まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

今回、まえぶりがちょこっと長いのはきにしないでください。
いれなくてもいいけど、ミエル達がすでにコレットの家族に説明してますよ~
そのことをいれたかっただけです(まて
あと、何で世界統合ののち、首都があんな小島に?という自分なりの解釈をばいれてみたりv
いや、だってなんであの小島にしかも首都、だけが取り残されてたの??状態です…
ちなみに、ちらっとのせたはいいものの、きちんと内容いれるかどうかなやんでる、
リヒター&フォスティス邂逅…後の複線、としてちらり、とだけだしとくだけにするかな…
容量的にあとがきに別話続きをば

########################################

「彼らの転送技術にて、産まれてくる子供に石を握らせることなどはたやすいですから」
がくり、と力がぬけてくる。
「なるほどのぉ。クルシスの天使様達がよもや……」
精霊の説明をうけて納得しないわけにはいかない。
娘がうまれたときはうれしかった。
が、握っていた石をみたときに絶望もした。
妻が自分を裏切ったのだ、と。
石をもってうまれたこどもは天使の子供の証。
ならば、この娘は自分の子ではなく、天使との子、ということになる。
すなわち、それは妻が天使と関係をもった、ということにほかならない。
石をもって産まれた子供のことをしり、人々は歓迎した。
マナの神子が誕生した、と。
この家系ではかならずそういった子供がうまれる、ということもしってはいた。
子供がうまれたとき、自分の子ではなく天使の子だ、とおもうと素直によろこべなかった。
妻をしんじられなくなってしまった。
そんな自分の気持ちがわかってしまったのかもしれない。
あるひ、妻はふらり、と外にいってしまい…そして、そのまま帰らぬものとなった。
ファイドラがお前が悪いのではない、むしろ天使様に選ばれたのだからほこれ、そういっても、
夫を心から愛していた彼女にはそれがたえられなかった。
妻に、子につらくあたったあのときの自分。
その愚かさに、あのときにもどって自分自身をしかりつけたくなってくる。
が、それはできない。
すでにもう妻はこの世にはいない。
残されたコレットにたいし、優しく接していたのは、妻を護れなかった、というあるいみ自責の念もあってゆえ。
「しかし、エミル、なんだってわざわざウンディーネを召喚させてまでこの人達に説明するんだい?」
しいなの疑問はしごく当然。
リフィルはコレットの治療でうごけない。
エミルにいわれ、ちょっとつきあってほしい、といわれてきた場所はイセリアで。
ここは、神子がうまれる街、として有名で、そしてまた、ディザイアンと不可侵契約を結んでいる、
という場所でも有名でもある村である。
その村にとあるコレットの生家。
そこにでむき、エミルがしいなにとたのんだのは、精霊を召喚し、彼らに今の現状を説明してほしい、というもの。
なぜに精霊を、という疑問はしいなにはあったが、エミル曰く、
精霊達は嘘をつけないから説明するのにこれほどまでに信憑性があるものはいない、そういわれた。
事実、しいなもまた、精霊研究所でそのようにならっている。
精霊達は嘘をつくことができない、と。
「だって、リフィルさん達の話しをきくかぎり、ずっとコレットってこの村でも天使の子。
  として扱われてたみたいなんですよね。でも、今のコレットってそれが違う、ってしってるでしょ?
  なのに実の父親や家族から他人行儀な扱いされるっていうのも何だかな、とかおもいません?」
それに、とおもう。
「たぶん、目をさましたら、リフィルさん達とコレットはここに説明にくる、とおもうんですよね。
  リフィルさんはジーニアス達のおわびをかねて。あとはファイドラさんたちに説明義務があるとおもって。
  ロイドとジーニアスはどうもこの村を追放されてるっぽいからはいれないにしても」
それでも、リフィルやコレットが追放されたわけではない。
普通の旅人、とおもわれたエミルやしいながすんなりとこの村にはいれたのとそれは同じ理由といえる。
「では、精霊様、今、神子は…コレットは、世界を真の意味で救うべく旅をしている、といわれるのですな?」
「どちらにしても、彼らが世界を元通りにしようとしている、というのだけは真実のようですね」
その言葉には嘘はない。
そこに含まれている様々な事情をのぞけば。
ロイド達が世界を一つにしようとしているのは事実。
だが、そこに精霊達の…世界の思惑がからんでくれば、また話しはことなってくる。
大地の一斉浄化か、それとも、その決定はいまだに王自ら下してはいない。
ゆえに水の精霊ウンディーネは嘘はいっていない。
「さてと、説明もおわりましたし、ダイクさんのところにもどりましょうか。しいなさん」
「え?ここの村長とかいう人のところにはいかないのかい?」
「行く必要はないとおもいますよ。というか、しいなさんが精霊を召喚できる。
