まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
ようやくしばらく内容停滞?してたけど、ストーリー軸にすすんでいきます。
…ダイクの家とかとばしてもよかったけど、
ミトスが熱をだしたよ~、何でミトスが寒さかんじるの?
とかフラノールで今後あるそれらの疑問解消&複線をかねてあえてだしときました……
容量的にあとがきに別話の続きあり
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「しかし、ここで全員がそろっていても、時間がないのではないのか?」
たしかにリーガルのいうとおり。
何よりも。
こうしている間にも犠牲者は増えるであろう。
「だけど、ミトスが……」
「ミトスなら心配いらん。わしがみておる。ロイド、お前達はお前達のすることをすればいい」
コレットが起きてきて、もう問題ない、と当人からいわれても、
いつも心配ない、といっては自分のことをひた隠しにしているコレットのこと。
ロイドがしつこくコレットに問いかけている最中のリーガルの台詞。
「なら、僕がのこってミトスをみてるよ。ハーブティーとかの調合もあるしね。
リフィルさん達は、せっかくなんだし、シルフの契約にいってくればいいんじゃないのかな?
地図からして、ここからまっすぐにレアバード、もしくはエレメンタルカーゴで移動すれば、すぐにつくだろうし」
ちょうどここ、イセリアから海をこえてゆけば、西側にすすんでいけばバラグラフ王廟跡にとたどりつく。
ミトスがわけている世界は球体ごとにふりわけているがゆえ、世界地図にのっている端から端へ、
とつながっているこの世界。
もともと、世界そのものがひとつの惑星、という球体を帯びた世界である以上、
そしてまた、球体ごとの世界にわけ、それらをつなぐべく間にデリスカーラーンをおき、
それらをつなぎとめている役割をしているのがエターナルソードの力。
さらに簡単に説明するならば、本来の惑星の上に二つの球体があり、それらを上空にある、
彗星とエターナルソード…すなわち、剣の精霊の力によってつなぎとめているにほかならない。
もっともそこまで世界の仕組みを詳しく彼らが知るよしもないのだが。
「レアバードの機能も心配だわ。そもそも途中で墜落、ということになったら洒落にならないもの」
マナを利用している、とはいうが、以前よりはマナが濃くなったとはいえ、
完全に満たされている、ともおもえない。
途中でマナ不足で墜落しました、では洒落にならない。
何しろ海を越えてゆく場合、墜落したらそこには海、しかないのだから。
「なら、エレメンタルカーゴで移動するしかないよ。
ウンディーネの力をつかえばここからここまでは移動は可能のはずだよ」
いいつつも、地図を机の上にひらき、そんなことをいっているしいな。
どうやら以前こちらにきたときに、こちら側、シルヴァランド側の地図は手にいれていたらしい。
「なら、きまり、だな」
「…はやく、テセアラにも移動できるようにならないかな…ミトスが心配だよ…」
「こっちには腕のいい医者とかいないのかい?」
「医者は多いけども、だけど……」
リフィルがいいよどむ。
「…ハーフエルフをみてくれる医者はほとんどいないんだ。
ミトスの耳は僕らみたいにまるくないみたいだからエルフの血が濃いいんだろうけど」
ハーフエルフだからといって、全員が全員、耳が丸くなるわけではない。
むしろとがっているものも多々といる。
とはいえ、エルフのように完全に髪すらつきぬけて大きな耳、ではないにしろ。
「腕のいい医者なら、フラノールにいるけどね。
うちの頭領を以前みてくれた腕は確実にいい医者がいるんだよ。
念のためにミトスやコレットをみてもらうのもいいかもしれないね」
そんなしいなの言葉に。
「あら、なら、あちらにいけるようになったら、一度フラノールにいきましょうか」
「でも、アステルさんたち、どこにいったんだろ?」
「…おおかた、いつものごとくにアステルが研究というか周囲を調べるのに没頭してるんだろうよ。
こちらにはテセアラにはない植物もけっこうまだ群生しているみたいだしね」
すでにテセアラでは絶滅している、といわれている植物がまだあるらしい。
それにアステルがくいつかないはずはない。
リフィル達は知らない。
知っているのはエミルのみ。
今現在、アステルとリヒターは人間牧場のフォスティスと対談している、というその事実を。
当然のことながら知る由もない……
光と闇の協奏曲 ~風の精霊~
「距離的にはイズールドからパルマコスタにいくより近い、んだよねぇ。
なんだって、ここはこういう海路みたいなもんがないんだい?」
海路をすすめばわざわざ遠回り必要はないだろうに、とおもう。
そもそも、今別の大陸にいくためには、わざわざ砂漠をこえ、さらにその先のオサ山道をぬけ、
そして港町イズールドよりパルマコスタにと行く必要がある。
「それは仕方ないわ。イセリアの近くには人間牧場があるもの。
海路でディザイアンに襲われでもしたら逃げ場はないもの」
たしかにリフィルのいうとおり。
「できるなら、イセリアの人間牧場も破壊しておきたいのは山々なんだけど……」
しかし、下手に手をだしてまた村のひとに迷惑がかかっても、というのがある。
ロイド達がイセリアにはいれない、ということもあり、ダイクの家から北にとすすみ、
