まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

とりあえず、ヘイムダールでのイベントさん。
ある程度、会話としてあまり違和感ないようにまとめてみたつもり、ではあります。
とりあえず全員分の高感度イベント内容の大部分は入れられた…はず?
ともあれ、いきまーす。
さて、まずは台詞のみかたっぱしから打ち込みしていってすでに50K手前。
…間を埋めていったら何Kになるのやら汗

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「マーテルさんって…すごい人だったんだ」
「どうしたの?突然?」
気絶しているプロネーマが正気にもどる前に、ここを立ち去ったほうがいいんでないかい。
というゼロスの意見のもと、大いなる実りの間という場所を後にする。
聞けば、あのとき、この部屋の入口にあった剣はゼロスのもの、だったらしい。
完全に扉が閉じられないように剣でちょっぴし細工をしていたのだ、と。
それをきいてロイドは自分が本当に何も考えていなかったんだな、とつくづく思い知らされることとなったが。
それでなくても、自分の考えのなさで仲間をひょっとしたら失っていたのかもしれないのである。
今さらながらその恐怖がよみがえる。
「どうしたんだ?突然?」
どこかしずみこんでいるコレット。
「あのね。さっきね。…私の中にマーテルさんの意識がはいってきたとき。
  あの人の心が私にもみえたの。…たくさんの人に傷つけられて、裏切られて…
  胸の中は悲しみでいっぱいだった」
その言葉にリフィルが少し表情をくもらせる。
「そう。…マーテルもハーフエルフだったものね」
そして、ミトスも。
「それなのに。それなのにるあの人がこの世界を愛していたことも痛いほどに伝わってきました。
  …ミトスのように世界を恨んでも仕方がない、とおもうのに。
  自分が信じていた人達に裏切られ、大いなる実りを攻撃されたことも理解していたのに」
攻撃してきたのは、マーテル達が尽力し、協力をとりつけていたはずの国の上層部。
彼らにとわれ、いつ世界を元にもどすのか、といわれ報告したあげくのあの結末。
「…ミトス達は、あのとき。大いなる実りを発芽させます。ときちんと両国に報告したんです。
  でも、国はそれをきいて、…兵をあげた」
「つまり、とどのつまりは人間の裏切りがきめて、というわけか」
リーガルの苦い表情。
「マーテルさんは必至で彼らを説得しようとしていた思いがつたわってきました。でも……」
「でも、マーテルは殺された。人間にな。大いなる実りを、力を、マナを独占しようとした人間達に」
コレットの言葉にゼロスがいう。
「…人、とは欲のためならばどこまでも愚かなことをする、のですね」
プレセアがぽそり、という。
「…そんな理由が……」
マーテルが人間に殺された、というのはロイドもしっていた。
だが、そこに、信じていたはずの国の裏切りがあったとすれば、それは……
「…それでも。マーテルさんは自分が殺されてもなお、この世界を愛している。
  その思いが嫌というほどに、つたわってきて、だから、私……」
あのときのあの言葉。
つたわってきたあの言葉。
自分の命を犠牲にしても仲間をまもる、というマーテルがよく使用していたという術。
いざというときコレットはあれを実行できるか、といわれれば答えに窮する。
「あの人は…世界を救うためならば、自身の身をも犠牲にする。そういう人、だと……」
「迫害されてもなお…どこからそんな考えが産まれてくるのかしらね」
コレットの言葉にリフィルがうなづく。
しばしの沈黙が訪れる中、
「…神子の儀式はマーテルの器を探すためのものでもあった。
  ならば、儀式はマーテルの生き方をなぞらえてできたのかもしれないわね……」
それは独白にもちかいリフィルの言葉。
「ねえ。ロイドならどうする?」
「え?俺?」
「うん。信じていた人達に裏切られたあげく、もしも仲間が…私が死んだら」
「縁起でもないことをいうな!けど…俺はよくわからない」
ゼロスの裏切り、仲間の死。
それは短い間であったが経験したこと。
けど、実際は仲間の誰ひとりとして欠けていなかった。
だけど、それが現実であったら?
そうは思いたくもない。
「…けど、あいつには、それが実際にあった…んだよな……」
そうなったとき、自分は今のままでいられるのか。
それとも、今のように無条件で相手を信じるといってつき進めることができるのか。
仲間も…親友もコレットも、誰もいなくなったこの世界で。
ジーニアスも思うところがあるのであろう、さきほどからずっと無言のまま。
……答えは、見つからない。

光と闇の協奏曲 ~心と選択~

「ロイドよ。どうした?疲れた顔をして」
コレットを少し安心できる場所で休ませるべきだろう。
というリーガルの意見のもと、一度、シルヴァラントへ。
やはり上空の異変は変わっておらず、また移動方法も天地がひっくり返ったような、そんな感覚。
のままでしかないようではあるが。
「親父、おれ、疲れてなんて……」
どうやら、呼ばれていた、らしい。
イセリアに戻ると、家々の修理で呼ばれていたらしいダイクが、ロイド達に気づいて声をかけてくる。
ちょうどファイドラの家、すなわちコレットの実家にダイクがいたこともかなり大きい。
「強がることはないだろう」
「たしかに。ロイドは休息が必要かれしれないわね」
そんなロイドにリーガルがいい、その台詞にリフィルがうなづく。
「そうね。すこしダイクさんとお話してきなさい。私たちはまっているから」
「皆……」
「まあ、今から道具をとりに家に戻るんだが……何があったんでぃ?」
とりあえず、ダイクとならびつつ、ロイドの家へ。
家にもどる道すがら、ダイクがそんなロイドにときいてくる。
「いろいろだよ。俺。ここまできて、それでもまだ自分が本当に正しいことをしたのか、迷ってるんだ」
俯き加減にそういうしかできない。
そう、本当に正しいことをしているのか。
それとも、ミトスがいうことが正しいのか。
テセアラがしている、という人体実験。
クルシスが…ディザイアンがしているエクスフィア製造、という名の人間牧場。
どっちが正しいというわけでもない、していることはどっちもどっち。
そして自分達。
よかれとおもってしたことは、確実に今、世界、二つの世界にきしみをあたえている。
切り裂かれてゆく大陸。
隆起する大地。
沈んでゆく大陸。
もう、何が正しくて何がよくないことなのか、わからない。
だからこその台詞。
「馬鹿いうな。お前が正しいことをできるなんて思いあがっちゃいけねぇ」
「おやじ?」
うつむくロイドに、それでいて、さらり、とぴしゃりといってくるダイク。
そんなダイクの台詞におもわず歩きつつも視線をあげる。
気づけば、沈黙を間にいれつつの会話であったから、であろう。
いつのまにか、家の前にまでたどり着いていたらしい。
「お前はお前なりに考えて、精一杯考えて、最善をつくしたんだろう?
  それなら、あとは自分のしたことに責任をもっていきるだけでぇ」
ダイクの言葉はまさにそのとおり。
してしまったことは取り返しがつかない。
それに関して責任をもつ。
それがたとえどのような結末、結果を迎えていようとも。
ダイクはロイドが何を悩んでいるのか、なんてことはわからない。
だが、すくなくとも空にみえている大陸と、このマナの変化。
それに確実ロイドがかかわっている、というのはわかる。
まあ、確実かかわっているのはあのエミルという少年、であろうが。
大地におけるマナが感じられなくなってきていることにも気にかかる。
まるで、そう、何かに邪魔されているようなそんな感覚。
マナが感じられないのにそこにある自然。
それはまさに、先日、ダイクがエミルより手渡されたとある草花のごとくに。
マナを一切関知させることのない…草花。
それと同じ感覚を自然界全てが纏い始めている。
「……ああ、わかった」
責任をもって生きる。
その言葉に、すとん、と納得するしかできない。
そう、自分はいつもそういっていたはずではないか。
自分の今はたくさんの犠牲の上にあるのだから、と。
それをまた見失いかけていた。
だからこそ、ロイドはこくり、とうなづく。
うなづくしかできない。
すでにもう後戻りはできないところにまできている、のだから。
「じゃあ、ちょっとは元気に笑ってみせな。大事な息子がしょげてちゃあきになっちまう」
「ああ。…ちょっと、話しこんじゃったな……そういや、先生たちにいってきてないや」
村をでることも、話していない。
ダイクと話しがてら、きづけば家にまで戻ってきていたのもまた事実。
心配してるかな?
そうおもっていた矢先、
「ロイド~。皆がそろそろいこうって…きゃ!」
「コレット!?」
どうやって知った、のであろうか。
パタパタと空をとんで、コレットがやってくる。
そのまま、着地しようとして失敗したらしく、家の前を流れる川の中へともののみごとにダイブする。
バッシャァン。
何ともいえない盛大な水しぶきの音。
「ノイシュ、ありがとな。…うわ、でもさすがに川を流されたら水浸しだな……」
流されようとするコレットをノイシュが水にとびこみ救助する。
「えへへ。ありがと。ノイシュ」
家の前の小川はノイシュにとっては水浴び場なので、飛び込むことに躊躇はない。
この小川、底が浅いようでいてそこそこの深さはたもっている。
だからこそ、川魚などもこの小川からとれる、のだが。
ノイシュに背中を加えられ、川からひきあげられているコレット。
そんなノイシュにコレットがお礼をいい、ロイドがコレットの姿をみてぽつり、ともらす。
事実、コレットは川におもいっきりダイブした格好になってしまったがためか、
全身からぽたぽたと水が滴りおちている。
「そうだ、とりあえずこっちこいよ」
問答無用、とばかりにいきなりコレットの腕をひっつかみ、そのまま家の中へ。
「?」
いきなりの育ての息子の行動にダイクが疑問におもい首をかしげているそんな中。
「よいしょっと」
「ロイド!そんな、いきなり!」
「へ?何が?」
「は、はずかしいよう」
何やらそんな声が家の中よりきこえてくる。
「何でえ?何があったんでぇ?」
ロイドのやつ、何をコレットちゃんにしてるんだ?