  そうしったらたぶん、ここの村長は、その力を自分達のためにつかえ、とかいいかねませんし。
  追放したロイド達といっしょにいるなら村のためにつくすのがあたりまえだ、とかなんとかいって」
確実にいう。
あの村長はどうも自分達さえよければいい、その意識がつよい。
しかも、村人すらをもだまし、ディザイアンにさしだしているようなヒトである。
そんなもののところに精霊達を差し出すような真似をエミルがするはずもない。
「そもそも、ロイド達が追放された、というその理由。
  このあたりにいた子達からききましたけど、あきれる以外の理由でしかなかったですよ?
  牧場にいた知り合いをたすけようとしてロイドがそれを阻止し、
  追ってきたディザイアン達をロイドが自己防衛的に殺してしまったらしんですよね。
  そのときにロイドの姿は監視装置に移されていて、その手のエクスフィアが彼らにしられてしまい、
  ロイドのエクスフィアを手にいれようと、彼らがここイセリアにきたらしいんですよ。
  不可侵契約を結んでいる、ということを逆手にとって、ロイド達が自分達の牧場に侵入した、といって。
  で、追放した理由というのが、もともとロイドはこの村のものではなく、ドワーフに育てれられた、
  どこのものともしれないものなのだから自分達が保護してやる必要はない、みたいなことをいったらしいですよ」
「…何だよ。それ?」
エミルの言葉にあからさまにしいなが顔をゆがめる。
「情けないがそのとおりじゃよ。村長はロイドにそのようにいった。そして追放、じゃ。
  この村のもの…特に村長は自分さえよければいい、という考えがつよいやつじゃからの……」
ファイドラもあのときのことをおもいだし、おもわずため息をつかざるをえない。
そもそも、今の村長になったのも、前村長が行方不明になってしまい、今の村長が補佐をしていた彼がその地位についた。
村人はしらないが、その地位ほしさに、今の村長が、以前の村長をディザイアン達に引き渡したのだ、ということを。
「僕としては様子をみていたという子達の話しからして、しいなさんをそんな人にあわせたくないんですよね。
  そんな人のしそうなことの予測はたいがいつきますし。
  たぶん、一緒にいる人達の命がおしければ、とか、あとはロイド達の追放を解除してやるから精霊の力をよこせ。
  そんなことを確実にいうとおもいますよ?」
「…むなくそわるいね」
「あとは、クルシスの実体が実はハーフエルフで組織されているとかしったら、
  やはりハーフエルフは害でしかないとかひとくくりにして、それこそハーフエルフをみつけたら。
  みせしめ、とばかりに捉えて処刑、とかいいだしかねないような人だとおもいますよ?」
言外に、リフィルとジーニアスの身もあぶない、という意見をだすエミルの懸念はおそらく間違ってはいない。
人は、何か理不尽なことがあれば、その罪すべてを他者におしつけて心の安定をはかろうとする。
それがたとえ、罪なきものであっても、である。
その存在そのものが罪だ、もしくは罪をねつ造してでも他者におしつけて公開処刑などをおこなっていたりする。
それは今も昔もかわらない。
そして、時がたち、それが過ちであったとみとめたとしても、それは死んで自分達を守護してくれている、
とか自分達の都合のいいように捉え、その当時のものを断罪することすらない。
その死は必要不可欠だったのだ、と。
「いい例が生贄という制度ですね。そもそも生贄なんかでどうにもなるはずもないのに。
  生贄をささげれば自分達はすくわれる、そうおもって行動するヒトの何とおおいことか……」
それはこの神子、という再生の旅というシステム自体にもいえること。
「精霊様がおっしゃったような世界ならば、たしかに神子による再生の旅は、
  マガイモノの平和でしかなかった、というのならば、たしかにエミル殿のいうとおり、じゃろうな」
ファイドラの言葉はおもい。
そもそも、その神子の命がマナになり世界を潤す。
そう、彼ら神子の一族。
マナの一族は、そう聞かされてずっと育ってきているのだから、精霊に真実をおしえられても、
すぐさまに意識がそうそう簡単にきりかえられるはずもない。
しかし、いつも真実はひとつ。
それはマナの一族、としてそのことのみは理解しているつもり、である。
自分達が輝石をもってうまれた子供が天使の子供である、そう信じていたように。
最もそれも偽りの真実であった、らしいが。
何が真実で、何が偽りなのか。
自分達の目で、考えで見極めることが必要となっているのだろう。
何かが世界にておこっている。
それはファイドラの直感。
おそらく、それは、コレット達が…孫たちが、世界を元に戻そうとしていることにかかわっているのだろう。
しかし、それを理解してもファイドラには何もすることができない。
できるとすれば、一度もどってくるであろう、孫娘をただ何もいわずにうけいれてやること、のみ。

