まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
そろそろ執筆スビードがおちてきました…毎日更新、ついにストップ…汗
なんか最近、異様に右肩がいたく、うちこみするのにすらいたい状況…
寝返りすらというより、右肩にすこしふれただけで痛いです…
何だかなぁ…まえみたいに異様に腫れてたり、はしないんですけどね(遠い目…
あとがきに別話8あり
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「…悲しいわね」
「姉様?」
姉の表情が悲しみに満ちている。
「どうして同じヒト、なのに判り合えることができないのかしら…
ハーフエルフも、ヒトも、エルフも、心に色はないはず、なのに」
「仕方なかろう。マーテル。すでに兵器として利用されている天使達は今にはじまったことではない。
そして、シルヴァランドではその長命を利用してさらに人体兵器としているんだ。
愚かなヒトのやりそうなことだ」
「テセアラはハーフエルフからマナをすい尽くしているしな。
アイオニトスとよばれし物質がエルフ達のマナを人に注ぎ込んでも副作用をもたらすことがない。
そう幾多もの実験で証明されてしまったがゆえに、な」
どんどんと愚かにもつきすすんでゆくヒト。
マナを使った飛行兵器は、マナが世界から薄くなってゆくにつれ、用をたさなくなってきている。
最近では、それよりはヒトをつかった攻撃のほうが主流になっている。
そもそも、マナを勝手にすいだし、そこから新たな命を生み出そう、などとは。
はっきりいって神すら畏れぬ行為といえる。
本当にこの世界に神がいるのかどうかはわからないが。
すくなくとも、神がいるのならば、ヒトそのものにたいし、絶望しているだろう。
そのままヒト同士の争いにて絶滅してしまえばいい、とでもおもっているのかもしれない。
そんなことをふとおもう。
「そうだね。わかってくれる人もいるんだもん。心に色はない、か。姉様、名言!」
「甘いぞ。マーテル。まったく、お前達はお人よしすぎる」
「そういうユアンもお人よしだよね。何だかんだといって世話してくれるし」
「お前達をみていたら心臓にわるいだけだ!」
始まってしまった二つの国の世界戦争。
これまでも小さな小競り合いはつづいていたのに、シルヴァランドが仕掛けたことにより、
今では世界中にその戦乱はひろがっている。
今、彼らがここにいるのは、そんな戦争をとめるため。
どうすればいいのかわからない。
だけども、小さなことから頑張っていけば、いつかはきっと、皆がわかってくれる。
そう信じて……
「ねえ。ミトス。……」
いつもの優しいまなざしで、それでも憂いをこめていってくる姉の姿を思い出す。
あのとき、姉様はあのあと、何といった?
思い出せない。
否、思い出そうとすれば頭がいたくなる。
それゆえに思考を停止する。
それはミトスが無意識のうちに拒否しているがゆえの反応。
当時、マーテルはこういった、のだから。
心を封じられてまで、兵器として利用され…あの人達にも生きる権利はあるはず、なのに。
と。
それは、まさに今、ミトスがやろうとしていること。
現在進行形でしていることとほぼ同じ。
ゆえに無意識に拒否していることにミトスは気づかない。
気づくことができない。
光と闇の協奏曲 ~精霊マクスウェル~
「あれ?みなさん?」
街の人にきき、どうもこの街の奥のとある場所にマクスウェルが祀られているという石板、があるらしい。
リフィル達はこの街の市長に家に出向いており、今現在は別行動中。
彼らの個人的なことあまり深く介入するのも、という彼らなりの配慮ともいえる。
どちらにしても、精霊がもしもここにいるのなら、契約を結べればそれにこしたことはない。
マクスウェルが精霊の楔とかいうものに関係しているのかどうかはともかくとして。
しかし、それがどこにあるのかがわからない。
ふと、うろうろしていると、後方からアステル達がやってくるのがみてとれる。
「?リフィルさん達は?」
「いま、リフィル達は市長の家だよ。あたしたちはエミルをさがしがてら、
精霊マクスウェルを祀っている、という場所をさがしてるんだ。
どこかにそこにつづく道があるはず、なんだけどみつからなくてねぇ」
といかけてくるアステルにたいし、ため息をつくしいな。
「神子様、そうなんですか?」
「まあね。それよりアステル君達は?」
「僕らもその石碑に興味がありまして。今から向かうところなんですけど。一緒にいきますか?」
「…アステルさんは…どこにあるか…しっている、ですか?」
首をすこしかしげ、そんなアステルにといかけているプレセア。
「ええ。伊達に聞きこみはしてませんよ?この奥にあるとある家の裏手に通路があるそうですよ。
隠し通路になっているとか」
神聖な場所ゆえにすぐさまにはわからないようにしてある、とのこと。
普通、常識的に考えて、他人の家の敷地内にまではいろう、とするものはまずいない。
しかも、その隠し通路は敷地内、というよりは、大地の端と家の境目。
その間に設けられた小さな道からなっている。
普通に街を探索していただけではまず見つけられないといってよい。
「隠し通路…」
「しかし、アステル君達はあいかわらず情報を聞き出すのが上手だねぇ」
「あはは。神子様こそ。女性から話しを聞き出すのは上手じゃないですか」
にこやかに会話をしている二人をみつつ、その横で盛大にため息をついているしいなとリヒター。
何しろこの二人、とある方面ではよく似ている、といって過言でない。
何が、とはいわないが。
「その隠し通路の奥に、マクウスェルを祀っているという石碑があるらしいです。
今から僕達はそこにいくつもりなんですけど、しいなさんたちもいきます?」
そんなアステルの言葉に。
「あんたが無償でそういうってことはまずありえないとおもうんだけど?」
「え?だって、今しいなさん、すでに四大精霊と契約すんでますよね?話しをきくところによれば。
地水火風の精霊達と契約してますよね。マクスウェルといえば四大元素の精霊達の長。
なら、本物の精霊マクスウェルとあえるかもしれないじゃないですか」
にこやかに、さらり、と何でもないようにいいはなつ。
たしかに、今現在、すでにしいなは、地のノーム、水のウンディーネ、火のイフリート、
そして風のシルフとは契約を交わしている。
そして、マクスウェルとという精霊は、そんな四大元素を司る精霊の長といわれている。
その上に全ての精霊をすべる王たるオリジンがいる、といわれているのだが。
アステルからしてみれば、四大元素ともいわれている精霊マクスウェルのことは、
ほとんどわかっていないも同じこと。
古の文献にもあまり詳しくはのっておらず、また遺跡などから発見された石碑や壁画からも、
あまり詳しくはわかっていない。
そもそも、かの精霊は四千年前の古代戦争、カーラーン戦争よりその後、
目撃情報がぱったりと失われている、とはエルフ達の談。
それは完全に隠されている道といっても過言でない。
