まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

どこをどうさがしても、統合後の地図がない…
いや、フンァタジアの地図になってる、というのはわかるんですよ。
わかるんですけど、どこにどんな地名があるのかとか…
なので、ひたすらに動画さんサイトをみなおして、
ファンタジアの地図をプリントアウトして(まて)
かきこみました…
かきこんでわかつたこと。
やはり、マーテルがうみだした精霊たちとラタトスクの元でいた精霊達の神殿。
一部をのぞきやっぱり異なってますねぇ…
しかし、地図的にはアスガードのところに炎の塔ができているのにびっくりです(笑
ラグナログとかそのあたりのときにおそらく何かあった、んでしょう。きっと

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「ねえ。クラトス。いつかここに大樹を蘇らせようね」
「そうだな」
世界を守っている、という精霊の存在。
誰にもしられることなく、世界を身守りし存在。
この世界を創りだせしもの。
託された種子。
ゆえに、ミトスがこのように生き生きしているのはわからなくはない。
そんなミトスの姿をみてクラトスは苦笑しつつも言葉をかえす。
「うん。そうしたら、人間も少しはハーフエルフを認めてくれるとおもうんだ」
「それが、お前の目指す世界、なのだな」
「うん。みんなが差別されない世界。夢みたいな話しかかもしれないけど。
  でもいつかきっと、信じて取り組んでいけば必ず手にいられらるとおもうんだ。
  ううん、そう想いつづけなきゃいけないんだ。この、世界のために」
「…お前が、その思いを忘れぬかぎり、私はいつもお前とともにあろう」
「ふふふ。よろしくお願いします。クラトス先生!」
「ところで、マーテルは?」
「姉様ならまだ、かな?しつこく何かラタトスク様に話しかけてたから。
  何か姉様、ラタトスク様から杖を借りうけてたけど。僕のほうはこの種子、だけどね」
「杖?」
「何でも、世界樹の杖、だって。姉様がもっていた杖はもともと、その杖をかたどって、
  かつてエルフがうみだしたものだから、それに力を加えるって」
それは、過去の記憶。
種子をさずかりし、当時の記憶。
まだ、ヒトとはわかりあえる、そうおもっていた、当時のミトスの記憶の一部……

光と闇の協奏曲 ~オサ山道のリンカの木と~

「魔物がまったくまた襲ってこないんだけど……」
テセアラでも感じていたこと。
魔物達の姿はたしかにそこにみえている、というのに。
「何かが確実におこっている、というのは明白ね」
シルヴァランドのことしかしらなかったときはそういうこともありえるのかもしれない。
そうおもったが、それも再生の旅に関して、精霊の解放をしたがゆえに、
そのようなこともありえるのかもしれない。
リフィルからしてみればそうおもっていたのもまた事実。
しかし、テセアラできくところによれば、あちら側もにたようなもので、
ある時をさかいに、ぴたり、と魔物たちの襲撃や、異常気象はとまった、とのこと。
詳しい時期まで照らし合わせることはできなかったが、大まかに計算してみれば、
自分達が風の封印を解いたその前後である、ということは理解ができた。
つまり、いまだ精霊の解放を全部終わらせていない段階で、テセアラ側も異変がおさまっていたことになる。
それはすなわち、世界の異常気象が精霊とはかかわりのない何かでなっていたといってもよい。
瘴気に侵されていたハイマ。
魔界の端末だ、というとある石。
エミル曰く、魔血玉デモンブラッド、とよばれし石。
そのような名はリフィルとてきいたことすらない品であったが、
実際に瘴気におかされ、魔物は狂い、そして人すらをも異形にかえた、という。
まるでそれはエクスフィア。
エクスフィアをむりやりつけられて、マナを狂わされて異形とかしてしまったヒトのごとくに。
リフィルはまだ、その異形にかえられてしまったヒトは一人しかみていない。
その異形にかえられていたヒトもまたエミルの手により元の姿にもどされた。
ジーニアスの言葉に、リフィルがぽつり、とそんなことをおもいながらも返事をかえす。
「しかし、なぜにこちらの道をあえてえらんだのだ?リフィル殿は?」
リーガルの問いかけに、
「以前、こちら側を旅をしていたときに、とある旅の学者家族にあったことがあるの。
  そのとき、彼らはこのオサ山道でリンカの木をみたことがある、といっていたわ。
  実際に、その子供達はリンカの実をひろっていたもの。
  あのとき現れた精霊アスカ、そのアスカがいっていたでしょう?自分を呼ぶならばリンカの木の場所で、と。
  あと、月の精霊ルナと一緒でなければ契約をかわさない、ともいっていたわ」
たしかにあの精霊はそういっていた。
どちらにしろ、精霊と契約をしなければ、今の現状はかわらない。
どちらの世界かが犠牲になるこの仕組みは。
マナの楔、とよばれしものを切り離すことにより、マナの流れは分断される。
すなわち、世界が分断される、といってもよいだろう。
その先に何がまっているのかはわからないが。
きになるのは、ユアンのいっていた、世界はもともと一つであった、という台詞。
全ての精霊との契約をおえたとき、それがどんな結果をもたらすのか、リフィルにはわからない。
しかし、それで大いなる実りが発芽し、世界樹が復活すれば、それらも杞憂におわるであろうことは間違いない。
だからこそ、この結果がわからないものの、精霊の契約に意義をとなえていない。
「ふむ。たしかにそのようにいっていたな。精霊、アスカ…か。
  私としてはエミルが呼びだしたあの魔物、シムルグとかいったか?
