まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

ようやくずっと付属というかちらほらだしてた、裏ダンの内容にv
いろいろなパターンを思いついたりしてましたが、
打ち込み時にこれにすることに決定v
…最近はメモにかかずに直接にこちらに編集してるからなぁ…HP用に…
何はともあれ、いくのですv
あ、もし、裏ダンジョンともいえるボスさんを知りたくない、という人は、
この回はみないでくださいね。…容量てきにたぶん、次回もこの関連話しかと…
とりあえず、打ち込みおわってちょこっと容量的に別話13を短いながらに掲載ですv

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「…え?サイバックのほうにもどった?」
研究所にいってみれば、アステルはサイバックの研究所にともどった、らしい。
何でももってきた品々に関しては、あちらのほうが設備がととのっているから、という理由らしい。
「あ、あたしはとりあえず、里に報告にいってくるよ。どちらにしても。
  …次なる精霊との契約で終わり、なんだしね。頭領に話しをつけないといけないし」
世界がどうなるのか、行き来できるのかどうかがわからない。
もしも、のときのためにきちんと話しをつけておく必要性はある。
「あ。しいな、なら途中まで一緒にいってもいいかしら?少しでもはやく、
  アステルに話しをきいてみたいのよ。それにサイバックの施設にも興味があるし」
「…いいけど、あんた、気をつけないと……」
かの施設はハーフエルフ、というのがわかったら何をしてくるかわからない。
そしてため息をつき、
「あのエミルが傍にいたら楽だったんだけどねぇ。
  アステルにそっくりだから、余計なものはよってこないだろうし……」
身うちか何かか、とおもって君子危うきに近寄らず、とばかりにまず研究者達はよってこないだろう。
「…まあ、仕方ない。あたしが案内していくよ。アステルに繋ぎをとればいいんだろ?」
「ええ、お願いするわ」
「あ、姉さん、僕は……」
「あなたはロイド達としばらくここでまっていなさい。…最後の契約がおわれば、
  こちらの世界にこられるかどうかわからないのだもの。
  この街をみてまわっておくのもいいかもしれないわね」
それだけいいつつ、しいなとともにその場をあとにしてゆくリフィルの姿。
「ん~。じゃあ、俺様が街を案内してやろうか?」
「え~?ゼロスがぁ?」
「この俺様にまっかせっなさぁい」
まあ、メルトキオは自らの庭、とまでいっているのだからたしかにいろいろと知ってはいる、のだろうが。
「どうする?ロイド?」
「あ、私みてみたい!」
「よっしゃ、なら、俺様とコレットちゃんのデートだな!」
「ぼ、僕もいくよ!」
「そういや、何かばたばたしてあまりゆっくりとこの街みたことないなぁ。
  せっかくだしいろいろと案内してもらおうか。コレット」
「うん!」
「…ち。いらん野郎二人もついてくるってか。リーガルの旦那とプレセアちゃんはどうするよ?」
「ふむ。私はすこし会社にたちよってくる。…今後のこともあるしな」
教皇の失脚、さらには。
「そもそも、簡単に制御室に曲者が入り込めていた、もしくはわいろをうけとっていた従業員がいた。
  ということから、会社の規律をジョルジュと話しあう必要ができた」
しいながいうのは、あのテセアラブリッジの管制室に教皇の手のものが入り込んでいた。
それだけでなく、そこを管理するべき人物がわいろをうけとっていたことも判明した。
放っておいていいような話しではない。
「プ、ブレセア!一緒にまわろうよ。ね?」
「ジーニアス…でも……」
「そういえば、ここってプレセアがつくったいろんなものが有名なんでしょ?
  どんなところで売られてるのか僕みたいし!」
「市場調査、ですか?たしかに。それは必要かもしれませんね。わかりました。ご一緒します」
先刻までの緊張感はどこにやら。
どうやら彼らはすこしばかり、ここメルトキオの観光に時間を削ぐことにきめた、らしい。
それぞれがそれぞれに用事をすますべく、三手にわかれ行動するのは久しぶり。
ゼロスの屋敷にて落ち合うことを約束し、それぞれ行動にとうつってゆく――

光と闇の協奏曲 ~学術資料室に潜みしもの~

「禁書?」
「ええ。エルフの里にかつて管理されていた、という本です。リフィルさんは御存じありませんか?」
しいなにつれられてやってきた、サイバックの王立研究院。
しいながアステルの客、といったところ、もののみごとに研究者達の態度があからさまに変化したが。
案内されたのは、アステルの研究室だ、という場所。
しばらくもどっていなかった、ということもあるのか、
あまり散らかってはいないが、リフィルの家に負けず劣らず、というべきか。
ところかしこに様々な本らしきものがびっしりと壁につけられた棚においてあるのがみてとれる。
そしてよくよくみれば、無造作にどうみても遺跡から発掘されたであろう物体も。
アステルもアステルでリフィルがもっていた様々な品物。
かつてリフィルがとある人からもらったという、アスカードより発掘された、という地のカンムリ。
それらを取り出したときには、アステルはかなり興奮していたが。
そこにかかれている文字が、あきらかに古代語たる天使言語であったゆえ。
しばらく話しが弾んだ後に…ようやく話しも少しはおちつき、アステルがふと思い出したようにと問いかける。
「話しにはきいたことがあるわ。たしか魔族を封じているとか何とか。
  聖なる水にてそれを浄化できるものを育てている、と」
「ええ。それがかつてのヘイムダールのときの動乱で、ヘイムダールより流出したらしいんです。
  そこまでは突き止めているんですけど。どうも僕の追跡調査ではそれをあの教皇が数年前に手にいれてたらしくて。
  教皇はときおり、研究の成果をみるために、ケイトのところに出向いていました。
  もしかしたら、手配されているかもしれないそれらをケイトに預けた可能性もあるとおもいまして」
エルフの里でかつて、昔、幼き日にきいたこと。
それは、その本は魔界の王の座を狙って争っていた魔族立ちをその本の中に封印している。
というもの。
母は危険といって教えてくれなかったが。
それが流出すれば、この世界は魔界ニブルヘイムになる、ともきかされた。
魔界とは何か、当時はわからなかったが。
今でもしっかりとわかったわけではないが、一つだけはっきりしていることはある。
その動乱、といわれているのは自分達が追放されるきっかけになった、あの騒ぎである、ということ。
「ああ。封魔の石とよばれしものですね。どうにかききだしましたよ。
  何でも体内のマナをすいだして聖なる炎にすることができる、とかいう。
  それをきいた研究室の一つが開発に取り組んではいるんですけど、
  まだ完全なものはできあがらないんですよね」
「…体内のマナを使えば、それは人の命にかかわるのではなくて?」
「しかし、もしもその研究が成功すれば、人にとっては画期的ですよ?