そもそも、家の裏手にまわりこみ、そこにある小さな道をこえたさきに不自然にとのびている細い足場。
今までは大概、不思議な光を発する橋のようなものでそれぞれの浮き島らしきものがつながっていたのに。
それはまっすぐに、しかしその先がみえないほどにつづいている。
周囲には何もなく、ただ足元にいくつかの草がはえているのがみてとれるのみ。
足場となっている大地の幅もさほどなく、その眼下には雲と、
その雲の下からみえている大地や海の姿が垣間見えている。
しかもこれまでのようなしっかりとした足場ではなく、
足場となっているであろう、細い道はどうみてもその足場の厚みがさほどないのがみてとれる。
この足場の上を通るのがためらわれるほどにそれほどまでに足場の厚みがない。
それはすなわち、下手をすれば足場がくずれ、そのまま空中より、
地面に落下しかねない、という危機感をもおもわせてしまう。
そんな足場がひたすら長くつづいている。
彼らは知るよしもないが、この飛行都市の真下からみれば、ただの大きな雲がそこにある。
という認識しかされない。
もっとも、街側から大地のほうをのぞきこめば、きちんと認識ができる。
それらはすべてマクスウェルの力によるもの。
細い、それでいて注意深くすすまなければ足を踏み外すのではないか、
というそんな道をすすむ間にも周囲をただよう雲がすりぬけてゆく。
いつまでつづくかわからないそんな細い足場をすすむことしばし。
やがて、その視界の先に緑の木々らしきものがうつりこんでくる。
その足場の先には開けたようなちょっとした円形状の島らしきものがあり、
その周囲には木々、そしてしいなからしてみればみおぼえるあのような、
しいな達の民でいうところの鳥居、のようなものがあつらわれている。
それをくぐったさきに、開けた広場のような場所の中心にぽつん、と一つの何かがあるのがみてとれる。
が。
「エミル!?」
ふとその何かの前にみおぼえのある金髪をみつけおもわずさけんでいるしいなの姿。
自分達がこの地にやってきてこのかた、どこかにいっていたエミルがどうしてここにいるのか。
そんなしいなの声がきこえたのか、ゆっくり振り向く人影ひとつ。
「あれ?しいなさん?それにアステルさんやリヒターさんたちも。
ゼロスさんにプレセアさんまで、リーガルさんもいったい?」
やってきた彼らにたいし、何でもないように首をちょこん、とかしげてといかける。
そもそも、エミルは始めからここにいたわけではない。
もっとも、彼らと離れてここにきたのは事実なれど、
この場を通じ、ちょっとした別の場所に移動していただけのこと。
そして、この場に彼らが近づいてきたことを感じ取り、
マクスウェルとともにこの場にともどってきたのはほんの少し前。
もうすこし彼らが早ければ、視えていたであろう。
石碑の前に光りが集い、そこからエミルが姿を表した光景が。
ここに不時着してから姿をみせなかったエミルがどうしてここにいるのか。
しいなの疑問はつきないが、
「エミル。お前のいるその石碑、それは何だ?」
まさかとはおもうが、そうおもいつつもリヒターがそんなエミルにとといかける。
「え?これですか?マクスウェルの石碑ですけど?」
『・・・・・・・・・・・』
さらり、というエミルの言葉にしばし無言。
そして、
「ええ!?それが精霊マクスウェルの宿るかもしれない石碑!?」
さすがというか、だっとかけだしその石碑の前にかけよるアステル。
「ものすごい力を感じる。マナが強い。おそらくこれは間違いないのか?」
かの地にて、オリジンの石碑に近いマナの濃さをこの石碑より感じる。
それゆえにリヒターがそんなことをおもわずつぶやくが。
しかし、この場においてマナを感じることのできるといわれているハーフエルフはリヒターのみ。
エミルはわかるがいう必要がないとおもっているので当然そんなリヒターに答えるはずもなく。
「ええと。石碑には文字がかかれてますね。あと紋様も。
この穴は…えっと、分子を統べるものとまみえたければ……」
アステルが注意深く石碑をしらべつつ、そこに書かれている文字をよみあげる。
「これは、古代エルフ語ですね。オリジンの石板と同じ。
おそらく、ここに書かれている紋様は、四大元素をしめす紋様。
なら、この穴は……」
どうやら何やら自分の世界にはいってしまったらしい。
そんなアステルを横眼でみつつ、
「しかし。エミル。お前、今までどこにいたんだ?俺達が目覚めたときにはお前はいなかったが……」
きになっていたことをといかけるリヒター。
どうもアステルと同じ顔のせいか気にかかりはする。
さらにいえば、何といえばいいのか、エミルの傍は何というのかおちつく、というのがある。
それは不思議な感覚といってもよい。
アステルの傍にいるのとはまた違う、強いていうならば、母のもとで過ごしていたあのとき。
そのような感覚を時折うけるのはリヒターの気のせいか。
「うむ。それは私もきになっていた。きけば我々を救助してもらうために、一人で街の中にいったらしいが……」
そんなリヒターの言葉につづき、リーガルがいってくる。
「だって、皆、気絶してましたし」
あの程度で気絶するとはおもわなかったが。
最もそれはエミルからの感覚であり、普通、生身の人間がマナの歪みの真っただ中、
そんな歪みの中にあり、膨大な力を浴びれば普通は気絶、だけではすまない。
何しろあの空間にて水面下にてとある理を引き直しているのである。
それにマナにて構築されている命という器が拒絶反応を示さないはずもなく。
結果として彼ら全員が気絶してしまった、というだけなのだが。
最も、そこにエミルがいなければまちがいなく、そんな場所に突入してしまえば、
彼らの命はなかったであろう。
…その空間を生み出していたのがエミルであるがゆえに、そのもしも、ということはありえないのだが。
「はぁ。まあ、無事でよかったよ。あんただけがあの場にきづいたらいなかったからね」
きづいたらエミルがいなくなっていることは今が初めてというわけではないが、
状況が状況。
心配していたことにかわりはない。
そんなしいなの言葉にエミルはただ笑みをうかべるのみ。
しいな達は知らない。
知るよしもない。ついでに彼らのことを頼んで、精霊達からの繋ぎもあったことから、
マクスウェルの元にいき、かの地に出向いた。
精霊達もいろいろと思うところはあるらしいが、結局のところは全てはエミルの…否、
ラタトスクの決定に従う、という旨をいってきた。
相変わらずというかそんな彼らの言葉にラタトスクとしては苦笑せざるを得なかったが。
元々、この世界を生み出して表にでることがなかった王がこうしてでてきている。
そのこと自体が精霊達にとっては驚愕以外の何ものでもない。
まあ、分身体たる蝶にて世界を視ていたことは精霊達…大精霊と呼ばれし存在達は知ってはいたが。
この世界を大切に思っていることもしっている。
そしてそんな彼に生みだされたがゆえに、精霊達からしてみれば、王の意見に従う、というもの。
特にかつての人の愚かさを身にしみているがゆえ、といってもよい。
ヒトはいつの時代も彼ら精霊を裏切ってゆく。