  その魔物が精霊と知り合いであったことにも驚いたのだが…」
「そういえば、たしか数千年前から生きているからしっているとかいっていたわね。あの伝説の魔物は」
その会話はミトスはきいていない。
というよりはきくことができなかった、といってもよい。
レアバードにのっている最中、突如として風が周囲にふきあれ、彼らの会話が一瞬ききとれなくなった。
おそらくそのときに彼らがかわしていた会話、なのであろう。
きづいたときにはすでにアスカはどこかにとびたっていたあと。
リーガルとリフィルの会話をミトスはただ黙ってその場にてききつつも、
思考を様々にめぐらせる。
この地のリンカの木を保護するように、と命じていたはずなのに。
なぜに伐採されているのかもきにかかる。
アスカを捕らえるのにはリンカの木の音色が必要不可欠。
にもかかわらず、ヒトの無意味な伐採でほとんどなかったゆえに、
残されていた木の実をかつてこの付近に植えたのはほかならぬミトス自身。
正確にいえば、この場に気の実をうえたのは、まだ生きていた姉をふくめた自分達四人、といってもよい。
あるいみ、この木々は姉の想いで、ともいえたものであったというのに。
いつ伐採されてしまったというのだろう。
これだからヒトは信用ならない、そう一瞬おもったが、
たかにリフィルのいうとおり、ディザイアン達の脅威がある中、
力なき人がいっきにここの木々を伐採できる、ともおもえない。
ならば、可能性とするならば…ロディル。
ディザイアンの五聖刃の地位にありながらも、やはり力のみで組織にはいってきただけのことはあり、
過去より自分達とともにいたものではない、という点では信用できないのもある。
まだ、プロネーマやフォスティス、そしてマグニスは組織を結成してまもなくついてきたものであるゆえに、
そしてまた、かの書物の封印に力を貸した以上、すくなくとも多少は信用に値する、とおもっていてもよい。
もっとも、それに力を注ぎ込むにあたり、どうやらその記憶の一部がやはりあの中に閉じ込められたっぽいが。
それはあくまでも記憶の一部であり、当事者達はきちんとあの場からでてきているので問題はないといえる。
まだ世界を二つにわけるまえに、ヒトが生み出してしまった禁断の書物。
その書物を安全に保管できる場所はかの地より考えられず、
だからこそ、追放されてはいたが、村にともどり交渉した。
始めは難をみせていたエルフ達であったが、自分達が加護をうけたことをしり、
がらり、と態度をかえたあのとき。
あのときのことは今でもおぼえている。
中には自分達にたいし、手のひらをかえしたようにちかよってきたものすらいたほど。
自分達も精霊とつなぎをとってほしい、という愚かなことをいうものすらいたしまつ。
そのときに、わかった。
エルフもヒトもかわりがないのだ、と。
欲に目がくらむのは、ヒトもエルフもかわりがないのだ、と。
石は、ユミルの森の聖なる水にて清め、力をたくわえる必要があった。
確実に瘴気を浄化し、マナに変換させるために。
しかし、気になるのはリフィル達がいっていた瘴気云々、の台詞。
そんなもの、普通にでまわるはずはない。
可能性として、扉の封印が弱まっている、ということもありえるかもしれないが、
かの精霊がそれを許容している、ともおもえない。
だとすれば、別の小窓が何ものかが開いてしまった可能性も否めない。
魔界の瘴気はたやすく人の思考をくるわせる。
それは人だけにあらず、生き物すべての思考を狂わせ、狂気にとはしらせる。
そのことを、ミトスはかつて、自らの記憶の一部というか魂をつかって封印したがゆえにしっている。
「とにかく、確認をこめるためにも、リンカの木の状態を知る必要があるわ。
  どちらにしても、全ての精霊と契約をしなければ、今の現状。
  互いの世界が互いを犠牲にしあってなりたっている、このような世界の仕組みはかわらないのだから」
「しかし、レネゲードのいっていた、大いなる実りの発芽、とは本当に可能なのか?」
あるいみで大人の会話、といえるであろう。
「彼らがいうには、その力の全ては今はマーテルの復活にあてられている、という以上、本当なのでしょう。
  気になるのは、大いなる実りは死滅かかっている、という彼らの言葉ですけど。
  純粋なるマナを照射するだけで死滅しかかっているものを蘇らせることができるのかどうか…」
リフィルとリーガルのそんな会話に口をはさみ、
「でも、姉さん、普通にかんがえたら純粋なるマナをあたえられたら命はよみがえらない?」
エルフやハーフエルフならば誰でもしっている。
純粋なるマナはそれこそ命そのものである、ということを。
ゆえに、どのような状態でも純粋なるマナをうけたものはよみがえる、と。
だからこそのジーニアスの疑問。
「普通なら、ね。でも相手は、世界を構成せしといつてもいい、世界樹なのよ?
  そんな単純な問題、なのかしら?もしかしたら制御する精霊が必要不可欠なのかもしれないわよ。
  アステル達のいっていた、大樹の精霊ラタトスク。かのものを先に目覚めさせる必要性もあるかもしれないわ。
  下手をすれば、大樹は制御を失って暴走、ということもありえるもの。
  何しろ、世界樹とは、マナを生み出す源、なのだから。ただマナを照射するだけでいい、
  とはおもえないのよね…」
「いくらレネゲードとてそれはわかっていよう」
「そう、ね。まあ、あのアステル達ですら精霊のことをしっているのですから。
  彼らがその精霊のことを考えてもいない、というのはありえないものね」
そういえば、とおもう。
ユアンがあのときいっていた。
精霊ラタトスク様との約束、と。
彼らがどのような約束をしていたのかはリフィル達にはわからない。
だが、すくなくとも、彼らがあの伝説の四英雄、というのならば面識があってもおかしくはない。
何しろ彼らは世界の加護、といえるものをその大樹の精霊よりうけとった、
そうアルタステからもリフィル達は聞かされている。
何どこか漠然とした不安をかんじつつも、しかしたしかにリーガルのいうとおり。
彼らが精霊ラタトスク、という存在をしっている以上、すくなくとも暴走、という事態にはならない。
そう、信じたい。
もっとも、その精霊自体がどこにいるのかまだ分からない以上、何ともいえないのもまた事実、なのだが。
「そういえば、先生、風がきもちいいですね~」
「そうね」
「前にここをとおったときよりも、木々がとても綺麗だとおもうのは私のきのせいかなぁ?」
「気のせいじゃないよ。コレット。