その先の大陸の端よりエレメンタルカーゴを海へとうかべ、移動することにしているこの一行。
ちょうどその先はちょっとした崖になっており、といっても降りる道はきちんとある、のだが。
その道をおり、そこからならば移動はあまり人目につかないこともあり問題ないだろう、
リフィルは海をいくことに多少、否、かなりしぶっていたが。
しかし、空をとび、ディザイアン達に目をつけられるよりは、なるべく目立たないほうがいいのもまた事実。
特に今は、ミトスが熱をだして寝込んでいる以上、自分達にたいする人質、として捕らえられれば手も足もでない。
その場合には、ミトスを切り捨てる必要もあるだろう、とはおもうが。
最も、エミルが残っている以上、何となくだがそんなことになってもエミルが何かしそうな気がひしひしとする。
また、ダイクのもとにいる以上は、彼は子供達を危険にはさらさないだろう、という確信もある。
だからこそ、こうして自分達だけでひとまず精霊の契約におもむくことを了承、したのだが。
海をわたってきたがゆえに、以前とは道順が異なる。
以前は普通に陸路をあるき、この場にロイド達はやってきていた。
海をすすんでゆくと、みおぼえのある橋がみえてきて、
その近くの海岸沿いにと接岸する。
視界の先にこれまたみおぼえのある石づくりの残骸がみてとれる。
エミルがダイクの家にと残り、アステルとリヒターは出発時にまでは戻らず、
結局のところ、ロイド達シルヴァランド一行に加え、
リーガル、プレセア、しいな、ゼロスといった八人での行動になっている今現在。
「ここが、かつての王廟跡、か」
ここ、シルヴァランドには王国、というものがない、ときく。
しかし、この遺跡の規模からしてかつては大きな国があったのであろう。
それくらいの予測はつく。
その遺跡をみつつぽつり、とリーガルがつぶやき、
「祭壇…の後ろがぽっかりとひらいています」
ふとみれば、階段をのぼりきったさきにある祭壇の先の壁がぽっかりとひらいているのがみてとれる。
そんなプレセアの台詞に、
「以前、コレットがここの封印を解放したんだ。そのときからどうやら入口は開かれたままみたい」
他の遺跡もそうなのかどうかはわからないが。
少なくとも、水の祭壇は自分達が移動しきるとどうじにその足場がきえたことから一概にそうとはいえないが、
それでも、とじられていたはずの入口を覆っていた岩はふさがれないままであったことを思い出す。
そんなプレセアにジーニアスが説明している様子が目にはいる。
「ここってたのしいんだよ~?」
コレットがそういい、
「「?」」
おもわず顔をみあわすリーガルとプレセア。
このあたり、この二人はあるいみどこか似通っているといってもよい。
ゼロスのほうはしいなから話しをきいたこどかあるので苦笑せざるをえない。
愚痴の一つとしてしいながこの遺跡のしかけをゼロスにはなしたのは、
しいながテセアラにもどり、ゼロスの屋敷に出向いていたときのこと。
「あれのどこがたのしいんだい!ところかまわず床から壁から針がつきでてくるあれのどこが!」
…しいなのほうはどうやら以前、この場にきたときのことをおもいだし、
おもわずそんなコレットにたいし、突っ込みをいれていたりする。
「がしゃこん、がしゃこんって、何かたのしくない?」
「「「いや。たのしくないから」」」
そんなコレットの言葉におもわず声をそろえてつっこみをいれているロイド、ジーニアス、しいなの三人。
「「針?」」
その意味はリーガルとプレセアにはわからない。
そもそも、この場にきたことのない二人に意味がわかるはずがない。
屋外における新鮮な風。
たしかに気をぬけば壁から床からとびでてくる針に串刺しになってしまいそうな仕掛けをどうにかかわし、
ようやく目的地である最深部へとたどりつく。
最深部には階段があり、のぼってゆくと、今まで薄暗い遺跡の中にいたからか、
太陽の光がとてもまぶしくかんじ、おもわず目をほそめてしまう。
「しいな」
「ああ」
ロイドにいわれ、祭壇の前に一歩、しいなは進み出る。
それとともに、
「マナが集まってくるよ!」
ジーニアスの叫びと、緑の光が収縮するのはほぼ同時。
緑の光が祭壇からたちのぼり、それがやがて一つの塊となりはじけ飛ぶとともに、
一つの形をなしてゆく。
そこには、羽のはえた小さな人間のようなものがふわふわとういているのがみてとれる。
始めは一人であったその姿は、まるで分離するかのごとくに左右に分かれ、
合計三人の翼をもった人の姿を形とる。
「あなたは召喚士ですね?私たち三姉妹はすでにミトスと契約をかわしています」
中央にいる鳥の翼のようなものをもつ緑の髪をしているおそらくはシルフ、なのであろう。
中央にいるシルフがしいなたちをみつつといかける。
すでにウェントスからも連絡がはいり、また以前にラタトスクからも聞かされている。
新たな契約の上書きとともに、表向きにも楔から解放されたようにみせたほうがいいだろう。
とはセンチュリオン達もいっていた。
そしてまた、彼ら精霊とてその想いは同じ。
自分達が自力で解放されてしまえば、そこにかならず何かを勘づかれてしまう。
ラタトスクすら裏切っているあのミトスである。
王が目覚めたことをしり、何をしてくるか予測がつかない。
下手をすれば王をコアにもどし、その力を利用する、ともかぎらない。