中にはただの力ある道具として考えるヒトすらもいる。
どちらにしても、種子と融合しかかっているというマーテルがどのように行動するのか。
それがつかめない。
何しろヒトはときとして信じられないような、しかも愚かな行為をしでかすもの。
どちらにしても今あるかつて実らせた種子にはすでに世界樹、となるほどの力はない。
よくて芽吹いたとしても薄いマナをかろうじて作りだせる程度のただの樹木でしかないであろう。
そこにラタトスクが力を加えないかぎり、は。
薄いマナはかつてラタトスクが種子に与えていた力の名残。
しかし、薄いマナゆえに世界をはぐくむほどの力もない。
ある意味ではそれを人に世界樹、と思い込ませることで本来の世界樹、
すなわち世界の要ともなる力を生み出す依代たる大樹を人の目からそらすこともできるだろう。
とはラタトスクにはいっていないが精霊達の総意でもある。
少なくとも、王がいうように、かの森の次元を人が入れないようにいじり、
そこに大樹を復活させるのであれば、あるいみで目をそらすものが必要。
人は目にみえるものだけにごまかされ、捉われる。
それは精霊達はよく知っている。
特に、自然の恩恵を忘れてしまっているヒトに関しては。
そんな彼らの会話をききつつも、
「この石板にはここかかれていますね。分子をすべるものとまみえたければ、
地水火風を従えた証をしめせ。と」
アステルが石碑に書かれている言葉を解読していってくる。
「つまり、この石碑に証を示せばマクスウェルにあえるのかい?」
「間違いないかと」
「しかし、こんなところにこんなものが眠っているとはな」
しいなとアステルの会話に周囲をみつつリーガルがぽつり、とつぶやく。
あの足場があやしい道を超えた先にこのような場所があるなど、普通はおもわない。
この一角のみが切り取られているようなそんな場所。
人々が住んでいるかの場所からはかなり離れており、ここからは、居住区、らしき場所は、
雲にかくれて確認することは難しい。
「…証…どうすれば、いいんでしょうか?」
プレセアが首をかしげる。
証、といわれてもわからない。
「しいなさん。ここに四大元素の紋様がありますよね。そしてここに穴がある。
おそらく、この穴にそれぞれの精霊の契約の証。
すなわち契約の指輪をかざすのだとおもうんですけど……」
「わかった。やってみるよ」
アステルのことばにしいながいい、それぞれの紋様の中心にとある穴に、
精霊達と契約をかわしたときに預かっている指輪をかざす。
それとともに、指輪がひかり、しいなが何もしていないのに、
指輪から光がもれ、それは光りの球となり、それぞれ四つの穴をうめてゆく。
四つの穴が埋まると同時、四色の色は互いに点滅し、一瞬周囲にまばゆき光がみちあふれる。
『ほっほっほっ。わしとあおうとするものがあらわれるとは、久しぶりじゃのぉ』
ふと、虚空より響いてくる第三者の声。
この場にいる、エミル、しいな、アステル、ゼロス、リーガル、リヒター、プレセア。
その誰でもない第三者の声。
その声にはっとふりあおぎつつも、
「マクスウェルだね!地水火風を師だ変えた証を示したんだ。あたしと契約しておくれよ」
どこからきこえてくる声かわからないが、とりあえず石碑にむかって話しかけるしいな。
『ふむ。まあまだ全ての精霊と契約を交わしているというわけではないみたいじゃが。
まあよかろうて。いいじゃろう』
「!力を貸してくれるのか!?」
「信じられん。精霊マクスウェルといえば四大元素の長だぞ?」
リヒターが信じられないとばかりにぽそり、とつぶやく。
プレセアはその重大性を理解しておらず、ただ首をかしげるのみ。
「どぉれ。わしに力を示せればの。さて、暇つぶしに付き合ってもらおうかのぉ」
言葉は今度は確実に虚空、からではなく石碑のところから。
光がはじけ、その場に何かの円形の台座のようなものにすわっている老人があらわれる。
石碑の上に浮かぶ形で。
まちがいなく浮いていなければ、どこにでもいる老人、といって過言でないその姿。
白いひげに白い眉毛。
服はおちついたすこし薄めの紺色で、その肩に肩かけらしきものをまとっているのがみてとれる。
そしてその手には大きな宝玉のようなものがついた杖が握られている。
よくよくみれば、台座らしきうえに座布団がひいてあり、その上に座っているのがわかるのだが。
そこまでしいなたちは気づかない。
言葉とともに、瞬時に周囲に結界が施される。
「…エミルさんが…いません」
ふとみれば、そこは何もない空間といってもよい場所。
右も左もまっしろで、いずこともわからないような空間の中にととじこめられるしいな達。
「なぁに。バトル空間に案内しただけじゃて。さあ、いくぞい!」
「って、いきなりかい!」
「くるぞ!」
「けっこうのりがいいんだよね。マクスウェルって」
のんびりとそんな光景を石碑にもたれかかれつつ眺めてぽつり、とつぶやく。
はたからみれば、この場にいるのはエミルのみ。
そんなエミルの言葉に呼応するかのごとくに、そこに八つの影が具現する。
「まあ、マクスウェルですからね」
真っ白に光る鳥のようなものがそういい、
「では、ラタトスク様。精霊達にいったように、かの地に再生されるのはいつごろに?」
白い虎のようなものがエミルにといってくる。
それぞれ八つの影はふわふわと空中にとうかんでおり、どうみても普通でないのがみてとれる。
「下地だけつくっておいて、あとは一気にするつもりだがな。
ソルム。次なる契約はセルシウスと彼らはさせるつもりだが、大地の調整はノームとともにまかせたぞ」
「おまかせを」
「かぁ!洒落になんないだろ!これ!」
「うむ。さすがは四大元素を統べているという長だな」
「リヒターさん、冷静に…いっている場合ではない、と……」
しいなが精霊を召喚しても、いともあっさりとマクスウェルに逆に徴収されてしまう。
そしてそれらの精霊の力をつかい、逆に攻撃をしかけられてくることにきづき、
純粋なる力のみでマクスウェルに挑まなければ意味がないことにようやくきづき、
それぞれがそれぞれの力のみで試練をうけている今現在。
まあ、戦いつつもそんな会話ができる、というのは、戦っている人数が人数。
何しろ今まで大概四人でたたかっていたのに、
今戦っているのは、しいなにゼロス、リーガルにプレセア。
それに加え、アステルとリヒターまで加わっている今の現状。
もっとも、たった二人しか加わっていないとはいえ、それでもいつもと戦いかたがかわってくるのはかわりない。
ひたすらこの中で唯一、回復術が扱えるリヒターが回復をほどこし、
アステルは懐…正確にいえば、どうやら白衣の裏、に隠して?いるらしい。
何やら小瓶のようなものをとりだしてはマクスウェルに投げていたりする。
それがマクスウェルに直撃する前に、視えない壁のようなものに阻まれ、
ちょっとした小さな爆発を繰り返していたりするのだが。
「アステル!おまえ、毒やら爆弾をつかうな!」
リヒターがそんなアステルに思わず叫ぶが。
「大丈夫だよ。リヒター。だってここ、まちがいなくマクスウェルが張ってる結界の中でしょ?
