まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
あれ?とおもったひとは多々といるかと。
ドラクエの旅の扉設定、スレさんの精神世界とかの概念。
それらを組み入れてますよ~。
よくよく考えたら、シンフォニアとかのいう魔族って。
スレの魔族にも通じるものがありますよね。
負が糧となるって…
ちなみに、エクスフィアの設定、負の感情をもとに覚醒する。
あれをしってふとよくよくおもえば、おもったこと。
…GGG、勇者王さんのゾンダーこと、機械原種達がうみだせしあれ。
…にてるとおもいません?(しらない人は勇者王ガオガイガー参照に)
最終的には機械生命体になるか、無機物生命体になるか、というだけの差で。
あるいみ機械も無機物だし……
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「そういえば、ユミルの森に結構簡単にはいれたけど、あれっていつもはどうなんだ?
ふときになっていだかゆえの問いかけ。
「いつもは、森の入口に国の兵士が門番としているぜ。
『ここから先はエルフの聖地。テセアラ王の書状をもたぬものは通り抜けることままならん』
とかいって毎回同じことしかいわない兵士がな」
そんなロイドにゼロスがモノマネがてらにそんなことをいってくる。
「あはは。にてるね。ゼロス、あんた」
たしかに、よくにている。
まるで決められたことしかいわないような見張りの兵士達。
それゆえのしいなの言葉。
「そういや、みずほの民はどうやってはいりこんだんだ?」
ゼロスがふときになったらしくといかける。
たしかみずほの民のものはあの地によく出向いている、ときいたことがある。
それゆえの問いかけ。
「そりゃ、水の中からさ。スイトンの術ってものをつかってね」
「おお。なんかうまそうだな」
「ロイド、食べ物じゃないよ。たぶん、まちがいなく」
ロイドがあからさまに、食べものの名前と間違えている、と判断し、
じと目でジーニアスがおもわず突っ込みをいれる。
「水中を移動してゆくみずほの民の術の一つだよ。簡単にいえば素潜りだね」
「素潜りかぁ。そういえば、ロイド、上手だよね。まえにサザエとかよくとってくれたし」
「…おもいだした。たしかイセリアに姉さんといったとき、
ロイドが無理やりにたしか僕をひっぱっていって海につきおとしたよね…
モリもたせて、これで今晩の食事の材料をとるぞ~!とかいってさ……」
七歳児にするようなことではないとおもう。
絶対に。
「…野生児だったのだな。しかし自給自足はいいことだ」
「リーガル。なんか違うようなきがするよ。あたしは」
リーガルが何かあるいみで間違ってはいないのだが間違っているようなことをいってくる。
そんなリーガルにおもわずつっこみをいれているしいな。
「海の幸かぁ。海の幸、といえばアルタミラだな。なあ、やっぱりアルタミラによろうぜ!」
「…話しがずれているのにどうして誰もつっこまないのかしら……」
そんな会話をききつつ、リフィルが盛大にため息をつく。
あるいみ、突っ込み不在、といえるゆえの障害…かもしれない……
光と闇の協奏曲 ~渓谷~
ラーセオン渓谷。
そこはユミルの森から東南方向にある、ちょっとした山間にかこまれた渓谷。
山肌に刻まれている道はとてもほそく、慎重深くあるかなければ、まず足をすべらせる。
それでもまだ山の麓のあたりはある程度の道らしきものが確保されているのがみてとれるが。
ふと、何やら風がいくども…まるで誰かが常に息を吹きかけているような、
ふ~、ふ~というような音がどこからともなくきこえてくる。
音の発生源がきになり、ふと視線を上にとむけると、
なぜか巨大な花のようなものがその花弁を膨らましては開いて、幾度も、幾度も空気を吐き出しているのがみてとれる。
「あの花は何だ?」
見たことがない。
というより、何やら必至に息を吐き出しているようにみえるのは、おそらくロイドの気のせいか。
「うわ。何!?あれ!?」
ジーニアスもそれに気づき、おもわず一歩後ろにとさがりながらもいってくる。
「うわぁ。大きくて綺麗な花だねぇ」
一方で、それをみてコレットのみが何かどこかずれたような感想をもらしているが。
「…たしかに大きいけど、綺麗じゃない(よ)(だろ)」