ダイクがそうおもっていると、やがて、扉ががちゃり、と開かれる。
「ごめんな。とりあえず俺の服をきてくれよ」
「う、ううん。ありがとう。でも突然服を脱ぎだしたからびっくりしちゃった」
そこには、なぜかロイドの服をきているコレットと、
そして…下着一枚で腰元にタオルをまきつけているロイドの姿が。
「・・・・・・何だ何だ。おめえ、わざわざ服なんざぬがなくても。部屋にもどれば着替えがあるだろうが」
おもわずその光景をみて一瞬無言になりつつも、呆れた声をだすダイク。
どうやらロイドは濡れた服のかわり、とばかりに自分の服を差し出した、らしい。
「あ!そういえばそうだった!ここ、俺の家だ!…ごめんな。コレット。そんな汚い服をきせちまって」
ダイクにいわれ、はっとする。
いわれてみれば二階の自室にいけば服はたくさんある。
自宅だ、というのをあるいみで失念していたといってよい。
「そ、そんなことないよ。大丈夫」
「それより、早く着替えてこい」
コレットがとまどったようにあわてていい、ダイクがため息まじりにロイドにいってくる。
「お、おう」
ダイクにいわれ、再び家の中にはいり、自分の自室へと。
ロイドが家の中にはいってゆくのを確認しつつ、
「・・・えへへ。ロイドの臭いがする」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ロイドもなんできづかんかねぇ。あの朴念仁は」
手を交差してそんなことをふにゃり、と顔を緩ませていっているコレットをみて、
ふたたびため息をつきつつつぶやいているダイク。
と。
「おまたせ~」
「あれ?この服と同じだね」
みればロイドの服はまったく同じ。
あるいみでコレットとおそろいといってよい。
「ああ、俺、この服がお気に入りだかせさ。親父が着せかえられるようにって大分つくってくれてるんだ」
「・・・・・・・・・・そういや、前にそんなこといってたよね……」

ロイドとコレットがダイクの家でそんな会話をしている同時刻。
「お~い、しいな。そんなところで何たそがれてんのよ?」
じっと、とある方向をみて何やら物思いにふけっているしいなの姿。
そんなしいなにゼロスが声をかけているのがみてとれる。
しいながみている方向には、その先にイセリアの聖堂がある、という。
神子の神託をうけるマーテル教の聖なる聖殿。
ここ、シルヴァランドにおいて、ちょくせつ天界と会話が可能といわれている地。
もっとも、テセアラに関しては直接天界から神子に神託が下るらしいので、そういった場所はあまりない。
逆をいえば神子がいるところが聖殿ともなりえたりもする。
「あんたがいるとおちおち考え事もできやしない。あっちにいきな」
あのときから懐にいれていたはずのコリンのスズはない。
だけど、どこかでコリンが身守ってくれているような、そんな不思議な感覚がしいなの中には常にある。
なぜかわからないけども、このあたりは強くコリンの気配を感じられる。
それこそ聖堂がある方向のほうから特に。
そんなことはありえない、とわかっているのに、おもわず視線はそちらをむいてしまっている。
もっとも、しいなはしらない。
かの聖殿はヴェリウスの拠点と今はなっていることに。
新たな理をえたコリンことヴェリウスがもっとも信仰…人の心があつまるその地を拠点、としていることに。
「この旅が終わったあとのことをかんがえてんのか?」
じっとコリンの気配を感じつつ、この旅が終わったあとのことを考えていたのは事実。
「な!?」
ゆえにこそ驚かずにはいられない。
どうしていつもいつも、話してもいないのにこう相手の心を読み取るのが上手というべきか。
まあ、大人たちの醜い権力争いの中にあってつちかわれたゼロスのその特技は、
あるいみ神がかりすらかかっているのでは、とおもわせるほど。
「やっぱな。ははは」
あきらかに何でわかった、というように顔を真っ赤にさせるしいなに苦笑せざるをえないゼロス。
ほんとうに、このしいなはわかりやすい。
ゼロスからみてもうらやましいほどに。
彼はどうあがいても絶対にこうはできない、という自覚がある。
そうすることができる立場でもない。
「う、うるさいねぇ!」
おもわずなぐりかかろうとするしいなであるが、ひらり、とゼロスにかわされる。
「で?どうすんのよ?おまえは」
「あたしは…あたし達みずほの民はテセアラにはいられなくなるだろうね。
  結果として国王の命令に逆らった形にもなってるんだし……」
「まあ、事後報告だったしなぁ。あれは」
しかも暗殺対象をともなっての帰還、である。
いくら後から言質をもぎとったといえ、命令を違反したことにはかわりない。
「もともと、みずほの民はねなし草だっていうし。どこか住みやすい土地にいって静かにくらすさ」
今の里はかなりのものに目につきすぎている可能性がある。
特に、くちなわが里の場所をもらしていた以上、いずれは引っ越しは必然となってくるであろう。
「いくこたぁねえよ」
「え?」
いきなり、何をいわれたのかわからずに、おもわずしいながゼロスの顔をまじまじとみる。
「お前達の意場所くらい、俺が何とかしてやる。
  俺にだってそれくらいのことはできるだろ。何たって俺様神子だし」
何しろ国王すら、クルシスの神託をうけ、神子が決定するようなもの。
あるいみで神子の立場、というものはいまだもってしてかなり大きい。
もっとも、クルシスが壊滅したことがわかれば国がどうなるかはわからないが、
そもそも、クルシスからの神託というのは自分がきいていたわけで、他のものがきいたことは滅多とない。
ゆえにどうとでもごまかそうとおもえばごまかせる。
それに、いい理由もできている。
自分をないがしろにしたから世界が大変なことになった、という大義名分も今現在、
この世界のありようからしてもっともらしいいい分としてまかりとおる。
間違いなく、人々はそれを信じるであろう。
時として嘘のほうが真実味をましていることがあるといういい例ともいえる。
「ゼロス……」
「へ。あの熱血馬鹿の病気がうつっちまった。やだやだ」
かるい口調でそういうが、ゼロスのその言葉に嘘はないっぽい。
「信じていいの?」
「お、おう!泥舟にのったつもりで、ど~んとまかせとけ!
  そのかわり、これからもこの神子ゼロス様のために忠誠をつくすように。ハッハッハッ」
「…バカ」
だけども、これほど頼もしい味方はいない、とおもう。
が、おそらくは、近いうちに引っ越すことは確定、であろう。
もっとも、しいなはしらない。
すでに、イガグリがエミルによって次なる候補地を案内されている、ということを。


「よくきたな。客人はすでにオリジンの眠るトレントの森へはいっていった」
ユミルの森を抜けた先にとあるエルフの隠れ里、ヘイムダール。
ようやく辿り着いたはいいものの、日が暮れかけ、すでに薄暗くなりはじめている。
クラトスが話しをしていたのかどうかはわからない。
が、族長プラムハルドが村の入口でどうやらロイド達をまっていたっぽい。
彼らの姿をみるなり、そんな声を投げかけてくる。
「では、私たちはここで」
前回はたしかに滞在を許されたが、そのときの居心地の悪さは身にしみてリフィルはわかっている。
ゆえに、ジーニアスをともない、村の出口でまとう、と一行を離れようとするものの、
「まってくれ。先生。ジーニアス。族長。お願いだ。この二人をまた村にいれてくれないか?」
いいつつも、族長に頭をさげているロイドの姿。
「何をいう、またハーフエルフを村にいれろ、だと?