  何しろ自分のマナを他者に与えることができる。
  それは、たとえば涸渇しかけた大地や人にマナを分け与えることにより、蘇らせることもできる。
  ということですからね。…まあ、使い道を謝らないかぎりは、有効かと」
今、多様されているエクスフィアよりは安全度は高いといえる。
エクスフィアは確実にマナを乱したり、もしくは輝石に融合される可能性があるが、
体内のマナをもともと使用するのだから一応副作用とかはありえない。
あるとすれば、使いすぎて肉体を失う、というくらいであろう。
「でも、それがどうかして?あれは以前にもきいたけど、今は失われている、ときいたわ。
  もしもあの教皇とかいう人が手にいれていたというのが真実だとするわ。
  そういった品物を誰の目にもわかるところにおいておく、とはかぎらないとおもうのだけど?」
たしかにリフィルのいうとおり。
だがしかし。
「リフィルさん。リフィルさんがそういったものを隠すとすれば、どこに隠しますか?」
「そうね。木の葉を隠すのならば森の中。対象が本、とわかっているのだとすれば。
  同じ物がたくさんある場所のほうが確実にみつけにくいわ。
  とすれば、本がたくさんある場所ね。たとえば、そう、図書館とか、資料館とかかしら」
最近で記憶にあたらしいのは、王家のみがはいれる、という資料室。
「この間、ゼロスの意見もあって王家が保管しているという資料室にはいったけども。
  あれくらいあれば確実に隠すのにはうってつけでしょう」
人の出入りが規制されている場ならば、隠していてもまず気づかれない。
もっとも、かの場所にはいるのには、資料室を管理するのもに面どおりをしてからいかなければならなかったが。
「リフィルさんたちは、たしか、ネビリムの鍵とかいうものをもっていますよね?」
「ええ。それで闇の装備品のありかがわかる、といわれてたわ。
  封印している鍵が開く、と」
「闇の気配というか力を帯びているそれをつかえば、おそらく、鍵が反応するとおもうんですよ。
  僕の勘では、ひょっとして学術図書館にそれが隠されているのでは、とおもうんです」
そんなアステルの言葉に、
「あら。どうしてそう、おもうのかしら?」
「ここだけの話しなんですけどね。かの図書館を利用したものが時折原因不明の衰弱に陥ったり。
  もしくは行方不明になる研究者がいるらしいんです。
  まあ、それらのものは、もしかしたたら人体実験に利用されたんじゃないか、という噂もありますけど」
「…人体実験とは、穏やかではないわね」
「この国は、あるいみで王家が率先してそのようなことをおこなってますからねぇ。
  それに使われているのがほとんどハーフエルフ、もしくは貧民街の人々なんですが。
  この国の差別意識がなくならないかぎり、このあたりの改善は難しいでしょうけど。
  たしかに、人体の影響を調べるにあたり、実験は必要、ではありますけど」
「それはたしかにそう、かもしれないわね。その意見にはおおむね賛成よ」
ここにロイドがいれば、先生、それはまちがってる!と絶対にいうわね。
そうはおもうが、しかし、何ごとにおいても人体における影響をしらべる、というのは必要不可欠。
人は、安全性を確認したものでなければ何においても使用しない。
いい例が薬、なのであろう。
様々な実験をくりかえし、人に効果的なものができあがる。
「それで、せっかくですから、もしもそのカギが反応するようであれば。
  目的の物がそこにある可能性があるかもしれない、とおもいまして。
  リフィルさん、実験してみませんか?もしかしたらみつかるかもしれませんよ?例の書物が」
その言葉にしばし考え込む。
あの書物はいまだにエルフの里の存在の大半は、自分達家族が持ち出した、
とかたくなに思い込んでいるらしい。
両親がそんなことをするはずがない、というのに、である。
自分達家族にすべての罪をなすりつけているエルフ達。
族長はどうやらそれは違う、とわかっているようではあるが、しかし決定的な証拠もないかぎり、
エルフの里のものたちの思いこみをどうにかできるものでもないであろう。
「もしも、みつかったとしたら。それをエルフの里にもどすことは可能なのかしら?」
「それはもちろん。もともと、かの地から盗まれていることはわかってますしね。
  ここ、からみつかった、とわかればおそらく、セイジ家にかかっている冤罪も消えるとおもうんですよ。どうです?」
リフィルにとって、両親の冤罪をはらすあるいみでいい機会ともいえる。
しかし、自分にとって何か利益があるか、といえば何ともいえない。
「どうして私に協力を要請するのかしら?ほかのものでもよかったのではなくて?」
「きになりませんか?魔族を封印した、という伝説の書物。
  それに、僕の研究では、それらを封印したのは、あのミトスと仲間達らしいんですよね。
  しかも、それを封印するのに自らの力の一部をきりとってとかもいわれてるんですよ。
  とある書物には自らの記憶の一部をもってして封印した、とあるんですよね。
  かつての失われた禁術の一つに自らの記憶・・・すなわち、魂の一部をきりはなす。
  という方法があったらしいんですよね。だとすれば、もしかしたら狂う前の、
  まだ勇者、とよばれていたころの彼にあえる可能性もあるとおもいまして。興味深くありません?」
「それは……」

「ずいぶんと沢山の本があるのね」
「それはそうでしょう。ここは、今までの研究の成果やそれにともなう事柄も収められていますから」
サイバック、学術図書館。
その再奥にとある、持ち出し禁止の本が納められている、という部屋。
壁にしつらわれた本棚にはところせまし、と本が納められている。
ここより奥の部屋すべてがどうやら持ち出し禁止の部類の内容が納められている、といい。
中にはいるのにも一応、関係者以外は立ち入り禁止、となっている場所。
結局、アステルのいい分にあらがうことはできず、リフィルからしても興味があったこともあり、
善は急げ、とばかりに今現在、この場にやってきているアステルとリフィル。
アステル曰く、リヒターがもどってきたら、絶対に止められるから先に調べるだけ調べてみよう。
ということらしい。
まあ、もっている鍵が反応するかしないか、それすらもわからない、単なる実験。
もしもネビリムの鍵とよばれしものが反応するならば、ここに闇の力を秘めた何か。
がある、ということを暗に示している。
様々な資料があり、そこにある資料に目を通したいのは山々なれど、
まずは、ざっと持ち出し禁止となっている禁書の棚の全てをざっと一通りまわることにし歩くことしばし。
「「!?」」
とある棚の前にまでやってくると、突如として、リフィルが手にしていた鍵が反応を示しだす。
「これは!?」
「やはり、ここに、例の品が…って」
「「うわっ!?」」
鍵からはゆっくりと黒き光のようなものが突如としてわきあがり、
それに呼応するかのように、とある棚の一か所よりも同じように黒い光がわきあがる。
それらの光は周囲をつつみこみ、やがて二人を包み込んでゆく――

「…ったく、あいつらは……」
すこし、目を離したすきに、というべきか。
