まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

みゅうう…
これがあるていどすすんだせいか、もういっこおもいついてしまった…
そっちは、エミルがディセンダーとして、古代大戦時にでていた、という…
でもどちらにしても、ミトスは結果的に裏切る形になってますけどね……
しかし、だんだん執筆スピードがぁ…汗
ちなみに、普通のノートにストーリーを書き写しているのですが(まて<本編の
ようやくフラノールイベントにまでこぎつけてます。
これ、あの全員のイベントの会話内容、どっかにくみいれよ…
しかし、脳内でこちらがうめつくされているせいなのでしょうけど、
あいかわらず、とまってるオリジ小説のほうの打ち込み気力がわいてこない…

########################################

ズズズ……
「な、なんだい!?」
遺跡をでると何やら地鳴りのような音がする。
それとともに。
少し先のほうで砂が舞い上がっているのがみてとれる。
どうやら外にでてみれば、ここにきたときが夕刻、であったはずなのに外はとても明るい。
太陽はほぼ真上のあたりにきており、やはりあの遺跡で一夜を過ごしてしまったらしい、というのが理解できる。
それはだんだんとちかづいてきて、その砂煙とこの音はどうやら連動しているらしい。
しいながおもわずみがまえる。
「これは…くるぞ!」
砂の中に何かいる。
砂の中を移動してくる何ものかのマナを感じ、リヒターが注意を促すとほぼ同時。
砂の中より、巨大な何か、が周囲の砂をまきこみつつもあらわれる。
周囲の砂がものすごい勢いでそちらのほうへとながれこんでいき、ちょっとした砂の穴のようなものができあがる。
「「な、シルスス!?」」
その姿をみて、おもわず身構えるリヒターとゼロス。
しかし、何だろう。
色が違う。
シルススの色はどちらかといえば灰に近い薄い紺色。
が、目の前にあらわれた魔物の色は完全なる茶色。
巨大なる体の一部を砂の中においたまま、その上部だけ砂の中からあらわしているがゆえ、
はたからみれば、砂からはえたナニか、にしかみえないそれ。
「これは…!?」
しいなはその魔物をみたことがある。
それこそあの人間牧場で。
エミルが小さく一言いうとともに呼びだした、巨大なる魔物。
アスカード牧場でみた、あの牧場をあるいみ壊滅させた砂漠地帯に生息しているはず、という魔物の姿がそこにある。
「あれ?どうかしたの?」
身構えるゼロス達とは対照的に、そんなそれにむかってはなしかけるエミル。
それとともに、巨大な体がエミルのほうに前倒しになり、
「あぶない!」
おもわずしいなが叫ぶが。
「いい子だね。で?何か用事?」
しかし、次の瞬間には唖然、とするしかない。
その巨大な巨体…全体像がみれればその姿は巨大なる長い体をしたその腹にいくつものちいさな足がある魔物だ、
と認識できるであろうが、大概、この魔物達はその体のほとんどを大地の中に隠し、一部分のみを地上にだしている。
連想するならば、巨大なミミズにいくつもの小さな足がうようよとついている、そのような魔物といってよい。
その体をぐっと前のめりにし、本来ならばその巨大な口で獲物をそのままぱくり、とまるのみ…するはず、なのに。
そのまま体をまえのめりにもってきて、なされるままにエミルになでられているのはこれいかに。
魔物から音とも鳴き声、とも何ともいえないようなものがきこえてくるが。
「え?前に食事をしたときに、そのまま預かってるものをどうするかとおもって?
  …何で先にイグニスにつたえなかったの?」
キュギギギ…
何ともいえない音がひびく。
「え?忘れてた?…まあ、いいけど。それで?その品物というのは?」
ちなみにこの魔物の属性は火属性。
すなわち、イグニス配下の魔物である。
ちらり、とイグニスに視線をむければ、イグニスも何やらため息をついている。
いまだにエミルの肩には小さくなっている鳥の魔物の姿をしたイグニスがのっており、
それゆえにイグニスからしても配下の行動にため息をつかざるをえない。
たしかに、イグニス当事者がこの場にいるので、この魔物の行動はわからなくはない。
ないが…
「「「うわ!?」」」
それとともに、魔物がその体をよじり、その口から何かをその場にはきだしてくる。
大量の砂とともにはきだされたそれは、何か棒、のようなもの。
「ふむ。闇属性の剣。か」
はきだされたは、地上においては、『魔剣ソウルイーター』とよばれしもの。
この剣の特徴は、この剣をもって命をうばったものの数におうじ、攻撃力があがってゆく、という代物。
ちなみに心よわきものがこれをもてば、剣そのものがもつ力に翻弄され、
ただの殺戮者にとなってしまう。
心がつよくあればそれはそれで戦いにおいては便利な品、といえるであろう。
そのままその剣に宿りし記憶をその場にてよみとる。
かつて、リビングアーマーの影響をうけ、魔族と契約をかわしたヒト、ネビリム。
そのものがかつて装備していた品であるらしい。
魔族と契約しているがゆえに、肉体は滅んでもその魂はいまだに健在で、
これらの品々に魂の欠片というか念の一部をやどしているっぽい。
このままさくっと浄化、もしくは消滅させてしまうのも楽ではあるが。
「他にも種類があるみたいだしな。とりあえず、御苦労さま」
どちらにしても、その剣をもちい、魔物やヒトを大量に殺戮しかけていたとある人間を止めたという理由は大きい。
人の伝承にはのこっていないが、手にいれたかの神官はその剣の力にまけ、
殺戮をくりかえすものとなっていた。
のこされた理性にて人に被害をあたえないために、砂漠に出向いたのだが。
その行動が、いつのまにか、砂漠に封印するため、というように彎曲してつたわり、今の伝承となっている。
とりあえず、この剣の中に捕われていた様々な魂のみはあとで解放するとして。
巨大な体をくねらせ、その場に彼らからいえば、かしこまっているサンドワームの体をやさしくなでる。
エミルがそういうとともに、サンドワームはふたたび地面にこれでもか、
というほどに口元をさげ、やがて、あらわれたときと同様に砂の中にときえてゆく。
「「「・・・・・・・・・・・・・」」」
何といえばいいのだろうか。
そのあまりの光景にリヒターとアステルとゼロスはおもわず無言となりはてる。
一方で、
「そうだね。エミルだからね。…あのアスカード人間牧場っていわれていたところでも、
  エミルはあの魔物を呼び出していたものね…」
どこか遠くをみつつつぶやいているしいな。
しばし、魔物が立ち去ってゆくのをみおくりつつ、
「あれ?みんな、どうかしたんですか?」
「「「どうかしたって……」」」
エミルからしてみれば何かしたような気はさらさらない。
が、普通の感覚からしてみれば、それはあきらかにありえないこと、なのだが。
ゆえにその場にいる三人はいろいろな意味で疲れたため息をもらすしか、ない……

