まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

打ち込み期間が長くなってたりする理由は、まあ仕事の関係です汗
というか、八月の盆以降、一度も休みがないまま…
家にもどってもひたすらにネットゲーム(まて)ドラクエやっては、
ほとんどふくびき目当ての迷宮と討伐だけやってはおちての繰り返し。
なので打ち込みする時間がほとんどない今現在…
あ、ちなみに、UPしてるのが落ちてるのは、いろいろと一応は見直ししてるゆえです…
というか、UPまで一月あいてる自覚あり…汗

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「では、世界を統合させたその後は……」
「あのものたちの願いは、どうせきまっているであろうからな。
  願いとともに契約の解除、という条件をも課す必要性が必ずしもあるにしろ」
その言葉にその場にいた全員の精霊達が一斉にうなづきをみせる。
「あのしいなって子も、どうも感情にながされて、僕たちの力を利用しない、ともいいきれないしね」
「むしろ、里の民が私たちの力を利用しかねません」
世界が一つになるとともに、契約の解除。
「問題は、二つの世界が争わない世界にするために、という誓約、ですね」
「それならば問題はなかろう。すでにそのときには世界は元の姿にもどしている。
  二つの世界、というひとが認識している世界同士はありえない。
  その時点で盟約の言葉は無効と化しているといってよい」
たしかにラタトスクのいう通り。
「人々が苦しまない世界をつくるために、という分野に関しては、
  お前達の力をつかってでは意味がない、という旨をいえば問題なかろう。
  事実、力を示せば愚かにも人はその力を利用しようとする。絶対に、な」
それはもう確信。
だからこその台詞。
「人間達が認識している世界においての、地上におけるマナは完全に制限し、
  さらには、マナを認識させなくさせる、変わりの物質が認識されるまでは時間がかかるであろう。
  それまでは、お前達も自分の意思で出向くはいいが、人に極力かかわりをみせることなかれ」
「人が畏怖する対象、としてあるのならばよいが、利用しようとするものは必ずでてくる。
  …かつてのように、お前達精霊を捕らえる装置を開発しよう、という試みが失われない限りは、な」
テセアラでは精霊達を捕らえるための研究がすでに秘密裏に進んでいたりする。
だからこその危惧。
「地上は…おそらく、混乱しますね」
「だが、選ぶのは、ヒトだ」
大樹の存続を選ぶにしろ、消滅を選ぶにしろ。
「どちらにしろ、我としては地上の、この世界の存続。それができればいいのだからな」
それは本音。
それが彼にとっての全てなる理由、なのだから。

光と闇の協奏曲 ~神聖都市ウィルガイア~

はっと、我にと戻ると、目の前には頑丈な鉄格子。
…また、牢にでも入れられているのか?
という思いが一瞬、ロイドの中にふとよぎる。
「まだ、生きているのか?俺達……」
抵抗すらでず、捕まったことは覚えている。
だからこそわからない。
あのまま殺されていてもおかしくはない、というのに。
「コレットちゃんを使う準備ができるまでは命があるみたいだぜ?」
ゼロスがあっけらかん、といってくる。
はっとみれば、どうやら自分の横には、ジーニアスやゼロス、それにリーガルといった存在達がいるらしい。
「!コレットゃ、先生、それにしいなにプレセアは!?」
ロイドがこの場に彼女達の姿が視えないことに気付き、思わず叫ぶ。
それとほぼ同時、
「ロイド~」
コレットの声が横のほうから聞こえてくる。
「コレット!無事か!?」
「うん、先生や皆もいるよ~」
その言葉にほっとする。
「気がついたら私たちも牢やにいれられてたの。さっき、私たちも目覚めたんだよ~」
そのとき、ゼロスが声をかけてこなければ、ロイド達は殺されてしまったのだ、
とおもってしまったであろう。
「はめられたのかもね。僕らがここにくるのは、クラトスさんも判っていたはずだもん」
あの魔物と化した少女がいっていたことを、クラトスもあのとき聞いていた。
ならば、罠をしかけていても不思議はない。
「まあ、どうせ大かた、本来なら、もしもコレットちゃんの治療が終わってなかったとしたら。
  治療道具を俺様達にそろえさせて、それからここにつれてくれば手間が省けるってとこじゃったんじゃねえの?」
いいつつ、
「まあ、必要だった、マナの欠片はエミル君のもってたやつで代用できてたようだけど」
本来ならば、マナの欠片が必要で、そのマナの欠片はおそらく、敵の本拠地でしか手にはいらなかったであろう。
「クラトスのやつ……しかし、おれっとどうしてこう、何度もさらわれて、牢やに入れられなきゃならないんだ?」
これが初めてではないがゆえのロイドの台詞。
「日ごろの行いじゃないの?」
そんなロイドにあきれたように、それでいてきっぱりいいきっているジーニアス。
「ま、俺様のような美男子がこんな場所に閉じ込められる、というのも定番っしょ。
  美男子は危機に瀕してこそ力を発揮するってか?」
からからと何やら何かゼロスがいうと納得せざるをえないようなことをいっているゼロス。
「命があるだけまし、だろう。それと、神子。神子はあまり緊張してないようだが?」
「ま、なるようにしかならないっしょ。殺すならとっくに殺してるっしょ?」
リーガルが目覚めたとき、すでにゼロスは目覚めていた。
というより、ゼロスはロイド達が気絶したあとも、意識があり、
今後のことを完結にクラトスと話しあいをしていたりするのだが。
当然、そのことは意識を失っていたロイド達がしるよしもない。
「そりゃ、そうなんだけどさぁ…っていっ!」
たしかに、リーガルのいい分も、ゼロスのいい分もわかる。
が、このまま大人しくつかまっているつもりはさらさらない。
ゆえに、力まかせにおもいっきりガンガンと格子を叩きはじめるロイドの姿。
しかし、格子はまったくびくともしない。
「くそ~、頑丈にできてる」
「鍵もあけられないな」
ロイドがぼやき、リーガルがぽつりという。
「これ、魔科学の鍵、だよ。普通の鍵ならばロイドのピッキングでどうにかなりそうなのに」
「だな。鍵穴さえあればな~」
何やらあるいみ犯罪スレズレのことをいっているジーニアスとロイド。
この牢の鍵はどうやら認証式らしく、鍵穴はまったくもってみあたらない。
近くに装置らしきものがみえることから、おそらくそれにコードを打ち込むことにより作動するのだろうと予測がつく。
「こっちもびくともしないよ~」
どうやら声を聞く限り、コレット達が捉えられている牢のほうでも同じようなことをしている、らしい。
向こうからもガンガン、という何かを叩く音が聞こえてくる。
「そっちは、コレットかプレセアかが壊すことはできないか?」
コレットの破壊力はロイドとて認めざるをえない。
というか、何もない場所でこけてなぜか運を呼び込むコレットである。
転げた拍子に何らかの作用が必ずコレットの周りではおこる。
「ダメだったの……」
「すいません、お役にたてなくて」
そんな二人の声を牢やごしにききつつ、
「八方塞がり、か」
ため息をつくロイドであるが。
「……どけ。はっ!」
どがっ。
リーガルがそんなロイドの前に出たかとおもうと、両手を振り上げ、格子をいきなりたたき壊す。
「す…すごい…」
いきなりのことにジーニアスがぽかん、とした声をあげる。
「どうしてこんなことができるんだ?」
ロイドもただ、あっけにとられるしかない。
「…私は、もともと、足より手をつかった攻撃のほうが得意なのだ。
  だが、二度とこの手で戦わないと誓った。今回はロイドのために特別だ」
「ふえ、い、今の音、何…きゃっ!」
ガコン。
「「「…あ」」」
何やら横のほうからコレットの戸惑いの声がきこえたかとおもうと。
何かが外れたような音。
そして、それとともに、しいな、プレセア、リフィルの声が重なった声がきこえてくる。
「ふえ?あ、あああ!なんか、こわしちゃった!?ど、どうしよう~」
「コレット…ほんと、あなたって子は……」
横からリフィルのため息まじりの声。
何かがコレット達にあったのか、とおもい、とにかくあわてて外にでてみれば、
少し離れた場所にとある牢や。
…なぜか、その鉄格子が綺麗さっぱり開いている。
正確にいえば、鉄格子が丸ごと、消え去っている、というべきか。
そして、その横にあるパネルのようなものに、何かが落ちてきたのか、
バチバチと火花を散らしているのがみてとれる。
…どうやら、今、コレットがこけた衝撃か何かで何かが落ちてきたらしく、
牢を制御していた装置そのものが壊れてしまった、らしい。
『・・・・・・・・・・・・・・・』
一瞬、ロイド達はその光景をみて無言になりつつも、
「でもさ、リーガル、だったら最初から手で戦えばいいんじゃないのか?」
どうやら、コレットが何かしでかした、おそらく意図的ではなく無意識のうちにこけ、
その反動であれがおこったのだろう、と推測する。
これまでにも似たようなことが多々とあったがゆえにロイドは動じない。
「って、おいおい。あれをスルーかよ」
そんなロイドにたいし、思わず突っ込みをいれているゼロス。
「ロイド~」
そんな中、パタパタと立ち上がりつつ、服をはたいたのちに、ロイドのもとにかけてくるコレット。
リフィルなどは、額に手をあてており、しいなは苦笑せざるを得ない。
ブレセアなどは、
「今の現象は理解不能、です」
などといって何やらぶつぶつつぶやいている。
しいなはかつて、シルヴァランドでコレットによっておこされたいろいろなことを見知っている。
しいなの顔も苦笑しているようにみえるが、よくよくみれば顔をひきつせらているのがみてとれる。
「今回は、ロイド、お前達をたすけるために、特別、だ」
そんなロイドの問いかけに淡々と答えているリーガル。
ちなみに、今、リーガルが行ったのは、気を使った気功派による衝撃と、
手による直接の破壊力を上乗せしたけっか、鉄格子が破壊されたにすぎない。
人は努力次第でこれくらいのことは誰でもできる、のだが。
エクスフィア、という便利だとおもっている品にたよっている人はそのことに気付かない。
気づこうとしない。
「よし、とっとと用事をすませるとしようぜ」
「ここは、おそらく、デリス・カーラーンだとおもうわ。全ての装置が魔科学でできているもの」
リフィルが周囲を興味深く観察しつつ、そんなことをいってくる。
しばらくすすむと、転移装置らしきものがあり、リフィルがこれが移動するための装置だ、というものの、
なぜか装置は軌道せず。
この上に繋がっているのでは、というリフィルの言葉に、コレットがなら自分が様子をみにいく、
といって羽をだしていってみたところ、
転移装置の出口であろう場所に何やら荷物らしきものが置かれているのがみてとれる。
それをどうにか移動させ、そのままロイド達の元へと合流する。
やはり、その荷物が邪魔をしていた、らしい。
今度は問題なく、転移装置は作動し、いくつかある転移装置をのりついで、
やがて人の気配がするエリアにとたどり着く。

