まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
前半部分は、あまり物語では触れてなかったですが(自覚あり)
実は、教皇の手によって手配のかかっていたゼロス達。
そんな彼らのいっこうの手配解除と、神子に対するテセアラ国王の考えをば。
…資料閲覧はとばしてもよかったけど、確認のため、という理由もあって、
それに、国王をたすけたのに何もいらない、といえば、
国王はさらに疑心暗鬼になりそうですし…というわけで無難な原作?通りの設定にv
…後半部分はようやく闇の神殿です。
さらっといきます、さらっと。
内容はほぼ、文庫小説に近いです。あしからず……
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ゼロスのおかげというか、迅速な情報伝達、というべきか。
一行は問題なく、そのまま王の間へ。
押し問答をしつつも、そのままずんずんと王の寝室へとたどりつく。
が。
「お父様はご病気なのです。スピリチュアの再臨だか何だかわかりませんが。
お父様はただ、テセアラを護ろうと……」
「姫。判っていますよ。陛下に合わせてください。姫」
しかしヒルダは首を縦にふらない。
ゆえに、ため息をひとつき、
「姫。それではここではいいたくなかったのですが…どうやら一刻をあらそいますのでね。
ヒルダ姫。陛下は教皇に毒を盛られていた。ご存じですか?」
ゼロスが告げるとヒルダは真っ青になる。
周囲にいた大臣とおもわしき人物もまた真っ青になっているのがみてとれる。
まさか、などという声もあがるが、しかし、ともおもう。
「本当だ。教皇のやつはそれを追求されて逃げ出した」
ロイドが説明している横をリフィルがもどかしそうに通り抜ける。
「どいてちょうだい。急いで解毒をしなければ」
みれば、天蓋つきの別途に横たわっている王の顔は以前みたときとは違い土気色をしている。
「ベットサイドにある水さしも信用できないわね。かといって…そうだわ」
自分達がもっている水のほうがはるかに信用ができる。
新たに水をもってこさせる、という手もあるが、その水に何か異物が混入されていない、とはいいきれない。
「でも、姉さん、本当にそれ、解毒薬なのかな?あの教皇のことだから信用できないよ?」
「たしかに。たしか、ジーニアス。あなた水鏡の森の水、もってたわよね?」
「え?あ、うん」
オゼットからここに戻るまで、エミルの呼び出した鳥にのって移動したがゆえ、
その途中で水がほしい、といってたちよっていた。
ゆえにジーニアス達、すなわちロイド達一行の水筒には今現在、水鏡の森の水がはいっている。
それこそマナの恩恵をたっぷりとうけた。
「あと、たしか。フードパックの中に、ユミルの果実の残りがあったわよね。
これを水でこしてのませたのちに、浄化作用のある術、リカバーを使用しましょう」
もし、解毒薬とおもい呑ませた結果、悪化してしまえばもともこもない。
「…あの果物、まぁだのこってたのか?」
おもわず呆れたような声をだすゼロス。
以前にエルフの里を訪ねたときに手にいれた果実。
どうやらまだいくつかのこっていたらしい。
リフィルの指示のもと、果物がすりこされ、そのまま果実入りの簡単飲み物をさらに水でうすめ、
そのままゆっくりと横になっている王の唇からながしこんでゆき、
ちなみに、流しこむ役割をヒルダが担当し、リフィルは術の詠唱を始め、
それとともに、状態変化異常回復の術、リカバーの術を唱えだす。
淡い光の魔方陣が天蓋つきのベットを中心にしばしつつみこんでゆく。
光と闇の協奏曲 ~王都から闇の神殿へ~
「お父様!」
「むぅ…こ、これは……」
目を覚ました王の視界に入ってきたのは、紅き髪。
「意識がもどったみたいだな。陛下、俺がわかりますか?」
「うう……裏切りもの、ゼロス、私を殺しにきたか」
ゼロスの問いかけにたいし、何やらそんなことをいってくる。
どうやら国王自らもそのまま教皇にだまされるがままに手配の許可をだしたらしい。
真実を自ら調べようともせずにうのみにするのはいくら教会との争いを避けたいとはいえ、
正しい手段、とは言い難い。
「それは違うぞ!ゼロスはあんたをたすけたんだ!」
そんな国王に思わずロイドが反射的に突っ込みをいれているが。
「裏切り者、ね。こいつは俺様にお似合いだ。
まあとにかく、俺達は教皇に陥れられただけだ、テセアラに仇なすつりはない」
まあ、ある意味で裏切っているといえなくもないが、
敵をだますのはまず味方から、ともいう。
さらにいうならば、誰しも身内が大事、というのもある。
「たとえ、王室がそれを疑ったところで教会と民と兵は神子ゼロスの味方をするでしょうね。
こちらにはスピリチュアの再来もいることだし」
すでにコレットがスピリチュアの再来だ、という話しはあっというまに、あの場にいた兵士達の手により広まっている。
この世界におけるスピリチュアの扱い、というのも気にかかるが。
どうやらこの世界においては自分達の世界では救いの主といわれてはいるが、
こちらではすこしばかり勝手が違うらしい、ともリフィルは理解している。
詳しくしるにはこちら側の教会の資料をみれば一番手っとり早いであろうが。
いまだにリフィルはこちら側の教会の資料をみたことがないので何ともいえない。
どちらにしろ、天の使いといわれている天使がすなわち、スピリチュアの再来、とおもわれているらしい。
まあ、コレットは確かに神子なので間違ってはいないであろうが。
そういえば、ともおもう。
こちら側のテセアラの神子はそのあたりのことはどうなっているのか、と。
聞けば、彼らは三歳のころにすでにクルシスの輝石をその身にクルシスから身につけられてしまうらしい。
コレットですら十六の誕生日のときであった、というのに。
それが繁栄世界と衰退世界、といわれている差といえば差なのかもしれないとも。
「…何が望みだ」
王としてかつての悲劇を起こすわけにはいかない。
それゆえの台詞。
「別にこれ、といってはないんだが…かといって何もない、というのも不安だろうしな。そうだな……
たしか、ここ、王室では、勇者ミトスとカーラーン大戦の資料が保管されていたはずだな?
