まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
そろそろ、物語もすすんでいないのに、本質的な確信を、ロイドたちに知らしめたり。
いや、始めにしっておいたほうがいろいろと、後のイベントが、
すこしばかりかわってくるかな…とかおもったり(まてこら
特に過去を思い出してほしい当事者さんにとっては特に…ですね(誰なのかまるわかりv
何はともあれいきますv
今、ふと気付いた…雷のセンチュリオン、トニトルスがトルトニスになってる箇所がいくつか汗
気づいたら修正していきます…さらっと流してたよ…あう……
########################################
「世界が平和になったら一緒に旅をしようよ」
「我はこの場からはなれられん」
「え~?でも平和になったら問題ないよね?」
「ラタトスク様、すこしくらいは我々がこの場所をお守りできますのでよろしいですよ?」
にこやかにいうミトスの台詞になぜか同意してきていたセンチュリオン達。
かつての記憶。
あまりにしつこいので、考えておく、とはいったあの当時。
しつこくかよってくるがゆえに、しかたなく姿をみせるハメとなり、
やってきたヒトの子にと姿をあわせて子供の姿にしたせいなのかはわからない。
精霊体を実体化し、歳のころは十四かそこらの姿にしたあの当時。
そのせいかやけになつかれたような記憶が鮮明に思い出される。
もうくるな、というのに幾度もやってきていたヒトの姉弟。
ヒトとエルフの混血たる存在たち。
困難な状況の中でも突破口を見出し、オリジン、
そしてアスカ経由からルーメンに話しがつたわりやってきたヒトの子。
「ぜったいに君をたすけてみせるからね!まっててね!」
その言葉に嘘はなかった。
まっすぐに、光りにあふれ、困難でもやりとげる。
そんな意思を確実にもっていたヒトの子。
だから猶予を与えた。
なのに……
光と闇の協奏曲 ~クルシスとアルタステ~
「でも、おかしいわ。雷がおちたにしては、木々とかがもえていないもの」
リフィルの至極当然な疑問。
事実、燃えているのはほとんど家屋といったものばかり。
ミトスとてそれは意味がわからなかった。
何しろデリス・カーラーンよりこのあたりにしぼり、確実に雷いかずちをおとした、というのに。
それとともに天使たちにこの村のものたち、生きているものがいれば全員捉えるように、と命令をくだした。
この村のものたちは、シルヴァランドにて失われた牧場の苗床のかわりとして、
のこされし施設にとおくるようにとプロネーマにと指示をだした。
天使達がこの地におりたったとき、人々がなぜ雷の被害がないのか不思議におもっていたりもしたのだが。
捉えた村のものに無理やり聞きだしたところ、何でも避雷針?のようなものに雷は収束した、とのこと。
それは移動していたゆえにおそらくは何かの魔物だろう、とは村人談。
もっともその村人は全員連れ浚われてしまい、一人も残されていないのでロイド達がしるよしもない。
否、ただ一人のみ、村を離れていたがゆえに助かっているものがいるにはいるが。
やってきてみれば、なぜか家々は無事で…村人にきけば、魔物達に雷は吸い込まれた、という。
ここに雷属性の魔物がいる、などきいたことがない。
が、どうやらそれは事実のようで、たしかに雷属性をもつ魔物がうようよしているのが目にとまる。
魔物の生息図まで完全に把握していたわけではない。
しかたなく、天使達を呼寄せ、直接に襲撃をさせた。
この村にいるものたち全てを実験体とすべく、プロネーマも呼寄せた。
この村にすみしものたちは自分達こそが選ばれしものだ、とおもっている、ときく。
ならば、本当に選ばれし自分達が彼らをどうしようが問題ない。
その判断のもと。
彼らがそんな会話をしている最中。
「とりあえず、村の様子をみてきました。やっぱり誰もいないみたいでしたよ?」
いいつつも、家の中にはいってくる一人の子供。
その姿をみて一瞬、ミトス、と名乗りし少年が目をみひらく。
その変化に気づいたものはゼロスのみ。
あの現状で一人だけのこっていた、その違和感。
それゆえに注意深く観察していたがゆえにきづいた微妙な変化。
「エミル。あなたはまた一人でかってに別行動をして……」
「とりあえず、家の炎は消してもらってますけど」
「……と、とりあえず。いつまでもここにいても危険、かもしれないわね」
「アルタステさんが気になります……」
消してもらっている、というのが誰に、ときかないのは、おそらくそれは直感的なもの。
さらり、と魔物達にお願いして、といいかねない。
否、むしろそれが事実なのだろう。
それがわかるからこそあえてといかけないリフィルはあるいみ賢明な判断、といえるのかもしれない。