ということは、僕がどんなものをつかっても結界の外には影響なし!ばんばんいくよ~!
この前調合したこれとかつかってみたいし」
「へんなところでいきいきするな!」
戦っている、というのに別の意味でリヒターの疲れたような叫びが響いているのは、
おそらくしいなたちの気のせいではないであろう。
「普通、生物につかったらこれ、簡単にとけるんだけどな~」
「だから、そんな物騒なものをつかうな!自分達にかかったらどうする!」
とける、とは何が?とはこわくてきけない。
ゆえにそんな二人の会話におもわず顔をひくつかせるしいなは間違ってはいない。
絶対に。
勝てる、とはおもえない。
だけど諦めるわけにはいかない。
それぞれがすでに息をきらしかけている。
ふと。
「ふむ。まあ、こんなもんじゃろ」
突如として攻撃の手がやみ、そして。
「ほっほっほっ。お前さん達の力はまあまあわかったわい」
「「「「え?」」」」
まだ戦いはおわっていない。
相手を力で抑え込んでいない。
どちらかといえばしいな達のほうが攻防一線でしかなかったというのに。
突如といわれ、それとともに結界がとかれ、それとともに周囲の景色がもどってくる。
「あ、おかえり~」
今までの緊張など関係ない、とばかりにきこえてくるのんびりとした声。
みれば、いつのまにかしいな達は、さきほどまでいた場所。
すなわち、石碑の前にもどってきており、エミルはエミルでそんな石碑に体をもたれかけていたりするのがみてとれる。
「まあ、普及点じゃろうて。もっとも、別な力にたよるようじゃからまだまだじゃがの」
「そもそも、エクスフィアなんてよばれているものにたよりきってるのが間違いだよね」
「ですなぁ。そもそも人はその努力次第で潜在能力を引き出すことができるというのに。
リスクを侵してまで道具を頼ろうとするその根性がいただけないですがの」
もたれかかっていた石碑から体をはなしつつ、ふわふわとういているマクスウェルの言葉に答えるかのように、
エミルがさらり、と何やらいっているのがしいな達の耳にときこえてくるが。
「まあ、僕としてはその努力を無意味に魔物とかを倒しては経験をかせいだり。
というのもこまるけど。人って無意味に乱獲するからねぇ」
「まったくですじゃの。さて、そこの召喚の資格をもつものよ。
まあ、普及点ではあるが、誓いをしめすがよかろうて」
そこに精霊がいる、というのにまったく動じていないエミルのこともきにかかるが。
というより、普通に会話していないか?
という思いは皆同じ。
ゼロスの視線はエミルの傍に控えている八つの影をしっかりと捉えていたりする。
その姿を今現在、消している、というのにもかかわらず。
もっとも、その姿はゼロス以外にはみえていない。
それはゼロスが天使になっている証、ともいえる。
他のものは、目にみえるものしかみようとしていないので、気づかない。
気づくことができない。
「しいなさん、とりあえず、認めてもらえたみたいですし。契約を」
「あ。ああ」
アステルにいわれ、しいなが一歩前にすすみでるが。
誓いをいおうとし、一瞬、その場にたちすくむ。
「しいなさん?」
「しいな?」
そんなしいなの姿にアステルとゼロスが思わず声をかけるが。
「あれ?でもまっとくれよ?マクスウェルはここの初代村長と契約してるってきいたけど……」
村人がたしかそういっていた。
その場合、勝手に契約を破棄してもいいのかがわからない。
そんなしいなの台詞をきき、一瞬、顔をみあわせるエミルとマクスウェル。
エミルからしてみれば、しいなが何をいっているのか、というあたりなのだが。
「ふぅむ。そのようにつたわっておるのか。面白いのぉ。時の流れとは」
「違うのかい?」
ちらり、とその視線をむけてエミルに確認をとれば、こくり、と小さくうなづく様子がみてとれる。
それゆえに。
「わしはミトスと契約をしておる。ミトスはハーフエルフのためにわしの力をつこうたわけじゃな。
もっとも、助けられたハーフエルフ達がミトスの功績をたたえ、
その場にいないのに勝手にどうやら初代村長、として名をのこしたようじゃがの」
事実、ミトスによってこの場にたすけられた人々が、ミトスのことを忘れないため、
という理由をつけてその場にいないのに勝手にミトスを初代村長、して名をのこした。
年月の間にその名が忘れ去られ、初代村長が契約をした、という事実のみがのこっている今現在。
「?勇者ミトスは…ここの村長をしていた、のですか?」
プレセアの問いかけに。
「いんや。当時、ミトスはまだ戦争を終わらせるために旅をしておったからの。
この地に移動したものたちが当人の許可なく勝手にやっておったようじゃが。
あのころのミトスはまっすぐじゃったよ。わしら精霊の力を戦争につかわせるわけにはいかない。
そういっておったしのぉ。…マーテルが人に殺されてから全てがくるってしもうたが。
と、年寄りは昔話しが長くなりそうでいかんわい。さて、契約の資格をもつものよ。
誓いをたてよ」
「あたしがもし、誓いをたててマクスウェル。あんたと契約したらこの街は…」
「なぁに。そのまま大地にもどしてもよし。それとも時がくるまでこのままでもよし。
おまえさんはどうしたいんじゃ?」
「あたしは…この街はこのままにしておいてほしい、とおもう。
皆がハーフエルフを世界が、受け入れてくれるまでは。そのほうがいいとおもう」
しいなの言葉にそれでなくても細い目をさらにほそめ、
「さすがじゃのお。新たにうまれしものに心をあたえし心清きものよ」
「え?」
しいなにはその言葉の意味はわからない。
ゆえに首をかしげざるを得ないのだが。
