虹雫の涙 第4話  ~伝説の国~



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・何なんじゃあ・・これは・・。」
思わず、唖然としている服部。
「だからいっただろうが・・服部。覚悟はしておいたほうがいいって・・。」
コナンの言葉に。
「・・・・・夢?」
思わず、つぶやいている哀。
「・・・・け・・・・警部・・・。」
「まあ!素敵!」
唖然としている、毛利と、目暮警部の横で。
目を輝かせて、外をみている目暮婦人。
「・・・・すげぇぇぇぇぇ!!」
「きゃぁぁ!おとぎ話の中みたぃぃ!」
「というか、まるで、映画のワンシーンですよ!これは!」
口々にいっている、元太・歩美・光彦。
「・・・・ねえ、快斗?」
同じく、呆然としている青子。
「あ・・・ああ・・。」
ごくり。
「・・・・こんな国が・・実際にあったとは・・驚きだぜ・・。」
外の風景をみつつ、唾を飲み込んでいる快斗。


彼らの視界の先には。
ふわふわと。
宇宙に向けて、発着を繰り返しつつ。
噂、あるいは、写真。
そーいったものでしか、みたことないような不可思議な物体。
― 未確認飛行物体。
曰く、UFO。
それだけならまだしも。
普通の今、自分達が乗ってきた飛行機も。
何か普通と違い。
― 空中に浮かんだまま。
発着タラップに接続しているのは、どういうわけか。
そして。
窓の外から見える景色は―。

霧で覆われていたというにも関らず、透き通るような青空と。
その、空を飛び交っている。
・・・どうみても、羽をもっている、生き物や。
どうみても、人より、小柄な生命。
挙句は。
人とは異なった形をしている生き物の数々。
はっきりいって、映画のワンシーン。
どこぞの、SFやファンタジー映画に必ずでてくるような。
そんな生き物が、彼らの目には飛び込んできていたりする。
空港もまた空の上にあるらしく。
そして。
その足元からは、下界の様子が手にとるようにと見渡せたりする。
高所恐怖症である人もまた。
おもわずその風景に見とれてしまい、その恐怖がでないほどに。
完全に設備されている、―空港。
そして。
なぜか。
どうして、船なども空を渡ってやってきているのやら。
普通、船で、ここに迷い込んできたり、やってくる人々は。
まず、そのことには気付かないが。
ここにたどり着くまえには。
― 空を漂っている…という事実には。

「皆様、長旅、ご苦労様でした。ようこそ。我らが王国、ミドガルド王国へ。」
いいつつ。
にっこりと微笑んでいる、マーキュリー。
その青い髪が周りの景色に溶け込んで。
まるで、この女性もまた、人でない錯覚を覚え起こさせる。


バミューダ沖に存在するといわれ。
今だに謎のベールで包まれている、王国。
かつての、世界大戦のときにも。
その国の存在を知ったものはいない。
いや、知ってはいても。
誰もたどりつけずに侵略もされなかったという。
衛星写真にも。
その、深い霧と、雲の影響で。
一度たりとて、映りこむことのない。
― 神秘の国。
唯一【戦争】という言葉を。 
今まで体験したことのない―国であろう。
それも、一人の女王の手によって。
ずっと、治安が守られていたりする。
そういうのも。
国際平和会議に。
初めて、ここの国から使者が参加して。 
初めて、世界の、この地球の人達は。
本当に実在しざえるのだ。
と、知っている現状なのであるからして。


― 来たければ、拒みません。私達の王国には。でも。それなりの、資格をもってなければ。
   見つけることも、入国することも。絶対にできませんので♡ ―


そう、各国の指導者や、代表者は。
初めて、この国のことを聞き、知った。
世界大戦が終わった後の平和会議。
その言葉どおりに。
この国を目指したものの ―。
辿りつけた、指導者などは。
数が限られていたりする。
ほとんど。
辿りつけないままに霧の中で、右往左往しつつ。
元の場所に、つまりは、出発地点にと押し戻され。
そしてまた。
巡りついた人々もまた。
国を出たとたん。
ぼんやりと、その思考の奥に。
その景色などを思い出すことはあれはすれど。
・・悪意ある存在に話そうとすると。
綺麗に、そのことは記憶から掻き消え。
いや、閉じ込められてゆく。