ウルフとピヨピヨ…はわかるのだが、なぜアクアスピリッツとよばれし魔物のようなものがまた増えているのだろうか。
エミルの横にふわふわとうかびし、魔物の姿。
ウルフの背中にいつものようにピヨピヨらしき魔物もまたのっているのはみてとれるが。
アクアスピリッツ、とよばれし魔物にちかしいそれは、
ふわり、とエミルの肩の横に当然のようにと浮いているのがみてとれる。
さらにその後ろにライトニングバードによくにた小さな鳥の姿までもがみえるのはこれいかに。
魔物とさも当然のように一緒にいる子供。
クラトスからの報告にあった…魔物を使役する、ヒトの子。
「ミトス?どうかしたの?」
しばらくそんなエミル、とよばれし少年をみていたからであろう。
ミトスの変化にきづき、心配そうにジーニアスがといかける。
「あ、ううん。あの、エミルって子……」
小さな家の中に大人数。
目覚めてしばらくしてはいってきたみおぼえのある容姿の子供。
一瞬、息がつまるのがわかった。
それでも記憶にある声とは完全にことなり、やわらかな声。
それでもときどきそのやわらかな口調は覚えがあるような、そんな声。
その傍にはウルフらしき魔物と、ピヨピヨらしき魔物。
その後ろにライトニングバードによくにた小さな鳥。
その鳥をみてまた視たことのない魔物がいる…とロイドとなのった人物がいっていたのが印象深い。
肩の横にふわふわとうかびしアクアスピリッツとよばれし魔物にちかしいもの。
思わず身構えそうになったが、この場にいる誰もが身構えないことに不思議におもった。
そしてまた、その魔物達がどうみても金髪の少年になついているようにみえたことにも。
話しにはうけていた。
魔物つかいの子供のことを。
だから、捉えるように、と命じた。
ここまで自然に共にいる、などとはおもってもみなかったが。
「エミルがどうかした?」
「…僕の知り合いににてたから……」
「ミトスの?」
「うん」
思い出すのは世界が平和になったら一緒に旅をしようよ。
自分からそういった。
世界をみせてあげたかった。
君がまもっている世界はこんなに綺麗なんだよ、と。
全ての種族が共存し平和に暮らせる世界。
人も精霊も全てが。
それはかつての理想。
けども、人は異なるものを排除しようとする、どうしても。
それはもう姉を失ったときに嫌でもおもいしった。
だからこそのこの計画。
人全てを同じ種族にしてしまえば、きっと…
どうしても適合しないものがいるが、それらの体は結晶化となり、新たな石を生みだしてゆく。
この四千年、ずっとそうしてきていた。
だけど、ゆらいでしまう。
あのそっくりな子供をみていれば特に。
そんな世界を本当にあの精霊は望んでいるのか?そんな思い。
今まで心の隅にはおもっていたが、考えないようにしていたこと。
エミル、と名乗りし子供の傍に異形のもの…魔物が傍にいるのをみればなおさらに。
魔物使い、そうよばれていた種族。
古代大戦のときもそのような心かよわせる一族はいた、という。
が、両勢力の手により人体実験につかわれて絶滅した、とも。
「…異なる種族なのに一緒にいられるって…すごいね」
傍によりそうようにいる魔物達。
魔物は人になつかない。
なつく魔物はかつていたらしいが、それでも。
かの大戦ののち、魔物達は人を極端にさけ、また攻撃するようになった、ともきいた。
人が大樹を…枯らしてしまったゆえに。
「前にエミルがいってたことがあるんだ。心に種族はないって。
心には種族とかそんなこだわりの色はないんだって」
前にきいたことがある。
どうして魔物と一緒にいられるのか、と。
さらり、といわれたエミルの言葉に、がつん、とした衝撃をうけたのは記憶にあたらしい。
それはまだ、シルヴァランドにいたころ。
エミルと旅を初めてまもないころ、何となくジーニアスがきいた台詞。
「同じ種族…同じ人同士でもどうしても差別とかはあるからね。とくにここテセアラだとね。
どっちかといえば人同士の差別のほうがひどいかもしれないね。
身分の差、貧富の差、産まれの差、それらすべてで差別をしてる。
身分の低いものは道具以下扱いしても誰も文句はいわない。むしろそれが当然のように…ね」
今はその身分制度の一番下にハーフエルフ、というものをおいてあるがゆえか、
人々に不満はたまっていないが。
もしそうでなければ、人々の不満はゆっくりと蓄積されていったであろう。
まだ、今は不満をぶつける最下層
…すなわち、ハーフエルフという存在がいるがゆえにとどまっているに過ぎない。
「皆が同じ種族でも…差別とかはありえるの…かな」
すべてのヒトが同じ種族になれば差別はなくなる、そうおもい計画したこの千年計画。
「それはないとおもうよ。絶対に。人は…悲しいけど。自分と違うものをどうしても見下す。
