、ルビーはミリーと同い年であるがゆえにそれは当たり前ではあるのだが。
自分も、大きくなったら、入りたいと思っている組織。
「そういう、ミリーはどうなのよ?」
ひょい。
覗きこんだその先には。
・・・・ピッシリ。
これでもか。
問いわんばかりに、すでに問題は埋め尽くされて。
第何弾目かの、問題集にと取り掛かっていたりする。
「ほらほら、こんなの直感で、何かかいとけばいいんだって。 いい、勉強になるし。」
どのような問題が、試験にでるのか。
それが分かっただけで、機関に入りたがっているものにとっては、かなり進展となる。
「・・それもそうね。とりあえずは、これ、遊びだし。」
ミリーに励まされ。
かきかきかき。
幻の紙に回答を書き込んでゆく。
これは。
立体映像に映っているその場所に。
専用の鉛筆を使うことによって。
それに問題の回答が書き込まれ、機械に保管される。
といった代物。
つまり、二人は。
立体映像のテスト用紙に、回答を書き込んでいるのである。

「はい!そこまで!」
決められた時間で区切るクオレュ。
「どう?感じはつかめたかい?いやあ、我々も、新たな人材育成には、惜しんでないからね。
   まだ幼いのに、興味があるっていってくれた。おじょうちゃん。少しは将来の役にたったかな?」
ぽんぽんぽん。
ルビーの頭をぽんぽんと叩くクウォーツ。
「はい!とっても!」
よおし!
「よぉし!駄目もとで、両親説得して、駄目でもともと!だめだっていったら、家出してでも目指せ!銀河連邦局就職!!」
一人。
ガッツボーズをとるルビーに。
『い・・いや・・それは・・・・。』
家出は困るんだけど・・・。
そんなことをつぶやいている二人。

「もし、そのときは、ミリーも一緒に受けようね!」
「え・・?」
「いいよね!」
「う・・うん。」
こんな時のルビーは。
いいというまで、言い続けるのがわかっているから。
とりあえず、うなづいておくに限る。

・・リー、何処にいるの!?ミリー!?
会場から、呼び声が聞こえてくる。
ふと。
「おっと、かなり時間がたってたね。ほら、ご両親が心配してるみたいだね。」
時計を気にして、休憩室の外をみる。

「ミリー!何処にいってたの!?」
姿が見えないので、捜していたミリーの母親マリア。
ミリーの姿を、この休憩室に入っていった。
という証言のもとに。
とてててっ。
急ぎ足で、室内にと入ってくる。
「あ!!母様!あのね!お話し聞いてたの!ね!ルビー!」
「・・え?」
そういう子供の言葉に。
みれば、そこにいる大人二人は・・。
「ま・・まあ!?支部長様?!内の娘が何かいたしましたでしょうか!?」
そこにいるのが、このあたりの支部長、クオゥーツというのに気づき。
驚きの声を上げているマリア。
「いえいえ。誘ったのは、我々ですし。」
マリアの言葉に。
二人の頭をなでている彼ら。
「あのね!叔母様!私達、支部長達から、機関の入試テスト、ためしにやらせてもらってたの!」
ルビーの言葉に。
「ほぉぉぉう、すると、まぁだ、あきらめてないのかねぇ?家のお姫様は・・。」
ふと。
マリアの後ろから声が聞こえてくる。
茶色の髪と紅の目が印象的であり。
似合わないのに、口ひげなどを生やしているその男性。
「・・・げ・・(汗)・・パ・・パパ・・・。」
「まったく。このお二人はお忙しいというのに。何をやっているんだか。いや、申し訳ありません。」
ぐい。
「ちょっ!?痛いって!!パパ!」
ルビーを腕をつかみ、頭を下げさせているのは。
ルビーの父親であり、この星の責任者ルピス。
「いやいや、お嬢さんは、もしかしたら、将来、我々の同士になるかもしれませんし。」
クオゥーツの言葉に。
呆れ顔で。
「お前、まだそんなことをいっているのか!?お前は、この星を!」
「そんなの、妹もいれば、弟もいるじゃない!私は好きなことをやりたいの!」
ギャーギャーギャー。
「あーあ・・まぁた、始まった。ルビーの親子喧嘩・・・。」
その様子を。
ただあきれつつ。
ミリーは眺めていた。



ピピッ。
「何何?時間が有るときでいいから、採点すべし・・か。急がなくてもいいわよね。」
ピッ。
送られてきたデーターをすぐに処理せずに。
そのまま、急ぎの作業をこなしてゆく。


「何をもっているんだ?クオゥーツ?」
見慣れない品物を手にもっているクォーツに聞いているクオレュ。
用意が出来た。
というので、帰路に戻る道すがら。
「・・これ、ルピス殿から借りた。・・翻訳装置。・・・面白い物質が使われているぞ?」
苦笑しつつ。
「もしかしたら、兄さんの意見・・・まんざらじゃ・・ないかもしれないよ?」
宇宙船の中で。
そんな会話をしている二人の姿がそこにはあった。