  あのときはセンチュリオン様がたが共にいたから特例であったが…」
見張りのエルフらしき人物が憤りながらもそんなことをいってくる。
また、センチュリオン。
精霊ラタトスクに仕えているという彼らはエルフにとって何だというのだろう、とロイドは思う。
そもそも、ロイドが知っているのは彼らはエミルに従っていた、ということのみ。
だからこそ余計にわからない。
「……あんたたちのその態度がクルシスを産んだんじゃないのか?」
そんなエルフ達にたいし、あきれつつもロイドがいう。
彼らがこうでなければ、おそらくはクルシスなんてものは産まれなかったであろう。
それは確信。
「何!?」
そんなロイドの台詞にロイドにつかみかかり、今にも術を放とうとするエルフの男性。
が。
「まて、二人とも。我々とハーフエルフの溝は深く、暗い。しかし、お前の言葉にも一理ある。
  ……あの方々にもいわれたしな。よって、ただいまからオリジン解放の間のみ、二人の入村を認めよう」
そんなエルフの男性をとめたのは、ほかならぬ族長自身。
「族長!」
そんな長の決定に不満そうな声をあげる男性と、周囲にいた別のエルフ達。
「お前達のその態度が、あの御方たちにあのような決定を下されたというのを理解しろ」
『そ…それは……』
その台詞にエルフ達は黙り込むことしかできない。
そう、全ては自分達の態度にもよったのである。
今のこの、かわりゆく世界のありようは。
あのような、といわれロイド達はただ首をかしげるのみ。
「ただし、二人はいかなる村の設備使うことはできぬ。よいな」
いくらこの村で産まれ育っていた、といえど、いまだに彼らの家族が原因、と思いこんでいる。
否、真実を認めようとしないエルフのものは多々といる。
あのとき、犠牲になったエルフの民はそう少なくはない。
「結構です」
「やな感じ~。エミルが一緒にいたときとあきらかに態度ちがうし」
あからさまに態度が違う。
リフィルはすでに割り切っている。
ジーニアスからしてみれば、エルフ達の態度は何ともいえない思いにとらわれる。
所詮、エルフといえど人間といえど自分達を邪魔もの扱いすることにはかわりがない。
「よし、クラトスのところへ」
そのまま、すぐさま森のほうへいこうとするロイド似た石、
「ロイド、まって、少しは落ち着いたほうがいいわよ。
  これから戦うクラトスさんはロイドのお父様なんだから」
コレットが、ロイドの服をひっぱりひきとめる。
「わ、わかってるよ!」
「たしかに、コレットのいうとおりたな。ロイド、あせるな」
気があせるのはわかるが、しかし焦っては事を仕損じる。
ゆえに淡々とリーガルもそんなロイドをたしなめる。
「クラトスとの戦いはこの世界の命運を握っているのよ。今夜はここにとまって気持ちを整理なさい。
  …これが最後の戦いになるのだから」
「…わかったよ」
「それに、もう、日も暮れるわ。夜、トレントの森に入るのは、危険よ」
そう、危険すぎる。
それでなくてもかの森は昼間ですら迷い、さらには奥にたどり着けないともいわれている地。
夜、中にはいって無事ですむどころか、確実に少しすすんだだけで、
森の出口に戻されるのが目にみえている。
「なら、二人は私の家にくるとよかろう。…宿の使用はみとめられんからな。
  お前達がかつて暮らしていた家は村人の手により今はもうないしな……」
もののみごとに焼き払われた。
こんな村の状態だからこそ、種族の状態だからこそ、センチュリオン達に釘をさされた、のだろう。
変わらない以上、こちら側にも考えがある、とのお達しです。
といわれた。
誰が、とはいえない。
おそらくそれは大樹の精霊の決定。
あらがうことなどできはしない。
「お気づかいありがとうございます。でも、私たちは広場で野宿でもいたしますわ」
たしかちょぅどいい広場があったはず。
それにあそこならば、別に里のものに迷惑をかけることもない。

「…クラトス殿の行動に対する疑念も全てもうすぐ解決するでしょう」
「私たちは、古代カーラーン大戦に全ての理由を押し付けていただけなのかもしれません」
族長から報告があった。
センチュリオン達からの伝達があった、と。
精霊側の考え。
それはエルフ達にはわからない。
だが、一つだけわかることがある。
あからさまに減ってきているマナ。
感じる自然の雰囲気があからさまにかわってきている。
自分達にすらマナを感じ取れなくなってきている、その現象が確かにおこりつつある。
嫌悪感をあらわにするエルフもいれば、かといって、率先して手伝おうとするエルフのものたちもいる。
特にリフィルの小さいころをしっていた女性などは、リフィルにかなり同情的。
もっとも、その知能ゆえにテセアラに目をつけられた、という理由はあるにしろ。
それでもあのときの騒ぎにまきこまれて子供を失った女性などはリフィルにかなり嫌悪感をもっているが。
「クラトス殿は、我らの知識をもとにかつて指輪をつくろうとしていた。全ての決着をつけるために」
指輪を求めたが、万が一もありえる、とおもい、作成方法をエルフにとクラトスは、
かつてクルシスを抜けて指輪を探している最中、接触を果たしている。
野宿の準備をしている最中、数名のエルフ達がロイド達にと薪をもってきたりして、
そんなたわいのない会話をしたのちに、それぞれの家へともどっていったのはつい先ほど。
ぱちぱちとした薪のはぜわれる音が虫と鳥らしき声が響くなか、しずかに響く。
見張り、なのだろうか、それとも監視なのか、それはわからないが、
遠巻きに武装しているエルフ達が常に待機しているのが見て取れるのを除けば、
いつもとかわりのない野宿の光景といってよい。
「不安なの?」
じっと、ただ火をみていたロイドにリフィルが問いかける。
クラトスと戦うかどうかの決心は、まだロイドの中ではついていない。
「え?」
「クラトスを倒さなければねオリジンは解放されない。よしんば戦いを回避できたとしても、
  オリジンは解放されなければならない。オリジンを解放すればクラトスは死ぬかもしれない。
  堂々巡りだわ」
「うん。俺、クラトスと話しをしたいよ。本当に別の方法はないのかって」
それは素直な気持ち。
そう、別の方法はないのか、と聞きたい。
切実に。
「別の方法がないことを想定して結審しておく必要があるわね」
「先生……」
たしかに、そうなのだが。
しかし、人にいわれれば、それがずしり、と意味もおもくのしかかる。
「ごめんなさい。冷たいいい方しかできなくて」
「いや、先生はいつもわざと俺達に厳しいことをいってくれてるんだ。
  …今晩中に決心するよ。クラトスを倒すかどうか」
いつもそう。
常にリフィルは教育者として間違ったことはいわず、常に一線をひいて物事をみるように。
そう常にロイド達に教えてきていた。
最も、それをロイドが実戦できていたかどうかはともかくとして。
「ねえ。ロイド。二兎追うものは一兎も得ず、っていうよね」
うつむいたロイドにたいし、ジーニアスが話しに割ってはいってくる。
「ニト?ニトってやつおいかけようとして、イットってやつが燃えるってことか?」
『・・・・・・・・・・・・・』
ロイドの本気でいっているらしきその台詞に、一瞬その場にいる全員がだまりこむ。
こっそりと聞き耳をたてていたエルフ達ですら、何やら絶句しているのが見て取れるのだが。
それに気づいたのはコレットとゼロスのみ。
「…いっそ、ロイドって天才なんじゃないかって思うよ」
どうやれば、そのような解釈になるのだろうか。
そもそも、得ず、といっているのにどうしてそれを燃える、と聞き間違いをしているのやら。
だからこそジーニアスは盛大にため息をつかざるをえない。
みれば、周囲にいる他のものも、うんうんとうなづいていたり、こめかみに手をあてていたりするのがみてとれる。
「てれるなぁ」
しかし、ロイドはそれを言葉通り、ととらえたらしく、何やら照れていたりする。
「ほめてないから」「ほめてない」「ほめてないです、ロイドさん」「「ロイド……」」
もののみごとに、そんなロイドにたいし、ジーニアス、ゼロス、プレセア、
そしてリフィルとリーガルの声が一致する。
わかっていないロイドにもう一度ため息をつきつつも、
「要するに、あれもこれも欲張ると失敗するってこと。…僕みたいに」
いいつつ、ぎゅっと懐をにぎりしめるジーニアス。
「ジーニアス?」
そんなジーニアスの態度に首をかしげるロイド。
「僕は、ロイドともミトスとも仲良くしていたかった。
  それで、結局は、ミトスを、僕の初めての同族の友達を……」
そこから先は言葉にならない。
話しあえばわかってもらえる、そして今までのように。
そうおもっていた。
だけど、現実は自分達の手でミトスを殺してしまった。
そのことがジーニアスに重くのしかかっている。
「ごめんな。ジーニアス。俺、お前の友達を…止めるって、いったのに、なのに…」
ジーニアスに自分はミトスをとめてやる、と大口をたたいておきながら、結局実行できていなかった。
あのときは絶対にできる、とおもっていた。
だけど、現実は甘くはなかった。
「ううん。そんなことを謝ってほしいんじゃないんだ」
いいつつ首をふり、懐から小さな何かを取り出し前にとつきだすジーニアス。
「これは……」
「まさか、それはミトスのクルシスの輝石じゃあ!?ジーニアス、あなた……」
それをみて言葉をつまらせているプレセアに、驚愕したようにいっているリフィルの姿。
「ごめんなさい。救いの塔でひろったけど、まだ壊すことができなくて。もってきちゃった。
  …せめて、再生された世界をみせてあげたいなあって思って……」
それは自分のエゴかもしれない。
けど、ミトスも求めていたものは自分達と同じであったはず。
だから、見せてあげたかった。
かつて君が護ろうとした世界はこんなに綺麗になったよ、と。
「でも、それがあるかぎり、ミトスは生き続けるわ。あなたも知っているでしょう?ジーニアス」
「…アリシアがいっていました。意識があっても、ずっとまどろんだ生をつづけることは…苦痛だ、と」
「判ってる。けど………ロイドは、後悔しないで。ただそれだけ、だよ」
リフィルとプレセアにいわれ、ジーニアスは口ごもるが、その視線をロイドにむける。
ミトスを止められる、ジーニアスもそうおもっていた。
けど、結果は自分の手で殺してしまったも同じこと。
だからこそ、ロイドには後悔してほしくない。
たとえそれしか方法がなかったにしても、きちんと覚悟をきめているのとそうでないのと。
その後にかかってくる負担は格段に違うがゆえに。
「それより、ゼロス、あんたなんか不機嫌になってるけどどうしたんだい?」
しばし何ともいえない沈黙がたちこめ、ふと話題をかえようと、しいなが、
さっきから何やら不機嫌そうな表情をしているゼロスにと話題をふる。
「あたりまえだろ。あの男、何かんがえてんだか」
「クラトスね」
「クラトス、だな」
不機嫌そうに即答するゼロスにたいし、リフィルとリーガルがため息をつきつつその名を呼ぶ。
「おう。あの男、どうにもきにいらねぇ」
「えっと・・・ごめん?」
きっぱりいわれ、ロイドとしては何ともいえず、とりあえず謝っておくしかできない。
なぜ自分が謝るのか、といわれればロイドにもよくわかっていないのだが。
「ロイド君が謝ることはないだろ?」
「うん、ごめん。だけど…」
だけど、何というか、謝らずにはいられない、というか。