それで心の平穏をたもとうとする…からね。何かあったら誰かに八つ当たりとわかっていても、
全ての責任をおしつけようとするんだよ」
しいなの言葉には実感がこもっている。
たしかにあのとき、契約を失敗してしまったのは自分。
たくさんの里のものを殺してしまったという事実はかわらない。
アステルと知り合い、当時のことをきかされた。
アステルも興味があり調べてみたらしい。
結果、ノームやセルシウスでなくなぜヴォルトとしたのか。
たしかにみずほの里からは近い。
が、ノームの話す原語が解読不可能に近い、といわれている以上、言葉がわからなければ契約は失敗する。
ならば、あの身元も産まれもわからない子供をおいだす口実にはなる。
そう里の上層部のものたちがかなり結託し、ヴォルトにきめたらしい。
契約の失敗において頭領やおもたるものたちをうしなえば、自分達が里の実権を握ることができるから、と。
彼らの誤算は、そのメンバーに選ばれてしまったことであろう。
いろいろいいわけをしてメンバーから逃れようとはしたが、頭領にいわれれば従うしかない。
命令をきかない、それは忍び失格、という烙印をおされかねない。
すべては、あのときのことは、里の三文の一にもおよぶものたちによる自分を排除するためのものだった。
そうきかされたときのしいなの衝撃。
排除しようとしたのは、しいなが召喚の技をもっていたがゆえ。
このままでは、みもしらぬ身元不明の子供が里の頭領になりかねない。
それゆえの危惧。
里のものは召喚の力をうしなってひさしい。
それは大自然との盟約を彼ら自身がどこかでたがえている証拠、ともいえる現象。
確実に失敗するであろう精霊を選らんだけっか…えらばれたのがヴォルトであった。
頭領イガグリはそこまで当時、把握していなかった。
否、把握していてもおそらくは、上層部のものたちにせっつかれては、どうにもならなかったであろう。
結果として里のものを四分の一失うことになったあの契約の儀式。
七つになったばかりのしいなにかせられた、試練。
あの当時はわからなかった。
人の心の複雑さが。
今のしいなはよくわかる。
ゼロスと知り合い、とくに人の心の複雑さをしったがゆえに。
「そうなの…かな……」
「認めたくないけど…。そうなんだとおもう。僕も無意識に人を差別してるみたいだし……」
ゼロスにいわれなければきづかなかった。
お前だっていってるだろ?いつも、これだからヒトは、とな。
そういわれ、理解した。
自分は常に人を見下していたのだ、と。
心のどこかで、無意識に。
自分は違う、といっていながら、自分もヒトと同じことをしていたのだ、と。
「たしかにわかりあえないかもしれない。けど、わかりあえなくても、許しあえる。
そんな心が誰にも必要なんだろうね。…許せないけど、そこにいるのは許す。
誰だって居場所を失いそうになれば…何かに逃避したり、八つ当たりしたくなるよ。
まずはそこから…なんだろうね。根本的なことは」
その根本的なことをしようとするのか、それともしようとしないのか。
それは人それぞれの心しだい。
心の考え方をかえなければ、かくじつに差別というものはなくならない。
別に嫌っていても、憎んでいてもそれはしかたがない、とおもう。
しかしそれらの考えは別なる連鎖を生みだしかねない。
しいなはそうおもう。
だからこそ、里のものが自分を憎んでいるのをしっていても、認めてみらえるまで、ずっと頑張ってきていた。
いつかは、そこにいてもいいのだ、そう認めてもらえるように。
「エミルは人は嫌いだ、といっていながら認めてるからね。
でなければここまで僕たちの旅につきあってくれてないし」
始まりはトリエットの遺跡から。
始めは遺跡の中だけ、というだけだったのに。
コレットの意見もあり、同じ海の向こうにいくなら一緒にいこうよ。
そういい、結局自分達の意見もあり同行することになった、不思議な子供。
常に傍に魔物を従え…従えている、というほうがしっくりくる。
そしてまた、エミルが同行してから旅の最中、まったく魔物たちの襲撃がぴたり、となくなった。
魔物達の姿をみたとしても、まるで道を譲るかのように魔物達は一斉にと移動していっている。
「判りえ得なくても許しあえる…」
許せなかった。
姉をうばってゆく、ユアンが。
だけど、家族が増えるのよ、そういって笑っていた姉を邪剣にすることもできず。
できるのは二人きりの時間を極力邪魔していた当時。
夜、寝る時ですら、家族なら一緒にねてもいいよね、といってわりこんでいた。
…クラトスは呆れていたが。
優しい記憶。
「…心がなければ、表現することがなければ差別はないのかな?」
「でも、それって生きてるっていえるの?ミエルもいってたよ?