それは、一つの街、といってもよいほどの規模。
街は何もかもが清潔で、徹底して無駄なものが省かれている。
魔科学の粋を極めたのであろう施設が当たり前のように並んでいるのがみてとれる。
その中では大勢の天使達…翼をもった天使達が行き来をしているのがみてとれるが、
そこにはまったく生活館、というものが感じられない。
「うわ~…天使ばかりじゃねえか」
おもわずゼロスがつぶやくが、その思いは皆同じ。
言葉にしないが、皆同じ気持ちらしく、しみじみうなづいているのがみてとれる。
「こんなところうろついてたらすぐに通報されちょうよ」
ジーニアスがぽつり、とつぶやく。
「そうね。コレットは天使だからいいとして。私たちは連行されているフリをしましょう」
「連行って……また、俺達が捕虜、なのか?」
以前もそのような提案がなされた。
あのときは、何というかエミルが魔物を呼び、自分達の作戦は意味がないものと化したにしろ。
「あ。そっか、リーガルがいるし、大丈夫かな?」
リーガルがしている手枷が、まさに捕虜で、連行している、と認識されてもおかしくはない。
それをいうならば自分達はどうして手ぶらなのか、という認識をされかねないが。
どうやらリフィルのいい分は正しかった、らしい。
コレットを先頭にし、リフィル達は従うような形で進むことしばし。
そこに住まう天使達、なのであろう。
しかし彼らの感情はどこか抜けてしまったかのように、ほとんどの表情に変化がない。
彼らは直接、その体にアイオニトスを入れて天使化しているものたち。
その体にエクスフィアを埋め込んではいないのもの、永い時の中で感情をうしなっているものたち。
「右も左も天使、天使。どいつもこいつも人形みたいで薄気味わるいぜ」
ゼロスが感じた感想をぽつり、ともらす。
「人形…ですか」
プレセアがぽつり、とつぶやく。
どうやら思うところ、があるらしい。
「たしかに、何を考えてるのかよくわからないね」
話しかければ反応を返してくるが、そこに感情は含まれてはいない。
ただ、問われたから答えるのみという感じがひしひしとする。
「…あいつらだって、先生達と同じ、ハーフエルフのはずなのに……」
リフィル達はみていても感情をあらわにしている。
が、ここにすんでいるものたちは、感情というものが感じられない。
ただ、そこにあるだけ、といったようなか感じをひしひしとうける。
「私も、そう、なんでしょうか」
「え?」
プレセアの問いかけにロイドが目をばちくりとさせる。
「…私、あの人達が私に似ている、と思いました。私は…人間なんでしょうか」
誰にいうともなく、ぽつり、とプレセアがつぶやく。
彼らと自分はかわりがないように思える。
感情を表情に、表にあらわさないところも。
「何いってんだよ。プレセアは人間だろ?」
「そうだよ」
「そう…でしょうか。そもそも、人の定義、とは何なんでしょう?」
「それは……エミルみたいなことをいうんだね。プレセアも」
「え?」
その言葉に首をかしげるプレセア。
「以前、エミルがいってたんだ。エミルからしてみれば、意識がある、
  すなわち心がある知的生命体は全てヒトでしかないって。人もエルフも、ハーフエルフも変わりがないって」
それは、かつてエミルがいっていたこと。
人間だから、エルフだから、ハーフエルフだから、という理由ではない。
むしろ、皆同じようなもの、といいきったエミルのあの台詞。
今ならば、よくわかる。
あのときはよくわからなかったにしろ。
そんな会話をしつつ、とにかく町の中をしばしあるいてゆく。
どうやらその先にエレベーターがありみれば天使言語で何やら書かれているのがみてとれる。
それを何なく操作し、リフィルがとにかく、いろいろな場所にいってみなければ目的の情報は得られない。
そういうがゆえに、ともあれ、片っ端から出向いてみることに。