部屋にいってみれば、二人の姿はなく、二人の…特にアステルの行動を考えれば、
リフィルも共にいたことから、どこにいったのかはほぼ明白。
少しばかり用をすませに購買部にいっていただけだ、というのに。
と。
「あ、リヒター」
ふと、同じハーフエルフ仲間の研究院の一人が声をかけてくる。
「何だ。シモンか。何だ?」
ふとみれば、その真後ろに何やら見慣れた姿が。
「ア…じゃない。…エミルか?」
同じ顔立ちではあるが、髪の長さ、そして色合い、何よりも雰囲気がことなる少年がそこにいる。
「あ、こんにちわ。えっと、リヒターさん」
ぺこり、と頭をシモン、とよばれし青い髪の青年の背後にいるのはまぎれもなく、
闇の神殿より別行動をしていたはずのエミルの姿。
「やっぱり、知り合いか。あまりにアステルに瓜二つだしな。
  受付にきているのをみて、受付のものが俺に声をかけてきたんだ。
  この子をアステルのもとにつれてってくれってな」
あまりアステルの部屋には実験に付き合わされる可能性が高いから近づきたくないんだが。
ぶつぶつと何やら小さくつぶやいている、シモン、と呼ばれし青年の台詞に、
リヒターからしてみれば苦笑せざるを得ない。
「エミル。お前、いままでいったい、どこに……」
そんなリヒターの台詞にただにこやかにほほ笑みつつ、
「とりあえず、めどがたったので、用事を済まそうとおもいまして。
  アステルさん達ならば、どうにかなるかな、とおもいまして」
勝手に持ち出してもいいが、それだと後々面倒かもしれない。
そもそも、すでにここにある、というのは特定ができている。
「用事?」
そんなエミルの言葉にいぶかしるリヒター。
「ええ。ちょっと探していた書物がここにあるかもしれない、という情報がはいりまして。
  それで、関係者であるアステルさん達にすこしばかり協力してもらおうかな、とおもいまして」
「まあ、たしかにここにはいろいろの書物があるが…ともあれ、今からアステルのところに向かうところだ。
  アモン。こいつは俺があずかる」
「助かるよ。じゃ、またな」
そんな会話をかわしつつも、どうやらアステルによくにた人物と一緒にいる、
というだけで多少の精神的疲労があったらしい。
ぱっと笑みをうかべ、すぐさまリヒターの言葉に同意する。
そのままその場をたちさってゆくアモン。
「とりあえず。どこにいってたとかいろいろと聞きたいことはあるが。
  アステルはおそらく、リフィルとともに、学術資料室にいるはずだ。一緒にいくか?」
「え?あ、はい。お願いします」
「…エミル様。気配が発動しております」
ふと、エミルの横から声がきこえてくる。
リヒターにはその姿はみえない。
だがしかし。
「だね。テネブラエ。とりあえず騒ぎにならないように姿はそのまま消しておくように」
「御意」
その台詞に思わず目をみひらき、声がしたとおもわれし場所にとじっと目をこらす。
しかしそこには何もない。
「…そこに、いるのか?」
「え?テネブラエですか?いますよ?まあ、騒ぎになっても面倒なので姿を消してもらってますけど」
魔物の姿に擬態させ、傍にいさせたとしても、それはそれでここ、研究院では騒ぎになりかねない。
さらり、といわれるエミルにおもわず顔をしかめるリヒター。
アステルがいっていたが、エミルの傍にいるそれらはセンチュリオン、と名乗っている、とのこと。
しかし、ともおもう。
精霊に直接仕えているとおもわれし、そんな存在が普通の人にたいしつき従うだろうか、とも。
「それより、今、気配がどうの、といってなかったか?」
「え。ええ。ここにちょっぴし厄介なものが持ち込まれてるようなんですよね。
  あれ、ほっといたら他の生物にも影響がでるので、どうにかしとこうとおもいまして」
そんな会話をしつつも、やがて、リヒターの案内のもと、学術資料室の前にとたどりつく。
資料室の管理人に話しをきけば、少しまえに、アステルが女性とともに中にはいった、らしい。
それは、たしかシルヴァランドの神子の共の一人だ、ともいう。
シルヴァランドからの旅人、その神子の一行は、あるいみこの研究院では有名所。
何しろ、直接交流がなかったシルヴァランド人である。
彼らからしてみれば研究対象に組み込まれていたりする。
ただ、表だって、そうしないのは、この地につたわりしとある伝説にも影響している。
下手に、神子に、その仲間に手をだし、天界の怒りをかう必要もない、というのが暗黙の了解。

「アステル…おい、アステル!!」
部屋にはいってみたのは、黒い霧のようなものにつつまれている二人の姿。
あわててかけよってみれば、黒い霧はそのまま棚のほうへと吸い込まれてゆき、
その場には、リフィルとアステルが、仲良く床に倒れているのがみてとれる。
そんな二人の上にはほんのりと黒い光を帯びたまま、ふわふわとうかんでいる一つのカギらしきもの。
「…無防備に近づくから」
おもわずため息がもれてしまうのは仕方がない。
絶対に。
それをみて、何がおこったのか瞬時に判断し、思わずつぶやいているエミル。
リヒターがかけより、声をかけども反応がなく、むしろ二人の顔色はとことん悪い。
「これ、が反応している。ということは。二人はどうやら、ある書物に精神体を捕らえられたみたいですね」
いいつつも、そこにある鍵にと手をのばし、それを手にするエミル。
エミルが触れると同時、ぶわっとした黒い光がまたたくまにと霧散する。
一瞬、よくよく目をこらしていれば、その黒い霧にまじり、緑と赤の光がみえたであろうが。
倒れているアステル達に気をとられているリヒターはそれに気づかない。
「エミル様、ありました」
それとともに、ふとみれば、ふわふわとうきながら、その尻尾らしきものに何か一冊の本をつかんでいるテネブラエの姿。
まがまがしい黒い霧のようなものにその本はつつまれているが、
テネブラエの尻尾にまるでそれらは抑え込まれているようにもみうけられる。
真実、抑えこまれているのではあるが。
「ああ。やっぱりここにあったんだ。かつて人の手で封じられし、魔界の書物」
「な!?」
さらり、といえエミルの台詞に、おもわずリヒターが絶句する。
「アステル…くそ!意識がもどらない!」
ゆすれども、声をかけようとも、アステルの目はひらかない。
かろうじて息?らしきものはしているかのようには感じられるが。
しかし、心音もはるかに低い。
それはリフィルにもいえること。
「無駄ですよ。二人はおそらく、この書物に精神体…すなわち、魂を吸い取られてます。
  一日以内にこの書物の中に捉えられた二人の魂をどうにかして助けださないと、
  このままでは確実に二人は死亡します。今の二人の体は体を構成しているマナにより生かされているだけですから」
肉体と、魂が完全に切り離されているならばまだしも。
まだ二つには繋がりがあるがゆえに、彼らのマナは魔界の瘴気にてゆっくりとではあるが、
確実に衰弱…正確にいえば失われていっている。
ヒトのマナはさほど強くはない。
瘴気はマナにとっては毒。
瘴気がマナが毒になりえるように。
変換し、浄化する方法がない限り、互いは互いを搾取しやがてはどちらも消滅する関係にある。
「な!なぜにそこまで詳しい…そのあたりは後できくとして。どうすればいい!?
