まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
魔将ネビリムのイベントの前に、リフィルイベントをば。
ざっと見直してみたけど、やはりこのイベントまだやってなかったし。
それをにおわす発言、とかはしてましたがね。
・・・・やってないよな?よな?…1から読み直したほうがいい…かな?
どうも平行してまともな本編を書き写してるせいか、もしくは別の話しも打ち込みしてるからか、
…内容がめずらしくごっちゃになってる今日この頃……
ちなみに、アビシオンイベント、多少原作ゲームよりかえてあります。
あしからず。
何しろエミルがかかわっている時点ですでにアビシオンも…ねぇ…(汗
とりあえず、あとがきに恒例?の別話12.ついにこちらはオサ山道に突入ですv
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「ミトス、これ……」
何やらいろいろとあったが、しかしアステルの説明もあり、
以前にきちんとかの人物からいくつ武具があるかきいていたはずなのに。
すっかり失念していたのもまた事実。
そして、洒落にならない実情が起こりえる、ということもわかった。
闇の装備品をもっていれば、下手をすれば魔族とよばれしものに操られてしまう可能性がある。と。
パルマコスタのマルタ・ルアルディより手渡された杖にてそろった武具はそれで全て。
ゆえに、今後の経過に気をつけるように、とは総督府のニール達にも伝えたのち、
シルヴァランドペースより、テセアラへ。
そのまま直行で、ここ、ガオラキアの森の奥にと位置している、アルタステの家にとやってきているロイド達。
「これは?」
ミトスは行くあてもない、という理由から、どうやらそのままアルタステの家にて暮らしているらしい。
時折、一人で外にでようとするが、魔物が増えている以上、危ない、という理由にて、
あまり遠くにはいかないように、外出するときには常にタバサを共につけている、とはアルタステ談。
久しぶりにやってきて、いきなり何かみおぼえのある品を手渡され、
疑問に思いつつもといかける。
「リンカの木で創った笛だよ。よかったらこれをミトスにもらってほしいんだ」
そんなミトスの疑問に答えるかのように、すこし戸惑い気味にはなしかけているジーニアス。
「え?でも……」
「僕があのとき、力いっぱい、ふいちゃったから。あのとき、なんか今にも壊れそうに感じて…
…壊れなかったけど、だけど危なかったことには違いないから……」
もしも、あのとき、自分が笛を吹いたせいで壊れてしまっていたら、とおもうとぞっとする。
それでなくても、故人の形見、というものは大切なもの。
ましてやミトスにとってただ一人の身内の形見。
あのとき、吹いた後に、一瞬、ぱきり、という音のようなものがしたときに、
ジーニアスがおもわず冷や汗をかいたのは記憶にあたらしい。
「・・・・・・・」
それはミトスもわかっていた。
笛をふけば姉が目覚めてくれるのでは、と試みなかったわけではない。
だが、逆に笛に利用されている木の実からみしみしとしたような音がして失念したといってもよい。
最も、姉のようにやはり上手にふけなかった、という理由もあるにしろ。
「あ、もちろん。ミトスのお姉さんの笛とは違うのはわかってるよ。
だけど、もしミトスが笛を吹きたくなったときとか、あれをつかってもしも、ということもあるかもだし。
同じ笛だから、少しは変わりにならないかな、とおもって…って、迷惑…だった?」
「…ううん。ジーニアスの気持ちがうれしいんだ。
だって、リンカの木はもう絶滅しちゃってるはずなのに」
アスカを呼び出せる可能性をもっていたあの木はたしかに伐採したはず。
なのにどうやって手にいれた、というのだろうか。
あのとき、リフィルが再生させたはずのきりかぶ、ですらまだ実などなせるはずもない。
だからこそのミトスの台詞。
「…ありがとう。僕、協力できることがあったら何でもするよ。いつでも声をかけて」
「お、おう」
「ありがとう!ミトス!」
ロイド、じーニアス、ミトス達三人人がそんな会話をしている最中。
どさり。
「…姉さん?」
何やらどさり、とした音が。
ふとみれば、その場に倒れているリフィルの姿がみてとれる。
「姉さん!?」
「リフィルさん!?」
その声は、ジーニアスとミトス、ほぼ同時。
「うわ!先生、すごい熱だ!」
倒れたリフィルの額に手をあてて、おもわずさけぶロイド。
「もしかしたら、最近、悪性のウィルスがはやっているそうだから、それかもしれんな」
いいつつも、
「すぐに横にしたほうがいいだろう。タバサよ」
「はい」
その小さな体に不釣り合いなまでの力をつかい、そのままひょいっとリフィルを抱きかかえる。
そのまま、奥にとある部屋にとリフィルをつれてタバサの姿がきえてゆく。
「姉さん…?
不安そうな、ジーニアスの声がしばしその場にと響き渡ってゆく……
光と闇の協奏曲 ~魔将ネビリムと背後に潜むもの~
「ごめんなさい…たいしたこと…なくてよ」
いつもの強い台詞もどこか弱弱しく感じてしまう。
「そうはいかないよ。医者を連れてきたほうがいいみたいだね。
あたしの知っている医者はフラノールにいるけど」
「メルトキオにならば俺様にも心当たりがあるぜ?」
しいなとゼロスのそんな台詞に、
「じゃあ、手分けしてよんでこようよ」
「よし、それじゃあ、オレ様とプレセアちゃんとコレットちゃんはメルトキオな」
「ったく、女ばっかり選んで。リーガル!いこう!」
「ふむ。よかろう」
いいつつも、それぞれ医者を呼ぶべく勝手に話しをすすめ、部屋を後にする。
外からレアバードが発信する音が聞こえてくるということは、
どうやらそれぞれにレアバードにのってすでに移動していったっぽい。
「…俺、残されちまったな」
話しをはさむ暇がなかったともいえる。
ぽそり、というロイドに対し、
「まあ、仕方なかろう。看病するものも必要じゃて」
アルタステの慰めともいえない素直な台詞。
「まあ、そうなんだけど。だけど…」
ロイドが何やらいいかけているそんな中。
「…ねえ、ジーニアス、ちょっと……」
いいつつも、ジーニアスの背中をつんつんとつつく。
「??え?どうしたの?ミトス?」
ミトスのその様子に戸惑い気味にといかける。
「ちょっと、いい?」
姉のこともきにはなるが、ミトスがいいたいこともきにかかる。
ゆえに、そっとミトスにつられ、部屋をあとにする。
部屋からでて、しばらくいくと、しばらく口ごもっていたミトスであるが、やがて、
「…リフィルさんの病気、僕、治す方法、しってるよ」
ぽつり、とかたられるミトスの台詞。
「本当!?」
その言葉に思わず目をみひらくジーニアス。
「うん。多分。アレは、オゼット風邪だよ。ちょっと厄介な病気なんだ」
そんな名の病気がある、というのは以前どこかできいたような気もするが、
ジーニアスはそれがいつだったのか覚えていない。
正確にいえば、姉が倒れた、というので思考が正確に作動していない、といってもよい。
「ど、どうしたらいいの!?」
ジーニアスが姉にふれただけでもかなりの熱をかんじた。
それは体温がかなり高くなっている証拠。
たしか、以前、姉から人の体温は四十度を超えれば危険、ということをきいたような気がする。
姉の体温はまさにその温度を超えている、とおもうのはジーニアスのおそらく気のせいではないであろう。
「どうしたらいいの?!」
「今だと…この森の奥、ちょっとした山があるんだけど。その頂上付近に咲いている、
ファンダリアの花の蜜が必要なんだ」
それ以外に自生しているのは、フウジ山脈の頂上あたりではあるが、
かの地は、人がみつけてしまい、今ではきちんと自生しているかすらもあやしい。
この森ならばあまり人の手がはいらない。
ゆえにまだ残っている可能性はある。
少しまえ、昔のことを思い出し、かの地の様子はみにいっている。
なぜか中にはいることがままならなかったが。
あまりに深い霧にて断念した、といってもよい。
「それがあれば、熱はさがるよ」
「森の奥だね、僕、ロイドにいってくる!」
いって、駆けだそうとするジーニアスに対し、
「まってよ。僕、思うんだけど、二人で花をとりにいこうよ」
「え?ミトスと僕とで?」
「うん。あまり時間もないし」
あのロイドとかいう人間はどうも調子が狂う。
自覚してしまった以上、かつての自分のことを思い出し、今の自分とかつての自分。
何ともいえないもどかしさを感じているのもまた事実。
「…それに、僕たちの手で、リフィルさんをたすけてあげたいんだ」
「…ミトス。うん、わかった」
そんな会話をしつつも、そのまま二人してアルタステの家をでてゆくジーニアスとミトスの姿。
こっそりと、二人が部屋をでていったのにきづき、彼らが話している部屋の前まできていたロイドであるが、
二人が何やらむちゃなことをいっているのをききつつ、むちゃなことをかんがえやがって。
とおもいっきり一人内心あきれてしまう。
「…まったく。しかたねぇ。こっそりおいかけるか」
それでなくても、この森にはみたこともない魔物がたくさんいる、という。
いくら魔物がここ最近、人に襲いかからない、という報告があるらしいが油断は禁物。
そして、ジーニアスはどちらかといえば体力的に考えれば持久力もなければ、