「ほれ、とっとと誓いをいわんかの?」
その言葉の意味を深く追求するよりも先に、誓いの言葉をうながされる。
「え、あ。ああ。マクスウェルがミトスとの契約を破棄し、あたしとの契約を望む」
「ほっほっほっ。よかろう。誓いを立てるがよい」
「ハーフエルフがこんなふうに隠れなくてもすむように。
全ての命が堂々と生きることのできる世界をつくるため。あんたの力をかしとくれ。
どちらの世界も互いに犠牲にならなくて済む世界にするために」
今の世界のありようは、誰かを犠牲にしてなりたっている。
それはマナの搾取、だけではない。
人種差別、身分差別にしてもまた然り。
全ての命が堂々といきることのできる世界。
それはとてもすばらしくもあるが、しかしやはり差別はなくならないのだろうともおもう。
それでも、諦めてはそこでおわり。
すくなくとも、誰かが声をあげないかぎり、この現状はずっとつづいてゆくのだから。
「よいじゃろう。分子をすべるわが力、みごとつかいこなしてみせよ。
この街はこのままうかばせておくとするが。よろしいかの?」
その問いかけははたからみればしいなにいっているようではあるが実は違う。
問いかけはエミルにむけて。
エミルがちいさく視線でうなづいたのをうけ、
「そういえば、お主たち、ここにくるときに乗り物を壊してしまったようじゃのぉ」
いきなり話しがとび、おもわずきょとん、とした表情をうかべるしいな。
「なぜしっているのだ?」
リーガルのそんな問いかけに。
「この地は儂が加護をほどこしておる場じゃ。異変があればすぐにわかるんじゃよ。
おぬしたち、地上にもどりたいのであれば、のこりのものをここに呼んでくればよかろう。
わしの力でよければお主達を地上に送り届けることができるが?どうするかの?」
マクスウェルの言葉に、しいな達が顔をみあわせたのは…いうまでもない。
「すっげぇ!いつのまに、しいな、新しい精霊と契約したんだ!?」
リフィル達がいるのは、この街の市長という家らしい。
精霊と契約したことを伝えることもあり、市長の家にでむくと、
リフィル達はすでに外にでており、何やらリフィルが本?のようなものをにぎりしめているのがみてとれる。
しいなたちは知らないが、それはリフィルの母の日記。
それはちょうどリフィルが市長の家からでるのと、しいなたちが契約をおえ、
市長の家にたどりついたのとほぼ同時刻。
しいなから、この街にいた精霊と契約をしたという話しをきき、ロイドが目をきらきらさせていってくる。
「精霊マクスウェル…四大元素の長といわれるあのマクスウェルか!?」
リフィルがその言葉に目をかがやかせる。
さっきの今なのに、そうジーニアスはおもうが、口にはださない。
「そのマクスウェルさんってバージニアさん、元にもどせないかなぁ?」
それはコレットの素朴なる疑問。
「そういえば、そうだね。きいてみるだけきいてみようか」
心を病んでいるものに精霊の力が効果があるかどうかはわからないが。
マクスウェルと契約をした、ということばに一瞬ミトスが顔をふせる。
「ミトス?どうかしたのか?」
「え?あ、たしか、マクスウェルって、この街をこうして浮かせている精霊、だよね?
…だったら、この街にいる人達…どうなるのかなっておもって。
地上にこの街はおりる、のかな?」
あのとき、自分がマクスウェルにいった台詞は、それこそしいなと同じもの。
ハーフエルフ達が差別されない世界になるまで、彼らを守っていってほしい。
そういったあの当時。
ここにいる全てのハーフエルフをクルシスに、デリスカーラーンに迎え入れてもいいが、
おそらく彼らは従わないであろう。
この地にすまうハーフエルフ達はたしか自然とともにいきることを選んでいたものたち。
大地とともにいきる、それは無機生命体…すなわち、鉱物に属するエクスフィア。
それに準じているかもしれないが、根柢が違う。
彼らはその死とともに大地に還ることを望んでいるものたち。
無機生命体は、その器たる無機物が破壊されない以上、ずっとそこにありつづけるもの。
自分が世界を二つにわけたのち、いどころがつかめなかった精霊マクスウェル。
上空から探索していてもみつからなかった。
初期のころは探すことを命じていたが、別にマクスウェルを利用しなくても、楔の仕組みが循環しはじめたのをうけ、
そのまま捜索を優先順位的にひきさげた。
みつかればそれにこしたことはなし、という程度の優先度であるがゆえ、
クルシスに属しているその部署のものも本気になって今では探していなかった。
「とりあえず。マクスウェルが地上にもどしてくれる、というのならばそれは助かるわ。
どちらにしてもレアバードは利用できないのだし」
リフィルの言い分には一理ある。
「なら、詳しくマクスウェルからリフィルさん達はそのあたりのこときいてきたらどうです?
僕、とりあえず市長さんに挨拶してきますね」
しいな達にはいっていないが、市長達がしいなたちがマクスウェルと契約をする旨は、
すでに始めに彼らのもとにいったときにエミルは伝えている。
そして、それをしいな達にはいわないように、ともおねがいしてある。
…まあ、さずかにその場に四大精霊が現れてそういってくれば、うなづかざるを得なかった、
という理由があるではあろうが。
「しかし、あの足場はかなり危険とみた。
あまり大人数でいけば、それこそ足場がくずれかねんだろう」
もっとももろいようにみえて加護がかかっている以上、滅多なことで崩れることもないのだが。
リーガルのことばに、
「たしかに。あの道はちょっと…ね」
「あ、じゃあ、僕達が倒れていたあの場所でまっているのもいいかもしれませんよ?
