まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

今回の話しはあまりすすんでません。
ほとんど、本編(小説&ゲームストーリー)のままといってもいいです。
一部、異なる点もあるにはありますが。
まあ、つまり、副題のとおり、ストーリーは彼女のことのみ、です。
何はともあれいきます。

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「でもよ。世界を切り離したら俺様達もうあえないんじゃないのか?」
無事にきけば、氷の精霊セルシスウとの契約はすんだらしい。
ミトスの容体は安定しており、今現在は部屋にてねむっている状況。
全員があつまり食堂において今後のことを話しあっている今現在。
そんな中、ふとゼロスが気づいたかのようにいってくる。
「何で?レアバードで行き来すればいいじゃん」
そんなゼロスの疑問に首をかしげつつもジーニアスが問いかけるが、
「今はマナによって繋がっているからレアバードで移動できるけど。
  世界が切り離されても同じとは限らないわ」
リフィルがたしかに、といった様子でうなづきつつもいってくる。
「すると、マナを切り離した瞬間、二つの世界は永遠の別れを迎えることになるやもしれぬのだな」
確かにその可能性はなきにしもあらず。
それゆえにリーガルもしばし考え込む。
「最後の封印と契約するときが皆とのお別れってことなの?」
コレットが心配そうにいうが、
「しんみりするなよ。まだそうときまったわけではないだろ?」
そんなコレットに対し、ロイドがはげますようにと語りかけているのがみてとれる。
「まぁな」
たしかにロイドのいい分も一理はあるが、だからこそ、
「精霊研究の権威としてのアステル君の意見はどうよ?」
斜め前にと座っているアステルにとといかけているゼロスの姿。
「そうですね。もともと二つの世界は一つの世界であったのですから。
  別次元としてそのまま継続するか、もしくは繋がりがなくなって相互作用で両方の世界が消え去るか。
  どちらにしても、大樹が復活しないかぎりどちらの世界の存続もあやしいとはおもいますけど。
  気になるのはここしばらく、マナの流れがいっさいがさっさい検知されてないんですよね。
  かつてはマナがたしかに流れていっていたのに、今はしっかりとその場に固定されてますし。
  おそらく魔物達の増加などといった要因もあるんでしょうけど。
  やはり精霊ラタトスクをみつけるのも視野の一つにいれたほうがいいかと」
ずずっとだされているホットミルクをのみつつもアステルがいってくる。
まだ諦めてないのか。
そんなことをふとエミルは思うが当然それは表情にはあらわさない。
「お前があいたいだけだろうが。世界を創ったというその精霊に」
「でも、きになるでしょ?リヒターも」
そんなやり取りをしているアステルとリヒターに対し、
「もしかしたら、すでにレネゲードがその精霊と接触をとっているのかもしれないわね。
  彼らは何しろ大いなる実りを発芽させ、大樹を復活させようとしているのだもの。
  それほどの巨大な力、制御する精霊がいないままに復活させようとしている、とはおもえないわ」
伝説によれば世界そのものすらをも生み出しているという世界樹。
そんな巨大な力が制御するものがいない状態で発芽すればどうなるのか。
想像したくはない。
下手をすれば暴走し、大地そのものが破壊されつくしてもおかしくない。
そんな可能性すらありえるがゆえのリフィルの台詞。
最も、実際にはそこまで彼らというかユアンは考えが及んでいないのだが、
当然そんなことまでリフィル達はしるよしもない。
「しまったわ。昼間に彼らがやってきたときにそのあたりのことをきけばよかったわ」
昼間、どこからか彼らがもっているレアバードが故障した、というのをきいたらしく、
まあ、聞いたのは十中八九、エグザイアのものから、であろうが。
でなければ知るはずがない。
あのとき、シルヴァランドからテセアラに向かう途中で、レアバードが壊れてしまった、などということは。
「そういや、今は足がまったくない状態なんだよな~」
結局のところ、壊れたレアバードなどをそのまま彼らに託したがゆえに、今現在、
一行の足はといえばエレメンタルカーゴのみといってもよい。
最も、エミルが魔物を呼び出せばそれが足になりえる、という注釈もつくのだが。
と。
ドッンっ。
そんな会話をしている最中。
突如として突き上げるような衝撃がおそいくる。
「地震だ!」
まるで地鳴りを含んだかのような揺れ。
みれば周囲の客も驚きあわてて外にでるもの、もしくは机の下にともぐりこむものと様々。
ガシャン!