さらにいえば、ジーニアスが得意とするのは、魔術による攻撃。
すなわち、詠唱を唱える間の時間は無防備になる、といってもよい。
しかも、ミトスはどうみてもまるごし。
ハーフエルフ、というのだからおそらく魔術を主体にした戦いはできるのであろうが、
やはり詠唱中は無防備になる。
そのまま、こっそりと…ロイドからしてみれば、こっそりと、なのだが。
ジーニアスは気づいていないが、ミトスからしてみればまるわかり。
そもそも、ロイドは頭かくして何とやら、の文字通り、
木の後ろや岩の後ろにかくれているつもりで、
その服につけられている紅いひらひらがおもいっきりみえている。
ミトスにつれられ、彼らがむかっているのは、どうやらこの森の奥深く、らしい。
奥に進むにつれ、霧がこくなり、そしてまた魔物の数もふえてくる。
しかし、森だから、なのだろうか。
異様に蝶の姿がちらほらとみうけられるのは。
蝶がとんでいる道のほうは他の場所とことなり、霧もうすく、かろうじて大地がみえる程度。
うすくみえるけもの道らしき森の道をゆくことしばし。
やがて、濃い霧の中を進んでいた彼らの視界がさあっとはれる。
そこは、森の中だというのにちょっとした開けた場所となっており、
周囲を木々でかこまれたその場所は、色とりどりの花が咲き乱れているのがみてとれる。
「うわぁ。すごい」
おもわずその光景をみて素直な感想をもらすジーニアス。
ああ、ここはかわらないな。
そんなことをふとミトスは思う。
かつて、姉達とともに花をもとめ、ここにやってきたときとこの場はかわっていないようにみえる。
「この花だよ」
色とりどりの花の中の一つをゆびさし、ミトスがいうが。
「よかった。これで姉さんをたすけられるね。たしか必要なのは花の蜜、だったよね?」
「うん」
いいつつも、花の傍にちかづき、小さな入れ物を手にし、その中に蜜をいれる。
この花の特徴は花の大きさの数倍の蜜を生み出す、という性質をももっている。
もっとも、花ごともっていこうとするならば、その周囲の変化に耐えられないのか、
すぐに枯れてしまう、というのでも有名、なのだが。
一つの花からとりだした、蜜はそれだけで、ミトスのもっていた中くらいの水差しらしき水筒のはんぶんをうめつくす。
「ジーニアスが頑張ったから、すぐに花がみつかったんだよ」
そんなミトスの台詞に、
「ううん。そんなことないよ。ミトスがいてくれたし。僕一人だったらこんなところまでたどりつけなかったし」
霧が深くて魔物がいたのかどうかはわからないが、すくなくとも影のようなものはみえていた。
もっとも、魔物達が自分達のほうに襲いかかってくるようなそぶりはみえなかったが。
蜜をいれこんだ水筒をジーニアスに渡しつつ、
「……ねえ。ジーニアス。ジーニアスは僕と、ロイドだったらどっちのほうがすき?」
かつてのときも、友達、といえる間のものはいなかった。
否、いるにはいたが、結局、あの里を追い出された後にあうことすらなかった。
ジーニアスの姿がかつてのミトスにとっての親友と重なるがゆえのミトスの台詞。
「ええ?どうしたの?急に?ぼく、どっちも同じくらいすきだよ?」
それこそ比べようがない。
ロイドはロイドであるし、ミトスはミトス。
しかも、ミトスは同年代で初めてできた同族の友達。
ロイドは、種族は関係なく、自分の種族をしっても、自分を自分、一個人、として、
しかも年齢のことをしっていても、普通に一人の個人、としてあつかってくれた。
もっとも、ロイドからしてみれば、ジーニアスにこれ、といって何かした記憶はさらさらないのだが。
「…僕と、ロイドが喧嘩をしたとしたら。ジーニアスはどっちの味方につく?」
「え?う~ん、喧嘩の内容にもよるけど。
ミトスはでもまちがいなく、ロイドみたいな馬鹿なことで喧嘩はしないだろうから。
ミトスの味方をするかな?」
「ほんと!?ほんとうにほんとう!?」
かつての仲間達ですら、自分のしていることは間違っている、といわれている。
第三者の、しかも同胞たるジーニアスのその言葉はミトスにとって心強い。
もっとも、ミトスは先にジーニアスのいった、ロイドみたいな馬鹿な理由で云々、
というのが自分にもあてはまっている、というのを完全に失念していたりする。
ゆえに、今、自分がしていることはやっぱり間違ってないんだよね。
そんな思いにとらわれてしまっていたりする。
それが間違っている、とは心の片隅ではおもいうかぶが、
ジーニアスが自分のことを味方してくれる、といった言葉でその考えを自ら否定する。
ジーニアスが認めてくれる、というのだから自分のしていることは間違ってはいない、とそう自分にいいきかせ。
ジーニアスもまた、自分の今の発言で、ミトスがよもや自分自信を見直して、
新たに考え直す更生の道をジーニアス自らが閉ざしてしまった、ということに気づかない。
否、気づくことができない。
「よかった。ジーニアスとロイドって仲がいいから…ちょっと、うらやましくて」
人とハーフエルフはあいいれない。
しかも、種族のことをしっていても態度をロイドは変えていないのをミトスはまのあたりにしている。
かつて、自分が望んでいた、人、と狭間のものとの関係。
「?へんなミトス。ミトスだってロイドの友達でしょ?」
「う、うん。そうたけど。…ごめんね。へんなこといって。
僕、自分とこんなに年の誓いハーフエルフのともだちって初めてだからうれしくて」
年云々、とミトスはいうが、実年齢をいえばまったくもってことなっている。
ミトスの中で、彼の歳は、姉が死んだあのときから完全にとまってしまっている。
そう、自ら天使化し、体の成長速度を自らの意思でとめたときとはまた違う。
姉が死んだことにより、ミトスの中での時間は完全にとまっている、といってもよい。
だがしかし、ジーニアスは当然のことながらそんなミトスの言葉の真意を理解できない。
ゆえに、
「ううん。僕も同じ。すっごくうれしい。僕も初めてなんだ。同じハーフエルフの友達って」
いいつつ、ジーニアスもミトスにたいし微笑みかえす。
「……ジーニアスがずっと僕と一緒にいてくれたらいいのに」
そうすれば、かつての仲間、自分をうらぎっている彼らよりも、ジーニアスを選ぶ。
それこそ、彼らを切り捨てることすらできる、とおもう。
それをしないのは、かつての出来事があるがゆえ。
「?へんなミトス。一緒にいればいいじゃない」
「本気にしてもいいの?」
「いいよ。友達でしょ?」
そう、友達。
いつかそれぞれに伴侶をみつけたとして別れても、その友情はかわらない、とジーニアスはおもいたい。
自分達のようなものに伴侶ができるかどうかはともかくとして。
「本気にしたよ?ふふ。それじゃ、急いでもどってリフィルさんをたすけよう」
「そうだね。急いでもどろう」
彼ならば、きっと自分の理想をわかってくれるはず。
全ての生命体が同じ種族になり、心も…そしてその感情すらも失った、千年王国、その思想を。
誰も差別されることなく、平和にいきられる、その世界の理想を。
ミトスは気づかない。
それは、あるいみで、人としての生き方ではない、ということに。
否、自然界においてもそれは歪だ、といえる。
人がきけないだけで、すべての自然の生命体は声なき声を発している、のだからして。
「…ったく、人の苦労もしらないでさ。まあいいや。俺ももどろ」
しかし、何だろうか。
ジーニアスもロイドと一緒にずっといたいとかいっていた。
ミトスにしてもジーニアスと一緒に、といっていた。
「…さみしい、んだろうな」
ずっと一人、だったのだろう、とおもう。
だからこそ、人のぬくもりをもとめているのだろう、と。
「ジーニアスとミトスがもってきてくれた花の蜜のおかげで先生の熱がさがったんだよ?」
もどってみれば、ロイドはなぜか部屋の隅でねており、
アルタステにきけば、ジーニアスとミトスが病気にきく、という花の蜜をもってきた、らしい。
いつのまにか眠っていたらしいロイドがきかされたのは、コレットからの説明。
プレセアなどは、ロイドが病気のリフィルをほうっておいて寝ていたことを非難しているっぽいが。
「えへへ。でもよかった。姉さんの熱がさがって。姉さんが元気がないと力がでないからね」
「でも、無理はしないでくださいね?」
タバサがカタコトの口調でリフィルに何やらいっているのがみてとれる。
「そうだね。まだ熱はさがったばかりだし。
とりあえず、今日はひとばん、厄介になってもいいかい?アルタステ?」
「それはかまわんが。あのエミルとかいう子は今は一緒ではないのか?」
それがきになる。
大樹の気配を纏わしていたあのエミルという存在が今は一行の中にはいない。
アルタステはエミルの使いし世界樹の小枝とよばれしものをまのあたりにしている。
だからこそ、あのマナのありようは、まちがいなく本物であった、といいきれる。
しいなの台詞に、今きづいたかのようにアルタステがいってくるが。
「エミルは…今、ちょっと別行動なんだよね」
そういうしいなの言葉は何といっていいのかわからずにすこしばかりおもくなる。
そもそも、再び合流してくるかどうかもあやしい、かもしれない。
もしくは下手をすればクルシスにみつかり、つかまってしまったという可能性もいなめない。
「ふむ。…あの子ならば、ラタトスク様のことを何かしらしっているかも、とおもったのだがな……」