  どうすればアステルは助かる!?」
どうやら、リフィルよりもアステルのほうが気にかかる、らしい。
「二人の魂のみを連れてもどるか、もしくは中にいる大本をどうにかするか、二つに一つですね。
  連れてもどる場合は、肉体ごとこの中にはいる必要性がありますけど。
  この中は、簡易的な精神世界アストラルサイドになってますから、普通の人の体には耐えられませんよ?」
本質そのものが精神体でもある精霊達ならばともかくとして。
もっとも、普通の精霊では、そこにみちる瘴気にたえられず、まちがいなく瘴気に侵され狂うであろうが。
エミル…ラタトスクに関しては、自らがそれらを変換、浄化できるのでまったくもって問題はない。
むしろ、魔族のほうがそれにきづけば、彼をどうにかしよう、としてくるであろう。
彼がいるかぎり、この地上からマナが失われることはない。
つまり、魔族が自由に活動できる可能性はなきにひとしい、のだから。
「ざっと視たかぎり、すでに幾人かの魂をこの書物は糧としてるみたいですし。
  今までにも原因不明の行方不明者や、もしくは衰弱死した人がいたのでは?」
すでにこの本は十数名以上の魂を糧としているのが感じられる。
それらの魂はこの本の中にとらわれ、そのまま傀儡となされている。
そして、それらの魂達は、本の中で偽りの姿をもたされ、魔獣とかしている。
「とりあえず」
いいつつも、とん、とそこにある机の上にテネブラエから預かっていた本をおき、
「人をよんできますね。このまま二人を床にころがしておくわけにもいきませんし」
いいつつ、
「テネブラエ。本をみといてね。何の干渉はまだしなくてもいいから」
「わかりました」
目の前で意識を失っているアステルの姿をみて茫然としているリヒターをそのままに、
「すいませ~ん」
いいつつ、入口のほうへとかけってゆくエミルの姿。
そして。
「すいません。なんか、中でアステルさんとリフィルさんが倒れてて。
  誰かヒトを呼んできてもらえませんか?」
受付らしき人物にそんなことをいっている声がきこえてくる。
「…っ」
魂を本の中から解放するしかない。
たしか、エミルはそういった。
ならば。
そうおもい、本に手をかけようとするが、
「なりません。あなたはただの普通のハーフエルフですよ?普通に触れれば、
  あなたの肉体ごと中に捕われるでしょう。そしてあなたの体を構成しているマナごと絞りつくされていきます」
その言葉とともに、まるで目の前に闇が凝縮したかのようにかたまり、
それは一つの形をなす。
猫のようでいて犬のようなそれ。
その体に不思議な紋様をきざみしもの。
マナのありようは、魔物のようでいて魔物にあらず。
精霊ともこなとりしマナをもちながらも、自然界と一体化しているナニか。
「お前は、たしか……」
「センチュリオン・テネブラエです。一応御忠告はしましたからね?
  まあ、あなたがた人が自らの意思で消滅しようが何をしようが、関係ないんですがね。
  我々とすれば、エミル様さえ無事ならばそれでいいのですから」
それが偽らざる本音。
よくよくみれば、テネブラエ、となのった生物?らしきものの瞳の中には、
アステルが研究した一つの紋様が刻まれているのがみてとれる。
不思議な紋様。
大樹の絵とともに描かれていた、センチュリオン達を指し示している、といわれているその模様。
「それでも、俺は、アステルを迎えにいく」
そうしなければ、自分で自分を許せない。
そのまま、本に手をかけ、表紙をひらく。
刹那。
「うわっ!?」
そのまま本にまたたくまにとすいこまれてゆくリヒターの姿。
「…やれやれ。本当に人、というものは。
  どうして自ら危険の中に入り込もうとするのですかね。理解に苦しみます」
一応、とめることはした。
もっとも、何の干渉もしなくてもいい、という命をうけている以上、とめることもしなくてもよかったが。
何ごとにも一応、という言葉がある。
どうせとめても、ヒト、というものは行動をおこすもの。
その結果がどんなことになっているか、とわかっていても、ヒトはいつもいつも愚かなことを繰り返す。
「まあ、私は、これの瘴気が周囲に漏れいで内ようにしていればいいだけ、ですからね」
中に捕われたリフィルやアステル達が自らの闇にまければ、そのまま眷属、もしくは傀儡として使われる可能性もあるが。
まあ、それも人の心の弱さがまねきしこと。
世界を管理する立場たるテネブラエ達がとやかくいう必要性は、さらさらない――


「「先生!」」
「姉さん!」
いきなり、伝書鳩がとんできた。
何ごとか、とおもい、みてみれば、リフィルが倒れた、という。
「わめくな。わめいてもどうにもならぬ」
あわてて駆けつけてみれば、ベットに横にされているリフィル、そしてアステルの姿。
研究院に付属されている医務室。
そのベットに今現在、二人は横になっている。
あわてて、王立研究院にやってきて、リフィルがどこにいるかききだし、
この場にやってきたロイド達がみたのは、そこにいるはずのない人物。
「「クラトス!?」」
なぜか、その場にクラトスの姿をみとめ、おもわず身構えるロイド達。
そしてまた、
「エミル?あんた、どこにいってたんだい!?」
なぜか、今まで姿を現さなかったエミルもそこにおり、しいながおもわず問いかける。
「え?僕、用事があるっていいましたよね?」
闇の神殿にて、彼らにそのようにいっていたはず。
ゆえにエミルの言葉に嘘はない。
「何だってクラトスがこんなところにいるんだよ!エミルはともかくとして!」
「…ともかく、なんだ」
ロイドの叫びにおもわずぽつり、とつっこみをいれているジーニアス。
「私は回収すべきものがあったからこの場にたちよったにすぎん。
  もっとも、すでに封印がとけかけているのは予想外であったが……」
かつて、ミトスの命により、プロネーマ達三人が封印を強化したはずである。
にもかかわらず、封印がとけかけ、このように外に影響を及ぼしている、ということは。
外に何らかの繋がりが確実にできている、としかおもえない。
可能性とすれば、誰かがアレと仮初め的にも契約を交わしている可能性が高い。
見知った気配を感じ、やってきたはいいものの、研究院にたちよったところ、
エミルとばったりと出くわした。
エミルが手にしている一冊の本をみておもわず目を見開いたクラトスの想いは、
おそらくロイド達にはわからないであろう。
最も、なぜそんな危険な書物を手にしてもエミルがまったく無事、なのかは気になるが。
「姉さん?姉さん、それにアステルはいったいどうしたの?疲労とかがたまってたの?」
ジーニアスがベットに横になっているリフィルをみつつ問いかける。
その顔は不安に色とられている。
それでなくても、先日、リフィルは風邪で倒れたばかり。
不安にならない、というほうがあるいみおかしい。
「いや。それは違う。二人はそこの書物に魂をすわれたのだ」
「は?」
その意味がわからずに、間の抜けた声をだしているロイド。
そしてまた、
「ち、ちょっとまちなよ!クラトス!まさか、エミルが手にしているそれ!