光と闇の協奏曲 ~ドワーフのダイク~

「おかえりなさい。無事にどうやらもどったようね」
そういわれ、ほっとするのはおそらく気のせいではないであろう。
「あ、ああ。一応イフリートとは契約はできたよ。一応ね…」
ふと契約をかわしたときのことをおもいだし、しいなが多少遠い目をしながらもリフィルにと返事をかえす。
「?とりあえず、こちらは子供達の熱はどうにかさがったわ。でも時間がかかったのね。
  何かあったのかしら?」
彼らがでていったのは、昨日の夕方。
すでに今は翌日の午後。
あるいみ一日経過している、といって過言でない。
「あ、おかえり~。えへへ。怪我はない?みんな?」
どうやら起き上がれるようにはなったらしい。
しいが。
「ミトスはまだ微熱がつづいてはいるのだけどね」
コレットやプレセアの熱は完全にはさがったが、ミトスはいまだに微熱がつづいている。
それは天使化しマナが歪んでいた時間にもよる。
プレセアの歪みはあくまでも生体時間の停止、という歪みであったがゆえ、さほどの歪みではなく、
それゆえにこの地に宿りし力にてその歪みの修正が簡単にきいたがゆえに熱もはやくさがったにすぎない。
コレットのほうは強制的に無理やりに歪みをもたらされていたものの、
その時間はほんの一年あまり。
四千年以上もその体に歪みをかかえていたミトスがそう簡単に全ての歪みを浄化しおえるはずもない。
コレットがすでにどうやらおきあがっても問題ないらしく、これまたロイドがつくったっぽい、
簡単な机と椅子、その椅子にこしかけ机の上におかれた木の実をくりぬいてつくったっぽいコップをてにとり、
その中にふくまれている飲み物を口にしながらコレットがいってくる。
そんなコレットにつづき、リフィルがためいきまじりに説明してくるが。
「熱…なんて、ものすごく久しぶり…です。ご迷惑おかけしました」
しいなたちがここから出かけるときよりははるかに顔色のよくなったプレセアがいってくる。
「そういえば、ロイドは?」
みればこの場にロイドの姿がみあたらない。
「ロイドさんなら……」
「ロイドなら、その大工の腕というか器用さをかわれてここの集落にいるわよ」
ロイドが建てた小屋をみた集落のものが、是非に街にもその力を、といい有無をいわさずにひっぱっていった。
簡単にいえば、お願いしてくる街の人達にたいし、根負けした、といってよい。
そんな会話をしていると。
「ただいま~」
「もどったぞ~」
「あ、おかえり。ロイド。それにジーニアス」
ふと扉のほうから声がして、そちらをふりむきつつもコレットが出迎える。
「コレット、まだおきあがったらだめじゃないか」
「えへへ。大丈夫」
「お前の大丈夫は大丈夫じゃないからな」
何やらそんな会話がロイドとコレットの間で繰り広げられていたりする。
「まあ、とりあえず。んで?これからどうすんのよ?
  とりあえず、ロイドの育ての親のところにいくんっしょ?」
ゼロスの問いかけに。
「ええ。ダイクさんについでに、ルーンクレストをつくってもらいましょう」
たしかに。
マナリーフを手にいれたはいいもののそれから何もしていない。
エミルが以前にわたしていた世界樹の新芽を身につけていなければ、
コレットの体はまちがいなくその一部といわず腕の先のあたりまでが結晶化していたであろう。
新芽の波動にてその効果が緩和されているにすぎない。
もっとも、それでもゆっくりとではあるがその浸食はすすんでおり、外見からはわからないが、
コレットの皮膚の下ではゆっくりと結晶化がすすんでいたりする。
それゆえにコレットは何となく自分の体に違和感をかんじていたりするのだが。
それにきづいたのはリフィルのみ。
熱にて汗をかくコレットの体をふいていたときに、その異様な硬さにときがついた。
なぜか肩の一部にきらり、としたようなものがみえ、汚れかとおもったがそれが違う、ときづいたものの、
どうにもできるはずもなく。
書物でよんだ、病状をおもいだす。
それは、皮膚の結晶化。
テセアラのドワーフであるアルタステはおそらく、要の紋すらつくれない、といっていたことから、
確実にルーンクレストをつくりだすことは不可能、であろう。
ロイドがかわりにおこなうにしても不安がつきまとう。
ならば、せっかくシルヴァランドにきた以上、腕に信頼のあるダイクにたのめばいい、というのはリフィルの理論。
「そういえば、すっかりわすれてた」
リフィルの言葉にロイドがいい、
「治療方法などを明記したものは僕がとりあえず全部書き写していますから問題はないとはおもいますけど。
  シルヴァランドのドワーフ、かぁ。たのしみ」
「でも、親父、ルーンクレストってやつをつくれるのかな?」
「問題ないんじゃないかしら?そもそも、ドワーフに伝わる技にちかいものらしいもの。
  それにこっちは、昔からエクスフィアがより普及しているわ。おそらくしっているのではなくて?」
「しらなくても、その作成方法とかも一応調べていますから、それをつたえれば何とかなるとおもいますよ?」
興味があればとことんどこまでも深く調べつくす。
そのあたりの研究者気質がどうやら今回の一件ではかなり役にたつらしい。
そんなアステルの言葉に、
「と、こうアステルもいっていることですし。とにかく、コレットの体のことも心配だしね」
このままでいけば、あの症状のとおりにコレットの全身は結晶化してしまう。
そして、いずれは死にいたる。
それはリフィルとしてもみとめられない。
せっかく、マナの神子として、マーテルの器としての死をのがれられそう、なのに。
エクスフィアになってしまい死んでしまう、というのはみとめられない。
「しかし。問題は、病み上がりの子供達を砂漠越えさせるのは……」
リーガルがつぶやき。
「あ、なら。空からでもいきます?レアバードだとそれこそ心配でしょうし。
   空をとぶ子でもよべば問題はないんじゃあ?」
さらり、とそんな会話にわってはいり、何でもないようにいいきるエミル。
「え?エミル。それって、このあいだのシムなんとかってやつか?」
「え?シムルグでもいいし、他の子でもいいけど?」
ロイドのといかけに、首をかしげつつこたえるそんなエミルにたいし、
「ちょっと興味からきくんだけどさ。その他の子のたとえればの例として他にどんな?」
そんなエミルにたいし、しいながおそるおそるといかける。
「全員がのれる子といったら、ラグナサンライズとか、ベルウィルリングとか。
  動物系でいくなら、オライアンとか、スフィンクス…ああ、この子は二体でないとむり、かな?
  竜系だと、ミドガルズオルムとか…」
「も、もういいよ。つうかそんなのよびだせるのかい?」
「え?お願いしたらきてくれるとおもいますよ?」
というか、魔物達にことわれる道理がない。
おもわずエミルの傍にいる二柱たるセンチュリオン達はおもうがそれを口にだすことはない。
「やっぱりあまり目立たないのはシムルグかなぁ。今イセリアのマーテル教会聖堂ってところにあのこたちいるし。
  たぶんここの人達も見慣れているとおもうし」
エミルの言葉に嘘はない。
嘘はないが、彼らがいる場所はマーテル教会聖堂でも奥に近い場所。
それに何より彼らは滅多に人前には姿をあらわさない。
そもそも、今現在、その聖堂にいるのは、あらたに理をえた精霊の護衛をしているからに他ならない。
エミルがいま述べた魔物の種類はほとんどが伝説、に属している、といっても過言でない。
それゆえにしいなからしてみれば、おもわずひいてしまう。
これ以上、かたらせればおそろしい種族名がでてくる。
それはもう確実に。
それは直感。
「お。あの鳥かぁ。あの鳥、ものすごくふわふわだったよな」
「ふわふわ、ふかふか、です」
ロイドがいい、プレセアがシムルグの羽毛を思い出しぽつり、とつぶやく。
「それとも、前みたいに僕達だけがシムルグにのってリフィルさんたちはレアバードをつかいます?
  どっちかといえば全員であの子の背にのって移動したほうが楽だとはおもいますけどね。どうせ呼ぶなら」
たしかにエミルのいい分は的をえている。
えているが…何だろう。
古代の遺跡などで、神の使者、とまでいわれているその魔物をたやすく、しかも足代わりによぶ。
普通からしてみればありえない、としかいいようがない。
ないが、エミルにとってはそれはそれで当然で。
シムルグのその姿はどちらの世界にも伝承があり、どちらも神の使い、とされて絵本になどものっている。
確実に神子一行とおもわしきものたちがのっていても不自然ではない魔物、といってさしつかえがない。
にこやかにいうエミルのことばをうけ、
「…しばし、相談させてちょうだい……」
リフィル達大人組みとしてはただただそういうことしかできない……