そんな国であるからこそ。
蓬莱。エデン。
様々な伝説が生まれ。
各国に、伝説として残っていたりするのがこの現状の。
― 伝説の国。
― ミドガルド王国。

「すっごぉぃ・・・。
全然かわってないわね。ここも・・。」
蘭が思わず、溜息をつく。
「蘭ちゃん・・・驚かないの?」
和葉の言葉に。
「だって、昔、新一と来たことあるし。」
いいつつ。
懐かしそうに外をみる。
「・・・・全然変わってない・・。」

変わったのは、自分。
こんなにも、新一を好きだと自覚している自分。
あのときは、ただの、友達。
幼馴染。
仲のいい男の子。
そして。
今。
その新一は。
― 行方不明。
いや、完全に連絡が取れない。
というわけでもない。
よく、自分に送られてきた、専用の携帯電話に新一から、電話が入る。
でも。
― 声だけ。
・・・・姿がみたい。会いたい・・。
その思いは。 
今だに。
あの、ランドにての、デートから数回しか果たされていない。
あのとき、一体、何があったのか。
おそらく。 
あのとき。
厄介な事件に巻き込まれたのだろう。というのは、確信している。
蘭のつぶやきに。

「本当に全然かわってねぇなぁ・・。」 
コナンのつぶやきが耳に入る。
「― え?」
見れば。
懐かしそうに、見ているコナンの姿。
その姿が。
太陽の光に照らされて。
「・・し・・新一?」
コナンでなく、新一の姿に見える蘭。
まあ、事実、新一なのだが。
「あれ?どうしたの?蘭姉ちゃん?」
ふと、振り向く姿は、いつものコナンの姿。
「う・・ううん。何でもない。」
・・気のせい・・・よね。
今までも、何回か、コナン君が、新一だ。と思ったことがある。
でも。
その思いは、ますます強くなっていく。 
そんな思いを募らせていると。
新一が目の前に数回現れた。
でも。
考えれば。 
― 誰かが、コナン君に変装して。二人一緒にいれば ―。
その思いは、消えることがない蘭。
蘭がそう思っていることは…コナン…新一は気付いていない。
ふと。
視線を変えると。
「―― え?」
その目に映ったのは。
みたことのない女の子。 
歳は、自分達と同じくらいか。
でも、その外見は・・。
コナン達のクラスメートに混じって。
どうして、高校生くらいの女の子の姿が見えるのか。
「・・ええ?」
ごしごし。
目をこすると。
そこにいたのは。 
コナンのクラスメートの哀。
・・・・気のせい?
蘭は不思議におもいつつ。
「コナン君も、来たことがあるの?ここ。」
とりあえず、コナンに問いかける。
「え・・う・・うん。」
あ・・・あっぷねぇ・・。
もう少しで、蘭と一緒に来たじゃないか・・と。
言いそうになったぞ・・俺。
内心、冷や汗を流しているコナン。

「おいおい。本当に現実なんか?ここは?」
平次の言葉に。
「でも、こんな所に、新婚旅行でこれたら。素敵よね。」
「あ、和葉ちゃんも、そう思う!!?」
きゃいきゃいと。
話題を変えて。
話しこむ、蘭と和葉。