  前にここをとおったときはまだマナがとても薄かったもの。でも今マナは安定している。
  だから大地も自然も生き生きとしてるんだよ。自然界はマナがってこそ安定し存続するものだからね」
「そう、だね。マナがなくては生きてはいかれないものね。全て」
ミトスがぽそり、という。
それなのに、ヒトはマナをただの道具、としかみなさず、かつての戦いがおこっていた。
その結果、世界が消滅してしまう、といくらいってもききいれなかったひと。
精霊達もヒトの愚かさにあるいみあきれ果ててもう好きにさせておくつもりだった、
と契約したあのときに、そういっていた。
初めて契約した精霊は、なら君たちはそのまま消滅をまつの?!といってミトスがつめよったそのときに、
ただ曖昧に笑っていただけであったが。
それもそのはず。
彼らが消滅することは、ラタトスクがいる以上はありえない、といっても過言でない。
その気になれば大樹の精霊は大樹を蘇らせることができる、と精霊達はしっていた。
それをしないのは、ヒトがあまりに愚かで、同じことの繰り返しになるがゆえ、
そのように報告をうけていた。
そんな中であがこうとするヒトの子。
精霊達とて地上全ての命が一度無にかえるのをみたいわけではない。
そして、それによって心を痛めるであろう、絶対に自分達にはその気配すらみせない自分達の産みの親。
それがわかっているからこそ、手をかした。
あがく人の子に。
ラタトスクが興味をもったのは、ヒトの子が精霊と契約をかわしたから、という理由もあり、
分身体たる蝶をつくりだし、彼らの様子を視始めたからに他ならない。
なぜに契約を、とセンチュリオン達をつうじ、問いかけてみたところ、あがいているので、身守るのもわるくない、
という返答をもらったのもまた事実。
もっともそんな事実はミトスは知らない。
ラタトスクの分身体が紅き蝶であることすらミトスは知らない。
ただ、ラタトスクを示す紋様が蝶であることはしってはいる。
語り部に案内されていった神殿にて、ミトス達はかの壁画をみているがゆえに。
「大樹、カーラーンか。うん、ぜったいに大樹を蘇らせようね。ロイド!」
「え?あ、ああ。俺にはいまだにぴん、とこないけどな。マナが大切とかいわれてもよくわかんねぇつうか」
いまだにマナが大切だ、といわれてもビンとこない。
たしかに、エミルにわたされたあの葉っぱからは暖かな力のようなものを感じたが。
すべての命がマナで構成されている、といわれてもぴん、とこないのもまた事実。
「あのね。ロイド、へんなこというけど、わらわらないでね?
  僕、大樹カーラーンを復活させることができたら、何かが変わるような気がするんだ」
山道をあるきつつも、ジーニアスがロイド達を振り向きながらもいってくる。
「ジーニアス?」
ジーニアスが何をいいたいのかわからずに、ロイドが首をかしげる。
「えへへ。ミトスもきいてね。あのね。僕、ずっと姉さんと一緒に旅をしていたんだ」
「それはしってる。たしか、先生がお前をつれてイセリアにきたのは、先生が十八のときだよな」
旅のエルフの姉弟、だという村にあらわれた二人の姿。
ロイドの印象としてはおどおどとしている子供だ、とおもった。
だから、むりやりにひっぱって、食材をとるぞ!といって海に山につれていっていた。
はじめはおどおどとしていたが、もちまえの負けん気と、それから何かいわなければ、
いつも流されてしまう、というのにきづいたらしく、ジーニアスもまけずといいかえすようになった。
大人達がいっていたが、子供は子供どうし、仲良くなるのがはやい、そういっていた。
リフィルは、あるいみエルフとはヒトより超越した存在、とおもわれていたのもあり、
そしてまたその知識の豊富さから、学校という場はあっても、
まともに教えるものがいなかったがゆえに、村長が彼女を教師、としてうけいれた。
子供達にその知識をわけあたえてほしい、と。
一番の理由は、神子に知識を、というのがつよかった。
いずれは世界を救うことになる神子が知識がなくて再生を失敗しました、ではわらえない。
が、正確な知識、そして教えをほどこせる人材がいなかったのもまた事実。
「うん、そして、僕はそのとき七つだった。けどそれまではいろいろあったんだ。
   …ハーフエルフってわかっただけで迫害されたり、追われたり…
   仲がよかった、とおもってた友達…ううん、僕がそうかもってただけなのかもしれないけど。
   いきなり手のひらをかえされたりして…だからずっと、僕たちは皆をだましていたんだ。
   ハーフエルフではなくて、エルフだって。姉さんがいうには、
   普通のエルフなんて人はみたことないはずだから、エルフといってもわからないはずだって。
   ハーフエルフ独特のヒトとエルフの混じったマナも同族やエルフならわかっても、
   人にはわからないはずだからって。そうすることで絶望しなくてもすむからって。
   姉さんがいうには、静かにくらすにしても僕がまだ小さいから、人とともにいたほうがいいって…
   静からにくらすにしても、世の中はディザイアンとかがいるから危険だって。
   それよりは人にまぎれて暮らしたほうが安全だからって……」
「…それは…前に、僕も姉様にいわれたことがある。
  絶望するなら静かにくらす道をえらびましょうって……」
あのとき、自分はあきらめない。きっとどこかに道はある。
かならずわかりあえる…そう、おもっていた。
停戦協定がなされたときも、わかってくれた、そうおもった。
なのに……
「そもそも、なんで差別とかするのか俺にはわからないけどな。
  だって、ジーニアスはジーニアス、ミトスはミトス。それにミトスの姉さんだって姉さんでしかないだろ?
  そこに種族とか関係ないとおもうんだよな~」
「それはきっと、ロイドがダイクさん、というドワーフに育てられたからだ、とおもうよ?」
異なる種族が傍にいて、それがあたりまえでそだっているからこその感覚だ、とそうおもう。
「まあ、常に近くに異なる種族がいれば、それがあたりまえ、と認識するからね。
  幼いころの人格形成上において、そういう状況は何よりも必要だからね」
「たしかに。って、エミル!?あれ?他のみんなは?」
いつのまにか会話にわってはいられ、みてみれば、後ろのほうからやってきたのであろう、
エミルとプレセアの姿がみてとれる。
それゆえに驚きの声をはっするジーニアスだが。
「物ごころつくまえ、人格が形成される前の環境って大事なんだよ?