聞きこみの結果、どうも街におりたったりするときは、必ずあの場から、みたいですし。
というよりあの場所からしか地上に降りれないらしいです」
それ以外の場所では、何でも見た目にはわからないが、大地の端に結界があり、
普通に大陸から落ちないようにと保護が施されているらしい。
あの場のみ、周囲の大地の結界がなく、自由に行き来ができる場になっている、と。
そうアステルは聞きこみの結果、知っている。
「ミトスはどうする?」
「え?僕は……」
「まだ体力も完全ではないかもしれないから、あの場所はミトスには危険かもだね。
何しろ足元がおぼつかないというか、下をのぞきこんだらくらっとしかねない。
落ちたら一環の終わりだし」
しいなの言葉は一理ある。
「ミトスにも羽があったらいいのにね。そうしたら空とべるし」
「え?…あ…」
さらり、といわれたコレットの言葉に思わず無言となりはてるミトス。
一瞬、自分のことが知られたのかとおもってしまったが、どうもそういう感じではない。
ミトスも当然のことながら天使の翼をもっている。
それは虹色に輝く翼を。
コレットの翼の色が桃色ならば、ゼロスの羽の色は金色。
本質を視れるエミルだからこそわかること。
「ねえ。姉さん。マクスウェルって、精霊の、四大元素の長なんだよね?
…お母さんの心を元に戻す方法、もしかしたらしってるかもしれないよ?」
「…ええ、そうね」
それがいいことなのかはわからないが、すくなくとも、こういいたい。
自分達だけを逃がすのではなく、家族全員で移住してほしかった、と。
そうすればいくらつらいことがあろうとも乗り越えられたとおもう。
アステル達からきくまで、ずっと自分は親に捨てられたのだ、そうおもって生きてきた。
そして、謝りたい。
全ては自分の頭脳を欲したテセアラの国に原因があったらしいが、それでも。
自分というものがいなければ、すくなくとも、両親は里を追われることもなかったはずだ。
そうおもうから。
それは竜巻、のような奔流。
突如として中心に、竜巻のようなものがあらわれ、
そしてその竜巻が消え去ったあとには、光り輝く水たまりのようなものがその場にと出現する。
「それが、旅の扉、です」
エミル達がマクスウェルの力で地上にもどることをきき、この場にやってきているワードナ。
「これは、エルフの里にあるものと同じ……」
リフィルはその水たまりのようなものに覚えがある。
「精霊の力をもってして、空間同士をつなぐ道です。では、みなさん、おきをつけて」
結局のところ、先ほどいったメンバーとは別なものたち。
すなわち、シルヴァランド組としいながマクスウェルのところにおもむく、ということで話しはまとまり、
アステルにいわれたように、他のものは簡単に街の散策をしながらも、
始めにたどりついた場所、すなわち発着場のような場所にと移動してまつことしばし。
どうやらマクスウェルと話しがついたらしく、やがてしばらくして発生する巨大なる力の奔流。
改めてお礼をいい、それぞれがそのみずたまりのような渦の中にその身を投じてゆく。
そんな彼らの姿を最後までのこりみおくりつつ、
「じゃ、マクスウェル。ここのものたちに説明はおねがいね」
「おまかせくださいませ。…あなた様もおきをつけて。気づかれてはおらないようですが……」
心配そうにいってくるマクスウェルの姿が印象深い。
というより、リフィル達全員の姿がみえなくなったと同時に現れた精霊の姿にワードナとしては驚かざるをえない。
そもそも、召喚士ではないであろうに精霊がこの少年のもとに現れるその理由もわからない。
もっとも、四大精霊がこのエミルという少年にえらくあらたまっていたことを考えれば。
この少年は確実に精霊達と何らかのかかわりがあるもの、
そして、敬意を示していた、ということから察するに、おそらくは伝説にある大樹にかかわりありしもの。
そのように捕らえているのもまた事実。
だからこそ、リフィル達にエミルのことはいわなかった。
エミルが精霊とともにいた、というその事実を。
「…あの子は、かつてを思い出してる。ずっと心にしまいこみ、考えないようにしてきたことを。
ようやく、今、自分の目でみて感じることによってかつての想いを思い出そうとしてる」
「…はぁ。あいかわらず甘いというか。しかし、あのミトスは、あなた様を利用しようとするかもしれないのですぞ?
それは心にとめおいてくだされ」
「わかってる。そのときは……」
できるならば今の生のままやり直せさせたいのも本音。
彼にはこのような世界をつくりだしてしまった以上、最後まで見届ける必要があるとおもうから。
「…お前達は、かの準備をしておくように」
「……御意」
それだけいい、エミルの姿は水たまりにはいるわけでなく、瞬時にとその場からかききえる。
それはまるで、紅き光と緑の光りがいりまじり、はじけるがごとくに。
そんな主たる王の姿を見送りつつも、
「やれやれ。……ラタトスク様もわざわざ自らでむかれて、心労を抱えずともよかろうに……」
その役目は自分達だけで十分だ、ともおもっていた。
なのに結局、今現在、表にでてきてしまっている。
彼の力のありようをヒトがしってしまえばどのような行動をとるのかが明白であるがゆえに、
精霊達からしてみれば気が気ではない。
何しろほんの欠片の力でも確実に世界に影響を及ぼす力であることには違いない、のだから。
そうつぶやき、ため息をふかくついたのち、
「さて、お主達には説明をする必要があるの。とりあえず広間に全員を集めるがよかろうて」
「は、はっ!」
いることはしってはいたが、姿などみたことはない精霊。
しかし、わかる。
その気配はまぎれもなく、この場全てを守っているマナとまったく同じ、なのだから。
――Go To Next
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あとがきもどき:
薫:マクスウェル戦、さらり、と表現をぼかして流しました(自覚あり
さきにシルヴァランドでイフリートやらシルフと契約させた理由。
さきにマクスウェルと契約させたいがため、だったりするというこの話し。
ミトスはあるいみ言葉巧み(まて)でロイドたちにふりまわされ、
マクスウェル当事者とは邂逅してませんv
次回でようやくフラノール―vそれがすんだらアルタミラとアルタステさんの家ですね。
とりあえず、容量的に(こらこら)またまた別話の続きですv
この旅(あえて表現)はイセリアからの出発シーンv
コケコッコー。
空に太陽がのぼりだし、朝一番の鶏が時をつげる。
「コレット。…きをつけるんじゃよ?」
「はい。おばあさま。お父様。わたし、しっかりと神子の務めをはたしてみせます」
「コレット……」
「神子様。きをつけて」
「うわ~ん。コレットお姉ちゃん。いなくなっちゃうの?」
「これ。コレットはこれから神子として旅だつのじゃ。笑ってみおくろうではないか」
「うん。大丈夫だよ。私、がんばるから。がんばって皆が幸せになるように成功させるから」
「…ところで、先生?」
「何かしら?エミル?」
「…その荷物、何ですか?」
「……ものすごい荷物ですねぇ。…私の闇の中にでも収容しましょうか?」
なぜか背中にかなりの荷物をしょっているリフィルをみてそんなことをといかけているエミル達。
「いや、これは他人にはまかせられん。大切なものだからな」
「は、はぁ」
「何なのですか?それは?」
「ふふふ。これはだな。文化的貴重なる遺跡から発見された数々の……」
「もう!姉さん!…あれ?クラトスさんは?」