「うわ~。きもちいい」
「…結局、こうなるのね……」
どちらにしても、砂漠を移動するよりは、海、もしくは空ならば子供達、
特にプレセアやコレット、ミトスに影響がないだろうか、という話しになり。
ここ、トリエット付近からイセリアにむけてゆくには、ちょっとした山道などもこえることになる。
そもそも、海にでるにしても、再びオサ山道をこえなければどうにもならない。
たしかに、海路でいけば、エレメンタルカーゴをつかい、ウンディーネの力を利用すれば、
たしかに安全にあの地にはたどりつく、であろうが。
ジーニアスが熱がつづいているミトスにあまり無理はさせたくない、といい。
かといって、いつまでもここにいる、というわけにはいかない。
ここに幾人かのこって、という意見もでたが、やはりここはあくまでも簡易的な小屋でしかない。
もっとも、イセリア方面にいけばそこには人間牧場があるのでいちがいに安全、とは言いがたいのだが。
テセアラにもどればディザイアンの脅威はない、とおもえるのだが、
いまだにレネゲードからの連絡がない以上、空間を超える方法がわからない。
しいなにきいても、あのときはレネゲードの端末を操作したので、
どのようにして移動するのかはわからない、とのことらしい。
「ミトス、本当に大丈夫?」
「あ…うん、でも…何だろう…風が…きもちいい、ね」
ずっとわすれていた。
風の匂いも、そしてその熱さも寒さも。
それらは不要、とばかりにその機能を完全に無効化させていた。
昔はこういった感性は何よりも必要だ、そうおもっていた自分自身を思い出す。
ジーニアスが心配そうにミトスにとはなしかける。
そんなジーニアスにミトスは苦笑しながらも返事をかえす。
今、彼らはいるのは空の上。
巨大なる鳥の背にのって飛行中。
ばさり、と翼が上下するたびに、ぐんっと前にすすんでゆく。
見下ろせば、大地が小さく完全にその姿が認識できる。
それこそ、地図でみていた大地がそのまま眼下にある。
すでに時間は夜ではあるが、明るく照らされている満月の光にて地上もよくみえる。
「シルヴァランドの地図ってこうなってるんだ。
  …世界が二つにわけられたときの理由ってどうなってたんだろ?」
いいつつも、そこにどうやら古の壁画から書き写していたらしい。
かつての本来あるべき大陸のありようをとりだし、みくらべているアステルの姿。
「僕にはよくわかりませんけど。たぶん、それぞれの勢力の国境、とかじゃないんですか?」
そんなアステルにふと素でそんなことをつぶやくミトス。
事実、かつて二つにわけたとき、それぞれの勢力がその時点で有していた大地ごときりとった。
「でも、この調子だと、ロイド達のいう、世界を一つにもどすっていっても。
  大地がかなり変動しますよね?アステルさんのもってる地図と今の地図をくらべても」
そんなアステルのもっている地図をのぞきこみつつもエミルが至極まっとうなことをいってくる。
「でも、世界が元の一つの世界にもどったとしても、この地図のような大地になるのか。
  それともまた別の大地になるのかはわかりませんし」
たしかにアステルのいい分はもっとも。
「しかし、世界を無理やりに二つに引き裂いた、ということは、それを元にもどすとすれば。
  強制的に歪めている状態である以上、原理として元の姿にもどる、のではないのか?」
そんな二人の会話にわってはいってきているリヒター。
まだ、世界をわけるときに、大陸ごとわけたりした、のならばここまで歪みは著しくはなかった。
が、当時の勢力陣にてふりわけたけっか、かなり不安定な空間となりはてている二つの世界。
そのためにエターナルソードの力場や大いなる実りの力の一部がつかわれており、
さらにその歪みをこの大地に降り注いでいたりするこの現状。
そんな歪みの中心にあったがゆえに、逆に歪なる負ともいえる力を種がためこんでいったのであろう。
それくらいは嫌でも予測はつく。
小さな歪みや負程度ならば、あの種子でも簡単に浄化できるほどの力をあたえていた、というのに。
それすらできなくなってきているのが嫌でもわかる。
「その可能性はなくはないけど。それだと大地震がおこりかねないね」
「…あいつら、それを念頭にいれてるのか?」
「いれてないとおもいますよ?というかそのことにも気づいてないかと」
アステルとリヒターのといににこやかにこたえるエミル。
事実、彼らは気づいていない。
自分が干渉していなかったら、とおもうとあるいみ呆れてしまう。
それこそ、むりやりに世界をつなぎとめていた楔をひっこぬくようなもの。
まあ、精霊達を解放してくれるのはたしかにありがたいが。
しかし、そこに要となる世界樹がなければ、まちがいなく、
互いの世界を強制的につなぎとめていた楔がとけたとたん、
互いの世界もそれぞれの世界同士で干渉しあい確実に消滅しまっているであろう。
もっとも、あくまでもミトスが歪めたのは地表部分のみであるがゆえ、
惑星そのものの根柢付近には関係ない、とはいうものの。
今ある大地の全ては一度、消滅してしまっていた、といっても過言でない。
おそらく確実にその可能性にすらおもいあたっていないのであろう。
あの人間達は。
今はラタトスクの命でセンチュリオン達が率先してマナを整えているがゆえ、
精霊達の楔をとりのぞいたとしても何の不都合はないといってよい。
その気になればラタトスクの力で二つの世界を元通りにすることも可能。
が、それをすると、より歪みが大きくなり、マナが乱れてしまうことからしないだけ。
それに何よりも、自ら初めてしまったことは自らの手で決着をつけてほしい。
そんな思いもあるのもまた事実。
もし、彼がこの惑星をすてデリスカーラーンとともに彗星として移住し、
よそにいこう、ときめて実行するならば、ラタトスクは戸惑わずに、
デリス・カーラーンにいる命全てを一度消すことをすでに決めている。
それこそ有無をいわさずに。
自分達だけさえよければそれでいい、そんな考えのものが外にでて、
しかも、ノルンのもとにでもたどりついたら洒落にならない、そうおもうがゆえ。
そんな考えのものがあの地におりたったとおもうとぞっとする。
まだあの子は若い。
ゆえにさばくこともできずに、おそらくはかつてのように大樹を人は枯らしてしまうであろう。
何しろクルシス、として組織されているものたちは、すべて魔科学の知識をもっている、のだからして。
「もしも、このとおりになったとしたら、アステルさん達はどこにどの街があったらいいな。
  とかおもいます?」
そんなことをおもいつつも、その感情は表にだすことなく、アステル達にとといかける。
そんな彼らの会話が耳にはいったのであろう。
ミトスとジーニアスがアステルのもっている古代地図をのぞきこむ。
「これは…」
ミトスはその地図に覚えがある。
かつて自分達がくらしていた世界の地図。
そこに地名とかはかかれていないが、この世界地図はまぎれもなく。
もっとも、ここには大戦中に沈んでしまったいくつかの島がのっていないようであるが。
「アステルさん、これって、世界が一つだった、っていうときの地図、なんですか?」
「だふんね。古代遺跡の中にあった地図らしきものを丁寧に書き写してるんだ。これ。
  たぶん、ここの二か所、この点のようなものが王国のあった場所だとおもうんだ」
それは、地図の二か所に点のようなものがかかれており、
一つはどこぞの島に、一つはちょっとした大陸の中央付近に。
ミトスにつづき、ジーニアスもつれらてその地図をのぞきこむ。
「えっと。ちょっとまって。たしか…あ、あった」
ばさり。
荷物の中からシルヴァランドの地図をとりだし、
「この突起してる島っぽいところ、パラグラフ王廟跡がある島ににてるし。
  なら、この付近の大陸がこのあたりに関係してた、のかな?」
「それがシルヴァランドの、ここの地図ですか。なら、この付近はこの島、でしょうかね?」
「だとしたら、このあたりがハイマやルインで、遺跡の街はこのあたりかな?」
「風の街はそのあたりだった、ね」
ふとミトスが思わずつぶやく。
「?風の街?ミトス?」
「あ、何でもない」
自分はここ、シルヴァランドにきたことがない、そのはずなのにそんなことをいえば疑われる。
ゆえにおもわずぽつり、とつぶやいたその台詞をあわてて訂正しているミトス。
ミトスが指差した地はミトスにとっても想いで深い場所。
…こともあろうに、姉とユアンが結婚式をあげた、風の街シルフィー。
何でもユアンの故郷、らしい。
今はたしか、アスカード、という名になっているようではあるが。
「なら、こっちのうちのテセアラはどのようになるかなぁ?」
やはりもっていたらしき、テラアセの世界地図をひろげ、
古代の地図…丁寧に皮用紙にインクにて書き込んでいるそれをひろげ、しばしうなりはじめるアステル。
とりあえず、病人がいる、というのでゆっくりと移動するように、そういわれているがゆえ、
普通よりもかなりゆっくりととんでいるゆえに風の抵抗はまったくない。
羽の羽ばたきも最小に抑えているゆえに、一度にすすむ距離もさほどない。
もっとも、大陸の中心あたりから端にいくまではさほどの時間はかからないであろう。
「そろそろ大陸の橋がみえてきたみたい。おりてくれるかな?」
「わかりました」
みれば、いつのまにか、大陸の中心あたりから、端っこのほうにと移動しているらしい。
眼下にみえている大地の様子がそのことをものがたっている。
その向こう側に横たわる大陸があるが、いわくそこにはネコニンの隠れ里があるのだ。
というもっぱらの噂。
エミルにいわれ、呼びだされていたシムルグのラティはそのままゆっくりと下降してゆく……


