まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

うわ…平行していろんなパターンのかいてたら。
設定がときどきごっちゃになってる箇所が…
ストーリーをおもいついてはメモにかきなぐっているんですけど。
…この本軸にしたやつは、ミトスと人型ラタトスクあってたっけ?確認しないとな…汗
一緒にかつて旅はしていない、というのはこれは根本なんですけどね…

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「そういえば、ふとおもったけどゼロスの家ってかなりの金もちだよなぁ」
リフィルをまつ間、とりあえずの雑談会。
今さらながらにそんなことをいうロイドに対し、
「そういえば。僕、あんな大きな屋敷とかみたことないよ。
  パルマコスタの総督府より大きかったよね」
ジーニアスも以前、世話になったゼロスの屋敷をおもいだし、そんなことをいってくる。
「まあ、ここ、テセアラじゃあ、神子の家系は国王に次ぐ権力があるからねぇ」
しみじみいっているしいな。
「シルヴァランドは皆、暮らしぶりがわからなかったけど、こっちは差がものすごいよな。
  身分差別ってのもあるのもびっくりだし」
シルヴァランドでもそのようなものはあるが、ここ、テセアラほど目立たない。
「そうか?だけど、そっちもな。繁栄しはじめたらかわるぜ。
  必ず貧富の差ができる。コレットちゃんの家はたぶんすごい金持ちになるぞ」
それが神子の家系、というもの。
そんなゼロスの言葉にふと何か思うところがあるのか、
「でもさ。借りにコレットが世界再生をしていたら、コレットはもういないわけなんだし……
   コレットは一人っ子だから後継ぎがいない状態になるのに、それで金持ちになるのか?」
コレットの家には子供はコレット一人のみ。
それゆえの素朴なロイドの疑問。
世界再生はすなわち、神子の死を意味している。
それをしったからこその問いかけ。
「コレットちゃんのイトコが本家の神子になるんだよ。
  神子の家系は血をたやさないために親類が多いんだ」
「?あいつの親類なんて村にいなかったぞ?」
ゼロスの言葉に首をかしげ、さらにといかけるロイドにたいし、
「そりゃそうだって。同じところにすんでいたら天変地異がおきたとき、みんな死んじまうだろ?
  俺さまの親類もメルトキオにはいないぜ?
  …もっとも、いきなり神託によりある日突然、マナの血族、と認定されるものもいるけどな」
そういうゼロスの表情はすこし暗い。
「あとは、神子という立場上、平和ボケした権力者達がその立場を利用せんとして、
  常にその身を狙われたり、というのもあるけどね。
  そこのリーガルだってもともとはゼロスのやつの暗殺を教皇のやつから依頼されてたわけだろ?」
「否定はしないが。教皇は私との約束をやぶっている。ゆえに無効といえるだろう」
しいなのさらり、とした台詞に、これまたさらっとこたえているリーガル。
事実、リーガルが彼らに近づいたのはそれもあってのこと。
今はその目的とはまったくもって異なっているにしろ。
「…神子ってなんかいろいろと大変なんだな。常にその身を狙われるって…
  コレットもつねに神子という立場ゆえに狙われていたし……」
「コレットのほうはどうかはしらないけどね。こいつはこうみえて苦労してるからねぇ。
  …産まれたその瞬間から結婚相手をきめられて、毒味のすんだ冷めたご飯のみしか食べられない
  ……あたしがこいつのところに護衛としていっていたときですら、
  あんたの食事に幾度毒がもられてたっけ?」
「さあなぁ。昔のことは昔のこと。あとは奉公人としてはいってきたものが夜、
  寝台にていきなり襲ってきたりとかもあるしな」
「でもたしか今はそれはなくなってるはずだろ?セパスチャンが使用人の身元調査をひたすらして。
  さらに問題ない、とわかったものしか雇ってないはずだし」
「セバスチャンの腕は信用してるさ。けど、それとこれとはな」
「ゼロスって……」
「僕、てっきりゼロスって大きな屋敷で人をこきつかって贅沢三昧してるとおもってた……」
そんな彼らの会話をきき、多少ひきぎみのロイドとジーニアス。
彼らからしてみれば想像できない生活をどうやらゼロスはしているらしい。
普段のおちゃらけたような印象からはあるいみ真逆。
否、もしかしたらその性格もそんな中で生きてゆくための演技なのかもしれない。
ジーニアスの脳裏にそんなことをふとよぎる。
「…神子の地位を我がものにしようとするものは多いからな。
  ところで、マナリーフは手にはいったわけだが……」
このままではゼロスの生い立ちにまで話しがおよびかねない。