「そろそろ、マナの流れを切り替えなければならないな」
「しかし、種子の守備力が弱まったときの影響でシステムは混乱している」
「だが、何とかせねばならない」
何やらこの中にあって、感情を含んだ会話、のようなものがきこえてくる。
みれば、天使達が向かい合って何やら会話をしている模様。
「二つの世界を今の形で維持することも、ユグドラシル様のご意思だ。
  デリス・カーラーンのマナはマーテル様が命をかけて護った大樹の種子を死滅させないために、
  全て種子に注がれている。二つの世界でマナの消費を管理し、
  繁栄、衰退を繰り返させることで抑えなければならないほど大樹の種子から漏れだすマナは微弱なのだ」
「たしかに、それはそうだが。マーテル様が復活し、ユグドラシル様が天使の千年王国を築いてくだされば、
  二つの世界のマナの消費管理などどうでもよくなるだろうに、ままならないな」
「全くだ」
どうやらこの中にあっても、感情をもったままの天使達、というものは存在している、らしい。
そんな会話をしつつ、その二人の天使達は、奥にある扉の向こうにときえてゆく。
と。
「うん?ひさしぶりだな。この神聖都市ウィルガイアで天使形態でないものをみるのは。
  幹部クラスの方々をのぞけば、前のマーテル様の器がこにきた八百年ぶり、ということになるか」
何やら一人の天使が、ロイド達にきづいたのかそんなことをいってくる。
おもわず身構えるロイド達。
が、ちらり、とコレット、そしてゼロスに視線をむけ、そしてリフィルとジーニアスをみて、こくり、とうなづきをみせる。
「ふむ。天使とハーフエルフと共にいる、ということは、地上の研究の関係者か?
  しかし、本当に久しぶりだな。人をこの目にするのは」
何やらその天使は感慨深そうにいってくる。
「久しぶりって?」
ロイドの問いかけに、
「元々、我らはこうして天使として存在しているが。
  全てのものが、元はハーフエルフであったり、もしくは人間であったりしたからな。
  …お前達をみるまで、忘れ去っていたが」
それは過去の記憶。
なぜか、先のマナの管理システムの故障から、自分達に感情が戻ってきているのが感覚的にわかる。
ゆえに戸惑っている天使達も少なくはない。
「忘れていた?」
「ここ、ウィルガイアは何も考えることなく、ただ与えられた役割を果たしてゆくだけでいいからな。
  永い時の中で、感情というものが削げ落ちていたのは認めざるをえない。
  ここ最近は、なぜか忘れ去っていた感情が蘇っているものも少なくはない」
いいつつ、
「クラトス様が連れてきたという、ハイエクスフィアの研究者の仲間か?
  ならば、さきほど、クラトス様が彼女のもとに出向いたはずだ。その先をゆくがいい」
いいつつも、丁寧に何やらおしえてくれる。
というより、今、聞き捨てならないことをきいたような気がする。
ハイエクスフィアの研究者。
しかも、クラトスが連れてきた、という。
「人間がいる、ということはそういうことだろう。ハイエクスフィアの研究材料の素材、か?」
そんな天使の言葉に、
「え、ええ、そうよ。これらはクルシスの輝石を研究するための素材よ」
これ幸い、と話しをあわせているリフィル。
このあたりの臨機応変さはさすが、としかいいようがない。
「素材をつれている、ということは、保管所に用か。階を間違えたな。保管庫はこの階の上だ」
そういってくる天使の言葉に思わず顔をみあわせる。
そんな天使にひとまずリフィルがお礼をいい…どうやら、ハーフエルフ、ということで、
地上の自分達の同胞、とみなされたらしい。
「あら、この階の上はたしか、管制室じゃなかったかしら?
  保管所はたしかこのエリアの地下だったとおもったけども」
リフィルのとぼけたその物言いに、ため息をひとつつき、
「管制室は別のエリアだ。たしかにここウィルガイアはいろいろなエリアに別れているが、
  勘違いする、ということはまだ新入りだな。
  それぞれの場所を詳しくしりたければ、移住エリアにある装置で調べるといい。
  かの場所ならばパスワードさえいれれば閲覧は誰でも可能だからな」
その言葉に思わず顔をみあわせる。
どうやら、目的の情報の端末がある場所を意図せずに聞きだすことに成功、したらしい。
もっとも、そのパスワードというのがきにはなるが。
「そうだったわね。勘違いしてたみたいだわ。ありがとう」
とりあえずお礼をいい、その天使とわかれ、
ともあれ、天使が示した軌道エレベーターのほうへと歩いてゆく。
エレベーターの中にとはいり、扉がしまったのを確認したのち、
「…ここの天使達は一部のものたちを除いて、やはり心を失っているようね」
中には心をもっている先ほどのような天使達もいるようではあるが。
「考えることもできずに、長い時間をすぎてゆく……」
「ううん。そうじゃない、とおもう。きっと考えることを放棄したんだ」
先ほどの彼がいっていた、感情を忘れていた、と。
おそらく、他人と接することが永らくないがゆえに、感情という感情が抜け落ちてしまったのであろう。
というのはジーニアスの予測でしかない。
が、何となくそれが原因であのような感情のない人形のようなものになっているものもいる、とおもえる。
「あのものたちは、おそらく、感情を失ったとともに、大切なものを失ったことに気付かないのだな。
  幸せも、悲しみも何も感じることはできなくなっているのだろう」
リーガルの言葉もどこか憐れみを含んでいる。
「…コレットが、本格的に天使になっちまわなくて本当によかった。
  この街のやつらをみてたらそう思うよ」
ロイドが何やらそんなことをいってくるが。
「?でも、クラトスさんも、ユアンさんも天使、だったよね?」
「クラトスさん達と、コレットの羽は同じだけど、あの彼らの翼は鳥の羽みたいだし。
  そのあたりにも原因がある、のかな?」
「その可能性はある、わね」
そんな会話をしている最中も、やがてエレベーターは目的の場所にとたどりつく。
「あれ?何で保管庫?」
居住エリアにいけば問題ない、であろうに。
「せっかくだから、マナの欠片もいただいていきましょう」
「…姉さん(先生)……」
その呆れた声はジーニアスとロイド、ほぼ同時。
しかし。とおもう。
さっきから体が気のせいではなくふわふわする。
何だか体が体でないような、そんな感覚にロイドは陥っている。
エレベーターをおりると、どうやらすぐに保管庫、になっているらしい。
かなり大きな倉庫らしきものであることがみてとれる。
エレベーターの少し前には、倉庫番なのであろう、それらしき天使がたっているのがみてとれる。
「すいませ~ん、マナの欠片をくださ~い」
コレットがいいつつも近づいてゆく。
「マナの欠片は現在、配布中止中だ。もとのエリアにもどりなさい。
  ん?何だ?人間がいるのか?報告をうけていない。照会を…」
天使がいいかけると、
「これはクルシスの輝石の輝石を研究するための素材よ。いそいでほしいわ」
リフィルのその言葉に、
「ハイエクスフィアの?そうか、たしか人間をつかった研究がおこなわれているといっていたな。
  先日、クラトス様がその地上においての研究者をここの要の紋製作者たちに引き合わせていたな」
何やらまたまたそんな内容をいってくる。
そもそも、地上においての研究者、というのが誰のことを示すのか、ロイド達には理解不能。
地上にまだ、牧場がある、というのだろうか。
認識されている牧場はすべて破壊したはず、だというのに。
どうやらリフィルのいい分に思うところがあったのであろう、一人勝手にと納得した様子をみせる。
どうやらこの天使は先ほどの天使達と同じようにどうやら感情、というものが残っているらしい。
「わかった。では身分証明書を提示してくれ。出庫の記録に必要なのでな。判っているとはおもうが」
「え~、そんなものいるのかよ」
それまで黙っていたロイドが思わず口をだす。
「あたりまえだ」
あきれたような天使の声。
「人間は黙ってなさい」
そんなロイドにぴしゃり、とリフィルが言い放つ。
「身分証、ね」
リフィルがいいつつ、いかにも身分証を探すふりをはじめたその刹那。
倉庫の入口にあるスクリーンらしきものが突如として明るくなる。
「あ、クラトス様!?」
天使は映し出されたクラトスの姿に驚きの声をあげる。
それはロイド達とて同じこと。
ちょうど、ケイトを迎えにいったクラトスが、リフィルならばもしかして、とおもい通信を開いてみたのだが。
どうやら案の定、であったらしい。
向こうにうつるリフィル達の姿をみとめ、内心ため息をつきつつも、
「神子の儀式の準備のために、マナが必要になった。
  そちらに用があるという者達についでに使いをたのんだので、彼らに届けさせてくれ」
「わかりました」
クラトスの姿に天使はその場にとひざまづく。
「たのんだぞ」
それだけいい、どうやら一方的に通信はきられた、らしい。
「そう、そう、それ、俺達だ!」
ロイドがすかさず言い放つ。
「だから、人間は黙っていなさいといったでしょう!」
リフィルがさらに強い口調で言い放つが。
「お前達がクラトスの使いなのか?」
「お、おう!」
ごいんっ!
ロイドの頭にリフィルの拳が炸裂する。
「~~~てぇぇっ」
ロイドが頭を押さえその場にうづくまるが。
「人間は黙っていなさい、といったはずよ。まったく」
「クラトスさんは仲間だったんですよ~」
リフィルの声とコレットの声はほぼ同時。
「しかし、さっき、ハイエクスフィアの研究に使うといっていたが……」
「そうよ、ちょうど儀式にも必要だからって、私たちがとりにきたの」
その台詞をきき、
「そういえば、クラトス様はこちらに用事があるものについでに使いをたのんだ、といっていたな」
「そうよ。だから急いでちょうだい」
「しかし、身分証明書がなくてはな。それにお前達はディザイアン階級のようだし…
  しかし、クラトス様の依頼をうけた、ということはあらたな五聖刃様たちの候補なのか?」
ただのディザイアンに幹部たるクラトスが頼みごとをする、とはおもえない。
「とにかく、早くしてちょうだい。儀式にも必要なのよ。ユグドラシル様に職務怠慢の報告をされなければ早くしなさい!」
「わ、わかった!」
リフィルのつめよられ、ああ、この気質はプロネーマ様と同じだ。
ということは、あらたな五聖刃候補で間違いなさそうだな。
一人そう納得し、
「…五聖刃に、プロネーマ様だけでなく、美人だが、だが気性が激しい仲間が増えるのか…は~…」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」
どこか憂いを込めたような天使の声。
おもわずジーニアス、ロイド、そしてしいながリフィルをみやる。
しかしリフィルはすまし顔。
そのまま、身分証云々の追求をする気をなくしてしまったのか、そのまま倉庫の奥のほうへ一度引っこんでゆく。
そして、マナの欠片を手にしリフィル達の前にともどってくる。
「御苦労」
リフィルは青白くひかるそれを受け取ると、堂々とした態度で踵をかえす。
「必ず届けてくださいよ?」
先ほどとはちがい、どこか敬語になっているのは、ロイド達の気のせい、ではないであろう。
どうやら、リフィルをあらたな五聖刃達の候補、すなわち、ディザイアン達の幹部候補、と捉えたらしい。
しかしその勘違いは今はまさにありがたい。
そのまま、
「何をしているの、まったく、これだから人間は。いくわよ!」
「あ、ああ」
女王様気質ともいえるリフィルの言葉をきき、ロイド達もあわててそんなリフィルの後にとつづく。
背後では、
「天使にハーフエルフに、それに人間、か。我らとは違い、アイオニトスに融合している天使というのも珍しいな」
何やらそんなことをいっているのが聴こえるが。
そのまま、再びリフィル達はエレベーターへと乗り込んでゆく。
やがて、エレベーターの扉がしまると同時、
「こういう役回りが似合うよなぁ。リフィル様は。なあ、人間?」
「うるさいなぁ。お前だってそうだろ?」
ゼロスに小突かれたロイドはおもわず言い返す。
「あとは、情報端末装置をみつけて、そして地上にむけてのワープ装置をみつけるだけね」
「たしか、居住区にある、といってたね。けど、パスワードが必要とかいってなかったかい?」
リフィルの言葉にしいながこたえる。
端末があってもパスワードがなければ情報は引き出せない。
「まずは、居住区とやらに行く必要があるようだな」
どちらにしても、ここからでるにしろ、この街の区画がわかっているのといないのとでは、
いざ、というときにもかなりこまる。
何しろここは敵の本拠地、なのだから。