何ともわからない不思議な気持ち。
「まあ、親子だもんなぁ。でもよ。てめえの決着を息子に託すってところが、
  どうも後ろ向きっていうか、責任感がねぇっつうか。結局、息子に親殺しを強いてるわけだろうが。あいつは」
「はは。ゼロスにかかるとクラトスも台無しだな」
ロイドの乾いた笑いはまさに心情を現しているといってよい。
と。
「でも、こうしていると嘘みたいです。このまま放置していたら世界が滅びる、なんて」
みあげる空には星が瞬いており…なぜ夜空のみきちんとみえるのか。
といえば答えに窮するしかないが。
すくなくとも、昼間の別の大陸がみえている景色よりはほっとすることは間違いがない。
新緑の臭いもきちんとあるのに、世界が滅びるとかいわれてもピンとこない。
最も、彼らはしるよしもないので仕方がないのだが。
すでに、大地の理の書き換えはすみ、今ある大いなる実りとはまったくかけ離れたものとなっている。
ということに。
ラタトスクの産みだしマナと、海によって生み出されしマナ、そしてマクスウェルの力によるマナの転換。
転換された物質により大地が、命があらたに理をもってして構成し直されている、ということを。
「そうね。大いなる実りが目覚めなければこの世界は…マナを失い。
  どちらの世界も確実滅びを迎えてゆくしかないわね。
  世界を一つに戻したとしても、マナが涸渇している以上、滅びは免れないのだから」
そして、それをしてしまったのは過去の人間達。
欲のために世界をも見殺しにしようとしたその行動が、今にも影響を与えている。
「私たちのしていることは自然の摂理に反しているのかもしれません」
「え?」
プレセアの言葉に思わずプレセアをみるロイド。
「人は、滅びる選択をした。
  私たちがやろうとしていることは世界の寿命をいたずらに伸ばそうとしているだけなのかも……」
「…世界は滅びたほうがいいっていうのか?」
それはたしかにそうなのかもしれない。
今のありようも、全ては人が産みだしたもの。
だけども滅んでいいか、といわれればそれは否としかいいようがない。
「わかりません。何がいいのか、多分、誰にもわからない」
「そうね。それはわからないわ。昔、ミトスが世界を存続させるために世界を二つにわけたことも。
  彼にとってはよかれ、とおもってのことでしょうけど。それを恨んだものは当然いたはずよ。
  …すくなくとも、どちらかの世界がマナ不足になるのは確定事項だったのだから」
プレセアのいい分はまさにそのとおり。
だからこそリフィルもつぶやく。
「だが、それを強いたのはほかならぬ人でしかない。人が争いをやめなかったからそうなった。
  そして、今の世界のありようをつくったのも人間。…人とはどこまでも愚かなのだな」
リーガルも同じ人として何ともいえない思いになる。
そして今のありようも。
クルシスが関係しないまでも、人はまた愚かな道にふみいっている。
しかも、国をあげて、秘密裏に。
「正しいことなんて何一つないのかもしれない。だからロイドさん。
  ロイドさんは最後にロイドさん自身が信じるものを選んでください」
「ありがとう。プレセア」
「そうだな。結局、何かを最終的に決めるのは自分自身、なのだからな」
「そうね。そしてその結果を自分でうけとめて背負っていく。それが生きる、ということ」
大人組み二人の会話はたしかに深い。
「…最後にクラトスさんと戦うことになるなんて……」
ぽつり、とつぶやくコレット。
「ロイド。父親を生かしておきたいというお前の気持ちはよくわかる。
  そして世界をどうこうしたいという気持ちもだ」
「…ああ。このままじゃあ、大地は死滅するっていうんだろ。皆しんじまう」
リーガルにいわれ、確かにその通りだ、とはわかっているが。
だけども実感がないのもまた事実。
マナがなくては命は紡がれない、とはいうが、認識できないのだから実感がない。
「こんなときには、二通りの選択がある。やりたいことをえらぶか。
  やらなければならないことを選ぶか。だ。もしくは…」
「もしくは、何もせず傍観をきめこむか、ね。…エルフ達のように」
彼らは傍観をきめこんだ。
中間者として。
そして、今も。
「ロイド、大丈夫かい?」
「え、あ、ああ」
何やら考え込み始めたロイドをみて、心配そうにといかけているしいな。
「ごめんよ。大丈夫か、なんてきいて。大丈夫じゃないっていうあんたじゃないもんねぇ。馬鹿だねぇ。あたしは」
「しいな。本当に大丈夫だよ。ただ、ちょっと迷っているだけさ」
「たしかに。クラトスのこと、あまりに突然だもんね」
コレットはそういうが、だがしかし、そのことに関しては、
以前からリフィル達が指摘していたこと。
それをロイドが考えないようにしていただけで。
可能性が指摘されたときから覚悟をきめていればここまで悩む必要もなかったであろう。
否、人だからこそ悩むのであろう。
常に人は悩みの中で生きているのだから。
「でも、時間がない。結論はださなきゃな。
  …コレットのときみたいに中途半端にどっちも救いたいっていうのは、今度は許されないとおもうから」
こうしている間にも時間は過ぎている。
明日になれば、クラトスの元にでむくことになるのだろう。
それまでには覚悟をきめておく必要がある。
「…実の親子が命をかけあうなんて…むごすぎるよ」
「そうだね。せっかくあえた実のお父様とだもんね」
「…あの貴殿は不器用すぎる、のであろう」
しいなにつづき、コレットもうつむく。
リーガルも思うところがあるらしく、何やらそんなことをいってはいるが。
「それは同感だけど、けど息子に何もかもおしつけてるのがきにいらねぇ。親は子をまもってなんぼ、だろうに」
「へぇ。ゼロスがまともなこといってる。けど…うん、そうだよね。親は、子を護ってくれる…んだよね」
自分達を逃がすために母達がシルヴァランドに送ったように。
ゼロスのいい分にめずらしくジーニアスが賛同の意を示す。
「……なんか、ごめんよ。元気つけてあげられなくて」
「そんなことないよ。ありがとな。しいな」
「しかし、クルシスは実質崩壊したはず…だが、大きな問題が残っているな」
「そうね。一番大きな問題ね」
そんな会話をしつつも、なぜか話題はクルシスへ。
リフィルとリーガルはそのことについて何やら話し始めていたりするのがみてとれるが。
「それにしても…星が綺麗だねぇ」
「ああ。そうだな」
「すごいね。今にも降ってきそう」
「星に包まれているようです」
「すごいね。ロイドの家からみえる星と同じくらいたくさんみえる」
何やら難しい会話をはじめたリフィル達とはうらはらに。
ぼ~と空を見上げているロイド達。
たしかにしいなやコレットのいうとおり。
空にみえている星は今にも降ってきそうなほど。
プレセアの表現はまさに的をえているのかもしれない。
静かな空間で、夜空の星々のみが瞬いているその景色は、
今まさに世界が危機に瀕しているとは到底おもえない。
「そういえば、お前よく先生とお前でおれんちまで星の観察にきてたな」
ふと、自分の家から云々、といわれ、ジーニアス達がよく自分の家に観察にきていたことを思い出す。
「うん。よく姉さんにいわれてたんだ。今後のためにもよく星の位置を勉強しておきなさいって」
「何で?」
その台詞に首をかしげざるを得ない。
どうして今後のために勉強を、といわれていたというのだろうか、と。
「そりゃ、いつ村を追われてもいいように…って、あ」
それはつまり、いつ村を追われてもいいように、という前提のもとであったということに他ならない。
「…ま、何にしても星の位置は重要だよね」
「たしかに、道に迷わなくてすむからな」
とりあえず、聞かなかったことにするのが優しさとおもい、あえてそのことには触れず、
無難なことをいっているしいな。
そんなしいなに同意をしめすロイドに対し、
「へぇ。ロイド君にしてはめずらしく星にくわしいのか?勉強嫌いにみえたけど?」
ゼロスがいかにも心外、とばかりにそんなことをいってくる。
「ロイドって、そういうことは詳しいよね」
他のことは綺麗さっぱりおぼえようともしないというのに。
「どういう意味だよ。ゼロスもジーニアスも……」
おもわずそんな二人にロイドがじとめで問いかけるが、二人とも視線をそらすのみ。
そんな中。
「私ね。今でも不思議なんだ。ロイドと、皆とこうしてお話ししているのが」
「何で?」
ふと、コレットが何やらいきなりぽつり、といってくる。
「私、世界再生の旅にでたら、もう二度と戻れないっておばあさまにいわれていたから。
  だから、イセリアを出る前の夜、ロイドと二人でお話ししたととき、これでもう最後なんだなっておもってた。
  でも今はこうして、ロイドの横に…皆の傍にいるでしょう?」
ほんとうに不思議。
祭司たちとともに旅にでて、二度と戻れない、そうおもっていたのに。
なのに、今自分がここにいる、ということが。
「これからもずっとそうだよ」
「え?」
「もう、お前を狙っていたクルシスはいないんだ。明日、クラトスに封印を解いてもらえば、
  世界は一つにもどる。もう、心配しなくてもいいんだ」
世界が一つになれば、神子制度…マナの切り替えをするという役割だという神子はいらなくなる。
そもそも、ユグドラシルがいなくなった今、クルシスがきちんと機能するかどうかすらもあやしい。
だからこそのロイドの台詞。
「そういえば、リフィル。あんたさっきからあまり話してないけど、具合とかわるいのかい?」
ふと何やらリーガルと話している最中、黙り込んでいるリフィルにきづき、しいながといかける。
「え?いいえ。ただ、ちょっと懐かしいな、とおもっていただけよ。気にしないで」
「なつかしい…って、そうか。あんたそういえば、ここの産まれっていってたっけ?」
十一のときに家族とともに里をおわれるまで、ここで住んでいた、そうきいた。
「ええ。そうよ。…世界が二つあるなんて気づきもしなかったわ。何のために研究をしていたのかしら」
「あれ?もしかして、先生が遺跡に興味もったのって、ここを探すため、なんですか?」
リフィルの遺跡への関心。
それは何となくだが、あの空中都市で理解していたが。
改めてそれをきいたわけではないゆえのといかけ。
「…子供のころにみた光景をずっと探していたわ。
  ヘイムダールも異界の扉も全て、テセアラにあったのね。みつからなかったはずだわ」
「そっか。よかったな。先生」
「よかった、のかしら?」
よかった、といわれるとはおもわずにおもわず首をかしげざるをえないリフィル。
「だって、先生はずっとこの村を探してたんだろ?ここをみつけられたんだろ?」
「そうね。結局は良かったのかもしれないわね。
  真実がわかってよかったんだとおもうわ。自分のルーツがどこにあるのか、それをずっと求めていたのだから」
「自分のルーツか…俺はどこの産まれなんだろ?」
ふと、そのことを知らないというのにきづき、ロイドがぽつり、とつぶやきをもらす。
まあとある人里離れた海辺にて産まれた、ということをロイドは知らない。
「クラトスさんに聞いてみたらどうかな?きっと答えてくれるよ」
そんなロイドにコレットが話しかける。
「クラトス…か。俺、いまだにクラトスのこと、よくわかんないんだ。
  自分自身に決着をつけたいんだ、というのはわかる。わかるけど…」
「クラトスはあなたを守ろうとした。命がけで、ね。アルタステのところでのことを忘れたわけではないでしょう?