光と闇の協奏曲 ~それぞれの…~

「うわ~。あそこが人間牧場っていわれている場所か」
「…おい」
「ものすごい警備だねぇ。なんか武装している人達がいっぱいいる。
  …あ、中はなんか人にものはこばせてる」
「……おい」
「さすがに兜かぶってるからか口元がわからないなぁ。おしい。
  普通に顔がでていれば、読唇術でもつかって何いってるかわかるのに」
「………おい、こら、アステル!」
おもわず口調が鋭くなってしまうのは仕方ない。
絶対に。
何しろこの友人、あれほど近づくな、といわれている場所がきになる、とばかりに。
その近くの高い木にのぼり、これまた双眼鏡をとりだして、先にとある牧場施設を観察しているのである。
「もう。何?リヒター。あまりうるさくしてると気づかれるよ?」
いくら木の上にいるとはいえ、気づかれない、という保障はない。
そもそも、ここにきたのもアステルのもっているマナ測定装置にて、
ハーフエルフが多々と集まっている場所を特定し、その結果、牧場を突き止めたにすぎない。
こちらにきてからアステルはまだ人間牧場をきちんと目の当たりにしていない。
ロイド達がむかって絶海牧場のときは、アステルとリヒターはパルマコスタにのこっていたし、
砂漠地帯にもそれらしきものはなかった。
この付近に人間牧場、といわれているエクスフィアの製造箇所…その製造方法が人をつかっている。
という注釈もつくが。
ともあれ、エクスフィア工場がきにならないはずはない。
今、テセアラにおいては秘密裏に生き物をつかったマナを取り出す研究が押し進められている。
エクスフィアだけではマナを賄うことができず、ならば生きているものからマナをとりだせばいいのでは。
という考えのもとに。
始めのころは植物などをつかっていたらしいが、ある研究者が、
ハーフエルフを処分しようとしてその実験に使用したのがそもそもの始まり、ときいている。
当然、アステルはもう抗議をしたが、今あるマナ以上に求めればとてつもない過ちにたどりつく。
そんな気がしたがゆえのアステルの台詞。
実際、アステルの危惧は正論、といえるであろう。
マナが安定しはじめたその直後、人里隠れて建設されていたそれらの研究施設は、
何らかの形で魔物達の襲撃をうけ、もののみごとに壊滅、した、ともきいている。
もしくは何らかの要素があったのか、地面が陥没してしまい、そのまま施設として使用できなくなった、とも。
そういう箇所は一か所や二か所ではない。
さすがに建設にも多大な資金がかかり、かといってまた建設するにも資金が必要。
というので今はその研究は一時停止されている状態、らしいのだが。
さすがに全世界のことを視通してそのような研究をしていることに気付いたラタトスクが、
魔物達に命じ行わせたことだなどとはアステル達はしらない。
局地的な自然現象もソルムに命じ、それ以上、ヒトが愚かなことをしないようにしないようにしただけのこと。
もっともあまりに愚かなことを考えているっぽいがゆえに、エミルからしてみれば、
かの地のみのマナをかなり制限しようか、とも思っているのが今の実情。
もっとも、地表の大地をかつてのように一つにもどした暁には、
かの地の首都は確実に隔離する予定ではある。
下手に行き来が可能な大陸にその本拠地をおけばヒトは何をしでかすかわからない。
エミルはといえばしいなにちょっとつきあってほしい、といい、どこかに出かけていっている。
ゼロスもまた、周辺を散歩してくる、といってあの場にはいなかった。
「興味があるからといって、近づくのは危険だ」
ここは、テセアラではないのである。
テセアラでは王立研究院の研究者だ、といえば大概免除されることが多いが。
そしてまた、アステルは普通の人。
ディザイアン、というのはハーフエルフで構成されている、ときく。
八百年以上前の文献を読み解いてみれば、たしかにそこにそんな記述もあったりした。
いわく、勇者ミトスと女神マーテルがマナを消費するディザイアンを封じたのだ、と。
しかし、今現在のテセアラのものたちは、独自の研究において、
ディザイアン云々、というよりは古代大戦のことにまでつきあたっている。
つまりは、古代大戦によって涸渇してしまったマナが全ての原因、と小さな子供でもしっている。
お伽噺として、勇者ミトスの英雄譚として、またマーテル教の物語のなかに、
それらのことはくみいられている。
真実と異なるのは、古代大戦も女神マーテルと盟約を結んだ勇者ミトスが、と書き換えられていること。
「捉われている人たちの話しきけないかなぁ……」
「ってこらまて!お前は、何をかんがえてるんだ!」
相変わらず、後先を考えていない、とおもう。
そんなリヒターの言葉にただただアステルはにこやかに笑みをうかべるのみ。

「ふむ。ハーフエルフと、ヒト、か」
監視装置に映し出されている人影二つ。
気づいているのかいないなか。
おそらく気づいていないのであろう。
その証拠として木の上からこちらを双眼鏡でうかがっている光景がみてとれる。
人のほうが白衣をきているのがきになるが。
このあたりで白衣、といえぱパルマコスタか。
しかし、わざわざこちらを監視するようなものがいる、ともおもえない。
しかし、きになるは、映し出されているハーフエルフのほう。
紅い髪。
それはとてもみおぼえのあるもので。
「あの人間とハーフエルフをここにつれてこい。ただし、生きたままでな」
「「は!」」
どちらにしろ、あの木から下りなければ移動は不可能であろう。
それに、ともおもう。
「……フレアの関係者…なのか?」
人とともにいきることを選んだかつての同胞。
もっとも、兄は組織にはいることを望み、妹のほうは自然とともにあることを望んだ。
ヒトが人を道具、として扱うのは間違っている、そういって。
もっとも、その考えのためにヒトに殺されてしまったらしいが。
愚かだとおもう。
ヒトを信じるからだ、と。
たしかに人は愚かなところもあるけどもいいところもあるのよ。
そういっていた彼女の面影によくにているとおもう。
だからこそ、監視装置の映像をみて、おもわずつぶやかずにはいられない。

「しまった!」
どこかで監視されていたのか、おそらくこちらがみていることにきづいたのであろう。
いつのまにか自分達がのぼっている木の下に、ディザイアンとおもわしきハーフエルフ達が集まっている。
それにきづきリヒターがおもわず毒づく。
もう少し足場がよければ、この場にレアバードを取り出し飛んで逃げることも可能であろうが。
自分はまだいいとおもう。
アステルがリヒターをあるいみ指名しているがゆえにこうして普通に外にもでれる。
アステルの護衛と補佐係り、として。


