まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

いろんなサイトさんみてて、ネタ的投稿してる人もいたりするんだなぁ。
とおもってて、ふとおもったのが、メモにかきなぐってる完結してない(まて)
ラタ関係の小説さん。
ちょこっと、なら完結してない、ネタですよ~というのりでの投稿も大丈夫かな?
というわけで(どういうわけだ?)某所にとりあえず一つあげてみようかと。
…読む人がいたら、逆行ものさんもあげてみよう、とおもったり(こらこら
そういえば、ふとおもったんですけど、
ラタものでまともにかきあげてるのって、この話しだけ(こらこらこら)なんですよね…
あとはほぼ好きな場所をかきなぐってるものばかり、という…あはははは…
一つくらい、逆行ものとか、オールキャラものとかかきあげてみるかな……
あとがき、別話20(そろそろ打ち込み終わりに近づいてきている別話・・・)

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「よかった、皆無事だったんですね」
どうにか試練の魔物?だというものを撃退し、進むことしばし。
ふと、ロイド達にと声が投げかけられる。
「僕の本体がいるであろう場所みつけたよ。…それより、コレット。…その怪我、どうしたの?」
コレットの白い服が血にて紅く染まってしまっている。
どこにいっていたのかとおもったが、どうやら無事らしいことにほっとする。
いくら何でも自分の本体がしでかしていることで彼らが傷つく、というのは許容できない。
本当に、自分の本体はどうしてしまったんだろう、とつくづくおもってしまうのは仕方ない。
絶対に。
「そういえば、コレット、着替えるべきね。近くにどこか空き室でもないかしら?」
リフィルがたしかに、というようにそんなミトスの台詞に答え、コレットにと話しかける。
「それなら、そのあたりにありますけど…ほんと、どうしたの?どこか怪我したの?
  今の僕じゃ、完全なる回復術はあまり役にたたないけど……」
精神体、すなわち幽体でしかない以上、力をつかうことは精神力を使用する。
いくらラタトスクの加護があろうとも、本体と戦う前の消耗は避けたい。
もっとも本当に命にかかわる怪我ならばそんなことはいってはいられないが。
そういうそんなミトスに対し、
「もう怪我は治癒したから大丈夫よ。それより、あなたの本体がいる場所がわかった。
  って本当なのかしら?」
リフィルのそんなものいいに、
「あ、うん。この先に」
いって指差す先には大きな窓。
その先には無数の星がちらばる宇宙らしきものがみてとれる。
「そこからワーブできるはずだよ」
窓の手前にワーブゾーンらしき陣がみてとれる。
「うわ!?」
キッン。
ふと、その陣を調べようと、ロイド達が近づいたその直後。
何やら金属音のようなものがし、
直後、リフィル達の懐から何かが光となってたちのぼる。
それは一つにまとまり、別なる形を創りだす。
ふわふわと彼らの目の前にうかぶもの。
「これは…?」
それは四つのエンプレムのような何か。
戸惑いの声をあげるロイドに対し、
「それが、デリス・エンブレムだ」
「?」
どこかできいたようなそうでないような。
それゆえに、クラトスの説明にロイドが首をかしげるが、
「ミトスの城…ヴェントヘイムへと続く道をふさいだ鍵だ」
「へぇ。これがねぇ。俺様もどこにあるか、まではたどりつけてなかったけどよ」
クラトスとゼロスが何やらそんなことをいっている。
「ミトスが封印した、とは聞いていたが…お前達がそれぞれにエンブレムの試練に打ち勝ったゆえ、だろう」
それは所有者がミトスから移動してしまったという証なのか、それはクラトスにはわからないが。
しかし、かつてかの試練を乗り越えられたものにこそ与えられる、とも聞かされた。
「じゃあ、こいつがあれば」
「罠は無効化されるはずね。先にすすめるわ」
「よし、先を急ごう」
「つうか、すでに俺様達あれをもってたのに、どうしていきなりデリス・エンブレムの形になったのかね?」
「たぶん、欠片にしていたのが僕、だからじゃないのかな?僕の本体。
  僕の魂自体にそれ、加護を欠けていたも道理だから」
ミトスの気配をうけて、元の形にもどった、というのが一番説明としてしっくりくるであろう。
事実、そうなのだから嘘ではない。
その可能性というかその効果もラタトスクよりミトスは説明をうけて知っている。
ゆえに、ゼロスの言葉にミトスが苦笑しながらもいってくる。
さすがにこのあたりまでくれば、実体化しているのにも気力がものをいう。
気をぬけばすぐさまに実体化がとかれ、幽体のみとなってしまいそう。
正確にいえば精神体のみ、に。
今のミトスは気力にて精神体を実体化しているに他ならない。
それこそ魔族達や精霊達と同じように。
「そもそも、それって何なのさ?」
ロイドは意味がわかっていない。
「たしか、ミトスの心と空間をエターナルソードの力で繋いで創りだした鍵、とかいわれてたぜ?」
それはゼロスがそれとなくプロネーマから聞きだしていた言葉。
「エターナルソード。だからロイドには罠がきかなかったのね。
  ロイドのもつ剣にはエターナルソードの精神体がはいっているもの」
いまだにそれが実体化したのはみたことはないにしろ。
たしかに、ロイドの剣に宿っているのは事実ではある。
ゆえにリフィルとしても納得せざるを得ない。
真実は、デリス・エンブレムはラタトスクの、世界の加護、なのだが。
そこまでミトスも今説明する必要はないだろう、とおもい追加説明はしていない。
「しかし、まったくとんでもない仕掛けだったよね。あれは」
「デリス・エンブレムのことね」
しいなの台詞にリフィルがうなづく。
まさか、母の幻がでてくる、とはおもわなかった。
「あれは、おそらく、皆の心に巣食っていた負の感情が刺激されたんだわ」
「その通りだ。光と闇は表裏一体。闇を超えてこそ光になりえる。
  が、闇が深ければそのまま光は闇にと呑みこまれてしまう」
リフィルの言葉にクラトスがぽつり、とつぶやく。
「…目の前の相手が偽物だ、とわかっていても口車にのってしまう……」
心と感情、特に人は目にみえるものを信じようとする。
というより目に見える存在を率先して優先してしまうがゆえに過ちに気づくことがなかなかできない。
間違っていながらも突き進んでしまう。
そこに自制心というものを働かさない限りは。
「エターナルソード…すごい力をもっているのね。興味深いわ。
  ロイドはあれらの幻に巻き込まれることがなかったのですもの」
ロイドがもしも巻き込まれていれば彼はまちがいなく自分を見失っていたであろう。
人にはいいようにいってもいまだ、自分に関してはロイドはすぐに道を見失う節がある。
そのことにリフィル達は気づかない。
また、ロイド自身も気づかない。
「よくわかんねぇけど。皆がいなくなったときにはひやひやしたぜ」
「というか、僕としたらロイドが一人で勝手にずんずん先にいったときにどうしよう、とおもったよ。
  変な装置とか謝って触ったりして施設の自爆とかなったりしたら洒落にならないしね」
ロイドの台詞に記憶体たるミトスがいう。
「自爆…ね。この施設にもあるのかしら?」
「みたところ、ここは元々あった施設を改造してるっぽいから、何ともいえませんけど。