それをみたい」
「「え?」」
ゼロスのそんな意見が以外だったのか、思わず異口同音で言葉をはっしているロイドとジーニアス。
ロイド達もこちら側の詳しいスピリチュア伝説のことは知らない。
マーテル教そのものがクルシスによる偽りの神だ、というのを知ってしまった以上、
マーテルという女神にたいし疑念を抱いているのもまた事実。
「…資料は二階の書庫に保管してある。好きにするといい。
しかし、もう二度とわしの前に姿をみせるな。わしはつかれた。
教会との権力あらそいはもうごめんだ」
民は王家よりも教会を信じる。
王家の変わりはいるが、女神の変わりはいない、そんな理由で。
かつての出来事も起因しているのことはわかっている。
神子をないがしろにした天の怒りをこの国はかつてたしかにかってしまった。
被害は王家のものだけでなく、あのときの神子をないがしろにしたもの全てに被害は及んだ。
だからこそ、民は神子を神聖視する。
天の、女神マーテルの意思の伝達者、として。
「勝手なことを!あんたは毒から助けてくれた人にお礼もいえないのか!最低だ!」
助けてもらったというのに、でてくるのは否定の言葉。
命の恩人に対し、二度と顔もみたくない、とは人としどうか、とおもう。
だからこそジーニアスは叫ばずにはいられない。
シルヴァランドに初めてきたとき、こちらの世界の繁栄ぶりにあこがれたというのに。
しかし、ここに住んでいるものはといえば、自分達がいた場所よりも確実にひどい差別が横行している。
上にたつものがこうならば、下にいるものも付随してしまうものなのか、ともおもってしまう。
こういう人をみるたびに、人が嫌いになってゆく。
自分と少しでも違うものをまったくうけいれようとしない人に対し。
ここにもしもエミルが同行していれば、即座に同意してきたであろうが、
今現在、エミルは再び精霊研究院にのこっており、今はいない。
「いいんだよ。チビ。じゃあ、陛下。勝手にみさせてもらいますよ」
何かさらに言いつのりそうなジーニアスではあるが、
そんな彼らをさらり、と無視しそのまま部屋をたちさってゆくゼロス。
「あ…」
ヒルダがそんなゼロスに何かいいそうにしているが、しかしゼロスは振り返らない。
「なあ、ゼロス、なんで資料をみたいなんていったんだ?」
王の寝室をでてのち、きになっていたことをといかけているロイド。
そもそも、ゼロスがあのようなことをいうなどロイドとておもっていなかったがゆえの問いかけ。
「アステルのもっていた資料を以前みせてもらってはいるけども。
あなたがあの場であのようなことをいうなんてね」
リフィルからしても想定外、だったらしい。
そんな彼らの問いかけにたいし、
「何もない、といえば余計にあの国王陛下は疑心暗鬼になりそうだったしな。
まあ、ちょうどここに資料があるんだし。調べてみるのもいいんでないかい?
…以前の大樹の精霊のことものってるかもしれないしな」
たしかに、自分は妹、セレスの健康と自由を願った。
あのあと、エミルがセレスに届けたというネックレス。
それを手にしてからセレスはなぜか体の調子がいいらしい、と本人がいっていた。
たかが一つの品で健康体になる、とはおもえない。
が、エミルならば…ラタトスクの関係者ならば何でもありなような気がするのもまた事実。
だからこそ、確信がほしい。
彼が、エミルがラタトスクに関係している誰か、である、ということが。
もっとも、まさかゼロスとてエミルがそのラタトスク当事者だとはいまだに夢にも思っていないが。
「ああ、精霊ラタトスクのことね。たしかに、それはきになるわね。
それに、コレットがかかっていた病のことも」
マナの欠片がないにもかかわらず、コレットの病は完治をむかえている。
ダイク曰く、マナの欠片よりもロイドがエミルからもらっていたあの葉っぱのほうが、
遥かにマナが濃く、さらには濃密度であったらしい。
まあ、小枝、とはいえ元、大樹カーラーンの枝。
それから芽吹いた新芽。
たしかに、他に類をみないほどにマナを含んでいてもおかしくはない。
が、それはやはり、エミルがもっているあの小枝が本当に世界樹にかかわりがある。
と認めるようなもの。
どちらにしても、情報が多いにこしたことはない。
まあ、あるいみちょうどいい機会なのかもしれない。
「せっかくだから、ゼロスの好意にあまえましょう」
「なんか、嫌な予感……」
「同感…」
何やら嫌な予感がしつつおもわずつぶやくロイドに対し、ジーニアスもぽつり、とつぶやく。
彼らの予感のそれが、二部屋にまたがる資料室の中から資料を探す、
というあるいみ大変な行動がまっている、ということをまだ彼らはしるよしもない……
「きゃっ!」
あまりの大量な本にもはやもうあきらめの境地。
かたっぱしからそれらしきものを手にし調べてみるが、それらしき文献は見当たらない。
再び同じ書物を手にとらないように、とりだした本はひとまずその場につんでゆく。
もっとも、片づけるときがまた大変なので、一棚づつ調べている最中、
コレットが何もないところでこけて、つみあげていた本が雪崩のごとくに崩れ落ちる。
と、一冊の本のみがなぜか離れたところにおち、それを拾い上げてみれば、
調べたはず、なのにおちて開かれたそのページがもののみごとに伝承に関することがかかれている。
「…これは、天使言語。いえ、エルフの古代文字ね。間違いないわ。これね」
「まさか、こんな形で手がかりが見つかるとは……」
リフィルが手にとり、翻訳を開始する。
リーガルはこのような形でみつかったことに驚き言葉を濁しているが。
何といっていいのかわからない。