そんなコレットの台詞にロイドとジーニアスの声が重なる。
「…あっちにもあります」
プレセアが他にも息のような音がするのできょろきょろと周囲をみれば、
花が息をふきかけている方向。
そこにはぐったりと萎れている花らしきものがみてとれる。
そしてその上にも色違いの同じような花の姿が。
「ほんとだ。空気をだしてるみたいだな。あそこのとは色もちがう」
よくよく観察してみれば、どうやら色が異なるらしい。
それゆえにロイドがおもわずそんなことをつぶやくが。
「あのこ、もしかして向かい側の萎れている子を起こそうとしてるのかなぁ?」
まるで必至に、おきて、おきて、といわんばかりに空気をおくっているようにみえる花。
真向かいにある花はしおれ、くったりと地面に横たわっている。
たしかにいわれてみればそう、ともみえなくもない。
「さすが。コレットちゃん。優しいね~」
ゼロスがそんなコレットにたいし、そんなことをいっているが。
「…神子とは違いだな」
「うひゃひゃ。俺様の愛は平等にわけられてるからな」
『・・・・・・・・・』
「…前に何かの書物で読んだことがあるわ。餌を供給すると空気をだしつづける植物があるって」
そんなゼロスの言葉に一瞬、この場にいる全員がだまりこむが。
しかしその台詞につっこみをすることなく、リフィルがふと思い出すようにといってくる。
「あいかわらずスルー…。しかし、さすがリフィル様。俺様ほれなおしちゃいましたよ~」
自分の台詞にたいし、突っ込みも反応もなかったことにたいし、がっくりとうなだれるが、
すぐさまに気をとりなおし、何やらいっているゼロスであるが。
「あちらの花が空気をだしている。ということは。この谷のにそのエサたるものがあるということか?」
そんなリフィルの言葉に、リーガルが少しかんがえたのちにそんなことをいってくる。
「ええ。そう考えられるわね」
何やらゼロスを完全にスルーして話しをすすめているリフィル達。
「あれ?先生?なんか最近、皆よく俺様の台詞を無視してない?」
がっくりと肩をおとしてゼロスがつぶやくが。
「そうだとしたら。あの花。何かの役にたつかもしれないな」
リーガルがふとそんな感想をもらす。
「私が小さいころは、たしかあの風にのって移動していたわ」
小さい子供だからできた技。
「たしか。ここのソーサラーリングの力場みたいなので、空気を纏うことができたはずだよ」
しいながすこしかんがえて、みずほの里にある情報網の記憶をたよりにふとそんなことをいってくる。
彼らみずほの民はこれも修業、とばかりに切り立った崖などを自力で登って行動しているにしろ。
「そうなんですか?」
リフィルの説明に、首をかしげているプレセア。
「ええ。まだ小さかったから……ジーニアスが母のお腹に宿るまでは、よくここにきていたのよ」
「?でも先生。どうやってここまで?けっこうエルフの里とここって離れてますよね?」
それはコレットにとっての素朴なる疑問。
だからこそのといかけ。
「ああ。エルフの里の奥のとある社にはね。こことをつなぐ、別名『旅の扉』があるのよ。
そうね。封印の遺跡によくあった転移装置みたいなもの、とおもってくれていいわ。
あのようなものではなく、マナを使用した転移の扉、なんだけど。
ぱっとみためは、青い渦をまいている小さな水たまり…みたいなものね。
もっとも、エルフの里にすみしものでなければ、その社やしろにはいることも、使用することもできないのだけど」
だからこそ、あのとき、族長にと確認した。
扉が使えるか、否か、と。
「うう。コレットちゃんだけでなくプレセアちゃんまで、スルー?俺様、がっくし」
何やら横のほうであからさまにがっくりとしているゼロスの姿がみてとれるが。
しかしそんなゼロスにたいし、この場にいる誰も突っ込みをしようとする気配はない。
「旅の扉、ね。かつてはいたるところにあったらしいけどね」
みずほの里の伝承にもある。
場所と場所をつなぎし、マナの恩恵。
別名、旅の扉。
離れた場所同士をつなぐ道。
もっとも、かつての古代大戦のとき、そんなものは脅威でしかない、とされてことごとく破壊されてしまったが。
ゆえに今現在、現存しているのは、エルフの里にありしものと、そことをつなぐ伝承者が管理している社のみ。
「…なあ、先生?渓谷って山のことだっけ?」