「もどってきたんだ……」
なつかしい空気。
おもわずジーニアスがぽつり、とつぶやく。
「でも、夜でよかったわ。昼間だとどんな騒ぎになるかわからないもの」
リフィルがいい。
「でも、リフィルさん、レアバードで移動していてもそれはいえますよね?」
何しろクルシスのものたちの移動方法はどうやら転移を基準としているようであるがゆえ、
レアバードなどといったものは使用しない。
あれを利用しているのはもっぱらレネゲードのものたちのみ。
それをしっているからこそのエミルの言葉。
しかし、リフィ。達はエミルが知っている、とはしらない。
ゆえに別の意味でとらえ、
「そうね。下手に昼間に空などから移動していたら、まちがいなく牧場の主に目をつけられかねないわ」
イセリアにいるものは、不可侵契約の範囲にはいるであろうが、自分達は異なる。
もっとも、今ではディザイアンもクルシスの末端組織、としっているがゆえ、
本気でコレットの命を奪おう、とはしないではあろうが。
しかし、逆の危惧もある。
クルシスの輝石を目覚めさせる方法、それは悲しみや怒り、というものが手っとり早いがゆえ、
だからこそ、ディザイアンは神子を狙うのだ、そうきかされた。
ならば、同行者を傷つけたり…簡単にいえば殺すことにより、輝石をより覚醒させる。
という方法を彼らがとらない、とはかぎらない。