何もないところでこけたコレットもではあるが、そもそもなぜにあれだけあった本のうち、
一冊だけ離れた場所に、しかも本の見開きが開いた形でおちるのか。
さらにいえばそのページがちょうど求めていた情報がかかれているものだ、というのだから。
何といえばいいのかわからない。
「コレットのドジは本当に祝福されてるみたいだね」
まあ、こけただけで普通の民家の壁をぶちやぶるようなコレットである。
ついでに何もないところでこけて罠を解除したり発動させたりしたところをしいなはみたことがある。
ゆえにしいなとしても苦笑せざるをえない。
「先生、何てかいてあるんだ?」
コレットの行動に関しては今に始まったことではないのでさらり、とながし、
本を手にしたリフィルにとといかけているロイド。
伊達に長い付き合いではなく、こういったことはすでにロイドは慣れている。
それゆえにまったく動じない。
「まって。これはコレットのかかっていた病状のことね。
クルシスの輝石の浸食を防ぐために、マナの欠片とジルコンを、
ユニコーンの術で調合し、マナリーフで結ぶルーンクレストを作成した。
中枢にマナリーフの繊維を利用することで、パグによるクラッキングから…
ああ、ここからは原理がかかれているのね。
以前に、サイバックの研究所できいた詳しいことがこれにかかれているようね。
おそらく、アステルもこれから情報を手にいれたのでしょう」
このあたりにかかれていることは、アステルや、
かつて研究院にて聞かされたこととほぼ同じ意味のことがかかれている。
「ここにかかれているのは、ルーンクレストをつくって、要の紋にとりつける。
それによって輝石の力の働きを抑えることができるとかかれているみたいね」
それ以外に、この本には勇者ミトスに関する伝承がかかれている。
勇者ミトス。
ならば、精霊のことも書かれているかもしれない。
ゆえにパラバラとその本を読み進めてゆくリフィルの姿。
そんなリフィルとは対照的に、
「たしか、永続…なんだっけ?」
「もう。ロイド。永続性無機結晶病、だったはずだよ」
めんどくさいななのでジーニアスもあまり自信がない。
「これには、最終段階のこともかかれているわ。…ほんとうにコレットの病状はぎりぎりだったわね。
この病気の最終段階は、皮膚の結晶化の発症から、およそ数カ月程度で、
全身が輝石に…クルシスの輝石になってしまうそうよ。
完全に皮膚が輝石化すると、次は内臓が石化して、最終的には死をむかえる。
そうかかれているわ」
あのとき、コレットの病気を治したときは、すでにコレットの首より下のあたりの結晶化がすすんでいた。
それをおもえばたしかにぎりぎりだった、のが一目瞭然。
もしも、エミルの渡してくれていた新芽がなければ、おそらく、今もコレットは。
そもそも、マナの欠片、など滅多というか通常的に手に入るともおもえない。
それを思えばたしかに幸運、なのかもしれないが。
「…残念なことに、精霊のことはほとんど描かれていないわね。
ただ、大いなる実りを授かった、という描写があるわ。大いなる意思から。
この大いなる意思、というのはもしかしたら精霊ラタトスクかもしれないわね」
エルフ達も精霊ラタトスクのことをそう呼び称することがある。
大いなる意思、と。
大地そのものの意思、ラタトスクの意思のことをそのようにいっていた。
だからこそありえるとおもう。
「よくわかんねぇけど。そのあたり、ユアンのやつにきけばわかるんじゃねえのか?」
「…ロイド。めずらしくさえてるね。…熱でもあるんじゃない?」
先ほどのことといい、今といい。
絶対に熱があるとおもう。
そんなジーニアスの台詞に、
「あ、あのなぁ!…そういや、きになってたんだけど。
あの教皇とかいう人、何をたくらんでたんだろ?」
おもわず言い返そうとして、ふと教皇と名乗っていた男のことをおもいだし、首をかしげるロイドの姿。
ロイドは教皇とかいわれてもよく意味がわかっていない。
そもそも、シルヴァランドにはそのようなものがいない、というのもあるにしろ。
いるのは、それぞれの街や村においてる祭司長のみ。
教会で権力が一番高いといえばコレットの祖母であろう。
神子の家系である、という理由ですべての神官達はコレットの祖母、ファイドラの元で修業をする。
権力をわがてに、というような輩が身近にいなかった、というのもある。
何しろロイドが知っている権力者、というのはわからずやの村長くらいなのだから比べられるはずもない。
「さあなぁ。大方自分が国王にかわってこの国を支配したかったんじゃねぇのか?」
あの噂が真実ならば、そして当人がそれを自覚していたならば、その可能性は確かにありえる。
そんなゼロスのいい分に、
「愚かな」
リーガルとしては嫌悪感あらわに吐き捨てるしかない。
権力、というものは民があってのものだ、というのに。
何しろ民…すなわち、お客様第一の信条をもっているリーガルとすれば、
権力という枠にのみとらわれている教皇の考えに賛同できないのもまた事実。
国にしろ商売にしろ、それにともなう民がいなければたちゆかない。
というのがわかっていない。
それは帝王学のいわば基本中の基本だ、というのに、である。
「ま、何はともあれ、邪魔ものがきえて、俺様ものんびりできるってコトさ。
ハーフエルフに対する差別も少しはましになるかもしれねぇぜ?」
事あるごとに自分を邪険にしてきた教皇がいなくなることにより、少しは改善されるとはおもう。
何しろ、あのときですら、母が暗殺されたときもその背後に教皇の息がかかっていたことを、
ゼロスは今では知っている。