  まさか、あの伝説の魔族を封じたとかいう禁断の書物とかいうんじゃないだろうね!?」
伊達にみずほの里の出身ではない。
そのあたりのことも一応しいなは知っている。
魂をすいこむ書物、など、古今東西、考えてもそれくらいしかおもいあたらない。
かの有名な伝説のネクロノミコンは魂を吸い取る効果ではなく、逆に死人を生き返らせる効果がある、ときく。
人の贄をもとめし書物。
それは、かつて魔族達を閉じ込めた、という一冊の書物。
二十年前のヘイムダールの騒乱で、失われた、という伝説の書物。
それがどうしてここにあるのか、という疑問はわくが。
「もし、それが本当だとして。エミル、あんたそんなものもってたら危険だよ!?」
しいなの疑問というか心配はもっとも。
が、しかし。
「問題ないよ。マナで抑え込んでるからね」
「…は?」
ミエルのいい分は意味がわからない。
そもそも、人が簡単にマナを扱えるのか、といえば答えは否のはず。
エミルは術をつかっているようにはみえない。
「僕もこれを探してたからね。クラトスさんも探してたのには驚いたけど」
てっきりすっかり失念というか忘れさっているのかともおもったのに。
一応は、責任感、というものは多少なりとものこっていた、らしい。
「なぜ、お前がそれのことを知っていたのか、というのは教えてはもらえぬのだろうな」
そういうクラトスの言葉にエミルはただにこやかに笑みをうかべたまま、
そして。
「リフィルさんとアステルさんは、どうもネビリムの鍵の影響で、
  そのネビリムの鍵に宿っていた瘴気に触発され、発動したこれに吸い込まれたみたいなんだよね。
  簡単にいえば、肉体と魂…すなわち、精神体、アストラル体が別れている状態になってるみたい。
  今はまだ、二人の肉体は無事、ではあるけど、このまま二人の魂が、
  この中に吸い込まれているままだと、二人の命は一日ともたない可能性が」
『!?』
エミルの言葉に思わず顔をみあわせる、ロイド、ジーニアス、コレット、プレセアの四人。
しいなは顔をしかめており、リーガルはいまだこの場には到着していない。
「魔界の書物、か。二十数年前の動乱にて、ヘイムダールより失われて書物。
  貴重な書物がごっそりと盗まれたあの当時、その中にそれが混じっていた、ときいたな。
  何でも、魔界の王の座を狙って争っていた魔族達を封印した本だとか何とか」
ゼロスが記憶を掘り起こし、思い出したようにいい、
「ああ。だけど、問題はそれだけじゃなくて。
  それから、その本を燃やすことのできる聖なる石も失われていることに気付いたらしいけど。
  そのとき、ヘイムダール付近で教皇騎士団の一味が目撃されていることも大きいね」
かの教皇が地位についたのは、今より二十年前のこと。
ちょうど、ヘイムダールの騒乱時期とほぼ重なっていたりする。
変質してゆく騎士団をみかぎり、またこれ以上、闇に貶めるわけにもいかない。
それゆえに、その直前、プレセアの父は騎士団を退団、しているのだが。
そんな二人の会話をききつつ、
「我らもその本に近づこうとしましたが、逆に気絶したり、気分がわるくものが多発しまして……」
唯一、平気でもてているのはエミルくらい。
だからこそ、あの場からここにエミルが手にしてもってきた。
あのまま、あそこにおいていれば、他に犠牲者がでかねない、という理由にて。
「僕としたらとっととこれをトレントの森にもっていきたいところなんですけどね。あそこなら簡単に浄化できるし。
  でもそれをしたら、閉じ込められたリフィルさん達の魂まで、一緒くたに浄化になっちゃうし。
  僕が直接いこうとしたら、なんでか皆がとめるんだよね……」
――当たり前です!
エミルがつぶやくと同時、即座にミエルの周囲から八つの声が同時に重なる。
ぽふん、とした何やら小さき音とともに、
「エミル様、お立場をお考えください。さて、そこの人間達」
「って、鳥がしゃべったぁ!?」
尻尾がなぜか七つにわかれている、真赤なまるで炎を纏ったごとくの鳥。
その尻尾の尾羽も一つ一つに模様らしきものがあり、何とも一言でいえば綺麗、というより表現ができない。
「なげかわしい。今までエミル様とともにいて、これくらい慣れていてもいいでしょうに」
何やらそんなことを鳥らしきそれはいっているが。
鳥、のようではあるが、魔物、のようでもある。
が、ロイド達はそんな魔物をしらない。
ここにリフィルがいれば、何の魔物なのか、というのを言い当てただろうが。
「…え?…鳳凰…まさか…ね?」
その姿をみて、みずほの里につたわりし、神獣のひとつを連想し、そんなことをつぶやいているしいな。
「もう、イグニス。いきなり姿みせたら皆が驚くよ。
  だけど、この中で、あれ、活性化してるよ?中にいるあの子達では抑えはそろそろきかないはずだ」
それも事実。
そもそも、本体が堕ちてしまっている以上、分霊体でもある、切り離された、
かの分身体たる魂もまた力がおちている。
だからこそ、じっくりと、確実に力をためていた。
地上にたいし、干渉ができるほどに。
あの子達、という言葉にぴくり、とクラトスが反応する。
これを封印しているのが誰なのか。
あまり知られていないはず、なのに。
「そんなの許せるはずないでしょ!姉さんまでエミル、殺すき!?」
そんなエミルにおもわずジーニアスが叫び返しているが。
「でも、リフィルさん達が自力で外にでてくるか、外部から誰かが力を貸さないかぎり。
  中に捕われたものを救いだすことは困難だよ?たぶん、あの子もそこまでもう力ないだろうし」
中にいるミトス達はおそらくもう、そこまで力がのこっていない。
かろうじて、原因となったあれを外にださないように、と抑え込んでいるのがやっと、とみえる。
「…ありえない、とはおもいますが。本の中に人の魂がすいこまれる、なんて…
  ですけど、…リフィルさん達を…助ける方法は…ないん、ですか?」
プレセアの戸惑いは至極もっとも。
そもそも、そんな話しなど、いままできいたことすらない。
「ん~。あるにはあるけど、君たちヒトでは、まちがいなく命がけになるよ?