みればカウンターのほうで何かが壊れるような音が。
揺れに応じてたなにおいてあった品々が床におちてどうやら割れているらしい。
つん、としたお酒の匂いが部屋の中にと充満する。
リフィルにいわれ、それぞれが机の下へ。
「…最近、多いね」
ここ最近、数日に一度は必ず地震が起こっている。
短い時間のもあれば、長いときもあり、突き上げるような場合と、横にゆれる場合と。
その呟きはロイド達一行でなく、他の客がもらしたもの。
誰ともなくつぶやかれたその言葉をきき、しばし考え込みつつも、
「マナの流れを分断していることと関係あるんじゃないのかしら。
  ヴォルトとウンディーネのマナを断ち切ってからしばらくして地震がおこったわよね」
あのとき。
たしかに地震がおこった。
このような地震が頻発するなど、いまだかつてなかったといってよい。
精霊と契約を交わし始め、正確にいえば互いの世界の精霊と契約を交わし始めてではなかったか。
リフィルのそんな言葉にたいし、
「世界を切り離すという大事業だ。大地も道の出来事の反応して地震の一つも起こすのだろう」
リーガルもしばしかんがえこむようにしておもわずつぶやく。
「それより、これからどうすんだ?先生?あと残りはシャドウとアスカとルナだっけ?」
残されし精霊は、シャドウとアスカ、そしてルナ。
「たしか、アスカはルナと一緒でなければ契約をしない、といっていたわよね。
  オリジンとも契約をしたいのは山々だけど、オリジンの石板があるというかの地に入れるかどうかは」
エルフ達が許可してくれるかどうかすらあやしい。
それでなくてもあのときの彼らの…族長以外の態度は自分達には非協力的であったのは記憶にあたらしい。
「シャドウ、ということは闇の神殿ですね。あそこはブルーキャンドルが必要になりますし。
  今はブルーキャンドルちょうど切らせてますし、一度、サイバックの精霊研究所に戻る必要がありますけど」
アステルがもっていた蝋燭は今ちょうど切らしているらしくそんなことをいってくる。
「ふむ。ならばこの時期は定期便としてここフラノールからアルタミアに向けての便がある。
  アルタミラからならばサイバックにむけて船がでていたはずだからそのようにしてはどうだ?」
アルタミラそのものには入りたくはないが、そうはいってはいられない。
まあ、そのまま港から乗り継いで行けばあるいみ問題ないがゆえのリーガルの台詞。
「その便に私たちものれるのかしら?」
いいつつ、ちらりとゼロスをみ、
「そういえば、あなた、たしか指名手配が教皇からかかっているとかきいたけど……」
「あっちもどうにかしないと面倒だしな。あとで王都によってもいいか?」
「…仕方ないわね。これ以上、下手に無意味な刺客を放たれてもこまるもの」
しばし、そんな会話がここ、フラノールのとある食堂として解放されている一角においてみうけられてゆく……

光と闇の協奏曲 ~アリシア・コンパティール~

「アリシアの仇は一体どこにいるんでしょうか……」
ぴくり。
船にのり、ふともらしたプレセアの台詞にリーガルが反応する。
「アリシア?今、アリシアといったのか?」
「リーガルさん、プレセアの妹さんは殺されたそうなんです。
  妹さんが奉公していたというブライアンという人に」
「あ~。コレットちゃん。何もいまそんな話しをここでほじくり返さなくても……」
リーガルの問いかけにコレットが説明するが、そんなコレットに対しゼロスがつづく。
「妹…そうか。プレセア。お前の妹の名は?」
うすうすはおもっていた。
だが確証というか自分から聞けなかった、ただそれだけ。
面影はたしかにある。
だからこそ…そろそろ自分も裁かれるべきなのかもしれない、とおもう。
いくら公式に無罪となったとしても…罪は罪、なのだから。
そんなリーガルの想いをしるはずもなく、
「アリシアです」
「…そうか」
「?リーガルさん、何かしってるんですか?」
このメンバーの中で理解していないのはおそらくコレットくらいであろう。
だからこそコレットが首をかしげてといかける。
しいなとゼロスは真実をしっている。
アステルにしろリヒターにしろ然り。
ロイドは以前アルタステに聞かされその真実をしっている。
「……その殺人鬼に心当たりがある」
「本当ですか!?」
その言葉にプレセアが目をみひらく。
しばし、そんなプレセアをみつつ、目をつむったのち、意を決しゆっくりと目をみひらき、
「ああ。…ちょうど、今からアルタミラにむかうところだ。私も今度は町にはいる。
  …私をアルタミラへつれていってくれるか」
愛するものの家族に裁かれる。
それしかこの罪のつぐない方法は彼、リーガルにはわからない…
「ところで。アリシアのことはどこで話しをきいたのだ?」
リーガルが問いかけるがゼロスはうかない顔。
「レザレノカンパニーっていう会社の空中庭園のお墓だよ」
そんなゼロスに変わり、ロイドがこたえる。
船はゆっくりとではあるが確実にアルタミラにむかっていっている。
船内放送であと少しでアルタミラ港に到着する、とさきほど連絡があったばかり。
他にも客は乗り合わせており、それぞれが思い思いの場所で時間をつぶしているらしい。
ここ最近はなぜか魔物の襲撃が海路でもぱたり、ととまり、
それゆえに普通にこうして海路を通じた船も通常通りに運行ができている。
大概、海路を進む場合、魔物が嫌う、という特殊な品を海に流しつつ進行しているのだが。
念のために一応はその方法をとっているらしいが、しかし今現在、彼らにとって気になるのはそこではない。
気のせいかどうかわからないが、確実に地震のあと、何かがかわっていっている。