どうやら居住区には住んでいるのもにも移動が楽なように設定がなされているらしい。
エレベーターと転移装置をのりつぎ、目的の場所に何なくしばらくするとたどり着く。
居住区の奥には巨大な転送装置らしきものがみてとれる。
「あれって、転送装置?」
ジーニアスがつぶやき。
「地上にもどるにはあれをつかえばいいのかな?」
「いえ、あれは天使達が守っているわ。きっと緊急脱出用の転移装置があるはずよ。
  私たちはそれを目指しましょう」
「あ、すいませ~ん、調べたいのがあるんですけど」
「うん?端末ならばそこ、だぞ?そこの下にある装置だ」
天使の一人にコレットが話しかけ、その言葉をうけ天使がそんなことをいってくる。
さすがに居住区、というだけのことはあり、天使がかなりの数ほどみてとれる。
そしてそれぞれの天使は先ほどみたように感情を失っている、というのではなく。
何やら思い思いに会話をしている様もみてとれる。
その中でも、気になる会話がいくつか聞き取れる。
「オリジンの封印は、ユグトラシル様の命令で幹部の方がとしきったとか。
  私もそこまでの信頼をえてみたいなものだ」
「まったくだ。だが、今がチャンスかもしれないぞ。何しろ五聖刃の方々が亡くなってしまったらしいからな」
「ああ、人間の抵抗をうけたり、魔物の襲撃で、ということだろう?
  ここ、デリス・カーラーンの魔物も制御装置の管制からどうみても離れているとしかおもえぬな」
そんな会話をしている二人の天使達。
「オリジンが目覚めぬかぎり、エターナルソードは永遠にユグドラシル様のものだ。
  エターナルソードの力にてこのデリス・カーラーンは上空にとどめ置かれている。
  精霊を封印、とはユグドラシル様も考えたものだな。封印してしまえば、
  あらたな契約を上書きされる必要もない」
「まったくだ」
『・・・・・・・・・・・・・・・・』
どうやら意図せずにオリジンが授けた、という魔剣の情報をゲットしたらしい。
ゆえにおもわずロイド達は無言で顔をみあわせる。
しばしすすんでゆくと、
「ユグドラシル様はなぜ、大地延命計画を終了なさらないのだ?」
「やはり、マーテル様の復活が確定していない今、その時期ではないということではないか?」
「ふむ。たしかに。ユグドラシル様が千年王国を御創りになられるためには、マーテル様の復活は必要不可欠だ」
「そういうことだ。それまでは延命計画を延長しておかねば、不安要素が増えるがためであろう」
そんな会話をしている一団も、
さらには。
「消去された五聖刃のかわりにプロネーマ様をたすけるものが必要だ」
「あらたにディザイアン達の中から候補者がえらばれるのではないか?
  それか我らの中から」
「しかし、ディザイアンは人間達の相手であろう?いくら幹部とはいえ……」
「しかし、ユグドラシル様に近づく今一番のチャンスでもある。
  あの御方に直接御目通りができるのは五聖刃にあたえられた特権でもあるからな」
「それはそうだが……」
「ここは、我らの忠誠心を試されている時ではないのか?」
そんな会話すら。
そんな天使達の様々な会話をききつつも、やがて教えられた端末装置がある場所にとたどりつく。
「あ、これ何でしょうか?」
「おそらくこれが情報端末、ね」
たしかにそこには何らかの端末なのであろう装置らきものが設置されているのがみてとれる。
ここはすこし奥まった場所にあり、そして天使達の目からもちょうど死角になる位置になっているらしい。
「先生、動かせそうか?」
「やってみるわ」
いいつつも、リフィルが端末の前にたち、ぱちぱちと作業を初めてゆく。
パスワードを入力してください。
とでるが、そのパスワードはどうやら選択式、らしい。
三つの内から一つを選んでゆく、という形らしいが。
その内でもっともそれらしきもの【マナの】という項目を選ぶ。
次なるパネルが表示され、次の項目では、最もさきほどの言葉に続いてもおかしくないもの。
【光は】さらにその次の項目【命の輝き】
ぴ~、マナの光りは命の輝き、パスワードを承認しました。知りたい項目を選んでください。
無機質なる音声が機械から漏れ出してゆく。
「やったわ、成功よ!これで端末から情報を引き出せるはず」
いいつつも、ぱちはちと操作をしてゆく。
そこには、いくつかの項目があり、まずは手始めに気になる項目をリフィルが選択し開いてゆく。