  特に、まっさらの状態で信じ込まされてしまった常識は
  なかなか理性が邪魔をしてそれが間違っていても認められなかったり。
  特に、知的生命体たるヒトはそれが顕著にみうけられているけどね。
  そして、その間違った感性をそのまま自らの子供や周囲にまでまきちらしていき、
  やがてそのひずみはおおきくなっていく。結果として誰もが差別するのがあたりまえ、
  そんな認識になってしまっている。それが今の世界のありよう、だからね」
もっとも、エミル自身の…否、ラタトスクの場合は、きづいたら自分のみがそこにいた、状態であった。
何もない、空間に自らの意思、というのみがそこにあるだけで。
もういつのころだったのかすらおぼえていない。
命を生み出した、そのときのことは。
ふと意識をむけるだけでそこに芽生えた命。
いつのころだっただろう。
自らが、大樹、となりて世界を生み出していったのは。
それすらももう記憶のかなた。
そして、世界の記憶を継承させてゆく、という方法をとったのも。
それは、過ちなどや、その記憶からよりよい道を選んでいってほしい、
そうおもっての理をひいた。
自らがうみだせし種子は大きくめぶき、世界は多様にと進化していった。
それが今の世界のありよう。
ヒトがいうところの星々の空間のありよう。
何の擦りこみもない状態で世界を、現状をみきわめる。
それはかつてよく自分がおこなっていた方法。
そしてまた、大概あらたに産まれいでた命はかつての記憶を本能的には覚えはいれども、
認識できる範囲では何も知らない状態であるがゆえに、周囲の状況にあわせいきてゆくようになる。
そんな自然のありようすら、ヒトは歪めてしまっている。
そこに、欲や見栄、というエミルからしてはとうでもいいようなもののために。
「もともと、そこに多種多様の命が共に生存している状態では、今のような世界にはならないんだよ。
  たしかに喧嘩もするけども、それは互いにそれぞれの存在を認めているがゆえの喧嘩なわけで。
  今のヒトのように排除したりする、というような考えをもつものこそが異端、といわれるだろうけどね」
かつてはたしかにそう、だったのに。
きっかけは小さな争い。
それを自分達の子供に、そして子孫にうけついでいってしまったがゆえに、差別という認識がねづいたこの世界。
本当に、愚かでしかない、とおもう。
精霊達をも彼らは自然にありし道具、として扱おうとしたことがあるほど。
ゆえに、精霊達の力を利用しようとしたものは、きちんとその反動がそのものにいくように理をひいたが。
精霊達をとらえ、戦力にしよう、という輩がいなかったわけではない。
そのような輩はその力の反動をうけて自ら自滅していっただけのこと。
だから、かつての戦争においても精霊の力はつかわれなかった。
ミトスもその力を戦争の終結に使うことはまずなかった。
どうにもならない、誰かをたすけるため、のみにその力はふるわれた。
それは決して他者を傷つけるものではなく、力をふるったとしてもその場から排除、
すなわち、別の場所に移動させて無効化をはかるように。
力には力でねじふせる、それでは愚かなヒトとかわらないから、というのがミトスの理論。
かといって、力ないままでは何もできないがゆえに、力をもとめた。
何があっても対処できるように。
エミルの言葉をきき、自分のかつてのことをおもいだし、おもわずミトスはうつむかざるをえない。
まるで、自分の過去を見越したようなそんなエミルの言葉にミトスは何もいえない。
それがあの精霊と同じ容姿をしているものがいっている台詞なのだから、なおさらに。
「よくわかんねぇけど。なら、小さいころからいろんな人がいればそれがあたりまえってことになるのか?」
「まあ、そういうことだね」
ロイドのいい分はたしかにそのとおり。
それゆえにうなづくエミルだが。
「なら、今からでもそれっておそくないよな?なんでみんなそうしないんだろ?」
「今の世界のありようではむりでしょ。ロイド。
  テセアラなんかはぱっとみため豊かでもかなり身分差別がひどいっていうのはロイドもわかったでしょ?
  あの場所なんかは奴隷制度というものですら国がみとめてるほどなんだよ?
  それをおもえばまだこっち、シルヴァランドのほうは…たしかに迫害とかはあっても、
  あそこまではひどくない、とおもう」
あちらのように死ぬまで道具として一つの場所に幽閉、もしくは実験道具とするなど。
こちら側ではきいたことがない。
それにあたいするのはディザイアン、というものであろう。
ディザイアンはエクスフィアの苗床にするために人をとらえ、そしていずれは殺しエクスフィアを作成する。
そこにあまり違いがみられないのに、それでもテセアラ側では豊かさに慣れてしまっているからか、
その犠牲があることすら皆がみな、気づかない、否、みようとしていないようにジーニアスには感じられた。
だからこそのジーニアスの台詞。
「…私にはよくわかりませんが。おそらくそれはクルシスにもいえるのだ、とおもいます。
  彼らは他者をおそらくは道具のようにしかみていない、のではないでしょうか」
「…クルシスの構成員もハーフエルフが主だってレネゲードがいってた。
  それって、たぶん、自分達が昔人にやられたことを別の人にやりかえしている、
  たんなる八つ当たりのような気が僕はするんだ」
「…や…やつあたり……」
ジーニアスの言葉にあるいみ衝撃をうけてしまう。
そんなふうにいわれるなんて、おもってもみなかった。
ゆえにミトスがおもわずつぶやく。
「まあ、間違ってはないとおもうよ。そのやつあたり表現。
  そもそも、僕も幾度もやつあたりしたくなったりすることあるしね~」
もうほんとうに。
見定めることをやめて、やつあたりがてらに全てを無にもどしてしまえばかなり楽だ、というのはわかっている。
それでもそれをしないのは、まだどこかで今いる命を信じたい、という思いがあってのこそ。
もしくは、ヒトそのものを完全に消滅させてしまえば、大地は豊かになるであろう。
それこそ、穢されることも破壊されることもなく。
「…ちなみに、すこし疑問におもったんだが。エミルのいうやつあたりってどんなふうになるんだ?」
ロイドがきになったらしく、といかける。