ここ最近、確実に感じる、森のマナのありよう。
増えた魔物と、みたことのない魔物の増加。
そして、マナの安定と…大地の安定。
今までにないことが確実に世界におこっている。
そして、その疑問に答えられるかもしれない人物はといえば、かの世界樹の小枝とよばれし品物をもっていた、
エミル以外にない、ともおもうがゆえのアルタステの台詞。
「やはり、全ては精霊ラタトスクに関連してくる、んですよね……」
アルタステの言葉にアステルがしばしかんがえこむ。
どちらにしても、全ての精霊との契約が完了したとしても、
大樹の精霊たるラタトスクの出方次第では、この世界がどうなるのか。
それはアステル達にもわからない事実。
下手をすれば、今ある文明は必要ない、として切り捨てられる可能性すらありえる、のだから……
おそらく、魔物の王たる精霊ならばそれを実行するのはたやすいであろう。
もしくは、自然現象をすこしばかり人がすめなくするだけでいともたやすく実行できる。
できてしまう。
その可能性もありえるからこそ、アステルからしてみれば、精霊ラタトスクと話してみたい。
かの精霊が今の世界のありようをどうおもっているのか。
ということを。
「あとは、最後の精霊と契約するまえに、アビシオンの一件をかたづけておくだけだな」
ロイドのいい分に、
「そういえば、アビシオンさんのいってた装備品ってどれくらいあつまってるんだったっけ?」
ふと思い出したようにコレットが首をかしげる。
念のため、一晩、アルタステのところでリフィルをゆっくりとやすめたのち、
とりあえず彼らが次に目指すは雪の街、フラノール。
かつて、雪の街にてお願いされた出来事の成果を伝えるためなのだが。
「たしか、ノームの神殿で魔符黒翼ってやつがあったろ」
アステルがいつのまにか集めていたらしき品の中にそれはあった。
「……エミルがトリエットで、魔物からソウルイーターとかよばれてるらしい魔剣をもらってたよ……」
あのときのことをおもいだし、げんなりした口調でいっているしいな。
巨大な魔物がエミルになついて、武器を差し出す光景は今でもはっきりとおもいだせる。
しかも、その武器は魔物がおもいっきりその体内からはきだした形で受け渡された、のだから。
ついでに、思い出した、とばかりに別の品をも渡してきたのは記憶にあたらしい。
エミル曰く、テネブラエがもってきたから、とはいっていたが。
よもやそれが、クルシスの拠点たるウィスガイアからもってきたものだ、とは誰も夢にもおもわない。
「あと、アルタミラで、なんか人から剣玉もらったよね」
「ああ、あの全財産をカジノですったとかいうあの人ね。
たしか、千ゴールドであれをかったあと、あの人はまたカジノにむかったらしいわね」
再び、アルタミラを訪れたとき。
すなわち、アリシアを解放したあの日、なぜかなりゆきにてとある品を買うはめになったのだが。
何でもその人物は、カジノでもっていた有り金すべてを使い果たしたらしく、
もっていたとある品物をロイド達にかってもらえないか、と話しかけてきた、らしい。
正確にいうならば、いつものごとくアステルが誰もかれにも話しかけ、
そんな中でその人物がひっかかってきた、といってもよい。
「あれがたしか、魔玩ピジャスコアだったはずだな」
スペクタルズで確認したので間違いはないゆえに、おもわずゼロスがつぶやく。
あんな場所で闇の装備品とよばれし品が手にはいる、とはおもっていなかった。
「…ガオラキアの森で、邪剣ファフニールというのをみつけてたはずです」
「…番人から、魔斧ディアボロスというのも預かっているわ」
全てで九つあるという闇の装備品。
それを考えれば、すでに手にいれている品は、
アビシオンから預かった、ネビリムに続き、
ファフニールにディボロス、黒翼にイブルアイ、そしてビジャスコア。
さらにエミルが魔物からもらったというソウルイーターとアポカリウス。
そして、昨日、パルマコスタにて託された魔杖ケイオスハート。
たしか全てで九つである、といっていたことからいつのまにか闇の装備品全ては集まっていたらしい。
「…いつのまにか全部そろってたのね」
リフィルのため息まじりの台詞は意図したわけでもないのにいつのまにか集めていた、
というその不自然さにつきる。
「でも、これでアビシオンさんをたすけることができますね!」
たしか、全ての武器をあつめれば、それを封印することにより呪いを解除することができる。
そのように彼はいっていた。
「ということは、いつのまにか全部そろったわけか。なら、アビシオンに報告にいこうぜ」
そんなロイドの台詞に、
「そうね。どちらにしろ、次の精霊の契約までいろいろと用事は済ませておいたほうがいいわね」
まずは第三者から頼まれていることを済ませたのち、今後のことを全員で話し合う場をもうけたほうがいい。
どちらにしろ、あと残りの精霊は光の精霊、アスカとルナとの契約のみ。
精霊全ての契約がおわったとき、世界がどうなるかわからない以上、
再び世界を行き来できるかどうか不明である以上、それぞれの生活のこともある。
ゆえに、先に用事を済ませておこう、というリフィルのいい分はおそらく間違ってはいない。
「え?アビシオンさんがでかけた?」
「ああ、あなたがロイドさん、ですね。手紙をあずかっています」
アビシオンがいるであろう、教会にいってみるが、そこにはアビシオンの姿はなく。
そこの教会の祭司にきけば何かわかるかも、ということでロイドが話しかけるものの、
何でもどこかにいったらしい。
どこにいったかと聞けば、行き先はきいていない、とのこと。
かわりに、ロイド達がきたら渡してほしい、と手紙を託されていたらしい。
「……よめねぇ。先生……」
「ったく。かしてみなさい」
達筆な文字でかかれているそれは、装備品をあつめてくれていることへの感謝の言葉につづき、
さらにはどこから知ったのかはわからないが、ロイド達がすでにいくつもの装備品を集めている、
ということを手紙の内容を読み解くにあたり、どうやら知っていたらしい。
それゆえに、最後の装備品をみつけたときの為に、
封印の儀式を行うために、その準備をするために一足先に闇の神殿にむかう。
という旨がどうらその手紙にはかかれている。
そして、最後の装備品を手にいれたら、闇の神殿にきてほしい、とも。
そこには、自分の生涯をかけた望みがかのうお礼の言葉もみうけられる。
「つまり、何か?また闇の神殿にいけばいいってことか?」
ついこの前もそこにいったばかりだ、というのに。
「神殿にいくなら、エミルもまだそこにいるのかなぁ?」
「まさか。あれから大分たってるんだよ。もう別の場所にいってるとおもうよ。あたしは」
それがどこか、はわからないが。
「しかし、闇の神殿…なんか、気になりますね」
「どういうことかしら?アステル?」
「いえ。闇をまといし品を封印するなら、光の神殿ならわかるんですけど。
まあ、こちらの世界に光の神殿はいまだにみつかっていないので、
必然的に闇の神殿、というのはわかるんですけど。
ですけど、闇は闇を呼びこむ、という可能性もあるんですよね」
そう、闇は闇をよぶ。
闇の品を闇で封印する、というのはたしかに一つの手かもしれないが。
しかし、それでも、とおもう。
「……そもそも、彼の一族には、装備品の封印の方法ってつたわってるんですかね?」
かの武具についている魔の瘴気は普通のものが永らくふれていればまちがいなく狂ってしまう。
研究院の中には、瘴気に関して研究している部署もある。
そして、その報告には、瘴気に侵されたものは異形と化してしまう可能性がある、
という報告すらもなされている。
この世界において瘴気にみちた場所がないがゆえに、類似品に近い物質をうみだし研究した結果、
導きだされている一つの結果。
最も、ここ最近では、どこから手にいれたのかはわからないが、
瘴気を帯びた品が研究院に届けられ、それを利用した研究が日々なされている。
しかし、それはごくごく一部のものしか知らない事実のはずである。
実際、国王にすらその研究報告結果はあがっていないはず。
アステルとて、研究院の人々に聞きこみしまくった結果、知っているに他ならない。
それは、研究院のものが、かつてロディルの研究に加担し、協力していた結果といえる。
ロディルは魔血玉の作成にあたり、研究院すらをも利用していたに他ならない。
クルシスの…天界からの密命だ、そういって。
「まあ、いってみないことには何ともいえんだろう」
たしかにリヒターのいうとおり。
ここで考えていても仕方がない。
「ブルーキャンドルはまだ平気かしら?」
「それは大丈夫ですよ」
しっかりと、いくつかの予備まで実はアステルはゲットしている。
アステル曰く、地下などにこもることも多々とあるのであるにこしたことはない、らしい。
「あ、でも精霊を解放したんだから、あれほど闇が濃いとはかぎらないんじゃあ……」
ロイドにしてはしごく珍しい意見。
「珍しい。ロイドがまともなこといってるよ」
「…天変地異の前触れでなければいいが……」
ジーニアスが驚愕の表情でつぶやき、リーガルですらまじめな表情でそんなことをいっている。
「あ、あのなぁ!だって、あそこまで闇がすごかったのは、闇の精霊がいたからなんだろ?