谷の斜面にとある細い道をのぼりながらもコレットに手をかしつつ後ろからきているリフィルにと問いかける。
どれだけの斜面を登ったのかもはや覚えてもいない。
山の麓にソーサラーリングの力の場らしきものがあり、
そこにてソーサラーリングにあらたな力を付属させることができたものの、
その力は自分達の周囲に簡単な風をまとう、というもの。
正確にいうならば、風でできた風船の中に自分達がすっぽりとつつまれるかのようなそんな力。
「違うっ…。子供のころは何ともおもわなかったわ…普通にいくときついのね…ここ……」
あるいみ、あの直通扉は反則のようなもの。
ゆえにここまで道がけわしい、など夢にもおもわなかったのもまた事実。
「渓谷。山にはさまれた、川のある所。たに。たにま。あるいみ山には違いないです」
ロイドの質問に淡々とそんなことをいっているプレセア。
伊達に職業きこりをやっているわけではない。
そしてまた、ロイドもまた野生児であり、
養父ダイクにつられよく山などに細工の材料となりえるものをとりにいかされているがゆえに
あまり疲れているようにはみえないが。
それ以外のもの。
ジーニアスやリフィルはあからさまに息があがっているのがみてとれる。
「たしか、マナリーフの番人、とよばれている語り部は山の一番頂上の奥地にいるはずよ」
見晴らしがよかった、というのは覚えている。
それゆえのリフィルの台詞。
「ロイドく~ん、その語り部っていうやつのところにはまだつかないの?俺様つかれちまったよ」
そういうゼロスだが、あまりつかれているようにはみえないのもまた事実。
神子、という立場上、また周囲が周囲であったがゆえ、ゼロスは体力そのものもかなりつけている。
それでも、みためあからさまにつかれた、
というような感じでがっくりと肩をおとしながらもつぶやいてくるその様は、
生きてゆく上でみにつけたあるいみ処世術の一つ、といえるであろう。
「あのなぁ。俺がしるはずないだろ?」
「…ゼロス君。だらしないです……」
あきれつつもロイドがいい、プレセアがさらり、とそんなことをいっているが。
「ここから上にのぼれるみたい。きっともうすぐだよ。みんながんばろ」
「たしかに。そろそろ頂上っぽいね」
コレットにつづき、しいなが周囲をみわたしてそんなことをいってくる。
たしかにかなりのぼってきている。
あるいみ、渓谷にいる、というよりは渓谷がある山の奥…しかもかなり頂上付近。
そこに住んでいる、と人に説明するときは変更したほうがいいんじゃないのか?
ロイドはふとそんなことをおもうが。
そもそも、かのもののことを第三者に教えることなど滅多とないので、
エルフ達とてそこまで詳しく説明する気もない。
コレットが示した山肌にある道をすすんでゆくことしばし。
「あ、あれじゃない?」
ジーニアスが霧の中に隠れるようにしてみえる一件の家らしきものをみつけいってくる。
さずかに山をのぼってゆくにつれ、霧がふかくなっているのは川がある証拠ともいえる。
気温の関係で川面からはつねに霧がたちこめ、その霧は周囲をおおいつくすほどとなる。
あるときには一寸先ですらみえないほどに濃い霧がたちこめる。
「ええ。まちがいないわ」
みえる小屋は記憶にあるまま。
とうじのまま、まるで時をきりとったかのようにそこにある。
「……何か、聞こえます…単調な機械音……」
プレセアがその音にきづき分析する。
「こんにちわ」
扉をひらいたとたん、いくつもの歯車。
大きいものからかなり小さいものまで、大きさは様々。
そんな様々な大きさの歯車がロイド達の視界にと飛び込んでくる。
それらは四角い部屋の随所に安置されており、同じ速さで常に動き続けているのがみてとれる。
「うわ~。機織りをしてるんですね~」
コレットが目をきらきらさせてそんなことをいってくる。
コレットの祖父であるファイドラもよく家で機織りをしていた。
ゆえにコレットからしてみれば機織りはとてもなつかしくもある。
以前、コレットが幼いころにやらしてほしい、といい、やったところ。
おもいっきりこけて機織り機を壊してしまった…という経験があったりする。
ロイドとであったのはそのころ。
壊れた機織り機を修理するためにファイドラがダイクをよんだことに起因する。
おまえ、なんていう名なんだ?オレはロイド。よろしく!