「親父!コレットは!?」
ルーンクレストを作成し、そしてコレットの治療にはいる、といわれたのは朝方。
その治療にかかる時間はさほどなかったにしろ、ロイドからしてみればあまりに長く感じたのもまた事実。
夜にダイクの家にたどり着いていたことを考えれば、
おそらく徹夜して作業したのであろうことは容易に予測がつく。
「うむ。大丈夫じゃ。まあ反動があるようでしばらくは眠っておるようじゃろうがの。
  救いはお前から預かったあの葉の力によって、閉じ込められていた人の念。
  すなわち魂達が浄化されたことじゃのぉ」
でなければ、ダイクとしても手も足もでなかった。
母なる大地の力をうけ、捉えられていたものたちは、その力によって解放された。
もっともそれはラタトスクの存在をコレットがつけている石が把握していたからに他ならない。
自分だけの力ではどうにもならなかったが、そこに補佐たる力があればどうにでもなる。
「じゃが、問題なのは、ミトスとかいう子のほうじゃの。あの熱のありようは……」
ここにきたときはさほど熱は微熱程度ではあったが。
きついたらさらに熱が悪化していた。
元々、ミトス達が天使化したのは、とあるものを封印するにあたり、彼らが提案したこと。
当時、ラタトスクとしては、彼らの決定にたいし、一応忠告ははたしたが。
だからこそ、エンブレムを常にもっているように、そういったはずなのに。
少なくとも、加護の源たるエンブレムをもっていればミトスの体そのものに歪みがたまる。
そのようなことはおこりえなかった。
それはミトスの心が負に侵されているがゆえに発生していた負という穢れ。
それが時とともに増幅していき、そして今にといたっている。
それら全ての穢れを今はまさに払っている状態。
あと数日もすれば確実に、ミトスの体にたまっていた穢れは一応取り払うことはできる。
もっとも、その穢れが取り払われたからといって、ミトスがその考えを改めるか。
そうとはいえないが。
それでも、その考えなどにたいし、今までのように蓋をする、のではなく、
すこしはきっかけになれば、ともおもう。
だからこそ、あえてエミルはミトスの中にたまっている歪みを先に取り払うことにした。
ちょうど一緒に行動している、ということを利用して。
ユアンやクラトスにも歪みはあれど、彼らは自分の感情は自分達なりに昇華している。
簡単にいえば自分の感情を素直にうけいれている。
ゆえに歪みはさほどミトスほどはたまっていない。
ミトスの歪みがたまっている原因は、自分がしていることと、本心ではしたいこと。
その差異が激しいがゆえ、無意識に自らのうちに負の感情をたまらせていっているにすぎない。
「今はリフィル殿がみてくれておる。…もっとも、料理だけはまかせられんが……」
ダイクもかつて、イセリアの村にいき、リフィルの手料理を…正確にいえば飲み物、だが、
ふるまわれたことがあるので、リフィルの料理の壊滅具合はしっている。
「ミトス…病み上がりで空の風でまた悪化したのかな……」
「でも、熱とかって体の中のわるいものを熱によって殺すから熱がでるってきいたことがあるよ?」
そんなジーニアスにいっているエミル。
「そういえば、アステル殿達は?」
何ともおもっていなかったが、この場にアステル達の姿がみうけられない。
この近くに牧場があるので遠くにはいかないように、といっていたはず、なのだが。
それにきづいたリーガルが首をかしげるが。
「アステルさん達なら、僕がしいなさんと出かけるときに外でみましたけど」
「そうなのか?しいな?」
「なんか、このあたりの生息を調べる、とかいってたから、釘はさしといたよ。
  人間牧場にはちかづくなっ、てね。あいつらは理不尽な理由でも攻撃してきかねないからね」
しいなからしてみれば、ここの人間牧場も壊滅させておきたい。
が、下手に手をだしてこのあたりにすまうものがルインの住人のような目にあわない、ともかぎらない。
ルインの街は、牧場から逃げ出したものをかくまった。
ただそれだけで襲われた。
そしてまた、ここイセリアの村もロイドが人間牧場にいた人物をたすけたばかりに、
そのせいで村が襲われ、ロイド達が追放された、としいなはリフィルから聞いてしっている。
「あ。そういえば、親父」
「ん?なんだ?」
ふと思い出したようなロイドの言葉に首をかしげてといかける。
「しばらくノイシュを預かっていてほしいんだ」
いきなりのロイドの申し出に、
「それはかまわんが、いったい?」
「これから危険な場所とかにも多々といくことになるからさ。
  洞窟とかいつもノイシュのやつ怖がってはいろうとしないけど。
  いつ何どきノイシュが危険になるかわかんねぇし」
そこまでいい、ぽりぽりと頭をかきつつ、
「俺、エミルにいわれるまでノイシュのことあまり考えてやってなかったなぁっておもってさ。
  たしかに、今まではエミルが洞窟とかにいったとき、傍についていたからノイシュも無事だったけど」
あのときもそうだったとおもう。
水の神殿。
観光客がいる中での封印の解放。
もしも、あの場にエミルがのこらず、ノイシュのみをのこしていったとおもう、
残されたノイシュがどんな目にあっていたか、考えたくもない。
おどろいたノイシュが間欠泉に自ら飛び込んでいた可能性もありえなくはない。
今のころほとんど危険、とおもわれしときはエミルが常に傍にいた。
もしくはエミルに説得?されたのかノイシュも一緒についてきていたこともあった。
これから全ての精霊達と契約をかわし、大樹を蘇らせるにあたり、
たしかにノイシュの安全を考えれば実家に預けておいたほうがよほどいい。
そもそも、少人数ならばまだノイシュにのって移動、ということで、
ノイシュは移動手段としてつれている犬、といって通用するが。
そもそもすでに人数は十二人、という大所帯。
まあ、体調がわるくなったときや具合がわるいときなどはノイシュの背にのる。
という方法がとれなくなるのはいたいが。
「ふむ。まあわしはかまわんがの」
「そもそも、アーシスになっているノイシュをあちら側に連れていること自体があるいみ危険ですしね。
  あの国、絶対にノイシュのことに気付いたら率先して手にいれようとしますよ。たぶん」
そんなエミルの言い回しに、
「そういえば。エミルって、ノイシュのことを異様にきにかけてるよね?どうして?」
それはちょっとしたジーニアスの疑問。
「え?だって、ノイシュはプロトゾーンだし。気にかけるのは当然でしょう?」
この惑星において初めてうみだせし命のひとつ。