…もっとも、王がたやすくコアに戻されるかどうか、はともかくとして。
「我はしいなシルフがミトスとの契約を破棄し、我と契約することを望む」
シルフ達がそんな感想を抱いているなど知るよしもなく、しいながシルフ達にむかって語りかける。
「なるほどね~。ようやく次の契約者ってわけか」
もっとも、彼らのことは以前にここにきたときに知ってはいるが。
しいなの言葉をうけ、次に薄紫の髪をし蝶のような羽をもつシルフが腕をくみつついってくる。
そして。
「じゃあ、あなた達の力をためさせてもらうね。あ、人数は四人までだからね」
続いて桃色の髪をしている残されたもう一体のシルフが続きざまにいってくるが。
何だろう。
何かどこかできいたようなきがする。
そんなことをおもい、おもわず首をかしげるロイドに対し、
「水の精霊、ウンディーネと同じようなことをいうのね」
リフィルが何やら思案しつつもそんなことをいってくる。
事実、ウンディーネと契約をむすぶときも、精霊より四人で、という制限がついた。
「だって、ヒトは空をとべないでしょ?制限つけないと、
人数おおくてこの足場から戦いの最中におっこちてもしらないよ?」
たしかに、この場はあるいみで高い位置にとある。
遺跡の中でもおそらくは一番頂上、なのであろう。
たしかにシルフの言い分は一理ある。
あるが……
「ちなみにミトス達も四人で挑戦したよ?」
「あの当時はまだミトスもマーテルも空はとべなかったもんねぇ」
「「「え?」」」
ふと何やら重要なことをさらり、と聞いたような気がする。
シルフ達の会話におもわず顔をみあわせるリフィル達。
ちなみにロイドは意味がわかっていない。
逆をいえば、つまり精霊と契約したとき、まだミトスは天使でなかった、ということになる。
そのことをいち早くきづいたリフィル。
ゼロスもおもわずそんなリフィルと視線をあわす。
どうやらまだ自分達は知らないことがありそうだ。
そうはおもうが。
「じゃ、戦うメンバーをきめてね~。契約する人が必ずはいってないと意味ないからね?」
何ともかるい精霊の言葉。
「あたしは必須だろ?回復役のリフィルも必要だし」
「前衛は必要でしょうね」
「俺様とロイド君、リフィル様としいなでいいんじゃねえか?
プレセアちゃんの大斧にしろ、リーガルの足技にしろ、この狭い足場ではあまり用をなさないだろうし。
下手をしたら足場を壊して俺様達まで地面に叩きつけられないっしょ。
しかし、ずいぶん高い位置にきたもんだねぇ」
階段をのぼったさきにある転移装置。
それを移動した先は遺跡の頂上。
端から下をみてみれば、けっこうな高さがあるのがみてとれる。
確実に家屋の二階以上の高さはある。
実際、今彼らがいるのはかつてのこの建物…王城であったこの場所の屋上部分にいたりする。
ちなみにかつてのここにあった城は全四階部分において構成されていた。
すなわち、ゼロス達は高さ的には四階の屋上にいるといって過言でない。
テセアラにある城の構造が三階において構成されていることから、
こちらのほうが高い、というのがうかがえる。
「遺跡っていうんだからたぶん足元とかもろいんじゃねえの?」
「…それは考えてなかった」
「そういや、以前にここにきたときは、エミルが一撃で封印の魔物を撃退してたしね…」
ゼロスの言葉にロイドがつぶやき、ジーニアスが思い出したようにいってくる。
「あれすごかったよなぁ。えっと、たしかしえなんとかって技だっけ?」
「もう。ロイド。獅子飛燕脚だよ。
というか、剣術をつかうロイドがわからなくて魔術オンリーの僕が覚えてるって何なのさ!」
ジーニアスのいい分は至極もっとも。
「へぇ。あのエミル君、上級技もつかえるんだ。それって二つの技を組み合わせた剣技だろ?」
「そうね。獅子戦吼と、飛燕連脚
たしかこの二つの技を組み合わせた剣技だったはずよ」
ゼロスの問いかけにリフィルが答える。
「ロイド。たしか以前、クラトスさんからもらった、上級剣術指南ってのちゃんとよんでる?」
「うっ!」
ざっとみて、ねむくなったがゆえにきちんとロイドは実はみていない。
ゆえにジーニアスの言葉に視線をおよがせつつも、
「よ、よんでるさ」
「…嘘つき」
「嘘ね」
「嘘だな」
「…嘘、とみました」
「……そんなものをもっているのか?」
ジーニアスがそんなロイドにぽそり、といい、リフィルもすばやく肯定をしめす。
そしてゼロスもロイドの態度をみてあきれつつづふやき、プレセアまでが同意していたりする。
一人、リーガルが違うところに注目し、
「今度、その指南書というものをみせてもらえないだろうか?」
「え?かまわないけど、リーガル、剣…つかうのか?」
それでなくてもいまだに手枷をはずさないままで足技だけでどうにかしているリーガルである。
ゆえにロイドの疑問も至極もっとも。
「今、発売されているものとの誤差があるのかみてみたいだけだ」
「……まじめだねぇ」
リーガルのいいたいことを察知し、ゼロスがあきれたようにリーガルにたいし言い放つが、
そんなゼロスにリーガルは無言でかえす。
その意味をこの場で理解できているものがいるはずもなく、全員が首をかしげていたりする。
「発売?テセアラではいろいろと何かあるんですか~?」
「……お~い。割って入るようでわるいけどさ~。
ほっといたらたぶん会話がずれていくような気がするし。で、誰が挑戦するの?