いつも、村の中でもどこか触れることすら畏れ多い、という形で避けられていたコレット。
物ごころついたころに自分の役目をきかされて、それでもどうして皆と一緒にあそべないの?
そうおもっていたコレットにとって、そのロイドとの出会いは救われるものでもあった。
そのときから、その当時の想いは今と異なれど、コレットにとってロイドは特別な存在。
ふと、そんなコレットの言葉に気がついたのであろう。
機織りをしていた女性がロイド達のはいってきた扉のほうをふりむいてくる。
老婆のようにもみえるが、実際のところはわからない。
そのまま機織りの手をとめ、ロイド達のほうへとあるいてくる。
「…人間?それにハーフエルフか?」
どこかで感じたようなマナだ、とおもうがすぐにはどうやら思い出せないらしい。
リフィルやジーニアスをみてしばし首をかしげるそんな女性にたいし、
「お久ぶりです」
リフィルがふかぶかとお時儀をする。
「あんたは…いや、お前さんは…そうか、バージニアの。大きくなったな。お前たちが里をでて…もう…」
あのときはまだ幼い子供でしかなかったのに。
目の前にいる記憶にある幼子は成長し、すでに大人へとなっている。
「十二年です」
リフィルが里を家族とともに追いだされたのは、十二のとき。
まだ産まれたばかりのジーニアスとともに。
ジーニアスの年齢、十二、という年齢は文字通り、リフィル達が里をでた時間に等しい。
「そうか」
お母さんにあかちゃんができたの。
これからお母さんのおてつだいをするのにしばらくここにこれない。
あかちゃんがうまれておちついたらつれてくるね!
そういっていた。
が、それよりも先に里にて異常がおこり、セイジ家族は里を追われた。
それをしったのは、長老がマナリーフを求め、この場にやってきたとき。
「先生?知り合いなのか?」
「姉さん?」
「昔、ちょっとね」
ロイドとジーニアスにたいし、リフィルはちいさく苦笑する。
「この子はいくら両親がとめても好奇心旺盛で、よくここに歴史を学びにきていたからな」
おさなきエルフの子。
滅多と人がよりつかない中、それでも数日に一度はかよってきていた。
「あなたが番人さんですか?」
コレットがリフィルと何やら親しそうなそんな女性にとといかける。
フードでよくみえないが、髪は白く、かなり歳をえているのがみてとれる。
もっとも、のぞく耳はとがっており、見た目では年齢をはかることはできないが。
しかし、すくなくとも、エルフ達の年齢、すなわち彼らの老化速度は人とはことなる。
若い時間がながく、ある時をさかいに一気にある程度歳をとり、またしばらく老化がとまり、
やがてそのまま死にいたる。
それがエルフ達の成長過程。
「私は、エルフの里の伝承を次代に受け継がせるもの……」
「だから、別名、語り部、ともいわれているの」
そんな彼女につづき、リフィルが追加説明をしてくるが。
ジーニアスは姉さんにもこっちでつきあいがあったんだ。
そんなことをおもい、自分は姉のこと、こちらでのことを何もしらない。
今さらながらにそうおもう。
ジーニアスが物ごころついたころには、すでにシルヴァランドにおり、
いつも姉とともに旅をしていた。
ハーフエルフだとばれて迫害されたこともたびたび。
「ああ。あんたが語り部なんだ。なあ、マイナリーフを分けてほしいんだけど」
まあ、先生はここで産まれたっていうんだし。
知り合いがいてもおかしくないか。
そう一人納得し、あっけらかん、としていきなり本題をきりだしているロイド。
「…ロイド、あなたねぇ…どうすればきちんとした敬語をつかえるようになるのかしら……」
リフィルからしてみればそんなロイドの態度にため息をつかざるを得ない。
先生、とヒトがよんでいることから、おそらくは昔からの夢。
教師…誰かに何かを教える立場になりたい、といっていた夢はどうやらかねえているらしい。
「お願いします」
そんなロイドにつづき、コレットがぺこり、と頭をさげてお願いしているが。
「長老の証は…もっているな。必要なだけもっていけ、…といいたいのだが」
リフィルの手に握られているのは、エルフの里の長老に認められしもの。
マナリーフを手にいれるときに必要とされる杖。
聖なる木にてつくられし杖。