   たぶん、これ、僕が創ったのではないとおもいますし。証拠に古代エルフ語というか、
   ほら、壁にデリス・カーラーンの原語が刻まれてますし」
ここをかつて創ったのはラタトスクだ、という。
かつての惑星から移動するときに、彼らの拠点云々の話しになり、
簡単に創った、とも。
もっとも、かつて彼がいた、という惑星がまだ精霊も人も全てのものが共存している中で、
その彗星を生み出した、らしいのだが。
ラタトスク曰く、ちょうど世界を視るのに都合がよかったとか何とか。
何でも自分が生み出した種子を観察するのに目、として生み出したもの。
それが彗星、ネオ・デリス・カーラーン、らしい。
当時は聞かされていなかった真実。
きらり、とリフィルの目が光り、何やら態度ががらりとかわる。
「おお、これがデリス・カーラーンの古の原語なのか!?」
「もう、姉さん!今はそんな場合じゃないでしょ!?」
そんなリフィルにたいし、ジーニアスが何やらいっているが。
「…とにかく、僕の本体をどうにかしなきゃ。ともあれ皆が無事でよかったよ」
その気持ちに嘘はない。
そんなミトスの台詞に、
「そうだな」
リーガルがしみじみうなづいてくる。
「お互いがひけないからこんなことになっちまってるけど……
  とにかく、気をひきしめていこう」
しいなもそんなことをいってくる。
「考えてもはじまらねえぞ。というかそもそも俺様達には時間がねぇんだ」
ゼロスの言葉もしごく最も。
「よし、大いなる実りを取り戻しにいこう!」
ロイドの言葉をうけ、それぞれが転送陣?らしき場所へとむかってゆく……

光と闇の協奏曲 ~ミトス・ユグドラシルと勇者ミトス~

ヴェントヘイムとよばれし場所にとあるらしきミトスの城。
転移陣を抜けた先にみえるは、頑丈な扉。
そしてその扉の前には一体の竜らしき姿がみてとれる。
その竜はロイド達の姿をみとめ、
「ふむ。やってきたか。すでに連絡はうけておる。
  とはいえ、我もこの扉を元々守護する役目をおっているもの」
何やらそんなことをいってくる。
「この扉って何なの?」
そんなミトスの問いかけに。
「本来は、この扉の先はあの御方が鎮座していた場所があったのだが……
  今、それを使用しているのは、お前の本体だ、ミトス・ユグドラシルよ。
  この先は我らが主が元々、この地において利用していた場所。
  もっとも、お前の本体はそのようなことを知るとはおもえぬがな」
「って、竜がしゃべった!?」
そんなミトス達の会話にジーニアスが驚きの声を発しているが。
「この先にすすみたくば、我の体を地につけてみよ。それが条件だ。
  ミトスよ。お前は手をだすでないぞ?我が試すはその人間達、なのだからな」
「主…ですって?」
その台詞にリフィルが何やら思案したような表情を浮かべるが。
それよりも先に、ドラゴンらしきそれは、その両足において扉の前にと立ちふさがる。
「ゆくぞ!」
ドラゴンの声が戦闘開始の合図と成り果てる。
「姉さん…これって……」
ジーニアスの戸惑いの台詞。
「…まちがいなく、どこかでエミルがかかわっているわね」
それはもう確信。
否、主、というのならば大樹の精霊すらもかかわっている可能性すらある。
さきほどの台詞。
もともと、主が鎮座していた場所がある、そういった。
そしてここは、彗星、デリス・カーラーン。
かつて、エルフ達が大樹とともにこの地に移動してきたという彗星そのもの。
ロイドからしてみれば、手にいれたマテリアルブレード、と名付けられた剣のキレ味をためす絶好の機会。
ドラゴンの口から輝く息のようなブレスのような何かが解き放たれる。
「いけないわ!」
それをうけ、リフィルが素早く詠唱を開始する。
どうやらすんなりとは通してはもらえない…らしい。

ある意味、さすがというか何というか。
ミトスを除いた全員でかかったのに、なかなかドラゴンを叩き伏せることはできはしない。
全員の技を一度にまとめ、どうにかそれをたたき込むことにより、何とかドラゴンを叩き伏せたのは、
戦い初めてかなり経過したころ。
「ふむ。たかが我ごときにここまで時間がかかるとは…だが、まあ普及点であろう。
  過去のミトスよ。主の思いを無駄にするではないぞ?」
「わかってる」
いいつつも何かドラゴンの手から何かがなげられてくる。
それはふるぼけた鍵。
「その鍵がこの扉の鍵となる。もっとも、それは使い捨て、ではあるがな」
一度につき一回ずつ、使用可能のみの鍵。
彼が認めたもののみに一度のみ授けられるもの。
「君はどうするの?」
「我はここを守る義務があるからな。…まだミトスがアレに気づいていないのが救いといえば救いなのだが」
ネオ・コアすら設置してあるこの先の間。
この彗星における核といってもよい。
当然力は絶大。
ミトスの問いに首をすくめつつ、
「ゆくがよい」
その言葉とともに、ミトスがゆっくりと進み出て、ドラゴンより授かった鍵を鍵穴にと差す。
それとともに、ぎぃ…何ともいえない音をたて、重たい扉が開かれてゆく……

無重力空間。
まさにそう表現するのにふさわしい空間。
至るところに無数の隕石のような何かが浮遊しているのがみてとれ、命の鼓動はまったく感じられない場所。
そしてその遥かさきにおそらくは、ミトスがいる、のであろう。
何やらちょっとした場所のようなものがみてとれる。
混沌とした空間。
そう表現するのがまさにふさわしい、というような場所。
が、ロイド達は知らない。
本来、この場は全ての彼らがいうところの宇宙空間を視通せる場所である、ということを。
ミトスはエターナルソードの力で空間が歪んだ、とおもっているようではあるが、そうではない。
それらの力がただわからなくなっている、ただそれだけのこと。
もっとも、それを起動できるのは後にも先にもラタトスクだけ、なのだが。
遥か先にと浮かんでいる小さな大地?のようなもの。
そして目の前には淡く浮かんでいる転送陣。
おそらくここが、あの先につづくための場所。
「この先にミトスがいるんだな…」
周囲を見渡しつつも、ロイドがそんなことをしみじみといってくる。
「うん、本体の気配がするし、間違いないとおもうよ」
そんなロイドに【ミトス】が答えてくるが。
「でも、あっちもミトス、こっちもミトスだと何だかややこしくない?」
「だったら、あっちをユグドラシルってよぶとか?」
「あ、それ採用」
「…どっちも僕なんだけどな……」
そんな彼らの台詞をきいて、何やらそんなことをいっているミトスではあるが。
ここは、本来、ラタトスクの間、と呼ばれし場所。
世界全てを視通す場所。
もっとも、ここにいる全員、そんなことを知るよしはない。
「おそらく。大いなる実りも一緒にあるはずよ」
もっとも、リフィル達はしるよしもない。
すでに彼らがいうところの大いなる実りとは、本来の大樹とはなりえない代物になっている。
すなわちすでに力を使い果たし、そのような力はすでにのこっていない種子になっているなどとは。
たしかに育てば薄い、それこそ薄いマナを少しばかり発散することはできはすれ、
世界を構築するほどの力はすでにかの種子には残っていない。
それらの力はすべて、入り込んでいた少女達の負の念を浄化するために、
魔物を生み出す、という力へと使用されている。
「ともあれ…これが最後だ、皆、準備はいいか?」
皆に確認をこめてといかけているロイドの姿。
