まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

今回の話しは意味がないです。
フラノールさん…イベント、あるにはあるけど、
文章に起こすのはちょこっとめんどい…というか難しいですね…
まあ、フラノールにいきましたよー、という感覚でうけとめてください……

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「マーテルの念がどのような作用をするか、だな。
  どちらにしても、すでに種子にはもはや力は残されてはいない。
  薄い程度のマナはかろうじて作成できる力のみは残されているようではあるがな」
自らの分身をいれているからこそわかる。
「まあ、普通の木としてあのまま種子をけしてしまうのはしのびないから芽吹かせても問題はないが…」
どちらにしても、とおもう。
今のままではまた人は愚かなことを繰り返すであろう。
「さて、お前達の意見は?」
すでにこの場には精霊全てが具現化している。
今、エミルがいるのはユミルの森の奥深く。
以前に精霊達を一斉に呼び出した場所。
「たしかに。このままでは世界を元にもどしたとしても、ヒトは愚かなことを繰り返すばかりでしょうな」
しみじみというマクスウェルの言葉に嘘はない。
「我は今のところここでしか、もしくはラタトスク様の御力を借りてでしかこちらに具現化することができないが。
  しかし、たしかに、ヒトは愚かなことを繰り返すであろう。
  ラタトスク様が大樹カーラーンを蘇らせたとしても、愚かな人はその力に目をつけかねない」
それこそ圧倒的な力をもつその世界樹を、人が、とくにあのテセアラのものたちがほうっておく、とはおもえない。
今現在、シルヴァランドにはそういった勢力陣がないのでそちらの心配はあまりないといえばないが。
何しろ人や魔物ですら平気で生体実験をしているお国柄。
世界樹に手をだしても何らふしぎではない。
「今のまま何も説明しないままであれば、あのロイド達は今ある大いなる実りのみに目をむけ、
  そちらを芽吹かそうとするであろう。どちらにしてもあの種子から芽吹いたとしても、
  それは世界樹のようでいて世界樹であらず。薄いマナしかうみだせない樹木にしかなりえない。
  そこまで人の魂によって穢されていたからな。かなり力も削がれていたし。
  ほんとうに人とはどこまでも愚かでしかない」
そんな精霊をたばねし、マクスウェルやオリジンの言葉をききつつ、ため息をつかざるをえない。
「では、どうなさるのですか?ラタトスク様?」
「ふむ。今、我が考えているのは……」
「ああ。それだとたしかに。でも今のままでは普通に芽吹きませんよね?あの種子。
  ラタトスク様の御力がない以上は」
「めぶかないな」
「でも、マーテルがあの種子に融合しかかってるんでしょう?
  あのマーテルの性格なら、命がうしなわれかけてる、といったら自分がその命のかわりに、
  とかぜったいおもって自らの命をつかってでもめぶかせようとするよね。きっと」
「その結果、何がおこるかすら考えない、というわけですか?アクア?」
「あのこ、そこまでぜったいに深くかんがえないとおもうんだよね。
  そもそもさ。種子をまもりたいがゆえに、その精神を種子に移したという時点で考えがない、というか。
  それこそ自分の魂のありかたを変えてしまいかねないというのをあれ失念してたとしか」
たしかにのほほんとしたところはあったが、深くかんがえなかったのもまた事実。
彼女の性格はアクアがよくわかっているつもりである。
それゆえの台詞。
「あなたは…人のことならばよくみているのに、ああ。アクアは自分もにているからよくわかるのですね」
「どういう意味よ!テネブラエ!」
「おや?だれもあなたが、思慮がたりないとかいってませんよ?」
「いってるじゃないの!」
「おまえら、すこしだまれ」
「「も、申し訳ありません……」」
「まあ、今のアクアの意見もたしかに一理ある。というか確実にそうするだろうしな。
  そうなった場合、お前達精霊の力をも悪用しようとする人がでかねない。
  ゆえに、新たな界をつくりお前達の力をこちら側にて制限させようとおもうのだが。
  それと、センチュリオン達の神殿は完全に地下深くに隠し、絶対に人がたちいれないようにする。
  時に、マクスウェル」
「何ですかな?王?」
「以前、人が愚かな争いをしはじめたときに決めたことなのだが、今でもそれは可能か?」
「ああ、あなた様の御力をわが力を媒介し、別なる物質にかえて、器を構成する、というものですか?」
「そうだ。そうすることにより、ヒトはマナ、という力から目をそむけることになろう。
  そもそも、ぱっとみためは、物質を構成しているのは、お前のつかさどりし分子、
  すなわち粒子の集合体、ととらえるしかないのだからな」
「その場合、すべての命から一度、マナを切り離す必要があるが…まあそれは問題なかろう。
  なに、千年もあれば全ての命から一度マナを切り離し、あらたに構築しなおすことは可能だしな」
「問題はないかと」
「あらたにもう一つの惑星をつくる。そこをお前達、精霊達の拠点とする精霊界とする。
  この惑星と精霊界をつなぐ空間もあらたに構築すれば問題はなかろう。
  お前達の一部ともいえる分霊体にてこの地のマナを管理するようにはなるだろうが…
  それについての意見はあるか?」
「私たちは王がきめられたことならば従います」
「それで?ラタトスク様?ふたつにひきさかれてる大地をもとにもどすにしても、どのようにしてもどすの?」
「引き裂かれる前の状態でよかろう?すでにその予定で、
  お前達との契約をあの人間達がすますたびに大地には手をくわえているからな」
そう。