動植物にも心はあるって。ただ人がそれを感じ取られなくなっているだけだって」
「心がない状態。ね。まるで人形だね。
それで生きていて当人がそれでいい、とおもうならそれはそれかもしれないけどね。
あたしは…ごめんだよ」
心を失ったコレット。
あの衝撃。
ただ、動くだけの体。
何をいっても反応せず、またこちらが何かしようとしなければうごくこともない。
それでも、自分達が行動しているのについてきていたのを考えると、
少しは心がのこっていたのかもしれない。
もっともそれは、生物、としての本能なのかもしれないが。
自分がより安全にいられるように、他者と行動する。
それは力なきものがよくとる生存本能。
「うん。僕もいやだ。やっぱり生きてるって実感するときは。
おいしいものをたべて、馬鹿をいって、時には喧嘩もするけど仲なおりをして。
そんな平凡だけどもそんな些細なことがやっぱり生きてるっていうことだとおもうから。
おいしい、と感じるのも、喧嘩をするのも、それは心があるから、なんだし」
「・・・・・・・・・・・・・」
ふと、おもう。
あの空間で。
ずっとひとりきりであったあの精霊を。
あの場に訪れた人は自分達が初めて、そういっていた。
精霊達ですら訪れることはない、という。
それはかの地の空気がよりマナにあふれ、そしてまたより瘴気に…魔界に近しいがゆえ。
精霊達には毒になりえるから、という理由にて。
この世界ができて、ずっとあの空間に一人でいたかの精霊。
以前に、センチュリオン達からいわれたことがある。
自分達は僕である以上、主の対等にはなれない、と。
それでも主を一人きりにはさせたくない、と。
時には主も自らの使命を忘れる瞬間が一時でもあり、心休まる時間があってもいいのではないのか、と。
それはセンチュリオン達の本音、だったのだろう。
特に水のセンチュリオン・アクアがそうよく姉のマーテルにもらしていた。
ラタトスク様はやさしすぎる。
いつも自分の心をおしころし、世界のためにつくそうとしているから、と。
世界のために他者を排除するたびに、心を痛ませているのに自分達はただ傍にいることしかできない、と。
だから、がんばって、とも。
このままだと、ラタトスク様はまた悲しみをおうことになる。
今のままでは、世界…いまある世界全てを元のあるべき姿にもどすために、
一度全てを海に還す判断をしてしまうから、と。
地上の一斉浄化。
一度、無に還し、あらたな歴史をつむぎだす、世界樹の…否、世界を護りし存在の判断。
でもそれをすると、ラタトスク様はきっと、後悔をずっと背負うことになる。
だから、と。
そしてその悲しみを自分達にすらいうことなくずっと内にとどめて、そんなのは悲しいから、とも。
「…僕は……」
「ミトス?」
「…ううん、何でもない」
振り返って考えることなど今まではなかった。
否、あったのかもしれない。
ユアンがかつて、千年くらい前だろうか、そういってきたときに。
そしてまた、その前にクラトスが自分と喧嘩して一度、離脱したときに。
でも考えないようにしていたのは自分。
机上の論理、とはよくいったもの。
現実に見聞きしなければみえてこないものがある。
ただの姉を蘇らせるための手段でしかない、とおもっていた。
この世界の仕組み。
そのためにこの仕組みをつくりあげた。
マーテル教をつくりあげ、ディザイアン、という敵対するものをつくりあげた。
敵対するようにみせかけて実は一つの組織。
異なる組織では意味がない。
管理できてこそ意味がある。
そのようなことをおもいついたのは、世界を二つにわけても戦いをあきらめなかった二つの勢力。
停戦協定はどうにかむすぶことはできたが、だがそれぞれの勢力が隙をうかがっていたのをミトスはしっている。
結局、両方の勢力達は大いなる実りのことをしり、奪うことを選んだ。
その力すべてをわがものにしようとして。
その結果、何がおこるかも考えずに。
あのとき、もし大樹を蘇らせていたとしても、人はまた同じ過ちを繰り返していたのかもしれない。
大樹が復活した、これ幸いとまた戦いを繰り返していた可能性がはるかに高い。
あのときは、そう自分にもいいきかせ、だからこそその力を姉と種子との融合にともちいた。