  それがどんな意味をもつのかよく考えなさい」
それはわかる。
あのとき、理解してしまった。
どうしてクラトスにたいし、どこか親近感のようなものを感じていたのか、も。
どうして彼に認められないのが悔しい、と感じていたのかも。
ストン、と納得してしまったというのも事実なのだから。
それでも本能的に認めたとしても心がおいついていない、というのが現状。
「でも、何で…だったらどうして、大人しくミトスのいいなりになってたんだ?
  ミトスのやつを止めたり、諌めたりしなかったんだ?俺のときみたいにさ」
それは旅を初めてまもなく、よくクラトスには様々な注意をうけていた。
だからこそ、どうして、という思いがぬけない。
「さあ。どうしてかしらね。すくなくとも、あなたを守ることはミトスの利益には反していたはずだわ」
「……あいつは、俺達をだましてた。ずっと、旅が始まったあのときからずっと……」
「……人は、かわってゆくわ。よくもわるくも」
ハーフエルフとしっただけで手のひらをかえしてきた人々をリフィルは嫌というほどにしっている。
それまでとても親切だった人達ですら、である。
だからこそ、身をもって知っている。
里をおわれた経験もあり、人はかわるのだ、ということを。
いい意味でかわったのをみたのはイセリアが初めてといってよい。
「だったら、だったらどうして今さら戦うなんていうんよ。決着をつけたいからって、どうして戦うなんて……」
いろいろと皆にいわれたからこそみえてくるものがある。
だからこその不安。
「大人って生き物は厄介でね。なかなか自分の考え、過ちを認めたりできないものなのよ」
「うむ。彼なりのけじめのつけかたなのだろうが」
リフィルの言葉にリーガルもふかくうなづく。
「だから、あいつは好きになれねぇんだよ。親が子におしつけてどうするんだよ」
そんな彼らの会話をききつつ、ゼロスが吐き捨てるようにいい放つ。
「そうだよね。ロイドの父親なんだろ?…あんたも複雑なんじゃないのかい?」
「でも、なんていうか。親父っていわれても何か実感があるわけじゃないし……
  いわれてみればいろいろと助けられたりもしてたような気もするけど」
「…おいおい、ロイド君、まさかあれにきづいてなかったとか?」
「…そのよう、だな」
野営の最中、クラトスがこっそりとロイドの毛布などを正しにきていたことを、
リーガルもゼロスも知っている。
ちなみに、それがあり気にかけていたのだが、ほぼこっそりと後ろをついてきていたことがあることも。
だからこそ、あきれざるを得ない。
「?」
そんな彼らの言葉の意味がわからずにロイドは首をかしげるが、
「何ていうのかな。クラトスが父親だったっていうほうが何というか正直複雑な気持ちってところなんだよ。
  そしてよりによって自分と戦え、だもんな…」
いろいろな気持ちがごっちゃになって、いまだに確実たる決心がつかない。
「は~。そういうもん、なのかねぇ。あたしからすればちょっぴしうらやましい、かな」
「どうして?」
「ほら。あたしって捨て子だったから。あたしの両親がどんな人だったかなんてまったく知らないんだよね」
「…しいなはたしか、ガオラキアの森でみずほの頭領さんに拾われたとかいってたよね?」
ジーニアスが申し訳なさそうに何やらいってくるが。
「ああ。だけどそれはうらんじゃいないよ。お爺ちゃんに育ててもらったこと、とても感謝してるしね。
  けど、あたしもさ。なんというかいろいろと考えてみたんだよね。
  ロイドの立場をあたしの立場に置き換えてみてさ。
  自分の親が自分の敵で、でもそのくせ助けてくれたりしたら…あたしは馬鹿だから、混乱しちまうだろうなって」
「だぁぁ!やっぱあいつは許せねぇわ」
しいなが何かいいかけると、いきなりゼロスがわめきだす。
「ゼロス?どうしたっていうんだよ。いきなり」
いきなり大声をだされ、びくり、と反応しているロイド達。
「今まで散々、俺達の敵にまわって、息子のお前をうらぎって、むかついて当然だろうが」
「それをゼロスがいう?ゼロスが?」
じと目でそんなゼロスをみていっているジーニアス。
「敵をだますにはまず味方から、とはいうけども。たしかにあなたがいうの、という感じね」
リフィルもまたため息をつかざるを得ない。
少なくとも、彼が様々な場所に情報を流していた、というのは事実なのだろう、と確信をもっているからこそ、
ため息をつかざるをえない。
「俺様のことはいいんだよ。俺様には高くてひろ~い心の棚があるからな」
「自慢げにいうことじゃないだろう。は~、まああんたはそういうやつだよ」
きっぱりといいきるゼロスにたいし、しいながあきらめ半分といった口調で何やらいっているが。
誰がいったか道化師、とはよくいったもの、だとはおもう。
「ともかく。だ。俺様は、親ってのは子供を゜まもるべき存在だとおもう。
  なのに、あいつは中途半端にいったりきたり。
  そんなことしたら息子であるお前が苦しむってわかってるだろうに。
  んでもって、あげくの果てには明日の親子対決だぜ?
  親子で刀の振り回しあうなんて冗談じゃねぇ。それが特訓とかいうのならともかく。そうじゃないだろうが」
「あら。あなたにしてはまともなことをいうのね。でも…たしかに、そうね」
リフィルもこのたびばかりはゼロスのいい分に賛同するしかない。
たしかにゼロスのいい分は至極もっともであり、間違ったことはいっていない。
「ゼロス…あんた……」
「俺様はさ、嫌なんだよ。自分の都合で死文達の勝手な都合で子供を振り回すような親は…」
「神子」
「?」
しいなはゼロスの事情をしっている。
そしてリーガルもその立場柄しっている。
しらないプレセアは首をかしげるしかできないが。
「いわれてみれば。そっか。俺、クラトスに振り回されてるってことになるのか」
一瞬、しばしロイドとコレットをのぞいた全員で顔をみあわせたのち、
誰ともなく盛大なため息がその場にもれいでる。
「…ロイドらしいよね。それにきづいてなかったの?」
大きな息とともにジーニアスが問いかけるが、
「いや、いわれるまでそうとはおもわなかったというか、何というか……」
『・・・・・・・・・・・・』
あっさりといわれたロイドの台詞にしばしその場に静寂が訪れる。
「そもそも、あいつ、始めからエターナルリングのことも何もかもしってやがったんだぜ?
  エターナルソードは人間には扱えないことも。
  コレットちゃんの病気のことも…まあこれはエミル君の活躍があって事なきをえたらしいけど。
  エターナルリングのつくりかたも」
「どうしてゼロス、あなたがそれをしってるのかしら?」
あまりにも詳しいその内容に、すっとリフィルの視線がいつもの監視する冷静な視線にと戻る。
「え?…あ~、ま、いっか。俺様にクルシスから連絡が入ってたのはしってるだろ?」
「そういえば、プロネーマが始めから僕たちの監視役としてとかいってたような……」
あのとき、救いの塔でたしかそのようなことを相手がいっていたことを思い出す。
ゆえにぽそり、と思いだすかのようにジーニアスがつぶやくが、
「そもそも、お前達についていくように、との指示はクルシスからもあったのも事実だしな。
  というか、あいつら俺様を何だとおもっるてんだか。
  ユアンにはじまり、プロネーマ、さらにはクラトス。それぞれが違うことをいってくるんだぜ?
  クラトスのやつに関してはプロネーマ達から聞かされていたからな」
かつて、クルシスを裏切ったことがある、ということと、息子の存在はユアンから聞かされていた。
「俺様に連絡とってきては、ロイドはどうしてるとかきくよりも、なら自分で動けよ、とおもうだろ!?普通!
