まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
かな~~り空気になってたユアンの登場v
まえぶりさんで、エルフ達もついに、新たな理に組み込まれることが決定されました。
まあ、あの高飛車傲慢になりまくってるエルフをみれば、
さすがに改善の余地はある、と決定を下されるのは至極当然、かも。
…そもそも、だって、未来において、どうみてもエルフ達、ラタトスクのラの字も触れてませんでしたし。
ユグドラシルのことにしか触れてなかったし。
エルフとて都合のわるいことは伝承にのこさないようにしていくような選択をする、
というのはありえるかな、とおもったり。
ともあれ、いきますvこれでたぶん、禁書の記憶の裏ダンジョンは完了・・のはず。
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「…いったい、彼らはどうした、というのでしょうか?」
「さあ?」
そもそも、自分が【誰】なのかわからない、というのは致命的だとおもう。
というか、自分の加護をうけせし種族のはずなのに、気配すら捉えられなくなっている。
というのはもう始末におえない。
それはすなわち、世界と共存してゆく、という根本的な根源から彼らは忘れてしまっている、
といっても過言でない。
直接に出向いてもいいが、一応、最終判断をかねて、正面からエルフの里へとやってきた。
そこで投げかけられたは、エルフ達の暴言の数々。
というか、気配をほぼ隠していない、というのにわからない、というのが呆れてしまう。
トレントの森に出向くにあたり、わざわざ隠す必要もないか、というので気配の隠蔽を解除していた、というのに。
それすらわからない、というのだからもう始末におえない。
しかも、以前、センチュリオン達とともにいたのは間違いだ、などとわけのわからないことをわめいていた。
どこに救いがある、というのだろうか。
だからこそ、断ち切った。
そのものから、自らの加護、全てを。
急激にマナが断ち切られ、そのものはその場に倒れていったが。
同じような思考をもつものに対して一斉に施した結果、里の半数以上のものが同じような状況にと陥った。
つまり、エルフ達はすでに、
見た目だけで判断するという俗物に近しい思考を繰り返すだけの生物に成り果てているらしい。
突如として里のエルフ達が倒れたことをうけ、エルフの里では何やら騒動が起こっているらしいが。
こちらにはまったくもって関係ない。
軽く自然と同調させただけなのにこちらに気づかずに止めることすらできないエルフ達に、
もはや用はない、といってもよい。
本来ならば見張りがいるはずのエルフの聖地。
トレントの森へとつづく出入り口。
しかし、そこに今現在、エルフの姿は見当たらない。
つい先刻、ユアン達が中に出向いていったのはすでに視て知っている。
すでに世界との意識の同調は完全に戻っている。
目覚めたばかりのときとは違い、力が満ちている、といっても過言でない。
「それより、本当についてこられるんですか?シュナイダーさん?
この奥、人間にはきついておもいますけど」
意思力だけではなく、マナのありようも関係している。
「この地は、我ら研究所でも研究対象の地でもありましたしね。
毎度、エルフ達に交渉しても入れてももらえなかったのですが…許可もえずに入って問題ないのでしょうか?」
たしかに、見張りのエルフはいなかったにしろ。
気になるのは、エミル、となのったアステルにそっくりの少年にたいし、
エルフ達が暴言を吐きまくっていた最中、突如としてそのエルフ達が倒れたこと。
しかも、どこからわいてきたのか、エミル達が何かしたのか、とおもってむかってこようとしたエルフ達に対し、
どこからともなくわいてでてきた魔物達が一斉に、そんなエルフ達を威嚇しはじめた。
そんなことはいまだかつてなかった出来事。
ゆえに余計にエルフ達は混乱している。
少し前の出来事を考えれば自分達が行ったことがいかに愚かであったかわかったであろうに。
センチュリオンとともにいたもの。
それは、すなわち、確実に精霊ラタトスクにかかわりがあるものだ、ということが。
もっとも、よもや当事者などとはゆめにも思わない、であろうが。
「とりあえず、僕は僕ができることをするまでです。
リフィルさん達の体の負担を少しでも少なくするためには、
表層部のトレントの森の最深部で十分間に合いますし。最奥までいく必要は感じませんしね」
というか、それをすればヒト程度の器ならば確実にマナが剥離し、瓦解する。
「この森の、奥、ですか?」
「ええ。そこで十分かと」
そんな会話をしつつも、すでに霧に覆われている森の中をすすみゆくエミル達。
今いるのは、エミルと、そしてシュナイダー、とよばれているもの。
そして、そのシュナイダーのお供としてもう一人、研究所からやってきているが。
歩くたびに顔色が悪くなっているのが見て取れる。
「まあ、この森の中で死ぬ、ということはないからいいですけど、無理はしないほうがいいですよ」
シュナイダー達は歩くたびに足取りがおもい、というか体がものすごく重たく感じる、というのに。
エミルのほうは逆にかろやかでまったく顔色すらかわっていない。
むしろどちらかといえば、生き生きしているようにみえるのはシュナイダー達のきのせいか。
「いえ、ここにくる、ときいたときにすでにグミ系統などはかなりもってきておりますから」
いいつつも、オレンジグミ、とよばれし精神力…すなわち、マナをある程度回復するグミを口に含む。
本来ならばピーチグミなどといった体力と精神力、同時回復できるものが好ましかったが、
いきなりのことであったので、オレンジグミをある程度用意するのがやっと、であったらしい。
「…まあ、いいですけどね」
どちらにしても、彼らはまちがいなく、かの地まではもたない、であろう。
もっとも、倒れたとしても、彼らはそのまま森の出入り口に戻されるだけ、なので何の問題は、ない。
光と闇の協奏曲 ~封印せし英雄たちと現在と~
「ぐ…お、おのれぇぇ!」
もはやどれくらい戦っていたであろう。
それはわからない、だがしかし、ある時を境に、突如として相手の力が弱くなった。
その隙を見逃さず、それぞれが攻撃をしかけ、そして今にいたる。
それはちょうど、エミルがトレントの森の最深部にはいり、
とある場所に本をおいたのとほぼ同時。
しかしそんな外の事情をロイド達がしるよしもない。
波動は、コレットの身につけている蝶のブローチより、この地にマナが満ち溢れた。
だからこそ、魔族である彼らは弱体化した。
あまりに瘴気がこく、その感覚すら狂わされているがゆえに、ジーニアスは気づかない。
また、リフィルは自らが魂のみの存在となっているがゆえに、そのマナの波動に気づくことができない。
「おのれ…どこまでも邪魔をする!ラタトスクめ!」
忌々しそうに目の前の紅き鎧をまといし魔族らしきもの。
クラトスいわく、目の前のそれがこの書物に封じられているリビングアーマー、
という種類の魔族だ、という。
しかし、問題なのはそこではない。
どうして、精霊ラタトスクの名がここにでてくるのであろうか。
「あやつが世界の加護を与えしもの。お前からはその加護の力が薄れているとはいえ。
それ以外の力の媒体をもってくるとはな!クラトス・アウリオン!」
その声にはどこか怨嗟が含まれている。
「媒体?」
そういわれてもクラトスには意味がわからない。
そんなものは自分はもっていない。
「しかし、我は消滅はせん!ふはは…人が我を求める限り、我は不滅なり!!」
その言葉とともに、紅黒い霧とともに、その姿がその場よりかききえる。
「か…かてたの…か?」
すでに、クラトスとゼロス、そしてロイドとコレット以外の体はほとんどが透けている。
それはすなわち、体を構成するマナすらがあやしくなってきている証拠。