契約しないのなら僕達、きえるよ?」
のんびりとしたコレットのといかけに、リーガルが答えそうになったその直後。
精霊の一人…紫の髪をしているシルフよりそんな声がなげかけられる。
「ま、まっとくれよ。とりあえず、ならあたしにゼロスにロイドにリフィル。これでいいかい?」
「俺はかまわないけど」
「よっしゃ。俺様の華麗な剣さばきをとくとごらんあれ~。
ところで、美人のシルフのお姉様がた、契約がおわったら俺様とお茶しない?」
「「「・・・・・・・・・・・・・」」」
さらり、というゼロスの台詞にロイド達はおもわず無言になりはてる。
どうでもいいが、女性、とみれば精霊であろうが口説くのは何といえばいいのやら。
「俺様の勘では、一番初めに口をひらいた鳥のように華麗なシルフ様が長女で、
次に蝶のような華奢なシルフ様が次女で、ベレー帽のステキなシルフ様が三女とみた」
「すごい。僕達のことをすぐに見抜く人ってなかなかいないのに」
「珍しいですね。人目で私たち三姉妹の関係をみぬくとは」
「でも、なんでか私はいつも三女っていわれるんだよなぁ。なんでだろ?」
印象からして一番どこか弱そうにみえるから、とはいえないであろう。
絶対に。
全体的に桃色がかっているシルフはどこかふんわりとした感じがあり、
それゆえにぱっとみため、あまり強そうにみえないというか守られているような印象をうけてしまう。
…蓋をあけてみれば、一番この三女たるフィアレスが一番厄介、なのだが。
何しろシルフ三姉妹の中で一番体術にたけていたりする。
他の二人は自らのマナにおいて武器を使用して戦うことを選んでいる、というのにもかかわらず、である。
ちなみにこの三女に体術をおしえたのはセルシウス。
かつてはセルシウスとフィアレスはよく組み手をしあっていた仲でもある。
もっともそんなこまかなことをヒトが知るよしもないが。
「…あなたって、女性の姿をしていれば何でもいいのね……」
リフィルが盛大にため息をつきつつおもわずつぶやく。
「へ~。三姉妹なんだ。でも全員シルフってなんかどう呼べばいいんだ?」
「なら、ロイド、色でわけて呼ぶのはどうかな?桃ちゃん、緑ちゃん、紫ちゃんと」
「お、それいいな」
「…ねえ。姉様、なんで人間って勝手に名をつけようとするのかな?」
「いまにはじまったことじゃないでしょ?」
「ところで、戦うの?戦わないの?」
あるいみでカオス。
まったく話しがかみあっていない。
「まあいいや。とにかく、いこうぜ!しいな!」
「え?あ、ああ」
「やっとその気になりましたか」
「あなたたちの力、みせてもらうね!」
「久ふりに暴れられる~、たのしみ~」
何やら一人、異なったことをいっているような気がするのは、ロイド達の気のせいか。
それとともに、三人がそれぞれ、ロイド達を取り囲むようにして、
完全に正三角形の形をつくりだす。
「いっくよ~」
「いきます」
「たえられるかな?」
それとともに、それぞれの手になぜか剣、そして弓、そしてなぜか巨大な盾、が現れる。
どうやらそれぞれ扱う武器が異なる、らしい。
前衛、中衛、守り、それぞれがそれぞれの役目というか役割分担をしているシルフ達。
彼女達はどちらかといえば、戦いに自分達の精霊の力はつかわない。
むしろ、自らの力、すなわち技術のみで相手をみきわめる。
自分達の力をあつかうにふさわしいのか、肉体的にぶつかって見極めるために。
「やれらました~」
「うわぁ。つよいんだね。手加減してたわりには合格点かな?」
「うん。僕もきにいったよ。どっちにしても断ることはしなかったけどね~」
戦いはあるいみで攻防戦。
それでもロイド達が苦戦したのはいうまでもない。
何しろ相手は精霊ゆえか、攻撃をしてもまったくダメージをうけている様子がみられない。
そもそも、攻撃をしようとすれば、盾にとふせがれ、
ならば別なものをねらえば弓で狙い撃ちにされる。
ゆえにロイドとゼロスがそれぞれ、剣と弓をもっているシルフを相手にし、
ジーニアスがひたすらに盾をもっているシルフを後方から術で攻撃し、
リフィルがひたすらサポート、という形をとり、
決着がついたのは数刻後。
シルフ達からしてみれば、そのように命令が下っている以上、
とりあえず形式的に力を試したにすぎない。
「いいでしょう。誓いをたてなさい」
ゼロス曰く、シルフの長女だという…実際にそうらしく驚かざるをえないが。
そんなシルフ長女がしいなにといってくる。
「二つの世界がお互いを犠牲にしなくてもいい世界をつくりたい」
精霊達の言葉、すなわち断ることはしなかった、という台詞がきにはなるが、
しかし、契約してくれる、というのならしいな達からしても好都合。
それゆえに、しいなが誓いの言葉を精霊に対し言い放つ。
「わかりました。どうかあなた達は私たちを裏切らないでくださいね?」
裏切り。
それはまちがいなく、ミトス、のことをいっているのであろう。
ロイド達はミトスがどうして今のような世界にしたのかを聞かされている。
何もしらない状態ではシルフのいっている意味すらわからなかったであろう。
「すこしいいかしら?」
「何でしょう?」
しばし思案し、リフィルがシルフにとといかける。
そんなリフィルの問いかけに代表し、長女がリフィルの問いかけにこたえるが。
「あなた達と契約していたミトスはどんな誓いをあなたたちにたてていたのかしら?」
それがきになる。
どうも精霊の王オリジンとも契約をかわしていた、というかの勇者ミトス。
勇者ミトスの英雄譚にもその話しはまったくなかった。
「あのものは…あの子は、ミトスは、戦争をおわらせ、全ての命が共存できる世界をつくりたい。
その為に力をかしてほしい。でしたわ」
全ての命が共存できる世界。
それはまぎれもなく、ロイド達も目指しているもの。
シルフはしばし、ロイドをみて、
「あなたは、ミトスに似ている。まっすぐで、自分の願いをかなえるために行動しているようにみえる。
心をつよくもってください。大切なものが害されたとき、あなたも闇に堕ちてしまわないように」
それはシルフ達なりの忠告。
その瞳の輝きがかつてのミトスと重なるがゆえのシルフなりの忠告。
「俺?俺が…ミトスににている?」
こんな世界をつくりだした、ユグドラシルににている、といわれ感情のままにそんなことはない、
といいそうになるが、しかし精霊の瞳のその悲しみを何となく感じ取り、はっと我にともどる。
そう、ユグドラシルはかつて、勇者とまでいわれていたのである。
今のような行動をしはじめたのは、全ては姉を殺されたからだ、と自分はきいたではないか。
自分ならどうだろうか。
もしも、自分の力がない状態で大切な人達…コレットや先生、皆が殺されたら?