「すごいですよ!でも、何で、こんな国が有名にならないんですか!?」
目を輝かせて。
隣にいる、ジュピターに聞いている光彦の言葉に。
にっこりと。
「我々は、極力。文明には、関らないようにしていますから。干渉は、避けているんです。
  その存在の文明などの、発展の、妨げにもなりますからね。」
「・・・どういう意味なの?」
その言葉に、首をかしげている歩美。
「まあ、大きくなれば、理解できますよ。」
そういって、軽く微笑む。
「・・・あ゛~・・・・。確かに、こりゃ。正式に目立ったら・・・大パニックだなぁ・・。」
どうみても。
地球外生命体がうろうろと歩いている、この空港。
それに。
どうみても、御伽噺の、まるで精霊や妖精の姿が。
ところかしこに見受けられている、この風景。
さすがに。
トリック・・・。
と言い切れるものではない。
小五郎の言葉に。 
「ふむ。確かに。この国が、正式に、誰でも、入国できるようになったら。
  ・・・・人類の概念、ひっくり返るのは必然ですな。」
いって。
気丈に振舞っている、平蔵。
「きゃぁ!あなた、こんな素敵な国に一緒に連れてきてくれて。ありがとね♡」
いいつつ。
夫に抱きついているみどり。
そんな様々な思惑とは裏腹に。
 
「それでは、皆様。王宮にご案内いたしますわ。― 皆様の泊まる場所は。王宮の一角となりますので。」
かるく、後ろで、長い髪をまとめている女性。
その、漆黒の長い黒い髪に、黒い瞳。
まるで、黒い水晶のごとくに。
艶やかな髪をしている女性が彼らを出迎えてくる。
「申し送れました。私。ご案内役を仰せつかりました。プルートと申します。」
いって。
その場にと膝まづく。
「あ・・ども。」 
思わず、全員が、同時に言い。
「それでは、ご案内させていただきますわ。」

その言葉とともに。
ふわふわと。
まるで、空を歩いているような感覚に捕らわれつつ。
飛行機を降りて。
そのまま、出口にと案内させられてゆく彼ら一行。


「すっごぉぉぉぉぃぃぃ!!!」 
「ほほぉぅ、この、動力は、何ですかのぉ?」
はしゃぐ子供達に、好奇心丸出しの阿笠の姿。
彼らが案内されて乗り込んだのは、ちょっとした乗り物。
しかし。
運転手など誰もいない。
空を飛ぶ、車のような乗り物。
しかも。
飛んでいるというにも関らず、一切揺れなどなし。
「この国は、すべて、精霊の力と。この惑星のもつ力にて。動力は保たれております。」
説明するプルート。
数台に別れて。
彼らは。
この国の中心にあるという。
宮殿、アシュイアパレスにと移動してゆく。

「おおう!探検しようぜ!探検!」
元太の言葉に。
「そうですね!しっかりと写真をとって。自慢しましょう!」
そういう光彦。
「ああ、それは無理です。写真などは取れますが。
   ― 見えない人には。何も映ってないようにしか、映りませんし。
   悪意ある人などに見せたとたん。写真などは、ネガから、真っ白にと成り果てますので。」
さらり。
メイドが彼らに注意をしている。
宮殿につき。
とりあえず。
各自の部屋を割り当てられ。
それが、かなり一人当たり、大きな部屋。
歩美などは。
お姫様みたい!
と喜んでいたりもするが。
荷物を部屋にと置いて。
用事のない、子供達が、まずすることといえば。
やはり。
未知なるものにの憧れの定番。
― 冒険にしか他ならない。


「なんだ、コナンと哀はこないのか?」
元太の言葉に。
「なんか、哀ちゃんも、コナン君も。後で見るからいいって。」
そういって。
少し寂しそうにしている歩美。
・・・何か。
私の分からない話をしてた・・。 
コナン君と哀ちゃん・・・。
そう心で思っているのだが。
口には出さない。
「まあ、いっか!さあ!冒険の始まりだ!」
「そうですね!」
「あああ!まってよぉぉ!」
ばたばたばた!
廊下を走りつつ。
この廊下自体もまた。
まるで、水晶で出来ているかのごとくに透き通っている。