「ん~。そうだね。たとえば、皆にお願いして、人を絶滅というか駆逐してもらう、とか?」
「「げ」」
「「え゛」」
さらり、というエミルの言葉に、ジーアスとロイド、そしてミトスとプレセアの声がかさなる。
「…エミル、すこしきくけど、エミルのいう皆って、魔物…だよね?」
「簡単だとおもうよ?あの子達も人にたいしおもうところが多々とあるみたいだしね」
さらり、といわないでほしい。
切実に。
しかし、たしかにエミルがいえばなぜだろう。
魔物達は嬉々として実行しそうな気がする。
それはもうはてしなく。
恐る恐るといかけるジーニアスににこやかに答えるエミルの表情は笑みをうかべたままで、
そこに憂いも何もない。
「まあ、さすがにまだしないけどね」
「「「いや、まだって」」」
おもわず同時につっこむロイドとジーニアス、そしてミトスの三人。
「そもそも、大樹をからし、大地を穢すのは人以外にはありえない。
  今のまま、君たちが大樹を種子から芽吹かせたとしても、
  それが本当に大樹として機能するかどうかもあやしいよね。
  力をもとめた人の手によりめぶいた種子がすぐに枯れる、ということすらありえるとおもわない?」
「そんなことはさせない!」
ロイドがすかさずいいかえすが。
「なら、ロイドにきくけどさ。多勢に無勢。
  そうだね。ここシルヴァランドの人々やテセアラの全ての人達。
  ちなみに王国軍などをも含んだ全員が、マナを生み出す樹のことをしり、
  それは自分達のものだ!といってまだ芽吹いたばかりの芽のもとにおしかけたとする。
  そんな彼ら全員をロイドはとめる自身はある?まだ大いなる実りがどこにあるかわからないから、
  人々はそんなことをしてないようだけど、大いなる実りの存在をしれば、
  まちがいなく、人々はそんな思いにとらわれて挙兵し決起するとおもうよ?」
かつてのように。
「……姉様……」
エミルの言葉はまさに、過去のミトスの経験そのもの。
姉が守り抜いた大いなる実り。
「そんなことをさせないために、まずはそれぞれが話しあって、きちんと協力していけば。
  誰だって世界が滅びるかもしれないのに争いなんてすきこのんでしないだろ?」
「…ロイド。それをするのが、ヒト、なんだよ。
  でなきゃ、古の君たちのいっていた古代大戦もおこってないよ」
マナを大量に消費していった古代大戦。
その結果何があるかわかっていたであろうに。
「昔のことをいってもわかんねぇし。それより、今から、だろ?というか、エミル、物騒なことをいうなよ。
  なんかお前がいったら、本気で魔物達が実行しそうで何かこわいんだけどさ」
「あはは。どうかな?」
ロイドのそんな台詞に、エミルはかるく笑い声をあげてかるくかわすのみ。
そんな会話を横でききつつも、
『まあ、しますね。ラタトスク様はするときには実行をとまどいませんし』
『するな。確実に。実行する、ときめられたら、な』
なぜかそんな言葉に同意をしめしているイグニスとトニトルス。
ちなみに彼らの言葉は念派であるがゆえにロイド達には聞こえていない。
事実、ラタトスクが命じれば、魔物達はそれを実行するであろう。
もしくはマナを乱してしまえば人を駆逐してしまうことなどわけはない。
それか、人が住みにくい世界にしてしまえば、争いも、変な技術を発展させることすらないであろう。
それこそ、ヒト、という種族を完全に出生率から生存率まですべて制御してしまえば。
「ところで、ジーニアス、さっきいいかけてたことだけど」
「え?何、エミル?」
「大樹カーラーンを復活させることで、何かがかわるようなきがする。っていったよね。それはどういう?」
「あ、うん。なんか話しがずれてたのを修正されたような気がひしひしとするんだけど…
  そうしたら、皆がハーフエルフを少しは認めてくれるような世界になるような気がするんだ」
「……同じようなことをいうんだね」
ジーニアスの言葉をきき、ぽそり、とエミルがつぶやく。
「え?」
「何でもない」
ジーニアスがそんなエミルの言葉に首をかしげ、エミルをみるが、エミルは静かに笑みをうかべるのみ。
「?」
そのようなことをいった知り合いがいたのだろうか。
それゆえにジーニアスは首をかしげるが。
ミトスはふとかつてのクラトスとの会話をおもいだす。
ラタトスクのことをしり、大いなる実りをたくされたあのときのことを。
そうしたら、人間も少しはハーフエルフのことを認めてくれるような気がするんだ。
そういったのはほかならぬミトス自身。
ミトスは気づいていなかったが、その時の会話もラタトスクは蝶という分身を通じ彼らを視ていた。
それゆえに彼らの会話もしっている。
同じような台詞が彼らの口から出てくることにエミルからしては何ともいえない気持ちになる。
「皆が差別されない世界。か。うん、そんな世界が本当にあるべき姿だとジーニアス、俺もおもう。
  皆が一人一人、小さいことでも努力していけばいつかかならずそんな世界になるとおもうぜ、俺は」
「そうだね。夢みたいな話だけど、ロイドがそういったらそんなきがするよ。
  ロイドもたまにはまともなことをいうよね~」
「たまには、はよけいだろ!」
「それでも、そう思い続けるのは悪くないよね。うん」
「思い続けるんじゃなくて、それを真実にする、だろ?そのために俺達はいま、精霊と契約してるんだしさ」
「・・・・・・・・・・・」
本当に似ている、とおもう。
その心意気が。
かつてのミトスと。
自分のもとに訪れたあのときのミトスと。
ちらり、とミトスをみれば、ミトスは下をむいてしずかにうつむいているのがみてとれる。
ミトスとてわかったはずである。
否、わからないほうがおかしい。
ジーニアスとロイドのその会話は、まさにかつて、ミトスがクラトスとしていた会話そのもの、なのだから。
忘れていない以上、思うところがあるはず、なのだから。
そうであってほしい、とはおもう。
完全に自分を裏切っているのではなく、少しでも良心がのこっている、
そう信じたいのはエミルの…否、ラタトスクの本心。
この世界をつくりあげて、はじめてやってきたヒトの子。
自分を精霊としっていながら、友達になりたい、そういってきたヒトの子のその心。
そこには欲もなく、ただ純粋なる想いだけであった、とラタトスクは理解している。