すくなくとも、コレットは自分の選択によって命を落としていた可能性がはるかにたかい。
あのまま、コレット一人にすべてまかせ、真実をしらないままにコレットを殺していたとしたならば。
自分はどうだろうか、とふとおもってしまう。
ロイドがそんな思いに捕われていると。
突如としてシルフの横、すなわちロイドたちの頭上に茶色い光が集まりはじける。
「おお~!シルフ!えっと、一応四千年ぶりといったほうがいいのか~?」
光がはじけたあとには、そこには土の精霊ノームの姿が。
ノームはシルフにむかってそんな言葉をなげかけているのがみてとれる。
「…この間の招集を除けば、そうでしょうね」
「いや、姉様、あの招集自体がそもそもありえない、というか」
「うん。ありえないよね。まあだから僕たちも安心できてるんだけど」
かの地では自分達も移動ができるだろう、とはおもっていた。
そもそもあの地はどちらかといえば世界樹の間に近い空間。
すなわち、地上世界とは異なる空間といってもよい。
だからこそ、あの場に移動ができた、のだが。
それと、センチュリオン達の力が満ちたことにより、また王の力がみちたことにより、
直結している精霊達の力もまた満ちていたからできたこと。
あるいみで安心できているのは、ラタトスクが…自分達の産みの親が目覚めている。
そのことがあるからこそ、精霊達はあまり心配していない。
どちらにしても、この大地自体は確実に存続することが決定されているのだから。
世界が自分達が生み出される前の状態…すなわち、瘴気にみちた魔界になる、というのはありえないのだから。
「とりあえず、かつてミトスによって勝手に定められた私たちの間に決められていたマナの流れ。
その流れは分断された形になったようですね」
もっとも、今はその流れは意味をなさないものになっているが。
「しばらくすると地震がおこるぞ~。とりあえず、形式上はマナの楔をひっこぬいたようなものになるからな」
「ま、そういうことさ」
あくまでも、表向きには、マナの楔をひっこぬいたがゆえに地震がおこっている。
そのようにミトスですら解釈するであろう。
王もよく考えるよね、とはおもうがそれは口にはださないでおく。
群発的な地震をいくつもおこし、ゆっくりと大地を切り分けて、
統合したときに違和感のないようにする、というのがラタトスクの決定。
その決定は全ての精霊達にセンチュリオン達を通じ伝わっている。
ノームのことばに、シルフ次女がさらり、とながす。
「皆、きをつけてね。それじゃ、まったね~」
シルフ三女がそういうとどうじ、現れたときと同様、
彼らは茶色と緑の光りとなり、そのままその光りははじけてきえる。
あとにはゆっくりと光をまといしおちてくる宝石がついた指輪がひとつ。
オパールの指輪。
それが精霊シルフとの契約の証。
しぱし消えていった精霊達をみおくったのち、おもわずそれぞれ顔をみあわせるしいな達。
「というか、今、招集とかいわなかったかい?精霊たち?」
オパールの指輪はゆっくりと光をまといながらもしいなの手の中にとおちてくる。
しかし、精霊達のいっていた台詞がきにかかる。
精霊を招集する、などそんなことができるものといえばかぎられてくる。
精霊の王か、あるいは…アステルにきいた、精霊の上に位置する、というセンチュリオン達か。
エミルがいればきくことも可能であったかもしれない。
そうおもう。
何しろエミルの傍にはセンチュリオン、となのっていたものがおり、
さらに彼らはエミルのことを主、とよんでいたのだから。
センチュリオンとエミルの間で何かしらの契約が交わされている可能性も否めない。
そう、自分が今、精霊と契約をかわしているように。
しかし、しいなは気づかない。
精霊達は自分達を契約者、といい、センチュリオン達はエミルを主、とよんでいる。
その差に。
「いってたね。というか、どういうことなんだろ?」
しいなの言葉にジーニアスも首をかけじる。
「あ、わかった。精霊さんたちもときどきあつまってお茶会とかしてるんだよ」
コレットがしばし首をかしげ、そんなことをいってくる。
「コレットさん。招集、とは誰かが呼寄せることであって、それとは違うような気がします」
そんなコレットにさらり、としごくもっともな突っ込みをいれているプレセアの姿。
「とりあえず、これで二組目、か。ノームとシルフ、ウンディーネとヴォルト。
イフリートと契約してるから次はえっと…たしか、氷の精霊だ!」
そんな彼らの会話をききつつも、とりあえずシルフのいったことは深く考えてもしかたない。
とばかりにわりきり、さらり、と何やらロイドらしからぬことをいっているロイド。
その言葉におもわず全員が一瞬硬直し驚きの表情をうかべ、
「めずらしい!ロイドがまちがえてないよ!」
本気で驚愕してさけんでいるジーニアスに、
「…明日は雨がふるわね。いえ、雹がふるかもしれないわ」
空をみあげつつ、本気でそんなことをつぶやいているリフィル。
「ちょ。ロイドく~ん。まさかロイド君まで病気になったとかいわないよな?」
ジーニアスが驚いたようにいい、リフィルが心配そうに空をみあげ、
ゼロスが驚愕したようにいってくる。
みればめずらしく、プレセアまでもが目をみひらいているのがロイドからしては心外であるが。
おそらくこの場にいるだれもの想いは同じ、であろう。
「む。何でだよ。いくら俺だって、光と闇が対になってるのはわかるぞ?