当時は知りようがなかったが。
全ては傀儡にできそうな妹を神子にすえ、自らが権力をほしいがままにするために、
不満をもっていたセレスの母を教皇の手のものがたきつけた結果、あのようなことが起こってしまった。
最も、彼らの誤算は子供を嫌っていたはずのミレーヌが自らの身をもってゼロスをかばったということ。
ゼロスは自分が神子だから、母は命をかけてかばった、そう思い込んでいる。
それは、母親がゼロスにむけた最後の言葉。
お前なんか産まなければよかった、という言葉に全て起因している。
言葉と感情が異なる、ということはゼロスも行っているゆえにわかるであろうに。
自分のことは案外わかっていない、またわかろうとしていないゼロス。
自分に存在価値がない、そう思い、それでも死にたくはなく、自らに与えられた役目と、
そして母を死なすきっかけとなり、また妹を幽閉させられることになった事件の真相。
それをつかむために、ゼロスは幼いながらに強くなるしかなかった。
「それはどうかな?教皇が失脚したとしても、人々の考えが簡単に変わるとはおもえん」
少し他人と違うだけで排除しようとする。
それはあるいみ物資が豊かではあれど、心が豊かではなく満たされていないことを示している。
だからこそ、レザレノ・カンパニーはそんな人々の心を潤すために日々奮闘し努力している。
カンパニーの信条は、ゆりかごから墓場まで。
すなわち、一生を豊かにサポートすることをモットーにしている。
「だからぁ。この俺様がいるんじゃねえの。ハーフエルフのお友達のこのゼロス様がな」
「…この国、まだまだ揺れるな……」
しかしそんな感情も思いも微塵も表情にだすことなく、おちゃらけた様子で言い放つ。
そんなゼロスにたいし、ため息をつきつつも何やらいっているリーガルではあるが。
たしかに、ゼロスは遊んでいるようでいてすることはしっかりとしている。
だからこそ、民からの信頼もあつい。
民とかかわり、彼らの望みを反映した意見を出しているのもまた事実。
「でも…人とはどこまでも愚かになれるのね……」
翻訳してわかったこと。
かつて、人を兵器としてテセアラにしろシルヴァランドにしろ生体兵器たるものをうみだした。
という記述がある。
詳しい記述はどうやら破棄されたのかのってはいないが。
それでも、マナリーフをとりにいった場所にてリフィルはかの伝承者よりきいている。
天使とよばれしものは、かつてテセアラやシルヴァランドがうみだした、生体兵器に他ならない、と。
しばし、他にも何か資料があるかも、ということもあり、それぞれが分担しその場を調べてゆく……
「うわぁ。本当に真っ暗だねぇ」
「闇の精霊の力のようね。この辺りに強く影響してるんだわ」
少し前までこのあたり一帯が完全に闇に包まれていたらしい。
闇の神殿は、ふうじ山脈を越えた先の、王都がある大陸の南側にと位置している。
かつての異常気象のときは、ふうじ山脈より南側全ての大陸が闇にと包まれていたらしい。
そしてまた、逆に王都テセアラは夜になることなく、常に明るく昼間でもないのに、
なぜか光に包まれていたらしい。
始めは常に明るいことに喜んでいた人々だが、しかし人には安らぎも必要。
常に明るいということは、気を休める時がない、ということに他ならない。
何しろ不可視な力なのだから、いくら家の窓に黒い布をはろうが、
家の中まで明るくなるそんな力にどうやって対応すればいい、というのやら。
最も、それは他の場所とはことなり、約一月程度で収まったがゆえに、
暴動にまで至らなかったという経緯もある。
テネブラエ曰く、てっとり早く回復するためにあえてマナの転換を一気に行ったゆえの結果らしいが。
当然、ロイド達はそんなことを知るよしもない。
また、エミルも必要でないとおもうがゆえに説明する気もさらさらない。
「それにしても暗すぎるだろ。うわ!?」
「ゼロス?」
「うぎゃ。俺様の足を踏んだのは誰だぁ!?」
闇の神殿と呼ばれし場所に入った刹那、足元すらみえない闇にと包まれる。
それでも少し前にすすんでいった一行のそのうちのゼロスの足を、
どうやらら誰かがふんだ、らしい。
もっとも、それは誰かが踏んだ、のではなくこの神殿に生息している魔物がその上を通ったに過ぎないのだが。
「というより、プルーキャンドル使用しないと」
結局のところ、やはり神殿に向かうならば、詳しいものがいたほうがいい。
それに何よりも、研究院のものが一緒にいたほうが体裁的にもいい。
といういかにもといったアステルの口先にごまかされ、
アステルは再び今度は許可を得た上にてロイド達にとついてきている今現在。
慣れた手つきでブルーキャンドルに灯りをともす。
それとともに、青白く光る輝きが周囲の闇を照らし出す。
「すげぇ……」
視界に視えるようになってわかるものがある。
それゆえに思わずロイドが声をもらす。
「これなら何とか先にすすめそうね」
リフィルがほっとした表情をしている一方で、
「しかし、ここ最近、この神殿にはいろうとすればはじかれてたんですけどねぇ」
ひたすらに首をかしげているアステルの姿。
「でも、何だろ?このマナの感じ…なんだか今までの封印の場所より不安定のような気がする」
「いってみればわかるさ」
「いわれてみれば。前回、この神殿にきたときよりマナが確かに乱れているな」
以前にきたときは、まだ異常気象がはじまるまえ。
ジーニアスの言葉にうなづくようにリヒターが同意を示す。
青白い灯りにてらされ、すすむことしばし。
「すばらしい!ここはテセアラの遺跡の中でもてつかずの状態で保存されているのか!?