「私は問題なくてよ。これからおこる戦いをあるがままにうけいれる。そして、勝つわ」
リフィルがきっぱりと断言する。
何となく、自分達が負けても世界の存続は可能のような気がするが、
しかし、一度全てが消滅しかねない、という危惧もある。
「ああ。かつよ。みずほの里の皆やコリンや、臆病だったあたしを信じてくれた皆のためにも」
しいながそんなことを淡々といっているが。
そういえば、とおもう。
ラタトスクって、この子にコリンとかいう子があらたな理をもって精霊になったこと教えてないのかな。
と。
まあ、あるいみ決戦前にそんなことを教えて心を乱す必要もないような気がするのでミトスもいわないが。
「そして、自分の為にも。です。もう、誰も私みたいな間違いは繰り返してほしくないから。
  …自分が犠牲になればそれでいいなんて、歪んだ考えはダメだから」
コレットの言葉にミトスからしてみれば何ともいえない気持ちになる。
というか、人間を姉様の器にって…ホント、僕の本体、何かんがえてるんだろ?と。
そもそも、あの姉がそんなことを認めるはずがない、というのに。
それすらも見失っている、というのだろうか。
今の自分は。
「誰だって、皆、当たり前に暮らしていいんだよのね。この世界にいてもいいんだよね。
  人も、エルフも、僕たちも」
ジーニアスの言葉に。
「ついでに追加でいえば、魔物も精霊も、だけどね。
  僕たちが目指したのは、全ての命の共存…人と魔物、そして精霊達とが共にくらしていける世界。
  なのに…無機生命体の王国?…ほんと、何かんがえてるんだろ……」
ここまできていろいろと思うこともある。
それゆえの台詞。
「古のミトスはそのような考えをしていたのだな。だが、今のミトスはそれを見失っている。
  しかし、たしかにその通り、ではあるな。この世界に暮らしているのは我々だけではない。
  魔物も精霊も…か。我ら人はそれらを見失っていたのやもしれん」
ただ、エルフや人、そしてハーフエルフ達のみ、という感覚であったのは否めない。
もっとも、エミルと共にいることにより、魔物にたいする考えも変わっていたのは事実なれど。
そして、
「この戦いで我々は大いなる実りを取り戻し、大樹を蘇らせる必要がある。
  否、蘇らせなければならない。それがなければ、異種族間のしこりを取り除くどころか……」
「世界は滅亡します。それは悲しいことです。私たちは世界を統合して世界に新たな理を結びましょう」
リーガルに続き、プレセアがいってくる。
理、という台詞に思わずミトスがふと目をばちくりさせるが。
この世界で理をきちんとひけるのは後にも先にもラタトスクのみ。
ゆえに言葉のあや、というかたとえ、というのはわかりはするが。
「私は…この歪んだ世界をかつて、許してしまった。
  私が過ちを正すためにも私は私の全てをもってして戦う」
「俺様が好きなやつや、俺様が嫌いなやつも、俺様のすむ世界にいていいってこった。
  それが当然なんだからな。だから俺様も逃げないぜ」
クラトスとゼロスの台詞。
「うん。僕も今の僕を止めるよ。…心の闇に負けてしまった自分には負けない」
「しかし、気をつけて。あなたが取り込まれればミトスは……」
「人の心の光りがかつか、闇がかつか、というところだとおもうけど。
  リフィルさんはどうおもいます?僕は絶対に光がかつ、そうずっと信じて行動していた。
  あのとき、クラトスの協力のもと、ユアン達とともに」
「…あのとき、マーテルさえ……」
「それもおかしいんだよ。だって僕は約束してたんだよ?大樹を蘇らせるって。
  …まあ、そのときに大樹を蘇らせていたとして、…あの彼が人を許したかどうかは別として」
姉を蘇らせてくれることくらいはしたであろうが、再び大樹に手をかけようとした人間達を、
あのラタトスクが許したかどうかはまた別問題。
否、間違いなく許しはしなかったであろう。
おそらくは、攻撃をしかけた直後…襲撃していたものたちは、魔物達によって駆逐されるか、
もしくは彼の手によってそのままマナを世界に戻されるか。
それは今では予測でしかないが。
あの彼が許したかどうかは別、という言葉にクラトスの表情がくもる。
「そういえば、ミトス」
「何?」
「あの、エミルは何なのだ?」
「…え?えっと…エミルはエミルだよ。うん」
いいつつも、すこしばかり目をそらしていえば説得力はない。
そして。
「とにかく、いそご。…猶予時間はあまりないんだから。
  惑星が完全にこの大気圏すらをも突破して重力場すらをも逃れたとき……」
そのときが、判定のとき。
ノルンに合わせるわけにはいかないので、消す、とはいわれている。
何を、とは詳しくはきいていないが。
「とにかく、いこう!」
そんな彼らの会話をききつつも、ロイドが一歩、足をすすめてゆく。
目指すは、転送陣の向こうにある、ミトスがいるとおもわしき場所。

壊れかけた玉座のような場所。
周囲にはいくつもの柱の残骸らしきものがあり、よくよくみれば、
その柱にはちょっとした紋様が刻まれているのもみてとれる。
足元も不可思議な紋様が刻まれており、それが何を意味しているのかロイド達には理解不能。
転送陣を抜けた先、みれば、青年ミトスの姿がそこにある。
ジーニアスは思わずコレットのほうをみるが、コレットの胸元には、いまだにミトスの奇跡がついたまま。
「……かえる…私は…かえる…わたしは……」
ぼんやりとたちつくしている青年の姿をしたミトス、否、ユグドラシルと名乗っていたもの。
「ミトス!大いなる実りをかえして!世界を統合するために大いなる実りをかえして!」
そんな彼にとジーニアスがよびかけるが。
しかし、目の前に立ちすくんでいるミトスは目をつむり、まったくもって表情すらない。
ただ、うわごとのように同じ原語を繰り返しているばかり。
「おかしい。まるで人形みたいだわ」
リフィルがそうつぶやくのと、
「…あらたな輝石を利用して、僕のたぶん、あれって…スペアの体をつくった、んだとおもう」
それこそ自らの思考のみをインプットした形で。
と。
「きゃあ!?」
刹那。
コレットの胸から突如として輝きだしたミトスのクルシスの輝石が離れる。
そして、それはまっすぐにミトスの体へとむかっていき、それはそのままその体にとすいこまれてゆく。
光とともに、輝石がミトスの…ユグドラシルの体の中へとすいこまれてゆく。
「わざわざ運んでくれてありがとう。これでようやく融合できたよ。
  どうもスペアの体のほうはどうしても完全に意識を融合できなくてね」
目をゆっくりとひらきつつ、そんなことをいい、そして。
「……なぜ、僕が……」
そこにいる自分に気づいてそんなことをぽつり、ともらす。
「君だってわかってるはずだよ?僕が何なのかは」
「そうか。あのときの……リビングアーマーを封じたときの僕の記憶の欠片。
  魂の欠片。か。なのになぜ、僕の中にもどってこない?」
役目がおわったときはそれぞれに戻る、ときかされていた。
なのに、である。
「自らの心の闇に呑まれた自分を止めるため。
  僕もわかってるんでしょ?姉様はあのとき、人間に殺されてしまったんだってことを」
「嘘をつくな!姉様はまだいきている!僕がこうしてクルシスの輝石にやどっているように!」
「だからって、人をつかって姉様を蘇らせても姉様が喜ぶとおもってるの!?