強いていえば、まるで大地そのものが動いているかのごとくに感じているのもまた事実。

アルタミラの空はすみわたり、照りつける太陽もまたさほどかわりがない。
「相変わらずここは暑いなぁ」
船から降りたちロイドが思わずつぶやく。
今まで雪の街にいたがゆえに余計にその温度差がよくわかるといってもよい。
額に浮いた汗をグローブでぬぐいつつ、ふと横をみればコレットの鼻の頭にも小さな汗の粒がひかっている。
「コレット。大丈夫か?疲れてないか?」
「ううん。大丈夫。でも、なんだかいろいろとあったよね。
  シルヴァランドにいって、またもどってきて」
リフィルが差し出したハンカチにて汗をぬぐい、笑みをうかべていうコレット。
たしかにいろいろとあった。
リフィルの失踪?から、まさかシルヴァランドに戻り、あるいみ里帰りもできた。
「まあ、一番忙しかったのは、しいなさんかもしれませんね」
そんな彼らの会話に加わり、アステルがそんなことをいってくるが。
「え?いや、あたしは……」
しいながいいよどむが。
「イフリートにシルフ。ちゃんと契約できたもんね!やっぱりしいなはすごいね!それにセルシウスも!」
にこやかに笑みをうかべつつ、なぜかぱちぱちと手をたたくコレット。
「……ありがと。まあ、シルフは三姉妹だったからそれなりに大変だったけどさ…
  イフリートのほうは…あれは…ねぇ?」
「…本気であのとき、エミル君、何やったんだい?おまえさんは……」
何しろいきなりエミルが、しいなたちにはわからない言葉でイフリートに話しかけだしたかとおもうと、
その場にてなぜかイフリートが台座?らしきものに正座をし、そのまま、しいな達は別の部屋へと、
別なる魔物の手により導かれ、それから何がおこったのかみていない。
なぜかぐったりとしたイフリートが契約を交わす、といいだし、いわれるままに契約をかわしたあのとき。
結局、何がどうなったのかいまだにわかっていないのもまた事実。
エミル曰く、ちょっとした話しあいをした、とはいっていたが。
どうみてもちょっとした、状態ではなかったとおもう。
切実に。
しいなの言葉にゼロスもあのときのことを思い出し、おもわずその視線をエミルにむけるが、
「?何かあったんですか?」
ミトスはそのときのことをしらない。
聞かされていない。
ゆえにただ首をかしげるしかない。
「ミトス。まだ少し顔色がわるいわ。たぶんいきなり暖かいところにきたせいね。
  とりあえず、はやく空調設備もととのっているレザレノカンパニー社にいきましょう。
  そこのロビーでミトスはすこし体を休めているといいわ」
熱は下がったとはいえいまだ、ミトスの顔色はどちらかといえば青白い。
それゆえにリフィルがそんなロイド達の会話をさえぎりいってくる。
港からエレメンタルカーゴもまた出ているらしく、それに乗り込み目指すはレザレノカンパニー本社。

なぜか異様な空気がたちこめている。
いつもはにぎわっているはずなのに、社はなぜか静まり返っている。
いるはずの従業員達の姿がみあたらない。
怪訝におもいつつも、とりあえず建物の中へ。
と、エレベーターホールの前に警備員らしき人物が倒れているのがみてとれる。
「な、なんだ?何があったんだ!?」
周囲に満ちる間違えようのない血臭。
「どうした、何があったのだ?」
倒れている男性にかけより、助け起こすロイドの横でリーガルがといかける。
みれば男性は口から血を流している。
「…おお。申し訳ありません。リーガル様…とめることが……」
「しっかりしろ」
「エクスフィアブローカーのヴァーリが中へ……ジョルジュ様が…庭園に……こ゜ぷっ」
「しゃべってはだめ。今、回復術をかけるわ」
大量に血を吐いているのをみれば、よくよくみればおおきく何かに切り裂かれたような傷が。
リフィルがあわててかけより、すばやく回復術をほどこしてゆく。
淡い光が男性の体をつつみこむが。
「先生……」
「どうなのだ?」
心配そうなコレットと、そしてリーガルの問いかけに。
「傷がかなり深いわ。…私はしばしここで回復術をかけています。
  彼を傷つけた人のこともきになるわ。ロイド、あなた達はそっちのほうをおねがい」
「わ、わかった、先生、無理はしないでくれよ?」
「ゼロス。手伝ってもらえるかしら?」
「へいへい。リフィル様の仰せのとおりに」
リフィルとゼロスによる同時回復術。
「ジョルジョさん、ってたしか、前、話ししたあの人だよね?」
「庭園、といってたよな?だとすれば屋上か?」
「頼んでいいか?二人とも」
「まかせて。…できるだけのことはしてみるわ」
警備員のこともきにかかるが、今はそれよりも屋上にいるというジョルジョのことがきがかり。
それゆえに。
「ゆこう。…ヴァーリがゆくとすれば、おそらく、ジョルジュがいる空中庭園だろう」
なぜ、リーガルがジョルジュのことをしっているのか、という疑問はおこるが。
しかし、ロイドとコレットはすこしばかり首をかしげたのみで、
「ああ、いこう!」
「…ヴァーリ!」
無関係なものにまで手をかけている。
それがプレセアには許せない。
だからこそ思わず声に力がこもる。
リーガルがエレベーターの扉を開き、目的の階のボタンを押す。
ゆっくりと確実にエレベーターが屋上にたどりつく。
と、空中庭園のあるほうから聞き覚えのある声がロイド達の耳にときこえてくる。
「答えろ!トイズバレー鉱山の奥につづく鍵は何がキーワードになってるんだ!?」
聞き覚えのある声。
それとともに、
「しらぬ」
「この声…ジョルジュさんだよ?!」
その声をきき思わずジーニアスが叫ぶ。