すでに手はわくわえてある。
それにヒトがただ気づいていないだけ……

光と闇の協奏曲 ~雪の街フラノール~

ぼんやりとした灯りが空間を照らし出す。
「ここは?」
飛行都市エクザイアに現れた、リフィル曰く、通称、旅の扉。
そこをくぐったさきは、どこかの部屋らしき場所らしく、といっても周囲をみてみれば、
そこは人の手がはいっている洞窟のよう。
背後を振り向けば小さな青い光がゆっくりときえてゆくのがみてとれる。
薄暗い洞窟、といったらいいのかわからないが。
それでも、ようやくその薄暗闇にと目がなれてくれば、ぽんやりとした灯りの正体もおのずとわかる。
みれば、天井のいたるところから、つらららしきものがたれており、ところどころよくよくみれば、
壁も凍りついているのがみてとれる。
薄明かりの中ゆっくりとではあるが目がなれてくる。
「先生、ここ、どこなんだ?」
きょろきょろと周囲を見渡しつつ、リフィルにといかけているロイド。
そんなロイドに対し、
「私がしるはずないでしょ」
ぴしゃり、といいきる言葉に嘘はない。
「ロイド君よぉ。どう考えてもリフィル様がここがどこかわかってるはずないだろうが」
そんなロイドにたいし、呆れつつもいうゼロスに対し、
「いや、先生ならなんとなくわかってるような気がしてさ」
根拠のない台詞をいいきるロイド。
「…あいかわらず、何も考えてないよね。ロイドって……」
そんなロイドにたいし、あきれた口調でいっているジーニアス。
「それより、こんな狭いところにいつまでもいるより、外にでない?」
実際、この空間はさほど広い、というわけではない。
むしろ、十人以上もいることにより、かなり空間的にはせまくなっていたりする。
背後から声をかけられ、はっとふりむけば、いつのまにかエミルが、
その真下にあったはずの青い渦のような水たまりがあった場所にたっているのがみてとれる。
「たしかに。エミルのいうとおりね。…それにしても、ここはどこなのかしら?」
先刻の動揺もまだ収まりきらない、というのにそれでも、子供達の前で動揺するわけにはいかない。
それゆえに気丈にふるまうリフィルはさすがというべきか。
先刻の母親の一件でいまだに内心は動揺している、というのにもかかわらず、である。
たしかにエミルのいうとおり。
ここでいつまでいてもどうにもならない。
すでにおそらく道であったであろう水たまりのようなそれはきえており、
ここからでていかけなればどうにもならないのもまた事実。
「でも、どうやってここからでるのかな?」
「壁に灯りがともってるから、この灯りをたよっていけば出口にいけるんじゃないのかな?」
たしかに。
いわれてよくよくみれば、誰もいないはずの壁だ、というのに。
材料に何をつかわれているのかはわからないが、青白い光をやどした水晶、
のようなランプ?のようなものがみてとれる。
それはきちんとした間隔にて壁にまるで設置されているかのごとく、
その灯りをたどってゆけば、その先に細い道らしきものがみてとれる。
「何があるかわからないわ。とりあえず、私とリーガルが先にいきます。
  幅的にどうやら二人が限度、みたいだしね」
道幅はさほどなく、かろうじて大人二人がすれ違えるか否かという程度。
どちらにしてもこのままここにいてもしかたがない。
それゆえに、ひとまずリフィルのいい分もあり、どこにつながっているかわからないが、
出口を目指してすすんでゆくことに。


辺り一面銀世界。
それはまさにこういうことをいうのであろう。
どこまでつづくかわからない洞窟。
その洞窟をぬけ、ようやく太陽の光りがみえてくるとどうじ、
まばゆき光がそれぞれの視界にととびこんでくる。
薄暗いところからいきなり明るいところにでて、一瞬それぞれ目をほそめるが、
やがて視界がなれてくると、それぞれにとびこんでくるは、周囲を覆い尽くす雪景色。
雪をみて一瞬顔をしかめたゼロスの様子にロイド達は気づかない。
きづいたのはしいなとリーガルのみ。
「うわ~。すごい雪~」
「なんか、イセリアでたときのことを思い出すな」
彼らがイセリアから旅だったときも常に雪が降り積もっていた。
それゆえにそんな感想をいっているコレット達。
もっとも、それはイグニスの影響によって反属性のマナの転換が起こっていたゆえなのだが。
そんなことをロイド達がしるよしもない。
「ここは…マナの測定値が示すところによると、ここはフラノール地方、ですね」
洞窟の中で常にマナの測定値を起動させていたアステルが機械に示されたマナの数値をみていってくる。
アステルのもっているマナの測定値にはそれぞれの地方のマナの数値が保存されており、
その測定値の変動によって自らがどのあたりにいるか簡単にではあるがしることが可能となっている。
最も、それはアステルがレアバードを手にいれる前までは重宝していたが、
もっぱら乗り物を手にいれてから後はさっさと空を飛んで位置確認をしていたがゆえに、
最近ではあまりそういった分野で使用することはまずなかったのではあるが。
「…?なんかどっかできいたような??フラ?」
その言葉にジーニアスが首をかしげる。
かつて、ノストロビアの毒に侵された人物をたすけるときにいったリフィルの台詞。
フラノール地方にしか生息していない魔物。
それを思い出し、しかし完全にはおもいだせずにジーニアスが首をかしげるが。
「…フラノール地方…ここが、そう、なのね。
  ジーニアス、この地方はおそらく、あのヒッカリ蛙の生息地よ」
「え?たしか、イズールドのベルグさんが触れてしまった魔物さんですか?」
コレットがその記憶をたぐりよせ、首をかしげつつもといかける。
「アステルのいうことが事実なら、このあたりにもあの蛙がいるかもしれないわ。
  というわけで、むやみやたらに魔物などをみても手をふれないように、いいわね?