カタン。
「どうぞ。」
「あ、どうも。」
うう・・・・。
なんか、落ち着かないなぁ・・。
両隣を見れば。
そこに。
彼にとっては苦手にあたる、彼等がいたりする。
「あ。私、ちょっと・・・。」
「あ。私も。」
「うちもいくわ。」
いって。
女性陣が立ち去ったあと。
おもむろに。
コナンが口を開く。
「・・・なあ、なんで、お前がいるんだ?快斗?・・いや、キッド?」
ひたりと。 
快斗を見つめていうコナン。
「そーいや、そーだな。」
相槌を打っている平次。
「ふ。下手な嘘はつかねーよ。俺のとこにも、招待状が届いた。それだけのことだしな。」
ひらひらと。  
手紙をぽん!
と、マジックの一貫として取り出している快斗。
「へぇ。まさか、お前の招待が書いてあった・・とかかいな?」
「う・・そ・・そういう貴様らはどうなんだ?え?コナン・・いや、工藤新一、それに、服部平次?」
にやりと。
苦笑を浮かべつつ快斗が問いかける。
「まあいいさ。お前は、現行犯で捕まえる。― まあ、以前、蘭のやつに対しての、礼もあるしな。」
そういうコナンに。
「せやなぁ。女を泣かせるのはいやだからなぁ。ってことで、自首せんか?」
再び説得していたりする平次。
以前。
正体を知ったときに。
彼等は、一応、説得を試みていたりするのだが。
だが。
彼が捜しているというか、彼の目的を知り。
― そんなものは、壊す!
という目的は。
同じ思いであったりする、この三人。
ある意味。
怪盗と探偵。
二つは敵対するもの同士であるが。
それゆえに。
互いの心も見えてくる。
しかも。
快斗は、コナンの正体を知っているのだ。
そしてまた。
コナンもまた。
快斗の父親が殺されたその裏には。
自分が求めていた組織があることも知っている。
とある事件をきっかけとして。
「俺だって、蘭と同じ顔の女、泣かすのはいやだからな。・・・何かたくらんでいるんだったら・・全力で阻止するぞ?」
コナンの釘付けに。
「おおこわ。・・と。」
あわてて、口をつぐむ。
「やば!」
「あわわ!?」

あわてて、姿勢を直し。
何ごともなかったかのように振舞うこの三人。
服部平次。
江戸川コナンこと、工藤新一。
そして、黒羽快斗。

『たっだいまぁ。』
ちょっと、席を外していた、女性たち三人。
青子、数葉、蘭が戻ってくる。

「なんや、えらくはやかったが。のこってんのとちゃうか?」
「・・・へ・・平次のエッチ!!」
「お、やっぱり、トイレかぁ。」
「あ・・・あんなぁぁ!あんたは、デリケートっていう言葉をもう一辺、勉強しなおせぃ!」
夫婦漫才を始めている、和葉と平次。
「まったく・・・。こんなやつほっといて。うちらだけで、周りみてこんか?」
平次をなぜか、スリッパでド突き倒してから。
ぱんぱんと手をたたき、和葉が、蘭と青子に話しかける。
「そうね・・コナン君はどうする?」
蘭の問いかけに。
「え・・えと。僕、ここにもう少し残ってる。叔父さん達の話しが気になるし。」
子供らしく答えているコナン。
「せやな。俺も。一体、何の話しなんか、ごっつう、気になってんのや。」
いいつつ。
うきうきと。
扉の向こうをみている平次。
「俺は、何か、気がのらねーし。」
ひらひらと手を振っている快斗。
「そ。じゃ、私達だけで。外にいってみましょ。」
青子の台詞に。
「そうね。じゃ、また後でね。コナン君。」
「うん。またね!蘭ねーちゃん!」
ぶんぶんと手をふるコナン。