みれば、噴水の前でみおぼえのある恰幅のいい体格の男性にといつめられている初老の男性が。
屋上にもうけられている空中庭園。
その中心部にある噴水の前で、体格のいい男性…ヴァーリに問い詰められているようにみえるのは、
たしかに以前、ロイド達にアリシアの墓のことを教えてくれたジョルジュに他ならない。
「てめぇ!」
ヴァーリがいいつつもジュルジュの首元をつかみ、そのまま襟首をもったままもちあげる。
「やめろ。私が教えてやる」
そんな彼の様子にリーガルが声をかける。
リーガルの声に驚いたのか、はっとふりかえるヴァーリ。
どうやら驚いたのはヴァーリだけではないようだが。
「リーガル様!?なぜこちらへ!?」
「へ。ちょうどいい。会長自らがおでましか」
ジョルジュをはなしつつも、どさり、とそのままほうりなげ、下卑た笑いを含んでいってくる。
そんなヴァーリの言葉に、
「…会長?」
「どういうこと?」
意味がわからずロイドとジーニアスは顔をみあわせる。
「あのロックは私の声紋と角膜照合のみでひらく。無理にこじあければ鉱山全体が崩れるだろう」
そんな二人の疑問をさらり、と無視し、淡々と説明しているリーガルの姿。
「…そういうことか。ならば力づくでも協力してもらうしかねぇな。
  エクスフィアが採掘できなきゃ、こちとら商売あがったりだ。扉をあけろ!」
「断る。それにロディルは死んだ。お前の卸す大量のエクスフィアを買い取るものはもういないのだ」
そんな淡々というリーガルの台詞に嘲笑をうかべ、
「は、バカが!ロディル様がしんだとしても俺には教皇様という後ろ盾がある。
  エクスフィアの買い手ならいくらでもいるんだよ!」
そんなヴァーリに対し、
「黙りなさい」
プレセアが怒りをあらわにしてヴァーリを睨みつける、
「罪のない人を殺そうするあなたを許すわけにはいきません。私は…」
プレセアがいいかけるとほぼ同時。
刹那。
ヴァーリの真横に白煙がたちのぼる。
「く、くちなわ!?」
しいなが叫ぶ。
煙の中から姿をみせたのはかつての仲間。
「くちなわ…あんた、この男の仲間だったのかい!?」
だが、くちなわは答えない。
「あれ?…アクアにいってつれていってたはずなのに、逃げだしたか」
たしかにアクアは彼らに引き渡しをした、といっていた。
にもかかわらずここにいる、ということは里を抜けだした、ということであろう。
自らどんどん首を絞めていっていることに当人は気づいていないのであろうか。
否、間違いなく気づいていない。
ただ盲目的に復讐、という意味のないものにとらわれ。
その復讐すらも完全に逆恨みの何ものでもないものだ、というのに。
ふとその姿をみてエミルが思わずつぶやくが。
その呟きをきいたのは、この場においてはコレットとミトスのみ。
「はん。いずれ確実に国王は死に、教皇様の栄華となる。
  あの毒は簡単には解毒できないからな。その時はレザレノ・カンパニーなどにぎりつぶしてくれる!」
何やら捨てゼリフのような、しかも聞き捨てならないような台詞をいったのち、
そのまま、あらわれたくちなわとともに白煙の中にときえてゆく。
しばし唖然とするものの、はっとしたかのように、
「大事ないか?ジョルジュ」
ジョルジュにかけより、といかけているリーガルの姿。
そんなリーガルにたいし、
「はい。リーガル様」
そんなリーガルにたいし、礼をとるジョルジュ。
さすがに怪訝におもったのであろう。
「なあ、会長ってどういうことだよ?」
いまだに理解していないロイドがリーガルにたいし問いかけるが、
「私はリーガル・ブライアン。陛下より公爵の位を頂いたレザレノ・カンパニーの会長だ。
  もっとも、神子は御存じだったようだがな」
それとほぼ同時。
どうやら遅れてやってきたらしい、ゼロスがちょうどこの場にとたどりつく。
「あ、先生、あの人は?」
「もう大丈夫。あとは安静にしていれば大丈夫よ。ちょうど他の人がきたから、
  彼らにあとはまかせてきたのだけど……何があったのかしら?」
屋上にきてみれば、何やらいいあうこえと、それと空中にたちのぼる白煙。
近づいてみれば、リーガルが何やら自分の名らしきものをなのっているところ。
それゆえにリフィルが周囲を見渡しつつもといかけるが、
「ありゃま。自分から名乗ったのか。まあな。前に王女の誕生日パーティーで見かけたことがあるしな」
どうやら自分の正体というか名を彼らになのったらしい。
ゆえに首をすくませつつもゼロスがリーガルの言葉に応じるように答えてくる。
「リーガル・ブライアン、じゃあ、アリシアの仇のブライアンというのは……」
「え?あ、あれ?まさか、リーガルさんが?」
プレセアとコレットが呟くとほぼ同時。
傍らの墓に埋め込まれているエクスフィアが弱弱しく輝きはじめる。
それと同時、その真横にうかびあがるように透けたとある人影が出現する。
「アリシア!」
うっすらとすける姿を現した妹にプレセアが思わずかけよる。
「…姉さん、ありがとう。リーガル様をつれてきてくれて……
  リーガル様…消えてしまう前にあえて…よかった……」
透けたその姿は悲しそうでいてそれでいてはかない笑みを浮かべている。
「アリシア……すまなかった…死してなお、それはお前を苦しめているのだな……」
それが意味することを察し、リーガルがおもおもしくつぶやく。
わかっていても破壊できなかった。
この石に彼女の魂が吸い込まれている、そうしったからこそ。
「いいんです。リーガル様は悪くない……」
「どういう…こと?アリシア?どういうことなの?あなたは、いったい…」
意味がわからず、戸惑いの声をあげるプレセアの呟き。
あなたは、この人に殺されたんじゃなかったの?