でも、しいなが精霊と契約したんだから、もうあそこに闇の精霊はいないんだろ?
だったらあかるくなってるかもしれないじゃないか」
そんなロイドのいい分におもわずこめかみに手をあてたのち、
「そもそも、あの地はたしかに、闇の精霊、シャドウの拠点たる神殿ではあるけど。
あの地が闇の収縮に適している、というのは揺るがない事実なんだよ。
何しろ世界中の闇があの神殿にあつまる、とまでいわれている地だからね」
「ちなみに、雷の神殿では、世界中の雷の力があつまる、とまでいわれてますよ」
しいなの言葉に、アステルが追加説明をくわえてくる。
いまだに、かの雷の神殿は神殿の中での落雷などがおおく、
神殿の中をしらべようにもなかなかすすんでいない、らしい。
まあ、外、すなわち神殿の外にまでその影響がなくなった、というのがあるいみ救いといえば救いといえる。
それまでは、とにかく神殿を中心に、落雷など日常茶飯事的におこり、
常に晴れていようが、いつ落雷がおこるかわからなかった、のだから。
闇の神殿はあいかわらず闇にと包まれ、ブルーキャンドルがなければ、足元すらみることすらできない。
「アビシオンさんも蝋燭もってるのかなぁ?」
そんな素朴なるコレットの疑問に、
「でも、ブルーキャンドルは貴重品でもあるので、一般の人には貸しだしも、また売りだしもされてませんよ?
そもそも、持ち出すのにも手続きが必要ですし。
僕らみたいにきちんと用途というか部署が判明しているものは持ち出し書類にサインだけでいいですけど」
常に在庫の数と書類上の数は確認されている。
それは悪用されないように、との配慮、らしい。
もっとも、そんな代物をどうやって悪用しよう、というのか、という疑問はわくが。
そもそも、暗闇を青白くうかびあがらせるだけの効果に傍目にはみえる。
もっとも、実際は聖なる光を多少なりとも含んでいるので、弱い魔物をよせつけない。
という効果が研究室の実験結果では判明していたりする。
まあ、今現在は精霊ラタトスクの目覚めによりそんな効果などあってなきが等しくなっているのだが。
当然、ヒトがそのようなことを知るよしもない。
普通の灯りすらこの闇ではまたたくまにと闇にとかき消されてしまう。
つまり、たとえ魔術の光を放ったとしても、それは一瞬のことですぐさま闇にとのみこまれる。
それがここ、闇の神殿の特徴。
「この暗闇の中、どうやってアビシオンはすすんだんだ?」
それでなくてもこの神殿は、様々な品々がとこかしこにとおいてある。
下手をすれば道をふみはずし、落ちかねないような高さの場所も多々とある。
「とにかく、いってみるっきゃないだろ?」
たしかにゼロスのいうとおり。
どうやって進んだのか、という疑問はあるが、それはまあ、当人にきけばよい。
ブルーキャンドルにと灯りをともし、青白い光に護られながら、
かつてすすんだ神殿の道を奥に、奥にとロイド達は進んでゆくことに。
一番奥の、精霊の祭壇がある場所にもアビシオンの姿はみあたらず、
封印、というのだから開けた場所にもしかしたらいるのでは、というリフィルの意見にともない、
たしか、この祭壇とは別方向のあたりにちょっとした開けた足場があったことを思い出す。
しばらくすすんでゆくと、やがて青白い光の先に、ひとつの人影がうかびあがってくる。
近づいてみれば、どうやらその開けた足場。
円形となっているその足場の中心に、ロイド達にかつて闇の装備品のことを依頼したアビシオンの姿がみてとれる。
青白い薄い光の中、近寄ってくるロイド達にきづいたのか、
「お待ちしていました。闇の装備品をこちらに渡していただけますか?」
ロイド達にむかってそんなことをいってくる。
そもそも、全てそろった、とも伝えていない。
にもかかわらず、確信をもっているかのようなその口調。
「え、あ、ああ」
なぜに全ての装備品がそろっている、としっているのか疑問にはおもうが、
かの手紙に全ての装備品がそろったら、とかいてあったがゆえに、
ここにきた以上、そろったのだろう、と予測をつけている、と判断し、
装備品袋の中や装備していたそれぞれの武具を目の前のアビシオンにと受け渡す。
そのうちのいくつかを手にとり、自らの身にとまとってゆく。
「…とうとう全てが私の元にかえってきた」
そして、残りの武具も懐にいれたのち、手をすっと前にとつきだす。
それとともに、その手の先から一冊の本のようなものが出現する。
それは空中にとうかび、意思をもっているかのようにぱらばらとめくられる。
「あれは…まさか、ネクロノミコン!?闇の魔道書をどうして、彼が!?」
その現れた書物より感じるまがまがしい何か。
それゆえに可能性にきづき、おもわずリフィルが叫んでいるが。
かの書物はかつての古代大戦のときに失われた、ときいている。
海中にとある都市とともに沈んだ、とも。
本がさわってもいないのにパラパラとめくられてゆくとともに、
そこから黒い霧のようなものがたちのぼり、それはまたたくまにとアビシオンの体を包み込む。
「…あふれる。これが魔将ネビリムの力か!」
やがて、霧がまとわりつくように、アビシオンの体内に吸い込まれていったかとおもうと、
アビシオンの体から黒い霧のようなものがふきだし、その姿すらまがまがしさを感じさせるものにと変化する。
「な、何がおきたんだ!?」
いきなりアビシオンの姿がかわったのを目の当たりにし、驚きの声をあげているロイド。
「あれは…もしかして、瘴気における変化?」
何やらその変化をみつめ、仮説をたてているアステル。
「ネクロノミコンは死者を蘇らせる術がかかれているというわ。まさか」
まさか、という思いがあるがゆえのリフィルの台詞。
アステルの説明にもあった。
かの装備品にはネビリムの思念が宿っており、装備したものを操ることがある、と。
それはすなわち、他者の他人の体をのっとって復活することも可能、ということを指し示している。
そう、あの女神マーテルとよばれしものが、神子の体を器、として蘇るように。
「そうです。今、ここにネビリムが復活した。
私はネビリムの力を利用してこの世界を魔の秩序にもとづく暗黒の世界にかえる!」
そういうアビシオンの髪はなぜか紅く染まりまるで燃える炎のようにさかだっている。
その体からは黒い霧のようなものが絶え間なく噴き出しているのもみてとれる。
「私たちをだましたんですね……」
プレセアがそんな様子をみてぽそり、とつぶやくが。
「くそ!お前の思い通りにはさせない!」
ロイドがそんなアビシオンにむかって言い放つ。
「邪魔するものは闇に滅せよ!真の力をみせてやろう!」
言葉とともに、ぶわり、と闇が広がるような感覚をうけるが。
だがしかし、次の瞬間。
闇がまるで孤を描くようにして、アビシオンを中心にして固定される。
「な…何?!」
アビシオンの驚愕の声。
それと同時。
「やれやれ。ついに尻尾をだしてくださり、感謝しますよ。
もっとも、あれの眷属の一人に操られているだけの人ではあまり意味がないですが」
周囲の闇が突如として形づくったかとおもうと、それはやがて一つの形をなしてゆく。
「あ、あれ?テネブちゃんだ」
その姿にみおぼえがあり、思わずコレットがそういうが。
「テネブラエです!ったく。さて。まあ、利用されている人はともかくとして。
魔界のものと契約せし、アビシオン、姿をみせたらいかがですか?