材料となるのは聖なるマルタ、といわれているものであり、
トレントの森の最深部に近しい場所でしかとれない、といわれている代物。
何の木からとれるマルタなのかエルフ達とてしらないが。
必要となったときに、森にとはいり、石板の前にて供え物をする。
それが認められた場合にのみ数日後に石板の前に聖なるマルタというものがおかれている。
一説によれば魔物達が運んできている、ともいうが。
まあ、魔物達がマナの調停をしている、とエルフ達はしっているがゆえに、
この森にいる魔物達ならば何があっても不思議ではない。
そんな考えのもとに今現在にまで至っているという現状がある。
もっとも、ロイド達は当然そんなことを知るよしもないが。
「?何かまずいのか?」
ロイド達の懇願に、すこしばかり口をにごらす語り部と名乗った機織り人のその言葉に、
怪訝におもいつつもといかけているロイドであるが。
「すこし難しい場所にあるのだ。お前たちがいってとってこれるかどうかは」
その台詞に、
「俺様たち、一応ここまでのぼってきたんだぜ?
どんな場所にあっても何とかとってくるって。……ロイド君が」
最後の一言がなければいいことをいう、とおもうのに。
「…おまえな~」
ゆえにそんなゼロスにたいし、ロイドが思わず突っ込みをいれる。
「私からも頼みます。教えてください」
プレセアがいい、リーガルもまた懇願する。
この場にいるほとんどの者から懇願され、やがてため息ひとつ。
「むう…わかった。ついてきなさい」
そのままロイド達の横をすりぬけ家の外へ。
深い霧の中をすすむことしばし。
やがて水音がしてくるのが感じられる。
周囲にある霧からもひんやりとした空気が感じられることから、
おそらくこの近くに水が流れている場所があるであろう。
ドドド…というような音がしていることから、おそらくは滝、があるのかもしれない。
「滝があるんだ」
ジーニアスがその音にきづき、おもわずそうつぶやく。
まあ、この山の麓には川がながれている。
正確にいえば山間を川がいくつも流れている、といったほうがいいだろうが。
どうやらその源流の一つともいえるものがどうやらこの付近にあるらしい。
「この先の洞窟に霊草マナリーフがある。気をつけなさい」
どうやら奥にすすむ道なのだろう。
たしかに、獣道らしきものがみてとれる。
案内されたのは、奥にとすすむけもの道のような場所。
「私はまだ作業がのこっておる。ついてはいかれんが」
織物の納期がせまっている。
まあ、彼らならばおそらく問題はないであろう。
…たぶん。
「よし。いこうぜ。みんな」
またけもの道らしき場所をすすむのか、という思いもあるが。
必要なのだから仕方がない。
そんな会話をしつつ、すすんでゆくと、ごうごう、とした水の音がおおきくなる。
水しぶきが離れた場所にまでとびちってくる。
滝は遥か下にとある滝つぼにとおちこんでおり、その下には川が流れているのがみてとれる。
川の流れが急であることはみてとれるがゆえ、川におちればまちがいなく流されるかどうかはするであ
ろう。
「お。洞窟ってあれかな?」
「なるほど。滝を分断しないとはいれないようになっていたのね」
そんな滝の向こう側。
滝が流れ落ちている崖の向こう側。
その一角にぽっかりとひらけている洞窟のようなものがみてとれる。
「たしかに。難しい場所ではあるな」
「でも滝は分断されているんだし。俺達には関係ないな」
このあたりにも例の花ははえており、常に空気をはきだしている。
ソーサラーリングの力で風をまとい、そのまま風にのって滝の先へ。
秘密の生息地としてはたしかにうってつけ、といえる場所なのであろう。
中は以外と広く、ところどころ岩の形状もあるのだろうが、日の光りが差し込んできているのがみてとれる。
地面にはところどころ緑のコケがはえているのも目にはいる。
どうやら水分と日光、その両方があわせさり、よりよい空間になっているらしい。
「カンベルト洞窟ににてるね。ここ」
たしかにコレットのいうとおり。
感じる空気があの場所にとよくにている。
「あ。薬草ってあれか」
「また、わかりやすいねぇ」
そんな洞窟の奥の一角。
丸い黄色いふわふわとした感じの花をいくつもつけている草が生えているのがみてとれる。