― バタン。

 カツカツカツカツ・・・・。


足音が完全に遠のき。
「・・・・工藤・・・お前、子供のふり・・・そこまでするか?」
あきれていっている平次の言葉に。
「しゃ~ね~だろ?蘭に気付かれるわけにはいかね~んだからよ。」

そう。
気付かれるわけにはいかない。
それでなくても。 
自分の周りには。
奴等の仲間が、ひしめいているのを感で感じている。
しかも。
そのうちの一人は。
蘭の側・・高校の教師として。
まあ、それは彼の勘違いなのではあるが、実際は…
そしてまた、うち、一人は。 
以前、蘭の知り合いとして。
蘭は、彼がFBIだと思っているのだからよけいに危ない。
そんなことを思っている新一。
だが、真実は想像よりも残酷…といえるのかもしれない……
救いは、彼らというか、とある【彼女】をマークしていたFBIの活動…というべきか…


「それより、くぅぅ!気になるぜ!」
「ああ。」
「どーせ、例の一件だろ?」
目をきらきらとさせている二人に、冷徹に言い放ちつつ、扉に向かっていっている快斗。
「おい。キッド。・・・いっとくが。この国で、騒ぎなんか・・起こすなよ?」
「この状態で。どうやって、騒ぎを起こすっていうんだよ?」
よくよく見れば。
この宮殿にも。
やはり。
精霊なども生息しているのが、目で完全に見えている。
こんな状態で。
いつものマジックが通用するものか。 
それに。
快斗は。
― 虹雫の涙。
といわれている、不老の妙薬のその実体を、はっきりいって、知らないのである。
彼がここに来たのは【それ】目当て。
・・・どうしても、助けたい、子供がいるからこそ。
「あ・・お・・おい!」
「じゃな!」
いって。
ひらり。
窓から飛び降りている快斗。
その一瞬に。
工作道具を取り出して、変装を施していたりもするが。



新一たちがいる部屋のその奥。

 「・・・え?警備は・・いらない・・のですか?」
「ええ。無用ですわ。」
にこにこにこ。
彼等の前にいる、女性。
金色の髪の女性、ヴィーナスの言葉に。
「し・・しかしですなぁ・・。」
目暮が言いかける。
こつん。
「警備するだけ、無駄よ。」
「・・・・絵里!?」
小五郎と。
「妃弁護士!?」
目暮警部の声が一致する。
そこにいたのは。
小五郎の妻であり蘭の母親でもある、妃英里。
只今、別居中 ―。
その人物。
「な・・・なんで、お前が・・ここに?」
小五郎の言葉に。 
「あら、それは・・。」
英里の言葉に。 
「それは、私がお招きしたからですわ。」
かつん。
「へ・・・陛下!」
ヴィーナスが驚きの声を上げる。
『え?』
その声の方にと、一斉に振り向いている、服部平蔵・中森銀蔵・目暮警部・毛利小五郎。
この四人の姿。

 こつこつこつ。 
軽やかに響き渡る音とともに。
サラ・・。
その、長い銀色の髪が揺れる。
床についている、その長い髪は、頭の上で、お団子にセットされているものの。
その長く伸びた、銀色の髪を意図ともせずに。
薄い、ペールのようなマントを羽織って出てくる一人の女性。
その、透き通るまでの、青い、青い瞳が印象的。
そう。
その瞳は、この星を外からみたときと同じ色。
そして。
衣装の特徴として。
背中に、四枚の羽に見まごう、大きなリボン。
それがまた、
まるで、絵から抜け出た妖精のように。
その女性を人でないものだと、認識させるかのごとくに。
羽にみえているのはどういうわけか。
見た目完全に、【妖精か、人あらざるもの。】といった雰囲気をもっている、その女性。

「始めまして。お初に御目文字したします。私が、この王国の女王。セレーネ=エターニナル。と申します。
  皆様には、お忙しいところ。足を運んでいただきまして。恐縮しております。」
にっこりと。
まるで。
月が話しかけるようにでもあるような。
凛とした声が。
部屋にと響いてゆく。