「うん?お、ロイドじゃねえか。それに嬢ちゃんたちや、リフィル先生まで。
  …みたことない人間もいるようだが、再生の旅の途中じゃねえのか?」
いまだにディザイアン達はいなくなってはいない。
もっとも、彼らの旅の最中にて、向かい側の大陸の牧場が二つ、壊滅した、という噂は、
この辺りにまでとどいている。
シムルグの背から大地におりたち、シムルグとわかれ、
ひとまず向かうはダイクの家。
以前、旅だったときはこのあたりも雪景色であったが、今ではそれがない。
本来、このあたりの気候はおだやかで、雪などまずみることすらできなかったほど。
理由は簡単。
近くに砂漠があったがゆえに、雪になるまで気温が一気に下がらなかった、というのもある。
ある意味で大所帯。
ロイド、ジーニアス、リフィル、コレットに加え、エミルにしいながくわわって。
さらに、テセアラ側にてゼロスとプレセア、リーガルにアステルにリヒターという五人もくわわり、
十一人で行動していたところにミトスがくわわり、今の一行の人数は計十二人。
どこをどうみても、ちよっとした団体の旅業の一行、としか傍目にはうつらない。
もっとも、テセアラ側ではゼロスのことをしっているものがけっこういるがゆえ、
神子の同行者、という印象でとらえられてしまってしまうが。
先頭にロイドとコレットがおり、その次にミトスとジーニアス。
その背後にリーガルとプレセア。
アステルとリヒターは興味があるらしく、ちまちまとあっちにいったり、こっちにいったりしていたりする。
…正確にいえば、あっちにいき、こっちにいきふらふらしているアステルを、
必至にリヒターがどうにか制御というか暴走しようとしているのをとめている、のだが。
「親父!一応ただいま!」
どうやら夜だというのにダイクは外にでていたらしい。
おそらくはどこかの依頼をうけた帰り、なのだろう。
ちょうど家に入ろうとしていたそのときに、ロイド達の姿をみかけてたちどまる。
「あのな。親父、ちょっとお願いがあるんだけど」
「何だ、帰ってきたそうそう、藪から棒に?しかし、無事にコレットちゃんたちと合流できたようだな。
  リフィル先生、こいつが何か迷惑をかけてませんかな?」
いいつつも、ぐりぐりとロイドの頭をなでくりかえし、リフィルにとといかける。
髭をはやした小柄な男性。
ロイドの育ての親。
「まあ、狭い家だが、中に全員はいりんさい。もっとも全員分のイスはさすがにねぇぞ?」
よくて六人程度の椅子くらいしか家の中にはそろえていない。
まあ、つくれ、といわれればダイクはそれくらい軽くはあるが。
「えっと。ロイドさん?このひとは……」
プレセアがとまどいつつもといかけるが。
「これ、俺の親父」
「ロイド!これとは何だ!これとは!親にむかって!」
「ってぇ!お、おやじ、ぎぶ、ぎぶ!」
すかさずそんなロイドにヘッドロッグをかましロイドをはがいじめにするダイクの姿。
「たわむれてる人達はおいといて。ノイシュの家は…あ、あそこだね。いこっか、ノイシュ」
く~ん……
本当に自分はおいていかれてしまうのか。
そうおもい本当においていくのですか?
という言葉をエミルにむかってなげかけてくるノイシュ。
「…ここにいたほうがいいよ。そもそも、このまま歪みを継続させるつもりはさらさらない。
  かつての姿に戻すにしても、…大陸切り裂きは必要不可欠ではあるからね」
このあたりならば、大地を切り裂くにしても影響はない。
それに。
「ソルムの幻影を纏わせて他者にノイシュの種類を気づかれないようにはしているけど。
  テセアラ側では下手にノイシュ、君の正体がわかったら、賞金とかでもかけて手配しかねないから」
それこそあのテセアラのこと。
しかねない。
何しろ、ロイド達は知らないが、ゼロスがこちらに移動した、というのをこれ幸い、とばかりに、
教皇があることないこと国王にいい、ゼロスを手配しているほどなのてある。
そんな簡単に人の口車にのってしまう国王が納めている地にノイシュをおいておきたくはない。
というのがエミルとしての本音。
ノイシュに語りかけているその言葉の意味は、ロイド達にはわからない。
ミトスもその原語に心当たりはない。
否、あるにはある。
時折、にたような響きの言葉をセンチュリオン、アクアが魔物と時折はなしていたのをみたことがある。
旋律のような、何か。
もしも、その言葉をきちんと把握していれば、ソルム、という言葉に反応したであろう。
アクアから、センチュリオン達の名前はミトスはきいたことがある。
それは、大地のマナを担っている土のセンチュリオンの名だ、と。