  あの姉様だよ!?自分が危険になるのに自分の命すら投げ出して他人を助けようとしてた姉様だよ!?
  ラタトスクにも注意をうけてたじゃないか!加護なしで輝石にたよっていると、
  僕たちは石の力に呑みこまれてしまいかねないって。だから加護をあたえられたんでしょ!?」
その台詞に、思わずロイド達はミトスと、目の前にいる青年ミトスとを見比べる。
それはあるいみ初耳、といってよい。
「石の力に呑みこまれていけば、どうなるか、末路は僕らは聞かされていたはず。ちがわないでしょ?」
かの石の特性からして、人の魂ごときではたえられない。
下手をすれば人工的な精霊と同じく精神生命体へと変化させられてしまいかねない。
そういわれていたあの当時。
しかし、軟弱たる人の魂はそれにたえられず、そのまま力に呑みこまれてしまいかねない、とも。
「…姉様をよみがえらせるのに、僕らが普通にマナを注いでもそれは無理って…
  君だってわかってたはずたよ。テセアラが、そしてシルヴァランドが。
  マナを利用して、人工的にホムンクルスを作成しようとしてどれだけ失敗していたのか、を」
それは過去の記憶。
「忘れたわけじゃないでしょ?絶望するなら静かに暮らすことを選びましょう。
  姉様のあの台詞を」
「…っ!うるさい!姉様は、ぜったいによみがえる!だって、姉様はそこにいる!」
「…かつての僕の強い心はどこにいったの?あれだけ人に裏切られ。
  そして虐げられても、それでも姉様や皆が笑ってくらせる世界を。
  そして…姉様のあの言葉を忘れたわけじゃないんでしょ?
  ……君がしていることは、姉様を否定しようとしていること、ちがわないの?」
心を失ってまで生きている意味があるのかしら。
姉マーテルが兵器として利用されてゆく彼らをみていっていた台詞。
どうやらロイド達はほっとかれ、当人同士で話しがはずんで?いるらしい。
そんな彼らの会話をききつつ、
「まあ、ぶっちゃけた話し。裏切られても、裏切られても、いつか信じて受け入れてもらえる。
  と信じて行動した結果、人間に唯一の肉親であり、親代わりの姉を殺されたんだから、
  おかしくなってもしかたなかったんじゃねえのか?
  ジーニアス、もしお前さんがそうなったらどうよ?」
「え?僕は……」
いきなりゼロスに話しをふられ、ジーニアスが思わず戸惑いの声をあげる。
いまだに答えはジーニアスの中ではでていない。
そんな彼らにちらり、と視線をむけたのち、
「それに。そのときにどうしてもう一つの希望をおもいつかなかったの?
  だって、僕ら約束してたでしょ?友達なろうって。マナが、大樹がよみがえれば。
  肉体はマナで構成されているもの。ならば僕ならそれくらい思いつくとおもうのに。
  絶対に話せばわかってもらえるとおもうよ?げんに大樹が復活していれば、
  お礼にそれくらいは可能だったかもしれない、といわれたよ?」
目の前にいるのは自分の本体であることは疑いようがない。
それゆえの問いかけ。
そんなミトスの台詞に、
「……そうか、記憶であり、魂の一部でしかないお前が、ここにいるのは……」
「うん。ね?だから、もう、やめよう?過ぎてしまったことは取り換えしがつかない。
  けど、やり直すことはできる。僕らにとって死は本当の死ではないよ?
  そのまま死んだとしたら、それこそ…魔族達が僕の魂をどうするか、考えたくもないし」
ラタトスクの加護をうけし魂。
魔族にとってはノドから手がでるほどほしいはず。
すくなくとも、ラタトスクに対抗するための切り札的存在になりえる、のだから。
「お前も僕ならわかるはずだ!血が異なるから差別は産まれる」
「うん。前の僕ならそうおもってた。けど、違うんだよ。差別は心が生み出すものだ。
  あの禁書の中で僕が何も学んでいなかったとおもうの?
  あの書物にこれまでどれだれの魂が取り込まれてたとおもってるの?
  いろいろと感じたよ。取り込まれた人の念を。だからわかったんだ。
  魂となりて、肉体を失った彼らも…差別、というものをしでかしていた。
  つまり、器でもある肉体は関係ないんだよ。
  だから…君がいうような千年王国をつくったとしても、差別は絶対になくならない。
  それに…それをしたら、ラタトスクが悲しむよ?それは…彼が生み出した子供達をないがしろにすることだ」
また、ラタトスク。
どうやらこのミトスは精霊ラタトスクのことを詳しく知っている、否、出会ったことがあるらしいが。
それが過去なのか、最近なのかそれは定かではない。
「なら、お前はこのままでいい、というのか!?僕らの体は、
  どうあがいても、どれだけの時がたっても差別をやめようとしない、けがらわしい人間と、
  そして僕たち狭間のものを認めようとしないエルフ達からうまれしもの。
  無機生命体になれば姿形や成長の促進も思うがまま。
  皆が無機生命体になれば種族による差別はなくなる!」
「その過程でどれだけの人が過去、実験において犠牲になったかわすれたわけじゃないでしょ!?
  僕らがマクスウェルと契約し、同胞達を逃がす決いをしたそのときの心を思い出して!」
「う…うるさい!もう、あとにはひけない!僕を信じてくれてついてきたものたちのためにも!
  僕は僕の理想とする、千年王国をつくる。邪魔はさせない。
  過去のお前を自らにとりこんで、僕はかつての僕の力を完全にとりもどす!」
「させないよ。だって、約束したもの。僕を止めてみせるって。
  今度こそ…彼との約束ははたしてみせる!君が彼との約束を裏切るっていうんならね!」
「っ!姉様がよみがえれば、約束は果たせる!」
「まだそんなことをいうの!?姉様がそんな方法で素直に蘇るとでもおもってるの!?
  それこそ姉様の魂を全て犠牲にしてでも器にさせられそうになる子を姉様ならたすけるでしょ!?