  特にロイド!あなたは昔からかわったものとかみたらすぐにつかまえてるからよくいっておくわよ」
「うげ。そりゃないよ。先生、名指しかよ…」
リフィルにいわれ、がっくりとするロイドではあるが。
「?ミトス?どうかしたの?」
ふとみれば、ミトスがその場にたちつくしたようにしてうごいていない。
それにきづき、ジーニアスが心配そうに声をかける。
「まさか、また体調がおかしくなったとか?大丈夫?熱とかない?」
おろおろしつつ、ミトスの顔をのぞきこむが。
「え?あ、ううん。大丈夫。ただ…寒いからびっくりしただけ」
そう、それはありえないはず。
無機生命体化し、周囲の外気温などを感じなくしていたはずだ、というのに。
なぜに寒さを感じるのか。
それがミトスには理解不能。
肌に触れる風がとても冷たく肌寒いところかすこし痛い。
「ペンギニストフェザーでつくった上着もらっててよかったですね。
  でないとたぶん僕達、ここで凍死してたかもしれませんね。あはは。
  どこで何が幸運するかわかりませんねぇ」
にこにこと、何やらとてつもなく物騒なことをいっているアステル。
「…アステル。それは笑っていうことではないとおもうぞ。俺は……」
そんなアステルにたいし、リヒターがため息まじりにコメカミに手をあておもわずつぶやく。
「たしかに…寒い…のでしょうか?これが寒い……肌が何だかちりちりします」
「しかし。ここはフラノール地方、として、雪がふっていないのは……」
フラノール地方は雪が降っていないことのほうがめずらしい。
もっとも、異常気象において雪がことごとく溶けてしまっていたのもまた事実なれど。
ここ最近はその異常も収まっていたはず、なのに。
「そういえば、雪がふってませんね。でも、マナの数値はくるってませんよ?
  むしろ、安定してますね。…やっぱり以前にはなかった火のマナもきちんとあるようになってるし」
反属性を担うマナはかつてまではなかったが、とある時期を境に安定した落ち着きをみせている。
シルヴァランド側にしろ、テセアラ側にしろ調べた結果、数値が完全に安定している。
確実に何かがおこっているのはわかるが、それが何なのかいまだにアステルにはわからない。
もっとも、予測はついてはいるが。
地の精霊ノームのいっていたことを推察するに、かつての大樹の精霊が目覚めたがゆえに、
マナが安定している、とみて間違いはない、とはおもう。
いまだにその精霊がどこにいるかまではつきとめはできないにしろ。
アステル達はしるよしもない。
探しているその精霊が常に自分達のすぐそばにいる、というその事実を。
「あ。なんかあっちのほうに街みたいなのがみえる」
周囲をきょろきょろとしていたコレットが、視界の先に街らしきものをみとめ、
その手を目の前にかざしつつもそんなことをいってくる。
ロイド達の視界には街らしきものはみえないが、コレットの視界はその姿をみとめている。
「街…ですか?そんなものはみあたりませんが……」
困惑したようなプレセアにたいし、
「とにかく、いってみましょう。コレットは天使化の影響で目がかなりよくなっているみたいだし」
それこそ遠くのものがよくみえるほどに。
「…で、ロイドは何をしてるの?」
ふとみれば、かかんで何やら雪をつかんでいるロイドの姿。
よくよくみればその手には雪の塊がもたれていたりする。
「…まさか、ロイド、こんなときなのに雪合戦とかしようとしてないよね?」
じと目でそんなロイドをみてあきれたようにいっているジーニアスに対し、
「雪合戦?わ~。たのしそう」
にこやかに何やらいっているコレットではあるが。
「リフィルさん。遊びたい人はほっといて、先に街があるというほうこうにいきません?」
そんな彼らをさらり、とながし、にこやかにリフィルにいっているエミル。
「そうね。あまりここに長いするわけにはいかないものね。
  日が暮れる前に街につく必要があるもの」
空はすでに夕暮れ時を示しており、このままここにいても真っ暗になるのは明白。
いくら何でも雪の中、野宿をするのはこのましくない。
「フラノールなら、たしか腕のいい医者がいるはずだよ。
  ついでにコレット達の調子をみてもらうのもいいかもね」
しいながそんなことをいってくる。
事実、シルヴァランドでは医者にみてもらったとはいえ、油断は禁物。
「何だったら、僕達のレアバードで街まで往復しましょうか?」
空間転移機能がなかったがゆえに、リフィル達のレアバードは故障しているものの、
使用しなかったアステル達のレアバードは一応無事。
「…そうね。なら、アステル、ミトスをつれてってくれるかしら?」
「なら、あたしもいくよ。医者の場所がわかっているのはあたしのほうが詳しいからね」
リフィルの台詞にしいなが名乗りをあげる。
「え?でも、ぼく……」
ミトスが何やらいいかけるが。
くしゅんっ。
それと同時、ミトスの口から盛大なるくしゃみがもれいでる。
自らがくしゃみをしたことにおどろき、ミトスが驚きの表情をうかべるものの、
「私たちは雪には慣れているけど、おそらくミトスは慣れていないでしょうし……」
伊達にしばし異常気象による雪に悩まされていたわけではない。
それに、先日のこともある。
かといってコレットのみをいかせるのもクルシスのこともあり不安がある。
「風邪はひきはじめが肝心なんだよ。というわけで、アステル、おねがいするよ」
「了解。リヒターもいいよね」
「…はぁ。お前はいいだしたらきかんからな」