息もたえだえにロイドがいうが。
「ロイド、いそげ。そこの燭台に炎を。このままでは他の者たちが消滅しかねん」
特に、精神体だけの存在となっているリフィルが一番危険。
まだロイド達は肉体ごと中にはいってきているがゆえ、肉体を構成しているマナがあるにしろ。
魂そのものでしかないリフィルはといえば、その魂そのもの、すなわち存在の力そのものが、
この場における存在の力となっているといってもよい。
すなわち、力がつきれば、魂ごと消滅してしまう。
もしくはこの空間に吸収され、文字通り、これまで倒してきた魔界の魔物達と同じになりはてる。
「だけど、リヒターさんやアステルさん、どこにいるんだろ?」
中にはいっている、という二人。
リフィルはみつけだした、というのにいっこうにアステル達の姿はみあたらない。
アステルに関しては、さきほど通過した、なぜか倒したはずの五聖刃達がいた部屋。
その場にて彼がいた、というようなことを相手がいっていたような気がするが。
移動したはいいものの、どうやらクラトスとは異なる階層に飛ばされたのか、その場にはクラトスはおらず、
どうにかして彼ら三人を撃退し、そして次なる層にてクラトスと合流し、そして今にと至るロイド達。
あれからどれくらいの時間が経過しているかすらもわからない。
ここは、時間の概念がなさすぎる。
それに、とおもう。
あの閉じ込められた、とわめいていた五聖刃達がいうには、
彼らの中では、どうやらまだ長というものは決められてはいないらしい。
以前、ロディルがプロネーマというディザイアンが、五聖刃の長だ、といっていたことから、
かの彼らはどうやら長がきめられるよりも前にこの地に残されてしまった、
リフィルいわく、おそわくは思念体であろう、とのことらしい。
人は、強い思いなどを抱いたときに、念を残すことがある、という。
当人の自覚は関係なしに。
「一時的に具現化していた魔族の一部を撃退したにすぎん。
あやつらは、基本、精神生命体。ゆえに完全なる消滅ではない、時間をおけば再び復活する。
その前に、一番奥にとある魂炎の祭壇に石をくべる必要がある。
それにより、この場の全てなる力がマナにと変換され、魔族達も存続は不可能になるはずだ」
あの当時、そこまでの力はすでに世界にはなかった。
そしてまた、石にすら。
魔族の瘴気に無自覚ながらに侵された人は、自らが好んで殺戮などを繰り返していた。
それはまさに負の連鎖。
どうにかしたい、とミトスがかの地に出向いたときに、聞かされたとある物質。
それはその場にて精霊ラタトスクが産みだした、らしいのだが。
何でも周囲の全てなる力をとりこみマナに変換することが可能だ、というその石は。
マナが濃い場所で熟成されることにより効果を発する、という。
しかし、少しでも穢れがあれば熟成には至らない、とも。
だからこそ、一番神聖であり、マナにあふれていたかの水鏡の森にとかの石を安置した。
石の熟成をまつために。
かの森はなぜかマナに満ち溢れており、マナが涸渇していた世界の中で、
唯一といっていいほどにマナが満ち溢れていた地。
ジーニアスの言葉とはうらはらに、淡々といっているクラトス。
そして。
「とにかく。先を急いだほうがいい。外でどれほどの時間がたっているかわからん以上はな。
それに、生身でこの空間に長時間いるのも体に負担がかかる。
体を構成しているマナそのものが瘴気に侵されかねん」
それはかつて、ミトスが契約した精霊達からいわれたこと。
「じかん。か、リフィル達の体は大丈夫なのかねぇ?
あたしらはそのまま肉体のまま、どうもこの中にはいってる…とはおもうけど」
思う、というのは確証がないがゆえ。
しかし、痛みも感じれば血も流れる。
まちがいなく、生身のままではいってきている、とはおもうが、
クラトス曰く、ここは精神世界面、に近しい場所、らしく、
当人の想いや意思力などが実体として形をなすことがある、とのことらしいが。
詳しいことは、しいなにもわからない。
あまりクラトスは多くはいまだに語らないが、しかしこの封印は、
魔族二柱を仮初めに封じているものだ、というものはロイド達に説明がなされている。
正確にいえば、問いつめるリフィルにたいし、クラトスが折れた、というのが事実なれど。
「今のが二柱の魔族ってことは、あとはじゃあ、封印の根源となっている場所にむかえばいいってこと?」
ジーニアスの問いに、
「そのとおりだ」
そういうクラトスの表情はすこしばかり眉をしかめているようにみえるのは、ロイド達のきのせいか。
「たしか、伝承では、これを封印したのは、勇者ミトス、そしてその仲間達、だったわね。
だとすれば、クラトス、あなた……」
勇者ミトスの仲間達、クラトス・アウリオン、ユアン・カーフェイ・そしてマーテル・ユグドラシル。
エルフの語り部からきかされている、ミトス以外の三人の名前。
だとすれば、この奥にいるのは、もしかしたら、コレットを器に、と目されている。
今では女神とよばれているマーテルの分霊体がいる、かもしれない。
「とにかく、いくしかないんだろ?いこうぜ。お、次の階にいくだろう転送陣がでてきた」
ロイドが燭台にソーサラーリングで炎をつけると、周囲が青白い光にとつつまれる。
それは、まるで以前、ロイド達がつかった、ブルーキャンドルのごとくの青白い光。
そのまま有無をいわさずに、その転送陣にむかってゆくロイドの姿をみつつ、
「まったく。あの子は」
「でも、ロイドさんのいうことにも一理、あります」
ため息をつくリフィルに、淡々といっているプレセア。
とりあえず、今はクラトスのいうことを完全ではないが信じるしかない。
彼らはこの封印の場のことを何もしらない、のだからして。
移動した先は、今までとはことなる、何やら真っ白い空間。
先ほどまでの周囲は何ともいえない色彩の空間であった、というのに。
と。
「我々ではないようだな?」
ふと、聞き覚えのある声がする。
「でも、クラトスはいるね。クラトスの弟子、かな?」
『え?』
さらには、ロイド達にとってとてもよく聞き覚えのある声も。
おもわず、ばっとその声の主をみてみれば、
そこには、金髪の少年が一人に青い髪の青年と、赤い髪の青年が一人。
「・・・・・」
金髪の少年に、クラトス、とよばれた…どうみてもクラトス当人、は何やら無言のまま、ではあるが。
おもわず、背後にいるクラトスと、そして目の前にいるクラトスとを幾度も見渡すロイド達。
服装が異なるにしろ、たしかにあれは間違いなくクラトス当人。
しかし、とおもう。
「「「「ミトス(さん)!?」」」」
その声は、ジーニアス、ロイド、プレセア、しいな、四人がほぼ同時。
リフィルのみが、まさか、といって何やらうなり、腕をくみ、クラトスをじっとみているのが印象深い。
「だとすれば、ミトス。お前の弟弟子だな。というかクラトスが簡単に弟子をとるとはおもえんが?
それに、どうやらそいつらは、お前の名をしっているようだしな」
ロイド達がミトスの名を呼んだことにたいし、青い髪の青年…これまたロイド達もよく知っている、
どうみても、ユアン・カーフェイ当人でしかおもえない人物が声を発してくる。
「まあ、誰でもいいよ。はじめまして。僕はミトス。ミトス・ユグドラシル」
そんなロイド達にたいし、どうみてもミトス当人。
というか服から何から何まで、腕につけている装飾品までミトスと同じ。
声も顔もまったく、服装すらまったく同じ人物がにこやかにそんなことをいってくる。
そんな自己紹介に息をのんだ声がいくつかもれるが。
それが誰のものなのかは、当然、この場にいるミトス、と名乗った彼らには興味がない。
「ミトス!?僕だよ、ジーニアスだよ!ねえ!」
しかし、息をのんだのは一瞬で、一歩前にでて必至に声をかけているジーニアス。
「というか、何でミトスがここにいるのさ!?アルタステさんのところにいるはずでしょ!?