おお、この壁も、この床も、何とすばらしい!これは、カーボネイドでもまたない材質か!?」
何やら一人、周囲をみていつもの癖がでているリフィルの姿がみてとれるが。
またはじまったよ。
表情のみで視線をかわし、首をすくめているロイドやジーニアス。
と。
何やら人の声に反応したのか、青白い光の中から黒い影がすうっと一行のもとへとちかづいてくる。
「な、なんだ?こいつ?魔物か?」
その黒い影をみてロイドがとまどった声をだしているが、
「違うよ!こいつは精霊だ!」
いくつも精霊と契約したからこそわかる。
この気配はまぎれもなく精霊のもの。
そんなロイドにしいなが否定の言葉を発し、驚愕した声をあげる。
「え?これが闇の精霊、シャドウなんですか?」
コレットの戸惑いの声。
「今までの精霊よりも力が弱い感じがする。五分の一くらいかな?」
ジーニアスがそんなことをいっているが、そんなものではない。
むしろ、この分霊体はかなり力を落としたもの。
あるいみで、五、という数値はあっているにはいるのだが、
五百分の一、という注釈がつく。
「しかし、外より中のほうがマナが不安定、というのがきにかかるな」
外は確実に安定していた、というのに。
この闇の精霊がいるはずべき神殿でマナが安定してないのはどういうことなのか。
そんなリヒターの呟きには誰も答えることができない。
否、エミルは理由をしっているが教えるきはさらさらない。
「…ふむ。さわれない、か。中途半端に溶けかけた封印から精霊の力がもれだして具現化したのか?」
リフィルが目の前の影のようなそれをみて自分なりの予測をたてるが。
「……いや、というか。なぜにお前らはあれがきにならん?」
ふとみれば、いつのまにか影のような闇の精霊…もどき、というべきか。
それはエミルの傍によっており、そのままエミルがかがむとどうじ、
そのまま、ひょいっとエミルが抱き上げていたりする。
そのまま、何かエミルが口を動かしていることから何かを会話しているのかもしれないが。
それは音律のような音をかもしだしており、何といっているのか一向にわからない。
「エミル?それにふれられるのか?」
リフィルが興味深そうにきいてくるが。
「え?この子はシャドウの分霊体ですし。触れるのはあたりまえですけど?」
エミルからしてみればそれはあたりまえ。
そもそも、彼らが移動しているのは、とあるものを今現在つくっているからに他ならない。
この施設というか場所そのものを、ちょっとした洞窟に全て移動させることはすでに伝えている。
聞きなれない台詞。
分霊体、などという言葉はロイド達は聞いたことがない。
「そういえば、予測にそういった定説があるのも事実ですね。
精霊達の力は巨大ゆえに、その力の一部を自らの分身体として具現化させているのでは。
という。今だにそれらの研究は進んでいないので正確なことはわかりませんけど」
エミルのことばに追加説明をくわえているアステル。
どうやらすでに、ここのしこみもおわったらしい。
今まさに、分霊体たるシャドウからその報告をうけたまで。
「この子達もシャドウのもとに戻るそうですし。一緒にいってもいいですか?」
「というか、おそらく、その小さい精霊もつれていかないと、契約ができないような気がするわ」
もしも、ここにいる精霊が自らの分身を生み出しているのならば、
完全なる状態でなければ契約をしてもらえない可能性もかんがえられる。
「この小さい精霊さん、他にもいるのかな?」
「シャドウはどうやら今現在、五体いるようですよ。エミル様」
「あ。そうだね。あ、リフィルさん、僕、ちょっとテネブラエ達と用事があるので別行動しますね」
いいつつ、
「彼らをシャドウのもとにまで案内してね」
かるく抱きかかえているシャドウの小体をなでたのち、そっとそのまま床にとおろす。
それとともに、どこからともなくわらわらと、他にも四体、同じような精霊達がこの場にとあつまってくる。
それらは一斉に並んだのち、まるで礼をするかのごとくにくねくねとした
ひょろながい小さな体をくねらすが。
エミルはそれだけいいつつ、少し離れた場所にと移動する。
エミルがたった場所は壁の一角。
刹那。
エミルがその壁の前に立つとどうじ、壁が青白く光り、それとともにエミルの足元に陣のようなものがうきあがる。
それらは光をまし、やがて光とともにその場からエミルの姿がかききえる。
それは、テネブラエの神殿というか祭壇につながる直通路。
この闇の神殿の要ともなっている大樹の根の解放点にむかうための道。
最も、そんなことはロイド達はしるよしもないが。
「え、あ、エミル!?ってきえた!?」
「…あれって、テネブちゃんだったよね?」
いつのまに、ともおもう。
いつのまにか、闇の神殿にはいるとともに、当たり前のように、
テネブラエとなのりしものがエミルの背後にいたらしい。
あまりにその場にいて違和感を感じなかったのできにもとめていなかったが。
青白い光の中だというのに闇を具現化したかのような犬のような猫のような魔物のようなもの。
アステル達は直接近くでテネブラエをみたことはない。
ここ、闇の神殿は簡単にいえばテネブラエの…闇の気配に満ちているがゆえに、
本来よくとる姿を成していたとしても気配を気取られる心配がない。
それゆえに擬態することなく、あえてよく形とる形態をなしていたテネブラエ。
それをしっているからこそエミルもまた擬態するように、とは命令をだしていなかったに過ぎない。
ほとんど突発的なことなので反応がおくれるが、あわててエミルが消えた場所にかけよってみるが、
そこにはやはり普通の壁…否、何か紋様が描かれている壁があるのみで、
床もまた不可思議な模様らしきものが描かれている以外何の変哲もなく。