  文字通り、死、ではなく消滅をかけた、ね」
それは真実。
そもそも、普通の人が瘴気にその根性と気力でどうにかなったとしても耐えられるはずもない。
…一部、契約を交わしたり、相性がよかったりしてどうにかなることはあるにしろ。
「…エミル様、このものたちに、もしやアレをお渡しするおつもりですか?」
「だって、このままほうっておいても、たぶん、ロイド達、勝手にあのリヒターさんと同じように。
  何の対策もないままにこの中に突入していくよ?
  普通のヒトが、この中の疑似精神世界面アストラル・サイドに耐えられるはずもないし。
  そもそも、この中って疑似的空間とはいえ、ニブルヘイムの空気と同じだし」
何やらさらり、と今エミルの口からとてつもない台詞がでてきたような気がするのはしいなの気のせいか。
ニブルヘイム。
たしか、それは魔界の総称。
みれば、クラトスもぴくり、と眉を動かしているのがみてとれる。
が、問題はそれもあるが、そこではない。
「って、まて!まさか、あのリヒターが中にはいってったのか!?」
それはクラトスも聞かされていなかったらしく、おもわず声をはりあげる。
「あれ?いっませんでしたっけ?」
「きいてないぞ」
「僕の家族の一人が止めたらしいんですけど、アステルさん達をほうっておけない。
  といって、本に手をかけたらしいんですよね。そのまま中に吸い込まれているっぽいです。
  ちなみに、あれから数時間経過してますね」
まあ、ハーフエルフゆえに、肉体を構成せしマナが多いことから、
ちょっとやそっとの時間では消滅したりはしないであろうが。
「…く。封魔の石は……」
ミトスがかの地からデリス・カーラーンにもっていっていることを知っている。
確か、今、保管しているのは、かの地のとある場所においてあったはず。
ミトス曰く、ユミルの森より、こちらのほうがマナが濃いいから、力が満ちるのが早いはず。
そんな理由で。
マナが満ちればいい、というものではない、というのに。
清らかな水の力、すなわち命の源ともなりえる命の水の力をもってして、
穢れを洗い流す効果もあり、かの泉にアレはおいてあった、というのに。
クラトスは、そのあたりのことを、エルフの族長からきいて一応は知っている。
そのように、彼らは伝えられている、といっていた。
ならば、あれを別の場所にうつしたとして、自分達がかつて目標としたもの。
聖なる石の力を満たす、ということが成功しているか、といえば答えは否、であろう。
「その何とかの石とかいうのがあれば、先生達をたすけだすことができるんですか?クラトスさん?」
クラトスの言葉に、コレットが不安そうにといかける。
「ああ。そもそも、これは……」
クラトスがいいかけるが。
「とにかく!先生達をたすけにいこう!このままだと、先生達が!」
ふとみれば、リフィルの体がほのかに光りだしている。
淡く時折透けるようになっているように見えるのはおそらく気のせいではないであろう。
なぜか、アステルのほうはまったくその傾向がみられないが。
すこし、意識を中にむけてみれば、まあ、彼らしい、というか。
エミルからしてみれば苦笑せざるをえないが。
どこにいっても彼らしい、といえば彼らしい。
リフィルは・・・心の奥底の望みに捕われているようではある、が。
「エミル!どうすればその中にはいって先生達を助けられるんだ!?」
時間がない、と本能的に察知したのであろう。
エミルにたいし、つかみかかろうとするロイドであるが、
「うわ!?あちっ!」
突如として、エミルとロイドの間に炎の壁が立ちふさがる。
「まったく。これだからヒトというものは。エミル様にむかって何をしようとするのやら」
イグニス、とよばれた鳥が憤慨そうにいってくる。
どうやら、この炎の壁、はこの鳥もどきがしでかしたもの、らしい。
「…何で周囲が燃えてないんだい?」
たしかにそれは炎、なのに周囲にはまったく影響がみあたらない。
みれば、その場にいた研究員の一人も目をみひらいているのがみてとれる。
しいなの呟きは、おそらくこの場にいるエミル以外の誰もの心情を現しているものであろう。
「何でも力で相手をいいきかそう、というのは。ロイド、君の悪いくせだよ。
  かといって、ほうっておいてもロイドはリヒターさんと同じように勝手に中にはいっていきそうだしね。
  で、クラトスさんはどうします?」
エミルがすっと手をその炎の壁にかざすとともに、まるで何もなかったかのようにまたたくまに炎の壁はかききえる。
炎の壁をけしつつも、クラトスにとといかけているエミル。
「どうする、とはどういう意味だ?」
「ロイド達が中にはいるのをここでまってるか。それとも、一緒にいくか、ですよ。
  どうも僕自身は、この子達が許可してくれそうにないですし、ここでまってようとはおもいますけど」
今現在、とある理由により、いくら今のエミルはコアと分断している、とはいえ。
今、何かあれば、まちがいなく魔物達ですらだまっていないであろう。
すでに、センチュリオン達を通じ、あらたな理の下地は魔物達にも組み入れた。
あとは、実行を下すのみ。
そんな中で、また人の手により王が害されたとなれば、もはや魔物達とてだまってはいないであろう。
そして、それは自然界にもいえること。
すでに、新たな理はこの地において全てにひきおえている。
実行が下されれば、確実に世界の理は書き換えられる。
もっとも、即座にすれば生命体達に影響がでかねないゆえに、
すこしばかりゆっくりと効果がでるように、とはなされているが。
この子達、という言い回しから、おそらく、他にもいる、のであろう。
しかし、とおもう。
今、たしかに、このエミルは、この鳥のことをイグニス、と呼んだ。
それは、たしかかつて、アクアとよばれしセンチュリオンからきいたことがある名前。
それは、火のセンチュリオンの名。
そういえば、とおもう。
アクア、と名乗っていた少女もたしかエミルの知り合いにはいたはず、である。
いまだ、クラトスはエミルの正体を疑念におもってはいるものの、まさかラタトスクそのものだ、
とはゆめにもおもっていない。
クラトスが思わず言葉をつまらす様子をさらり、と横眼でみたのち、
「まあ、いくならとめないけど。だけど、制限時間はあるからね。