それゆえにさらり、とさりげなく軌道修正をしているリーガル。
誰しも触れてほしくないもの、というのがあるのをリーガルは理解している。
それが、母親、もしくは恋人のことにかんすることならばなおさらに。
「どこかで本格的に作業できたら一番いいんだけどな。アルタステさんのところはどうかな?」
「なら、リフィルがもどったら、アルタステのとろこにいくかい?」
しいなの台詞に、全員がうなづく。
「それにしても、またエミル、僕たちから離れてるよ…いまだにあまり信用されてないのかな?」
「…あ~。あの子の人嫌いはあいかわらずみたいだしね。
  でもまあ、一緒にいるってことは完全に嫌われてはいないんだからいいんじゃないのかい?」
そうでなければ、シルヴァランドからここまで一緒についてきてはいないであろう。
「…私としては、エミルの周囲にあつまってきている魔物や動物がきになるのだが……」
視界の先に、エミルのいる木の周辺にどこからともなくいつのまにやら
このあたりにいる魔物や動物達があつまってきており、
エミルを取り囲むようにしてちょこん、と座っているのがみてとれる。
それは常識からしてみればありえない光景…
ゆえに、おもわずつぶやくリーガルの台詞はおそらく間違ってはいないであろう……

光と闇の協奏曲 ~隠された歴史の真実~

「無事にもどってきたな。…うん?さきほどいなかった子供がふえてるが…
  アステルの弟か何かか?アステル達は奥の聖殿にいっておるぞ?」
どうみてもアステルに瓜二つ。
この地に人が来るなど滅多となかったというのに。
失われし歴史の真実を知るため、とばかりにしばらくこの場に滞在したことすらもある人の子。
ほうっておいたら二人してご飯も食べずに調べ物ばかりをしていたので、
ついつい世話をしていたのは彼女にとっては少し前のこと。
あるいみ懐かしかったかのかもしれない。
リフィルがここにやってきていたときは、それがあたりまえで。
ほうっておいたら実験、とばかりにいろいろな薬草を組み合わせて洒落にならないものをつくりだしていた、
エルフと人の子。
その好奇心と研究心、そして探究心と真実を追求しつつもその記憶力。
それがわかり、族長に彼女を後継者にできないか、と問い合わせていた当時が昨日のことのようにおもいだされる。
そんな彼女にたいし、にこやかに、
「いえ。僕はエミルといいます。アステルさんとは血縁関係はありませんよ?」
今のエミルはトレントの森、もしくはユミルの森、すなわちかの地において纏っていた気配は微塵も感じさせていない。
ゆえにいくらエルフとてその気配を感知することはできない。
「無事にって、やっぱりしってたんだな。マナリーフをまもる巨大植物のこと」
そんな語り部の台詞にロイドが文句をいうが、
そもそもエミルがこなかったらどうなったか、とおもうとあるいみ怖い。
あのあと、リフィルあらあの魔物の生体をおしえられた。
花の中にとらえられ、生きながら養分として溶かされる。
想像もしたくない。
救出がまにあったとしても、これまでに服が溶かされたり、手足がとかされたり、
と何かしらがかならず消失していた、というのだから。
それをきき、しいなが身を震わせ、ゼロスがおしい、とそんなことをいい。
おもいっきりしいなに叩かれていたのはつい先ほどのこと。
「うむ。もっともそれをおしえたところでお前たちの行動はかわらなかっただろう。非常に強い意思を感じた」
そんなロイドの憤りにも語り部はさらり、と悪びれもしない。
何より魔物がリフィルを覚えていたならば、確実に魔物のほうが避ける。
かつて、リフィルがつくった植物栄養剤、というものにて、
この森にいる植物が異常繁殖してしまったことを魔物達もしっている。
「あたりまえだ。大事な仲間のためだからな」
「…ロイド」
そんなロイドの言葉にコレットが目をうるうるさせてロイドをみているが。
そんなコレットの視線にロイドはまったく気づいてすらいない。
「…あなたはところで、ずっとここにすんでいるのか?」
どうもこのロイドというものは女心に鈍感すぎる。
そのわりに、心を動かすようなことをさらり、と素でいっているふしがある。
おそらくそれはこれまで一緒にいてコレットも同じようなものなのだろう、と予測はつくが。
そんな二人をみつつため息をひとつつき、語り部、となのったこの家の主にとといかけるリーガル。
「私が物ごころついたころから彼女はずっとここにいたけども……」
リフィルの記憶にあるは、三歳のとき、この場にマナリーフを両親がもとめやってきたとき。
あのときから目の前の女性の姿はあまりかわっていないとおもう。
否、まったくかわっていない。