エミルがどこに消えたのか調べてみてもわからない。
「先生。なんかあの子たち、こっちをじ~とみてますけど」
近寄っていけば、すこしうごき、まるでこちらをうかがっているような行動をとっている小さな精霊達。
「さっきのエミルの台詞もあるわね。…もしかして、あの精霊達は、
闇の精霊のもとにつれていってくれるつもりなのかもしれないわね」
「んな馬鹿な…といいきれないのが怖いわ。何しろいったのがあのエミル君だからなぁ」
ゼロスとしては否定したい。
したしが、否定しきれないのもまた事実。
結局のところ、エミルがどこに移動したのかわからない以上。
今すべきことは、精霊との契約が優先、ということもあり、
小さな精霊達に案内されるがままに、一向はそのまま神殿の地下へ、地下へと進んでゆくことに。
たどりついたはどうやら最深部、らしく、見慣れた封印の間らしき場所。
どうやらここ、闇の神殿の封印の間も他の精霊達と同じような祭壇であるらしい。
小さな精霊達はそのまま、その祭壇の中央にとむかってゆき、
やがてブルーキャンドルですら照らしきれない濃い闇が一瞬出現する。
やがて黒い闇が晴れて、青白い光にてらしだされたその場に、
先ほどまでいなかった影がひとつみてとれる。
それは、青黒い体の上に細面の顔らしきものをもっており、
腹のあたりとみうけられるその場所に赤い目のような光りをともしている。
手はその体ににつかわずに異様に大きいが、足は周囲の闇にととけているかのごとくに、
下へゆくほどにひろがり、足、という足ではない。
どちらかといえば、長い黒いドレスというかスカートをきているかのような感じにみえなくもない。
「…なあ、シャドウって闇の精霊、だよな?」
今までの精霊とはまた異なる姿であることに驚きつつ、
というか完全に顔というものをもっていない精霊にあうのはこれが初めてといってもよい。
まあ、アスカに関しては鳥であったので、顔、という概念はどうかとおもうが。
どちらかといえばシャドウの第一印象は、のっぺりとした黒い人型もどきの影、というほうが強い。
「今さら何をいってるんだよ。ロイド君。どうみてもそう、だろうがよ」
ゼロスのいい分は至極もっとも。
というより闇を凝縮したような精霊が目の前にいるのに、何をいっているのか、ともおもう。
「じゃあ、相反するのは光の精霊ってことだよな?」
「そうだよ。でもどうしたの?ロイド、いきなり?」
たしかにいきなりである。
そもそも、目の前に闇の精霊がいるのにどうして今そんなことをいきなりいいだすのか。
「いや。ふとおもったんだけどさ。たしか以前、ルナはアスカを連れてこいとかいってたよな?
あと、アスカのほうもルナと一緒でないととかいってたよな?」
それは、マナの守護塔の封印を解放したときと、先日、絶海牧場にのりこんだとき。
それぞれの精霊からたしかにそうきかされた。
「そうね。たしかに。その手間を考えて光の精霊の契約は最後にしたほいがいいのよ。
だから、このたびの闇の精霊との契約がおわれば、あとはアスカとルナのみでしょう?」
ロイドとジーニアスの会話にリフィルが答える、
「アスカはどうしてマナの守護塔からいなくなったんだろ?」
それはロイドの素朴なる疑問。
というか、元々守護塔にアスカはいなかったのだが、その事実をロイド達は知らない。
「家出でもしたんじゃね~の?」
かるくいうゼロスに対し、
「あんたじゃあるまいし!とにかく!シャドウと契約するよ!」
どちらにしても、クルシスが行っているという精霊の楔。
それを取り除かなければ、どちらの世界も、マナを搾取しあい未来はないのだからして。
そんな会話をしている最中。
「…我…ミトスと契約……」
現れた闇の精霊とおもわしきそれから声らしきものが発せられる。
それは、まるで周囲に響くかのようなそんな声。
どこかくぐもってきこえるような気がするのは、ロイド達の気のせいか。
「ミトスか。一応、伝説の勇者と同じことをしてるんだよな。俺達」
どうして勇者といわれている人物がこんな人を虐げる仕組みを作り上げたのか、
それはロイドにはいまだに理解ができない。
たしかに、大切な人を助けたい、という思いはわかる。
わかるが、それは誰かを犠牲にしてまでなしえることなのか、ともおもう。
それは、ロイドにとってとても大切な人を自らが失っていないからこそいえること。
そもそも、ロイドは目の前にて母が異形になったあの当時のことを覚えていない。
覚えていればまた考え方も違っていたのであろうが。
自分が人質に取られ云々、というのは聞かされたが、あまり実感がない、というのもまた事実。
人は、自分の都合に悪いことは脳内において都合のいうように忘れ去り、
また、記憶の改竄をも行うことが多々とある。
それこそ、歴史がのちの人にとって都合のいいように歪められていゆくように。
「我はしいな。シャドウがミトスとの契約を破棄し、我と契約することを望む」
「……戦え」
しいなが言葉を発すると、言葉すくなくそのままロイド達にとせまりくる。
「きます」
「皆、いくよ!」
プレセアが思わずさけび、しいながかまえる。
しいなが札を構えるとほぼ同時、ロイドとゼロスが剣を抜き放つ。
そんな彼らを闇の精霊はその長い腕らしきものにて薙ぎ払おうとしてなのか、
おもいっきり手をおおきくふりかぶる。
「おっと。そうはいかないよ!散力符!」
しいながそういうと同時、しいなの手からはなたれた舞い飛ぶ札がシャドウの体を攻撃する。
「うぉぉっ!」
そのまま腕に薙ぎ払われるかのようにおもわれたロイドではあるが、
その手に剣をもち右腕を高くあげたまま床をけり、
そのまま振り下ろしざまにと精霊の胴体にときりつける。
が、まるで手ごたえもなく、まるで霞をきるかのごとくに、そのまま切りつけられたはずの