あなたはすでに肉体を失い、魔界のものと同じく精神生命体となっているのでしょう?」
そこにある本にむけて淡々といいはなつ。
そんな姿を現した、闇をまるで具現化したかのような、犬のような猫のようなもの…テネブラエの台詞に、
『…その姿、そして、その魔物とも精霊とも異なるマナの在りよう…そうか。
きさまが、エイト・センチュリオンか!』
ぶわりっ。
突如、本から赤と黒がいりまじった霧のようなものがたちこめる。
それはやがて一つの形をなし、その場に一人の…どうみても女性の姿があらわれる。
「そもそも、あなたもすでに、肉体を失ったときに、魔族として転生を果たしているのですから。
この惑星にちょっかいをかけるのは間違っているのではないですか?」
すでに、ラタトスクによって、彼らの拠点となるべき惑星はすでにもう存在している。
それでも、どうしても力を誇示しようとしたり、自分の力をしらしめたいものがこちらにちょっかいをかけてくる。
というのは昔からかわってないようではあるが。
『テネブラエ…ということは、闇のセンチュリオンか。…分は我には悪いか。
きさまは全ての闇を統べるもの。我らが糧とせし負すらをも従えしもの』
いまいましそうにいってくる。
みれば、本からたちのぼった何かが実体化すると同時、
どさり、とその場に倒れているアビシオンの姿がみてとれるが。
どうやらそんな彼にはまったく関心がないらしい。
「単刀直入におききしますね。いい加減にかの第七位に一応ついているあれ。
あれの始末はすでに、かのプルートよりも許可がでていますので、あなたはいかがなさいますか?」
ちょっかいをかけてきているものの正体が確定したならば、
念のためにあちら側の管理をまかせている精霊に念のためにラタトスクは聞いてはいる。
もっとも、その精霊も、かつてラタトスクが、分霊体として彗星とともにこの地をつくりしとき、
生み出している精霊のひとり、なのだが。
ロイド達は何がおこったのかわからない。
と。
「……ふむ。どうやら、そのものは、かなりの力を秘めているようであるな。
人はだから面白い。たやすく力におぼれ、また自らの力を誇示するためにその魂すらをも計りにかける」
突如、重苦しい声が周囲にと響く。
ゆっくりと闇が再びあつまり、その場に真っ黒い鎧を着込んだかのような、
これまた黒いマントをはおったかのような人影が突如として出現する。
「「!?」」
その威圧感は何といったらいいのか。
そこにいるだけで、まるで逃げ出したいような、そんな圧迫感。
この空気ににた感覚をどこかで受けたことがあるような気がするが、そこまで意識することすらままならない。
「おや。プルート。あなたが直接こられるとは珍しい。
新たな冥界、でしたか?名をつけたあちらの管理が忙しいのでは?」
「テネブラエ様……あの御方にいわれれば我とて動かねばなるまい。
そもそも、サタンに管理を任せているというのに、下のものたちが好き勝手している。
それが全ての原因ではあるからな。我の仕事を増やしてくれるなといいたいが…」
その声に何やら嫌悪のような感じがこもっているのはロイド達のきのせいか。
「プルート…だって?」
その名をきき、おもわずしいなの声が震える。
「しいな?」
そんなしいなに気づき、ロイドが首をかしげるが。
「プルート…たしか、伝承で、聞いたことがあるわ。かつてのニブルヘイムを納めていたもの。
その名が、たしか……」
魔界ニブルヘイムをおさめしもの。
エルフの里よりそのようなことをきいたことがあるらしく、
みずほの里の禁書として扱われている内容にかかれているその名前。
「ふむ。愚かなるヒトが彎曲して伝えているだけはあるな。
我が収めているわけではない。我はむしろ監視者の立場からかえた覚えはないのだがな」
声はまるで周囲にとけこむようにいて、それでいてとてつもなく重い。
気をしっかりともっていないと、その空気に、闇に呑みこまれてしまいそうなごとくに。
「それで?あなたがわざわざこの場にこられたのは?
直々にあのリビングアーマーの種をなのっているアレを断罪するためでもないでしょうに」
そもそも自分達が眠りについてからのち、プルートはこちらにも不干渉であったはずである。
にもかかわらず、今ここに、この場にやってきた、ということは。
あきらかに主の存在があるがゆえ、としかおもえない。
「……今後、我とて手足となるものが必要なりそうであったからな。
ちょうど、みれば地上でほどよい力をもったものがいるようなので、ああ、許可はえたぞ?」
「……でしたら、私が口出しすることではありませんね。
あとは、そこのネビリム・アソビュートと話しをつけてください」
それだけいいつつ、
「とりあえず、そこにやどりし全ての負と闇を切り離しますので。あとはご自由に」
「…あなた様がたも大概、他人任せですな。毎度おもうますが」
「あなたも知っているでしょう?我々はあなた達に対しては
何事かないかぎりあなた方に任せるようにいわれている、ということを」
それは、彼らが産みだされたときにラタトスクが決めたこと。
そもそも、分霊体として、彗星としてこの地を創ったがゆえに、
あるいみ当事者達ではないのに口だしてても成長は望めないだろう、という主のいい分。
「それより、面倒なことをアレがしでかしてるようなんですよね。
自らが操りしものをつかい、古に使用されていた細菌兵器などを多様し初めているようで」
ここ最近、とある場所を中心に、かつて流行したとある病気。
それは、自然界にたしかにある人に…正確にいうならば、ヒトのマナに反応せしとあるもの。
それが故意的にばらまかれている気配がある。
魔物達からの報告でそのあたりのことはテネブラエ達センチュリオンは把握しているが、
だからといってわざわざ主たるラタトスクに報告するまでもなく、自然にまかせているのも事実。
そもそもの発端はかの変化をもたらす物質もまた元々は自然界にありしもの。
そこにありし自然を無理やりに人が開発したりしなければ問題はないともいえる。
それでなくても、今現在、主の命で自分達はとある命令を実行しているというのに。
人はどこまで面倒なことをおこしてくれるのやら、ともおもう。
具現化した、ネビリムとおもわしき女性は動けない。
エイト・センチュリオンのことは知識としてはある。
もっとも、それ以上に、自らが宿せし瘴気…すなわち、魔の力にて、
目の前にいる存在が、確実に冥界の王とよばれし魔界の王であることを嫌でも知らしめてくる。
「ともあれ、このものは我預かりで問題ないか?」
「かまいませんよ。プルート、あなたがそうしたいのであれば」
テネブラエがそういうとほぼ同時。
「あ゛…あああああっっっっっ!」
突如として、今まで気絶していたはずのアビシオンがいきなり叫びだす。
体全体から黒い霧がふきだしているようにみえるのはおそらく目の錯覚ではないであろう。
「では、我はこのものをつれて、我のあるべき場所へもどりますので。
そこの人間達、あとは人がしでかしたこと。お前達の手で決着をつけるがよい」
それだけいいつつ、恐縮しうごけなくなっているとおもわれる女性をつれて、
現れたときとおなじくそのまま闇にととけきえるようにときえてゆく甲冑の存在。
そんなプルートを見送りつつ、
「やれやれ。あのかたも相変わらずですねぇ。…ぜったいに似られましたよね。変なところが」
何やらぶつぶつといいつつも、何やらため息のようなものをつきそのままくるり、とむきなおり、
そのままその場から立ち去ろうとするテネブラエ。
「あ、まって!」
そんなテネブラエにあわててリフィルが呼びとめるが、
「何ですか?リフィルさん、我々は今、忙しいのですけど?」
「エミルがあれから姿をみせないのだけど、エミルの身に何かあったのか?」
リフィルに続き、ロイドが心配そうにいってくる。
「…エミル様は心配ありません。それより、これは老婆心のようなものとおもってもかまいせんが。
あなたがたは、精霊と全ての契約をかわしたのち、何がおこるか、
自らそれぞれきちんと考えたほうがよろしいですよ?