まさか、ミトスまでこれに吸い込まれちゃったの!?」
先ほど、ミトスが自己紹介をした、というのにもかかわらず、ジーニアスは心のどこかで信じたくはない、らしい。
あのミトスが、自分達が倒そうと…どうにかしようとしている、クルシスの指導者である、ということを。
「?」
そういわれても、ミトスからしてみれば、首をかしげざるをえない。
というよりも、彼に同じ同胞の友達は一人もいないがゆえに、その反応もうなづける。
正確にいえば、同い年に近しい友は一人もいないといってよい。
彼の世界は、姉と、そして仲間であるユアンとクラトス、その三人だけで成り立っている。
もっとも、彼の心の中には、あと一人、追加されてはいるものの。
「まさか…僕のこと…忘れちゃったの?それも、ここの魔界の瘴気のせい?」
「……なるほど。そういうことかよ」
おもわず、ぽつり、とつぶやいているゼロス。
明かにあやしい、とはおもっていた、あのミトス。
彼と行動を元にしはじめて、プロネーマ達と繋ぎをとるのになぜか相手のほうからよくやってきていた。
この中に入る前に、エミルがいっていたこと。
中で真実を知るだろう、というあの台詞。
全ての線が一つにつながる。
…なぜに、天界の指導者たるかれが普通の子供のフリをして旅に紛れてきたのかはきにはなるが。
それも少し考えればわかること。
神子の器を手にいれること、そして、ロイド達が自分と契約しているはずの精霊との契約を解除していっている。
それらを見張るためにあえてついてきていたのであろう、ということなのであろう。
そうおもってしまえばいろいろとつじつまはあう。
常に、あのエミルがミトスをみるときに、切なそうな、悲しそうな表情をしていたことも。
あんな襲撃の最中、まったく傷一つなかったあのミトスの格好も。
自らがわざとあの場に攻撃を支持し、自分達がくるのにあわせて倒れていたふりをしていたのなら、
怪我などなくてあたりまえ。
「ど、どういうことなんだよ?え?なんでミトスがここに?」
いまだに、理解できていないらしく、戸惑いの声をあげているしいな。
「何でミトスがユアンやクラトスもどきと一緒にいるんだ?」
ロイドもどうやら理解できていない、らしい。
そんな彼らの姿をみて、リフィルからしてみれば、盛大にため息をつかざるをえない。
この子達は、状況を理解していない。
否、理解したくない、という心からなのかもしれないが。
リフィルとしてもさすがに理解せざるをえない。
理解できてしまう。
「えっと……ごめんね。君。もしかしたら本物の僕と君とは友達なのかもしれないけど。
ここにいる僕は昔の記憶の存在なんだ。このときの僕にはハーフエルフの友達はいなかったから」
ジーニアスの涙すらためていう懇願したような台詞にどうやら思うところがあったのか、
申し訳なさそうにそういってくる、目の前のミトス、となのった少年。
「…え?」
その言葉にジーニアスからしてみれば、とまどわずにはいられない。
だって、あのとき、約束した。
ずっと友達だ、と。
なのに、ハーフエルフの友達はいない、たしかに目の前のミトスはそう、いった。
ミトスと同じ顔、ミトスと同じ声、ミトスと同じような動作と表情で。
「つまり、幻ということかしら。いえ、思念体、というべきかしら。記憶のみを切り離された、いわば魂の分霊体」
「その通りです。えっと、あれ?そっちのハーフエルフの子とあなたはよくにてますけど。
もしかして、血縁者ですか?」
リフィルの言葉ににこやかにうなづき、そして少しばかり首をかしげてといかける。
「姉よ」
「…よく無事でしたね。というか、あなた、肉体をもってないでしょ?今。
そっちのジーニアスっていった子は僕と同じ同胞ってわかるけど。
魂だけの存在になった人に関しては、同胞かどうかは見分けられませんしね」
いいつつ。
「姉…お姉さんかぁ。いいなぁ…うう、姉様にあいたい。いいな~、本体の僕のほうは。
どうせいまごろ、姉様にひざまくらとかしてもらってるんだろうな……」
何やら愚痴をいいだしはじめてすこしいじけているようにみえるのはきのせいか。
「…お前はいい加減に姉離れをしろ」
今までだまっていたクラトスにそっくり…どうやらそちらもクラトス、らしいが。
何やらミトスに対し、そんなことをぽつり、ともらす。
そんな二人を横眼でみつつ、さらり、と完全に無視するかのごとく、
「どうやら、お前達は今度は本当に封魔の石をもっているようだな。ようやく石が熟成しできあがったか」
ため息を一つついたまま、一歩前にとでてくる青い髪の青年、ユアンの姿。
この状態になったミトスには何をいっても無駄、というのは長い付き合いの中でわかっている。
だからこそ話しを進める必要性がある。
「?どういうことだ?たしかに、石はもっているけど。なんでここにあんたがいるのかも気になるんだけど」
というか、エミルに手渡された。
これが何なのか、というのはクラトスが説明してきた。
なぜに、あのエミルがもっているのか、と驚いていたのは記憶にあたらしい。
というか、なぜに、レネゲードのユアンがここにいるのだろうか。
ロイドはいまだに完全に理解していない。
否、したくない、のかもしれない。
共に一時とはいえ旅をしていた人物が、自分が一番嫌悪していた人物である、と。
話しはたしかにきかされている。
姉を殺され、堕ちてしまった勇者ミトス、クルシスの指導者のことは。
でも、心のどこかで話しだけ、としてしかきいていなかったのかもしれない。
よもや顔見知りの人物がそんな人物だ、と夢にもロイドは思ってもいなかった。
クラトスにしろ、いまだに敵側、すなわち、クルシスの天使だ、と信じ切れてない状態。
「…それは、魔界を浄化するための聖なる石だ。
それが浄化の力をもつまでユミルの森の水につけておく必要があった」
というより、そこにいる自分の本体は説明していない、のだろうか。
そんなことをおもいつつも、とりあえず説明してくるこの場にいるクラトス。
容姿がまったくかわっていないのをみれば、
どうやら自分も天使化した結果、老化といったものからは無縁、になっているらしい。
あれからどれほどの時が外で流れているのかはわからない、にしろ。
「じゃあ、この禁書は封魔の石が出来上がるまでの仮の封印なのね?」
それは確認の問いかけ。
リフィルのそんな問いかけに、
「その通りだ。しかし、封魔の魂炎を扱うには、強靭な精神力を必要とする。
だから我らはここに、記憶の一部をのこし、魔王を焼き尽くすものが現れるのをまっていた」
いいつつも、かるく横にいるミトスをつついているクラトスの姿がみてとれる。
その動作にはっと我にともどったのか、
「僕たちは、戦争を止めて、大樹カーラーンを復活させる使命があるから。
体ごとここに残るわけにはいかなかったんだ。記憶だけの幻だけど許してね」
にこやかにそういってくるミトス。
その言葉から、まだ彼らは戦争を止める前にいるのだ、と理解する。
自分達が戦争を止めたことを彼らはまだ、知らない、らしい。
さすがにそこまでいわれれば、ジーニアスとしても理解してしまう。
否、理解せざるを得ない。
目の前にいるのは、勇者といわれたミトス当人である、と。
それでも、他人のそら似、アステルとエミルのように、まったく関係のない他人という可能性が捨てきれない。
認めてしまえば、今のような歪んだ制度を生み出したのは、あのミトスだ、ということになってしまう。