「ルーンクレスト?こりゃ、珍しい名がでてきたものだな。
  まだ人間がその名をしっていたことに俺としては驚きだな」
ドワーフの技術において、もとめられるもののうちのひとつ。
それをつくることができて、初めてドワーフとしては一人前、と認められる。
「え?おやじ、しっているのか?」
「ドワーフの秘術の一つ、とたしかいわれているはずです。このダイクさんもドワーフなら
  しっていて不思議はないのでは?」
ロイドが首をかしげ、アステルがいい、
「しかし、こちらがらにあのマナリーフはあるのか?」
リーガルの疑問は至極もっとも。
そのものいいより、
「こちら側?…なるほど。おまえさんたちはもう一つの世界の住人か?」
すっとその目をほそめ、リーガル達をみやるダイク。
「って、親父、何でそのことを!?」
ロイドがおどろきおもわず叫び返す。
みれば、ジーニアスも驚きに目をみひらいている。
熱があるから、という理由にて、ミトスは二階のロイドの部屋につれていかれ、
そのまま横にさせられている。
大丈夫、といってもあるいみ心配性なロイド達が聞き入れるはずもなく、
結果として大人しく横になるしかなかったのではあるが。
「お前には話してなかっただけじゃい。何しろ人間の中では勇者ミトスとは英雄扱いだからの」
そういうダイクの顔は多少眉間にしわがよっている。
「そもそも、普通は互いの世界に行き来する方法はないといわれているんじゃ。
   ラタトスク様がおられるというギンヌンガ・カップの入口からはできるじゃろうが……」
さすがに大地の守護をうけているドワーフのことはあり、精霊ラタトスクのことはダイクもしっている。
それは両親から、一族からきかされてそだっているがゆえ。
「姉を殺され、精霊オリジン、そして精霊ラタトスク様をうらぎりしミトス・ユグドラシル。
  わしらドワーフの中では伝承、としてつねに語り継いできている実情じゃな」
マナリーフをしっている、ということは、きいたことのあるエルフの語り部にであったのであろう。
ロイド達は。
それゆえに言葉をにごさず、さくっと本題にきりかえる。
「マナリーフそのものは、エルフのかたりべが守っているはずじゃ。
  それをしっている、ということはお前さん達は今の世界の真実をしったということなんじゃろ?」
「な、何で早くおしえてくれなかったんだよ!なら親父はコレットがマーテルの器にされる、
  というのもしっていたのか!?」
ロイドの叫びに。
「マーテルの器云々はそのあたりのことはわしらはしらんが。
  すくなくとも、世界が二つに分けられた理由と、精霊様がたとの約束がはたされていない。
  その事実はドワーフの中にはつたわっておるな」
ほとんどのものが、愚かな人にまじることを拒んだ結果、ものずきなダイクのみが表にでている、
といってもよい。
何やらいきりたつロイドをせいし、
「まず、おまえさんたちは、どこまで今の実情をきかされたんじゃ?
  どうして、勇者ミトスが世界を二つにわけたのか、それらもきかされたかの?」
まずは問いかけ。
「それは、姉マーテルを蘇らせるためにユグドラシルがマナを独占しようとしたからだろ!」
ロイドの叫びに、ため息ひとつ。
かつて、真実を聞かされている、というのにもかかわらず、
感情のままに叫ぶロイドはあるいみ進歩がまったくみられない。
ラーゼオン渓谷のエルフの語り部、そしてアルタステより聞かされている。
『…いや、そもそも、ユグドラシル様はもともとはまっすぐな御方じゃったんじゃよ。
  どんな困難にもまけない、つよい意思をもちしもの。
  ミトス・ユグドラシル。たしかに勇者じゃった、よ。
  どんなに虐げられても諦めなかったらしい。前をむき平和を願い、
  そして自ら申し出て人がつくりし魔界の小窓を書物に封じ、自らの記憶を分けることにより、
  ラタトスク様の負担を軽減し…そして、皆の幸せを願い、シルヴァランドとテセアラの間に平和条約を結ばせた』
そう語ったのはほかならぬアルタステ。
ロイド達はその話しを聞いている。
というのに、そのことを完全に失念している、といってよい。
「ロイド、お前は昔からそうだが。ものごとをもうすこしよくかんがえてみろ」
そんなダイクの言葉に。
「ダイク。私もきになっていたの。どうしてユグドラシルは…勇者ミトスは世界を二つにわける。
  そんな方法をとったのかしら?テセアラのことをあなたが知っているのならば話しははやいわ。
  テセアラのあなたの同胞たるドワーフのアルタステはこう、いっていたわ。
  当時、世界樹の種子…大いなる実りのもたらすマナたけでは世界の存続があやうかった、と。
  だけども、勇者ミトスが精霊達にこう提案した。
  世界を二つにわければ、マナの消費がおさえられるのではないか、と。
  大いなる実りが生み出せるマナは大樹の百分の一にもみたないわずかなマナ。
  唯一、そのマナにて賄えるのは大地の存続のみ、だったと。
  そして、大地にすまう命まではマナによって潤すこともできなくなっていた。
  確実に、まっているのは大地以外の死。すなわち生命の死だ、と。
  だから勇者ミトスは世界を二つに分ける方法を提案した、そうきいたわ。
  マナを交互につかえばマナの使用量はかぎられる。
  何よりも戦争やマナを大量に消費する魔科学がそれ以上の発展をしない、という理由で。
  世界を二つにわけるという提案は、戦争を再発させないためだ、と。
  敵対する勢力同士を空間を隔てることによって邂逅することすらできなくした、と」
さすがリフィル、というべきか。
アルタステにいわれたその言葉をそのままそっくり覚えていたりする。
リフィルの台詞にロイドもそんな説明をきいていたことをおもいだし、おもわず顔をふせてしまう。
また、やっちまった、とおもう。
感情のままにまかせ、そのまま言葉をはっする。
何もかんがえることもなく。
自分はたしかに、エルフのかたりべや、アルタステより真実を聞かされていたのではなかったのか。
それなのに、クルシスの指導者だというユグドラシルが全て悪い、今、自分は確実にそうおもって言葉を発した。
ゆえにロイドは黙り込むしかない。
それは、人にはつたわっていない。
どうしてこんな世界になっているのかというその事実は。
「ほう。おまえさんたちはそこまで真実にいきあたっているのか。
  大地延命計画、と当時はいわれておったよ。精霊オリジン様が許可をだし、実行された計画じゃ。
  話しをきくかがあるのなら説明するが?他のものたちにも?」
まだ何かさけびそうなロイドを視線でリフィルが制し、
「お願いできるかしら?私たちはもっと詳しく真実を知る必要がある、とおもうの」
そのことばにその場にいる全員もこくこくとうなづく。
ちなみに、エミルはノイシュの傍にいるというので小屋の中にまでははいってきていない。
「本来ならば、大地を二つにわける、というのは苦肉の策であったらしい。
  数百年毎にちかづく、彗星、デリス・カーラーンのマナを使い、
  当時、力を失いかけ死滅しかけていた大いなる実りを発芽させるため、彗星のマナを使用しようとしたとのことだ。
  だが、彗星が近付くその時期、世界を二つにわけていたはずの道が、一時にしろつながってしまう。
  ヒトはそこに目をつけた。愚かな人間達はマナを生み出しているのが大いなる実りだ、としり。
  互いの勢力陣を総動員して種子を奪うために攻撃をしかけた。
  その結果、どうにか種子はマーテル・ユグドラシルの犠牲によって守られはしたが。
  しかしその流された血により、大いなる実りはさらにその力をうしなってしまった、とな」
そういい、ため息ひとつ。
「そもそも、命がもつ血とは、命の泉、源、とも別名よばれておる。
  そんなものが穢れた理由にて失われれば、そしてまた、近くでより負…