まあ、我らとしましては、あのミトスの裏切りの契約の楔から解放してくださるのは助かりますけどね」
「裏切りの契約の楔?それは、いったい……」
その言葉の意味がわからずに、ジーニアスが思わずつぶやくが。
「おっと。あなたたちにはいらないことを説明する必要はありませんね。
どうせ説明してもあなたがたはわからないでしょうし、真実を、きちんと把握しようとしていない者たちには」
その言葉とともに、テネブラエもまた、闇とともにとけきえる。
「あ、まってください!」
アステルがそんなテネブラエに呼びとめようとするが。
「…なんか、アビシオンさんの様子が…へん、です」
濃い、霧のようなものをまとっていたアビシオンの様子がおかしい。
やがて、ゆらり、とたちあがる。
先ほどまでは赤い髪であったのになぜかその姿は全身が黒といって過言でない。
肌の色から何から何まで、色素全てが黒に覆われてしまったかのごとくに。
「まさか…これは、負に完全に侵されたのでは!?」
それをみて、アステルがおもわず目をみひらいて驚愕の声をあげる。
これまでにも、幾度かこのような実験体のものは現れたという報告がある。
それは、マナの測定値を計る装置をうみだしたときに、それとは対照的なる負、というものも予測され、
それを計る装置もまた開発された結果、そのようなものがありえる、という予測のもと。
…かなり非道なる人体実験などを繰り返し、判明している変化の一つ。
「私は…私は、この力をもってして、世界をわがてに収める!!」
突如。
ぶわり、とした瘴気にちかい何かがアビシオンの体から周囲にとほとばしる。
「…きます!」
「くるわ!」
「くそ!何がなんだかわからないが、やるしかねぇ!」
そう。
何がなんだか、何がおこったのか理解不能。
ただわかるのは、目の前のアビシオンをどうにかしなければ、何かとてつもないことになる。
ということのみ。
それゆえにロイド達は身構える。
…アビシオンを止める、ために。
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あとがきもどき:
薫:闇の装備品、一覧~
フラノール:魔剣ネピリム
ガオラキアの森:邪剣フェフニール
ラーゼオン渓谷:魔斧ディアボロス
地の神殿:魔符黒翼
トイズバレー鉱山:魔瞳イビルアイ
アルタミラカジノ:魔玩ビジャスコア
トリエット砂漠:魔剣ソウルイーター
ハコネシア峠:魔杖ケイオスハート←この小説ではパルマコスタ神殿
ウィズガイア:魔装アポカリウス←この小説ではエミル譲り
上記となってましたv魔杖と魔装以外はほぼ原作(ゲーム)通り…といえるかと。
ともあれ、容量的に別話しをば。
…だんだんと話数が増えてゆくに従い、なんか容量KBがふえてないか?自分…汗
ラクダとノイシュでの移動はあきらかに、普通にあるくよりもはやく街にとたどり着く。
ラクダにのってやつてきたロイド達をみて街の人は驚いていたようではあるが。
どうやらいきなり雪が一瞬のうちにとけ、さらには太陽が顔をだしたことにより、
人々は戸惑いながら、それでいて、いつのまにかわっとした歓声につつまれていたりする。
雪がとけた、ということはすなわち、火の封印がとけた、ということ。
ならば救いの塔が出現したことから、再生の神子が封印解放に成功した証、
と人々が捕らえるのに何の不思議はない。
街にもどるとすでにあるいみお祭り騒ぎの一歩手前。
騒がしい中、もどってきたロイド達も巻き込まれそうになるが、
コレットがあまりにもぐったりしており、人々があわてて宿を提供してくれた。
お祝いムードの中、具合のわるい旅人から料金はいただけない、とむろん無料で。
「大丈夫か?」
「うん。平気。エミルがね。飲み物くれたんだ。大分楽になった」
「ああ。エミル特性のハープティーとかいうやつか?あれたしかに楽になるよな?」
エミルがつくるハーブティーは村でもかなり有名であった。
売りだしたい!という店がいたほどである。
もっとも、エミルがつくったものと他人がつくったものとではその効能がはるかに異なり、
同じようにつくってもまったく同じ味にならなくて断念したらしいが。
「料理は…」
「あまりたべれなかったんだ」
「そっか」
スープくらいならば、と宿のひとがくれたが、体がなぜかうけつけなかった。
うけつけたのはエミルのつくったハーブティーのみ。
夜になり、太陽が沈むころようやく落ち着きを取り戻したのか、
一時気絶していたコレットがようやく目をさます。
「そうだ。あのさ。これを渡しとこうとおもつて。遅くなったけど、誕生日おめでとう」
ぎしり。
ベットの横に椅子をもってきて、起き上がろうとするコレットをささえながら上半身をおこしてやる。
家をでるときから大切にもってきた首飾りを胸のポケットからとりだす。
「…あ」
だがそれは、コレットの手に渡すとおもいっきり壊れていたりする。
「…こわれちゃってるね…」
ペンダントの細工がぱっかりと半分かちわれ、鎖にかろうじてつながっている程度。
「ご、ごめん!すぐに直すから!」
「うん」
あわてるロイドがとても愛しいとおもう。
壊れたペンダントにはコレットの好きな猫の姿がほられている。
一晩でつくったというわりに細かな細工もの。
「あ。でも誕生日プレゼントでなくて天使になったお祝いになっちまうかな……」
「どっちでもいいよ。ロイド。この旅がおわるまでのお楽しみ、ていうことでも」
「そうだな。先はながいもんな」
ずいぶんどうやら回復したらしい。
それでも少し元気がない。
「うん。熱はないみたいだし」
「…あ」
こつん。
無意識というか何も考えてないというか。
こつん、と額をコレットの額につきつけて、熱を確認するロイド。
「あれ?コレット?お前なんか熱くなってるぞ?…いきなり気温かわったから風邪ひきかけてないか?」
「え?うえ!?」
ロイドの顔が目の前にあることでコレットからしてみればあわてざるをえない。
ち、近い、ちかいよ!ロイド!
そうおもうが声にならない。
「今日はもうねろ。いいな?」
「あ。う、うん。ありがと」
「じゃあな。また明日」
「うん。あした」
ぱたん。
部屋をでてゆくロイドの後ろをみおくりつつ。
「…ロイドが、あんな近くに…」
また想い出が増えた。
体調はたしかに思わしくない。
それでも、この暖かな気もちがあれば、体調の不良など何もこわくない。
「…おやすみなさい。ロイド」
私の体がどうなっちゃうのかわからない。
けど、あなたのためにがんばるね。ロイド。
そういいつつそのまま瞳をとじる。
自身の体の変化にたいする戸惑いから逃げるように……
「うわ~!完全に雪がとけきってる!」
「一晩で見違えたわね」
昨日まであれほど雪景色だったそれは、今では砂漠地帯にふさわしい景色になっている。
「ジーニアス。そんなに走るところぶわよ」
「平気平気~うわっ!」
「ほら、もう、いわないこっちやないわ。あなたはすぐに転ぶんだからもうすこし落ち着きをもちなさい!」
「だって……」
「だってじゃなくてよ。もう。だからいつもきをつけなさい。といっているでしょう?ほら、怪我をしているわ」
「こんなのかすり傷だよ。血もでてないし」
「お黙りなさい!トリエットの砂は細かいのよ!傷にはいって悪化したらどうするの!