初めてできた、同胞の友達が、そんなことをしている、などと信じたくはない。
「さあ、我々に力をしめせ。封魔の魂炎で禁書を焼き尽くせるだけの技量があるのかをな!」
ユアンがいうと同時、目の前にいるクラトスが身構えるのがみてとれる。
「我々三人にたいして、お前達がもっとも有効とみる三人で挑んでくるがいい」
「三対三ってわけか」
「その通り。もしもその三人に力なぐは、消滅するのみだ」
「さあ、いくよ!」
「…って、どういうことなんだよ!クラトス!」
いまだに完全に理解できていないロイドが思わず背後にいるクラトスに思わず叫ぶ。
「…聞いてのとおりだ。ここは三人の記憶体をもってして封印がなされている。
そして、背後にある燭台こそが、全てなる封印の要となっている場。
あの場にこれまでつちかってきた封魔の石にやどりし魂炎をくべることにより、
この空間そのものが浄化される役割をはたす」
淡々と説明するそんなクラトスに対し、
「だから、あなたは詳しかったのね。この場を封印した当事者の一人だったから?」
「……そうだ」
このミトスをみるのは、クラトスとしてもあるいみつらい。
まだこのときのミトスは希望にあふれていた。
どんな理不尽なことがあっても決してあきらめずに前をむいて歩いていた。
マーテルがいうように、必ず判り合える日がくる、そう信じてつきすすんでいた。
「…この封印は、我々が戦争を…テセアラとシルヴァランドの戦争を食い止める前。
そのときに行われたもの」
「つまり、今のような世界になるまえ、というわけね」
「なるほど、な」
リフィルがうなづき、ゼロスもまたうなづかざるを得ない。
だとすれば、目の前にいるミトスは、かつての英雄、とまでいわれていたミトスのまま、なのであろう。
このときのミトスは、敵であろうと傷つけることを疎んじていた。
しかし、今は……
「え?ミトスと戦えってこと?僕、やだよ!友達となんて戦えない!」
ジーニアスが思わず叫ぶが。
「…それは、つまり、ジーニアス。お前は暗にあいつらとも戦えない、といっているということか?」
「ち、ちがうよ!それは!」
「違わないだろうが」
「そ…それは……」
ゼロスがいうあいつら、というのは嫌でもわかる。
ゼロスがいっているのは、クルシスのものたちだ、と。
「仕方ないわ。この子は戦えそうにないし。私がいきます」
「なら、俺様もいこう。ロイド君はどうするよ?まあ、お前さんは、下手したら姉さんが消滅するかもしれないのに、
友達だから、といって戦いを回避してればいいさ」
「ど、どういう意味さ!ゼロス!」
「言葉のまんまだろうが。リフィル様はみたとおり、精神体のまま。
すなわち、俺様達と異なり、器をもっていない。だとすれば、リフィル様が使用する力の源は何か?
少し考えればわかるだろうが」
「え?」
そこまでいわれてもジーニアスには理解できない。
心が理解することを拒んでいる、といってもよい。
「……リフィルさんが術を使用するためには、その魂のもつ力を使用する必要がある。
つまり、力をつかうたびに、リフィルさんの幽体は疲弊してゆく、ということ…ですね」
「え?どういう?」
プレセアの言葉にロイドがまったく意味がわからないらしく首をかしげる。
「ゼロス…今、ここで説明しなくても……」
「こいつにははっきりという必要があるだろうが。あんたも甘やかすだけが教育じゃないだろ?」
思わずそんなきっぱりいいきるゼロスにリフィルがいうが、
ゼロスのいうとおり。
先の戦いにおいてもリフィルはそのことには触れなかった。
ゼロスが気づいたのは、あの戦いにおいて、リフィルの体がさらに薄くなったことをみたがゆえ。
リフィルは疲れているからだ、とごまかしていたが。
「これいじょう、あんたが術をこの場で使用したら、あんたはきえる、ちがうか?」
「それは……」
「姉さん!?」
「先生!?」
「え?先生?そうなんですか?嘘、ですよね?ね?先生?」
ゼロスの言葉にたいし、言葉をつまらせるリフィルにたいし、
ようやく事の重大性がわかったらしく、思わずさけんでいるジーニアス。
そしてそこまで説明され、ようやくロイドもその仕組みは理解できていないものの、
さすがに消える、といわれて重大性に気づいたらしく思わず叫ぶ。
コレットもどうやらその可能性にはたどり着いてはいなかった、らしい。
ゆえに不安そうな瞳でリフィルを見ていっているが。
しかし、リフィルはうつむいたまま。
違う、といって安心させたいが、しかしゼロスのいうとおり。
おそらく、あと数回、強い力を使用する術をつかえば、自分の存在は保てないであろう。
それは漠然とではあるがリフィルは自分のことだからこそ理解している。
せざるをえない、といってもよい。
リフィル達、ハーフエルフ、エルフにしても、だが、彼らが使用する術はマナを使用したもの。
そして、この空間には、マナ、といった概念がない。
だとすれば、何を使用するか。
それは命そのもの、魂そのものがもつ輝き、しかありえない。
ジーニアスならばまだ肉体を構成しているマナを使用する、ということが可能。
なれど、肉体をもたないリフィルは魂の力そのものをマナとして利用するしかない。
「そして、ここで命をおとしたものは、この書物が存在するかぎり、
この書物の中に捕われつづける。お前達もみただろう。
この書物にとらわれし、魂達のなれの果てを」
「え?」
淡々というユアンにたいし、ジーニアスが戸惑いの声をあげる。
そんなユアンにたいし、背後にてクラトスがため息をついたのをみてとり、
「…どうやら、教えてないようだな。クラトス。相変わらず、お前は甘いな。
そういうことは重要なことなのだから、この場につれてくる以上、教えるのが筋だとおもうが?」
そんなクラトスにたいし、ユアンがそういってくるが。
「…ロイド達はまだ子供だ。無用に罪の意識をもたせるまでもないだろう。
それに…この書物が浄化されれば、捉われていた人々の魂もまた浄化される」
「どういう…どういうことなんだよ!クラトス!」
おもわずそんなクラトスにくってかかっているロイドであるが。
「え?教えてないの?クラトス?クラトスらしいけど。
えっと、この場にいる魔物にみえる全ての異形のものは、この書物にとらわれた、
様々な生命体の魂のなれの果て、なんだ。
この中にとらわれた魂は魔界の瘴気で魔界の眷属として彼らの駒としてその存在を書き換えられてしまう。
浄化するには、強いマナの力がどうしても必要。
魂炎、とはそれらの魂すべてを浄化するという意味をももってるんだ。
その封魔の石の力によって、穢された魂すべてが本来の魂の姿にもどりゆく。
それをしっているからこそ、それをもってきたんじゃないの?君たちは?」
きょとん、とした台詞で何やらさらり、と重要なことをいっているミトスの姿。
『!?』
その台詞に思わずその場にて硬直するロイド達。
つまり、今まで倒してきた異形のものたち。
それが全て…まさか、とおもうが。
「そんなことよりも、時間がおしい」
そんな過去の自分達の台詞をぱっさりと切り捨て、たんたんと言い放つ。
「それもそうだね。僕らもこうして実体化できているのはごくわずかなる時間。
君たちがここにくるまでのくべた炎の浄化作用も時間が限られている。
浄化の炎の光がおさまれば、僕らもこうして実体かは難しくなり、
また、一度消えてしまった魔界の眷属達は全て復活してしまう」
クラトスの言葉にかるくうなづき、
「と、いうわけで。君たちが有効、とおもう三人をきめてね?