シャドウの体は濃い黒い霞のごとくに霧散し、再び形をなしてゆく。
「…闇よ」
シャドウが呟くとともに、黒い渦のような何かが出現する。
あわててそれから回避するロイド達。
「いけ!しいな!」
「あいよ!術力場符!」
後方にさけたゼロスにうながされ、しいなが再び札を発する。
シャドウは文字通り、闇の結晶のようなもの。
ゆえに普通の物理攻撃は何の意味をもなさない。
そのことにまったくもってロイドは気づいていないが。
ゼロスの攻撃が通用しているのは、武器に属性の効果を付属しているからにすぎない。
そにことにすらロイドはいまだに気づいていない。
しいなの札にまみまれ、精霊の動きが一瞬とまる。
「フォトン!」
それを好機、とばかりに詠唱を終えたリフィルの術が炸裂する。
闇の精霊に反するは、光の力。
それゆえに、突如として現れた光りの力に翻弄されたのか、
はたまた、まるで霞のようにどこか実体がしっかりとみえなかった闇の精霊の体が、
その光にてらされ、よりくっきりと形をロイド達の前にとさらけだす。
光が強ければ強いほど闇はくっきりと姿を現す、その典型。
もっとも、光りなき闇のみでは闇にまみれ、全てが闇に呑みこまれてしまうが。
「…これならどうだ!獅吼翔破陣!」
ロイドの攻撃をうけて…もっとも、技での攻撃なのでその技には属性が付属されている。
ゆえにシャドウにも何らかの影響があったらしく、そのままバランスを崩したのか、
シャドウが前のめりに一瞬ぐらつく。
ロイドの放った攻撃は属性的には無属性。
が、無属性だからこそ攻撃が通用した、というものある。
物理攻撃ともことなる、無属性を含んだ攻撃だからこそ、届いた、といえる。
この技は獅子戦吼にて敵をふきとばし、地面にたたきつけた衝撃でダウンさせるという本質をもっている。
もっとも、それは物理的な体をもっているものに対し有効なことであり、
目の前にいる闇が具現化しているだけのものには決定的までの効果を及ぼさない。
それゆえにといえるであろう。
だがしかし、すぐさまに体制をたてなおすシャドウの姿。
が。
「…力を示せ。新しき、誓いを」
なぜか体制をとりなおした闇の精霊シャドウが発したのは、戦いを継続する言葉でなく、誓いの言葉。
ゆらゆらとゆらめきつつも、再び先ほどまでしっかりと形がみえていたその体が、
再び周囲の闇にと同化してゆくかのようにかすんでしまう。
ブルーキャンドルの青き光にてようやくそこに形があるのがわかる程度。
「…何か、事務的なやつだねぇ。えっと。二つの世界がお互いを犠牲にしなくてもいい世界をつくるのに、
あんたの力をかしとくれ」
どうも今の戦いはまるで決められた、というかただの確認をこめた事務的な対応。
そう、としかおもえない。
そもそも、今までの精霊の試練をざっとみわたすに、どうも精霊達は手加減をかなりしている。
とおもうのはしいなの気のせいか。
…ノームのときにしても然り、…まあ、イフリートのときには試練も何も、戦い自体がなかったのだが。
多少の呆れをふくめ、そして多少の疑念をいだきつつも、
それでも、精霊が誓いを、といってきているのならばこれ以上無駄に戦う意味はない。
「…承知。汝が契約をたがえた時、我、契約破棄…望む……」
それだけいいきると、闇の精霊シャドウはしいなの手になぜかアメジスト、
すなわち、どうやらこの宝石が精霊との契約の証、らしい。
アメジストの指輪をしいなにと託したのち、そのまま周囲の闇に溶けこむようにしてかききえる。
「あとは光の精霊と契約すれば、ようやく全ての精霊と契約が完了するんだな」
「それで全てのマナの流れが分断できるはずだよ」
長かった、とおもう。
それで何が終わるかはわからないが、すくなくとも。
今のように、互いの世界がマナとかいうものを搾取し合う関係はなくなるはず。
ロイド達はそれによって何がおこるのか、というのをまったく考えてはいない。
リフィルのみは多少の懸念をもっているっぽいが。
「…あと少しで、世界はクルシスの楔から解放されるのね」
「そうしたら、世界はどうなるんだろう?」
リフィルのいい分がわかったのか、不安そうにつぶやいているジーニアス。
これまでがむしゃらに精霊との契約をしてきたが、
ユアンがいうには、精霊の楔を解除することにより、大いなる実りが発芽可能になるらしいが。
どうも何かが抜けているような不安がリフィルからしてみればぬぐいきれない。
「世界がバラバラになるんだろ?いいんじゃねぇの?今より状況がよくなるともおもえねぇし」
まあ、大いなる実りが発芽せず、大樹がないままであれば互いの世界は確実に消滅するであろうが。
まあ、あのエミル君がいる限り、何かやってそうだしな、ともおもう。
だが、エミルのことは口にはださず、かるい口調で言い切るゼロス。
「あんた、どうしてそんなに気楽でいられるんだよ。気にならないのかい?」
たしかにリフィル達のいうとおり。
全ての精霊との契約を終えたとき、何がおこるかわからない。
そもそも、今の世界は無理やりに二つの世界に分けられている、とユアン達はいっていた。
ならば、それを支えていたであろう楔を解放すればどうなるのか。
そのまま二つの世界が互いに近づき、融合し一つの世界にもどるのか、
それともまったく関係ない世界として独立してゆくのか。
そうなったときにきになるは、大樹の存在。
大樹の発芽なくしては、どちらの世界も確実に衰退、否、消滅してしまうであろう。
マナの感覚はエルフと違い、しいなにはつかめないが、だからこそ気になるものは気になってしまう。
もっとも、だからといって精霊との契約をやめる、というのは文字通り、
そのままクルシスにくみしてしまう、ということでもあり認められるものでもないのだが。