そんな言葉を言外に含めたプレセアの問いかけ。
「…アリシアと私は…愛しあっていた」
リーガルがぽつり、とつぶやく。
「それを、執事である私が勝手にでしゃぱり、無理やりに引き離してしまったのです。
  身分違いだと…愚かなことを……」
あのときはそれが最善だ、とおもっていた。
それゆえにジュルジュは深い後悔の色をうかべうなだれる。
しかし、後悔してもあとのまつり。
彼のした結果、少なからず一人ならず幾人もの死人がでたのもまた事実。
「…アリシアはヴァーリに引き渡された。奴はアリシアをつかってエクスフィアの実験をするつもりだったのだ」
リーガルの言葉は重いが、その言葉には怒りがこもっている。
いつも、表情を表にあらわすことのないリーガルにしては珍しいほどに。
「それって…もしかして、クルシスの輝石をつくる、という実験ですか?」
コレットがとあることに思い当たり思わずといかける。
それは、プレセアがほどこされていた実験とおなじもの。
人為的にクルシスの輝石を…ハイエクスフィアとよばれしものを作りだすという実験。
「どうやらそのようだ。しかし、実験は…失敗した…」
あの日。
リーガルはヴァーリを待ち続けていた。
ふと、あの日の…悪夢の…あの日のことが思い出される。

海に突き出した土地は細長い地形でここまでは観光客もはいってこない。
それゆえにこの場を指定した。
「ヴァーリ!遅いではないか!」
ようやく現れた男が一人なのをみてとり動揺する。
「アリシアはどうした?私を疑っているのならば無用のことだ。
  約束する。鉱山はかならずくれてやる。だからアリシアをかえしてくれ!」
「ごちゃごちゃとうるせえな、ああ、かえしてやるさ。
  あんな失敗作はこっちから願い下げだ!」
吐き捨てるように言い放つと同時、どこからともなく悲鳴のようなものがきこえてくる。
その悲鳴はだんだんと数が大きくなってくる。
わ~、きゃ~、化け物!
などという声。
その声に思わずそちらのほうをふりむけば、異形のものがゆっくりと近づいてきている姿がみてとれる。
しかし、なぜだろう。
なぜだか、わかる。
否、わかってしまった。
信じたくはない、だけども、信じざるをえない。
「まさか…アリ…シア…なのか?」
震えるリーガルの声。
「はん。よくわかったな。そうさ。そいつがアリシアだ。
  そいつはエクスフィア実験に適合しなかったんだよ!
  こいつの家族…姉のほうはうまくいってるのに何がいけなかったんだか」
いいつつも、
「ち。人があつまってきやがった。そういや、こいつをつれていた奴らは…何してやがったんだか」
素直に船にのらなかったがために、そのまま袖の下をつかい町の中にと招き入れた。
しかし理性を失ってしまった彼女はそのまま本能のままにその破壊活動を強いられた。
正確には、連れていたヴァーリの手下が攻撃をしたから闘争本能に火がついたといってもよい。
「血がついてやがる。こいつを招き入れたことがわかると面倒だな。
  とにかく返したからな。鉱山の件はわすれるな!」
ヴァーリがいい、そのままいつのまにか真下にやってきていた船にとのりこむ。
「まて、ヴァーリ!」
リーガルがおもわずおいかけるが、すでに船はヴァーリをのせたまま出発してしまっている。
「…リーガル様…私を…殺してください……」
ふと、目の前にあらわれた異形のものから聞き覚えのある声がリーガルの耳にととどいてくる。
「で、できぬ!」
その長い手にはべっとりとした血がこびりついている。
先ほどの悲鳴といい、ここにくるまでどうやら誰かを害してしまっているらしい。
が、誰が好きこのんでいくら異形と化したといっても愛するものを手にかけたいとおもうだろうか。
「できぬ…わがてでお前を殺すことなどできぬ!!」
この姿になったもの。
噂ではきいていた。
エクスフィアを身につけたものがときおりこのような異形のものとなることを。
そのものはやがて周囲に害を及ぼす魔物となりはてて、止めるには殺すしかない、と。
だけど、できるはずがない。
「愛しているお前を殺すことなどできぬ!必ず、必ず元の姿にもどす方法があるはずだ、だから!」
「…リーガル様…愛しているからこそ…あなたにとどめをさしてほしいのです。
  はやく、私の意識があるうちに、私の意識がなくなりあなたを殺してしまわないうちに!
  おねがい…リーガル様……」
それは苦痛の選択といってもよい。
いまだに異形と化したものを元にもどせる方法がみつかったとはきいたことがない。
噂ではとじこめていてもその鋭いツメで扉や牢などすら切り刻み、
抜けだし、周囲に破滅をまき散らす存在となりはてる、という。
「おねがい…私が、私でいられるうちに…意識が…もう……」
わかっている。
わかっているのだけど理性が、感情がおいつかない。
このまま、彼女を生かせていても彼女の為にはならない、ということを。
まだ、誰かを手にかける前ならばどうにかできたかもしれない。
しかし、それはおそらく無理からざること。
みれば彼女の手だけでなくいくつも返り血らしきものがとびちっているのがみてとれる。
ガァァァァァ!!!!!!