…約束をたがえる、否、約束が後回しになる、とわかっていながら。
その時のまま、時は無意味にすぎさっている。
かつてはいろいろと自分に意見してくれていたクラトスも、今は自分のいうがまま。
無気力、そういっても過言でなかった。
いわれるままに、その役目をこなす。
自分が憧れていた、師事していた師の姿は今のクラトスからはみられなかった。
かわった、とおもうのは神子の護衛、として地上に派遣してから。
調べてみれば理由は簡単。
死んだとおもっていたクラトスの実の息子がいきていた、それだけのこと。
息子と自分と、クラトスはどちらをえらぶのか。
家族の絆というものが深い、というのはミトスは自分が姉を慕うことからわかっているつもりである。
物ごころついたころには、すでにミトスの両親はいなかった。
姉が全てであった。
昔は、家族がいる里のもたちをうらやんで、姉にいって困らせたこともあったほど。
わすれていた、そのときの想い。
否、忘れていたわけではない、ただ考えないようにしていただけ、ただそれだけなのだ、と自覚する。
「……僕は……」
「ミトス?大丈夫?」
「……まだ衝撃がのこってるんだろ。あまり無理するんじゃないよ?」
うつむくミトスの顔をのぞきこむようにしていってくるジーニアスとしいな、となのったふたり。
バタン。
そんな中、いきなり扉が開かれる音。
ふとふりかえれば、扉が開いたその先にみおぼえのある人影が二つ。
「ここは無事じゃったか…話し声がするとおもったら……」
『アルタステ(さん)!?』
ふとふりむれば、扉のむこうにいるのは、ドワーフのアルタステと共に生活しているというタバサの姿。
「裁きの雷がこの村めがけておちていくのをみてこれでも急いでやってきたんじゃが…
これは、一体……」
ここにくるまで村の様子もみてきた。
はっとし、あわててここ、プレセアの家を確認にきた。
どうやらここまでは火の手はあがらなかったようではあるが。
それでも村は壊滅状態で、人一人すらみあたらなかった。
「クルシスの…天使達の仕業、らしいです」
プレセアの台詞に、
「まさか…これは、実験の失敗の見せしめ…なのか?それとも、わしにたいする……」
がくり、とうなだれるアルタステ。
実験、それは以前、ロイド達はアルタステから聞かされている。
「見せしめ?」
だけどそれはおかしいとはおもう。
アルタステがたしかクルシスをぬけてからもう何年かたっている。
「とにかく、ここは危険かもしれないわ。いつまた天使が襲ってくるとも限らないわ。
アルタステさん。あなたの家は崖の中、山の岩肌の中だから雷とかにも強くてよね?」
「あ…ああ。たしかにここは危険かもしれぬな。…わしのところも安全、とはいいがたいが…
しかしここよりはまし、だろう。そっちの子は?」
みれば見知らぬ子供がひとり。
どこかであったような気もするが、それがアルタステにはわからない。
「ミトス。お前も一緒にいったほうがいい」
「え?でも……」
ロイドにいわれ、ミトスは口ごもる。
アステルとよばれしものと、リヒター、というものはあからさまに自分を怪しんでいる。
ここで、素直にうなづいたとすればよけいに違和感を感じさせてしまうだろう。
ならば、とまどっているようにふるまうのが正解、といえるもの。
それゆえの戸惑いの表情。
そんな彼をじっとエミルが静かにみていることにも気づくことはなく。
その瞳にすこしばかり悲しみの色がやどっていることにすらミトスは気づかない。
否、気づくことができない。
「でも、僕はハーフエルフで……」
「そんなの関係ないだろ。それにここにのこってまた天使がきたらどうするんだよ?」
「そうだよ、一緒にいこうよ!」
ロイドにつづきジーニアスが声をはずませいってくる。
ジーニアスからしてみれば自分と歳のちかい、ハーフエルフの子供など初めて。
ゆえに村の惨状のことはすっかり失念し、おもわず舞いあがっていたりする。
「ミトス、いっしょにいこうよ!」
いって手をさしのべるジーニアスにおずおず、といった形で手をのばす。
そんなミトスの手をぎゅっとにぎりしめるジーニアス。
初めてのハーフエルフの友達だ!