  それこそ、姉様を完全に消滅させてしまうことじゃないか!」
何やらあるいみ痴話げんかにも近い内容になってきた。
「差別というものは、心から産まれるものよ。
  相手を見下す心、自らを過信する心、そういう心の弱さが差別を生み出すの。
  そして、人はその弱さをみとめられなくて他人にあたる。知らないから、しろうとしないから。
  だけど、知ってしまえばその不安はなくなるわ。…あなたたちがかつてそうしていたように」
おそらくは、していた、のであろう。
ハーフエルフという中でも世界に平穏をもたらした勇者ミトスとその仲間達。
永きにわたる国同士の戦いを停戦にもっていった勇者達。
「…僕らが一番嫌悪していたことじゃないか。君がつくってたという牧場?
  ……人の命を家畜のように扱って…僕らは家畜の扱いにもいろいろといっていたよね?
  …特に姉様が」
家畜とはいえ命は命。
だから彼らも大切にすべき。
自分達は彼らの命にいかされているのだから、と。
「過去のことはあたしはよくわかんないけど。けど、これだけはいえるよ。今のあんたには!
  人やエルフを見下して家畜扱いしているあんた。それはあんたの心が弱いからじゃないのかい?!」
「そもそも、一度は僕はデリスエンブレムでのあの試練を乗り越えたのに…
  どうしてそんな闇に捕われたのさ。…気持ちはわかるけど、わかるけど。
  でも、今の君は許せない。…闇に捕われ、その力を正しき闇ではない歪んだ闇として利用している君は」
ミトスの悲しそうな台詞。
「このままでは、無機生命体と全ての人がなったとしても、絶対にかわらない。
  差別はいくらでも産まれてくるであろう」
そんな彼らにたいし、リーガルが淡々といってくる。
「なら、狭間の僕たちはどこにいけばいい?」
「どこにでも」
淡々というミトスにたいし、即答しているロイド。
「ふざけているのか!?」
ロイドの台詞にミトスの…青年たるミトスの怒りの声が炸裂する。
「ふざけてなんかないさ」
「ハーフエルフである僕たちはどこにいっても疎まれる。
  心を開いても受け入れてもらえなかった。人が、エルフが僕たちを産んだ、のに。
  狭間のものとして産まれたものはならどうすればいいっていうのさ!」
それは悲鳴に近い声。
「おっと。被害者づらはよくないぜ。その題目でお前がやったことは到底ゆるされるものじゃない」
「そうだね。ゼロスのいうとおりだよ。…僕らが一番嫌悪していたその方法。
  それを、あろうことか君はとった。どうして?どうしてエクスフィア製造工場なんて……
  まだ、神子の…マナの酷似たる家系を、というのならばわかるにしても」
『わかるの(かよ)(ね)(か)(ですか)』
ミトスの台詞にその場にいるミトス達二人以外の声が一致する。
「だって、あの姉様なんだもん。自分達に近しいものがうまれたら、
  なら、自分も生まれ変わってあかちゃんになってみようかな~とかいいだしかねないし。
  …姉様、あかちゃんすきだったし………」
幾度かマーテルが調合した薬にて幼児化させられたことがあるがゆえの台詞。
「……たしかに、あれはきつかった…いきなり朝起きたら幼児化させられていたことが幾度も……」
そんなミトスの台詞にどうやら彼自身も思いだしたらしい、ぽつり、とそんなことをつぶやいていたりする。
「えっと…マーテルさんっていったい……」
ぽつり、とつぶやいたジーニアスの心情は、おそらくこの場にいる誰もが同意するところであろう。
クラトスに視線をむければ、なぜか横をむいていたりする。
…どうやら、本当にあったこと、であるらしい。
「と、ともかく。君がしたことは、姉様を害された、という動機はともかく。
  正統なる権利にはどうあがいても結びつかないよ。…人を苗床にする、なんて……
  悲しみや苦しみ、負の感情を元にしても、それは連鎖してしまう。
  ……よくもあ負が具現化し蔓延しなかった、とおもえるほどだよ?」
負が蔓延したときの被害を自分はよくわかっていたはず、なのに。
「そうだ。マーテルが殺されたこと。人が愚かであったということも事実。
  だからといってそれは我々がしてきたことのいいわけにはならない」
クラトスがそんなミトスの台詞に続いて何やらいってくる。
「……あなたのしたことで、数え切れない人々が無意味な死をむかえ、そしてくるしめられました。
  その人達の痛みをあなたは感じていますか?過去のあなたは…感じているようですが」
その考えかたの在り様から同一人物、だとは到底おもえない、目の前の青年と少年ミトス。
しかし、時とはそのようなもの。
それをプレセアは身をもってしっている。
時の流れに置き去りにされてしまったがゆえに、それこそ確信をもっていえること。
過去にとらわれ、過去のにみ視線をむけているか、それとも未来をむいているか。
その差はかなり大きい。
「いいかしら?人はかわるものよ。たとえ今日からかわらなくても…
  一ヶ月後、一年五、と時間がたつにつれてそのうちに、必ず変化が訪れる」
「うん。リフィルさんのいうとおり。僕らのときもそうだったじゃない?
  あのとき、戦争を止めるために、僕らはこんきよく人々を、そして国を説得してまわった。
  あのときのことを忘れたわけじゃないんでしょ?」
始めはだれしも自分達の声などききはしなかった。
声にこたえたのは人なきものたち。
精霊達。
それでも前をみつめ、人々に、国に争いは無意味であることを解いていった。
挫折し、陥れられたことは一度や二度、ではない。
そんな経験を乗り越えたはず、なのに。
傍に姉がいない、たしかにそれはつらいことであるとおもう。
けど、それすらを乗り越えてでも姉はきっと…だからこそのミトスの台詞。
「全ては許されないかもしれません。けど、償うことはできます。
  あなたの中にも神様はいるでしょう?良心っていう神様が」
コレットの言葉におもわずひるむ。
その姿が姉の姿と重なってみえる。
「う、うるさい!僕が許しをこうとでもおもっているのか?ばかばかしい。
  神様なんているはずがない。いるとすれば、それは、彼一人のみ!
  だから、僕は僕の理想を追求しつづける。
  それに…僕の意場所が大地になくて、千年王国すら否定するのなら、
  僕はデリス・カーラーンに新しい世界をつくるだけだ!姉様と二人の世界を!」
「それこそ間違ってるよ!というか、あの彼がそれを許すとおもうの!?
  …彼は世界を守るもの。…いくら僕らが約束していても、世界を守るためには決断を下すよ!?
  あのとき、僕らがいったんでしょ!?僕らを信じてって!
  あのままじゃ、世界のほとんどは一度海に還りゆくしかない道をまってって!」
人に好きにやらせ、大地を浄化させようとしていたのは真実。
ラタトスクのもとにいったとき、そのことをミトスは聞かされていた。
人はあまりにもおろか、ならば好きにさせ、自らが滅亡するまでまてばいい、と。
どちらにしろあと百年も人の世界は今のままではもちはしない、と。
「なら、そうなってしまえばいい!そもそも、あのとき、僕らが地上の延命を願ったのがそもそもの間違いだ!