ふと、その瞳から理性の色という光がきえ、叫び声とともに、そのまま突進してくる。
しばし目をとじ、迷っている時間はないことを瞬時に把握する。
今、自分がすべきこと。
彼女を愛している、だけども自分は…この街の人々を護る責任もある、のだから。
だからこそ…リーガルは、意を決し、愛する怪物を真正面から受け止める……

空中庭園の墓の前にてアリシアは透ける体をたもちつつ、静かにほほ笑む。
「リーガル様は私をたすけるために私を殺してくれたの。
  それしか方法がなかった…すでにあのとき、私は人を数名…手にかけてしまっていた。
  あのままだと、私の意識とはうらはらにもっと人をあやめていたはず。
  そんな私をリーガル様は止めてくださったの」
意識があるのに、体がいうことをきいてくれない。
悲鳴をあげる人々。
自分が殺した、という生々しい実感。
逃げて、という言葉すらならなかったあのとき。
「……マーブルさんと…同じだったんだ……」
ジーニアスが当時のことを思い出し、おもわず涙ぐむ。
あのときも、方法がなかった。
あのときはまだ知らなかった。
人に戻す方法があるのだなどということを。
エミルがあのとき、ドア夫人であるクララを元に戻すことがなければ同じ結末を迎えていたであろう。
「リーガル様…最後にあえて本当によかった。もう思い残すことはないわ。
  だから、リーガル様、もう自分を責めるのはやめて」
「しかし…アリシア…私は…お前を……」
そんなリーガルの言葉にふるふると首を横にふる。
「私はもうすぐ消えてしまうから…私に心配の種を残させないでください。
  その手の戒めがなくても、リーガル様は十分に苦しんだはずです」
姿を見せられたのは同じ質をもつエクスフィアが近くにあったことが一番大きい。
声をかけたくとも、声はリーガルにはとどかなかった。
姉のエクスフィアと自分のエクスフィア。
もっとも、同行者の中で約一名、どうみても人あらざる気配をもっているものはいるにしろ。
残りのものは人でいて人でない、ということくらいしかわからない。
しかしわかるのは自分とあきらかに同質に近い、ということくらい。
「私は…愛するお前を手にかけた。これは私の罪であり、バツだ」
アリシアにいわれてもリーガルは自分を許せない。
許すことができない。
ロイド達と旅をしていて、異形と化したものを元に戻す方法がある、そうしった今はなおさらに。
彼女を保護していれば彼女は死ぬことなく、生きていたであろう。
リフィルの力を借り、彼女は元気な姿にもどっていたであろう。
そう、おもってしまえばしまうほどに自分自身が許せない。
彼女を手にかけた自分自身が。
「そんな罰はもういりません!お願い…リーガル様……」
しかしアリシアからしてみれば、それは仕方がなかったといえる。
自分で自害すればまだここまで愛する人に苦痛をもたらすことはなかったであろう。
が、あのとき、アリシアはそれをしなかった。
それはあるいみわがまま。
どうせ助からないのならば、リーガルの手で、とおもったのもまた事実。
少なからず、自分を手にかけることでずっと自分のことを忘れずにいてもらえるかもしれない。
という思いがなかった、といえばウソになる。
彼の気持ちが本気なのは知っていた。
全てを投げ出してでも自分とともにあろあとしていた彼をしっているからこそ。
「・・・・・・・・・・・・・・」
幽霊…精神体になってまでそういってくる愛しい女性にいわれてもリーガルは自分が許せない。
そんな中。
「……俺も、ジーニアスも同じような想いを味わった。それに…想像してみたんだ。
  俺の父さんも……化け物になった母さんを手にかけたときに苦しんだんじゃないかって……」
にげなさい、ジーニアス、ロイド。
あのときのマーブルの声はいまだにロイドの耳にのこっている。
化け物、とよんだあの姿が、マーブルが変化した姿だ、などとはゆめにもおもわなかった。
クヴァルに聞かされた、母の真実。
マーブルと同じように、異形と化した母を父が殺した、というその事実。
しかも、その事実が自分を…まだ子供であった自分を人質に、というのだから余計に苦しい。
自分がいなければ、もしかしたら、とおもってしまう。
過去は変えられない。
しかし、過去に学ぶことはできるはず。
「…お前達も?それに…お前の父親も…そうだった、のか?」
それはリーガルにとっては初耳。
ミトスはただそんな光景をただじっとみているのみ。
自分がもたらした行動がおこしている結果。
今までは姉を蘇らせるための些細な犠牲にすぎない、そうおもっていた。
犠牲なくして成果はえられない、そうわりきっていた。
「…そう、きいている。父さんやあんたがやったことが正しかったかのかどうか、それはわからない。
  俺だってわかんないんだ。知らなかったとはいえ、マーブルさんを……
  だけど、これだけはいえる。思うんだ。俺の母さんだって、マーブルさんだって。
  父さんや俺があんたみたいに自分を罰して生きることは望まないんだろうって」
正確にいえばマーブルは自ら自爆、したのだが。
しかし彼女を傷つけたのは事実なので、ロイドからしてみれば同じこと、ととらえている。
事実、自分がマーブルを殺してしまったも同意語、なのだから。
あのとき、自分達がマーブルに接触をもたなければ彼女はあのような目にはあわなかった。
それだけは確信をもっていえるから。