「え、えっとあの……」
ミトスが戸惑いの声をあげるものの、どうやら話しはまとまったらしく、
アステルがウィングパックをとりだし、その場にレアバードを出現させる。
「いくぞ」
「え?あ、あの、ちょ……」
ひょいっとミトスをだきかかえ、有無をいわさずにのりこませているリヒター。
「ついでに宿を確保しておいてくれたら助かるわ」
「了解です~。さて、んじゃあ、フラノールの街にむけて、出発~」
アステルの言葉とともに、アステルの後ろにのりこんだしいなともども、
四人がのった二機のレアバードが上昇し、そのまま音をたててその場からとびたってゆく。
「なあ、先生?なんでミトスだけ先にいかせたんだ?」
そんな彼らをみおくりつつも、素朴なる疑問をといかけるロイドに対し、
「あら?風邪のひきはじめの子をこの雪の中あるかせるわけにはいかないでしょう?」
至極もっともな理由。
「でも、姉さん。風邪なら、たしか前にのこってたユミルの果実とかいうのでどうにかなるんじゃ?」
ふとジーニアスが不満そうにそういうが。
「それより、早くいきませんか?何ならどの子かよびますけど?」
さらり、というエミルの台詞にしばしその場にいる全員…コレットを除くが、
しばし顔をみあわせてゆく……


雪の街、フラノール。
常に雪が降り続き、外に軽装ででれば凍死する、とまでいわれている街。
もっとも、ここしばらくつづいた異常気象の効果か以前より気温はましになったといえるのではあるが。
「ようこそ。ここは雪の街、フラノールだよ。観光かい?めずらしいね。
  まだ雪祭りは始まってないけど、それとも、祭りに参加する予定での滞在かい?」
コレットのいうとおり、しばし道らしき道…というのも、しばらくすすんでゆくとなぜか、
道、なのであろう。
ご丁寧にきちんと除雪され、周囲に雪の壁ができている道らしき場所をすすんでゆくことしばし。
やがてその視界の先に街らしきものがみえ、気になるはその街の周囲のいたるところに、
雪の塊らしきものが数多とおいてあるのが目立つこと。
「雪まつり?」
その言葉におもわず顔をみあわせているロイド達。
「そういえば、そろそろ祭りの時期か。この時期だと今は準備期間か」
一人、納得がいったらしく、リーガルがそんなことをいっているが。
「??」
その意味はロイド達には理解不能。
「ロイド君達が不思議がってるだろうが。えっとな。
  ここ、フラノールは年に二度、雪まつりっていうものを開催してるんだよ。
  雪をふんだんにつかった彫像などをつくって、その出来栄えをコンテストで競う御祭さ。
  レザレノ・カンパニーが主催しているだけあって、優秀者や上位者にはそれなりの景品と、
  そして賞金があたえられる。ここ、フラノールは雪にはことかかないからな」
何やら乗り物らしきものでいくつかの場所に雪をかき集めている光景すら視界の端にみてとれる。
そんなゼロスの説明に、
「…きいたことが、あります。フラノールの雪まつり。
  雪を観光にできないか、というのでレザレノ・カンパニーが率先しておこなったとか」
思い出すようにプレセアがそんなことをいってくる。
そんな彼らの会話をききつつ、
「祭りがはじまって十数年。そろそろ二十年目に突入するからね。
  おかげで街の名物にもなっていて、最近では観光客だけでなく、
  参加するためにやってくる人達もふえてきてね。まだ受付は行われているはずだから。
  もしも参加するつもりがあるなら登録してきたらいいよ。
  もっとも、参加費は必要だけど、でもさほどかからないよ。
  まあ、雪をあつめるためとかに必要な機械類がいる場合は別料金でレンタルされてるけどね」
どうやらこの時期、訪れるものたちに説明する役目のものがいるらしい。
慣れた様子で街にはいったロイド達にと説明してくる街の人。
よくよくみれば、胸に雪祭り実行委員会、とかかれているワッペンがつけられているのがみてとれる。
「雪ってでもとけるんじゃないのか?」
しごくもっともなるロイドの疑問。
「ああ。たしかに普通ならそうですね。もっとも、雪がやんでいる今ではそうおもうかもしれませんが。
  本来なら、このあたりはこの先の氷の洞窟にいるといわれている氷の精霊の影響で、
  常に雪に覆われているんです。もっとも、少し前までの異常気象で、
  観測史上、初めて雪が解けた時期もありましたけどね」
雪が綺麗さっぱり溶けてしまい、人々が驚いたのが記憶にあたらしい。
やれ、氷の精霊に何かがあったのではないか、といろいろといわれたが。
結局のところ国が調べた結果でも原因はわからずじまい。
雪がやんだことにより、またあのような異常気象になるのでは、という不安が人々の間によぎっているここ最近。
それを払拭すべく、このたびの雪祭りはいつもより街は力をいれている。
それをしっているのは、この場ではゼロスとリーガルのみ。
当然のことながらシルヴァランドからきているロイド達がそんな事情を知るよしもない。
「もしも、参加するなら、そこの先の協会にて受付をしていますので。そこで登録してくださね」
石像をつくる場所とその広さはその登録料によってきまってくる。
広さと場所により、登録料は様々。
場所をきにしなくてもいいのであれば、百Gから登録参加は可能。
「氷の精霊ってこのあたりにいるのか?」
そんなロイドの問いかけに。
「王立研究院が唱えている説は、この先にある氷の洞窟に氷の精霊はいるそうですよ?