そうしたら、消去法だろ?雷のヴォルトと水のウンディーネ。風のシルフに土のノーム。
あとのこっているのは、光の精霊ルナとアスカに、闇の精霊シャドウ。
そしてたしか、氷の精霊、だっけ?だったら、のこってるのは氷の精霊だけじゃないか」
むっとしつついいきるロイド。
「ああ。なっとく。消去法か。そうだよね。ロイドがそこまでわかってるはずないものね」
たしかにいわれてみればそのとおり。
光と闇が一対になっていることくらいはいくらロイドでもわかるであろう。
そもそもわからないほうが怖い、はてしなく。
そう考えればたしかに消去法、といえる。
「でも、すばらしいわ。ロイド、あなたが消去法という言葉を間違えずにいえたことも!
そしてそれにおもいあたったことも!」
「…先生、俺をどうみてるんだよ……」
リフィルの本気でいっているその言葉をきき、がくり、とうなだれるしかないロイドの姿。
「りとあえず地上におりたほうがいいんじゃねえか?
あの精霊達がいってたことのとおりなら、地震がおこるかもしれないんだろ?
こんな足場の不安定なところで地震にあったら洒落にならないぜ?」
たしかにゼロスのいうとおり。
その言葉にそれぞれ顔をみあわせ、
「とりあえず、話しは一度、ここから出てからにしましょう」
リフィルの言葉に誰も反対することなく、とりあえず一度、この遺跡から外にとでることに。
ズズッン。
グラグラグラ。
「な、何だ!?じ、地震!?」
立っているのもままならないほどの巨大な揺れ。
びきびきと割れてゆく大地。
巨大な揺れとともに引き裂かれてゆく大地。
成す全てもなく、それを身守るしかできないのもまた事実。
もっとも、そのあたりに人がいない、というのがあるいみ救いといえるであろう。
さらにいえば、その周辺にはすでに魔物や動物達の姿はみあたらなくなっている。
それはすでに決定がなされてから、そこから撤退するように、と命がくだっていたのもあれば、
そのように自然界にいきるものには伝達が行きわたっているからにほからない。
知らないのは、自然の声をきくことのできないヒト、という種族のみ。
「精霊さんのいっていた…とおり、です」
「かなり大きいわ…津波が心配ね…」
大きな地震のあとは大なり小なり津波がおこることがあるらしい。
そのようにリフィルは文献にてしっている。
もっともこまかな地震はあれどもこのような巨大な地震を体験するのはリフィル達とて初めてのこと。
まるでつきあげるような振動と、そして左右に揺れ動くような振動。
大地全てが唸り声をあげているかのように、周囲全体が揺れている。
遺跡が崩れそうなのでリフィルがあわててロイド達にここから離れるようにと指示をだす。
皆、揺れる最中、何とか遺跡から少し離れた場所にまでたどりつくが、いまだに揺れはつづいているまま。
さらに揺れははげしくなり、それぞれが地面に手をついているこの現状。
たっていることすらままならなくなり、それぞれがおもわず大地にと手をつける。
どれくらいそうしていたであろうか。
揺れとともに何やら音がしたかとおもうと、みれば遺跡の一部が音をたてて崩れているのがみてとれる。
「ああ!貴重な遺跡が、パラグラフ王廟の遺跡がぁぁ!」
リフィルがそんなことを叫んでいるが。
「ふう。やっとおさまった……」
ようやくおさまり、ゆっくりと立ち上がる。
「ミトス達、大丈夫かな…」
地震はおそらく一部ではないであろう。
マナの楔を引き抜いた影響、というのならば今の地震はまちがいなく、
シルヴァランド全域…否、おそらくテセアラ側にもおこっていたはずである。
「被害状況が心配…ね」
たしかにここまで大きな地震だと、被害がでていてもおかしくはない。
「海だと危険だわ。念のためにレアバードで陸路を移動しましょう」
下手に海を移動していて津波に巻き込まれては洒落にならない。
もっとも、津波の場合は、沖にでていたほうがその被害はすくなくてすむ、が。
荒れた海を運航したことがないであろう彼らにそんな危険はさせられない。
すくなくとも、荒れた波をのりきっていくのはたいていなことではない、とリフィルは知っている。
それこそ自らの身にて経験したこと、なのだから。
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あとがきもどき:
薫:風の精霊シルフとの契約完了~、ちなみに地震の規模は今回は震度五強、くらいです。
次回でようやくでてくるボーダさん…ようやくテセアラ……
では、容量のくぎりてきに別話しの続きをば。
これまともにかきあげてるの、あともうちょい先までなんですよね…この別話しも…
あとはかきたいところだけかきなぐってる、というv
「…あ」
コレットが扉をノックしようとし、中から何やら声がきこえてくる。
すでに周囲はうすぐらく、星々とそして空に浮かぶ月の灯りが周囲をてらしだしている。
「正直にはなせ。どうして要の紋が必要なんだ?」
「今日、牧場で知り合ったひとが要の紋のないエクスフィアをつけていたからさ」
「牧場にいったのか!」
「ああ、悪かったよ!ちょっといろいろとあって……」
「ディザイアンにエクスフィアをみられなかっただろうな?」
「ああ。大丈夫だよ。でもどうしてこんなにこいつのことを隠すんだ?