  すなわち、争いや憎しみ、などといったどす黒い念が渦巻く中で、神聖なる大樹が目覚められるはずもない。
  大樹とは、全てにおいて神聖なるもの。
  全ての穢れをはらいしもの。じゃが、その穢れを払う力にも限度がある。
  ヒトはその限度をこえて、争いを繰り返しておったんじゃよ。
  当時、わしらドワーフたちも互いの勢力陣につかまり、無理やりに実験材料にされ、
  中には傀儡くぐつ化されて、意識をむりやりに操られ協力させられていたものもいる、ときく」
「…それこそ、大いなる実りはデリス・カーラーンのマナを全てそそぎこんでも芽吹くことがないほどに。
  それほどまでに世界にみちた人々がおこしてしまっていた負の念に穢されておったんじゃよ。
  勇者ミトスがデリス・カーラーンのマナを大樹に注ぎ込む、という方法を常にとらねば、
  確実に大樹の種子は消滅してしまっていたほどに、の」
ダイク達はマーテルが融合している、ということまではしらない。
アルタステがしっていたのは、クルシスに属していたからこそ知っているだけのこと。
ドワーフ自体につたわっている伝承と、真実とではそこに多少の食い違いがある。
たしかに、世界を二つにわける、という方法はあるいみで乱暴であったとはおもう。
が、それは大地を存続させるうえでとられた処置、というのもドワーフ達はしっている。
しかし。
「…もっとも、勇者ミトスは大樹を復活させるためのマナをマーテル復活…
  すなわち、姉を蘇らせるために使用している、ともきく。
  そのせいで精霊オリジン様は失望し、ねむりについてしまった、ともな」
説明しつつも、お茶をいれ、全員の前に木でつくったコップをさしだすダイクの姿。
「その、大地延命計画、とは何ですか?」
そんなダイクにと問いかけているアステル。
このあたりのことまではアステルは知らない。
精霊達…正確にいえばノームにきいても詳しくは説明されていない。
「ふむ。大地延命計画。
  それは、マナの消費量わ最低限に抑え、大樹の種子と世界を維持するため。
  互いが消滅してしまわないように世界を二つにわける、という処置のことじゃよ」
さらに精霊の楔によって、マナの流れを調整することにより、
世界が必要以上に繁栄することも抑えられる。
それがミトスがほどこした処置。
もっとも、マナの流れ云々、まではダイクは知らない。
「大きな繁栄は魔科学の発展と無意味な戦争を引き起こす可能性がある。
  その提案をうけた精霊オリジン様はその考えに賛同した、ときく。
  それは、大樹が芽吹くまでのあくまでも臨時的な措置、としてな」
ラタトスクとしてはもうヒトに勝手にやらせ、自らが自滅するのをまつつもりであった。
あのまま、百年もしないうちに、確実に人は自らの首をしめていたことにきづいたであろう。
「大樹の生み出すマナなくして生き続けられるものはこの地上には存在しておらん。
  しかし、人は愚かにも戦争をやめようとはせんかった。
  あのままではおそらく百年もみたないうちに星は…大地は衰退していたじゃろうて」
ダイクがいう言葉は真実。
もっとも、あのとき、大いなる実りを人が奪った場合。
かろうじて人、に提供していた種子のマナが消えることとなり、
人は自らの首をしめていたであろう。
すなわち、存続すらあやしくなっていたことに当時の人はまったくもってきづいてすらいなかった。
また、大樹の種子によって生み出されているマナが人の存続の有無を決定するために利用されていた。
そのことはミトス達とてしらなかった。
「マナなくしては命はうまれない。たとえ産まれたとしてもすぐにその命はつきてしまう。
  …当時の人はそんなことすらわからかった、んですね」
アステルが沈んだ声でそういうが。
「わかっておったんじゃろう。わかっていて己達の欲のためだけに目をつむつた結果じゃろう。
  その結果、何がおこるかすら考えようともせずに、な。
  おそらく大体の考えはつく。癒しの魔術があるのだからどうにかなる、とでも
  ヒトはおもったんじゃろうて。じゃが。
  ヒトはわかっておらん。癒しの魔術、といわれているものも、
  たとえ古代からつたわっているというエルフの秘術も生命の源を失ってしまえば意味がない、ということにな」
「今は、それぞれの世界に限られたマナが供給されることにより何とか地表はたもっておるらしい。
  わしらドワーフがきいているのはそんなところじゃな」
エルフの語り部からきいたこと、アルタステからきいたこと、そしてダイクの説明。
「…つまり、どちらにしても大いなる実り、大樹カーラーンをよみがえらせなければ、
  どちらの世界も危険、というわけ…ですか」
黙ってきいていたプレセアがダイクにとといかける。
「まあ、そういうことじゃろうが。しかし、大樹が蘇ったとしても…あやしいかもしれんの」
「…どういうことだよ。親父」
「人は、強大な力をみつければそれを自らのものにしようとする。そういうことであろう」
リーガルもため息をつかざるをえない。
テセアラがそれをしれば確実に我がものにしよう、とするであろう。
今ですら命を実験に平気でつかっているのである。
考えなくても嫌でもわかってしまう。
「と。何やら暗くなってしまったの。ところで話しをもどすが。
  なぜルーンクレストがひつようなんじゃ?たしかあれは、ハイエクスフィアの肉体への進行を防ぐ。
  古には精霊石とよばれていたそれらの影響を抑える効果があるらしいが」
さらり、と古の呼び名をだしているあたり、さすがドワーフ、といえるであろう。
ダイクはロイドのもっているエクスフィアが比較的、精霊石に近いことを見抜いている。
だからこそ、ロイドに昔から誰にもみせないように、といいきかせていた。
古代において、それが利用されていたことをしっていたがゆえ。
「コレットの為です。コレットの身につけているクルシスの輝石。
  それが今、ダイクのいったハイエクスフィア、というものらしいの」
「何と!?」
さすがにダイクはそこまでは知らない。
しるよしもない。
「すこし、みせてもらってもいいかの?」
「え?あ、はい」
いわれ、コレットがうなづくと、ダイクがまじまじとコレットにちかづき胸にはめこまれているそれをみる。
間近にてクルシスの輝石をみるのはこれがはじめて。
だが、そこに含まれている力をドワーフであるダイクは感じ取ることができる。
じっとそれをみて、そこにある力を確実に感じ取り、おもわず目をみひらき、ため息ひとつ。
「……人の魂がいくつかはいりこんでおるが、まちがいがないの。
  それはまぎれもなく、精霊石、じゃ」
そのまま、ストン、とその場にすわりこむ。
「その精霊石、というのは、いったい?」
「うむ。それは、簡単にいえば、石の精霊の元じゃな。さらにいえば、
  その石より微精霊が産まれいでるといってもよい。世界を構築している精霊達が、の」
ちなみに、精霊とともに、別なる物質もその石の熟成とともに誕生するようになっている。
それは、粒子、とよばれしもの。
マクスウェルが司りしもの。
「別名、アイオニトス、ともよばれておるがの。
  そっちのほうは、すでに精霊が誕生した後の石のことを指し示す言葉じゃが」
アイオニトス、その言葉にぴくり、とゼロスが反応する。
そしてまた。
「?アイオニトス?どこかで…きいたような…」
プレセアが首をかしげる。
それはプレセアがまだ感情が制御されていたときにヴァーリ達が話していた内容。
おぼろげなる記憶であるがゆえに、プレセアは詳しくはしらない。
「その石を細かくし体内に注入することにより、ヒトもエルフの力が使用できるようになる、ときく。
  かつて、古代大戦時に開発されたという技術の一つじゃ」
「え?人が…魔術をつかえるようになるの?それって……」
ジーニアスがおもわず驚きに目をみひらく。
ダイクがもっと詳しくしっていれば、その石をのみこんだり、その粉末を体内に取り入れたものは、