僕らにもかてないようなら、君たちにこの封印を託すことはできないから。
というより、僕らにかてないようなら、魂炎を燭台にくべたとたん、
逆に君たちがこの空間に呑みこまれてしまいかねないからね」
今、この場にいるのは、あの場にもどってきたのはリーガルはまだ戻ってきていなかった。
ゆえに、テセアラで観光?をしていたロイド達一行のみ。
ロイド、コレット、ジーニアスにプレセア、そしてゼロス。
しいなは報告をうけて、すぐさまに飛んできていたが。
サイバックとみずほの里があまり離れていなかった、というのもあるいみ強み。
リフィルはこの中において合流したものの、先ほどの説明にあったとおりであるならば、
リフィルを戦いにくりだせば、リフィルが消えてしまう可能性が高い。
「俺様は参加するぜ?」
というか、公然に原因となった彼らを攻撃できる、というのである。
こんなストレス解消ともいえる機会は滅多とないというよりは絶対にない。
「ロイド。お前はリフィル達をまもっていろ。過去とは私が決着をつけるべきだろう」
クラトスがそういうが、
「まもってろって……」
「お前は、コレットを護る、といったのだろう?」
たしかにそういった。
だけど、どうしてそれが自分が参加しない、という結論に至るのであろうか。
コレットが参加すれば、確実に気づく、であろう。
コレットの中に、マーテルのマナがある、ということに。
だとすれば、過去とはいえ相手はあのミトス。
何か本体たる自分に何かがあった、と気づかれる可能性がたかい。
むしろ、彼のこと。
姉が人に殺された、ということまで看破しかねない。
そして、ここにいるミトスまで堕ちてしまえば、それこそもう取り返しがつかない。
それこそ、この場を封じているその立場を利用し、魔界の力、すなわち魔族と契約を交わしかねない。
それだけは避けなければならない。
絶対に。
本体であるミトスですらまだ、そこまでは堕ちてはいない、のだから。
「いや、俺も戦う。ジーニアス、皆を…コレットと先生をたのむ」
「え?ちょ、ロイド!?」
ミトスと同じ姿、容姿をしている彼にジーニアスが挑める、とはおもえない。
あのミトスと目の前のミトスが同一人物なのかはロイドにはわからない。
しかし、目の前にクラトスやユアン、といった同じ者達がいる以上、
その可能性も考えなければいけないのか、ともおもう。
そうすれば、自分は、ユグドラシルを…ミトスを倒すことができるのか、ともおもってしまう。
だが、ユグドラシルをどうにかしないかぎり、クルシスは存在する。
そして、無関係な人達が犠牲になってゆく世界はつづいてゆくであろう。
「きまったみたいだね。いくよ!」
ミトスの声をかわきりに、ロイド、ゼロス、クラトス対、ミトス、クラトス、ユアン。
過去の記憶達と、ロイド達との戦いが開始されてゆく……
「……うん、よかった。君たちなら本を浄化してくれるね」
倒れる一瞬、ほんわかとした姉の笑みがみえたような気がしたのは、ミトスのきのせいか。
正確にいえば、後ろのほうにいる、金髪の女の子、からなのだが。
自分達と同じ、天使のマナを感じるその少女。
まだ、テセアラは天使という生体兵器を生み出しているのか、という疑問はわくが。
まあ、ゼロス、といわれていた赤い髪の青年もまた天使のマナをもっているがゆえに何ともいえない。
天使だ、とわかったのは、ゼロスがジャッジメントたる術をつかっだかゆえ。
そこから感じたマナにてわかった。
彼もまたアイオトニスをその身にうけいれ、天使化している、ということが。
ハイエクスフィアの製造設備施設はたしかすでに破壊したはず、なのだが。
まだ他にも製造されていた設備があったのだろうか、ともおもう。
その一撃に約一名を除いて、決定打に欠けたものの、それでも、自分達をどうにか、
床に倒し伏すことができた以上、精神力の面に関してはどうやら問題はない、らしい。
「あ?えっと…あ、ああ。わかった、任せてくれ」
倒れたはずなのに、次の瞬間には何ごともなかったかのようにそのまま元の姿にもどりゆく。
傷の一つもみあたらない。
クラトスの回復術によってロイド達の傷は回復したものの、目の前の彼らが回復術をつかった、
ようには到底みえない。
にこやかにいわれ、ロイドからしてみればとまどわずにはいられない。
そんなロイドにたいし少し首をかしげたのち、
「ねえ。君は、君たちは。本当の僕をしってるんでしょう?
僕は、僕たちはちゃんと、大樹カーラーンを再生できた?
ハーフエルフは少しは受け入れてもらえるようになった?
さっききたアステルって人はまだだっていってたけど、同じ時間率とも限らないし」
とりあえず、きになっていたことをといかける。
というか、あのアステルと名乗った人物と話していれば、なぜか会話が精霊のことにうつってしまい、
そのあたりのことを詳しくきけなかった。
何でも彼は、精霊、というものを中心にいろいろと調べているらしい。
そして、彼が精霊ラタトスクのことにたどり着いているのをミトスはきき、
それによって話しがはずんだがゆえに、肝心なことを聞き忘れたといってもよい。
「う…うん」
戦いがおわり、戸惑いつつもロイドの傍にやってきていたジーニアスが戸惑い気味にうなづきかえす。
どうみても、あのミトス当人にしかみえない。
他人の空似、であったほしい、という思いと、もしかしたら、という思い。
しかし、今の戦いをみて、彼が自分のおもっていたミトスとは別人だ、とおもうのまた事実。
あのミトスがここまで強い、とはおもえない。
どこか一歩退いたような、戦えないような雰囲気をもっていたあのミトスと、勇者とよばれしミトス。
他人の空似、と思いたい。
切実に。
世の中には三人、似た人がいる、という。
そう、アステルとエミルのように。
「アステル!?アステルがここにいるのかい!?」
そんなミトスとなのった少年の台詞に、しいなが反応し思わずといかける。
「なんかこの部屋を調べるとかいってうろうろとしていたけど…どこいったんだろ?」
たしか、そのあたりをうろうろとしていたはず。
ロイド達がこの場にくる少し前に、周囲をみてくる、といってどこかにいったっきり。
そういえば、とおもう。
「アステルって、どこいったんだろ?ね?」
「我らはこの封印の場からはうごけぬが。第三者は異なるからな」
それまで寡黙をつらぬいていたクラトスが淡々とこたえる。
そんな過去の自分にたいし、クラトスは何ともいえない表情でただじっとみつめるのみ。
「ふん。まだどうやら迫害されているようだな。人間共め!」
そしてまた、ジーニアスの態度に思うところがあったのであろう。
吐き捨てるようにいっているユアン。
「おちつけ。ユアン。彼らはハーフエルフと共にいる。少しはましになったのかもしれぬ」
「そうだね。そういえば、あのアステルって人もきけばハーフエルフと一緒に研究してるみたいだったし」
ユアンが問いかけなければ、その人物がハーフエルフだ、とはわからなかった。
それほどまでに自然体に話していた。
「しかし、所属はテセアラだ、といっていただろうが。
あの国はハーフエルフであろうが何であろうが使用できるものはとことん利用するぞ?
当事者がそれをわかっていない可能性もある」
事実、彼らがしる者の中にも、研究ができればそれでいい、と世界情勢など考えず、
嬉々として非道ともおもえる研究実験をしていたものたちもいた。
たしなめるクラトスにたいし、首をすこしかしげてミトスがこたえ、
そんな彼らにたいし、吐き捨てるようにいいはなっているユアンの姿。
「それでも、いつか必ず、彼らもわかってくれるよ。えっと。君、名前は?」
「ロイドだ」
そうきっぱりといいきるその言葉に迷いはない。
それは信じて疑っていない、とおもっているまっすぐな瞳。
それは、ロイドもおもっていること。
必ずわかってもらえる。
ロイドもそうおもって常に行動している。
もっとも、その自分が間違っていない、とおもった行動が多くの場合間違った行動になっている、
という事実があるにしろ。
「ロイドか。なんだかなつかしい名前だね。ねえ、ロイド。
僕たちがまだカーラーンを再生していなかったら、手伝ってくれる?