  あげくは、ロイド君の天然たらし具合をストーカーよろしくついてきていた先でみたときなんか、
  俺様が原因でロイド君が天然たらしになったとかいちゃもんつけてきたり。
  さらにはロイド君が嫌いなトマト料理になりそうなときに、勝手に俺達の食材を増やしてたり」
何やら思い当たるふしがある。
ものすごく。
「……そういえば、まえ、いきなり食材が増えてたことがあったよね。もしかして、あれ?」
「あ、やっぱり天の恵みだったんですね。あれ」
あのとき、コレットがきっとマーテル様が恵んでくれたんですよ、とかいい。
なら、クルシスがか?といった台詞がまさか本当だったとは。
結局、不気味でもあったので結局のところ捨てざるをえなかったのだが。
ちなみにそういったことは一度や二度ではない。
ゆえに彼らは心辺りがおもいっきりありすぎる。
「天…のめぐみ……かい?まあ、クルシスに所属しているクラトスが、というのならたしかにそうだろうけど…
  けど、ゼロス、あんたなんでそんなこと詳しいんだい?」
「事あるごとによびだされて、愚痴をいわれてる俺様の立場になってみろ!
  そんなに息子が心配なら親らしいことをしろ!といいたいだろうが!」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
しばしの沈黙ののち、
「…あなたが、夜、よく私たちのもとを離れていたのはそういう理由もあったのね……」
リフィルの盛大なるため息。
「?つまりどういうことだ?」
ロイドのみは理解していない。
「つまり、クラトスさんはロイドさんが心配で、ことあるごとにゼロスさんに連絡をとっていた。
  ということみたいですね」
プレセアが何だか頭がいたいような気がするのは気のせいなのかな。
などとおもいつつ、おもわずこめかみに手をあてながらもロイドに説明する。
「え?そうなのか?ゼロス?」
「…似たようなもんだ。そんなことするくらいならもっとはやくに自分の目的とかいっとけよ。
  とおもう俺様も気持ちもわかるだろうが、な?」
「というよりは。あなたのその行動を私たちにも話してほしかったわ。
  だとすれば私たちも対策を立てやすくなっていたもの」
わからなくはない。
そのようなことを呼び出されてはいわれていては…そういえば、ともおもう。
みずほの里においてもゼロスはよく夜外にでていた。
何やらいきなり頼むとかいって酒おしつけられたこともあったし。
などとぶつぶつつぶやいている様子からは、おそらくそれが一度や二度、ではなかったのであろう。
それくらいは容易に予測がつく。
だからこそリフィルはため息をつかざるをえない。
どうやら、あのとき、救いの塔でわかれてからも、クラトスはよく自分達をつけていたのだ、と。
「まあ、あの貴殿がよく後ろからついてきていたのは知っていたが……」
「しってたの!?リーガルさん!?」
リーガルの言葉にジーニアスが驚く。
「うむ。私が火の番のときによくふらり、ときては、皆の毛布などを治して立ちさっていた」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
その台詞にまたまた静寂が訪れる。
「でも、そのときにクラトスから説明をうけていたとしても、私たちはクラトスの話しを信用したかどうか、ね」
「たぶん、しなかったとおもうよ」
「そうか。だからあのクラトスは彼なりにいろいろ準備してたってことなのかねぇ?」
いや、絶対にそれだけじゃない。
たぶん親ばかがはいってるな、と一部のものは思うがそれは口にはしない。
「……四千年」
ふと、静寂につつまれた中、プレセアがぽつり、とつぶやく。
「え?どうしたの?プレセア?」
「クラトスさん達は、四千年前から生き続けている、んですよね?」
「え?あ、まあ、そうみたいだな」
「そうね。伝説の勇者ミトスとその仲間達。カーラーン大戦の英雄。
  その当事者だ、というのだから、そうなる、わね。天使化…人をも超越した存在とはいえ。
  …かつての人がそれを兵器として生み出したというのは…人とはどこまでも残酷なことをするのね」
強制的にマナを変化させ、人でない人を創りだすなど。
それは、命を冒涜している行為であり、世界に逆らっているといっても過言でない。
「クラトスさんが天使とかというのは私にはよくわかりません。
  ですけど、すでにユグドラシルがいない今、実質クルシスは崩壊しているといってもいいはずです。
  なのにどうして、クラトスさんは戦うというんでしょうか。
  物理的に天使であることをやめるだけではだめなんでしょうか?」
「天使を物理的にやめる、なんてできるのかしら?」
「不可能なんじゃねえの?俺様はかつて呑まされたアイオニトスはすでに完全に体内で同化してるしな」
「私も、羽はだせるままだし」
ゼロスがいい、ぱさり、とその光りの翼、金色に輝く翼をその場に出現させる。
話しにはきいていたが、ゼロスの翼というものを初めてまのあたりにし、ロイドは一瞬絶句する。
それにつづいて、コレットも桃色の羽を出現させる。
薄く、透明なる翼。
天使の翼。
「たしか、昔うけたクルシスからの言葉では、マナの変化がどうとかいってたような。
   普通の翼しかないものたちは、マナをきちんと変化させることができず、
   そのままマナが翼として固定化してしまったとか何とか……」
昔いわれたことを思い出しつつもゼロスがそんな説明をしてくるが。
「神子は代々、不老でも知られている。それは天使の子だから、という理由であったが……」
「不老って……」
「エルフ達と同じさ。もっとも、何でも成人後にその成長速度が緩められるせしいぜ?
  もっとも、長生きした神子、という話しはきかないけどな」
次なる器にふさわしいものがみつかれば、神子は救いの塔におもむき、その役目をおえる。
といわれている。
または、次なる神子が誕生し、数年もせずに前の神子は死亡する。
それがこれまでのテセアラのあり方。
「神子の天使化の過程…興味深いわね。調べてみたいわ」
「おお。リフィル様のためならば、この肌をリフィル様にそわすようにさしだしましょう?
  そりゃもう、リフィル様と一つにな……」
ぼがっ!
「あ~ん~た~は~!」
「ってぇ!何すんだよ!しいな!いきなりなぐるなよ!」
「あんたが悪い!」
何やらいつものごとく、ゼロスとしいなのじゃれあいが始まっていたりするが。
「…四千年。どれほどの時間、なんでしょうか?」
「うわ。プレセアちゃん、あいかわらずぶれないね~」
「種の限界をこえて存在しつづけることはつらいことだ、とおもいます。
  生きることに飽きてしまう可能性もありえてしまうのですから」
「たしかに。ね。私たちハーフエルフにしてもエルフにしても、寿命は約千年。
  長い寿命を得ているから、といっていいことばかりではないものね」
そんな二人を完全にスルーして、淡々と自分の意見を述べているプレセア。
あるいみさすがとしかいいようがない。
「でもさ。先生もプレセアも。長生きできればそれだけやれることはたくさんあるだろ?」
ロイドからすれば、あれもしたい、これもしたい。
それら全部ができるんだからいいことなんじゃないのか?という認識でしかない。
が。
「人は、いつか死ぬことがわかっているから、明日おもしれぬから、一生懸命なのではないのか?
  死ねば何もかもがおわってしまう。だから、そのときまでに自分のなすべきことを探していきる」
「そうですね。下手に死なない、とわかって長生きできる、となれば。
  今やろうとしていることも、いつでもできる、といって放棄し…やがて、何もしなくなってしまう。
  そんな気がするんです。…あの、無気力であったウィルガイアの天使達は、そのなれのはてではないでしょうか」
リーガルとプレセアの交互の言葉。
確かに、言われてみれば、その通り、なのかもしれない。
「いわれてみれば。そうだな。たしかに、夏休みがずっとつづいたら、宿題なんかやらないしな」
というかずっと遊んでいるという自覚があるだけにロイドの言葉には実感がこもっている。
何かその意味合いがかなりずれている、とはいえ。
「それはちょっと違うとおもいます」
「かなり違うわね。というか、ロイド、宿題はきちんとしなさい。
  そもそも、あなたにだしていたこのたびの課題、きちんとこなしたの?」
「え?か…かだい?」
「…はぁ。パルマコスタ憲章を暗記することです」
「うげ。で、でてたっけ?そんな課題…というか、先生。
  旅にでてる中でも常に宿題だしてこなくても……」
「いいえ。特にあなたは勤勉がたりないのですから。それだけは譲れません」
「…ロイドさん。学問は大切です」
「ロイド、がんばろ」
「いつもロイドってぼくの宿題をあてにしてまる写ししようとするよね……」
「う」
「こればかりはリフィル殿達の意見に賛同だ」
「だねぇ」
ロイドに対し、全員のあきれたような視線が向かう中、
「……私は、村の皆が私を追い越して成長してゆくのをずっとみていました。
  そのときは感情を失っていたので何ともおもいませんでしたけど。
  妹だったアリシアは私よりもずっと大人になっていた。
  …感情を取り戻し、理解したとき、私は愕然としました。私は時に取り残されてしまたのだ、と。
  ロイドさんのいい方でいうと、私も皆と一緒に新学期を迎えたかったです。
  私は、まだずっと一人、夏休みのまま・・・天使となるということは、その思いをずっと抱く。
  そういうことなのではないでしょうか?一人は…孤独です」
それはさみしすぎる、とおもう。
人は、一人では生きてはいかれない。
必ず、どこかで人と繋がろうとする。
一人で生きてゆく、というのは生半可なことではない。
「プレセアは一人じゃないだろ?」
「私の時がどれほど続くのかはわかりません。
  もしかしたら短いのかもしれないし、そうでないのかもしれない。
  でも、成長してゆくかどうかすらもわからないんです」
「ぼ、僕がいるよ!プレセア!」
「ジーニアス?」
「僕がつねにプレセアの元を訪ねるよ。そうすれば一人じゃないでしょ?