「入口でまたれてるはずじゃ。しかし、ロイドのやつ…おそいのぉ?」
「ううん。いいの。…ロイドにあったら別れがつらくなっちゃうし」
「コレット…じゃあ、いきましょうか」
「エミル殿。コレットのことをよろしくたのむよ」
「はい。いこっか。コレット」
「うん。よろしくね」
頭がいたい、というのはこういうのをいうのであろう。
なぜに旅にでたとたん、ぞろぞろと魔物達がくっついてくるのやら。
ちなみに少しばかり距離をおいているものの、あきらかに自分達を取り囲むようにして、
魔物達が移動しているのがみてとれる。
彼らがすすむ先に魔物達が率先して群れによる道なき道をつくり、
その間をぬって進んで行っている今現在。
予測されるはずの魔物の襲撃などはあるはずもなく。
時折でてくる山賊や盗賊、といった類は即座に魔物達に撃退されているのがみてとれる。
それもエミルが何かを命じたわけではなく、どうみても魔物達が率先してやっている模様。
少なくとも、クラトスがみているかぎり、エミルは魔物達に何かいっている様子もない。
肌につきぬける風はとてもつめたく、この先の砂漠地帯などは完全に今や豪雪地帯、となっているという。
「エミル。あなたよくその格好で平気ね?」
いまだにエミルは肩を露出している服装のまま。
というより彼はほとんどこの服装である。
「別に寒くはないですし……」
「…だろうな……」
エミルの周囲にはなぜかもこもことした魔物達がこぞって集まっていたりする。
それだけ密集していればたしかに寒くないどころか逆に熱いであろうとも予測がつく。
「……エミル様?」
「まずいな……」
生態系にかなり影響がでているっぽい。
異常気象にあわせ、その場にいる魔物達には臨時進化を認めそのように力を与えたが。
本来あった生物や植物などは仮初めの冬眠状態に一応はしておいた。
何しろ流失したのが魔界の瘴気。
弱い彼らがたえられるはずもない。
それゆえの処置。
しかしこの一年あまりセンチュリオン達が眠りについてしまったせいか、それらの処置がほどかれたらしい。
おもわず腕をくみつぶやくエミルの顔はいつもの温和のそれではなく、本来のラタトスクとしての顔。
「遺跡の改装は把握しているな?」
「はい。イグニスがきちんと把握しておりましたので。ちょっかいかけらなかったのは私の闇の神殿と
あとは雷の神殿、氷の神殿くらいですね」
朝はやく出立したこともあり、救いの小屋によらなくてもそのまま移動できるだろう、というクラトスの意見のもと、
たしかに少しでもはやくまともな街、すなわちトリエットについたほうがいいわね。
リフィルも同意し、そのまま強行突破。
それでもどうしても途中で日が暮れ野営の準備。
薪をひろってくるね、といってその場を離れたエミルは周囲を見渡しおもわずつぶやく。
いつもの緑の瞳は紅くなり、けわしく周囲をみわたしながら、そっとその手を地面にとつける。
直後、周囲の様子が手にとるように伝わってくる。
「簡易的ではあるが俺の加護がいきているからイグニスさえ起こせばどうにかなりそうだな。ここは」
第三者がいたら間違いなくきづくであろう。
彼の周囲にのみまったく雪がふっていない、ということに。
「地表では四千年…か。どうもあの場所は地表の時間間隔がずれるな」
「それは仕方がないかと……」
そもそも自分達にとっては時間などあってないようなもの。
さらにいえばここの自分達はどちらかといえば分霊体のようなもの。
「…テネブラエ。イフリートに連絡を。イグニスを起こしにいく、とな。後俺にきづいても正体を悟らせるな、とな」
「は」
言葉とともにテネブラエは影の中にとかききえる。
「こちら側は瘴気におかされたものはいないようだが…あちらは厄介そうなことになっているな」
気配を感じるのは四か所。
大地を通じ、惑星すべてをざっと視通す。
「厄介なのは、気づかれる可能性があるからあちらがわの神殿には封印ができなかったことくらいか…
そのせいで人間どもがしでかしてくれてるようだが……」
なぜに人間がソルムのコアを持ち出しているのやら。
どうやら入り込んでいる魔族がそそのかした、らしいが。
「…センチュリオンを使って悪事をしようなど。笑止。まあいい。
相手の動きが彼らがソルムをもっている限り、こちらにも伝わる、とはおもってもいまい」
いくら孵化する前の状態だとてその力を使用されればラタトスクは判る。
どうやらその事実を利用しているものはしらないらしい。
「ロイド!よかった!いきてる!?」
「…というか、エミルのいうとおりだったわね」
ふとエミルがロイドが捕らえられたみたい、と魔物達との会話?でしったらしくリフィル達にといい。
そして魔物達にお願いし、周囲を探索してもらったところ、砂漠にジーニアスの姿を認めたらしく、
とりあえず合流した彼ら達。
ジーニアスがいうには、コレット達がでたあと、村にディザイアンがやってきて村を焼き払ったらしい。
そしてその原因は、この間、ジーニアスがロイドをつれて牧場にいったときの騒ぎにあった、とのこと。
ロイドがディザイアン達に狙われているとしった村長がロイドを村長権限で追放処分にしたこと。
そしてジーニアスも自分のせいだから、といってロイドとともに村をでたこと。
ジーニアスがどこにロイドがつれていかれたのかはみていたが、ロイドがどこにいるのかまではわからない。
「この中、友達いるみたいだから中から鍵とかあけてもらえるようにお願いしてみるね」
いってロイドがチュンチュンに何か言うと同時、魔物は建物の中へ。
しばらくすると、何やら悲鳴のようなものがきこえ…あっさりと門は開かれた。
あとは簡単。
エミルがつれている魔物?のうちの一体がどうやら精神に干渉する力をもっているらしく、
そこにいたディザイアンのような格好をしているものからロイドのいる場所をききだした。
ついでにエミルは建物の中にいた魔物達にとといかけ、ロイドの足取りを確実にとつかんだ。
ゆえに施設に侵入していくばくもないうちにこうしてロイドがいる部屋にたどりついている今現在。
ロイドの姿をみて安心したように叫ぶジーニアスに、あきれまじりにいっているリフィル。
「ロイド。大丈夫?怪我してない?手はだいじょぅぶそう。足も大丈夫そう」
その場にポーダ達…神殿を襲ったものたち、がいるにもかかわらず、ロイドの心配をしているコレット。
「あれ?エミルは?」
「逃げ道を確保しておくっていって別行動よ?」
監視システムからしても大混乱。
そもそも全てのシステムがあるものいがいは完全に制御不能となっている今現在。
ゆえに当然、ロイド達の足取りも、その姿も機械にうつりこむことはない。
「…無事のようだな」
ロイドが捕まった、ときいたとき、クラトスは一瞬気がとおくなったのもまた事実。
死んだとおもった息子がいきていたとわかったばかりなのに、捕らえられた。
と。
本当はそのまま救出にすぐにでもいきたかったがどこにいるかがわからない。
ミエルの機転?ですぐにこうして再開することができたことにほっとする。
ゆえに安心感からおもわず小さくつぶやいているクラトスであるが。
「…みんな、きてくれたんだな。俺のほうから探しにいこうとおもってたのに」
しかも勝手においかけてきたのは自分のほうだ、と理解しているからこそバツがわるい。
「なんかエミルが気づいてくれたんだって。友達からきいたらしいよ?」
「あ…あはは……」
エミルがいう友達、いうのが魔物であるのをしっているからか、
ロイドはただ乾いた笑いをあげるしかない。
「ふん。仲間みんな勢ぞろいか。あの魔物つかいの小僧は…いないのか?