  もっとも、その精霊にあったものは皆無、らしいですけどね」
事実、研究者達がかの地にでむいても精霊にであった、という話しはきかない。
そもそも、いるとおもわれし場所にいくためには地底湖が存在しており、
その先にある祭壇にいってもマナが豊富なれど精霊の姿をみたものは皆無。
ほいほいと姿をみせている土の精霊があるいみで特例、といっても過言ではない。
「氷の洞窟…ね」
リフィルがしばしその台詞をきき考え込む。
「ともあれ、ようこそ。雪の街、フラノールへ。
  最近小さな地震が群発的におこっているので観光客の皆さんがきてくださるのは歓迎いたします」
今までこれほどまでに連続して地震がおこる、ということなどなかったというのに。
ここ最近、小さな地震が連続してよくおこっている。
以前の異常気象といい、何かおこる前触れなのではないか、と人々の間に不安は広がっている。
街の入口でそんな説明をうけたのち、一行は街の中にと足をふみいれる。
雪がやんでいるとはいえ、周囲は完全に雪景色一色になっており、
人々の姿も多くはないがそこそこにみてとれる。
「で?とりあえず、どうします?たぶん、アステルさん達が宿をとってくれているとはおもいますけど」
首をすこしかしげつつもそういうエミルに対し、
「この時期は臨時の宿屋となる民家も多々とあるから、そちらのほうにいっているかもしれん」
リーガルがそんなことをいってくる。
「ずいぶん詳しいのね」
リフィルがそんなリーガルにいうが、
「すこしな」
それだけいい口を閉ざすリーガルの姿。
「りとあえず、教会にいってみませんか?先生?」
「そうね。たしかに。コレットのいうことも一理あるわ。皆それでいいわね?」
どちらにしろ、優先順位的にはきまっていないのだからして、その提案に意義を唱える必要性も感じない。
結局のところ、一度、一行はこの街の教会にと赴くことに。

「こういっちゃなんだけど、教皇様は何をかんがえておられるのかねぇ?」
教会にはいり、初老の女性にはなしかけると、何やらそんなことをため息まじりに話しかけられる。
「?」
「おや。あんた達はまだしらないのかい?
  何でも神子様がこの国を裏切ったとかいって手配を教皇様がおかけになったんだよ。
  だけど、その直後に雪がぱったりとやんでねぇ。
  皆不安なんだよ。かつてのようにスビリュツュアの惨劇が起こるんじゃないかって。
  まったく、神子様が裏切るようなことなんてあるはずがないのに。
  以前の歴史がかたるように神子様を陥れようとしている前触れなんじゃないかってね」
神子、という言葉にその視線がおもわずコレットとゼロスに向かうロイド達は間違ってはいないであろう。
「噂ではそれとともに突発的な地震も増えている、というしね。まったく、国王様も何をお考えになっているのやら。
  …って、こんなことをいっていたら不敬罪といわれるわね。いけないいけない」
「手配…ねぇ。ついに手段を選ばなくなってるってことか?あのひひ爺は」
おもわずぽそり、というゼロスの言葉にはあきらかに嫌悪の感情が含まれている。
そのような手配書がでてのち、発生している数多の地震。
さらには地面がハゼ割れたりしていることもあり、人々は天界の裁きが再び起こりかけているのでは。
と疑心暗鬼になっている。
そのために、今現在の国王、そして教皇に対し、人々の間に不信感が産まれているのだが。
そのことにすら教皇自身は気づいていない。
また、国王も国王で権力争いに巻き込まれるのはまっぴらとばかりに傍観の姿勢をとっている。
もっともそのような事情を民がしるよしもないのだが。
「ようこそ。教会へ。本日はどのような御用件でしょうか?