そんな感情にジーニアスは満たされるが、その考えからしてすでにあるいみ種族差別をしている、
ということにいまだにジーニアスは気づかない。
アルタステの家までの道すがら、誰ともなくプレセアに気をつかいながらあるいてゆく。
たしかにプレセアの家は無事ではあったが、村はそうはいかなかったらしい。
すでに家屋という家屋は燃え落ち原型をとどめておらず、
のこっていても枠組みのみ。
「ミトスって、一人で暮らしてたんだよね?」
「え。あ、うん。そうだよ」
そんな中、歩きながら、隣をゆくジーニアスがミトスにたいして話しかけてくる。
「お父さんとかお母さんは?」
他のものたちは、あれこれクルシスの目的が何だだの、いろいろと話してはいるというのに、
この二人のみ別の会話に夢中になっている。
正確にいえばジーニアスのみが空気を呼んでいない、というところであろう。
「二人とも、もう死んじゃったから…」
物ごころついてすぐに。
それからずっと姉と二人でいきてきた。
あの里をおいだされるときまで。
「…僕も同じ」
本当は母は生きているのかもしれない。
だけどもあったことがないのだから死んでいる、といって差し支えがない。
そもそもそのように姉からずっときかされていたのだから。
先日のエルフの里で生きているかもしれない、とはきかされたが。
だけども完全なる確証、ともいえないのもまた事実。
「そうなの?」
「うん。何だかにてるね。僕達」
共通の何かがほしかった。
初めての同族の友達になれそうな子供。
嘘をついているかもしれない、という罪悪感はジーニアスにはない。
一つでも共通意識をもってもらえるほうのほうが今のジーニアスにとっては重要。
それは無意識の行為。
「…そう、だね」
一人しかいない姉。
姉と二人でいきていた自分、そして目の前のジーニアス、となのるハーフエルフの子。
歳をきけば十二、という。
自分が里をおわれし歳と同じ年の子供。
「僕たち、なんだか仲良くなれそうだよね。よろしく!」
「…なかよく?本当?」
「うん。友達になろうね!」
「…ありがとう?」
まっすぐに迷いのない瞳は何かをおもいおこさせてしまう。
どこかでみたような、そんな感覚。
ミトスは気づかない。
かつて自分もジーニアスのようなまっすぐな瞳をしていた自分に似ているのだ、ということに。
「…ったく、お子様だなぁ。というか、リフィル様、あの子のことどうおもう?」
そんな彼らの台詞がきこえてきて、背後をちらり、とみつつおもわずゼロスは苦笑する。
今の状況をわかっているのかいないのか。
否、まちがいなく失念している。
そもそもあんな場所に子どもがひとりいたことに疑問をおもわない、そこがおかしい。
だからこそのといかけ。
「そうね…たしかに、おかしいところは多々とあるわね。
きづいていて?あのこ、あんな場所にたおれていたのに服はまったく汚れてすらいなかったのよ?
土もついていなければ、煤などもついていなかった。
燃え盛る火の真下にいたというのに汗すらかいてなかったわ」
怪我も一つもおっていなかった。
ありえない。
そんな二人の様子をみて、横をあるくリフィルに確認をとめてといかけているゼロス。
ゼロスの言葉に、リフィルが気づいた指摘をいう。
「家族でもいたのならあの子を隠していた…というのならばわかるけど。
今のジーニアスとの会話からしてそれはないみたいだし……」
どこかに隠していて、それで襲撃がおわったあとにでてきた、というのならば。
すくなくとも怪我がなかった、というのにも説明がつく。
が、それでは天使が襲ってきた、という目撃情報の真意が定かではなくなるのもまた事実。
「それに…いえ、これはいいわ」
「?まあ、同じ同胞、という理由でリフィル様が正確な判断ができなくなってるかもしれない。
とおもったんだが、それは杞憂だったようだな。さすがリフィル様」
「ほめても何もでなくてよ?」
「事実をいっただけだって。同胞、という理由だけで無条件に信じちまうようならどうか、とおもったわけだしな」
「あの子が住んでいた、という家はありえないはずだ。
このあたりはテセアラの国どころか、研究機関もことごとく調べつくしているからな」
そんな会話に参加するかのようにリヒターも何やらいってくる。
「実際、神木を研究するため、とかいって、毒の沼地に監視小屋までたててるしね。うちって」
毒の沼地にのみ生えている神木、といわれている木。
とてつもなく頑丈な樹であり、それを斬り倒すことができるのは、今やプレセアのみ、といわれているほど。
かつてはプレセアの父のみがその一任者、だったのだが。
本来は数人がかりでおこなう作業を一人でやってのけていたがゆえに重宝されていたのもまた事実。
リヒターに続き、アステルもいってくる。
実際問題、ここに隠れ住む、などということはまず不可能に近い。
にもかかわらず、あの子は住んでいた、そういった。
絶対にありえない。
ではなぜそんな嘘をつくのか。
嘘をつく必要があるのか、ということになってくる。
「…迫害をさけるためにあえて住み家を偽ってる、という可能性もあるわね」
「まあ、住み家を特定されでもしたらそれこそ捕まる可能性が高くなるだろうな」
リヒター達が住んでいた家も両親が殺された後、焼き払われた、と後に研究院の誰からか耳にはいった。
ハーフエルフが住んでいた場所などけがらわしくあるたけでも害になる、という意味のわからない理屈で。
「嘘だ、としてもなんであんな場所に子供が一人、しかも一人だけいたのかもきになるよね」
周囲に人の気配はなかった。
しかもあんな目立つところに倒れていてもし襲撃者がいたとしてもなぜ彼をとらえなかったのか。
もしも、天使が襲撃してきたとするならば、同族たるハーフエルフだからという理由で見逃したのか。
そうはおもうが、天使がそんなに甘いものではないのでは、という思いがリフィルにはある。
げんに、あのレミエルは自分達姉弟を見下していた。