「そうだ。私はエルフの里の伝承を次代に受け継がせるもの。
  その役目をリフィル。お前さんに本当ならばになってほしかったのだが……
  長老が反対しておったからな。おまえさんはハーフエルフだから、と。
  下手に知識をえてしまって、もしもかつてのミトスのようになってしまっては……
  また、なりかねないから、とな」
「それは……」
大人たちはミトスの話題をだすことを極端にとさけていた。
リフィルが書物にてミトスのことをしったときですら、それは口にだしてはだめだ、
と母が珍しく強い口調でいってきた。
「…不器用さがなおれば、適任者だったんだがな…おまえさんは……」
この地において語り部となるのに必要な力の一つに、機織りの技術がある。
幼きころより不器用であったリフィル。
しかも試しにやらせてみれば、不器用にともない、実験心が強いらしく、
いらないものまで機織りの素材に組み入れては失敗しまくっていた、当時の記憶。

「わしの後継者にならんか?」
「後継者?」
「いろいろな知識を人にあたえてゆくものだ」
「ひとにいろいろとおしえるの?」
「そうだな。強いていえば人に教えをとく、人でいうところの教師のようなものだな」
「教師?それってどんなことをするの?ねえねえ。おしえて?」

かつての記憶がよみがえる。
あのときから、リフィルはその将来の夢を教師、というものに決めたといってもよい。
どうやら当代の語り部もかつてのことを思い出したらしい。
目をとじ記憶を思い出しながら、
「私のような役目をうけつぐ語り部は。ここでマナリーフの織物をつくり、そこに様々な物語を編みこんでいるのだ」
「どんな物語なんですか?」
織物に物語をくみこむ。
コレットが着ている服もまたファイドラが作成したもの。
コレットの服には神子の家系をしめす家紋が織り込まれてはいるが、物語云々、というのはきいたことがない。
首をかしげるコレットにとかわり、プレセアもまた首をかしげつつもといかける。
「空から飛来したエルフの伝承や、人の誕生。パラグラフ王朝の繁栄と衰退。 
  天使の出現。大樹カーラーンとカーラーン大戦。そして…勇者ミトスの物語」
「おいおいおい。勇者ミトスの話しってのはヘイムダールじゃ厳禁なんだろ?」
語り部の台詞に、おもわずゼロスが突っ込みをいれるが。
「ここはヘイムダールではない。私はヘイムダールの掟に縛られないようにここに住み、伝承を残している」
そしてこの地に生息している霊草をまもりつつ。
偽りの歴史に惑わされることなく真実を後世へと伝えるために。
「…勇者ミトスって何ものなんだ?」
アステルがいっていたことも、そして精霊達がいう、ミトスとの契約。
裏切った、というその台詞。
「俺達の旅にはいつもミトスの名がついてまわってる。精霊達にしても、だ。あんたはそれをしっているのか?」
「たしかに。精霊との契約にも全部今のところミトスの名前がでてきてるよね?」
ウンディーネにしても然り、ノームにしてもしかり。
コレットはそのときいなかったがヴォルトのときもミトスの名はでてきていた。
「コレットの病気…クルシスの輝石に関係してるかもしれないあれにもミトスの伝承がかかわってたみたいだしね」
アステルがまとめていた資料は、勇者ミトスの伝承をもとにしたもの、らしい。
それゆえのしいなの台詞。
「ミトスは…ヘイムダールに産まれ、カーラーン大戦が始まると村を追放された哀れな異端者。
  村に帰るために三人の仲間とともにカーラーン大戦を終結させた」
「異端者?…ってことは…まさか、ハーフエルフ?」
ジーニアスが震える声でといかけるが。
「ハーフエルフだと?そんな馬鹿な!」
ゼロスがおもわず驚愕の声をあげる。
「いかにも。ミトスはハーフエルフじゃった。
  …かの大戦は、ハーフエルフの研究者が人に大樹のことをもらし、マナを利用した兵器の開発に拍車をかけた。
  本来、エルフは自然とともりありしもの。が、人は自らの欲のためには自然をないがしろにしてしまう。
  …その研究者も自分の研究の果てに何があるのかわかっていながら、マナの消費をえらび…
  結果として大量のマナの消費…そのあげく、大樹カーラーンを枯れさせる、という愚かな道をたどった。
  ゆえに、エルフ達は全てのハーフエルフ達を村からおいだした。
  下手をすればかの地においてのマナまでヒトが利用しかねない、と判断してな。
  エルフとしての知識と人としての欲望。その結果がまねいた世界を滅亡させかねない大戦。
  それがカーラーン大戦。…ミトスの仲間もハーフエルフじゃった。人間だったのはただ一人だけ。
  彼らは異端視扱いされながらも、それを乗り越え、戦いを終結させたのだ。