  な、何なら一緒にその……」
「何にしろ、けじめは必要ってこと、なのかねぇ……」
ジーニアスが何やらいいかけるが、ぽそり、としいながつぶやく。
けじめ。
それは心のありようにもいえること。
プレセアの身につけているエクスフィア。
それはハイエクスフィアにと変化する手前の不完全なものであるという。
ゆえに、どんな変調をその体にきたすかはわからない。
そのことは、しいなもまた理解している。
そしてまたゼロスも。
「けじめ…か。それがクラトスにもついたら、俺の産まれた場所を聞くようなことがあるのかな」
ふと、けじめ、という言葉にロイドがつぶやく。
「そうね。もしもあなたの産まれた場所がわかったら、一緒にいきましょうか?」
「あ、それいい。ロイドのようなお人よしがうまれた場所、僕もしりたい」
「うん。私も。ロイドの産まれ故郷か。どんなところなんだろ?」
「それは興味深い、です」
「よっしゃ。なら、ロイド君の産まれ故郷に皆で凱旋といくか?
  もしかしたらロイド君見たいな性格な輩がわんさかといたりして」
「げ、そ、それはちょっと……」
「ロイドがたくさんいるの?ロイド、兄弟がいたんだ?」
「え?俺に兄弟がいるのか?初耳だ。クラトスがいったのか?」
何やら話題が毎度のことながら、コレットが絡むとずれてゆく。
「…話しがずれてるぞ」
「まあ、コレットとロイドだし。でも、ロイドに兄弟がいたらどうなっていたのかしら?」
「さあな。…あんがい、しっかりものになっていたかもしれぬな」
「…ありえる、わね」
そういいつつも苦笑する。
まあ、しっかりのものロイド、というのがまったく想像できないが。
「しかし、不思議な気分だな」
長話しをしているせいで、それぞれのコップの飲み物がすくなくなっている。
鍋よりよそい、それぞれのコップにあらたな暖かい飲み物を入れ直したのち、
坐りなおしてからリーガルが空をみあげつつおもわずつぶやく。
「あら、どうかしたの?リーガル」
「いや、ロイドの父親が私より若い男だということがな」
見た目はどうみても二十代そこそこ。
それでロイドのような子供がいる、というのだからあるいみ詐欺。
リーガルなどはその歳相応になかなかみられない、というのに。
「若い…たしかに見た目はわかいけども。クラトスはでも実年齢はざっと四千歳は超えてるわよ?」
「それに、あのユグドラシルをみるかぎり、自分で成長速度というか、
  姿形は自在にかえられるんだろ?あいつら天使は。…あいつだけかもしれないけど」
リフィルとゼロスのいい分は最も。
「若い…か。たしかに見た目はなぁ。クラトスってちょと歳の離れた兄きって感じだったし」
「あれ?でも、以前ロイドがクラトスさんのこと冗談でお父さんとかよんだとき、
  なんか嬉しそうじゃなかった?」
ふと、以前のことを思い出し、コレットが何やらそんなことをいってくるが。
「あのとき、そういえばクラトス、硬直してたわね。…そこにすでにヒントはあったのね」
まだ彼らが旅をしてまもないころ。
そんな話題がでたことがあり、ロイドがクラトスのことをそう呼んだことがあった。
ちなみに、そのときは、リフィルが母で、という話題になったのでそうなった、のだが。
「歳の離れた兄…か。たしかに、いわれてみれば、私はロイドのことを歳の離れた弟。
  そのように捉えていたのやもしれぬな。どこかほうっておけないところも」
「…手がかかるこほどかわいい、というものね」
リフィルにとっては問題ばかりおこす生徒なので目がはなせない、という認識が強い。
「あれ?リーガル。ロイド君にはそういうなら、俺様は?俺様は?」
「神子は神子だろう。それ以外の何ものでもなかろう。特に私の立場からしてみればな」
「あ~、はいはい。リーガルならそういうとおもったぜ。
  さすがレザレノ・カンパニーの会長さんだけのことはあるぜ」
「え?でも、リーガルの弟だったらもっとロイド、絶対に落ち着きがあるとおもうよ」
「え?ロイドとリーガルさんって兄弟だったの?
  クラトスさん、リーガルさんのお父様でもあったんだ」
「「「いや、違う(から)」」」
きょとん、としていうコレットの台詞に、ジーニアス、ゼロス、しいなの声が重なる。
「でも。案外、ロイドとクラトス、似ているところは多いのよね」
「たとえば?」
「トマト嫌いのところとか」
「う」
「…旅の最中でも、必至にトマトに関しては二人してタッグを組んで否定してきてたっけ?
  ……そのたびにエミルにぴしゃり、と言い含められいたけど、二人とも」
ジーニアスがそのときのことをおもいだし、そんなことを言い放つ。
「我を失わぬところとか、案外ロイド。お前のそれは父親に似ているのやもしれぬな」
血の繋がり、というのもはどこかでかならずそういった繋がりが現れるもの。
自分では気づかないうちに。
「なあ。リーガルにはさ。クラトスのこと、理解できるのか?」
「どうした?急に?」
「いや、ちょっと似てるなっておもったんだよ。クラトスとリーガルって。いろいろさ」
どこがどう、というわけではないが、何となく似ているような気がする。
だからこそのロイドの台詞。
「どうかな。私は、愛するもの失ったときですら自分自身は失わなかったとおもう。
  基本的に冷淡なのでは、と自分にあきれたこともあった」
「そうかな?リーガルはアリシアのために復讐しようとしたんだろ?
  あいつは…俺が、母さんが死んだ、とおもって何もかもむなしくなったって前、いってた」
それはフラノールでクラトスにきかされた、過去のこと。
「…俺とノイシュが崖からおちて、そこに大量の血痕があっただけで、もう生きてはいないだろう。
  そうおもったって…だから、クルシスに戻ったって……」
「…そう。生きる意味を見失ってしまったのね。きっと、クラトスはそのときに」
「無気力になったクラトスとは違って、リーガルは復讐しようとした。
  それが正しいかどうかなんてはわからないけど。だから冷淡だとは思わないけどな」
全てを諦めてしまったか、もしくは何か目標をもって生きようとしたか、その差がそこにはある。
「それが真実、アリシアのためなのか。アリシアを失った私自身の悲しみを紛らわせるためなのか。
  それは正直私にもわからぬ。だが…家族を失って無気力になってしまった。
  という、今のロイドのいったクラトス殿の気持ちもよくわかる。
  私は…復讐の先を見据える相手がいた、だが、クラトス殿は……」
妻を手にかけたというクラトス。
愛するアリシアを手にかけたリーガル。
その立場は同じなれど、たちいちが異なっていた。
クラトスは、そのエクスフィアを創りだす組織にいた立場上、誰にもその矛先を向けることができなかったのであろう。
常に自分を責めるばかりで。
「でも、ロイド、いつそんな話しをきいたのさ?」
「え?前、フラノールであいつとばったりであってさ」
「ああ、あのときね。…クラトスもフラノールにきていた、のね」
「とすると、あれかい?あたしたちがアルタステのところにいた、あのときかい?」
「ああ」
アルタステの医者を探しにフラノールへと出向いたとき。
そこでクラトスとばったりであい話しをする機会があった。
結局クラトスはすることがある、といっていなくなってしまったが。
「…沈黙が痛くてさ。だから気になっていたことをきいたんだ。母さんのこと」
その言葉に何ともいえない雰囲気で沈黙が訪れる。
「ロイド…やっぱり、クラトスさんと戦うの?他に方法はないのかな?」
「戦わないとだめなんだろうな…」
ぽつり、と沈黙をやぶり、コレットが不安そうにロイドにと問いかける。
そんなコレットにロイドが覚悟をきめたようにつぶやくが。
そのつぶやきは自分自身に言い聞かせるためのもの。
「でも、お父さまなんでしょう?」
「親父だから戦うんだ」
「え?」
しばし目をとじ、自分の中の考えをまとめる。
それが正しいかどうか、なんてわからない。
けども、今、ここで自分がすべきことをきちんと見据える必要がある、そうおもったからこその台詞。
「あいつは、決着をつけたいんだとおもう。過去の自分にけじめをつけたいんだとおもうんだ。
  なんだかそんな気がするんだ」
「うん、そうなのかもしれないね。クラトスさん、私たちのことを幾度も助けてくれたもん」
「ああ、それに俺自身もけじめをつけたいんだ」
「ロイドが?どうして?」
「俺はずっとお前にたよってきた。世界再生はお前にしかできないって。それを疑問にもおもわなかった」
それがコレットの命と引き換えとはおもわずに。
ただ、コレットだけが世界を再生でき、それがおわればいつものように皆で馬鹿をやりあえる。
そんな世界になる、そう信じ切っていた。
コレットが感情を失った時も、そして器になる、といわれたときも。
選んだのはコレットではなくて世界のほう。
それが偽りの平和、まやかしでしかなかった、というのに。
「それは仕方ないことだよ。それにロイドは言葉どおり、私を助けてくれたじゃない」
「でも…そのためにいろんな人を犠牲にしちまった。
  俺は…たくさんの人の命を背負ってる。その人達のためにもお俺は、過去のクラトスを倒す」
「うん……」
「全てがおわったとき、皆が生きていることを許されている世界になってるといいなっておもうんだ」
ミトスのときのように、どうしてもだめかもしれない。
けど、甘さもすてきれない。
「ねえ。ロイドはどうして、前からききたかったんだけど。ハーフエルフを差別しないの?」
そんな会話をしばし横でききつつも、ジーニアスがずっと気になっていたことを問いかける。
ずっとききたかった。
だからこそ、今しかないとおもっての問いかけ。
「って、したほうがいいのか?」
「僕はそんなのは嫌だよ」
「ならいいだろ?」
いきなり何をいいだすのか、とばかりにきょとん、とした感じできっぱりいいきるロイドだが。
「そうだけどさ。…結局、どこにいってもそれは当たり前だったから……」
当たり前。
それはあるいみで逃げの言葉といってもよい。
が、人はそれには気づかない。
「誰があたりまえってきめたんだよ」
「誰って……」
誰がきめたというわけでもないが、だけども常に人々の態度はそうであった。
イセリアの人々が受け入れてくれた、ということが奇跡というか夢にちかい。
「人間だろうとエルフだろうと、嫌なやつは嫌だし、好きな奴は好きだ。それだけだ。関係ないだろ?