だからこそ、姉マーテルがころされて、ミトスがその心の闇におちてしまったときに、
ああ、やはり、彼もまたヒトの子でしかなかったのか、とおもってしまったのもまた事実。
それでも、いつまでもまつ、といった以上、今までずっとひきのばしにしていた決定事項。
自分はかつて、門に影響がでないのならば、いつまでもまつ、と
たしかにミトスに、簡単ではあるがそういった、のだからして。

「とりあえず、頂上らしきものがみえてきました」
「みんな~、はやく、はやく~」
みれば、先にいっていたコレットが手をふりながらもよんでいる。
「とりあえず、いこっか」
「あ、ああ。なんかどっと疲れたような気がする……」
エミルにいわれ、ロイドがそんなことをいっているが。
「ようやく頂上。か、ミトス、平気?」
ふと、横をみればミトスの顔色がわるい。
それゆえのジーニアスのといかけ。
「あ、うん。僕は大丈夫……」
「顔色がわるいぞ?ノイシュにのるか?」
「ううん。大丈夫だから」
自分では気づかないほどに表情にでているらしい。
今の会話はまさに、自分達がかつてしていた会話そのもの。
記憶の奥底にあったクラトスとのあのときの会話。
ようやくわかった。
ロイド達をみていて何を思い出しているのか、というのを。
それはかつての自分自身。
自分と、そして自分とともにいた仲間達なのだ、ということが。
だからこそ、ミトスの表情は曇ってしまう。
ロイドはいいかえれば、ミトスの鏡、といえる。
ミトスがそのまままっすぐに道をすすんでいた果てにあったであろう、その心。
まあ、僕はここまで馬鹿じゃない、とおもうけど。
とはおもうが、その心の相違点は捨てきれない。
そしてジーニアスにしてもまた然り。
この四千年、一度もおもわなかった。
否、おもっていても考えないようにしていたその事実が目の前にある。
だからこそ、ミトスは何ともいえない気持ちになってしまう。
ならざるを得ない。
「ようやく頂上…」
ぐったりした様子のロイドの台詞。
「ふむ。あったぞ。おそらく、これだな」
「たしかに、きりかぶ…だな」
頂上付近にいくつかある切り株はあまり古い時間帯に伐採されたのではないのであろう。
あまり風雨にさらされているような気配はかんじられない。
どちらかといえばいまだにまだみずみずしいといってもよい。
もっとも、ざっとみわたしたかぎり、十単位くらいの切り株がみてとれることから、
何らかの方法で大々的にここに生えている木々が伐採されたのはいうまでもなく。
リンカの木は火力やまた水にも強いことから、ロディルがこの地にはえているのにきづき、
材木の材料、として伐採したに他ならないのだが、当然リフィル達はそんな事実はしらない。
エミルとて、魔物達からきいて、ヒトが、伐採した、というのをつきとめ、
その容姿を彼らの目線から視ることにより、命令をだしたのがあのロディルだ、と付きとめているのに他ならない。
力を取り戻している以上、精神感応にて相手の心や光景を視ることなどエミルにとってはたやすいこと。
その気になれば、地上全ての命という命の心すらをも視通すことができるほど。
面倒というか必要がない、という理由でエミル…否、ラタトスクはそれをやったことはないが。
「先生、ここの木々は、伐採されてることからもう新しい芽とかはむりなんですか?」
コレットが山頂付近にあるキリカブをみてリフィルにとといかける。
どうみても人の手によって伐採されたとおもわしき切り株がそこにはある。
何だか切り株をみているだけで悲しくなってくるような気持ちになるのは、
おそらくそれはコレットだけではないであろう。
「何ともいえないわね。でも、まだ生命力がのこっているのなら可能性はあるわ。
  でも、この木々が伐採されてから年月がどれくらいたっているのか…それが問題ね」
「おそらく、切り株をたしかに蘇らせたとしても、それはあらたな芽ぶきを促すだけで、
  木そのものをすぐに蘇らせることは不可能ではないのか?
  まだ枯れている樹木などに力をあたえて蘇らせることは可能なれど」
リーガルのもっともな台詞。
「魔物の襲撃やディザイアンのこともあり、これほどまでの量をいっきに伐採できるとなると。
  やはりディザイアンがらみ、とおもったほうがいいでしょうね」
ざっとみたところ、伐採されているのは十数本。
おそらくかつてはここに、リンカの木の群生があったのだろう。
しかしすべては伐採されており、のこっているのは切り株のみ。
いいつつも、エミルのほうに視線をむけ、
「で?エミル。他の皆はどうしたの?」
「アステルさんたちは坑道に興味がある、とのことなのでそっちにいきました。
  僕は前回、その坑道はとおったのでそれにリンカの木のこともきになったのでこっちに」
「私は、坑道より、山道のほうがよかったから、それで」
エミルとプレセアの言葉はたしかに筋がとおっている。
エミルはかつて、リフィル達とともに、あの学者家族の話しをきいている。
プレセアにしても、職業をきこりにしていた以上、たしかに木々にかこまれていたほうが心やすらぐ、のであろう。
「たしかに、あの坑道は興味深い研究対象ではあるわね。
  ところで、エミル?」
「え?は、はい?」
「あなたは、このキリカブ達をどうみるかしら?」
「そう、ですね…とりあえず、この子達はまだ生きてはいるようですけど…」
このまま、ここにて生息するか、それとも他の場所であらたな命として芽吹くか。
とりあえず、この子達の意見を尊重してみないと。
そんなことをおもいつつも、切り株にちかづき、そっと手をそえる。
本来ならば離れていても理解することは可能なれど、ここにはリフィル達もいる。
触れていれば多少マナを操ったとしても気づかれないであろうがゆえのエミルの行動。
エミルが切り株に手をふれると同時、こころなしか切り株があわく輝いたように感じたのはリフィル達のきのせいか。
どちらにしても、このあたりは、二つにわけられていた世界を一つにするにあたり、
本格的にイフリートとイグニスの管轄下にとおかれる地。
砂漠地帯でも成長できるような種別ならまだいいが、リンカの木はそこそこの水分はとりあえず必要とする。
ならば、すべきことは。
どちらにしろ、ちょこっと大地はいじるつもりだし、君たちはかの地の周囲の山脈にででもいいかな?