  一番の理由は、大樹の精霊と繋ぎをとれた、というのがおおきかったんじゃろうがの。
  大樹の精霊により世界の加護…デリスエンブレムとよばれし万物の加護を彼らは得た」

あのときのことはエミルも覚えている。
ルーメンに案内されてやってきた、人がすでに忘れてひさしいかの地において。
センチュリオン達や魔物達しかまずいなかった空間にやってきたヒトの子達。
なぜかしつこくその後、かの地にかよいつめ、
ミトスとよばれしヒトの子は友達になりたいから、とか常にいっていた。
それにマーテルがくわわり、何やら話しが脱線しまくったのは今でもはっきりと思いだせる。
ゆえにおもわず当時をおもいだし遠い目をするエミルはおそらく間違ってはいないであろう。
あのときのミトスと今のミトス。
あのときの彼の信念は今はもうない。
あるのかもしれないが、その信念は完全に歪んでしまっている。
デリスカーラーンが接近せしあのとき、大樹の実りに力を解放しようとしたあのとき。
愚かな人がおこした事件のせいで。

「?そんな彼らの名前がなぜヘイムダールでは禁忌なのだ?」
世界の加護をうけたようなものの名が禁忌になる、というのがリーガルからすれば信じられない。
「ハーフエルフだからだ!」
ジーニアスが即座にいうが。
「…それは違う。オリジンに…世界に愛されし勇者ミトス。だがそれは堕ちた勇者の名だからだ」
「?おちた勇者?それはいったい?」
「まえにタイガもいっていたわね…」
にたようなことを、みずほの里で副頭領たるタイガがたしかにいっていた。
リフィルはミトスのことまで当時、詳しく教えてはもらっていなかった。
ゆえに真実をしらなかった、ただそれだれのこと。
「大樹の精霊を裏切り…オリジンをも裏切り、オリジンから与えられた魔剣の力を利用して、
  世界を二つに切り裂いたのはほかならぬ勇者ミトスとその仲間達。
  精霊との約束は、マナがみちて大いなる実りに力が満ちるまで、という約束。
  それは百年もすれば果たされるものであった。が、ミトスは裏切った。
  大いなる実りにもたらされるはずのマナは実りの発芽にはもたらされず…
  ミトス・ユグドラシルとその姉、マーテル・ユグドラシル。
  そして彼らの仲間、ユアン・カーフェイと、クラトス・アウリオン。四人の天使達が世界を変質させた。
  こともあろうに姉を蘇らせるべく勝手にマーテル教、などという偽りの宗教を人々にあたえ、
  世界から大樹の真実を葬り去った。自分達が大樹の加護をうけていることをいいことに、な。
  大樹の加護をうけながらも大樹を…世界をうらぎりしものたち。
  ゆえにヘイムダールではその名前は禁忌とされている」
「…やっぱり、あのクルシスのユグドラシルが…勇者ミトス…なのか?」
勇者ミトスの英雄物語は誰もがしっている。
だが、そんな勇者がディザイアンなどというものをつかい、人々を苦しめている、というのが信じられない。
信じたくない、といったほうが正しいか。
救いの塔であった、ユグドラシル、となのった天使。
クラトスがひざまづいた相手。
そして、クルシスとディザイアンを統べしもの、となのった金髪の美青年。
「タイガさんもいってた。仲間がユアンにクラトスって…そして姉がマーテル。
  どういうことなのさ?クラトスにしてもだし、あのレネゲードのユアンにしてもそう。
  どうして皆が同じ名前なの!?」
四千年も前だ、というのに。
この一致はなんだろうか。
だからこそジーニアスは叫ばずにはいられない。
「…クラトスさんは…四千年前の勇者の仲間…なんですか?」
コレットがいうとリーガルが首を横にふり、
「まさか。エルフとてそこまで長命ではなかろう」

エルフの寿命はせいぜい平均千年。
もっとも、この語り部の役目をおったものは、他のエルフと異なり、ゆっくりとした時間をたどることとなる。
普通のエルフよりも二倍から三倍程度の寿命をもつ。
それは、ふさわしき後継者があらわれ、その知識を全て託したあと、
彼らは一生をおえる。
その知識を悪用されないために、全ての知識の継承がおわりしとき。
それが語り部の役目をおったものがその生涯をおえるとき。
それは世界そのもの…かつて彼らが伝承をつたえる、といったときにラタトスクと盟約した約束。
エルフにしろヒトにしろ時とともに偽りの歴史を都合のようにつくりだして、道をふみはずす。
それを身にしみてかの惑星デリス・カーラーンより移動してきた存在達はしっていた。
故郷たる惑星は世界の恩恵すらわすれ、世界を…自分達命全てを消滅させかねない道をたどってしまった。
事実、大地の存続程度の最低限のマナのみをうみだし、ヒトは制限をあたえられていた。
その事実はかの地にすまいしものたちはしらなかったが。