まったく、こんなことで今後の旅についてこれるとおもってるのかしら?」
「しかし、すげ~よな。一日しかたってないのに、砂がさらさらだぜ。
だけど、先生って怒ってるんだか心配してるんだかわかんないよな~」
あれほど積もっていたはずの雪の痕跡は欠片もない。
「そうかな?先生、やさしいよ?」
「ふむ・・・弟への愛情の裏返しなのだろう」
朝になると、完全に雪はとけきっており、砂漠特有の暑さが今日からどうやら復活するらしい。
朝は涼しいがだがしかし、雲ひとつない空からしてみれば熱くなるのは目にみえている。
「皆~。あの子達の準備できたって」
みればいつのまにか街の入口に待機しているラクダ達の姿が。
「わ~!昨日いってたこと覚えていてくれたんだね。エミル!」
「うん。コレット、ラクダにのりたいんでしょ?」
「うん!わ~!ふかふか~!」
「おかしいわ?ラクダじゃない?らくだの毛はこんなにふわふわじゃないけど?」
「あ、この子達はラクダのようにみえてラクダの姿をした魔物ですよ?」
「…こんな子がいたの?初めてみたわ」
「いつもラクダの中にこの子達は紛れてますからね」
事実、ラクダの群れに必ず一匹はいるこの魔物。
が、ヒトはそのことを知らない。
「エミル。あなた詳しいわね?」
「え?えっと、判るからとしかいいようが……」
そもそもそのようにしたのは自分である。
ゆえに判るとしかいいようがない。
「ほんと、あなたの失われた記憶に何があったのかしら……」
いまだにリフィル達はエミルがすでに記憶を取り戻していることをしらない。
そしてまた、エミルもそれをいうつもりはない。
「それじゃ、えっと、何とか山道ってどっちですか?」
「…はぁ。案内するわ」
ともあれ、足がある、というのはかなり助かる。
結局のところエミルが用意したラクダ達?を使い、そのまま出発することに。
「ねえ。クラトス」
「どうした?」
「あなたはどうしてコレットの護衛をひきうけたの?」
「ふ。私は傭兵だからな。それでくっている」
「つまり、仕事だからってこと?」
「ああ、そうだ」
「本当にそれだけ?」
「それだけだ」
てくてく、さくさく。
のんびりまったりとしたラクダの旅。
ラクダ一体につき二人づつ。
コレットの護衛だから、という理由でクラトスはコレットと。
ジーニアスはリフィルと。
ロイドは少し大きめなラクダにノイシュと一緒にのっていたりする。
エミルは一人、その前にテネブラエもいるが、のりつつ四体の旅。
オサ山道へとさしかかる。
「さすがに早いわね」
「だな」
朝一で出発したといのうにまだ日はのぼりきっていない。
「この調子だと今日中にはイズルートにつけそうね」
リフィルとクラトスの会話にたいし、
「皆、ありがとね~」
「つうか、本気でエミルがいったら何でもいうこときく動物や魔物がすごいよな……」
「まあ、ロイド。今さらだし?」
「うん。たのしかった!ラクダさんって乗り心地いいんだね。あ、ノイシュののりごこちもいいよ?」
「きゅぅぅん……」
すこし拗ねたようなノイシュにあわてていっているコレット。
エミルは連れてきてくれた子達を見送るといって少しおくれている。
「そういえば。ここって姉さん。今は草ぼうぼうだけど、昔は鉱山だったんでしょ?」
ジーニアスがリフィルにと問いかける。
「ええ。とても栄えていたときいているわ。坑道やその施設はまだのこってるんじゃないかしら?」
「それにしてもいい天気だなぁ」
あれほど降っていた雪はぱったりととまっている。
今まで砂漠地帯にいたせいで、木々の匂いがとてもすがすがしい。
それゆえに木々の匂いを胸いっぱいに吸い込み深く深呼吸していっているロイド。
「そうだね」
昨夜、結局のところ、宿でだされたスープはまったくのめなかった。
というより体がうけつけずほとんどはいてしまった。
唯一口にふくめたのはエミルのつくったハーブティーのみ。
「ここでしばらくエミルをまちましょ」
ここはちょっとした開けた場所になっており、待ち合わせ場所には十分といえる。
と。
「まてぃ!」
「なんだ?」
どこからともなく聞こえてくる声。
切り立った山の崖の上にたっていたらしきその人影はそのまますとん、と降りてくる。
黒髪をむぞうさにゆい、胸元が大きくひらいた服をきこなし、短い上着は帯のようなもので結ばれている。
「ロイドのお友達?」
「さあ?」
「エミルの知り合いとか?」
「あいつに人の知り合いいるのか?」
「そういえば記憶ないんだったね。ならむりか」
のんびりと緊張感の欠片もない会話をしている子供達。
「この中にマナの神子はいるか?」
凛とした声で降ってきた人影…女性が何やらいってくる。
「あ、それ私です」
コレットがかるく手あげると、女はひとつ目をつぶり、そして覚悟をきめたかのように、
「覚悟!」
「「「あ」」」
コレットはいきなりのことにびっくりして尻もちをついてしまう。
そのとき、肘が草に埋もれていた何か固いものにとふれる。
ウィーン…
鈍い響きとともに、同時に女の姿がかききえる。
「…あれ?」
戸惑い気味の声をあげるジーニアスに。
「あ~。ど、どうしよう。やっちゃった」
あわてたように、そこにいきなり開いた穴・・・にかけよって何やらいっているコレット。
「気にすることはないわ。ここで相手がおちなければあなたが殺されていたのかもしれないのだから」
「だ、だけど……」
みれば、女がたっていたというかコレットの前の位置にぽっかりと四角い穴らしきものがあいている。
心配そうな声をあげるコレットに真実のみを淡々といっているリフィル。
「まあ…ちょっと可哀想ではあったけど」
「死んじゃったりはしてないかなぁ?」
「仮にあの人の体重が45KGとして、この穴が10Mだとすると
重力加速度を9,8として計算しても、死ぬような衝撃じゃないよ」
「?じゅーりょく加速度?よくわかんねぇけどいきてるんだな」
「たぶんね」
「しっかしまあ。運のわるいやつだなぁ。落とし穴の真上にいたなんて」
「落とし穴ではなくてよ。山道管理用の隠し通路ね」
リフィルが草むらの中にあったレバーらしきものをみつけ、説明してくる。
「?あの?何かあったんですか?」
全員が穴の中をのぞきこんでいたとき、エミルがちょうど合流してくる。
「あ。ああ。よくわかんないけど、この中に人がおちたんだよ」
「え?…あ、ほんとだ。何か中で皆がさわいでる」
少しそちらに意識をむければたしかに魔物達が騒がしい。
というよりむしろかまってかまってとたわむれている。
「そろそろいくぞ」
「おい。あの女の正体をつきとめなくていいのかよ」
「どうせまた向こうからくるだろう。ここは狭いし足場もわるい。場所を移したほうが賢明だ」
「まって。これが隠し通路ということは、ここを抜けたほうが山道を抜けるよりはやいわ」
「ふむ。…たしかに」
たしかに山道を延々とあるくより、ここをつっきったほうが山の向こうにはでるであろう。
が。
「しかし、ここの鉱山は道が入り組んでいるときく。道にまよったりはしないか?」
クラトスのそんな言葉に。
「あ。それなら大丈夫とおもいますよ。今この子がいってましたけど。出口に案内してくれるそうです」
みれば、ぱたぱたと飛んできた鳥の魔物…通称、アックスピークとよばれし魔物が、
こくこくとエミルの横でうなづいているのがみてとれる。
「あら。それは助かるわ」
「まて。だからどうしてこんな理不尽な状況をお前たちはうけいれる!?」
もはやもう幾度突っ込みをしたかわからないクラトスの台詞。
「クラトス。人間、あきらめが必要よ。エミルだから、ですませるのがいいのよ」
「うわ~。このこふかふか~!」
「手触りいいでしょ?でもさ。この子達のふわふわの羽めあてにヒトが乱獲したりするらしいんだよね」
ちなみに、アックスピークの羽はつやもよく肌触りもよいことから、人が乱獲の対象としていたりする。
このあたりの鳥があまりかられなかったのはこのあたりが砂漠地帯の近くであり、
あまり服などといった需要につかわれる必要性がなかったから、としかいいようがない。
ちなみに、魔物がきえるときに落すアイテムはいたってランダム。
「ノイシュ、おりられるか?」
「ノイシュはでは私がつれていきましょう」
いいつつも、ふわり、とうかびあがるテネブラエ。
「じゃ、いきましょうか」
「よし。誰が先におりるかジャンケンできめようぜ!」
「よぉし!まけないぞ!」
「何だか楽しそう!」
子供達は子供達で別の意味ではしゃいでいる。
「……はぁ……」
もはや幾度になったかわからないクラトスの盛大なため息のみが周囲にとこぼれだしてゆく……
山道管理用の道とはいえ、どうやらやはり坑道ともつながっているらしく道はかなり入り組んでいる。
が、一行は前後に魔物の護衛?という役割もあり、
また道案内もかねている彼らの誘導で、迷うことなくつきすすむ。