「プロトゾーン?どこかできいたような……」
どこかできいたようなその言葉にジーニアスが首をかしげるが。
「ふむ。さすがは世界樹にかかわる品をもっているだけのことはあるの。
  おまえさん、ノイシュがプロトゾーンだ、ときづいておったのか」
「見る人がみればわかりますよ。アーシスの特徴をあそこまでだしてますし。
  まあ、ぱっとみため、オライアンに勘違いされるのもありますけど」
事実、アーシスとオライアンはとてもよく似ている。
何といってもその外見が。
体付などはオライアンのほうがすこしばかり小柄ではあるものの、
耳の形などがよくにていることから混合されることも多い。
この場にリフィルがいれば目を輝かしたであろう。
原初たる生命体。
それがプロトゾーン。
この世界で初めて誕生した種族の名。
海の中において単体生物、として誕生し、長い年月とともに進化してゆく理をもった生命体。
第一進化において、アクアンという魚類のような存在なり、
その後、エアロスという鳥類に進化、さらにアーシスという大地をかける生命体へと進化する。
今現在、ノイシュはこのアーシス、という進化過程にあり、
しばらくすれば次の段階にすすむこととなる。
この後は、フェンリル、ラーと呼ばれる存在ほと進化し、
最終的には魔を狩るもの…正確にいえば、大樹を守りしもの、となりえる存在としてうみだされた。
すなわち、単独において魔…すなわち瘴気に勝ちえる存在として、永き時間にわたり、
その身にマナをたくわえ、自らが制御できるように、という生命体としてうみだされたもの。
世界樹の守り手。
「?なあ、オ何とかって何だ?」
意味のわからないロイドがきいてくる。
「魔物の種類だよ。ノイシュによくにてるんだ」
「へぇ。そんな魔物がいるんだ」
「うん。光属性に属する子だけどね」
たわいのない会話をしているそんな中。
「あら。何か話しがはずんでいるようね」
コレットの治療にあたり、ロイドのベットはミトスがつかっているがゆえに、
コレットはダイクのベットにねかしつけている。
ダイクの部屋もロイドの部屋も一応、二階にあり、それゆえにゆっくりと二階からおりてくる人影ひとつ。
「あ、姉さん。…ミトスやコレットの様子は?」
「コレットのほうはしばらく眠っていれば大丈夫よ。ミトスも何とかおちついたわ」
降りてきた姉にとといかけているジーニアスにたいし、にこやかにこたえているリフィル。
「とりあえず、リフィルさんもダイクさんもお疲れさま。
  さっき、つくったものですけど、どうぞ」
いつのまにかつくっていたらしい。
エミルのつくったハーブティーを二人にとさしだすエミル。
「あら、気がきくわね」
ダイクが台所にいけば気づいたであろう。
そこに自分の家にはなかったものが一つ、ふえていることが。
ガラス容器でつくられ、その中に網が上部についている、
ハーブティーを入れるのにはうってつけの器が増えていたりする。
それは、ミトスの内部より周囲に発散された穢れを集め、形を変換させたにほかならない。
微弱なるマナにての変換でしかないので、誰にもきづかれていない。
「あら?何だか…」
消費した精神力…すなわち、マナが回復したような気がする。
そして何よりも使用できる量が増えたような気がし、おもわずリフィルが手にしているコップをみる。
あいかわらずというべきか。
エミルのつくりしハーブティーは一口のんだだけでも他との違いが一目瞭然。
あきらかにマナが大量に含まれており、またハープそのものの効果も必然的に高い。
それはリフィルはこれまでの旅でよくしっている。
「…エミル。これ何か、精神力を回復させるものだけでなく他にも何かいれてない?」
この感覚は、セボリーとよばれしハーブを使用したときににている、とおもう。
それゆえのといかけ。
「え?ああ、これ細かくしたブルーセボリーがはいってるからじゃないのかな?」
普通に使用しただけでも、使用者の器におけるマナの容量、すなわち精神力を向上させる効果をもつ。
「他と組み合わせればここまで呑みやすくなるのね」
普通、セボリーはそのぴりっとした食感から、主にスパイスや肉の臭みけしに利用される。
「ほう。これは。味わいといい。少しの刺激といい。料理にあいそうじゃな」
ダイクが一口のんでいってくる。
「これはレボリーとローズマリー、タイム、オレガノ。
  この四種類のハーブを乾燥させて混ぜ合わせたハーブミックスです。
  この組み合わせは魚の煮込み料理などに使うと臭み消しと風味付けになるので、
  しってるひとはしっている組み合わせだ、とおもうのですけど」
「あら、オレガノもこれはいっているの?たしか、効果は…」
「主な効果は消化促進、発汗作用、滅菌、ですね。
  これなら熱をだしているミトスにものみやすいかと」
ちなみみにタイムは爽やかな方向とほろ苦い風味があることでしられている。
一般的に魚や魚介料理、煮込み料理などに利用されているハーブの一つ。
また、乾燥させても香りが十分に残ることから、保存にも適しており、
リースやポプリ、といったものにも利用されているハーブの一つ。
「まあ、熱がでたときには呑みやすいものは便利じゃの。
  エミルとかいったか?このハーブを混ぜる割合をおしえてもらえんかの?
  このあたりではその組み分けはきいたことがないゆえの」
そんなエミルにダイクがといかける。
「いいですよ?まあ、用途に応じ……」
その割合を、利用する用途にわけて調合すれば、より効果は発揮される。
ちなみに、このハーブティーはローズマリーを主におおくし、その次にオレガノをいれている。
ローズマリーの甘さとタイムのほろにがい風味がちょうど相殺されとても呑みやすくなっている。
しばしそんな会話が彼らの間にてくりひろげられてゆく。
そんな会話をききつつも、
「…何か、話しがずれたような気がするのだが…」
「奇遇です。私もそう、おもいます…」
そんな彼らをみつつ、ぽそり、といっているリーガルとプレセア。
しかし、ハーブの用途について話しあっているダイクとエミル。
そして加えてリフィルだけでなくジーニアスも加わり、何やら話しはもりあがっている模様。
「しかし、ハーブの用途をしるのにはいいかもしれぬな。料理の幅がひろがる」
「…以外です。リーガルさん…料理…するんですか?」
「うむ。いつもマイ包丁をもっている」
「…そう、ですか」
いつのまにか、リーガルもそんな彼らに加わり、しばしこの場において、
ハーブの効能についての会話が繰り広げられてゆく……