君たちなら一緒に大地を再生してくれる気がするんだ」
「…ああ、約束する。必ず大樹を復活させるよ」
目の前の彼らは、心から大樹を復活させるため、に行動しているのだろう、と推測できる。
それはロイドにもわかる。
この彼らが今のクルシス、二つの世界を創った、などとはおもえないほどに。
「えっと、君はたしか、ジーニアス、っていったよね?ジーニアスもお願いだよ。
あ、でも、クラトスがいるってことは、もう僕たちと一緒に行動してるのかもね。
あ、そろそろ時間がせまってる」
ふとみれば、ミトス達の体が透けかけている。
「どうやら、そろそろ時間がせまっているようだな」
「僕たちが実体化できている時間はあとわずか。
弱体化しているこの世界の瘴気が抑え込まれているのもあとわずかしかない。
ぼくたちが消えた直後、その石にやどりし、封魔の石の魂炎を必ずそこの祭壇にくべてね。必ずだよ」
「石をそのままその祭壇に投げ入れればいい。そうすることにより、
中に封じられし炎が浄化の炎として解放される…さすがにこれくらいは、そこのクラトスが説明しているか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ユアンの台詞に、ロイド達とともにいるクラトスは無言のまま。
というかそこまでクラトスは説明していない。
むしろこの場について詳しく説明していないことのほうが多い。
「じゃあ、あとはたのんだよ」
それだけいいつつ、ミトス達の姿は薄れ、やがて周囲にとけこむようにとかききえる。
しばし、そんな彼らが消えた空間をみつつ、
「…あれが、勇者って、英雄って呼ばれたミトス、なんだな」
まっすぐに前をむいていた。
どんな困難があろうとも、決してあきらめない、そんな感じが剣を交えてつたわってきた。
というか、剣も技も、そして術もつかいこなせていたミトスにたいし驚愕せざるを得ない。
もっとも、ロイドとよく剣技が似ていたことに驚きを隠しきれなかったが。
ロイドは、彼らがいっていた、弟弟子、というその言葉の意味をよく理解していない。
理解していればすぐさまにわかったであろう。
ミトスもまた、クラトスの弟子であった、ということが。
リフィルなどは、その言葉をきいて、クラトスのほうをみていた、というのに、である。
と。
「…うわ!?体がすけてきた!?」
ふとロイド達全員の体がまるでそこにないかのごとくに薄くきえかけてくる。
「いけない!ここは、魔王の封印。魔王の怨念とミトスの封印が創りだしていた世界。
彼らが消えれば私たちもこの世界から押し出される!」
「…それでは、封魔の魂炎をくべられません。そうすると、この本はいつまでも存在して……」
「魔物達は復活するわ。ロイド、いそいで!」
「封魔の魂炎をくべなければ、奴らは復活する……」
しかし、とおもう。
なら、あの彼らは?
この場にのこっていたという、あのミトス達は?
これをくべれば、ここを封印していた、という彼らはどうなるのだろうか。
そうおもい、ロイドはおもいきりがつかない。
「いそげ。ロイド。このままでは、リフィルが消える。文字通り、魂ごと消滅するぞ」
「!ロイド、いそいで!」
ロイドが迷っている最中も、リフィルの姿は点滅を初めている。
それはロイド達とはあきらかに異なる光り方。
まるで全てが粒子になってそのまま霧散してしまうかのごとくの光り方。
体全体が光り、まるで粒子のようなものがあつまって体が構成されているのでは、
というような光り方をしていたりする。
クラトスの言葉にジーニアスがはっとし、あわててロイドに叫ぶ。
さっき、彼らはいっていたではないか。
ここでの消滅は、文字通り、存在そのものからの消滅だ、と。
おそらく、これを中にいれいれば、あのミトス達三人は消えてしまう。
それが過去の記憶の欠片、とは彼らはいったが、だからといってたしかにそこに存在していた。
これをいれる、ということは彼らを自分の手で殺す、もしくは消す、ということ。
しかし、それをしなければ、リフィルは消えてしまう。
それこそロイドが行動しなかったせいで。
「…っ!!」
全てを助けたい、そうおもうのは本当。
「あの三人ならば気にするな。…あれは、我ら三人の過去の記憶の欠片。
魂の一部分にすぎん。ロイド、お前が本当に護りたいものはなんだ?」
「…ごめん!」
その謝罪は誰にたいしてのものなのか。
そのまま、手にしていた石をそのまま祭壇の中にと投げ入れる。
ボッ…ホボボッ!
刹那。
周囲をまばゆい青白い、緑を帯びた光りが包み込んでゆく……
「ほう。御苦労だったな。クラトス。お前から動くとはめずらしい」
「な、ユアン!?」
浮遊する感覚とともに、視界にはいるは、みおぼえのない場所。
自分達は、たしかサイバックの研究所にいたはず、なのに。
ざっとみるかぎり、どうやら森の中っぽい。
しかも、みたことのない場所。
視界に映り込むは、さきほどまで、ロイド達が戦っていた相手。
なぜに、彼が、という思いはすぐにはうかばない。
思考がすぐさまに働かない。
なぜか目の前には、腕をくんで、あるいみで仁王立しているユアンの姿が。
「けほっ!」
「姉さん!大丈夫!?」
「……あれ?え~と…あれ?」
ふとみれば、何やらその場にたおれているのは自分達だけ、ではないらしい。
というか、ふと気付けば、全員、その場に倒れている状態。
どうでもいいが、大地に横たわるように倒れていることに混乱せざるをえない。
どうみても、自分達がいまいるのは、どこかの外としかおもえない。
視界にはいるは、鬱蒼と茂る木々。
この場はちょっとした開けた空間のような場所になっているっぽいが。
ふと、ジーニアスがはっと我にともどり、周囲をきょろきょろと見まわし、
少し離れた場所でむせてせき込んでいるリフィルの姿をみつけ思わずかけよる。
何だか体が重苦しいように感じるのは、ジーニアスのきのせいではないであろう。
そして、何やらそんなリフィルの横では、ずっと姿がみえなかった、
探していたアステルの姿がみてとれる。
アステルもどうやら状況が理解できないのか、ひたすらに首をかしげているのがみてとれるが。
「しばらく魂と肉体とが離れていたからなじませる必要があるんだよ。
とりあえず、皆、お疲れさま。さて、と。しいなさん、イフリートをよんでくれる?」
いまだに思考が確実に起動していないであろう彼らにたいし、さらり、と何やらいっているエミル。
エミルの格好は、その背後にある石?のような石碑?のようなものにもたれかかってる格好。
ロイド達にむけてにこやかにそんなことをいってくる。
「えっと…ここは…それより、なんでだい?」
エミルがこの場にいるのは、まあわかる。
自分達が本の中に入る前にもエミルはいた、のだから。
しかし、なぜにエミルがイフリートを、というのかが理解不能。
だからこそのしいなのといかけ。
「この本はまだここにある、からね。イフリートの浄化の炎で完全に燃やしつくしておく必要がある。
でないと、あらたな小窓はさらに広がりをみせてしまうし」
「エミル…あんた…わかったよ」
いつのまにかエミルが手にしている禁書とよばれしもの。
それがほのかに先ほど、否、本の中にはいる前とことなり、
緑と赤が入り混じったような光りに包まれ、本そのものが纏っているようにみえるのは気のせいか。
そんなエミルをみてふとおもう。
エミルは何かを知っている。
しかし、ここはどこだろう、ともおもう。
異様にマナが濃い空間だ、とおもう。
しいなですらわかるほどの、濃いマナにみちている。
さらにいえば、エミルの背後にある黒っぽい石碑のようなものもきにかかる。
ついでにいえは、周囲に、少し離れてはいるものの、様々な魔物の姿がみえることも気にかかる。
ふと上をみてみれば、どうやら上空、というか木々にも様々な魔物…飛行タイプの魔物が、
それぞれこちらを取り囲むようにしているのがみてとれる。
ゆえに戸惑わずにはいられない。
「よくわかんないけど…とりあえず。
灼熱の業火を纏う紅の巨人よ 契約者の名において命ず、いでよ、イフリート!」
懐にいれていた、ガーネットの指輪を手にとり、契約の言葉を紡ぎだす。
それとともに、空気中に灼熱の炎が瞬く間にと具現化される。
現れると同時、イフリートが何やら礼のようなものをとったような気がしたのは、しいな達の気のせいか。
「じゃあ、解放するね」