  もって、リフィルさん達の体がもつのは、夜明けまで。いくなら、これわたしとくね」
いいつつ、ぽいっと何かエミルの手から何かが投げ渡される。
「うわ!?」
おもわずそれをキャッチするロイド。
それは、手にすっぽりと入るほどの小さな石、のようなもの。
しかし、変わった形をしているのもまた事実。
六角形を主体とした、石なのに、何やら不思議な色合いを中に秘めている、そんな石。
よくよくみれば、石の中に何やら炎?らしきものがゆらゆらとゆらめいているのがみてとれる。
「その石の中の炎が消えたとき、それがタイムリミット。強制的にロイド達も中からはじき出されるからね。
  それは中にはいったものを簡易的に護りはするけども、完全ではないから」
「これって、何なの?エミル?」
ジーニアスが不安そうにといかける。
石の中に炎が閉じ込められているもの、などみたことすらない。
何やらみていて不吉なような、それでいてすいこまれそうなそんな不思議な感覚の物体。
「いくなら、早くしないと、ほんとうに時間ないよ?」
そんなエミルの言葉にはっとする。
ここで話しこんでいても、時間がとまってくれるわけではない。
確実に、リフィル達の命のタイムリミットは迫っている。
ゆえに。
「いこう!ジーニアス!先生達をたすけに!」
「うん!」
「あ、まって!ロイド、私もいく!」
「…わたし、もいきます」
「やれやれ。ったく、熱血だねぇ」
「なら、本をひらく、よ」
エミルが本を開くと同時。
刹那。
ロイド達を取り囲むように、黒い霧が本の中より発生したかとおもうと包み込む。
そのまま、霧はまるでロイド達をとりこむようにして、本の中へとかききえてゆく。
「ロイド!…くっ!」
それを目の当たりにし、クラトスもまた、本にと手をかける。
方法はもう知っている。
中にはいる方法も、そしてどうすればこれを消すことができるのか、も。
戸惑っていたのは、これにはいることにより、ロイドに…息子に自分のことを知られるがゆえ。
すでに、もうクルシスに属している、と判明しているのだから戸惑う必要はない、とエミルはおもうのだが。
「…エミル様、よろしいのですか?この中には、あの子が…まだ、堕ちる前のあの子がいますが?」
「いいんだよ。彼らも真実をしるべきだ。それからどう判断するかは……」
そのまますっと目をとじる。
すでに、この場にクラトスはいない。
それに、とおもう。
まだ、中にいるミトスは完全に堕ちていない。
本体たる魂と切り離されているとはいえ、確実に影響はでているはずだ、というのに。
だとすれば、まだどこかに少しは救いがあるかもしれない、そうおもってもいる。
この地上において、この世界において、初ともいえる純粋なる気持ちをぶつけてきた子供。
「……ラタトスク様……」
おもわず精霊、としての、主、としての名をつぶやく。
しかしその言葉は原初たる言葉。
ゆえに、この場にいる第三者、すなわち、ここ、王立研究院に所属している研究者の一人には意味がわからない。
「ったく、しかたねぇ。俺様もいきますか、ね」
「…ゼロス。中である事実をしるだろうが、それが全ての真実であることを忘れるな」
「?エミルくん?」
天使言語で語られたその言葉におもわずゼロスが顔をしかめる。
いつものエミル、としての口調ではない。
それは、かつて、ゼロスがエミルを問いただしたときにきいた、エミルの口調。
こころなしか、エミルの瞳が緑から赤に変化しているようにみえたのはゼロスのきのせいか。
だがしかし、それをさらに注意深くみる暇もなく、ゼロスもまた、本の中にと手を触れるとどうじに吸い込まれてゆく。
あとにのこるは、エミルと、鳥の姿をしたイグニスと、そしてベットに横たわるリフィルとアステル。
そしてこの場に唯一いる、研究者が一人、のみ。


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あとがきもどき:
薫:ついに、ロイドたちが、禁書の中に突入ですv
  あれ?ってちょっとまって?それってロイド達が、もしかして?とおもわれる人もいるかとv
  初期の初期ころにいいましたが、この話しはミトス、生存!ですv
  それにこれの原因がかかわってきてたりしますv
  …だったら、本来の原作(ゲーム)における、種にやどりしミトスの命のかわりは?
  とかいろいろと突っ込みもあるでしょうが、おそらくここまでくれば、
  そのかわりとなるのは何、なのかは皆さんにはわかるかとv
  さて、すこし容量的にさみしい(か?)ので、別話しをば。ついにレジェンディアの主人公。
  セネル・クーリッジの登場!ですvv



風に運ばれる潮の匂いがただよってくる。
これから大海原をわたり、別の大陸にいくのだという期待でわくわくしているロイドとジーニアス。
そんな二人とは対照的にリフィルはなぜか押し黙りてきにあるいている。
コレットの体調をきづかい、ロイドはノイシュにのせている。
イズールドは小さな漁港をもつ港町。
イズールドにたどりついたのはちょうど昼をすこしすぎたあたり。
市場の隅に男たちがたむろしているのが目にはいる。
豊富にならんでいるはずの魚類すらほとんどないといっても過言でない。
木造の小さな漁師小屋らしきものがいくつか目にはいるが、しかしきになるのは、
その小屋がすこしばかり焦げているようにみえること。
「?あれ?何かにおうよ?」
コレットがそれにきづき、首をかしげる。
「ほんとだ。魚でもやいてるのかな?」
何かがこげたような匂い。
ロイドも鼻をくんくんときかす。
「イズールドは漁業が盛んですものね」
リフィルがそういうが、
「だが。やけにこげくさくないか?」
クラトスの言い分はしごくもっとも。
たしかにこれは焼いているというよりは燃やしているというような匂い。
「ええ。魚をやく、というか焦がしているような匂いですね」
「我が他を焼き尽くすときの匂いにもにているな」
何やらさらり、とテネブラエはともかくイグニスが物騒なことをいっていたりするのだが。
「そっか!姉さんの料理の匂いににてるんだ!」
何かにきづいたらしく、ジーニアスがぽん、と手をうつ。
「ジーニアス?どういう意味!?」
「ようするにリフィルさんの料理が下手だ、ということでしょう」
「あら。テネブラエ、どういう意味かしら?」
「言葉どおりです。何ですか!?