疑問は尽きない。
「…で、エミルはまた一番後ろからついてきてる…と。あいつ絶対俺達の前にくることないよな……」
つねに今までもずっと、大概後ろをついてきている。
自分の背中をみせない、というあるいみ徹底ぶり。
時折前にどうしてもでなければいけないことがあったとしても、
そのときは必ずエミルの背後に魔物が数体、いつのまにかおり、
常に背後を警戒しているのをロイド達はしっている。
「そのエミル君だけどよ。きづいたか?あのミトスって名乗った子。
エミル君の姿をみて驚いたように目をみひらいてた。
まあ、そのあと、なんか知り合いに似てるとか話してたせいかもしれないけどな」
プレセアの家にてジーニアス達がそんな会話をしていたのをゼロスはきいている。
もっとも狭い家なのでそんな会話をしていれば自然と耳にはいる、といったほうが正しいが。
しかもゼロスは天使化をしている以上、聴力もまた鋭くなっている。
「似てる、といえばアステルだよな?」
似ている、でおもうのは横にいるアステルのこと。
双子、といっても確実に通用するほどにエミルとアステルはよく似ている。
それゆえのロイドの台詞。
「僕はあんな子しらないよ?」
「そもそも、私たちはエミルのことをはっきりいって何もしらないに等しいわ。
わかっているのは、あの子には親はいない、親戚もいない、ただそれだけなのよ?
そして、なぜか魔物とともにいて、彼は魔物の言葉がわかる。…魔物を呼び出すことすらもできる。
これくらいね。確信をもってわかっている、といえるのは」
「そういや、いつも話しをきいてもはぐらかされてるっけ」
「はぐらかされてる、というかロイド。あなたとコレットがいつも話しを脱線させてるのではなくて?」
それは事実。
いつも彼らが加わることにより話しが大幅に脱線してしまっている。
それゆえに肝心なことがいまだにきけていない。
シルヴァランドからここテセアラにいたるまでずっと。
そんなリフィル達の会話がきこえてきて、おもわず言葉をつまらせる。
魔物の言葉がわかり、魔物を呼び出すことができる、など。
言葉がわかる、というのはまあわかる。
かつての研究機関においてもそのような研究はなされていた。
魔物達を兵器、として利用するために。
もっともそのようなことをしようとした国々はなぜか魔物達の反撃にあい、
その研究はなかなかはかどってはいなかったようではあるが。
問題は、そのあとの台詞。
魔物を呼び出すことができる。
魔物使い、とよばれしものでも、呼び出すこと、というのはまずできない。
近くにいるものを呼寄せたりすることはできはしたが。
しかし、今の言い回しではそうではなく、文字通りの呼び出し、ととれる。
クラトスもいっていた。
何もない空間から魔物を呼びだした、と。
それはまるでセンチュリオン達が僕しもべ達を呼び出すときのごとくのように。
「…ミトス?」
黙ってしまったミトスを心配し、ジーニアスがあるきながらも声をかける。
「村がああなってしまったから……私もミトスももう、帰る場所がないんです。仕方ないかと……」
そんなミトスをみつつ、プレセアがいう。
たしかに家はある。
しかし村に一人もいなかった、というのは、それは故郷、といえるのか。
もっとも、プレセアの場合、村人から嫌煙されていたので何ともいえないのだが。
それでもやはり生まれ育った村は村。
愛着はある。
取り残されてしまった時間の面影を唯一残していたとおもわれし村の姿はもうどこにもない。
「…元気だしてよ。ミトスも、プレセアも…っていっても…無理…だよね」
思い出すはイセリアのあの光景。
自分達のせいで村が焼き払われ、村人たちがディザイアンに殺されていたあのときの。
それをうけて自分ではどうにもできない、と判断しあわててロイドを呼びに行った。
あのとき、どうしてロイドを呼びに行ったのか自分の行動が今でもジーニアスはよくわからない。
ただ、呼びに行かないと、ということしかおもわなかった。
姉もいなくなり、村をまもるのは自分達しかいないのだ、とおもっていた、といっても過言でない。
「……でも、僕も帰る場所がないんだ。ロイドと一緒に村を追い出されたから……」
あるいみで自分のせいだというのに、ロイドのみを追放、という村長の言葉が認められなかった。
つい反動的にいってしまったのもまた事実。
自分があの日、ロイドを牧場に誘わなければ、と今でもおもう。
そうすれば、マーテルさんもあのような目にはあわなかっただろう、とも。
「そうなんですか?」
プレセアが少し首をかしげ、といかけてくる。
そんなプレセアに対し、
「うん。だから僕もプレセアやミトスの気持ちが少しだけかもしれないけど…わかるよ」
戻れない村、面影を失った故郷。
その違いはあるかもしれないが。
「…でもね。この世界をどうにかすれば、新しい大地が僕らをまっていてくれている。そんな気がするんだ」
その新しい大地、というのがどんなものかはわからない。
想い描くは自然豊かな大地。
「…そうですね。世界は広いですから。ジーニアスは小さいのにえらいです」
このあいだ誕生日を迎えたらしいので、今は十三歳か。
「何いってるんだよ?プレセアのほうが小さいじゃない?」
「……そうでした」
自分の時は動きだしたのかもしれないが、しかしあれから定期的に慎重などは簡単にはかってみている。
が、変化はみられない。
感情を取り戻せはしたが、…それも定かでない、とプレセアは常々おもってはいる、が。
伸びない身長。
エクスフィアの反動でどこまで自分の時間は狂ってしまっているのだろう、とそうおもう。
普通にすごしていれば、今ごろは結婚でもして子供の一人でもいたかもしれない。
それこそジーニアスのような。
そうおもってしまうプレセアはおそらく間違ってはいないであろう。
ゆえにおもわずジーニアスの言葉にだまりこむ。
…誰しも、自分の子供がいたらこれくらいかな?