霊草、とよばれているにしては形状自体はとてもかわいらしい。
しかも、きらきらと太陽の光が差し込むその一角に生えていることから、
連想するのは、かの洞窟においてはえていたローズマリーのハーブ群。
あの場所も光がさしこむ中、一か所にはえていた。
しいなはそのカンベルト洞窟には一緒にいっていないので何ともいえないが。
しかし、わかりやすいことこの上ない。
まるで、ここにありますよ、とばかりに洞窟から光がその一角にのみきらきらと降り注いでいるのだから。
「よかったな。コレット」
「うん。…ありがとう。ロイド」
ロイドとコレットが顔をみあわせ、そんな会話をした直後。
グラリ。
突如として大地が振動する。
「じ…地震!?」
振動はだんだん大きくなり、たっているのすらやっと。
「な…何だ!?」
「何か…います!」
リーガルが戸惑い、プレセアが叫ぶ。
プレセアが叫ぶのとほぼ同時、マナリーフが生えている前の地面があからさまに割れる。
ぼっこり、とした感覚で土がもりあがる。
どこかで似たような光景をみたような気がするが、ロイドはそれがどこかがわからない。
あるいみ、地の神殿にてノームがあらわれてきたときと似ているといえば似ている。
それゆえの親近感デジャヴ。
「巨大植物!」
「番人ってことかよ!」
大地をもりあげ、あらわれたのは、見たこともないような巨大な植物。
太い何本もの根が足のようにとうごき、赤紫の葉はまるで翼のごとく。
植物の上の部分についている赤い蕾…それがあるのでこの植物は花の魔物なのだ、と理解できるが。
その蕾はまるで血の色のごとくに毒々しくみえなくもない。
「これは…巨大植物、プランティクスだわ!」
ちなみに別名、人喰い花。
近づくものを何でも喰らう、という。
その巨大な蕾をひらき、その中に獲物をとらえ、溶かし養分としている、といわれている魔物。
エルフ達ですら、みかけたら回避しろ、といっている魔物である。
「本当の番人はこっちだってことかよ!」
ロイドが二本の茎を腕のようにくねらせている魔物を睨みつけながらおもわず叫ぶ。
「私が…叩き斬ります」
木を切り慣れているプレセアからすれば、植物の幹も木の幹もさほどかわらない。
ゆえに、一歩、前にとすすみでる。
が。
「まった」
背後より何か聞き覚えのある声が突如としてきこえてくる。
『え?』
おもわずその声に全員がふりむくと、そこにはエルフの里で別れたエミルの姿が。
その背後にはあいかわらず、ピヨピヨとウルフといった魔物の姿もみてとれる。
「エミル。お前今までどこに!」
おもわずそんなエミルにたいし、ロイドが叫ぶが。
「彼らは害をなすものじゃないよ」
そのまますたすたと、ロイド達の横をすり抜けて目の前の巨大植物のほうへとエミルは歩みよる。
危ない、といった台詞は誰のものか。
だがしかし。
巨大植物はエミルがさしのべた手にすりより、そのままその大きな花らしきものをうなだれさせる。
「いい子だ。役目に御戻り」
エミルの言葉とともに、ふたたびあらわれたときと同じようにそのまま大地にとしずんでゆくその魔物。
『・・・・・・・・・・・・』
何がおこったのかその場にいる誰もが理解不能。
ゆえに一瞬、その場に静寂が訪れる。
「いやいやいや。エミル。今お前何をしたんだよ!?」
はっと我にともどり、ロイドがそんなエミルにと問いかけるが。
「え?ああ、この子たちプランティクスの種族達はマイナリーフの番人だからね。
乱獲されないようにこの子達は見張ってるんだよ」
『いやいや。そうじゃなくて』
もののみごとにその場にいた全員の声が一致する。
彼らがききたいのはそんなことではない。
「エミル。どうやってここまできたの?」
そんな中、あるいみでずれた質問をしてるいコレットであるが、
完全にずれている、というわけではない。
が、コレットからしてみれば、魔物さん、エミルのいうことをきいて家にもどったんだ。
というような感覚でしかない。
何しろ魂だけであったであろう自分とも会話ができていたエミルである。
何となく、何でもありだ、とおもってしまっているコレットはおそらく間違ってはいないであろう。
「え?ああ。エルフの村にあった扉をつかってね。アステルさん達もきてるよ?