  でなければ、僕らのような狭間のものがあれ以上ふえることも、
  そして誰かが悲しむこともなかったのに!でも無機生命化して心を失えば、そんな感情も不要になる!」
「無機生命とて心はあるの、君だってわかってるはずだよ!」
「う…うるさい!僕の魂の欠片の分際で…僕に…本体に、指図するなぁ!」
「この、わからずやっ!!!!!」

『…うわ~……』
どうやら彼らをほうっておいて、自分同士の戦いが始まってしまったらしい。
それぞれが術、そして技のさぐりあい。
というより、ぽんぽんと詠唱時間もないまままに上級術を扱う二人は何といえばいいものか。
しかも、何やら戦いつつも、
「君がしてるのって、僕が七つのころにおねしょして、それをからかわれた子の寝床にいって、
  その子の布団に水をぶっかけたのとあまりかわらないでしょ!?
  やられたことを相手にやりかえしてるだけだよ!」
「やられたらやりかえす。それのどこがわるい!」
「わるいよ!姉様がいつもいってたじゃない!手をだしたほうが負けだって!
  にっこりと、精神的に追い詰めていくほうが勝ちだって!」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・』
何だか過去の暴露大会というか何というか形容しがたい言い合いをしている二人のミトス。
気づけば、いつのまにか青年ミトスの姿も少年の姿となり、
同じ姿をした二人が技と術の応用で、互いに戦いあっている光景がそこにある。
「おいおいおい。どっちが過去のミトスで今のミトスなんだよ!?」
「僕にきかないでよ!?」
どっちもどっち。
はっきりいって服装も何もかも同じがゆえにまったくもってわからない。
「…手を出そうにも、どちらがどちらかわからないのであれば、それは危険です」
下手をして、過去のミトスの不利になるようなことをして、
今のミトスに過去のミトスが融合されてはたまったものではない。
「そもそも、君は姉様のために世界を見殺しにするっていうの!?
  それって一番姉様が嫌悪することじゃないか!僕、姉様に嫌われたらいきていけないよ!?」
「そうじゃない!姉様のために新しい世界をつくりだすだけだ!」
「同じことじゃないかっ!姉様は今ある大地を世界を愛していた。
  そんな世界を僕らが壊したら姉様がミトスなんか嫌い、といったらどうするのさ!」
「姉様がそんなこというはずがっ!」
「いうよ!というかユアンとの結婚に反対しまくってたときにいわれたじゃないか!」
『・・・・・・・・・・・・・・・』
「…痴話げんか?」
何だろう。
重大すぎる戦いだ、というのに。
何だか痴話げんかのような気がひしひしとしてしまうのは。
それゆえにおもわずぼつり、とつぶやくしいなは間違っていない。
…たぶん。
「違う!嫌いとはいってない!嫌いになっちゃうかも、といったんじゃないか!」
「でも、結婚許さなかったら絶対にいったよ!?」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
何ともいえない沈黙がロイド達一行の中に訪れる。
ちなみに、彼らの術や技の余波は周囲かまわず荒れ狂っている。
リフィルがどうにか防御術をとなえ、何とかそれらの攻撃の余波をはじいてはいるが。
それでも視界の先では光の帯が無数に入り乱れているのがみてとれる。
どちらもどちら。
互いにシャイニング・バインドとよばれし光の上級晶術などをつかいまくっているのだからたまったものではない。
どうでもいいが、ぽんぼんと言い合いをしながら技や、術をつかっているのはさすが、
としかいいようがないが。
「…というか、俺達って、あの本の中でもかなり手加減…されてたんだなぁ……」
ロイドがそんなことをおもわずぽつり、ともらす。
というかこの様子を見る限り、どうみてもそう、としかおもえない。
しかも、だんだんとスピードもあがってきており、今では衝撃派くらいしか感じ取られない。
否、わかるのは、二人の会話と、衝撃派、といったところか。
どんどんとぶつかりあう衝撃派とどこからともなくきこえてくる二人の会話。
今のミトス達の移動速度はロイドの動体視力では捕らえきれていない。
この中で唯一、きちんととらえているのは、完全に天使化しているクラトスと、
そしてゼロスとコレットのみ。
しかし、
「まずいわ」
「先生?」
ふと、リフィルが顔をしかめる。
「私たちとともにいたミトスは、いわば精神体。…精神力もあまりもたない、はず。
  だとすれば……」
力を使いすぎて消耗、というか実体化すらかなわなくなりかねない。
そして、そうなってしまえば…
リフィルがそんな懸念いたその刹那。
「いいかげんに…過去の僕の記憶の残滓よ…自らの力となれぇぇ!」
「姉様やラタトスクを裏切るような真似、絶対にさせられないっ!!!!」
そんな声がきこえてきて、
直後。
どがぁぁぁぁぁぁぁぁん!
それまどとは異なる、激しい衝撃派が辺り一帯をおおいつくし、
周囲にあった空間に浮かんでいた隕石全てを吹き飛ばしてゆく。
「きゃっ!?」
「皆、それぞれ手をつないで気をつけて!この空間になげだされたら危険よ!」
リフィルの指摘にあわててそれぞれ手をつなぐ。
それまであったはずの重力、という重力が一瞬にしろ消え去った。
衝撃派は周囲にある様々な瓦礫や柱などをまきこんで、ゆっくりと拡大してゆく……


                            ――Go To Next

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あとがきもどき:
薫:さてさて、最終決戦になりましたが、ほとんどロイド達は空気ですv(まてこら
  いや、だってミトスがいますし。過去の自分と今現在の自分。
  すなわち、自分同士の戦いが始まっていたり。
  実力者同士のぶつかりあい。当然そこに割って入る余地はありませんv
  まあ、自分同士であるがゆえに、あるいみ痴話げんかっぽい内容な会話をかわしているミトス達v
  互いに互いを知りつくしていますからねぇ……分かたれてからはそれぞれ異なる道に、
  どうしても置かれていましたが。
  次回で決着vそのまえに、あの形態はだしますよ?ふふふふv
  さてさて、なんだかまとまりつかない回になってるので(自覚あり)ちょこっと別話の続きをばv


ソダ島そのものはとても殺風景な島。
荒れた海をなくなく進み、セネル達がたどりついたは、パルマコスタの北東にとある小さな島。
間欠泉があると有名なちょっとした小島。
本来ならば観光でもあるのだが、ここし一年はかりの…さらにいえばこの半年ばかり、
海があれ、観光客はぱったりとほぼ途絶えていたといっても過言でない。
ここしばらくようやく波がおちつき、観光客もちらほらと目立ち始めていたにはいたのだが。
観光地ではあるのだが、ただ間欠泉があるだけで他に見物するところも、
宿泊施設もない。
「ひえ~。すげえな。熱湯がふきでてる」
シュー、という音とともに幾本もの湯の柱が岩場からせりあがる。
湯はひとしきり噴き出してはやみ、少したつとまたでてくる。