デリス・カーラーンはエターナルソードが発する力場に護られている。
この力場が消滅した場合、デリスカーラーンはこの惑星の引力から解放され、
再び彗星として宇宙をめぐることだろう

一つは、デリス・カーラーンに関する項目。

マナの消費量を最低限に抑え、大樹の種子と世界を維持するためには世界を二つに分ける必要があった。
さらに精霊の力によって楔を。種子を守護させマナの流れを
デリス・カーラーン内にとありし、マナ調整装置によって管理、調整することることで
世界が必要以上に繁栄することも抑えられる。
大きな繁栄は魔科学の発展と無意味な戦争を引き起こす可能性がある。
指導者ユグドラシルによって提案、実行されたこの大地延命計画は
世界を維持するシステムとして大変優れたものになっている。
オリジンより与えられしエターナルソードを有し、力としている指導者ユグドラシル。
そんなユグドラシルだからこそなしえた、といえるであろう

それは、大地延命計画について。先ほど天使達が話していた内容のほぼそのまま。
そして、リフィル達がアルタステ達から聞かされている内容にほぼ近い内容のことが示される。
そして、その下には、エターナルソードとは、という項目がある。
そこをひとまずクリック。
今は少しでも情報がほしいところ。
ついでにここにかかれている全ての情報を抜き出しておきたいのが本音といえる。

オリジンが自らの契約者であるユグドラシルにあたえた魔剣。
その力は強大で、時間と空間を操る時間を有し、指導者ユグドラシルの力の源といえる。
ユグドラシルが世界を二つに分けることができたのも、エターナルソードの力によるものである。
もしも、この剣が失われれば、ユグドラシルの力は大きく低下し、
ウィルガイアも崩落の危機を迎えるであろう