しばらく。
その場にいた全員が。
出てきた女性、セレーネに、見惚れて。
我を忘れていたりするのは・・・仕方がないことであろう……


「・・・・ここが・・伝説の国・・・。」
ここを知らなければ・・・。
・・・・父さんも・・・母さんも・・・。
そして・・・・。
姉さんも・・・・。
すべては、ここから・・・・。
それを思うとやるせない。
事故死。
そう両親は聞かされている。
でも、分かっている。 
― 組織に殺されたのだ・・と。
昔。
姉から聞いたことがある。
― 父と母は偶然にも、この国にとたどり着いたことがある・・・と。
それゆえに。
組織の中枢にと引き抜かれたに過ぎないというのと。
おそらくは。
何かを拒んだがために、殺された。
ということは。 
今の、志保・・哀にはよく分かっていた。
「正式に正確に言うならば、ここを伝説にしたのは。この星に住んでいる存在たちよ。志保さん。」
ばっ!
いきなり、本名を呼ばれて。
はっと振り返ると。 
そこには。 
八、九歳・・いや、七歳か八歳程度。
どうみても、十歳以下の女の子がにこにこと佇んでいた。
・・・・気配・・・何もしなかったのに・・。
さいきん。
自分の身を守るべく直感が、平和すぎて薄れているのが怖く感じる。
そう思う志保とは裏腹に。
にこにこと笑っている、目の前の少女。
黒い髪に青い瞳。
その瞳孔の色は、まるで、漆黒の闇。
見ていると、まるで、宇宙の深遠の闇にと吸い込まれそうなほどに。
青い瞳と黒い瞳孔がまるで、神秘的に映りこむ。
艶やかな、漆黒の黒い髪を、後ろでポニーテールにして。
そして。
それを、紅いレースのようなリボンで、大きめの喋々結びで結んでいる。
それがかなり似合っていたりするのも。
何も違和感を感じさせずに。
一言でいえば。
― 美少女。
その言葉にしか尽きることがない。
「・・・誰?」 
志保・・哀の言葉に。
「私は、菫。宇空菫。・・・くす。」
にっこりと哀に微笑みかけるその笑みは。
どうみても。
子供の微笑みではないのだが。
なぜか。
その笑みは、哀に安堵感をもたらせて行く。
「す・・スミレ・・・さん?」
「そ~よ。で。この子が、ファー♡」
・・え?
見れば。
ひょこりと。 
肩の上にと乗っかっている、どう見ても、小さな妖精の姿。
「・・・ここって・・・一体・・・。」
ふと、本音が漏れる哀に。
「それより・・・ふふ。気付かないの?」
― え?
ふと。 
気付くと。
どういうわけか。
どうみても自分の視線が、少女を見下ろしているのは、どういうわけか。
「え・・え・・・ええぇぇぇぇぇ!!!!?」
くすくすくす。
「ここでは、人の創った、反発する作用なんて。ないにも等しいからねぇ。」
くすくすと笑っている少女。
「あ、でも安心してv人前では、貴女と、工藤君の周りの空気。調整してあるから。」
くす。
くすくすと、手を口にあてて。
笑っている少女の姿が哀の前にて見受けられていたりする。

哀は。
本来の姿。
歳は、十七。
薬の影響で、小さくなった、小学生の姿でなく。
元々の姿。
宮野志保の姿にと戻りかえっていたのである……。


                       -続くー



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 あとがき:
    薫:・・よっしゃ!スミレちゃん!登場!
      次回、新一も復活!!!(爆!)
      そして。
      スミレちゃんと女王からの依頼v(なのか!?そーなのか!?)
      そして。
      のんびりと、国で過ごすさわりをやって。
      快斗が、薬の真実を突き止めますv
      ではではvv

 
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