今日村にきた傭兵なんかどうどうと装備してたぜ?」
「お前のエクスフィアは…特別なんだ」
「特別?ディザイアンが装備してるのとは違うのか?」
「…そのエクスフィアは、お前の母親の形見だ」
ディザイアンはそいつを奪うためにお前の母親を殺したんだ」
「本当…なのか?」
「牧場近くの崖でお前をひろったときの話しはしたな?そのとき母親にはまだ意識があった。
そのとききいた。間違いあるめえ」
「何でそれを今までだまってたんだよ!」
「いえばお前はディザイアンにつっこんでいっただろう?
昼間、救いの塔が出現した。あとはコレットお嬢ちゃんにまかせておけ。
そうすればディザイアンも滅びる」
「…だけどよ」
「お前はディザイアンにかかわるな!母親が命をかけてまもったエクスフィアとお前自身を大切にするんだ」
「…で、要の紋はつくってくれるのか?」
「ロイド!話しをきいてなかったのか!?」
「きいてたよ!きいたらなおさらほっとけねぇょ!」
「なぐることねえだろ!」
言い合いのち、ばたん、と扉からでてくるロイドの姿。
玄関からでてきたロイドとばったりと遭遇する形にコレットはなってしまう。
「・・あ。もしかして、今の…きいてたか?」
「……ごめん。僕のせいで……」
「…いいよ。別におまえのせいじゃない」
「…ねえ。ロイド。コレットと二人で話しをしていらっしゃいな。私たちはこのあたりにいますから」
「…わかった」
「ロイド。ベランダにいこ?」
「ちょっとまってくれ」
「うん。わかった。じゃあベンチでまってるね」
「…この墓石はだれのものだ?」
墓にかかれている言葉にどきり、とする。
アンナ・アーウィング。
そしてみた、みおぼえる姿。
ノイシュ…震える声でそうよぶと、嬉しそうに返事をしてきた。
ノイシュがいて、そしてロイドという名前・・そしてこの墓石。
「ああ。きいてただろ。俺の母さんだよ」
「アンナ…か。父親はいないのか?」
「…しらねぇ。でもダイクが俺の親父だよ」
「……フ。そうだな。変なことをきいた。すまない」
間違いが、ない。
この子は…この、ロイドは…私の……
生きて、いたのか…
あのとき、妻を手にかけたあと、息子ともども崖の下へ。
追手をどうにかしりぞけて崖の下にいってみたものは、血のあとと、何かの切れ端…
大切にしたい、とおもっていたものはそのとき、全てを失った。
そう、おもっていた。
おもっていたのに……
「気が向いたら花でもあげてくれ」
「あ、ああ」
「あれ?先生はあそこか。じゃあな」
墓の前でたたずんでいたのにきづいて声をかけた。
「ロイド」
「ん?」
「…いや、何でもない」
「?変なやつ」
まさか神子を監視にきて死んだとおもっていた息子にあうとは。
しかし、きにかかることがある。
ロイドのつけているあのエクスフィギュアはエンジェルス計画のもの。
…クルシスが手にいれようとしている成功例のうちのひとつ。
生きていたとわかった息子を失うことは避けたい。
「…アンナ…私は……許されない…のだろうな…それでも……」
それでも、影から護りたい、とおもう。
大切な、愛した人とのたったひとりの愛する息子、を。
絶対に自分が実父だ、と名乗ることはできなくても。
「先生も、あすからいなくなっちまうんだよな」
「あら。かなしんでくれるの?」
「あたりまえだろ」
「ふふ。ありがとう。ところでコレットのプレゼントはできたの?」
「あ、あとちょっとだよ」
「そう?まあ大丈夫よね。あなた図工だけは得意だものね。
でもあなた、半年前にやってきたエミルにあっさりと勉強追い抜かれてるのは問題よ?