トントントン。
「あ・・あの?ルビー?」
ドサッ。
大量に積まれた資料の山。
「こうなったら悔しいから、何がなんでも。
  最年少で、試験に無理いって参加して!合格してやるぅ!在住員という手もあるんだから!」
いいつつ。
ドサササ。
再びつまれてゆく本の山。
無事に、パーティも終わり。
次の日のこと。
ルビーの家に遊びに来ていたミリー。
憤慨したような様子のルビーに。
「・・・かなり絞られたわね?」
はぁ。
いつも、とばっちりが私に向かってくるんだけど・・。
などとため息をつくミリー。
「もっちろん♪ミリー、付き合ってくれるわよね♡私の勉強に♪」
くす。
「はいはい。こうなったら、とことん付き合いますってば。」
ま、やる気があるのはいいことだし。
うん。
そう思いつつ。
ルビーと一緒に、世界の概念の基礎を勉強してゆく。







バッタァァァァン!!!
「長官!あれ!!あれあれあれあれ!」
「落ち着け!」
いきなり、扉が開かれて、数名のものが真っ青になっている。
「何があった?」
クオレュの言葉に。
「あれ!この前、長官たちが、送ってきた、あの試験をやった存在!誰なんですか!」
一人が息を切らせつつ問いかける。
かなりあわててきたようで。
未だに、髪の毛が際立っており。
その手には。
採点用の特殊器具が握られていたりするが。
「どうしたというんだ?」
あまりの様子に。
少し疑問を感じながら。
「あれは、あの星にいる、ノクターン家の長女と。あの星の代表者の長女がやったんだが?
  将来、ここに入りたい。と一人がいっていたのでな。じゃあ、今から少しやってみるか?というので。」
腕を机に組みつつ。
淡々というクオレュに。
「・・・・・・・満点です。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は??」

一瞬。
彼らが何を言っているのかがわからなかった。

「満点なんです!!すべての基本となる文字の羅列も!
  様々な言葉で、しかも神聖文字で書かれていた上層部特有の問題にも!
  すべて、満点なんです!!こ・・こんなのありえません!!」
ガタタッ!!
「・・・・・な゛!?」
思わずその言葉に耳を疑う。
「・・・・本当か?」
自分でもわかる。
声が震えているのは。
「しかも、作文問題の定義。『世界とは何か』という問題においては・・・。」
ざっ。
その文章のコピーが、目の前に並べられる。
上層部にしか知られていない。
いや、彼らにも知っていないようなことが書かれていたりするのは、これいかに。
「こ・・こんな・・問題で満点を取るなんて・・何なんですか!?その子は!?」
「・・・私が聞きたいわ!」
だが。
これで少しはハッキリした。
「・・・・何でもいいから書いとけばいい。そう言っていたんだが・・あの子は・・。」
これを解いていたときの二人の様子が目に浮かぶ。
「あと・・・・ご依頼がありました。あの物質。中に組み込まれていたあの原子は・・。
  あの星というか銀河にも存在しないものだそうです。」
というか、制御が難しくて。
未だに、誰も制御を仕切れていないという、一般でいわれている、『真空原子』。
それが、あの小さな翻訳機械の中で使われているのである。
つまりは、星などもない、空間に漂っている物質。
暗い空間をかたどっているといわれているその物質。
「・・・・あの原子を使いこなしているとは・・。あれを創ったのって・・誰なんですか!?
   それは、すごい歴史的なことですよ!聞いているんですか!?長官!?」
部下の言葉に。
窓の外を眺めるクオレュ。
「・・・ひょっとしたら・・・・。何かの手がかりになるのかもしれないな・・。
  あの子は・・・あの御方・・・・『宇宙の姫』の・・・・。」
宇宙空間を眺めつつ。
つぶやいているクオレュの姿がそこにはあった。

                                         -続くー

    


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   あとがきもどき:
         薫:・・・・もしかして、しょっぱなから正体・・ばれてるんじゃ・・(汗)
         姫:あら♪それはないわねvv
           ただ、関りがあるんではないか?とは怪しんでいるけどv
         薫:・・・・・・ま・・・・まあ。
           今までに伝わっている事例からでも・・・。
           まさか、人間の子供になっているなんて・・。
           分かりませんけどね・・・・・(汗)
         姫:でも、あの程度の問題♪誰でも満点取れるってvv
         薫:・・・それは、すみれちゃんだから・・・・(汗)
           と・・とりあえず。
           次回。よーやく、フェアリー、登場vv
         姫:ついでに、私の妹の登場シーンvv
         薫:・・無意識に体質・・・治さないでくださいよ・・・・(汗)
         姫:だって、欲しかったんだもんvv姉妹vv
         薫:・・・・・・・・・・・・・・・・・。
            ・・・・ま、いいですけどね・・・・。
            医者・・・かなり驚いてますが?(汗)
         姫:いいのよvv奇跡だって、それで納得しているしvv
         薫:・・・・そーいう問題でも・・・(汗)
         姫:とりあえず。
           あの子と、私は。八つ。離れているのよねvv
         薫:・・・も、いーです・・・・。
            ミレアもかわいそ・・とと。幸運というか、何というか・・・・(汗)
         姫:それでは、また次回でねvv
         薫:・・・なのです・・・(汗)