「?」
その言葉の意味はロイド達にはわからない。
イフリートがこの場に召喚されたのを見届けたのち、エミルがにこやかにいい、
ふわり、とその手にもっていたはずの本を解き放つ。
なぜか、力も加えていないのに、ふわり、と空中に停止する一冊の本。
『我の名のもとに、切り取られし記憶のものたちよ、
今この場にて汝らの楔を解放せし、その役目をはたしたことを認めゆかん』
エミルの口から、旋律のような不可思議な音階のような何か、がつむがれる。
それはロイド達には理解不能。
『汝は汝らがあるべき場所へと還りゆかん』
その言葉とともに、ふわり、と空中に漂っている書物から、何か三つの影がうきあがる。
それらはよくよくみれば、目をつむってはいるものの、
「「な!?」」
その驚きの声は、クラトスとユアン、ほぼ同時。
本の上にあらわれしは、クラトスもユアンもみおぼえるあるもの。
しかし、感覚で理解する。
理解できてしまう。
それは、自分達がかつて分けたはずの記憶の存在。
すなわち、魂の一部である、ということが。
クラトスに至っては、さきほどまで対峙していた過去の自分の魂の欠片である、ということを。
「イフリート。業火の炎にて、これの浄化を。イグニス、君も手伝ってね」
「御意に」
その言葉とともに、その場に真赤に燃え盛るようにみえている鳥が出現する。
「あれは…まさか…やっぱり、鳳凰!?」
それは、まるでみあげる空をおおいつくさんばかりの大きさの鳥。
かつてみた精霊アスカよりも一回り以上もおおきいように感じるのはおそらく気のせいではないであろう。
王立研究院で視たときよりも大きさが異なるのはどういうことなのか。
『全ては無に 無は有に 有たるものは無となりて、我がうちにと還りゆかん』
エミルの口から音律のような何かが紡がれるのと同時。
イグニス、とよばれしものと、そしてしいなの召喚した火の精霊、イフリートより、聖なる炎が瞬時にその場に巻き起こる。
真っ白い光をおびた、白い炎と、橙色を帯びたすこしばかり輝きを増している清き炎。
と、その炎の中より、黒い霧のようなものが突如としてわきあがる。
それはやがて、霧のような形となりて形をなしたのち、
「お…おのれ!やはり…きさまかっ!!!」
その影は何かいいかけるものの、すぐさまそのまま炎につつまれ、やがてその黒き霧は霧散する。
「…どうやら、あれは分霊体の一部、のようですね。何ものかに一部を受け渡していますね」
「だね」
契約をしたのはどうやらアレからしてみれば一人、ではたりなかったらしい。
少し感じた力の波動の残滓から感じるに、どうやらあのリヒターが力に呑みこまれてしまったようではあるが。
そのまま力に引き寄せられるように、もう一人の契約者に近しいもの。
そちらのほうにかの場から締め出されているようではあるが。
いつのまにか具現化していたらしい、テネブラエがそんなことをいってくる。
「今のは…まさか、マナによる浄化の炎、か?
エミル、といったな、お前は……いや、今はともかく。クラトス。ちょうどいい。
場所が場所でもあるしな。クラトス。オリジンの封印をとけ」
その場に立ちつくしているクラトスにむけ、すっと剣をぬきはなち、淡々といいはなつユアンの姿。
空気中に浮かんでいた三つの影は、やがて三つの色彩を帯びた小さな光の球となり、
なぜか石碑のようなものの真上にとふわふわとういている。
「え?ユアン?どういうことだい?」
その意味がわからずに、しいなが思わずといかけるが。
「ユアン…きさまが、なぜ、ここにいる?」
クラトスから語られるのは別なる疑問の声。
その疑問はたしかにロイド達もきにかかる。
「そんなことよりも、だ。クラトス。オリジンの封印をとけ。
お前がオリジンを封じているかぎり、大いなる実りが発芽したとしても、世界は元にはもどらん」
『!?』
さら、といったユアンの言葉に思わずロイド達が絶句し、反射的にクラトスをみつめるが、
「お前こそ、考えなおせ。ロイド達に精霊との契約を、といっているらしいが。
お前の望む結果が得られる、とはおもえんぞ。それこそ何がおこるかわからん」
「戯言を。ロイド。よくきくがいい。種子を発芽させたとしても、このクラトスがオリジンを封印している限り。
大樹が蘇ったとしても、世界を一つに融合することはできはしない。
こいつ自身にオリジンを解放させないかぎりは、な」
「な!?あんたが、オリジンを封印って…どういうことなんだよ!?」
あまりのことにロイドが思わずくってかかるが。
「ことわる」
「ならば、力づくで解放させてみせる!」
いうなり、剣をかまえ、その背に翼を出現させる。
「お、おい!」
「ロイド、クラトスさんが!」
「ちょっとまってちょぅだい。ユアン。今の話しは本当なの?
クラトスがオリジンを封印している、というのは」
「ああ。こいつは、ユグドラシルの命でオリジンを封印している。
解放できるのはこいつだけ、だ。なぜかそこのエミルに我らがつれてこられているこの場。
ここが本来の、精霊オリジンの聖なる場。オリジンの石碑が安置されし聖なる場所。
ここでこいつに精霊オリジンを解放させれば、すくなくとも。
ミトスの手よりオリジンは解放される。そして、世界を二つにわけている力。
エターナルソードも、な」
リフィルの言葉に答えるように、ユアンが答える。
「っ!」
クラトスもまた、その背に蒼き羽を出現させ、剣を身構える。
「クラトス!?」
ロイドがおもわずクラトスに加勢しようとするが、
「いっておく。このままでは、いくら大樹を蘇らせたとしても、
世界は二つにわかれたまま、マナを搾取しあうという世界はかわらんままだぞ。
下手をすればどちらの世界かが間違いなく、マナの加護がなくなり消滅する。
大樹が復活したとしても、世界が二つにわかれている以上、大樹は一つ、しかないのだからな」
ユアンの言葉にロイドはおもわず足をとめる。
止めざるをえない。
「オリジンの石碑…そういう、ことかい。本来ならば、ここでオリジンとの契約がなされるってことか」
しいながそのことにきづき、おもわずつぶやく。
探していたオリジンのいる場所がこんな形でみつかる、とはおもわなかったが。
しかも、あのクラトスが封印している云々、という言葉がきにかかる。
というか、精霊を封印、などということができるのか、ともききたいが。
しかし、クルシスならばありえる、のであろう。
現に、精霊達をマナの楔、という封印によってこれまで四千もの間、しばっていたのだから。
「お前がオリジンを解放しない、というのならば、お前をここで倒す!」
「私はまだ、倒されるわけにはいかん」
「お前とてわかっているはずだ。今のままでは、世界は滅亡するということを」
「・・・・・・・・・・・・・」
「ほうっておいてよろしいのですか?」
「ほうっててもいいよ。そもそもここで力を発揮すれば、それだけ彼らのマナは周囲にすわれるだけだし」
事実、二人が羽を出現させた直後から、彼らの体からマナが周囲に吸い取られていっていたりする。
彼らがもつマナはあるいみで歪められしマナ。
この地に宿りし浄化の力が、彼らのマナを強制的に正そうとする。
それは、彼らのもつ力すらをも吸い上げる力となっている。
そんな二人を横眼でみつつ、
「これでこの本の浄化は終わり。と。だけどこの中にいた魔族達が消えたわけじゃない」
「どういう、ことですか?」
いつのまにか、炎につつまれていた書物は霞にとけるかのごとくに炎につつまれきえている。
まるでそこには始めから何もなかったかのごとくに、灰すらのこさずにきえている。
エミルがかるく指を鳴らすとともに、本を包み込んでいた炎すべてが霧散する。
それはきらきらとした光りとなりて、またたくまに空気中にと同化する。
プレセアがそんなエミルに問いかけるものの、
「…あれ?なんか……」
くらり。
きのせいだろうか。
体が重い。
ふらり、とロイドの体がその場にゆらける。
「いけない!ここが、もし聖なる地、トレントの森の中だとすれば、
この地は私たちのマナを吸い上げてゆくわ。下手をすれば精神力がなくなって…」
リフィルが叫ぶが、リフィルもまた体に力がはいらない。
やがて、
「「うわ!?」」
クラトスとユアンが剣をまじえることしばし。
そんな中、ロイド達の驚愕の声が響き渡る。
「ロイド!?」
それにきづき、思わずクラトスがよそみをするが。
キィン!