                            ――Go To Next

Home    TOP     BACK    NEXT


$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$

あとがきもどき:
薫:こ…今回も話しがすすんでない!(汗
  次回からようやく話しがすすむ…は、はず(滝汗
  ともあれ、意味不明の回にまたまたなったので(自覚あり)
  あとがきのこちらに別話しの続きをば…


「…すばらしい!」
「先生?」
「二人とも!どうしてここに!教室で自習しているはずでしょう!?」
「や、やべえ!」
「姉さん、ごめんなさい!」
「次はロイドです。さあ、覚悟はよろしい?」
「や、やめろよっ!」
「ってぇ!エミルはいいのかよ!」
「…あの子にそんなことできるはずないでしょ!あの子は心配してきてくれたのよ?  
  おかげで誰も死なずにすんだのだし。さあ、二人とも。反省したら家にかえりなさい。
  今日の授業はなくなりました」
「姉さんは?」
「ファイドラ様の許可をえたのでもうしばらくこの聖堂を調べます。
  一般人がここに入れる機会は滅多にないですからね」
「ふ…ふはははは!」
「?何だ?」
「……知らないほうがいいよ……」

何やら不気味な高笑いがしている聖堂をあとにする。
「コレット。これからどうするんだろ?」
「あの天使は封印を解放しろとかいってたよな?それでコレットは天使になるって……」
「コレット…旅にでちゃうんだ……」
村への帰り道、そんな会話をしつつも遠目に塔をみながらすすんでゆく二人。
すでにコレット達は先に村にもどったらしく姿もみえない。
「とりあえず、一度、教室にもどらないとね」
「そうだな」
少なくとも、家にかえるにしても荷物などはそのまま教室においたまま。
そんな会話をしつつ、二人はイセリアの村の彼らが通う教室へとむかってゆく。