それ以外にもいくつかの情報があるものの、ざっとみたかぎり精霊に関する楔などの理由もなされていた。
世界を二つにわけるにあたり、どうしても不安定になってしまうがゆえに、精霊をより属性のマナが濃い場所。
彼らの拠点としていた場所に契約によって楔とし檻とかすことで安定をはかっている、とも。
「…気が遠くなるような話しだな」
「情報としてはかなり重要なものを入手したわ。…だから、ここにこい、と彼女はいった、のね」
天使達がもっている常識と、リフィル達がもっている常識のずれ。
しかし、ここにきて確信をもてたのは、やはり鍵となるのは精霊オリジンの解放、その一点につきるであろう。
何をかんがえてあの魔物と化した少女がそのようなことをいったのかはリフィルには理解できないが。
あまりに長居は無用、ということもあり、リフィルが装置をしばし検索したのち、
どうやらやはり緊急用の脱出口、というものは存在している、らしい。
それはこの居住区よりも別のエリアにあるらしく、その途中には人が住んでいる気配はなく、
ただひたすらに道がつづいているっぽい。
「道がわかったわ、いきましょう」
リフィルに促され、一行は外にとでるためにとすすんでゆく。
シュン。
「うわ!?」
とある扉を抜けた先、いきなり体がふわり、と浮き上がるような感覚。
今までのような気のせい、というレベルではなく文字通り体がその場にとうきあがる。
「うわわ!?何これ!?」
ロイドが体が完全に浮いた…そこに床はみえているのに、体がまるで水中にいるかのごとくにふわふわとういている。
それはどうやら自分だけ、ではないらしい。
「これが無重力?」
「何だ?それ?」
「…ロイド、あなたって子は…以前に教えたはずよ?」
プレセアのぽつり、としたつぶやきに、ロイドが首をかしげ、リフィルがさらに盛大にため息をつく。
「えっと、地上には土の精霊ノームのマナがあって、それが重力ってのを産んでるんだ」
「高いところから飛び降りて、地面に着地できるのは、ノームの力が私たちを引っ張っているから、なんだよね。先生」
「でも、ここはおそらく、大地からかなり離れているのであろう。
  だからこそ、ノームの力が及ばない」
この道の壁はどうやら透明でできているらしく、壁の向こうにみえている景色は、
自然のものといえば自然のもの、であるが一面の暗黒の世界。
よくよく目をこらせばそこは夜にみる夜空に近い空間だ、と理解できる。
ジーニアス、コレット、そしてリーガルによる三人による追加説明。
「そ、そういうもん、なのか?」
三人に説明され、ロイドはただ戸惑うばかり。
「ノームの力って…すごいんだな…力が及ばない、というだけで体がこんなにういちまうのか…」
もしも地上にノームがいなければ、考えたらおそろしい。
つまりは、体の安定がきかず、皆ふよふよと浮いて生活することになるであろう。
その光景が一瞬よぎる。
一時その空間を体験するのならば楽しい、のかもしれないが、常には避けたいのが本音。
「…口はわるかったけど、ノームって重要な精霊だったんだな~……」
ロイドのぽつり、としたそのつぶやきは、ロイドがノームをどうおもっているのかよくわかるもの。
「気をつけてゆっくりとうごくのよ。一度、うごきはじめたら何かにぶつかるまでとまらないわよ」
そういうリフィルの目の前で、
「うひょ~、たのしいな、これ!」
ゼロスがすでに無重力状態をつかいこなし、ふわふわとういて、まるで統べるように空中を進んでいる。
と、
「うぎゃっ!」
…どうやら、何かにぶつかった、らしい。
「……気をつけるよ」
他者をみて我が身をなおせ、とはよくいったもの。
あれ?何か違うような、ま、いっか。
以前に習った格言を思い出し、でも何かが違うような気がするが、心の中でおもうだけでとどめ、
それを口にはださない。
もしも、口にだしていれば、即座にプレセア、もしくはジーニアスより、正確な格言の訂正っ込みがはいったであろう。
そして、話題を変えるべく、
「ここって、どのくらいの高さなのかな?」
「すくなくとも、ここはまだ、デリス・カーラーンの内部、それか救いの塔に続く道、なのでしょぅ」
「雲よりも高いの?」
コレットが首をかしげいってくる。
「周りに星がみえるだ。雲より高いにきまってるさ」
「そっかぁ。そう、だよね」
いいつつ、いつのまには羽をだしていたらしい。
たしかに、羽をだせば安定するであろうが、ロイド達は今なお体を安定させるために苦戦中。
「不思議…いつもは星をみると安心するのに、今は何だかこわい」
パタパタと羽をはばたかせ、壁にちかづき、外をみつつぽつり、とつぶやくコレット。
「大丈夫だ。お前は俺が守るから。クルシスなんかに渡さないから」
「うん、ロイドがいてくれるから怖くない」
「御二人さん、二人の世界はいいけど、そろそろ扉につくぞ~」
いつのまにかどうやらこの通路も渡りきったらしく、先に扉らしきものがみてとれる。
「…あの扉の向こうまで無重力だったら、あたしはいやだよ……」
しいながどこかうんざりしたようにいってくる。
「ノームを召喚してみたらどうかな?」
ロイドの至極もっともな意見。
「いえ、それはやめたほうがいいわ。精霊の召喚、そのマナで私たちのことに気付かれかねないわ。
  それでなくても追手がすでにかかっているはず。
  私たちが脱獄したのはみつかっているでしょうしね。
  危険はさけるべきだわ。また捕まりたくないのなら」
リフィルのいい分は至極もっとも。
ここは、敵陣の真っただ中。
不安材料は一つでもすくないほうがよい。
「それはそうと、プレセア、大丈夫?」
「何だか、顔色が悪いようだが……」
ジーニアスにつづき、リーガルがブレセアをみつついってくる。
「……何だか、頭がいたいです」
どうにか、無重力空間をぬけ、その先にはかろうじて重力が少しはあるらしく、
体はまだふわふわするものの、先ほどほどではなく。
激しい行動をしないかぎりは、何とか床をわたりつつ移動が可能であるらしい。
「…それに、ここは嫌いです。静かで何もない、空っぽの空間…まるで、死の世界のよう」
さきほどまでの天使達の街のほうがまだまし、とおもえるほど。
「……はやく、地上へかえりたいです」
「私もだ」
そんなプレセアの独り言のようなつぶやきに、リーガルもうなづく。
「皆でかえろうよ。僕たちの世界にさ」
「はい」
リーガルにまけじとばかりにジーニアスがプレセアに話しかけているが。
「しかし…この無重力ってやつは、どうもあたしは苦手だよ」
気をぬけば体がふわり、とういてしまう。
訓練にはいいかもしれないが、慣れたい、とはおもわない。
「そうかぁ?慣れちまえば結構たのしいとおもうぜ?
  たとえば、女の子を誘ってここにきてみろ。あんなことやこんなこと。
  普段できないようなことまでいろいろと楽しめるってもんだぜ」
しいなの言葉にゼロスがさらり、と何やらいってくる。
「何だ?おにごっこでもやるのか?」
そんなゼロスの言葉をきき、ロイドが首をかしげつついってくるが。
「は~、つくづく夢のない男だねぇ。お前さんは」
そんなロイドにたいし、盛大にため息をついているゼロス。
「ゼロスぅぅ!ロイドにへんなことを吹き込むんじゃないよ!」
「…これが我らの神子、というのだから頭がいたくなるな……」
しいなが拳をふりあげ、今まさにゼロスに降り下げようとし、
リーガルはリーガルで顔をしかめつつそんなことをいっていたりする。
と。
「おっと、つかまってたまるか」
「あ、まて!このあほみこ!」
「…何だかんだいっても、しいなもこの空間をつかいこなしているわね」
みれば、ゼロスが飛び上がり…どうやら空中を逃げる選択をした、らしい。
そんなゼロスをおいかけているしいなもまた、何やら飛び上がり追いかけている模様。
そんな二人をみてリフィルがしみじみと何やらいっている。
「あ、おにごっこだね。たのしそ~」
「いや、違うだろ」
「違うとおもいます」
そんな二人をみてにこやかにいっているコレット。
そんなコレットに思わず突っ込みをいれているロイドとプレセア。
「二人とも、じゃれるのはそれくらいにしなさい。おいていきますよ」
「あ、まってくれよ、リフィル様ぁ」
「くっ、ゼロスのやつ…地上におりたら覚えときなよ」
結局どうやら捉えることができなかった、らしい。
しいなが何やら屈辱をこめた口調でそんなことをいっている。
ともあれ、彼らはなんだかんだといいながらも、目的の場所。
すなわち、緊急脱出装置があるであろうエリアにむけて進んでゆく。