僕は皆がここにむかったってきていやってきただけだし」
エルフの里より、旅の扉とよばれしものから移動してきたのはつい先刻。
トレントの最深部より石板のもとにもどれば、そこにはすでに誰もおらず。
とはいえ、しばらくはやはりアステルは石板の解読をその場でしていたらしい。
ウィングバックの中に常にいれている、らしい古代言語の解読書。
それらをひろげ、石板にかかれている文字の解読をするためにあるいみにらめっこ状態となっていた。
その横ではため息とともに、定期的にグミをとりだしているリヒターの姿もあったりもしたらしいが。
結局のところ精神力がつきかけ、あわてて全ての資料を片づけたその刹那。
くらり、と目の前がしたかとおもうと、きづけば森の入口にと戻っていた、とのこと。
そのまま石板に手をかざし、そこから森の出入口へとつづく道を出現させる。
それはちょっとした陣であり、石板の一角にエミルが手をふれると、その場所の文字があわくかがやき、
石板の前にちいさな円陣を大地の上にとうかびあがらせる。
その中にと足をふみいれ、エミルもまた森の外へ。
森の入口の見張りをしているエルフにきけば、一緒にきていた人間達は
マナリーフをもとめすでにここからでていった。
とのこと。
「僕はロイド達をおいかけますけど、アステルさん達はどうします?」
「それって、例の語り部のところですよね。当然いきます。すこし確認したいことがあるんです」
エミルのといかけに、即座にもどってくる返事。
アステル達がいたがゆえに、直接あちらに出向くわけにもいかず、わざわざ一度こちらにともどってきた。
いまだにエルフ達はエミルにたいし、どう接していいのかわからずに、あるいみおどおどしているのがみてとれる。
まあ、センチュリオンたる世界に近い気配をもちしものが様をつけていた存在。
普通のはずがない、しかもエミルから感じる波動は彼らにとってとてもなつかしいものも微弱ながらに感じ取れる。
それはこの森であるがゆえに、エミルがもっている枝が反応して、
すくなからずマナを産みだしているからに他ならないのだが。
エルフ達は当然そんなことをしるはずもなく。
あるいみ勝手しったる、とばかりに旅の扉のある社やしろにと出向き、移動したのはつい先刻のこと。
「たぶん、難しい場所、の本当の理由はこの魔物のことだったんでしょう…けど……」
リフィルからしてみても何といっていいのかわからない。
たしかに、エミルが魔物を従えられる、というのはわかっていた。
判ってはいたが…普通の野生の魔物まで簡単に手なずけられるものなのだろうか、ともおもう。
ユミルの森のトレントにしろ、そしてあるいみ要注意魔物といわれているプランティクスにしろ。
かの飛竜の巣にてエミルがよびだせし、伝説の魔物といわれているフェンリル。
フェンリルにもいくつか種類がいるらしく、エミルが呼びだせしは闇の属性をもつフェンリル。
一説には冥界の扉をまもっている、とまでいわれている伝説の魔物。
「ま、何にせよ。薬草は手にはいったんだから、よしとしようぜ」
「ふむ。そのとおりだ。…考えるのはあとからでもよかろう」
どうやら今は考えないことにしたらしい。
ロイドはまあ、エミルだし、とおもうことにし、リーガルも疑問におもうが、
かといってここにいつまでもいるというわけにもいかないだろう。
それゆえにそんなことをいってくる。
霊草マナリーフとよばれしは、ふわふわな黄色い綿毛のような花をつけし草。
「で、必要なのはどれくらいいるんだ?」
「マナリーフを使うのならば、必要なのは葉っぱだよ。花のほうは染料になるからね」
さらり、というエミルであるが。
「エミル、この花のことに詳しいの?」
「え。まあ。詳しい、というほどでもないですけど……」
事実、花は淡い色に染め上げる染料としてもちいられる。
このマナリーフの花にて染め上げた品物は絶対に色あせすることはない。