何しろかの地のものたちは、精霊達すらとらえ、自らの力にしよう、としており、
また生物をとらえ、その体にやどりしマナをもすい尽くそうとした。
あまりに人が行き過ぎた行動をしはじめたので、純粋たる世界樹の根にまで手をかけようとしたときに、
ラタトスクが書き換えた理。
それは、私利私欲のためにマナを利用としたものは、そのマナにむしばまれ、その体を消失する、というもの。
結果として一気にかの地のヒトは半減した。
それは遥かなる過去の記憶。
まだこの地にたどり着くまえの、自らが無から産みだした世界の記憶。
彼らの会話をききつつも、昔のことを思い出し、おもわず目をつむる。
((ラタトスク様……))
そんな主の想いがわかったらしく、傍に控えているセンチュリオン達が心配そうに念派にて声をかけてくるが。
エミルはそのままそこにある壁にもたれかかり、ずっと目をとじたまま。
そんな主によりそうように、テネブラエとルーメンも、チョコん、とその場に姿勢をただす。
はたからみれば、エミルの足元によりそうように魔物達がいるようにみえるのだが。
魔物が心配してよりそっているようにみえなくもない。

魔物とともにいるエミルに一瞬おどろくものの、だがしかしその驚きを表情に表すことなく、
「天使とはカーラーン大戦で界初された戦闘能力の一つだ。
  その前は無理やりに人のマナを変質させて、生体兵器とする
  …エクスフィギュアとよばれしものを人はつかっていた。
  マナをむりやりにかえられたものは、暴走するしかない。
  …あまりに人が愚かなことをするがゆえに、ユニコーンの力にて元にもどす方法が人にもたれされはしたが…」
「まさか、それがレイズ・デッド?」
かつて、エミルが元にもどした。
あのとき、たしかエミルはあの異形とした姿をみてつぶやいていた。
エクスフィギュア、と。
あのときの呟きはコレットはおぼえている。
そしてまた、リフィルも。
ロイドやジーニアスはすっかり失念しているが。
そもそもあのとき、エミルのぽそり、としたつぶやきにまで気をまわす余裕がなかったといってもよい。
マーブルとおなじようにかえられてしまった人。
その姿に心を奪われ。
ミエルがあのときドアにと説明した言葉。
マナを正すのに、レイズ・デッドをつかえばよい、と。
事実、エミルはその術をつかい、ドア夫人を元の姿へともどしている。
ユニコーンの角に触れた時にリフィルの中にみちた新しい力。
リフィルもあのときからレイズ・デッドをつかえはする。
もっとも試すようなことがなかったゆえに実際にどこまでの威力をもっているのか把握しきれてはいないが。
「天使とはそれの進化系。これは体内のマナをつかい、一時的に体を無機化させることで、
  体内時計を…生物にある生体機能たるすべてを停止させる。
  おかげで天使は歳をとらない。エルフよりも長命となった訳だ。もっとも副作用はある。
  長く無機化させていると、体そのものが無機質たる物質になりえる。
  副作用が出るとやがて、その体は全て結晶化してしまう」
そこまでいい。
「おまえさんには当時、そのあたりのことまでは教えておらんかったからの」
古代の争いに関するどろどろとしたものは、まだ早い、と判断し。
そこまでリフィルには彼女は教えていなかった。
それゆえにリフィルはしらなかった。
天使の所以も、そしてエクスフィア、とよばれしものの所以も。
「種の寿命をこえて長くいきる…ということは……あまりよくない…と、私はおもいます…」
十二のときより止められた時間。
本来ならば二十八になっているはずの自分。
もどらない時間。
エクスフィアを装着され、すぐに自我がなくなったわけではなかった。
ゆっくりと確実に体に浸食したそれは、プレセアの心を完全にと封じ込めてしまった。
それがそのエクスフィアの意思でなかったにしろ。
プレセアにはそこまでのことはわからない。
彼女は石の声をきくことができない。
ゆえにわからない。
自然の声をきくこと、自然が常にヒトにかたりかけている、
その事実をわすれてしまっているヒトはそのことに気づけない。
「もう、何が何だか…俺にはわけがわからない」
あのクラトスがもしかしたら伝説の四英雄の一人?
そういきなりいわれても、ロイドからすればとまどわずにはいられない。
そもそも仲間とおもっていたのに、あのとき裏切られた悲しみ。
野宿のときや宿にとまったときなど剣の稽古をつけてくれていたあのクラトス。
そのクラトスがクルシスの四大天使だ、となのったときのその衝撃。
何を信じていいのかロイドはわからなくなってくる。
「そうか?はっきりしたことがあるじゃねえか。
  ウンディーネのいってたとおりってことじゃねえのか?