あの子、ものすごい勢いで知識吸収してるし。…知識がかたよってるのよね。あの子…
なぜか昔のことはなんとなく、といいながらわかってるっぽいし。古代文字とか……」
ちなみにエミルが使用していた文字はあきらかに古代文字だったりする。
リフィルがそれに気づいて家につれていき、
古代遺跡のリーフなどをエミルに翻訳させたりしたのは記憶にあたらしい。
何しろ文字を使用することなど、かつて表にでてきていた古代大戦時くらいしかなかったからとしかいいようがない。
「…姉弟そろっていやないいかたするなぁ……」
「ごめん。ロイド。きくつもりじゃなかったんだけど」
「きにすんな」
「…ディザイアンはハーフエルフなんだよね?ロイドのお母さんの仇はハーフエルフってことなのかな?」
「ハーフエルフだからって全員がディザイアンに入るわけじゃないんだろ?そんなの関係ねえよ」
「そ…そうだよね。ごめん、へんなこときいたね」
「いや?エミルだってテネブだっていってるじゃないか。
種族とか関係ないってさ。一番重要なのは心だ!うん。
ヒトの中にだって心が腐ったやつもいる。エミルがいうのも一理あるとおもうんだよな。
たしかに魔物達のほうが純粋だものな。…ヒト、と違ってさ……」
「だね……、あと、昼間はほんとうにごめん……」
魔物達はよくもわるくも本能に忠実で、そのぶん判りやすい。
エミルになつく魔物達をみていればそれがよくわかる。
「お前のせいじゃないって。まあ追手もまいたし、平気だって」
「エミル、ノイシュと何はなしてるんだ?」
「ん?いろいろ」
「く~ん、く~ん……」
彼が悪いのはわかってます、わかってますけど……
不安そうにいってくる。
「うん。大丈夫。心配しないでもいいよ。ね?」
どうやらクラトスをどうにかするのでは、と心配してるらしい。
「というか君があやまる必要性はないとおもうんだよね。絶対に」
「く~ん、くぅぅぅ……」
だけど、あれでも私が主ときめた人ですし。
…なぜ王に手をかけたのか……
「はあ。あなたの気持ちもわかりますが、とりあえずエミル様の決定は決定です。今すぐにどうこうはなりませんよ」
「きゅわわわんっ!」
それはそうですけど、ですけど!闇のセンチュリオン様!
「まあ、君の気持もわかるけどね。進化したばかりの君を彼が保護してたみたいだし」
あのとき、進化したばかりの彼をクラトスが保護していたからこの子は戦争にかりだされずにすんだ。
念のために初期状態、もしくは形体変化をして海に逃れるかきいたが答えは否でもあった。
ちなみに当時、海の生物はメルネスやアクア、そしてウンディーネといったものたちが保護していたがゆえ、
地上のわずらわしい戦争からは一応回避がなりたっていた。
「…ほんと、おまえらなんで会話がなりたってるんだ?」
「わからないのが不思議とおもうけど?心で会話すればどんな命でも聞けない声はないよ?」
「それがわかんねぇっての」
本当に、このエミル、という少年はわからなすぎる。
エミル・キャスタニエ。
半年前にこの付近の森でたおれ、記憶喪失になっていた少年。
彼のことはいまだにロイド達は何も知らない……
「ごめんな。誕生日のプレゼント。まにあわなくって」
「いいよぉ。そんなの」
「でも、ああいうのって誕生日当日にもらうから意味があるんだろ?」
「じゃぁ、おめでとうっていってくれる?私が十六歳になれた記念に」
「ああ。おめでとう」
「ふふ。ありがう。ロイド。よかった。今日までいきてこれて。ロイドが傍にいてくれて」
「何いってるんだ。このあとも生きぬいて世界を再生するんだろ?」
「…そだね」
コレットは胸の上で指をくむ。
「・・・なあ、明日になったらさ。やっぱり俺もついていったらだめかな?」
「だめっていうか……ディザイアンに狙われたりして危ない旅になるんだよ?」
「そのディザイアンだよ。俺、今まで母さんは事故で死んだとおもいこんでた。
…でも、母さんは殺されたんだ。ディザイアンの連中に!
それをしっちまったのに奴らと不可侵契約を結んでいる村で暮らすなんて俺にはできないよ」
「…そだね。……私たち、明日のお昼に旅立つの。だからお昼頃村にきてくれる?」
「…ああ。わかった!これでお前が天使になるのをこの目でみられるんだな」
「……うん。やっぱり、あのレミエル様が本当のお父様だったんだね。
私…天使の子供だったんだ……」
「いいじゃないか。どっちが本当の父親でも、コレットはコレットだ。何もかわんねぇ。
ただ親父が二人いるだけだよ。人より多くて得した、っとおもっとけ」
「…うん。ロイドがいうならそうするね」
「それにしても再生の旅か。なにかちょっとわくわくするよ」
「そうだね。封印を解放して天使になって、そして最後には……」
命をもってして世界にマナを。
それが神子の運命、そう習い育ってきた。
「?最後には?」
「ううん。何でもない。とにかく火の封印にいけばまたお父様にあえるんだし。私がんばるね」
「ああ。がんばろうな」
そんな会話をしていると、背後から声が。
「そろそろよろしい?」
「あ、はい。今いきます」
みればリフィルが迎えにきているらしい。
「じゃあね。ロイド」
「ああ。また明日な」
「うん。……さよなら」
「よぉし。さくっとプレゼントをつくっちまうか」
一晩あればできるであろう。
コレットの誕生日祝いのペンダント、が。
こんな感じの旅立ちですv別話しのほうはv
2013年7月30日(火)某日
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