  実際、人間だろうとエルフだろうとハーフエルフだろうと、悪いやつもいればいい人もいる。
  それだけのことだろ?種族とかが違うから、というのは理由にならないよ。
  人それぞれ、違って当たり前、なんだからさ。皆にあてはめるのはおかしいだろ?」
そう、この旅の中でいろいろとみてきた。
自分達とともに旅をしていたときのミトスも、ユグドラシルとしてのミトスも。
どちらも彼にはかわりない。
人は二面性をもっている、とはかつてリフィルが授業中にロイド達にいったこと。
そのときのロイドにはその意味が理解できなかったが、今ではなんとなくだが理解できるような。
そんな気がしている。
なんとなく、だけではあるが。
「ロイド」
たしかにロイドのいうとおり、なのだが。
だが、しかし人々の認識がそうなっていないのもまた事実。
何かあればすぐに人のせいに…ハーフエルフがそこにいれば、彼らのせいにする。
それが今の世の中のありよう。
自分達とは違うから、違う存在達がやったにちがいない、というきめつけのもとに、そして迫害する。
「たしかにな。というか人間のほうが残虐非道なことを平気でしでかすからなぁ」
「うむ。残虐性においては人間をおいて他にはおそらくいない、であろう」
いい例がテセアラの人体実験、であろう。
それでも、実験にたずさわっているものたちはこういう、のである。
自分達と異なる下卑たものを使用しているのだから問題はないだろう、と。
「もしも、俺がハーフエルフだったとしたら、俺にはどうにもならないことで、
  好きだの嫌いだのいわれるのはたまねんぇとおもう」
「うん、そうだね」
「この姿で、この種族で産まれたことだけはかえられないからな。こうやって生をうけたことだけは」
そう、産まれは選べない。
それでどうこういわれてはたまったものではない、とおもう。
「うん。本当にそうだよね」
だけど、人はそれを失念し、全ては違うものを排除しようとする。
それを自分自身にあてはめることもなく。
「まあ、でも、俺が馬鹿だってことだけはかえられないかもだけどなぁ」
「大丈夫だよ。ロイドは馬鹿のところがいいんだから」
「ど、どういう意味だ!それは!」
「たしかに、馬鹿でないロイドくん…たしかにロイド君ではないわ」
「かしこいロイドさん…不気味、です」
「それだと私も苦労せずに教えることができたのかしら?」
「…みんな、ひでえ!先生まで!なにげにプレセア、不気味ってどういう意味だよ!?」
「あはは。うん、やっぱり僕、ロイドは好きだな。人間だけどさ」
「な、何だよ。いきなり」
「ロイドといたら、僕の人間嫌い、なおるような気がする」
ジーニアスもそうであった。
人だから、エルフだから、ドワーフだから、という種族のこだわりでみていた。
ダイクにしても然り。
自分をジーニアス、という立場でみてくれていた、というのに。
自分がよく、そういったのがいちばんきつい、というのがわかっていたはず、なのに。
自分がそうしているのならば、人がそうしていてもおかしくはない、とおもってしまう。
自分が変わらなければ、他者もかわりはしない、と。
「あ~。暗い話しはこのあたりでお開きにしようぜ。お。ちょうどお湯がわいたぜ。スープ、スープ」
たしかにみれば、火にくべていた鍋の中のスープがちょうどいい湯気をだしはじめ、
周囲にいい匂いを漂わせていたりする。
「うむ。では私がよそおう」
すでに用意してあった皿にリーガルがそれぞれよそってゆき、
その皿をリフィル達がそれぞれに配ってゆく。
「この旅がおわって、そんな世界になったら、ロイドはどうするつもり、なの?イセリアにもどるの?」
ジーニアスの問いかけに、
「多分、もう戻らないとおもう。おれ、こいつらを回収するつもりなんだ」
「え?エクスフィアを?」
きょとん、とした表情をうかべるジーニアスとコレット。
その手はにあたたかなスープがはいったお皿が握られている。
「このままこれを放置していたらプレセアやコレットみたいに自分を犠牲にする人がでてくるだろ?
  だから、そうなる前に回収したほうがいいとおもうんだ。
  それがエクスフィアの力を借りて戦っていた御れの、こいつらへの感謝なんだけどさ」
「そうね。二度と歴史の表舞台に出てこれないようにするのが確かに一番ね」
「だったら、私も一緒にいっていい?」
「え?」
「今までもそうだったみたいに。私、これからもロイドの横を一緒にあるけたらいいな。って。そうおもってるんだ」
「ん、わかった。じゃあ、一緒にいこう。生まれ変わった世界を一緒に冒険しような」
「うん!」
「そうだね。ロイドだけじゃ心配だから、僕もついていこうかな」
そんな彼らの会話をききつつ、リーガルがおもわず顔をしかめる。
「エクスフィア…か」
「?どうかしたのか?リーガル?」
リーガルの様子にただらなぬものを感じ、といかけるロイドであるが。
「うむ。今までいう機会がなかったから説明していなかったが。
  今、各地でエクスフィアの紛失、という事態がおこっている」
「え?どういうことだ?」
「それは私にもわからぬ。だが、グラン・テセアラブリッジはすでに壊滅し、もはや跡かたもない」
「え?あの巨大な橋、が?」
大陸同士をつないでいたあの巨大な橋がなくなっているとは。
どういうことなのだろうか、とおもう。
まあ、みるかぎり大陸移動がハンバナイことからそのあたりにも原因があるのかもしれないが。
「エクスフィアを扱う装置や機械を開発している場からも。
  そこに魔物が侵入し、気づけばエクスフィアがなくなっていた、という報告が多々と上がってきている」
だからこそ、あのとき。
ロイド達が禁書の一件で動いていたとき、リーガルか会社にもどっていた以上、動けなかった。
それらの確認などに追われ。
「各家庭などに配置していた装置の中からもエクスフィアが気づけば消えていた、ともきく」
ゆえにテセアラでは今はちょっとした騒動になっている。
これまで、エクスフィアを主流とした動力源に切り替えていっていた以上、
それらがいきなり失われ、人々の間でパニックがおこっているといってよい。
あまり表だってそれが顕著に表れないのは、一重に大陸の変動によるもの。
どちらかといえば天変地異のほうが自分達の命にすらかかわる以上、
どうしてもそちらのほうに気がとられ、今はまだ完全に大騒動と化していないといってよい。
「…ね、ねえ。魔物とエクスフィアって、それってまるで……」
まるで、そう。
かつて、人間牧場でみたあのときのように。
魔物がエクスフィアと人とを切り離していた。
あのときも、エクスフィアが忽然と消えていたような気がする。
それはもう果てしなく。
ジーニアスがふと思い出したようにぽつり、という。
脳裏に浮かぶはエミルの姿。
エクスフィアに関しても、人が勝手に利用しているだけで罪はない、といいきっていたエミル。
確かにその通り、ではあったのだが。
「報告書通りだとすれば、まるで魔物達が意思をもっているかのごとく。
  人には目もくれず、エクスフィアだけを狙っていた、とも。
  まるで第三者にそのようにいわれているかのごとくに、な」
「リーガル。たしか、あなたの所有しているという鉱山に、エクスフィア鉱山があるのよね?
   そこはどうなっているのかしら?」
それはリフィルも初耳。
だからこそ気になってしまう。
「うむ。報告があがってきたときにいってはみたが…だが…」
「だが、どうかして?」
リーガルにしてはめずらしく歯切れが悪い。
「入ることが不可能だったというのを述べておこう」
「あそこはたしか、あんたの声紋とかで開くとかいってなかったっけ?」
「…魔物達の数が尋常でなくてな。たどりつくことすらできなかった」
『・・・・・・・・・・・・・・』
「確実に、何か世界におこっているのはまちがいないわね。
  みるかぎり、互いの世界の大陸の変動もおこっているようだし…被害は尋常ではないけど」
「…マナが最近、あれほど安定していたのにまったく感じられなくなってきているのも気になるよ」
常に大自然から感じていたマナの恩恵。
その恩恵がまったくもって感じられなくなっているのは、おそらくジーニアスのきのせい、ではない。
だからこその不安。
かつてユアンのいったように、マーテルの復活は文字通り、
大いなる実りが失われることになるときだ、といっていたあの台詞。
一時とはいえマーテルは蘇った。
コレットの体を通じ。
それが大いなる実りにどのような影響をあたえたのか…考えたくもない。
もしも、本当に、大樹となるべき力が失われていた、というのならば、
今、自分達がしようとしていることは全て無駄におわってしまう、のだから。

夜のヘイムダールの一角において、彼らのそんな会話がしばし繰り広げられてゆく……


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あとがきもどき:
薫:今回は、ほとんど高感度イベントの会話オンリーになってしまった・・・
  さて、次回にちかづいたのに、エミル合流か、否かの決着がまだでない(まて
  ともあれ、次回にて~
  ようやくクラトスとの決戦イベントだ~

2013年11月6~10日(水~日)某日

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