  世界を二つにわけたのはオリジンの力が影響しているっていうことが。魔剣…それがキーワードだ。
  しいながオリジンと契約できれば世界を元にもどすことも可能ってことじゃねえのか?」
そんなロイドにさらり、と分析した内容をいっているゼロス。
みずほのタイガもいっていた。
勇者ミトスが世界をわけた、と。
「オリジン…ねぇ。どこにいるのかわかんないんだよね。
  一説によればエルフ達が彼らのいる場所をしっている、ということだったらしいけど。
  エルフ達はオリジンのことになると口をとざすんだよね」
ゆえにいまだにみずほの里のものたちもオリジンがどうなっているのかつかみきれてはいない。
「オリジン…オリジンの石板。とよばれしものがトレントの森の奥にある、とはきいたことがあるわ。
  だけど、たしか…昔、誰かがいっていたのをきいたことがあるわ。
  今は愚かなヒトのせいでオリジン様が姿を現すことができなくなっている…と。
  どういうことなのかしら?」
「姿をみせられない?なんか精霊の封印おもいだしたけど、まさかな~」
シルヴァランドにて精霊の封印をとくためにガーディアン、とよばれしものたちと戦った。
ふとシルヴァランドの精霊達のことをおもいだし、おもわずぽそり、とつぶやくロイド。
「…可能性はあるかもしれないね。だけどたしかオリジンって精霊の王っていわれてるやつだよ。
  そんな究極ともいえる精霊が簡単に封印されるかねぇ?
  ちなみに、四大元素を束ねているといわれている精霊マクスウェルよりも格上の精霊。
  そういわれているのが精霊オリジンだよ」
精霊研究所においてアステルから精霊のことをいろいろときかされ、
あるていど、しいなも精霊のことは詳しくなっている。
…好きで詳しくなったわけではないが。
「オリジン…マクスウェル。そのあたりが鍵かもしれないわね。
  ともかく、私たちは本質を見失わないようにしなくては。
  私たちの最終目標は二つの世界を救うことだったはずよ」
「大樹カーラーンをどうにか復活させ、世界を一つに。さすればマナを搾取するという関係は改善できよう」
あのレネゲードのユアンがいっていたとおりならば。
大いなる実り…大樹カーラーンの種子を発芽させる方法がかならずあるはず。
それゆえのリーガルの台詞。
「そうだな…皆のいうとおりだ」
「「下手な考え、やすむに似たり」」
「…ひでぇ。ジーニアス……」
ロイドが諺をもちいようとすると、もののみごとにジーニアスとの声が一致する。
今のまま、万が一マナを注ぎ込まれたとしても確実にあの種子は歪んだまま発芽し、
大樹として発芽するのではなく、暴走してしまう。
それこそ文字通り、地表全てを呑みこんでしまうであろう。
もっとも、すでにかの種子には自らの分身体の蝶を入り込ませているのでそんなことにはならないが。
もしも、自分が手を加えていなければ、まちがいなく暴走し、
そのまま地表は大樹の力により完全に壊され、全て海へと還ることになったであろう。
まあ、それはそれで地表の浄化が手をくだすまでもなくなされた、ということでラタトスクとしても、
かつて考えていたことが実行されただけ、という程度でしかないのでまったくもって問題ないのだが。
「ありがとうございました。いろいろとおしえてくださって」
ぺこり、と頭をさげてお礼をいうこれっと。
頭をさげるとともに、髪につけている髪留めがきらり、と光に反射し紅く煌めく。
「あなたたちに大樹カーラーンの加護がありますように。ところで、きにっていたのだが?娘よ?」
「ほえ?は、はい?」
「その、髪飾りは……」
コレットの髪につけられている髪飾り。
「あ、これですか?前にエミルがくれたんですけど…何か?」
救いの塔にむかうまえ、エミルがくれた髪飾り。
それはいまだにコレットの頭にしっかりとつけられている。
「それは……」
みおぼえのある模様の細工。
紅き蝶。
伝承者が代々、護ってきている壁画。
それと石板にかかれし紋様。
大樹カーラーンの精霊を指し示すもの。
かの紋様とまったく同じ形と細工がほどこされし蝶の髪飾り。
そして魔物をつれた人の子供。
偶然、の一致、とはおもえない。
そして、エミル、というのが魔物をつれている子の名前、となればなおさらに。
エミル、という名。
それは、太古の昔。
まだこの地に向かう前。
世界樹が産んでいた、というディセンダーとしての名と同じ。
語り部のみに受け継がれる、惑星デリス・カーラーンにおいての最低限の知識。
これは偶然なのだろうか、それとも…
しかしここで聞ける内容ではない。
すくなくとも、かの存在のことは滅多と他言するわけにはいかない。
「ふむ。リフィルよ」
「は、はい?」
「お前にまだ伝えたいことがある。聞くきはあるか?」
「私に…ですか?」
「うむ。おまえさんが器用になっていれば私の跡をついでほしいのだがな……」
「あ、それ無理です」
「無理だな」
即座に反応するジーニアスとロイド。
ジーニアスは物ごころついたころから、ロイドはイセリアにて。
リフィルの不器用さはよくわかっている。
それゆえの即答。
ごん、ゴンっ!