と。ぽ~ん。
何か湯とともに何かがふってきて、それはこつん、とロイドの頭へとあたる。
「いて!」
カツン。
ロイドが思わず頭をおさえるのと、何かおちるおと。
「…あれ?これってスピリュチュア様の像?」
コレットがそこに転げた何かをひろいあげると、
それはなぜか見慣れた像。
「何でこんなところに神像があるのさ?」
ジーニアスの怪訝は至極もっとも。
彼らは知らない、というよりも救いの小屋にて話しをきいていないのでしるはずもない。
この地においてかの地の像を祭司がおとした、ということを。
「おお!コレット!ここにきてみろ!」
一人周囲をいつのまにか離れて観察していたらしいリフィルが何かにきづいて声をはりあげる。
さすがに海がかなり荒れているせいか今ここには彼らしか存在していない。
何しろこのソダ島にくる手段は遊覧船とはなばかりのたらいにのっての移動手段しかなかったりする。
ゆえに海が荒れていれば当然島にくることができない。
セネルの船でやってきたからこそ彼らはここにたどり着けているにすぎない。
もっとも、船の周囲は波もあれていないので、リフィル達は気づかない。
否、気づくことができない。
今現在、海があれ、普通は船をだすことすらままならなくなっている、ということに。
みればリフィルは展望台の階段を三段とばしにてかけあがりつつ、
「コレット!はやくこないか!」
せかすように再度コレットを呼寄せる。
「もう。姉さん、何だっていうのさ」
「…いこう。ジーニアス。あんなときの先生に逆らったら怖い」
「展望台、か」
そこにクルシスがつくった偽りの道があるのをセネルは知っている。
いそぐように、ともいわれてもやはりどうしても間欠泉にみとれつつ移動したがためにかなりの時間を要する彼ら達。
やがてリフィルよりも大分遅れて展望台へとたどり着いたコレットはリフィルが手をのせているそれをみて
思わず目をまるくする。
「うわ~。遺跡さんでみたのとそっくり~」
旧トリエット遺跡でみたものとそっくりな石板がそこには台座とともに安置されている。
「くく…ふははは!すばらしい!すばらしいぞ!しいな!お前がいったとおりだ!」
「え?え?」
「ここが水の神殿なのだな!くくく、うははははは!」
「…え、えっと・・・どうしちまったんだい?このリフィルは……」
ここにくるまでに呼び方もとりあえず呼び捨て、ということでおちついてはいる。
が、しいなの知っている彼女ではない。
あまりの変貌におもわずあとずさりながら横にいるロイド達にと問いかける。
「…先生、遺跡マニアなんだ…」
「遺跡を前にするとこう豹変しちゃうんだ……」
「…なんだい。そりゃ……」
ロイドとジーニアスの説明におもわず目を点にするしいなはおそらく間違ってはいないであろう。
「さあ、コレット!早くここに手をおくのだ!」
「はい。やってみますね~」
コレットがいわれるままに石のくぼみにと手をおく。
と。
ズバーン。
間欠泉の向こう側の岩場に洞窟の入口が出現する。
続いてコレットの足元から入口へと続く水の橋らしきものが間欠泉の真上にとかかる。
「くくくっ。いいぞ!さあ!さっそく調査にむかおうではないか!いそげ!」
「…調査じゃないとおもうんだけど……」
「わ~。光る道ができました~。すご~い」
「…こういう仕組み、か」
どうやらあの石板は神子、でなければ反応しない、らしい。
うちのあほ神子でも反応するのかな?
などとおもってしまう。
リフィルは戦闘にたち、水の橋の上にブーツをおく。
が、不思議なことに水の橋は形状を保ったまま。


「しいな。契約ってやつを頼む」
ロイドの言葉に、
「し…失敗するかもしれないよ?」
目の前で天使の降臨、というのをみた。
が、しいなが抱いた感想は、うさんくさい。
その一言につきる。
そもそも、幾度も我が娘とか言っている言葉にまったくもって感情がこもっていない。
天使の姿がきえたあと、契約をうながされ、息をすいこみ祭壇の前にとたつ。
「なあに。お前なら大丈夫だって。なんかわかんね~けど、俺そうおもうぜ!」
「…いい加減だねぇ」
心から心配してない、というのがみてとれる。
出会ってまもないのに彼は自分を信頼している。
それにきづいておもわず顔があかくなってしまう。
自分は…故郷をたすけるためにコレットを殺そうとしている、というのに。
そんな自分を信じてくれている、そのことが…つらく、それでいてうれしい。
無条件の信頼など、向けられたことがなかった。
だから余計に。
唇を結ぶと祭壇の前にとたつ。
「我はしいな。ウンディーネとの契約をのぞむもの!」
しいながたかだかと宣言すると同時。
祭壇の上にうっすらとした水の粒が出現し、やがてその粒は青く輝く女性の姿となす。
飾りをつけた長い髪を腰までたらしている女性。
「これが…水の精霊、ウンディーネ?!」
その姿をみてリフィルが声をあげる。
が。
「…メ…ラ?!」
し~。
二人は一番背後に位置しているがゆえに、コレット達の目からはみえない。
出現したウンディーネはエミルとセネルをみて驚愕の声をあげそうになるが。
二人そろってかるく口元に手をあてるのをみてあわてて口をつぐむ。
おもわずメルネス様、ラタトスク様、といいかけたウンディーネはあわてて口ごもっていたりするが。
 ウンディーネ。前とおなじように人を使ってお前たちの枷を解放する。
 というわけで。あとアクアから連絡がいってるとおもうけど、魔界のやつらが紛れ込んでるからな。
念派のみでそれぞれウンディーネにと言葉をとばすエミルとセネル。
たしかに連絡はうけている。
魔界との新たな道が開かれかけてしまい、ラタトスクがそれを封じたことも、
そしてそれによってすこしばかりこちらに血気盛んなものたちが紛れ込んでしまったことも。
だからこそ、あの一年前、センチュリオン達がコア化する、という現象がおこってしまった、ということも。
何しろ突如としてマナを管理していた者たちが一斉にコア化してしまったゆえに、
マナの運搬が滞った。
当然、水を管理する立場のウンディーネにはその事実は伝わってはいた。
それでもここから動けないゆえに…といっても地上に限って、だが。
精霊界においてセネルと…否、メルネスと交信を、とおもってもこれまたメルネスはいつものことながら、
人にまぎれており連絡が不可能の状態。
ようやく状況をしったのはアクアが連絡にやってきてから。
彼らは気づかない。
ウンディーネが驚愕におもわず一瞬にしろ目を見開いたことに。
「あれが…水の精霊か」
「女の人なんだ」
「すばらしいわ。…水の精霊、ウンディーネ。この目でみることになるとは」
その光景をみて口ぐちにいっているロイド、ジーニアス、リフィルの三人。
「……私はウンディーネ。水の精霊。契約の資格をもつものよ。私はミトスとの契約に縛られるもの。
  あなたは何ものですか?」
王がそういうのならそうなのであろう。
新たに産み直されたときに他の世界との記憶のリンクはすでに継承させられている。
同じようなことが他の場所で起こったことも知っている。
そして過去にも。
「我はしいな。ウンディーネとの契約を望むもの」