「バラバラになったあとの世界のことだろ?どうせだったら、俺様はキュートなハニーがたくさんいるほうが…」
「…あんたにきいたあたしが馬鹿だったよ!」
ゼロスのおちゃらけた台詞に本気でどなっているしいな。
「まあ、どちらにしてもやってみなきゃわかんねぇだろうが」
「真理ね。たしかに。次はアスカ…ね。たしか、アスカは以前、リンカの笛の音色でやってきたのよね?」
あのとき、ジーニアスがミトスから預かっていたという笛をふくとともに、
ダメモトでジーニアスにいってみたらもののみごとに精霊アスカが飛んできた。
そのときに、アスカにこうもいわれた。
自分を呼びたければ、リンカの木のもとで私をよべ、と。
「そういえば、あのときもおもったけど。精霊ってのは一つの場所にずっといるってもんでもないんだね」
ラティスとラズリ、という伝説の鳥ともいわれているシムルグの番の一体の背の上にて邂逅した精霊アスカ。
精霊といえばどうも一か所、すなわちマナの濃い場所にとどまっている、という概念があったが、
あのアスカはそうではなかったことをおもいだし、しみじみとそんなことをいっているしいな。
「たしかに。実に興味深い存在だわ。何とか捕獲して調べることができれば…
エミルに関しても調べてみたいけど、あの子、まったく要領得ないし…
やはり、あの子の場合は記憶を取り戻させるのが手ってり早いのでしょうけど……」
いまだにエミルが記憶喪失だ、とおもっているがゆえのリフィルの台詞。
まあ、記憶喪失、もしくは大樹の関係者なので世界世情に疎い、という可能性も高いが。
「あ、あんたねぇ!そんなことはさせないよ!コリンはそういうのが大っきらいだったんだからね!」
「わかってます。わかってるんだけど、学術的興味が……」
精霊に関しても興味があるが、しいなが呼ばない限り、精霊は決して姿を現さない。
最も、それは彼らにぽろり、といらないことを彼らがいいかねない…とくにどの精霊、とはいわないが。
それゆえにエミル…否、ラタトスクがいっているから、なのだが。
「はぁ。これでアスカが逃げ出したりしなきゃいいんだけどね。
まずは、リンカの木を見つけ出すところから、だよね」
「オサ山道のきりかぶは、まだ芽が新たにでた状態でしょうし。
やはり、リンカの木を探すのならば、人が立ち入らない、山の上のあたり、なのでしょうね」
そんな会話をしつつも、やがてようやく闇の神殿の入口がみえてくる。
と。
「もどったか」
『って、ボーダ(さん)!?』
なぜか外にでた直後にみおぼえのある姿が。
それゆえにその姿をみておもわず声をあげているロイド達。
「お前達から預かっていたレアバードの修理が完了したからな。
それと、…いや、これはまあいい。とりあえず、修理は完了した。
これにのって再びシルヴァランドに出向き、最後の精霊との契約を交わすがいい」
いいたいことだけいい、すたすたとリフィルに近づき、
修理しおわったレアバードの入ったウィングパックをリフィルに手渡し、
そのままくるり、と向きをかえ、その場をたちさってゆくボーダの姿。
「…とりあえず、リンカの木の群生地を探しましょう。全てはそれからよ」
リフィルのいい分は至極もっとも。
「ところで、エミルはどうするの?先生?」
いまだにエミルは戻ってきていない。
「そうね。気にはなるけど…今はこちらの用事を優先しないとね。
いつ、クルシスの妨害が入るかもわからないのだし」
エミルもたしかにクルシスに狙われているらしいが、だが、ともおもう。
それにしては、なぜかあれからクルシス側はコレットに関しても、エミルに関しても、
積極的にちょっかいをかけてはきていない。
エミルに関しては、ディザイアン達に捕らえろ、と命じていたようではあるが。
コレットのように直接に被害をうけたわけでもなく。
「まあ、エミルのことだし。またひょっこりと用事がすんだら合流してくるのではなくて?」
あのときもそうであった。
なぜか異界の扉で移動した自分達とはことなり、レネゲードに連れられてシルヴァランドにやってきていたエミル。
もしも、リフィルの推測通り、魔物達もまた世界を渡ることができるのならば、
エミルもまたそんな魔物達の力によって世界を単独で渡ることが可能なのかもしれない。
そう予測は立ててはいるがその予測は誰にもリフィルは話していない。
その予測が正しければ、まちがいなくエミルはやはり大樹カーラーンの関係者、ということになってしまうのだから。
だとすれば、自分達の旅に同行している意味がわからない。
否、判りたくないのかもしれない。
もしも、見極めるためにつかわされていた、とすれば…精霊がどのような判断を下すのか。
かの地…ラーゼオン渓谷にて精霊が下そうとしていた判断をリフィルは聞かされている。
それはすなわち…世界の、大地の一斉浄化……
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あとがきもどき:
薫:話しがあいかわらずすすんでない……ようやく次回でリンカの木~
ほとんどそろそろそれぞれの心情みたいなものをいれてみたり。
主にリフィル、ですけどね。
時代の語り部候補としても優秀であったリフィルだからこそ、いろいろと思うところはあるのですv
さてさて、ようやく精霊アスカ~それからそれぞれの決意表明もどき。
そこでようやく、サイバックの資料室だぁぁ!
え?それが何の意味があるのか?…ゲームやってるひとはわかります。
最近、その布石をまったくにおわせてなかったからなぁ…ふふふふふ……
2013年9月2日(月)某日
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