「葉っぱかぁ。とりあえず、根とかを傷つけないようにしないとな」
なぜエミルにいわれ、魔物が退いたのかとかはわからない。
が、まあ、エミルもいっていたが、害になるものではない、とわかってくれたのかもしれない。
そんな都合のいいことをおもいつつも、マナリーフのもとにと近寄り、腰をかがめるロイド。
そのまま根を傷つけないように、葉っぱを数枚切り取ってゆく。
「用事もすんだようだな。ではもどるか」
たしかにリーガルのいうとおり。
それに何よりも、あの語り部、という女性にはロイド達も聞きたいことがある。
それゆえに一度再びかの小屋へとロイド達はもどることに。
「すばらしい!」
洞窟をでてしばし。
普通の山道にさしかかると安心したのかいきなりリフィルが叫んでくる。
たしかにこのあたりまでくると水滴もちっておらず、霧はあいかわらずとはいえ、
油断したら川にまっさかさま、ということもありえないであろうが。
「う、うわ。久々にでた」
その口調にいつものあれだ、とすぐに判断するものの、ひさびさだとおもう。
それゆえにおもわずひきつつ叫んでいるロイドの姿。
「そうだ。久々なのだ。この薬草が人の世界にあらわれたのは。
文献によると百三十年まえのオルフェ事変にまでさかのぼる」
しかしロイドの久々、という台詞を別にとらえ、リフィルがいつものごとく説明を開始する。
「うわぁ。先生の授業。久々だねぇ」
そんなリフィルの説明をきき、コレットが目をきらきらさせてそんなことをいってくるが。
たしかに何かを材料として行う授業は久しぶり、といってもよい。
「のんきなことをいうな。おい、リーガル、先生をとめてくれ!エミルも!」
「え。僕もしりたい。それしらないし」
寝てたときなのでわからない。
というより、オルフェ?といわれてもぴんとこない。
ある程度、寝ていた間に何があったかは大地と同調し把握はしたが、
人がそれぞれおこったことにたいして何と呼んでいるのか、までは把握していない。
ロイドが救いをもとめるように、エミルとリーガルをみつついってくる。
が。
「邪魔をするな。リーガル。それにエミルもだ。私はオルフェ事件の歴史的意義を語るところなのだ」
目をつむりつつきっぱりと邪魔をするな、と二人に釘をさしているリフィルの姿。
「ふむ。オルフェ事変か。あれは近代テセアラ史における重要な出来事だな。詳しく話すといい」
リーガルも思うところがあり、顎に手をあて、リフィルの言葉の先をうながす。
しかしそういうことをしっている、というのはやはりこちら側の産まれであることは間違いないであろう。
そもそも、シルヴァランドにはかの文献などはのこっていない。
こちらの世界において三百年ばかり前の事柄。
当然、リフィルがシルヴァランドの産まれであるならば知るはずのない事件。
「へぇ。そんなことがあったんですか。オルフェ事件…ですか?」
「うむ。三百年前。オルフェアという街において発生した奇病は、またたくまに全土にひろがり、
やがてエルフ達をもまきこんでいった、という」
リフィルがリーガルやエミルの言葉をうけて、文献でしりえた歴史を語りだす。
それは幼き日にリフィルがここ、テセアラにおいて吸収していた歴史の一部。
「うわ~。勉強したくねぇよ~」
ロイドの叫びがむなしくも山の中にこだまする。
そのまま、リフィルが納得いくまで歩きながらも、しばしかつての歴史…伝わりし歴史が語られてゆく…
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あとがきもどき:
薫:カンベルト洞窟?そんなのあったっけ?というひとは、初期も初期。二つの港町、を参考までに。
今回はマナリーフ獲得だけで容量が……汗
次回でおそらく、ミトスの回…かな?
2013年7月9日(火)某日
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