「あ。姉さんだ」
「リフィル先生」
「あら。ロイド。ジーニアス。今日の授業はもうおわりよ?」
「それより、先生。コレットが旅にでるんだ。世界再生の旅に」
「ええ。きいてます。私も同行することになっているわ。ついでにエミルもね」
「え!そうなのか!?何でエミルまで!?」
「あの子がいたら魔物の襲撃の心配がないからよ」
「「あ~……」」
ものすごい納得である。
「コレット一人にいかせるわけにもいかないし。何よりエミルに対する魔物の態度は必ず旅の助けになりますからね」
「…なついてくるからな。ことごとく」
「…だね。ほっといてもなついてくるよね……」
「貢物までもってくるし……」
「たぶんエミルが冗談いったらそれ実行するぞ…魔物たち…あの様子だと……」
「前、エミルがノドかわいたなー、とかぽつっといったらことごとく果物とかとってきてたよ?」
「…だよな……」
以前にコレットを含めて近くにまでピクニックにいったときのこと。
コレットがノドかわいたね~といい、エミルもかわかない?
ときいたとき、え?かわいた…のかな?
と戸惑い気味にいったとたん、我先に、と魔物達がなぜか果物をもってきたのはいい思い出。
それをみてロイドとジーニアスはひきつるしかなかったが。
というかどこからもってきた!?
というほうがつよい。
そもそもこの異常気象にてこのあたりの作物はほとんど今は育っていない。
にもかかわらず、なのであるからして。
ちなみに予断ではあるが、それは実は大自然にも適応されてしまったりする。
つまり、彼が芽吹いてほしい、といえば即座に自然は反応する。
この世界のすべてなるものは彼のマナにて構成されているがゆえ。
「あ。でもそれだとジーニアスはどうするんだよ?先生?」
「フランクさんとファイドラ様に面倒をみてくださるよう願いしておいたわ」
「姉さん…僕……」
「ジーニアス。必ずかえってくるからそんな顔をしないの。
  ロイド。しばらくジーニアスをお願いね」
「ああ」
「姉さん、きをつけてね。むちゃしないでね。遺跡に近づかないでね」
「ふふ。大丈夫よ」
この笑みはあやしい。
…エミルは姉さんの遺跡モードなれちゃったからな……
なぜか古代文字がわかるエミルはひたすらリフィルに解読、ということをさせられていた。
それをみかねたテネブラエがエミル様の負担になるなら私がします!
と申し出て、そして今に至っていたりする。
「絶対かえってきてね」
ここは自分達がエルフ…ハーフエルフ、だとはいっていない。
すくなくとも、異種族である自分達をうけいれてくれた村。
ようやく定住できるかもしれない村なのである。
「ところで先生、何してたんだ?」
「しばらくこの教室ともお別れだからちょっとみにきていたのよ」
「そうなんだ……」
「それにしても。神託ってそんな大したことが起こるわけじゃなかったんだな」
「どんなことが起こるとおもってたの?」
「そりゃすげ~ことだよ」
「たとえばどんなことさ」
「山よりでっかい天使とかがさ。救いの塔をかかえて空からおりてくるんだよ。
  それで地面に塔をつきたてるんだ」
「…ロイド、寝言は寝てから言ってよね……」
「…はぁ。ロイド。あなたはどうしてそうなの?」
あきれる様子はさすが姉弟。
「再生の旅…か」
リフィルはここで教師をたのまれたときに、真実をきいている。
その旅は、コレットの命をささげるものである、ということを……


「…では、神子様の護衛はクラトス殿とリフィル殿にたのもう。エミルもいいかね?」
「あ。はい。こちらこそよろしくおねがいします」
「エミルもいっしょか~。うれしい。よろしくね。テネブちゃんも」
「…はぁ。もうその呼びかたにもなれました。私はエミル様が決められたことに従うまでです」
「エミル。あなたの記憶の手がかりがあるといいわね」
「はい。あ、あと料理は僕が担当しますね?」
というかすでに全てを思い出しているのだが、それはいわない。
そもそもいう必要性も感じない。
それゆえににこやかにいつものように笑みをうかべて返事をする。
「あら。それはうれしいわ。あなたの料理とてもおいしいもの」
「うん。エミルってばぜったいに料理やさんできるよ~?」
「…私に依存はない…が。それは?」
なぜにここに当たり前のように魔物?のような動物がいるのだろう。
黒ぽい猫のような、それでいてタキシードのようなものをきているようにみえる動物もどき。
「それ、とは失礼な。センチュリオンです」
しかも当然のような話している。
さらにこの場にいる誰もおどろいていないということは彼ら全員が知っている、ということ。
「えっと。この子はテネブラエ。僕の家族です」
「この子…エミルは半年前にこの近くの森で倒れてたところを発見されたのよ。
  記憶喪失になってて、自分の名前以外を覚えていなかったの。まだ記憶はもどっていないから。
  でもきっと親ごさんも心配してるとおもうし。なので今回の旅についていくことになっていたの」
「…おまえは、魔物使い、なのか?」
「さあ?でも魔物は皆友達ですから!」
きょとん、と首をかしげるどうさに嘘はない。
ちなみに、エミルにとってこの場合、魔物の友達とはしもべともいう。
何しろエミル自身が魔物達の王、なのだから。
「…この村の人々は驚かないのか?魔物つかい、といえば古代大戦以後絶滅したともいわれてたはずだが……」
常に魔物使い、とよばれるものはたった一人だけ。
それでも時代や場所でみかけられたのでいつのまにかそういう種族がある、とヒトが勘違いをおこしていただけ。
「…クラトスどの。気にしたらだめです」
「エミルには助けられてるからのぉ。魔物が食料配達してくれるおかげでこの異常気象でも食料にはこまらんわい。
  この半年。かっかっかっ」
「……は?」
「きにしたらだめよ。クラトス、だったわね?…一緒に旅をしたら嫌でもわかるわ」
「魔物…でもない、まして精霊でも…?しかも話す、だと?」
何やらひとりぶつぶついっているクラトス。
「あ。二人とも。さっきはありがとう」
「おお。ふたりとも。先ほどは御苦労だったな。これは礼じゃ。うけとっておくれ」
「ありがとうございます」
「ありがとう。ばあさん」
「なあ、今はなしてたの世界再生の旅のことか?」
「そうじゃ」
「すげぇ!俺もついていきてえ!」
「姉さんがいくなら僕もいきたい」
「足でまといだ。ことわる」
「な、なんだと!?」
「聖堂での戦いとはわけがちがう。子供は村でおとなしく留守番でもしているほうがいい」
「クラトス殿のいうとおりだ。さあ、私たちはまだ打ち合わせがある。
  お前たちはもうかえりなさい」
「二人とも、まって!」
「ごめんね。二人とも」
「別にお前があやまることじゃないだろ」
「そっか。ごめんね」
「あのな…ま、いっや」
「そうだ。コレット。お誕生日おめでとう。クッキーやいてきたよ?
  明日旅にでることがわかっていたらもっとちゃんとしたものをつくってきたんだけど……」
「ううん。ジーニアスのつくってくれるクッキーおいしいから好きだよ?どうもありがとう」
「…エミルにはかなわないけどね……。で、ロイドは?コレットに首飾りをつくってあげる約束だったよね?」
「まさか…わすれてたりして?」
「い、いやぁ。あとちょっとで完成なんだ。明日、旅立ち前にわたすよ。ほんとだぞ!」
「うれしい!じゃあ、出発時間がきまったらロイドの家までしらせにいくね?」
「でも、あぶなくないか?」
「わたし、神子として旅立つんだよ?だから、大丈夫。それじゃあね」
そのままコレットは再び家の中へ。
そんなコレットが家の中へはいってゆくのを確認したのち、
「…うそつき…」
「これからつくれば間に合うだろ」
「ふぅん。ま、いいけど。ところで今日はもうかえるんでしょ?途中まで一緒にいっていい?」
「いいけど、何か用事があるのか?」
「友達にあいにいくんだ」
「ふぅん。お前、村の外に俺以外の友達なんていたっけ?」
「いいでしょ?別に。それより準備がしたいからうちによっていってもらったらたすかるんだけど」
「それにしてもあのクラトスとかいうやつむかつく!」
「足手まといっていわれたのまだ根にもってるの?」
「そりゃ、たぶんあいつは強いだろうけどさ」
「たったひとつのとりえをけなされちゃ、腹もたつよねぇ」
「たったひとつっていうなっ!」
たわいのない会話をしながらその場をあとにしてゆく二人の姿。