  祭りに参加でしたら、そちらの受付で手続きをお願いいたします」
祭壇の前にいるこの教会の神父、なのであろう人物がそんなことをいってくるが。
示された場所には雪祭り受付、とかいてある一角があるのがみてとれる。
すでにほとんどのものが登録は済ませているのであろう。
受付係とおもわしきものがぽつん、といるのみで、その前にはあまり人の姿は見当たらない。
「そういえば、リーガル。このたびの参加記念は何がくばられてるんだ?」
ふとゼロスがきになったのか、リーガルにと問いかける。
なぜリーガルに問いかけているのか、という意味はロイド達にはわからない。
「このたびの参加記念はグミセットのはずだが…
  ちなみに優勝者には百万ガルドと、いくつかの品の中から選べる形式となっている」
どうもこの口ぶりから自分の正体がゼロスには気づかれている、とはわかるが。
自分からわざわざそれを説明するつもりはさらさらない。
ゼロスの問いかけに淡々とこたえるリーガルに対し、
「え?それって、登録するだけでもしかしてもらえるの?」
参加記念、というのだから、もしかしたら、とおもい、ジーニアスが問いかけるが。
「うむ。参加費を払えばその場でうけと……」
「姉さん!僕達も参加しようよ!グミセットだよ!グミせっと!」
「金額にもよるわよ」
「ランクにあわせグミセットの組み合わせもたしかかえてあるとはおもうが」
ちなみに、最高ランクの千ガルドに関してはミラクルグミやトリートも含まれる。
「まあ、内容を受付で確認してからでもいいんでないかい?俺様はちなみにパス。
  はやいところ暖かい宿にいくことをお勧めするね」
ゼロスはそういうが、
「雪まつりってどんなことをするんですか?リーガルさん?」
「うむ。それぞれが参加費をはらい、そして割り当てられた場所に雪像などをつくる祭りだ。
  その出来栄えや評価によって順位がきまる。
  雪だけでなく氷などをも使用することが許可されているが、基本、
  雪、もしくは氷でのみ作成することが義務付けられている。
  去年は雪不足で開催ができなかったがゆえに今年はいつもより規模が大きくなっているはずだ」
去年は異常気象のせいで、史上初ともいえる雪がことごとく溶けてしまっていた。
「何やらこの先の会場をみにいってみればよいだろう。
  おおがかりなる作業ならばおそらくすでに開始されているだろうからな」
事実、この祭りに情熱をむけているものもけっこうおり、
中には城を再現し作成するものまでいたりする。
まあ、一番はりきっているのが実は王立研究院のものたち、という事実があるのではあるが。
そこまでリーガルが説明するすじあいもない。
「…まあ、興味があるなら、説明だけでもきいてみれば?」
エミルの言葉に、
「ロイド!いこうよ!」
「あ、おい、まてよ!ジーニアス!」
「何か面白そう!私も私も~」
何やら受付のほうにかけってゆく子供三人。
「…元気だなぁ」
そんな三人をみてぽつり、とつぶやくエミルに対し、
「あら、エミル、あなたはきにならないの?」
「必要性を感じないし」
それに何より、自分が参加するとなれば、絶対にセンチュリオン達まで介入してくる。
それはもう確信をもっていえる。
特にテネブラエやアクアなどは自分の姿の像をつくりかねない。
もしくは自らの像などを。
視界の先では受付のものから説明をうけているロイド達の姿がみてとれる。
「とりあえず、僕達は先にきているであろうアステルさん達と合流すべきだとおもうんですけど」
「それもそうね」
どちらにしても、ミトスの様子もきにはなる。
エミルの至極もっともな意見にリフィルもうなづき、他のものもしずかにうなづかざるをえない。
何しろさきに、この街にはアステルとリヒター、そしてしいなとミトスがきている、はずなのだからして。


「大丈夫か?」
ふと、登録をすませ、外にでると、そこにうずくまる一人の人。
結局のところ、いつのまにか全員分の登録をロイド達はしたらしく、
区画はひとまず四つほど購入、したらしい。
それでもまあ、手にいれたグミの中にミラクルグミが三つほどなければ、
まちがいなくリフィルの御小言がまっていたであろう。
ある意味で不要な出費、といえるのだから。
教会をでるとともに、前から歩いてきたであろう人物がいきなりその場にうづくまる。
その光景に驚き、おもわずその人物声をかけているロイド。
「どうかしたんですか?」
うずくまる人にたいし、コレットが心配そうにとといかける。
そもそも、自分達が外にでたとたん、その場にうずくまれば気になる、というもの。
「すいません…マの気にあてられてしまったようです」
ロイド達が傍により、安否を確認すれば、うずくまる男性から発せられた言葉はロイド達の聞き覚えのないもの。
「マの気?」
その言葉をきき、おもわず顔をみあわせているロイド達。
「ええ。あなた方はもしや、闇の装備品をもっていませんか?」
「闇の装備品?どっかできいたような……?」
「以前、たしかアステルさんがいってた品物じゃないかな?
  たしか、リフィルさんがトイズバレー鉱山でイビルアイを拾ったとおもったけど?」
以前、パルマコスタにて、アステルがロイド達に闇の装備品のことは説明をしている。
それをロイドはすっかりどうやら失念しているようではあるが。
ついでにいうならば、トリエット砂漠において別なる装備品もすでにエミルは手にしている。
ただの残留思念という端末にすぎないがゆえにいまだに手は加えていないにすぎない。
「これのことかしら?」
荷物の中からイビルアイを取り出したリフィルに対し、それをまじまじとみつめ、
「ええ。そうです。あなた方がおもちのそれ。魔瞳イビルアイは闇の装備品と呼ばれています。」
うずくまっていた男性が起き上がりつつもいってくる。
「あんたは一体……」
ロイドの呟きに、
「申し遅れました。私はアビシオン。マを狩る一族の生き残りです」
いいつつも、挨拶をしてくるアビシオン、となのりし男性。
「俺はロイド。仲間と旅をしている途中だ」