「もう、大分降りてきたんじゃないか?」
「そうですね。すくなくとも、あの嫌な感じはもうしません」
「さっきの転移陣で今はまちがいなく、救いの塔の内部にはいっているはずよ」
すでに感じていた浮遊感はない。
「問題は、クルシスがこのまま私たちを返してくれるかどうか、だね」
「むしろ今まで彼らの邪魔がなかったことこそ不思議だわ。
  もうすこし、慎重にいきましょう」
たしかに、今まで追手らしきものをまったくみなかった。
シュン。
いくつの扉をくぐったであろう。
やがて、これまでとは違う部屋らしきものにとたどりつく。
そこは何やら開けた空間。
何やらみおぼえがあるような気がしなくもないが。
そして、ぽっかりと開いた空間の中央。
そこに一振りの剣がこの空間にはにつかわしくないままに、つきささっているのがみてとれる。
虹色にとかがやく不思議な剣。
その剣は自らの力を誇示するかのように輝きをみせている。
「ここは…どうやら、封印の間、のようね」
どうやら完全に救いの塔の内部、しかも封印の間にと戻ってきたらしい。
折れている柱が何よりの証拠。
自分達がつかまってしまったあの場所に、どうやら戻ってこれたらしい。
ウィルガイアから救いの塔の封印の間へ。
台座にまっすぐ不自然なまでに突き刺さっている剣。
「これは…前にユグドラシルが俺にきりつけてきた剣……
  まさか、これが魔剣エターナルソード?」
ロイドがそれをみつつそんなことをおもわずもらす。
「おいおいおい。そんな大臣なもんなら、こんなところにほったらかしにしてねぇだろ」
ゼロスのいい分は至極もっとも。
「これをもって帰ってヘイムダールの族長、プラムハルド様にみせるか、
  ラーゼオン渓谷のおばさまに見せるかすればはっきりとするわ」
彼らならばわかるであろう。
リフィルのそのいい分に、
「とにかく、どっちにしてもこれをもってかえろうぜ」
いいつつ、剣を引き抜こうとロイドが台座に近づく。
が。
「……資格なきものは、され」
声が響いたかとおもえと、ロイドは見えない壁に嫌というほど体をうちつけ尻もちをついてしまう。
「いてて。どうなってるんだ?…っ!?」
立ちあがったロイドの前。
剣の向こうにいつのまにきていた、のであろう。
光がはじけたかとおもうと、そこにはロイド達もよく見知っているユグドラシルの姿が。
「資格なきものはエターナルソードに触れることすらかなわない」
「ユグトラシル!資格って!どういうことだよ!」
ロイドはユグドラシルを上目使いに睨みつける。
「きっと、オリジンの契約のことをさしてるんだよ」
しいなが冷静にそんなロイドの指摘に答える。
「そうか、オリジンはこいつにだまされてこの剣をわたしたんだな?!」
ロイドがそういうと、それをきき、ユグドラシルはゅ階層にとわらいだす。
「ふははは。お前達は本当に愚かだな。真実から常に目をそむけている。特にロイド、気様が、な。
  まあいい、オリジンはクラトスが封じている。どのみちお前にその剣は装備できない。
  エターナルソードがなければ、二つの世界を元通りに統合することもできはしない。
  お前達の旅は、やっていることは全て無駄、なのだよ」
淡々と言い放つユグドラシル。
「無駄なことをしてるのはお前だろ!死んだ人をいきかえらせるなんて!
  第一、そのことと世界を二つにわけることとどんな関係があるんだ!」
「「「……ロイド」」」
あきれたような呟きが背後から漏れ出すがロイドはそれに気づかない。
感情のままに、おもったことを先に口にだしているロイドは思考を働かせていないがゆえに、
知っているはずの真実にすらおもいあたっていない。
「あ、あれほどあの子には説明してるはず、なのに……」
「…心中お察しする、リフィル殿」
がくり、と何やらうなだれているリフィルに、ねぎらいの言葉をむけているリーガル。
「……本当に愚か、だな。なぜお前達がこの人間と行動をともにしているのか理解にくるしむ。
  大地が二つに分かれているからこそ、世界は存続している。
  少し考えれば子供でもわかる理屈だ。そこの我が同族よ」
「え?ぼ、僕?」
突然、指摘され、ジーニアスはどきり、とする。
あきらかに、ユグドラシルの目にはロイドにたいする呆れが含まれているのは、
おそらくジーニアスのきのせい、ではないであろう。
「えっと、魔科学の発展でマナが大量に消費されたから、それで」
「そう、そして魔科学は巨大な戦争を生み出した。戦争はマナをいたずらに消費するもの」
「お前が大いなる実りを発芽させないからマナ不足も解消されないんじゃないか!」
ロイドがいうと、ユグドラシルはあきれたように、ため息を大きくつき…
おそらく、彼をよくしるクラトスとかがいれば珍しい、とおもうであろうが。
彼がここまで感情をあらわにするなど、と。
そして首を横にふりつつ、
「大樹が蘇っても、戦いが起これば樹は枯れる。そうすれば本末転倒でしかない。
  かつては種子が残されていたが、次もそうだとはいいきれない。
  戦争は対立する二つの勢力が引き起こすもの。だから私は世界を分けたのだ。
  あの愚かなカーラーン大戦を引き起こした二つの陣営を。
  シルヴァランドとテセアラに閉じ込めるために。
  そして、双方はマナを搾取しあい、繁栄と衰退を繰り返すことで魔科学の発展も抑えられている。
  …もっとも、ここしばらくはテセアラ側のマナの過剰摂取も問題にはなっているが」
「嘘だ!お前はマーテルをたすけるために大いなる実りを犠牲にしてるんだ!」
感情のままにうごき、自分で真実を見極めようとしない。
それはいつもエミルにいわれていたことなのに、ロイドはいまだになおっていない。
「そうかもしれぬな。お前がコレットを救うために、シルヴァランドの滅亡を放置しているようにな」
「それは……」
コレットが小さくつぶやき、おもわず下をむく。
「ち、ちがう!」
「違わない。どこが違う、というのだ?それにお前達は誰も犠牲にしていない、とでもいうのか?
  目標のためならば多少の犠牲はつきもの。その規模の大きさはどうあれ、な。
  お前にかかわったものたちはどうして命をおとした?お前の母親は?」
「そ…それは……」
そこまでいわれ、はっとする。
そうだ、母は自分を人質にとられ、そう説明をうけた。
「お前達が勝手に精霊の楔をといたことで、二つの世界にどれだけの被害かでた?
  お前達こそ大量殺人を犯しているではないか」
被害、といわれてもロイドはそれを目の当たりにしたわけではないので実感がない。
だが、すくなくとも何かとんでもないことが大地におこった、というのだけは理解している。
「ち、違う。違わないかもしれないけど、違うよ!
  ロイドは…ロイドはコレットも、世界も、皆が救われる方法を、道を探してるんだ!
  お前は…それをあきらめたいくじなしじゃないか!勇者ミトスとまでよばれた君なのに!」
「勇者…か。だが、人の認識はかわらなかった。
  我らが戦争を締結させた、が、我らがハーフエルフであることはことごとく上層部のものに握りつぶされた。
  それをつたえようとしたものはどうなったとおもう?反逆罪でそれぞれの陣営に秘密裏に捉えられた。
  戦争を締結させた後も、我らは二つの陣営から追われることとなった。
  …我らがいきていれば、戦争を締結したのがハーフエルフだとばれる、
  勇者ミトスとその仲間達は戦争をとめたのち、語ることなく消えた、と語り継ぐためにな」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
それは語られていない、歴史の真実。
「それでも、そのときの我らは、それでも種子が発芽すれば、それまでに人々の認識がかえられる。
  そう、おもった。すくなくとも…あのときまでは。
  大樹を発芽させるために、デリス・カーラーンにおもむき、力を解放しようとしたときに、  
  二つの陣営が…停戦条約を結んでいたばすの二つの陣営がこともあろうに、
  互いの勢力をもってして大いなる実りを…大樹を独占せんと押し寄せてくるまではな」
多勢に無勢。
それでもクラトス達は善戦した。
が、マーテルの元に別働隊…否、本隊がマーテルの側、すなわち実りのほうにむかい、
大量にいた軍勢のほうが囮、であった。
そのことにきづき、あわてて戻ったミトスがみたものは…人にころされるマーテルの姿。
人間なんて…きたない。
「所詮、人間とは、そう、なのだ。口では綺麗なことをいいつつも、裏では何をかんがえているか。
  すきあらば他人を陥れようと画策し、必要とあれば残虐なことすらいとわない。