「ってぇ!」
「うう。姉さん、不器用じゃないかぁぁ…掃除とかまかせてもいつも物壊すし。
  だからいつも僕が物ごころいたころから自然とそれらをするようになったんだよ!?」
そんな二人にたいし、無言でリフィルの拳が振り下ろされる。
『・・・・・・・・・・・・』
さらっというジーニアスの言葉に、なぜか一瞬全員がだまりこみ、
ぽん。
「あんた、苦労したんだね……」
「いくど姉さんの実験料理をたべて死にかけたことか……おかげで薬草とかそういったものに詳しくなったけどさ」
「薬草かぁ。このそういえばマナリーフの葉っぱもたべられるのかな?ハーブみたいだよね?」
「かじってみようぜ」
『まてまてまて』
何をしようとしているのだろうか、この二人は。
そんな会話をしつつ、手にいれたばかりの葉っぱをかじろうとしているコレットとロイド。
おもわず大人たちがおもわずとめる。
「いっておくが、それは口に含むとヒトには毒だぞ?」
「げ(え)」
そんな二人にたいし、ため息とともに語り部たる女性がいってくる。
葉っぱに含まれている成分を体に取り込むと、確実に死んでしまう。
正確にいえば、体を構成しているマナが一瞬のうちにと霧散する。
「良薬、口に苦し、だな」
「いや。リーガル。この場合その例えは俺様はどうかとおもうぞ……」
ぽつり、とつぶやくリーガルにゼロスが思わず突っ込みをいれる。
そんな会話をしていると。
「あれ?リフィルさん達だぁ」
「マナリーフをとりにいった、ときいていたが」
ふと入口のほうからはいってくる二つの人影。
「あら。アステル。それにリヒター。あなたたちもきていたのね」
「ええ。ここ、語り部さんのところには時折きてるんですよ。
  いまだに完全に彼女は知識を教えてくれないので」
「慎重に教えるものは選ばなければならないからな。
  お前さんはともかくとして、そっちのハーフエルフの男はどうもミトスと同じような匂いがするからな」
「?」
「?」
そんな彼女の言葉に、顔をみあわせ首をかしげているアステルとリヒター。
大切なものを失ったとき、確実に狂う。
それこそ自分が正しい、とおもっていても世界を巻き込むような行動をとりかねない。
間違っているとおもってもつきすすむ。
そんな感じがする。
それは直感。
しかもどうも言動を聞く限り、力が全て、というような傾向がある。
そんなものが詳しいことをしってしまえば、魔族につけこまれてしまう。
知識ある闇に落ちやすいヒトは魔族にとっては好都合、なのだから。


聖殿。
そう呼ばれているそこは、洞窟の中にとあり、洞窟の中だ、というのに広い空間に、
大理石のようなものが切りそろえられ積み上げられ一つの建物が創られているのがみてとれる。
ぱっとみためは普通の洞窟。
だが、入り組んだ道を奥にすすんでゆくと、一番おくにとある広き空間。
人為的におそらく切り抜かれたのであろうその空間は、常に一定の明るさがたもたれている。
よくよくみれば、壁がほのかに光っているのがみてとれる。
曰く、光りこけ、とよばれるものより光源が常に確保されているらしい。
大理石のような真っ白い石が積み上げられつくられし建物の中にはいると、
その一番奥に一枚の巨大な石板が目にはいる。
正確にいうならば、壁にきざまれしその模様を取り囲むようにして周囲に細工がほどこされ、
ここにつづくように建物がたてられている、のだが。
色彩鮮やかなる大樹。
そしてその大樹の中心になぜか色彩も鮮やかなる紅き蝶。
そして大樹の周囲をとりかこんでいる八つの紋様。
それぞれ赤、緑、青、白、茶、紫、紺、の色で色彩ゆたかに刻まれし紋様。
その下には様々な生物らしきものが描かれており、それはまるで一つの樹であるかのように描かれている。
別名、かつてこれのことをラタトスク・ツリー、そう呼ばれしときもあったが。
その名を今はしるものは、語り部のみ。
リフィルのみがつれられてきたこの場。
ぱっと目にはいってきたその壁画をみた瞬間、リフィルの中に何ともいえない感情がわきあがる。
自然と涙がでてくるのがおさえきれない。
みただけで、何か暖かな気持ちになるような、そんな不可思議な感覚。
「これが、大樹の精霊ラタトスク様を示しているといわれている紋様じゃ。
  …あの、シルヴァランドの神子がつけていた髪飾り。あれとまったく同じなのがきになっての
  だからお前をここにつれてきたのじゃ」
この壁画はそうそう人にみせていいものではない。
そして、もう一つ。
「世界樹の伝承にありしものにもうひとつ。世界樹よりうまれしディセンダー。