「元気だなぁ。ね。テネブラエ」
くすくすくす。
彼らは聞こえている、とはおもわないであろう。
すくなくとも普通の人、では外の会話まではきこえない。
が、エミルには聞こえている。
エミルが今話している言葉はこの場ではテネブラエにしかわからない。
「…エミル様。正体を悟られないようにお気をつけてくださいね」
「わかってるよ」
それは声なき声。
不思議な旋律。

「さて。では出発は明日の朝、ということで」
「はい。神子のお勤め無事につとめてまいります。あ、あの。ロイドのところに報告にいってもいいですか?」
「…そうね。あなたもお別れをいいたいでしょうし。エミル、まだいいかしら?
  あそこまでいくのに魔物がでてきたら大変ですもの」
「このあたりの子は皆に危害なんて加えないとおもうけどな?」
自分がいる限りは。
すくなくとも、自分がここにいる以上、手だしはしないように、とテネブラエからも命令がだされている。
そしてまた、先の記憶の解放とともにだした声にて魔物達もしっかりと把握しているはずである。
ゆえに無意味に人に襲いかかる、ということは絶対にない、といいきれる。
「…念のため、よ。ディザイアンたちが大人しくしている、ともおもえないしね」
すくなくとも、エミルがいれば魔物がかってによってきて護衛の役割をしていることをリフィルは理解している。
そもそも村の外にでるたびにエミルの周囲に常に魔物がよってきて、
勝手に周囲を警戒しながら護衛の役割をはたしているのである。
さずかにこの半年、それを目の当たりにしていれば、もはやもう慣れたもの。
「ロイドの家。ドワーフのダイクさんの家はこの村からでた北東の位置にある森の中だからね。
  そろそろ日もくれるし。安全対策はしっかりとね」
「は~い」
「ふむ。では私もいこう。神子の安全が私の仕事だからな」
「…できればあなたにはきてほしくないのですが」
「もう。テネブラエったら」
「あら。あなたにしてはずいぶんときらってるのね」
苦笑しつつもテネブラエの背中をなでるエミルに、興味深そうにいっているリフィル。
「得体のしれないものを警戒して何がわるいのですか?私の優先はあくまでもエミル様の安全です」
きっぱりはっきり。
「ほっほっほっ。まあ、テネブラエ殿はエミル殿がらみだと融通がきかんからのぉ。
  クラトス殿。勘弁してやってくれ」
「…あ、ああ……」
どうやらこの反応は、彼がらみだとよくあること、らしい。
その証拠にここにいるコレットやコレットの家族に村長はまったくもって動じていない。
…本当に、諜報部のやつらは何をやってたんだ?このような報告があがってこないとは?
もしくは神子に関係ないことなのであげなくてもいい、とおもったか?
しかし、彼がこの村にきたのは半年前だ、という。
ならばまあわからなくはない。
何しろこの数年、異常気象がどちらの世界でも頻発し、そちらの原因究明に労力は裂かれていた、のだから……


次回でようやく本編のほうは風の神殿!
ようやくストーリーがすすむよ…あう……

2013年7月29日(月)某日

Home    TOP     BACK    NEXT