ロイドの言葉に続き、
「マを狩る一族ってどんなことをする方々なんですか?」
きになったらしく、コレットがそんなアビシオンにとといかけているが。
「それにはまずは説明からしなければなりませんね。
  かつて、このテセアラを支配しようとしたネビリム、という男がおりました。
  男はやがて一人の剣士に倒されましたが、その怨念は彼の装備していた九つの武具に宿り
  そしてその怨念は剣士の子孫を呪っているのです」
「おっかねぇな…」
その言葉をきき、おもわず一歩退くロイド。
「以前、アステルに聞いたのと少し違うわね」
アステルに聞いたのは、子孫を呪う云々、まではなかったはず。
それゆえにリフィルがかつてアステルにきいたことをおもいだしつつぽそり、とつぶやく。
「マを狩る一族、とはそのネビリムを倒した末裔のことです。
  私の蚊損は皆、闇の装備品の呪いで命を落としました」
淡々と説明してくるそんな男性の言葉に、
「そんな……」
「ひどい……」
コレットとジーニアスが言葉を失い、何やら絶句しているが。
「…何とか、ならないんですか?」
プレセアの至極もっともな疑問の言葉をうけ、
「方法はあります。全て武具を一か所に集めて封じてしまえさえすれば、
  我が一族にかけられた呪いはとける、といわれています。
  私も死にたくはないので装備品を探してはいるのですが……」
そういう男性にたいし、
「だから、いきなり闇の装備品のことをあなたはきいてきたのね?」
そういうリフィルの言葉にはいまだに多少の警戒の色が含まれている。
「ええ。ですが、呪いの進行は思ったよりも早く、私もネビリムのマの気にあてられて……
  もうこの体では装備品を集めるのは無理なのだろう、と半ばあきらめかけていたところです」
そういいため息をつくそんな男性にたいし、
「ねえ。ロイド、助けてあげようよ」
「そうだな。どうせ今も闇の装備品を俺達はもっているんだ。俺達で残りも集めてやろうぜ」
コレットの言葉に誰に相談することもなく、勝手に話しをすすめているロイド。
「いいんですか?」
「ドワーフの近い、第二番。困っている人を見かけたら必ず力をかそう、だ」
そんなロイドの言葉をうけ、背後ではおもいっきりため息をついているリフィルの姿がみてとれる。
「おいおいおい。そんな暇があるのかよ?ロイド君よ」
おもわずあきれたようないうゼロスの言葉はおそらく間違ってはいない、であろう。
しかしそんな彼らの反応をさらり、と無視し、
「では、この剣とカギをもっていってください。
  闇の装備品はネビリムの意思を継ぎ互いに引き合います。
  この剣が反応する所にきっと闇の装備品もあるはずです。
  装備品を集め終わったらフラノールへもどってきてください。
  これは、魔剣ネビリム、そしてネビリムの鍵、といいます。
  装備品はこの鍵でしかあけられない宝箱の中に封印されている、ときいています」
一本の剣と鍵らしきものがロイドにと手渡される。
それとともに、プレセアの頭痛もひどくなる。
「…闇の装備品の呪いはマを狩る一族の人以外にもかかるんでしょうか?」
この頭痛が闇の装備品と関係しているのか、はたまた体調によるものか。
それを見極めるためにもきかずにはいられない。
「いえ?それはないはずですが?」
そんなプレセアにたいし、首をかしげるネピリムではあるが。
「どうしたの?プレセア?」
「いえ、何でもないです」
プレセアの様子に首をかしげ、といかけているジーニアス。
「よし。それじゃあ、まっててくれよ。アビシオン!」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「…まったく。勝手に話しを引き受けて」
そんな会話のあと、アビシオンもまた教会の中へとはいってゆく。
どうやら教会に用事、があったらしい。
アビシオンを見送ったあと、リフィルがあきれたようにロイドにたいし言い放つが、
「でも、先生。ほうっておけないだろ?」
「今はそれよりも優先すべきことがあるでしょう?まったく…」
「それより、ミトス達に合流しないと」
どちらにしても、彼らと合流してからでないと意味をなさない。
すくなくとも、このまま外にいれば全員が風邪をひきました、ともなりかねない。
一般的な思考からはそのようにうけとれる。
それゆえにそういうエミルの台詞はおそらく間違ってはいないであろう。
「そうね。とりあえず、医者がいるという病院にいって、彼らがどこにいったかきいてみましょう」

氷の精霊が南にいるとかいないとか。
精霊がいるという噂をあてにして出かける愚か者が後をたたなくて。
おかげで常に遭難者の捜索に駆り出されています。
街の人々の様々な意見。
苦笑せざるを得ない、というのはこういうことをいうのかもしれない。
宿がどこにあるのか確認しがてら、街の人に話しをきけば、
精霊が住まうといわれている洞窟のことをきかされたが、
その洞窟にいくたびに常に遭難者がでている、というのだからあるいみ呆れもしてしまう。
「軽い風邪のひきかけ、だそうですよ?」
すでに宿は満室であったらしいが、レザレノ・カンパニーの宿舎に案内され、
この時期、この宿舎は簡易的な宿屋も兼用となる。
宿舎ならば常に医者も滞在しているから宿泊するのはそこがいいだろう、というアステルの意見により、
この場に部屋をとっているアステル達。
ミトスを部屋に寝かしつけ、当人は問題ない、とはいっていたが、
さりげに渡した飲み物の中に睡眠効果のあるかなり強い睡眠剤をいれていたアステルはさすがというべきか。
ミトスをリヒターにまかせ、リフィル達を出迎えるためにおそらくは教会にまずはいくだろう。
そう判断し、教会にむかってゆく最中にリフィル達と合流したのはついさきほど。
まあ、一服もった、とにこやかにいったアステルの言葉に乾いた笑いを浮かべるしかできないものの、
「しかし、よくもまあ、あのミトスに薬がきいたよな?素直にのんだのか?」
ゼロスからしてみれば最もな疑問。