それは問いかけ。
もっとも、王にいわれて否、といえるようなものはいるはずもないのだが。
「リフィルさんの回復術で新芽は芽吹くとおもいますけど?」
「先生…」
コレットのすがるようなその視線におもわずため息ひとつ。
「仕方ないわね。私としてはエミルのほうが確実、とおもったのだけど」
「あまり僕のは多様するわけにはいきませんし。どこから話しがもれるかわかりませんし。
  ヒトってそんな力があるとわかったらどんな手段でもとって手にいれようとしますからね」
それはあるいみ事実でもある。
そして、それをうけてもしも魔物達が反撃したとしても、エミルはとめるきはさらさらない。
行動を起こした人が愚かでしかない、というのがわかっているゆえにとめる必要がない、とおもっているのもまた事実。
だからこそ、これまでも魔物がヒトを多々と襲うことがあっても、
ラタトスクは魔物達に人を襲うな、とは命令をしなかったのだからして。
「たしか、リフィルさん、自分の回復術がどこまで通用するのか気になっていたみたいですし。
  ものは試しでこの子たちに術をかけてみてはどうですか?
  別にこのあたりの土そのものが弱っているとかそういうのでもないですし」
事実、別にこのあたりの土が弱っている、というわけではない。
むしろ、イグニスの目覚めとともに、大地はいきいきとしているといってよい。
さらにいえば、きちんと魔物達によってマナが円滑にめぐっているがゆえにマナも安定している今現在。
山地、ということもあり、山地特有の魔物達の姿もちらほらとみえてはいるが、
それらの魔物は少し離れた場所にて、こちらに気づいた直後に、きちんと姿勢を正し、出迎えていたことから、
エミルは苦笑しつつも、念派によって彼らに出迎えやかしこまる必要はない、ということはつたえてある。
それでもやはり魔物達にとっては、王と直接であえる機会など滅多にあるはずもなく。
それゆえにどうしてもかしこまってしまうのは、魔物達からしてみればあるいみ仕方がないといえるのだが。
今、この場にいるのは、ロイド達とともにチームをくんだ、
ロイド、ジーニアス、リフィル、コレット、リーガル、そしてミトスの六人と、
アステル達とは別行動となっている、エミルとプレセアの二人をふくめ、計八人。
もっとも、ロイドとともにノイシュもいることから、ノイシュも含めれば、九人、ともいえるかもしれないが。
「…たしかに。ユニコーンの角によって回復術はたしかに、手にはいりはしたけども…」
どこまでこの回復術が通用するのか、感覚ではわかるが実際に試したわけではない。
たしかにエミルのいうことにも一理ある。
それゆえに、
「まあ、ダメでもともと。無理のようなら、エミルにお願いしてもいいかしら?」
いってウィンクひとつ。
そして。
「彼の者を死の淵より呼び戻せ レイズ・デッド!」
リフィルが習得している術は、たしかにマナを安定させる効果をももつが、
その回復量は全体の数値に表すならば約三十%といってもよい。
それは術者の決意と覚悟のほどに起因しているのだが、
リフィルはまだこの術に完全に自信をもっているわけではない。
その覚悟と決意のほどによっては、ほぼ全ての体力…すなわち、マナを回復させることは可能。
いうまでもなくエミルの場合は完全なる状態で復活させるのではあるが。
あわい光りが周囲に満ち溢れる。
「あ、みて。先生!」
「お。切り株から小さな芽がでてるぞ?」
たしかに、みれば、切り株より小さな芽がのぞいているのがみてとれる。
さきほどまではそんなものはなかったことから、今のリフィルの術がたしかに作用したのがうかがえる。
それゆえに、コレットとロイドがそれをみてそんな声をあげていたりするが。
「ふむ。リフィルのその回復術。レイズ・デッドいったか。
  テセアラでもあまり習得者はいない、高等なる治癒術に属するものだが。威力はすざまじいのだな」
初めてみたがゆえにリーガルがぽつり、とつぶやく。
「ちなみに、エミルがやったらどうなるんだ?」
それはちょっとした好奇心。
「え?僕はしないよ?」
「ぶ~。何でだよ~」
「あのね。ロイド、ここは山頂。ついでにいえば、眼下も両方のぞめる。それはわかるよね?」
「あ、ああ」
「でもって、ここが光ったとする。まあ今の光りも気づいた人は気づいたかもしれないけど。
  神子一行がパルマコスタからこっちにきている、と
  たぶんもう、あの兵士さん達から報告ははいってるはずだよね。
  そうしたら、そのうちにこの大陸の人達もそれをしることになる。
  で、いきなりなくなっていたはずの木が復活していたら、それが神子の力だ、と認識されちゃうよ?」
「?それのどこがわるいのさ?」
ロイドはわかっていないらしい。
「…ロイド。これ以上、コレットに負担をかけるつもり?コレットが神子なのは覆らない事実だけど。
  コレットが使用した力でもないものが、コレットの力だ、と認識されることによって。
  人々がコレットに対し、何をおもうか、何を願うか、無理強いするのはめにみえてるでしょ?
  そして、コレットはそんな人々のために無理をするのは目にみえてるし」
「…あ……」
ため息とともにそこまで説明され、ようやくロイドもエミルのいいたいことが理解できる。
「たしかに。前みたいにエミルが直接、誰かの前で使用したのならともかく。
  そこに不思議な、しかも奇跡みたいな現象がおこっていれば、神子が行った奇跡。
  そうヒトはとらえるだろうね。特に今現在は、神子の再生の旅の期待がかなり高まってるだろうし」
安定したマナのこともある。
いまだにディザイアンは封印…そのように、こちら側、シルヴァランド側ではマーテル教がおしえている。
つまり、ディザイアンは封じられてはいないが、マナが安定したのは、マナを感じ取られない人も気づいたはず。
何しろ目にみえて自然がいきいきとしているのである。
これで気づかないほうがかなりおかしい。
そんな中で、すでに切り株でしかなかった樹木がいきなりよみがえっていたら?