  魔物を従えし世界を見極めるものなり。世界を安定させるものなり。
  …これは、かつての惑星デリス・カーラーンにあった言い伝え、らしいがの」
この惑星にきてからそのような存在があらわれた、という伝承はのこされていない。
「魔物を…?」
魔物を従える、というので思い出すはエミルのこと。
先ほどもまのあたりにした、魔物を従えしその姿。
エミル曰く、ただお願いしているだけ、とそういうが。
魔物がほいほいと簡単に人のいうことをきく、などと滅多ときいたことはない。
人になつく魔物ならばともかくとして。
「あの子…エミル、といったか。もしかしたらその伝承にかかわりがあるかもしれん。
  おまえさんだからいうんじゃ。これは他のものにいうではないぞ?」
「…はい。たしかに。あのエミルは…普通ではない、私も常々おもっていたんです。
  実は、あの子は……」
シルヴァランドで知るはずのない、エクスフィギュアという単語をしっていたということ。
世界樹の小枝、とエミル曰くいうものにより異形とかしていた女性が元にもどったこと。
そして…なによりも。
枯れ枝にしかみえなかったあの枝にアルタステの家にてとりだしたときには、たしかにいくつかの新芽がでていた。
それは決してありえないこと。
その新芽の葉はどんな高温にも壊されることなく、そのままコレットの首飾りの宝石の中へと収まっている。
葉をもったときに感じたマナの奔流。
脳裏によぎった巨大なる樹木。
説明されなくても本能的に理解した。
その巨大な樹が世界樹である、と。
古代大戦のときに失われた、といわれし、世界樹…大樹カーラーン。
常識という常識を全くほとんど知らないわりに、リフィル達ですら知らないことをしっていた子供。
あのときは記憶喪失なのだろう、そうおもっていたが、よくよく考えれば、
エミルは自分を記憶喪失だ、とはいっていない。
ただ、記憶があいまいになっている…寝すぎたあとに記憶が一瞬曖昧になる、そんな感じだ、
そうコレット達にと説明していた。
ぴたり、とやんだ異常気象。
世界再生を果たすまでは異常気象はなおらない、とまでいわれていた、というのに。
そして…ゼロスの屋敷、またトリエット砂漠の施設においてエミルの傍にいた魔物でも精霊でもない気配。
彼らは自分達のことを、こう呼んでいた。
すなわち、センチュリオンだ、と。
アステルという精霊研究者…しいな達いわく、このテセアラでも屈指の指おりに数えられる第一人者、らしい。
その彼がいうには、センチュリオンとは大樹の精霊ラタトスクの直接の配下だ、という。
精霊達も所詮はそんなセンチュリオン達の配下にすぎない、と。
アステルとしばしあのときあるいみ明け方まで語り合ったが答えがでることもなかった事柄。
だからこそ、何か突破口になれば、とおもいつつもリフィルは問いかける。
真実を惑わされずに真実を見極めるために、も。
クルシスの手によりつくられし偽りの真実に踊らされている以上、真実をきちんと知る必要がある、
そう信じているがゆえ。


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あとがきもどき:
薫:惑星、デリス・カーラーンにはディセンダーの伝承があった。という設定です。
  そもそもこの話しでは惑星デリスカーラーンはラタトスクが世界樹の種子、
  すなわち大いなる実りの状態から無からつくりだした世界という設定です。
  が、この惑星にはその伝承はありません。
  あるいみではラタトスクがこの地の惑星達をつくってはいるけども、
  大いなる実りから作成したわけではないこの恒星を含んだ惑星群達。
  ラタトスクがこの地に干渉をはじめたのは、
  あまりに地表がどうも瘴気ばかりになり、このままでは命があまり誕生しない。
  そうおもったから干渉を彗星より初めていた、という裏設定。
  …もっとも、その後、惑星からの移住計画となり、
  あるていど基礎ができていたならばこの地に、というのでここを選んだという裏設定。
  が、移住してきたエルフ達はそんな裏事情はしりませんv
  自分達が惑星をみつけた~とおもっていたりするというv
  いう必要もないのでラタトスク様、そのあたりの真実誰にもいってません(笑
  知っているのはセンチュリオン達のみ~♪

2013年7月10日(水)某日

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