とおもうような子どもに小さい、といわれおちこまないわけはない。
ジーニアスはいまだにプレセアの時が止まっていた、というのを完全に失念している。
自分と同じくらいの歳だ、というので初めての恋心を正当化させている、といっても過言でない。
それも無意識に。
それが相手を傷つけている、とは思いもせず。
「……僕、少しだけ、えっと、プレセアさん…でしたっけ?
プレセアさんの気持ちがわかります。…どうしたってもどってこないものはある…
謝られてもどうしようもないもの、たとえ謝られて許してあげたくてもどうしようもできないこと……
そういったものは自分でもどうにもならないんです……」
あのとき、人全てに絶望した。
自分のこと…自分達の利益しか考えない、人に。
停戦を結ばせたときに、いっていたあの言葉は何だったのか、そうさけびたかった。
信じられたのは唯一、一緒に旅をしていた師匠たる…人の中ではクラトスのみ。
共にいたユアンは姉の夫、というのでどうしても素直になりきれていなかった当時の自分。
今でもそうだが。
そういうミトスの顔からは今までふるまっていた子供らしさがきえ、
その伏せたまつ毛には濃い色を落としているのがみてとれる。
「そう…だね。皆いろいろと背負ってる…んだよね」
ミトスもハーフエルフ、ということでいろいろとあったのだろう。
そうおもう。
自分がそうであったように。
それゆえにミトスの言葉をきき、ジーニアスが黙りこむ。
それとともに、ジーニアス、プレセア、ミトスの間で静寂が訪れる。
その沈黙がジーニアスからしてみればつらい。
ミトスは常に背後…後ろからきているエミルがきになるのか、ちらちらとみているのがみてとれる。
少し離れた位置から魔物とともにゆっくりとついてきているエミルの姿。
なぜか魔物を四体、従えて…というより、常に魔物が傍に寄り添っているのがみてとれるが。
エミルがここまでの魔物をつれていたのをみたのは、トリエット遺跡からこのかたなかったな、
とそういえば、とジーニアスはおもう。
あのとき、エミルは三体の魔物をつれていた。
それ以後は大概、一体、もしくは二体までだった、というのに。
今はなぜか四体もの魔物が傍にいる。
しかし、ジーニアスは気づかない。
エミルの影の中にあと四柱、そこにいる、ということに。
――Go To Next
Home TOP BACK NEXT
$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$
あとがきもどき:
薫:次回にて、ミトスの大暴露大会~。正確には勇者ミトスの、ですね。
アルタステって、原作(ゲーム)では知らないようにいってましたけど。
やはり、ドワーフ、というのは大地の守護をうけせし一族、とおもうんですよね。
なので伝承的に真実を伝えていてもおかしくはないかな…とおもって。
特にアルタステは、とある理由によって一族につたわりし伝承をしっている。ということに。
ゆえにドワーフ達は(一部のものは)大概真実をしっている、ということにしました。
ちなみに、ダイクも知ってはいますが、ディザイアンを創っている。
ということまではしらない、という感じです。
マーテルが殺されて種子と融合し、種子を蘇らせようと何かしてる。
そこまでしかダイクはしらない設定さんです。あしからず。
最も、ダイクも女神マーテル、というのは疑問をもってはいますけどv
何でラタトスク様の位置が女神マーテルなんてものに?世界樹の杖を授かってたからか?
くらいの認識です…あしからず……
ドワーフ一族の中では、マーテルがラタトスクより世界樹の杖をさずかったのは周知の事実v
という裏設定さんになってますv
2013年7月12日(金)某日
Home TOP BACK NEXT