「きちんと飲んでもらうにはいろいろと方法があるんだよ?神子様。ふふ」
そういう笑みは何やら絶対にしでかした、というような感じをうける。
「少しきくけど、どうやったのかしら?」
「ああ。のんでくれないなら、口うつしで、と途中まで実行したんですよ。そうしたら、自分でのむって」
「あら。それいいわね。今度ジーニアスにその方法とりましょう」
「げっ!姉さん、本気!?」
「あなたは苦い薬とかのまず嫌いがあるからね。口うつしなら嫌でものむでしょう?」
「の、のむ!のむからそれはやめて!おねがい!」
それは心からの懇願。
「まあ、そんなことより。この近くに氷の精霊がいるっていうのは、事実なのか?アステル?」
精霊のことならばアステルに聞けばいい、というのはもはやロイド達の中では暗黙の了解。
そもそも、ここテセアラで精霊の研究においては一二を争うほどの知識がある、という人物だという。
もっとも、その容姿がエミルにそっくり、というのでいまだに違和感はあるものの。
専門知識があるものが近くにいるのだからきいてみて損はない。
「氷の精霊セルシウスですね。氷の洞窟とよばれるその先に中に地底湖があるんですけど。
  その先に祭壇があり、そこに住んでいる、といわれています。
  最も、いまだにその精霊の姿はみたことはないんですけどね。
  声は幾度かきいたことがあるんですけど」
毎回訪れてもいつも声だけで当事者の姿をみたことはない。
あまりにしつこく訪れるがゆえに、セルシウスからしてみれば牽制をしたにすぎない。
それをエミルはセルシウスからきいて知っている。
「その地底湖は常に湧水がでていることもあり、特殊な方法をとらないと、
  そこを超えることができないんですよね。必要なのはセルシウスの涙とよばれている品ですけど」
聞いたことのない名がでてきて思わず顔をみあわすロイド達。
一方、
「おいおい。セルシウスの涙っていえばかなり貴重品だろうが。
  わざわざ地底湖を超えるためにそれが必要なのか?」
さすがのゼロスがあきれたようにアステルにとといかける。
が。
「ええ。常に湧水の勢いが強くてセルシウスの涙くらいでないと地底湖を超えるのは難しいんですよ。
  かといって、船とかを浮かべるほど地底湖に余裕があるわけでもなく、
  ところどころ岩や氷がつきでているので船も危険なんですよ」
場合によっては氷の塊がうきでてくることもある場所。
そんな場所で小さな船などを使用して渡ろうとすればどうなるか。
冷たい水の中に放り出された人間がどうなるか、など考えずともわかること。
誰しも冷たい水の中に放り出され、溺死などしたくはない。
「まあ、しいなさんがいるのなら、契約を持ち出せば姿を現すでしょうけど。
  問題は、セルシウスの涙がきちんと洞窟の中にできているか、ですね」
「たしか、去年の異常気象でセルシウスの涙も全部溶けたとかいうんじゃなかったか?」
「ええ」
何やらリフィルやロイド達、すなわちシルヴァランド組にはわからない内容にて、
アステルやゼロスの会話がすすんでいる。
「…で、その涙とかいうのは何なわけ?」
どうも話しがわからない。
首をかしげつつもぽつり、とつぶやくジーニアスに対し、
「セルシウスの涙とは、ここ、フラノールの名物の一つだ。
  氷でできた花の総称をそう呼んでいる。特殊な環境で氷が花の形をとった珍しいものだ」
「ああ。砂漠の花とかと同じような理屈なのかな?」
トリエット砂漠にも同じような名物がある。
別名、砂漠の花。
砂漠の砂が風や水分で花のような形をとり、名物の一つ、としてとりあつかわれている。
もっとも壊れやすいのでかなり貴重品、として取り扱われてはいるが。
リーガルの説明に、同じようなものがあることを思い出し、そんなことをいっているジーニアス。
「ふむ。その砂漠の花というものはしらないが。
  そのセルシウスの涙はどんなものでも凍らせてしまう力が含まれている。
  それはその花がとてつもない低温によって保たれているがゆえ、普通に手にすれば、
  あまりの低温に低温火傷をしてしまうという代物だ」
「たしか、涙を手にいれるためにはペンギニストミトンが必要だったっけか?」
リーガルの説明にくわえ、ゼロスが思い出したようにいといってくる。
「ふむ。この街のアクセサリー屋の老人がミトンの作成に関しては詳しかったとおもうが」
「でもたしか、あの御隠居さんはもう隠居してるんじゃなかったか?話しによれば」
「いや。この時期は祭りの観光客相手に善意で提供していたはずだ。
  祭りによって使用されるミトンもかのアクセサリー屋から提供されている」
業務に関しては全て脳内にいれているがゆえのリーガルの台詞。
「?何でリーガルはそんなにくわしいんだ?」
「わかった。リーガルさん、きっと祭りにいつも参加してるんだよ」
首をかしげるロイドにたいし、まったく見当はずれなことをいっているコレット。
「ともあれ、その涙が手にはいらないと、精霊のもとにたどり着くのは難しい、というわけね?」
リーガルが異様に詳しいのはきにはなれども、しかい今優先すべきは精霊との契約。
そんなリフィルの問いかけに、
「この街でとりあつかっているバイヤーもいるかもしれないが、在庫があるかどうかはわからんな」
「つまり、精霊と契約するには、洞窟にいってまずは花を探す必要があるってか」
どちらにしても、それがみつからないかぎり、どうにもならないらしい。
しばし、そんな彼らの言葉をきき、ロイド達は顔を見合わせてゆく……


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あとがきもどき:
薫:八月にはいって、ぱたっと打ち込みがとまりました…
  なんか肩が異様に痛い……
  しかも内容が支離滅裂…精霊との契約の後はまともになりたい今日この頃…

2013年8月3日&24日(土)某日

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