まあいい。ちょうどいい。神子もろとも始末してくれる!」
厄介なのはあの魔物使いの少年の能力だ、とボーダはおもっている。
そもそもあのとき、魔物使いの少年がいなければまちがいなく奇襲は成功していた。
ポータが合図すると、脇に控えていた二人の鎧に身をつつんだ男?達が剣をぬく。
クラトスは古めかしい大刀をかまえるポーダと対峙する。
「ジーニアス!コレットをたのむ!」
ロイドは剣のきっさきをゆらゆらさせながら、
「ほら、こっちだ。こいよ!」
からかうようにディザイアンを挑発する。
「くそ!小僧!いくぞ!」
「レイトラスト!」
そこへつっこんできたうちの一人の背中にコレットのチャクラムが命中する。
「ぐわっ!」
バランスを失い一人がたおれる。
すかさず残った一方をロイドが切り捨てる。
それを見届けたジーニアスはクラトスの救援にむかおうと絨毯をける。
「ストーンブラスト!」
ポータの足元から次々に石つぶてがとびだす。
一応室内。
ゆえに大きい技はつかえない。
それゆえの小技。
大刀を振りかざしていたポータに一瞬の隙ができ、それを逃さず瞬迅剣を繰り出すクラトス。
ポータは激しいつきを必至にかわしてはいたが、幾度か右腕に刃をうけ低くうめく。
そうこうしているうちにロイド達もクラトスの加勢にとやってくる。
「き…貴様…やはり、さすがというべか……」
ごとり、と大刀がおちる。
怒りに燃えた目でクラトスを睨みつけると血の滴る腕をおさえながら、
奥にある扉のほうへと移動してゆく。
「いいのか?」
このまま逃がしてもいいのか、とクラトスにきくがクラトスは無言のまま。
「さてと。エミルが脱出口を開いてくれているわ。いきましょ」
何やら悲鳴のようなものが絶えずきこえていた外からはぱたり、とそれがんでいる。
そして。
「ロイド。ここに案内される途中。あのこからいろいろと聞いたわ。迷惑をかけたうね」
「そんなことない!巻き込んだのはむしろ俺のほうだ…先生の弟なのに…ごめん」
調子にのっていたのはみとめる。
姿をみた相手は倒したから大丈夫だ、と。
どうやったのかはわからないが、その場に誰がいたのか確認する術が彼らにはあったらしい。
たしかにここの技術力をみるかぎりそんなことは彼らにとっては簡単だったのだろう。
知らなかったロイドのほうが無知であり、あなどっていたに他ならない。
「二人とも。話しはあとにしろ。こんなところに長居はむようだ」
「そういや、ここはどこなんだ?」
「おそらく確実に奴らの基地ね。みたこともない機械がたくさんだもの。
ディザイアンでなければここまでの技術力はないはずよ」
「シルヴァラントペースってところかな?この基地」
部屋をでるといたるところに男?たちがころがっている。
なぜか皆けいれんしたり、口から泡をふいたりしているようだが。
しかし血匂のようなものは感じない。
まるで人が倒れているのが道しるべのように、ものすごい静かのなか、
すんなりと出口までたどりつく。
「あ、おかえり~。ロイドったらどじったね~」
「あのな……」
のんびりとぶらぶら、そこにある何かにこしかけていってくるエミルは
まったくもって緊張感の欠片もない。
「エミル。それはそうとどうやったのかしら?皆倒れてたけど?」
「え?ああ。ただ夢の操作が得意な友達がいたから、お願いしただけだよ?
たぶん素敵な夢みて気絶したりしたんじゃないのかな?」
その素敵な夢、というのが果てしなく怖いような気がするのはその場にいる誰ものきのせいか。
何しろ恐怖にはりついたような表情で気絶していたものもいたのである。
ぴょん、とそこにあるはね?のようなものがついているナニか、からとびおりる。
「エミル様。内部の鎮圧は完了しました。彼らはどうしますか?」
いいつつも、テネブラエがどこからともなく姿をあらわす。
「ほっといていいよ」
「わかりました」
どうせどちらにしても彼らは彼らが一番怖い、とおもえし経験を心にて経験したのである。
根性のあるものならば立ち直るであろうが普通はそうそう立ち直れない。
「…お前は魔物に命令できるのか?」
「僕はただ、お願いしてるだけだよ?」
あるいみ命令ともいえるが、しかし強制はしていない。
むしろ魔物達のほうが率先してやりたがる。
にこやかにいうエミルの笑顔に嘘はないようで、クラトスはただため息をつくばかり。
この施設の内部でしかもクルシスの技術であるいみ使役していたはずの魔物達。
にもかかわず、このエミルという少年はお願いしただけ、といっている。
すなわち、彼の魔物にたいする力はそんな技術力より強い、ということに他ならない。
もっとも、魔物達が勝手に率先してやった、という可能性もすてがたいが…
どちらにしてもここにくるまでまだ二日とたっていない。
まだまだクラトスもこのエミルという少年に関してはまったくもってつかめない。
たわいのない会話をしつつも、とりあえずひとまず彼らはトリエットにと向かうことに。
ではまた~♪
2013年8月2日(金)某日
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