「このままでは…できません」
「な…なんで!?」
しいなは驚き身をのりだす。
「私たち精霊は二つの契約を同時に交わすことはできないのです。私はすでにミトスとの契約をかわしています」
「ちょ、ちょっとまってよ!どうしたらいいのさ!研究機関ではこんなこと習わなかったよ!」
思わずさけんでいるしいなであるが、つまりそういう研究機関に属している、もしくは繋がりがある。
と案にいっているにすぎないことに彼女はきづいていない。
「ミトス?ミトスってカーラーン大戦の勇者ミトスか?」
「もしそうだとしたら…ミトスって剣士のくせに召喚までできたんだ」
「そうともかぎらなくてよ。ミトスというのは男の子の名前では一般的ですもの」
ロイドがつぶやき、ジーニアスがそれにこたえ、そんな二人にリフィルがつっこむ。
「ど、どうしたらいいのさ…」
しいなの目はほとんど涙目。
は~…
「…前の契約をなかったことにしてもらえばいい」
そんなしいなをみつつ、クラトスがため息とともに言葉を紡ぎだす。
「どういうことさ?」
「前の契約者がまだ生きていたり、精霊との契約の誓いを破っていなければどうにもならないが。
  しかし前の契約を破棄してもらうことを伝え、新たな誓いをたててみればいい。やってみる価値はある。
  精霊との契約に誓いが必要なのはしっているな?」
  …精霊との契約には誓いが必要だ。契約者が誓いを護るかぎり契約は行使されつづける」
「……そうです」
クラトスの言葉に答えるウンディーネの声は固い。
目の前の男はあのとき、エミルを殺す手伝いをしたもの。
しかしエミル当人がそこにいる以上、それを感情にあらわすことはできない。
ゆえに怒れるこころを押し殺し、淡々と接しているウンディーネ。
「それは知ってるよ。精霊は契約者の誓いに賛同し、契約をかわす」
「そうだ。だからお前はロイドのいうとおり。過去の契約の破棄と自分との契約を望めばいい。
  前の契約者が誓いを破っているかもしれないし。…もう、なくなっているかもしれない」
というか完全に破っている。
裏切ったのは自分達。
そして目の前の精霊はそのことをしっている。
あのときの純粋なるミトスはもうどこにもいない。
今いるのは世界を利用しマーテルを復活させようとしているユグラシドル、のみ。
「そんな簡単なことでいいの?」
「…簡単、というが。前の契約者が生きていたり。また誓いをやぶっていなければどうにもならないことだ」
そのように教えられた。
誰から?
そう。
たしかに、そう誰かに教えられた。
精霊達もまた、かのものがともにあったがゆえに常に喜んでいた。
何かかすみがかかったかのような、そんな記憶。
「……わかったよ。もう一度やってみる」
「我が名はしいな。ウンディーネがミトスとの契約を破棄し、私と新たなる契約を交わすことを望んでいる」
しばらくじっとしいなをみつめていたウンディーネだが、やがて。
「…あらたな誓いをたてるために、契約者としての資質をといましょう。
  あなたは何をもってして私の力をもとめるのですか?私たちはミトスに裏切られ誓約を違えられました。
  あなたが私との契約を望むのであれば、私たちが力をかすにふさわしくない、と判断した場合。
  私たちのほうから契約破棄という誓いをも同時にたててもらいます」
「誓約を違えられた?どういうこと?」
「それは…?」
その意味がわからないリフィルとしいなは首をかしげるのみ。
が、クラトスのみは苦い表情をしていたりする。
「裏切りは裏切りです。しかし私たち精霊は一度結んだ契約を自ら破棄することができません。
  相手が望まぬかぎり、また別のものがそう望まぬかぎり。しいな、といいましたね。
  あなたは私に何、をもとめるのですか?」
それは問いかけ。
「あたしは…」
「あまり気がまえなくても、おもったままを口にすればいいんじゃないか?」
力はたしかにほしい。
自分のため、というのではなく。
何よりも自分をたすけてくれた人達のために、そして大切な人達をすくうために。
何よりも…もう、目の前で困っている人、自分のせいで苦しんでゆく人をみたくない。
「あ、あたしは!今、この瞬間にも苦しんでいる人がいる。困っている人がいる!
  あたしはその人達を救うことを誓う!助けたいんだ!皆を!誰も犠牲にすることなく!」
この世界にきておもったこと。
この世界の人達は貧しいながらも心がとても温かい。
彼らを犠牲にして豊かな自分達の世界。
だけど、二つの世界が平和になれるのであれば、それにこしたことはない。
コレットという神子の少女ものほほんとしていて、そしてとてもおひとよし。
「…ミトスもかつてそういいました。が、あの子は自らの心の闇にとらわれてしまった……」
「どういう……」
「いいでしょう。かの御方達がみとめしものよ。私の力を、契約者、しいなに」
『ラタトスク様。メルネス様。これでよろしいでしょうか?』
じっと視線のみを彼らにあわせ、かるく礼をとりつつ二人にとといかける。
『ちょっと余計なことをいったような気もするけどね』
『まあいいんじゃないか?これくらいだと』
その言葉をうけてそれぞれに言葉をつむぐエミルとセネル。
当然、この場にいる誰も…否、コリン以外、彼らの言葉はわからない。
精霊はゆっくりとなぜか一礼すると・・・まさか背後にいる二人に礼をとった、とはおもわない。
とにかく深く礼をすると同時、そのままゆっくりと姿をけしてゆく。
そのかわりに契約の記である宝石がついた指輪がゆっくりとしいなの手にとのこされる。
「やったな。しいな」
「よくやったわ。とりあえずこれであなたが傀儡にされる心配はなくなったわね。一つの懸念事項は減ったわ」
「というかさ。ミトスが闇に沈んだとか、それよりかの御方って何だい?」
「わからないわ」
「クラトス。あなたは?」
「…精霊のことが私にわかる、とでも?」
「あら?でもあなた、精霊のことにやけにくわしかったじゃない。今の契約破棄のことにしろ」
「…かつて、精霊のことに詳しい知り合いがいただけだ」
その知り合いが誰だったのか思い出せないが。
にこやかな笑みで常に傍にいた。
大樹との契約をかわしたのちに。
「あたし…本当に契約できたのかい?」
まだ信じられないような様子で手の中の指輪をみているしいな。
「なら、外にでて呼んでみればいいさ。とにかく外にでよう」
「うん。セネルのいうとおりだよ」
「…なあ、もしかしてあのウンなんとかっていう精霊が礼をとったのもしかしてエミルか?」
「え?」
「何でそうおもうんだ?ロイド?」
「何となく?」
…勘だけはいい(んだな)。
おもわずそんなことをふとおもう。
そんなロイドの台詞に思わず顔をみあわせてしまうエミルとセネル。
どうやら思うことは同じらしい。
が。
「だってエミルって魔物になつかれまくるだろ?なら精霊もかな、とおもっただけなんだけど」
「…ありえるかもしれないわね。エミル。どうなの?」
「さあ?」
笑みをうかべ、ただエミルは曖昧に首をかしげるだけ。


2014年1月2日(木)某日

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