  あのレモン詰めご飯とかは!あんなものをエミル様にたべさそうとしないでください!」
村にいたときエミルに翻訳をまかせていときリフィルがつくった料理の数々。
あまりに料理が何なのでエミルが率先して料理担当になったのはいい思い出。
「…テネブラエ。そのレモンつめご飯というのは?」
「日もちさせる目的とかいってレモンをくりぬいたなかにご飯をつめただけの蒸しごはんです。
  こともあろうにエミル様にそんなものをだしてきましてね。この人はかつて」
テネブラエの台詞に疑問におもいといかけるイグニスにたいし答えるテネブラエ。
「……料理下手なのか?」
「ええ。壊滅的に。かつてのアーチェという人といい勝負です」
「…納得した」
何やら知らない名前らしきものがでてきたが、ロイド達のはその意味はわからない。
さわいでいるのになぜか人々はこちらに驚いた様子をみせていない。
今は彼らはそれどころではないので、あきらかに魔物っぽいそれに気づいていないだけ。
「とりあえず。騒ぎになったらいけないから、二人とも、姿はけしてね?」
「「はい」」
すっ。
エミルの言葉をうけて、そのままその姿を人の目にうつらないように擬態する。
「ほんと、興味深いわ。センチュリオンって」
魔物が擬態するというのはよくきくが。
そこにいるのにそこにいない、というのも初めてまのあたりにした。
触れば確かにそこにいる、のがわかるのに。
もののみごとに周囲の風景にとけこんでいる。
「くんくん…匂いのもとは…あそこだ!」
くんくんと鼻をきかし、匂いの元をたどっていたロイドがいきなり駆けだす。
船着き場の近くらしき場所からその匂いはただよってきている。
その場にいるのは何やらがっちりとした体格の男性と白い服をきている細身の男性の姿がめにはいる。
彼らは走ってくる一行のほうにきづいたのか視線をこちらにむけ…
そして白い服の男がこちらに気づいて驚愕の表情をうかべ。
「エミル!?」
その一行の中に見知った顔をみて思わず叫ぶ。

「って、セネル!?セネルだ~!」
港町イズルードにやってきて、何か人の声がする、とおもい、そちらにロイドにつられていってみたところ。
何やらとても懐かしい気配。
ふとみれば、マリントルーパーの格好をしている人物が漁師らしき人と話しているのがみてとれる。
白いような銀色の髪に特徴的な顔の模様。
ゆえにそちらのほうにそのままかけていき、がしっといきなり抱きついているエミルの姿。
「お前、今まで何やってたんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
その姿をみてほっとするのと、今までたまっていた怒りのほうが先にくる。
「というか何してる!?それっ!!」
問題なのはそこではなく、どうして本体ごと今、ここにいるのかが大問題。
四年前のときですら本体と実体をわけていた、というのに、である。
「あ…あはは……」
「お前なあぁ!今お前に何かあったらどうする気なんだよっ!」
以前ならいい、いやまあよくはないが。
しかし、今の彼の立場は以前とは…まあ、一番始め、すなわち原初の状態にもどった、といいきれるが。
とにかくエミルの身に何かあればそれこそこの惑星は滅ぶ。
そもそも、何かがあった、とおもわざるを得ない事態になっているのもまた事実なのである。
センチュリオン達がどうやらコアの状態…しかも孵化する前の状態に戻ってしまっているらしい。
あからさまに変化した世界の異常気象。
完全にマナを調整、管理しているラタトスクと、
それを運搬し循環させるべき彼らに何かがあった、とおもっても不思議はない。
そもそも、四年前にとあることに気付いて彼とともに事態を治めるべく動いていた矢先のこと。
「ええ。メルネス様、しっかりとエミル様にお説教をお願いします。ええ、お願いしますったら。
  エミル様は我らがいくらいっても自分で解決するだの責任だなといわれて無理ばかりを……」
「…テネブラエ?どっちの味方?」
「こればかりはゆずれません!」
「私も同意見です」
「ひど!イグニスまで!」
「…少しいいかしら?エミル?」
そんな二人の様子をみつつも、リフィルがすっと前にでてきつつ、二人の横にたちつつ問いかける。
エミルの態度といい、相手の態度といい。
どうやら二人は知り合いぽい。
それゆえの問いかけ。
「え?あ。あ、すいません。先生」
「先生?…エミル、その人達は…?」
一行にクラトスの姿をみとめおもわず眉をひそめるがそれもほんの一瞬のこと。
「失礼。私はこの子の担任教師をしているリフィル・セイジというものです」
「あ。民間のマリントルーパーをしているセネル・クーリッジといいます。…ってエミルの担任?
  …エミル、お前学校なんかにいってるのか?」
「え、え~と、なりゆき?」
完全になりゆき。
そもそも記憶がなかったとはいえまさか学校にかようことになるなど夢にもおもっていなかったのも事実。
「あなた、この子のことしっているの?
  半年前、森の中にたおれている所を発見されて、しかも記憶喪失になってたのよ。
  あなたの名前をこの子がいった、ということは知り合いに感化されて記憶がもどったのかしら?
  エミル、どうなの?」
「え、えっと、セネルだからわかる、としかいいようが……」
「記憶喪失?」
ぴくり、とセネルと紹介された少年のこめかみがひきつったのは、おそらくリフィルの気のせいではないであろう。
「ええ。名前以外まったく何もこの子覚えていなくて。それで、あなたこの子の知り合いみたいだから……」
リフィルが説明してくるが。
ぴきぴき。
おもいっきりこめかみに青筋がたつのが自分でも自覚できる。
ゆえに、すうっと大きく息を吸い込み、そして。
「お前は一体今度は、いったいぜんたいどんなむちゃをしてそんな状態になりやがったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
きぃぃん。
周囲に、セネルの叫びが響き渡る……


セネル・クーリッジ。
テイルズオブレジェンディアの主人公。
グラフィック等はものすっごく綺麗だけども、操作方法が面倒でもあったテイルズシリーズさん。
が、音楽はものすっごく綺麗です。癒されます。海をテーマにした物語(になるとおもう)
…原作ゲームでは、当然、あの彼は精霊とかではないですよ?ええ…(まてこら

2013年9月8&9日(日&月)某日

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