その背に輝く翼が出現することをしっていたであろう。
が、ダイクはそこまで詳しくはしらない。
ドワーフ達の伝承も、この四千年の間にいくつか抜け落ちてしまっていたりする。
「精霊石の力は当然、精霊を生み出す…微精霊とはいえ世界を構成する力。
  それを人が利用するにしても、その力は強大。
  ゆえに力を抑える必要があるがゆえにうみだされたのが、ルーンクレストじゃ。
  大樹の恵みをよりよくもっている霊草マナリーフを使い、細い繊維をつくりだし、
  それにより、世界に語りかける言葉、ルーンを刻む。それがルーンクレストじゃ」
いって。
「もっとも、本来の精霊石の力は身につけて利用するのではなく、
  その石をもってして、様々な力に応用する、というのが古の方法だったらしいがの」
それはあるいみで、今現在、テセアラがエクスフィアを機械類につかっているのと同じ原理。
そこに人の魂がはいっているがゆえに拒絶反応などもおこっているようではあるが。
しかし、とおもう。
「ところで、この石の中にはいっている、この木の新芽みたいな小さい葉っぱなんじゃが…
  こりゃ、なんだ?ものすごい力をかんじるぞ?それこそマナの欠片以上」
近づいてみなければわからなかったが、以前ロイドがつくったのと似通った紅き石。
その中にとじこめられるようにしてある木の葉っぱ。
少しふれただけでも脳裏に浮かんだ巨大な樹木。
触れただけでもわかるほどに濃いマナの塊。
「これですか?ロイド達がいうには、エミルがくれたらしいです」
そんなダイクにとにこやかにいっているコレット。
「エミル?」
「あ、ノイシュと一緒に外にいる、僕にそっくりな子のことです」
ダイクが首をかしげ、アステルが説明する。
「…ヒトがこのようなものをもつはずがなかろう。
  わしの勘がただしければ、これはおそらく、世界樹の葉…しかも新芽じゃないのか?」
感じた畏怖はまぎれもない、大地そのもののマナ。
「あの子は…エミルは、世界樹の小枝、と当人がいっているものを所有しているの。
  それをロイドにわたしたときは…なぜか、枯れ木でしかなかったはずの小枝に、
  たしかに新芽が芽吹いていたわ……」
あのときのことはリフィルもおぼえている。
エミルがロイドにてわたした、あの小さな葉っぱ。
それから感じた膨大なるマナの奔流。
「世界樹の?…おかしいの。勇者ミトスに結果的に裏切られた形になった、ということで。
   精霊ラタトスク様はアレ以後、人に加護をあたえることはしておらん、とわしらはきいておったが?」
そんなものをもっているのならば、加護をうけていないほうがおかしい。
『!?』
さらり、とダイクの口からでてきた精霊ラタトスク、の名。
ゆえにその場にいる全員が思わず目を見合わせしてしまう。
「お、親父。その精霊のことしってるのか!?」
「何をいっておる。…そうか、ヒトはそのことすら失念しておるんじゃろうな。
  そういえば、伝承ではかつての古代大戦時期もヒトはそのことを忘れ去っていたともきくな。
  精霊ラタトスク様は大樹カーラーンの精霊にしてこの世界そのものの産みの親じゃぞ?
  この世界におりたったとき、この地表にいた魔族達と地表とをわけ、
  地表を命豊かな大地にされた、ときく。そして大樹にて地表を、自らはその魔界との境界を。
  ずっとまもっていた、ときく。今もおそらくはその境界をまもられておるんじゃろうて。
  この地表が瘴気に満たされ、魔界になっておらんのが何よりの証拠。
  精霊ラタトスク様がおられるかぎり、地表が魔界になりえることはない、が。
  ラタトスク様の消滅…すなわち、死は世界そのものが魔界に成り果てる、といっても過言ではないからの」
何やら話しがかなり大きくなってきたとおもう。
世界そのものの産みの…親?
そういわれてもピン、とこない。
そもそも、ロイドは世界樹が世界を生み出した、ということじたいもピン、ときていない。
さすがにマナが命に関係している、というのはおぼろげながら理解しかけてはいるが。
そんな会話をしている最中。
「あれ?まだ皆何かはなしこんでたの?結局、ダイクさんってひとにルーンクレストの作成たのめたの?」
扉がひらき、入ってくる人影ひとつ。
みればどうやら外にいたエミルが中にはいってきたらしい。
どうやらかなり話しの方向性が自分にむかってきそうであるがゆえに、
あえてエミルは中にはいってきたのだが。
ドワーフ達は自分のことをしっている。
直接に姿をみせたことはないにしろ。
何しろ大地の加護をうけせし種族、それがドワーフである。
いらないことをロイド達に説明しかねない。
それゆえの判断。
「そうだわ。とりあえず、ダイク、そのルーンクレストをお願いできないかしら?なるべくはやめに。
  …材料はマナの欠片がそろっていない、のだけども……ロイド」
「え?ああ。これ?親父、これで代用できるか?」
それは、マナの欠片の話題がでたときに、ため息とともにエミルがロイドに手渡していたもう一つの小さな芽。
こちらのほうはまだ葉っぱにもなっていない、小さな芽にしかすぎない品。
ロイドがなくしそうだ、という理由からジーニアスが小さな袋をつくり、
ロイドの首にかけていたちょっとしたお守り袋のようなものにはいっているそれ。
「…十分じゃい。というか、これ、世界樹ん関係しているものじゃろ。エミルとかいったな。おまえさん」
「でも、本体たる樹木からではないのでとてつもなく力は弱いですよ?
  まだ開いてもない蕾状態ですから」
ある意味で、マナの欠片、とよばれているものよりすこしばかりマナが濃い品といってよい。
「ユニコーンの力が必要なんじゃが…」
「それでしたら、私がユニコーンの角をもっています」
「ふむ。ならば作成には問題はないの。…急いだほうがいいのかの?」
「ええ。お願いするわ」
ちらり、とコレットをみつつダイクにというリフィル。
少しでも早い方がいい。
リフィルがコレットの体を確認したとき、たしかにその肩の結晶化がはじまっていた。
アステルがもっていた症状の進行からいけば、あまり時間はのこされてはいない。
「わかった。集中する必要がある。わしは作業場にいく。
  ロイド、いっておくが牧場にはちかづくんでないぞ?あやつらはお前をねらっておる」
いいつつも、リフィルから角をうけとり、離れにつくっている作業場へ。
離れにむかってゆくダイクをみつつ、
「ダイクがルーンクレストを作ってくれたら、それからコレットの治療にはいりましょう」
「私の?」
「ええ。あなたをエクスフィアの塊にさせるわけにはいかないもの」
「先生……」
コレットとてきづいている。
自分の体の変化は。
ありえない体の変化。
肩が確実に硬くなっていた。
まるでそれは石のごとくに。
アステルから聞かされていた症状、そのままに。
しかしこれまで誰にも相談できなかったのもまた事実。
これ以上、ロイド達に迷惑をかけたくない、という思いから誰にもいっていない。
が、おそらくリフィルは気づいたのであろう。
自分が熱をだしたとき、体をふいてくれたのはリフィルなのだから。
だからこそコレットは言葉をつまらせる。
誰にも変化をいうことなく、自分を治そうとしてくれているのがわかるがゆえに。


                            ――Go To Next

Home    TOP     BACK    NEXT


$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$

あとがきもどき:
薫:あるいみで、おさらい回、のようになってしまった…
  とりあえず、さらり、とでてきたダイクです。
  しかし、話しがすすまない…あう……

2013年7月28日(日)某日

Home    TOP     BACK    NEXT