それを見逃すユアンではなく、クラトスのもっていた剣が、ユアンの剣にとはじかれる。
「クラ…!」
次の瞬間。
キィッン。
パッン。
澄んだはじけた音とともに、ロイド達全員の姿がその場からかききえる。
まるで、この場から、空間そのものからはじかれたかのごとくに。
それは、彼らの許容しているマナの制限が限界に達したがゆえの現象。
「心配ないよ。ただ、彼らは森の出入口に戻されただけだし」
もっとも、この森の、というよりは、この場全ての入口。
すなわち、彼らを押し戻した場所は、ユミルの森の入口付近、に限定はしているが。
今のエルフ達の場に、普通に森の出入り口に戻しただけでは、
力を失ったと気づいたエルフ達が、彼らヒトに対し何をしでかすかわかったものではない。
それゆえのあるいみ配慮、ともいえる措置。
ロイド達がいなくなったのを確認したのち、
「さて。クラトス・アウリオン。最後の忠告をしておくよ。
オリジンの解放を自らの意思でなさぬかぎり、決定は下される」
「それはどういう……」
そんなクラトスをさくっと無視し、ふわり、とういている三つの輝きをもつ光にとちかづいていき、
「…このかつて記憶をわけた君たちは、今のようではなかったんでしょ?
人は、間違う生き物だ、とはわかってるけど、その間違いすら正せない、というのは問題だとおもわない?」
いいつつ、その光りのうちの二つに手をかざす。
刹那、青と赤の光りをまといし球体は、鈴を転がしたような音を立てたかとおもうと、
それらは、まるで吸い込まれるようにして、ユアン、そしてクラトスの中へと吸い込まれてゆく。
「「っ!!!!」」
それらは、かつて彼らが自らの意思で分断した、魂の一部。
かつての魂の一部がもどったことにより、彼らの古の記憶が鮮明となる。
そして、そのときに抱いていた思いすら。
「…すでに、時は動きだしてる。もっとも、君たちヒトが更生するきがないのもよくわかったしね」
自分達、というものが視えるから間違うのならば、隠れてしまえば、隠してしまえばいい。
もっとも、その結果、さらにヒトは間違いを犯して進んでゆくであろうが。
それで滅ぶのならばヒトとしての種族がそれまでであった、ということに他ならない。
「…ソルム」
目をつむり、ちいさくエミルがつぶやくと同時。
ゆらり、とエミルの周囲の空気がゆらぐ。
刹那、ざあっとした風が周囲をふきぬける。
「な!?」
おもわず目をつむり、目をみひらいたその場にはすでにエミルの姿はみあたらない。
「まさか…やはり、あのエミルは…まさか……」
大樹カーラーンの精霊に関係しているもの、もしくは精霊と何らかの関係があるもの。
それはまちがいない、のであろう。
「クラトス。時間をやる。…よく考えるのだな。私はそれほど長くはまたぬ。
お前が、かつてのお前の意思のままに、正しき道を選ぶことを望む」
流れ込んできた過去の記憶。
ともに旅をしていたころのなつかしき記憶と思い。
かならず前がある、救いがある、とおもい進んでいたかつての記憶。
ゆえに、ユアンが剣をおさめ、そのままその場にふわり、とうきあがる。
「まて、ユアン!どこへ!」
「準備がある。種子を目覚めさせるための、な」
「まて!」
それだけいいすて、その場からふわり、とうきありその場をあとにしてゆくユアン。
あとに残されしはクラトスのみ。
「…私は……」
いつかは、必ずオリジンを解放しなければいけないのはわかっている。
だが、その前に。
「…私は、私のやるべきことがある。それまで私は倒れるわけにはいかんのだ……」
目の前にある石碑はあるいみで、自らの過ちの象徴ともいえるもの。
自らの命を鍵とし封印した、精霊オリジン、その聖なる場。
自分達はうらぎった。
自分達に信頼をむけてきてくれた精霊の全てを。
だからこそ、しなければならない、とおもう。
どちらにしろ…ユアンの思いとミトスの想い。
二人の想いは似ているようで異なっている。
「…マーテル……アンナ……」
自分をかえるきっかけになった二人の名。
マーテルを失ったことで、ミトスは闇に堕ちた。
それを止められなかった自分。
そして…最愛の人を護れなかった自分。
そんな自分と、ミトスがどうしても重なってしまう。
全てがどうでもいい、とおもえたあのとき。
あのときはわからなかったが、今ならばわかる。
あのとき、あの当時のミトスの気持ちが遅きにながら理解できたのだから。
じっと真っ黒い石碑を眺めたのち、クラトスもまた、羽をはばたかせ、上空にととんでゆく。
そこにある心残りを振り払うかのごとくに。
あとに残されしは、その場にみちている光の残滓、のみ――
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あとがきもどき:
薫:ロイド達VS過去三英雄戦の表記ははしょりましたv(まてこら)
そういえば、PS版にしろ、ミトス、あれ、羽だしてませんよね…
ジャッジメントとかは使用してるってことは、天使化はしてるんだろうけど…
でも思うのですけど、どうみても、英雄ミトス達のほうが、
ラスボスにでてきたミトスよりも格段に強い!とおもうんですよねぇ。
それが堕ちる前と、そうでないときとの差、といえばそれまで、なんですがv
(裏ダンのボスの扱いだから、という突っ込みはおいとくとして)
何しろLV250まであげてても結構苦戦しますし(操作がヘタともいう)
オートにしてたら回復がまにあわない…なので、回復役をオートにし、
戦闘はもはやオート任せにしてたりしたら、それこそ…秘奥義で(涙
が、普通ストーリーのミトスはそこまで強くはない、んですよねぇ…(しみじみと
…ダオスとかは洒落にならなかった…どこまで変化するー、状態で…
…まあ、ドラクエ8のボスよりはまし、とおもいましょう。
…なに、あのラプソーン…ぜったいに形態変化がある、とおもっていどんだら。
あっさりかてたあの脱力…え?え?
…そのかわり、裏ダン、主人公の里でもある竜王との戦いがきつかった、ですけどね…
…まだ、PS3版は本体手にいれてないからやってないけど、まあ基本PS版とかわってないっぽいし。
……問題は、騎士のほうの魔物コンプができるかなぁ…と切実におもったり。
…何しろ、あれ、フィールドでのLVあげができない…涙
2013年9月12&13日(木&金)某日
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