  私は、そんな人の世界を愚かしい、とおもう。だからこそ、私は誰にも差別されない世界をつくる。
  何ものも差別されない、そして利用されない。人は…自分と違うものをおそろしがる。
  そして排除しようとする。恐怖し、虐待し、虐げ、陥れる。ならば、皆が同じになればいい。
  エクスフィアを使い、その体に流れる人やエルフの血をなくせば、地上のものは全員、
  無機生命体化する、そうすれば…差別はなくなる。それが私の望む千年王国だ。
  ディザイアンもクルシスもそのために組織されている。差別をうむ種族の争いは消えるのだよ。
  …ジーニアス」
「…差別されなくなるの?僕も…?本当に?」
名を呼ばれたことに驚きはない。
というか、どこか、すとん、と納得してしまったのもある。
だけど、彼がいうことにも一理ある、とおもってしまう。
思えてしまった。
ゆえに、無意識のうちにふらふらとユグドラシルに近づいてゆこうとするジーニアス。
が、
「だまされるな!ジーニアス!そのためのエクスフィアはどうやって創られていた!?
  マーブルさんのことを忘れたのかよ!
  マーブルさんみたいに誰かの命を犠牲にしてエクスフィアができるんだ。
  そんなのおかしいじゃないか!」
ジーニアスの手をつかみ、ロイドが叫ぶとどうじ、ジーニアスははっと我にともどる。
はっと我にともどると、今度は再び、ロイド達のほうへと後ずさる。
そのことにたいし、ユグドラシルの顔があきらかに歪んだのがみてとれるが。
「ザレごとを。改革に犠牲はつきものだ。それが判らないのならばここで朽ち果てるがよい。
  そもそも、テセアラ側にしろ、今のように技術が発展したのは何のためだ?
  エクスフィアを利用した様々な装置などが開発されたからであろう?
  無駄なエクスフィアを大量につかった橋などといったものも建造していたな。
  たしか、三千個、だったか?ロイドよ。お前のいい分だと、テセアラは三千人の人柱の上で、
  あまり必要がないであろう橋をつくったのだぞ?それでもヒトは愚かではないといえるのか?」
「それは……」
あのとき、まだリーガルはエクスフィアが何たるのかをしらなかった。
だから、あの橋の設計をてがけ、建造にまでこぎつけた。
ふんだんにエクスフィアを利用することで、橋の強化性がたもてるのならば、とし。
「話しにならんな。本当にお前は愚かでしかないよ、ロイド・アーヴィング」
「なんだと!」
「理解しているフリをみせていても、本質はまったく理解していない。それがよくわかったであろう。
  共にいるものたちも、そんなものたちよりも我のもとにつけ。
  とくに我が同胞たるお前達はそんな愚かなものと共にいる必要性を感じない」
そんなユグドラシルの台詞に、
「たしかに、ロイドは愚かでしかないわね」
「先生!?」
「だけど、そんな愚かなロイドだからこそ、そしてロイドに教育を任されたのはほかならぬこの私よ。
  投げ出すことなどはできないわ。誇りにかけて。
  それに、この子はどちらかというと、愚か、というよりは馬鹿なのよ」
「熱血馬鹿といもうね」
なにやらひどいいわれようだが、しかし的をえているので何ともいえない。
「…たしかに、熱血馬鹿でしかないな」
どうやらそれはユグドラシルも同じ思い、であるらしい。
「…敵にまで認証されるロイドさん、さすがです」
「うむ。いろいろな意味でな」
何やら仲間達のうちではそんな会話が繰り広げられているが。
「熱血馬鹿に話しをしても、脳筋に話しをしても話しがすすまん。神子はわたしてもらおう」
「な、俺はノーキンっていう名じゃないぞ!」
「「「…ロイド……」」」
「もう、頼むから、ロイド。あなたは何もいわないでちょうだい。私の教育が間違っていたのかしら?
  いつもいつもこの子は興味あることしか理解を示さないし……」
「姉さん、元気だしてよ。ロイドがこうなのは今にはじまったことじゃないし」
「…お前は我が同族に苦労をかけても何ともおわないのだな。愚かとしかいいようがない」
どちらが敵なのか味方なのかあるいみわかりにくいような会話がこの場において繰り広げられていたりする。
「リフィル…あんた、苦労してるねぇ…」
そんなリフィルにしいなもそう、としかいえない。
今のいい分には、どちらかといえばユグドラシルに理がある、そうしいなとておもってしまった。
熱血馬鹿に話しをしても話しがすすまない。
確かにその通りだ、とおもってしまったことは事実。
まあ、その馬鹿さ加減、まっすぐさ加減に救われることはありはすれど。
と。
「ユグドラシル様!」
そこに第三者の声が投げかけられる。
それとともに、背後のほうから光の球のような何かが放たれる。
それは一直線にジーニアスのほうへ。
直後、ジーニアスの体が何かに弾き飛ばされる。
「ユグドラシル様!?」
「プロネーマ!何のようだ!」
どうして?という思いがつよい。
あきらかに自分を狙っていた攻撃。
なのに、一瞬、自分の体がはじきとばされ、その攻撃の直撃をうけたのは…受けたのは…
「この小僧、ユグドラシル様を盾にするなど!ゆるさん!」
どこをどうみたらそう捕らえられた、というのであろうか。
どうみても、ユグドラシルのほうがジーニアスを突き飛ばし、身代りになったとしかみえなかったのに。
だが、そんな現れたプロネーマ、とよばれた女性に対しびしゃり、と言い放つユグドラシルの姿。
「あ、は、あの、例の件が動き出しました゛かゆえ」
「…わかった。…覚えておけ。全てを救える道がいつもあるとは限らない。
  ロイド、お前が追いかけている道は幻想にしかすぎない」
それだけ言い放ち、そのまま何ごともなかったかのように、プロネーマ、と呼ばれた女性とともに、
ユグドラシルはその場からかききえる。
「…?どういてあいつは、俺たちのことを見逃したんだ?それに……」
あの攻撃、プロネーマという女性がはなった攻撃は、まさに死角であった。
あのままではまちがいなくジーニアスが直撃をうけていた、であろうに。
だが、ジーニアスは無傷。
そう、かわりにユグドラシルがその攻撃をうけたがゆえ。
ふと、ジーニアスは胸騒ぎをおぼえ、ユグドラシルがたっていた場所。
すなわち、自分を突き飛ばし、先ほどまで自分がたっていた場所にと移動する。
と、足元に何かがおちている。
ああっ…こ、これは!
みおぼえのある古ぼけた笛…壊れてしまっているが、それはまちがいなくミトスの笛。
そういえば、ついさっき、プロネーマの攻撃から自分を護ってくれたとき、ユグドラシルが負と炉子から、
何かを落としたようにみえたようなきがしたが。
まさか…やっぱり、そう、なの。
そうでしかなかったの?ミトス……
ずっと、禁書の中でかつての彼の記憶だという彼らと対峙したときからおもっていたこと。
それが今まさに線をもってして確信へとかわる。
「どうしたの?ジーニアス?」
プレセアが唖然と立ちつくしているジーニアスに気づき声をかける。
「なんで、あいつは俺達をみのがしたんだ?」
そこには剣がさきどとかわらぬ状態で床に突き刺さっているのみ。
ロイドの呟きにジーニアスは今は答えられない。
答える気力がのこっていない。
「…何でも、ない」
いってあわてて笛をポケットにと隠す。
「ともかく、ここから立ち去りましょう。また追手がこない、ともかぎらないわ」
「出てからどうすんだよ。先生」
「まずは、アルタステのところに戻りましょう。彼のところが無難だとおもうわ。
  先ほどの彼の言い回しだと、世界の被害は尋常ではないようないい方だったしね」
混乱している人間は何をしでかすかわからない。
それこそゼロスがいればどうにかなるかもしれないが、危ない橋はわたりたくない。


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あとがきもどき:
薫:本編にはない、ユグドラシルのロイドいじりをいれてみましたv(まて
  …いや、彼がどうしていじらなかったのかな?とかいう思いがあったりして。
  …傍にいたり、またジーニアスの話しから、ロイドの熱血馬鹿ぶりは理解してるはず、ですよね。
  ゲーム本編においても。ミトスはあるいみ知識はしっかりとあっても、世情に疎かったりしたでしょうし。
  ロイドは世情にうとく、また感情のままにつきすすみ何も考えていない、という点。
  その差異、でしょうね。自らの心の闇に捕われたのか、そうでないのか、という違いは。
  さてさて、ようやく次回で衝撃の(?)事実発覚回~

2013年10月1~5(火~土)某日

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