「ええ。そのひとのいうとおりです。少なくとも私は…そんなこと、望んでなどいない」
「……わかった。私はお前に、お前とロイドに誓う。
  この手を二度と無駄に命をあやめる道具とはせぬ。
  そしてエクスフィアで命をもてあそぶものたちを打倒したとき、この戒めをはずすことにしよう」
リーガルのそんな誓いにアリシアは嬉しそうにほほ笑み、
「リーガル様、ありがとう。リーガル様…姉さん・・・・私、ようやく逝けそうよ。
  最後にお願い。私がエクスフィアになりきってしまう前に結晶を破壊して」
そんなアリシアの言葉にじっときいていたプレセアが驚いたように思わず、
「そんな、どうして!?このままではだめなの!?」
叫ぶようにいいかえすプレセアの言葉に首を横にふりつつ、
「このままだと、私は永遠に生きてしまう。しゃべることもできず、ただぼんやりとした意識のまま。
  この自らの魂が宿った結晶が壊れるそのときまで…未来永劫ずっと…それは、地獄だから。
  意識があっても話すことも、声をかけることも何もできない、ただみているだけ。
  そんなの…生きている、とはいわないわ。だから……お願い……」
「でも……」
わかっている。
アリシアは死んだのだ、と。
ここにいるのは、石に閉じ込められているアリシアの魂だけなのだ、と。
それでも、声を交わすことができる。
父もいない、唯一の肉親たるアリシアまで失うことにプレセアは耐えられない。
「お姉ちゃん。リーガル様を恨まないで。お願いよ?お願い、私の意識があるうちに、
  私が私でいられるままに、どうか逝かせて……」
「プレセア。リーガル、どうする?」
ロイドが二人にと問いかける。
「…アリシアを…解放してやってくれ……」
それは苦痛にみちた声。
再び愛する人を殺してしまう、というそんな悲痛なる声。
「そうですね。…アリシア…さようなら……」
「ありがとう。お姉ちゃん、リーガル様……」
ロイドがゆっくりと前にと進み出る。
が。
「エミル?」
そんなロイドのゆくてをふとさえぎる。
みればなぜか墓とロイドの前にエミルがたちすくむ。
「人のこれ以上の勝手な想いでこの子達まで巻き込まないでほしいのが僕としての本音かな?」
それは真実。
この子達は勝手に人に利用されているだけだというのに。
そのまま、墓にうめこまれている石をすっととりはずす。
と。
ふわり。
とエミルが何もしていないのにほのかに石が淡い光をかもしだす。
それはアリシアにも予測ができなかったらしく、驚きに目を見開いているのがみてとれる。
エミルの口が何やらうごいているようにみえるが、それが何を意味しているのかロイド達にはわからない。
『このままでは、あの人間達がお前を殺しかねないが、お前はどうしたい?』
それは問いかけ。
我が子たる精霊石へのといかけ。
『…ラタトスク様…』
直接に触れたからこそわかる。
自分達の王であることが。
『我が力をもってして本来あるべき微精霊に変化するもよし。再び眠るもよし』
それは一瞬の会話。
まばたきするほどの光りの点滅の間に交わされた会話。
刹那。
赤と緑の入り混じった光が周囲を覆い尽くし、次の瞬間。
エミルが手にしていたはずのエクスフィアは光りとともに粒子となって空気中へとかききえてゆく。
「……あ……」
捉われていた感覚がすっとぬける不思議なる感覚。
いうなれば枷が外れた、といったらいいのだろうか。
それゆえに思わず戸惑いの声をあげるアリシア。
自力のみでの具現化はもうあまり期待できそうにない。
「……ありがとう。私だけでなく、あの石も救ってくれたんですね…ありがとう…
  …ずっと、みまもってるから。お姉ちゃん。それに…リーガル様、どうか私をわすれて幸せに……」
きらきらとした光がアリシアをつつむこむ。
「「アリシア!!」」
「さよう…なら……」
光とともにアリシアの姿がかききえる。
チチチ。
庭園にやってきたらしき小鳥の声のみが周囲にと響き渡る。
やがて、
「…今まで、何も告げずにすまなかった。私は罪人だ」
ロイド達を見渡し、頭をさげてくるリーガル。
「リーガル様はアリシアを手にかけた罪を告白し、自ら出頭されたのです」
ジョルジュがリーガルをかばうかのように説明をする。
「まあ、裁判で無罪になったのも事実だけどな~」
ゼロスの言葉に。
「ってあんたきづいてたのかい!」
「俺様としてはなんでおまえさんが気づかなかったんだ、といいたいぞ?しいな。
  リーガル・ブライアンの名はいろんな意味で有名だろうが」
「ぐっ」
いわれてみれば、それらしきことを幾度かゼロスからいわれたことがあったような気がする。
ゆえにしいなはだまるしかない。
「そういや、なんで俺様を暗殺しようとしてたんだ?あんたは?」
「…神子の暗殺とひきかえに、ヴァーリを捕らえる、と教皇が約束したからだ。
  今の神子の奔放ぶりはあまりにひどい。教会の威厳に、テセアラの威厳にかかわる、といわれてな」
「…げ」
「ああ。つまりこいつの自業自得、と」
リーガルのことはにゼロスが一歩あとずさる。
そんなゼロスにおかえし、とばかりにしいなが言い返す。
「しかし…私はどうやら完全にだまされていたらしい。アリシアの裁きを受けはしたが、
  私には昇華できぬ想いがある。たのむ。
  お前達が私を砂漠のは、エクスフィアで人の命をもてあそぶクルシスを倒してからにしてほしい」
そんなリーガルの言葉に、
「もちろんだ。俺達と一緒にクルシスを倒して大樹を復活させようぜ!