「どこもかしこもまだしっかりしてるわね。鉱石をとりつくしたというわけではないようだし」
リフィルはひんやりとした坑道の壁にふれて軽いため息をつく。
ひんやりとした空気がここちよいが、魔物がいくらいようとも襲ってこないのがありがたい。
むしろどこからもってきた!?といいたくなるが、
木の実やこの坑道にあったのであろう、火薬?の残りなどをもってきている始末である。
「じゃあ、どうして誰もいないんだ?」
さすがにキャンドルまでもってきたときにはリフィルは苦笑してしまったが。
あって困るものではないのでありがたくうけとるように、とエミルにはいっている。
エミルは下手すれば全部必要ない、とことわってしまうがゆえの措置。
リフィルの呟きにたいし問いかけるロイドの質問に、
「さあ。ここはドワーフの鉱山だったようだけど……」
「…ディザイアンの、せい、だね」
ぽそり、とジーニアスが暗い顔でいう。
ロイドはとっさに養父であるダイクの顔を思い出す。
ディザイアンが母親だけでなく養父と同じドワーフ達を迫害したのなら、ますます許すことはできない。
そんな怒りがこみあげてきてしまう。
元々、ドワーフ達は人とともにありて、また人から逃れて生活していたものたち。
ほとんどのものは地下にともぐり生活をしていたりする。
特にこの地は大地の精霊ノームの加護が断ち切られてしまっている。
地下ならばまだ大樹の根の加護もあり彼らにとってマナが涸渇するようなこともない。
「この調子だと、夜までには確実にイズルートにつけるわね」
山道をわざわざ超える必要もなく、どうやらその先に灯りがみえてくる。
どうやら道を抜けたらしい。
出口は出入りがしやすいように、と坑道のでいりぐちにと魔物達は案内してくれているらしい。
らしい、というのはエミルとテネブラエ達経由できかされたゆえ。
リフィル達には魔物の言葉はわからない。
が、エミルは何となくわかる、といい
テネブラエとイグニスにいたっては魔物と話しがでるのは当然、といいきっている
それがどうして当然なのか、という問いかけにはなぜかうまくはぐらかされていたりする。
まあ彼らとていうわけにはいかない。
主たるラタトスクが正体を隠し、また悟られてはならぬ今、魔物は自分達の配下、ということを。
「まて!」
坑道をぬけ、ようやく太陽の光をあびる。
どうやら太陽はもすここしで昼を指し示す位置にとやってきている模様。
名残惜しそうな魔物達とわかれ、とりあえず深呼吸をしていると、背後からいきなり声をかけられる。
「あ。ああ!お前はさっきの!おいかけてきたのかよ!」
さきほど穴におちてしまった女がそこにいたりする。
が、あの中で迷ったのか…まあかなり横穴などが多々とあり案内がなければ間違いなく迷った、であろうが。
顔も服も真っ黒に汚れており、肩で息をしているのはこれいかに。
「…そういえば、あの子たち、かわった人がきたから遊んでもらうんだ~とかいってたわむれてるっていってたな」
ぽそり、とエミルがそういった台詞におもわずひきつるロイドとジーニアス。
女性がそこまでぼろぼろになっている理由が嫌でもわかってしまった。
わかりたくないが判ってしまった。
魔物達がいうたわむれの遊び、あれはほんきで命がけ。
エミルはただこの子達は遊んでいるだけだよ~とはいうが。
たしかに致命傷などはやってこないがそれでもきついことにはかわりがない。
「よかった。あえて。たいへん!怪我してる!」
「う、うごくな。ちかづくな、何にもふれるなぁぁ!」
…どうやらさっきのことがトラウマになっているっぽい。
というより、コレットが街でとある家屋の壁をぶちやぶった跡をみているがゆえに警戒しているといってもよい。
と。
「ん?あああ!アステル!?なんだってあんたがこんなシルヴァラントなんてところにいるんだい?!」
ふとその背後にいるエミルにきづき、驚愕な声をあげてくる。
「え?」
「あたしだよ!しいな、さ。忘れたとはいわないだろ!」
「しいなさん、ですか?すいません。人違いでは?僕はエミルっていいます」
おもいっきり指をさしているので誰を指し示しているのかはいわずもがな。
首をかしげつつ、とりあえずかるくおじぎをしながらひとまず返事。
「人違い!?いやそんなまさか…ん?アステルはそんなに髪はながくない…ということは、本当に?
…そ、そうだよね。でも…双子みたいにそっくりなんだけど…?」
何やらぶつぶつとそんなことをいっているしいな、となのった少女。
「し…しいなっ!?」
ぽふん。
それとともに何やらあせったような声がしてしいなの前にリスのような何かが出現する。
「おや?」
「うん?」
それにきづき、同時に声をあげているテネブラエとイグニス。
「うわ~。かわいい!」
一人その姿をみてはしゃいでいるコレット。
『ヴェリウス?』
ぴくり。
エミルの口がそう紡ぎだしたのをとらえ、びくり、と硬直するリスもどき。
なんでこんなところにラタトスク様からいらっしゃるのよぉぉぉぉぉぉ!
しかもセンチュリオン様がたまで!
そうおもうが口にだすわけにはいかない。
さすがにその姿も見慣れたもの。
というより自分が精霊として産まれ出たときからこの姿は見知っている。
傍に彼らセンチュリオンがいることからそれがただの人でなく王であることは疑いようがない。
「そのアステルって人と僕がそっくりなんですか?どこの人ですか?」
「え?ああ、アステルは王立研究院の研究者で…って、あたしは何をはなそうとしてるんだい!」
なぜか問われれば答えなければいけないような気がしてつい答えそうになってしまう。
「王立研究院?それは……」
まだ両親と旅をしていたときに両親が逃げていた施設の名。
あの遺跡で両親とはぐれ…捨てられた、とおもったあのときからきいたことがなかったその名前。
「し、しいな。とりあえず今日はひこう、ね?ね?」
「コリン?」
ぐいぐいとコリンがめずらしく服をひっぱってくる。
「そ、それに、ほら」
みれば坑道の奥に、こちらをうかがっている魔物達が十数体以上。
もしもしいなが問答無用で襲いかかろうとするならば、確実に彼らはしいなを害する。
それがわかっているからこそのコリンの言葉。
「しいなちゃんっていうんだ。私はコレットっていうんだよ?コレット・ブルーネル」
「あ、丁寧にどうも。あたしは藤林しいな。って何あたしは悠長に自己紹介なんてしてるんだよぉぉ!」
どうやら周囲に流されるたいぷっぽい。
ひとり何やらうが~とさけびはじめているそんな少女をみつつ、
「…いくか」
「え?ちょっと。クラトス。あれ無視しておいていいのか?」
「つきあってられん」
「気にはなるけど。たしかに。日が暮れる前までにイズルートについておきたいからね」
そのままとりあえず無視してそのまますたすたとすすむことにしている大人たち。
「なんか急ぐらしいから、またね。しいなちゃん!」
「ちゃんっていうな!というかまてぃ!」
「あ。なんかあの子たちが囲んだ」
追いかけようとするしいなの周囲をすかさず包囲している魔物たち。
「怪我させたらだめだよ~?遊ぶのはいいけどさ」
「「よくないとおもうぞ。遊ぶのも」」
おもわずそんなエミルの言葉に異口同音で突っ込みをいれているロイドとジーニアス。
「いいな~。私も魔物さんたちと遊びたい」
「コレット。それはやめときなさい」
「…どこをどうつっこめばいいのかわからんな…本当に……」
何やらうわ~という悲鳴?のようなものがきこえなくはないが、
そのままコレット達一行は山を後にすることに。
一方。
「うう。いったい何だっていうのさぁぁ!」
「……しいな。今回のこと、無理のような気がするなぁ…コリン…」
「どういう意味だよ!」
「……あの御方達がいるんだもん……」
「こりん?」
「何でもない」
ぽふん。
それだけいってそのままコリンの姿はかききえる。
エミル達が完全にいなくなったのをうけて、魔物たちもたわむれるのにあきたのか、
それぞればらばらと坑道の中へともどってゆく。
あとにのこされたのは、魔物に翻弄されてぽろぼろになったしいな、となのった少女のみ……
ちなみに、この別話、以前に、原作ゲームのような出来事がかつてあった。
という設定になっております。
もっとも、今をいきるものたちはそんなことなどしるよしもありません。
…一度、ほぼ全ての生命が死滅しかけたこの惑星。
彗星の衝突など、様々な出来事があった、とおもってくださいませ。
そのあたりのことはこの話しの後々、ちらり、とは裏設定的にでてきますけどね…
そこまで、この別話、つづくのか?
いちおう、この協奏曲がおわるまではところどころにてつづけてゆく予定。
もっとも、これもうちこみしてるのが途中まで、という罠v
2013年9月4&5日(水&木)某日
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