その期待はまちがいなくコレットにふりかかる。
再生の神子に。
コレットがおこなったことではない、というのに、人々はコレットに奇跡をもとめすがるであろう。
「…ヒトは、奇跡をおこせるものに簡単にすがっては、そしてきりすてる、からね……」
ミトスがぽつり、とつぶやく。
姉が力をつくし人々のために回復などをほどこしても、ハーフエルフだとわかっただけで迫害した人。
にもかかわらず、姉のもつ力をもとめ、何かあればすがってきたひと。
用事がすめば、手のひらをかえし、邪剣にしてきたほとんどのヒトたち。
中にはそうでないものたちも少しはいた。
いたがそんなものたちですら、ハーフエルフをかばうのならば同罪だ
などとわけのわからないことをいわれていたあの当時。
やがて、真実は彎曲され、勇者達はわざとハーフエルフとなのり、差別をなくそうとしている、
純粋なるエルフなのだ、というような認識が世の中にとひろまっていた。
それは国の思惑によるもの。
シルヴァランド側にしてみれば、ハーフエルフを重宝していたとはいえども奴隷同然。
さらにいえば、天使、という人体兵器をテセアラ側につづき生みだしていたがゆえ。
テセアラ側にしてみれば、人を利用したエクスフュギュアというものを先に生みだしたのはたしかに彼らなれど、
シルヴァランド側がハーフエルフにそれを用いることで、天使というものを生み出したけっか、
ハーフエルフは兵器になりえる、という認識をもってしまっていたのもまた事実。
また、ハーフエルフ達は豊富なるマナをもっていたがゆえ、マナの補給源、といっても過言でなかった。
さらに、クラトスの存在もあったといえる。
テセアラにクラトスあり、とまでいわれていた騎士団長。
その彼が国をでて、ミトスとともに行動していることは、すくなからず民に動揺をあたえていた。
クラトスがいたからこそ、あるいみ、ミトス達はテセアラ側にて行動がかなり楽に行えていた、
といっても過言でない。
何よりも、クラトスは民にとって、あるいみで憧れて的な存在であったのだから。
国からしてみればたしかに追放。
が、英雄を追放したのか、という民の追求はたしかにおこりえるがゆえ、
だからこそ国は嘘を発表せざるをえなかった。
彼らはエルフで、今のこの戦乱を憂い、そのために人の世界に出てきたのだ、と。
だからこそ、勇者ミトスがハーフエルフだ、ということは人々にはつたわっていない。
互いの国がその事実を隠ぺいし、人々に隠したのだから真実がつたわるはずもない。
「たしかに。真理ね。エミル、あなたそこまで考えていたの?」
「コレットって、自分にできないことでも、なら、ヒトがその命で何かをすくえ!
  とかいったら、そのまま素直に命をさしだすようにみえるし。
  現に前だって、命で世界にマナが賄えるはずもないのに、それをしんじきってたし」
「…あなたは、あのときからときどきいっていたものね。偽りの真実、だ、と」
「少し考えればわかるとおもうんですけどね。そもそも、いくらそう教わった、とはいえ。
  何でそこに疑問を誰ももたないのか。僕からしてみればそれが不思議でしかたないですけど」
少し考えれば矛盾点が多々とでてくる、というのに。
リフィルの言葉にエミルがにこやかにこたえる。
そして、あらたに芽吹いた新芽をみつつ、
「まあ、新芽なら、時がたち、あ、芽があらたに芽吹いたんだ、という認識だけですみますしね」
それはたしかに真実で。
「特にここは、人もよくとおる山道の一部。あまり目立つようなことはしないほうが懸命だと。
  もっとも、これが誰も人がはいりこまないような山地とかだったら蘇らせるのに否とはいいませんけどね」
「そういえば、あの動物学者のノヴァさんがいっていたよね。リンカの木はおそらく。
  人がはいりこめないような山の奥にあるんじゃないかって」
「…精霊アスカにあうためには、ならばここ以外の場所の群生地を探すしかない、ということね」
ふと、ジーニアスが思い出したようにといってくる。
そんなジーニアスの言葉にリフィルはためいきをつき、たしかにエミルのいうことも一理あるわ。
そうおもい、思考をきりかえる。
「…それより、そろそろいきませんか?たぶんゼロスくんたちがまっているかと」
「たぶん、アステルさん達をひっぱっていくのに時間かかってるとおもうよ~?」
事実、すこしばかり意識をそちらにむけて視れば、
坑道には今でもかつての道具などがところどころにのこされている。
それゆえにアステルがあっちにいったり、こっちにいったり、で、
しいなとゼロス、そしてリヒターとともにアステルをどうにか制御している様がみてとれる。
その姿はあるいみかなりほほえましいといえばほほえましい。
「プレセアのいうとおりだ。ここで話しこんでいては…眼下にみえているのは、あれが砂漠…か?」
さすがに頂上付近、ということもあり、互いの大地がみわたせる。
今、上ってきた方向には海がみえるが、逆の方向には、
どこまでもつづく、砂地のようなものがかいまみえている。
リーガルもこれまで生きてきて砂漠、というものをみたことはない。
そういうものがあっても不思議でなはい、とはおもっていたが。
砂漠など、物語の中にでてくるだけで、現実にはテセアラにはそんなものはなかった、のだから。
「プレセア達のいうとおりね。とにかく、いきましょう。
  ちょうどちょっとした霧がでてきているようだから、今ならば砂漠超えも楽でしょうしね」
みれば、山より、正確にいえばこのあたりの山より砂漠地帯に霧が立ち込めていっているのが視界でみてとれる。
砂漠地帯に立ち込める霧はあるいみ命にとっての生命線。
アクアによってきちんと水のマナが行き届いている証拠。

ともあれ、ここにいつまでもいても何だ、というので、彼ら一行はエミル達とともに、
ひとまず山をおりてゆくことに。


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あとがきもどき:
薫:ようやく山道がおわったぁぁ!よ、ようやくトリエットの砂漠イベントだ…
  あ、ちなみにこのイベント、たぶん(おそらく?)ゲームにはない…かなぁ?
  あったような気もするけど、ううむ?
  とりあえず、次回でようやく砂漠さんです。

2013年7月24日(水)某日

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