  俺達はもうリーガルを仲間と思っていたわけだし」
「ちょっとまってよ。僕達はいいけど、プレセアはどうなのさ?」
ロイドの言葉をさえぎり、ジーニアスが気遣わしげに質問をかえす。
ジーニアスの言葉にしばし言葉をつまらせたのち、
「…ヴァーリはアリシアの仇でもあったんですね。判りました。
  私も…あなたを仇とは思わないようにします。…すぐには無理かもしれませんけど」
「…すまない……」
「…アリシアの最後の頼み、願いだから…もう、何もいいません」
何ともいえない重苦しい雰囲気。
「そういえば。エミル。お前さっき何やったんだ?エクスフィアが光になって消えるなんて?」
「あの子はただ自然に還っただけだよ?そもそも勝手に人が無理やりに利用して、
  さらにはあの子達を害だときめつけて殺そうとするのが僕としては許せないんだよね」
それは事実。
「だけど、エクスフィアが人の命を奪ってるのもまた事実だろ?」
「そうしたのは誰さ?君たち人でしょ?あの子達は普通なら人に寄生なんてしないよ?」
それは冷めきった声。
本当に人はいつの時代もろくなことをしない、とおもう。
「…あなたにとっては、魔物だけでなく、エクスフィア…鉱物であるエクスフィア。
  意思をもつものが全て平等なのね」
前々からおもっていたが、リフィルがため息とともにいっくてる。
「当然でしょ?まあ変なことをしでかすのはいつも大体人でしかないですけどね。
  まあ、他にもこまったことをしでかすものはいるにしろ」
いい例が今ここにかつてやってきたリピングアーマーの彼であろう。
まあ、再び干渉をしかけてきている以上、ひとまずあちら側に繋ぎはとってみたが。
こちらに任す、といわれているのもまた事実。
ゆえに別に躊躇するつもりはさらさらない。
「そういえば。先生。あの倒れていたひと、もう大丈夫なんですか?」
ふと、コレットが思い出したようにとといかける。
「ええ。きになるようなら、あとでお見舞いにいくといいわ」
「?ミトス?どうかしたの?」
ふと、じっとその場にたちすくんでいるミトスにきづき、ジーニアスが気づかいつつも声をかける。
ミトスの顔色はこころなしか悪い。
「まだ体調が完全でないんでないの?大丈夫?」
「ううん。平気。エクスフィアって……怖いものなんだね」
「そうだね。石の中に意識があって何もできない状態で石が壊れるまでの永遠を過ごす…か。
  それってもう生きている、とはいえないよね。人の意識があれば狂ってしまいそう。
  アリシアって子が解放を望んだのも…僕、何となくだけどわかるかな……」
「そう…だね……」
ジーニアスの言葉にそう、としかいえない。
しかし、気になるのはやはりエミル。
エミルの言い回しはまるでエクスフィアの本質をしっているかのようないいまわし。
ミトスですらセンチュリオン達からきき、エクスフィアが本来は人には寄生するはずがない。
というのを聞いていたから知っていたにすぎない、というのに。
「そういえば、あのヴァーリって人、きになることいってなかった?
  たしか【あの毒は簡単には解毒はできない】とか何とか。何かしてるのかな?あの人」
「「「あ」」」
たしかにいっていた。
つまり、それが意味することは。
「もしかして、また毒殺とか考えてるのかもしれませんね。教皇」
「か~、こりねぇなぁ。しかし、こりゃ、様子をみにいったほうがいいかもしれないな。
  今、もし国王陛下に何かあれば、まちがいなく王女殿下にも害がおよび、
  きづいたら教皇のやつが国王に、ともなりかねないしな。そうなると厄介なことになる」
エミルの言葉に今さらながらに思い出し、同時に声をあげているアステル達。
以前にも毒殺を企てていることをしっているゼロス達からしてみればこりない、という言葉につきるが。
万が一、あの教皇が国王にでもなれば、今以上に人種差別どころか、
人体実験なども推奨されかねない。
それでなくても、今現在、教皇の命において秘密裏にそういったことが常に行われているのだから。

しばし、何ともいえない空気がその場を満たしてゆく……


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あとがきもどき:
薫:えっと…他のも平行してメモにかいてたら、これどうだったかな?とかおもってしまう汗
  みるかぎり、ケイトのイベントはこれ、やってなかったよな?
  というわけで(まて)ケイトのイベントと教皇のイベント。
  やはり、順番的にはケイトのほうが先でないとストーリー的に…というわけで(?)
  次回はまずは研究所vようやくそこまでたどりついた…先はながい…汗

2013年8月26&27日(月&火)某日

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