まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
ようやくユミルの森とその里~
容量的に里やその先のトレントの森にまでいけるかどうか…
ともあれいきますv
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「ユミルの果実かぁ。なんかおいしそうだな。桃に近いけど桃じゃないみたいな。
しかもなんかいい匂いがするし」
どこかでかいだような匂いのようなきもするが。
とりあえず、子供に果実を渡したのち、
手にしていた他の果実をいつまでももっていても何だ、というので、リフィルにと手渡した。
理由は、食事当番をなるべくリフィルにさせないかわりに、
フードバックを管理してもらおう、という理由にて、
リフィルがフードパックを管理しているからに他ならない。
「まあ、わざわざ探しにいかなくてもすんだのはいい…んだけどな…あれ、なんなんだよ?エミル君?」
「え?ただ、お願いしただけですけど?」
聞きたいのはそこではない。
ゼロスの問いにさらり、とこたえるエミルの答えに嘘はない。
あるいみ、エミルのお願いは魔物にとっては絶対的な命令であるゆえに逆らえるるはずもない。
「この匂いはマナの匂いに似ている、といわれているわ。
ゆえにこのユミルの果実は別名、不老長寿の薬、ともいわれているのよ」
「へぇ。先生、詳しいんですね。あれ?不老長寿?どこかできいたような…
あ、たしか川からながれてきた桃太郎!」
しばし考えたのちに、ポン、と手をたたき何やらいってくるコレット。
「ば~か。桃太郎は不老長寿、でなくて鬼を退治して財宝もらったんだろ?」
そんなコレットにいっているロイド。
「なら、この森にもおさるさんとかがいるのかなぁ?」
「たしか桃太郎のおともは、猿、鳥、犬だったっけか?」
「なら、エミルが桃太郎だね」
「…どこをどうやったらそんな解釈になるのか私は聞きたい……」
何やら話しが脱線しているロイドとコレットの会話。
おもわずリーガルがつぶやいてしまうのは…あるいみ仕方ない、といえるだろう。
完全に話しがそれている、のだからして……
光と闇の協奏曲 ~エルフの里~
エルフの隠れ里。
ヘイムダール、とよばれし場所。
「……ここまで無事にたどり着いたか」
ヘイムダールの入口までくると、そこにはなぜか腕組をしているクラトスの姿。
「クラトス!お前はなんでここにいる!」
おもわず身構えるロイドに、
「まさか、あなたはコレットの輝石を抑える方法を始めからしっていたのではなくて?」
どうもそのような気がする。
それゆえのリフィルの問いかけ。
「…だとしたらどうだというのだ?」
「気になってたんだけど。アステルさんやタイガさん達がいってた。
四英雄とクラトスさんが同じ名前なのはどうして?
勇者ミトスの仲間とコレットの病気はとてもよくにてた。資料によると」
興味があったらしく、アステルはそのあたりのことも調べていた。
その資料をリフィル達は昨夜目を通している。
「…それをきいてどうするというのだ?ジーニアス?それにリフィル」
「それは……」
きになるのは、マーテル、という名もその中にあったということ。
女神マーテル、そして勇者ミトスの仲間のマーテル。
偶然の一致とはおもえない。
古代大戦のときにはいなかったとおもわれし女神。
偽りの宗教、偽りの真実。
導かれる答えは…勇者ミトスの仲間であったマーテルという女性を女神、として宗教を立ち上げた、ということ。
言葉につまる彼らをそのままに、ちらり、と背後に視線を走らせ、
「…あまり時間もない。急げ」
そういい、そのままクラトスはロイド達の横をすりぬけ、その場をあとにする。
ロイド達が何かをさらにいうよりも早く。
と。
そんなクラトスと入れ替わりのように、二人の男が入口へとやっくてる。
どうやら入口をまもる門番、らしい。
武装していることからおそらくそれは間違いないであろう。
「ん?アステルか」
「お疲れさま~」
どうやらすでに顔みしりになっているらしい。
あからさまにエルフ達が顔をしかめているのがみてとれるが。
「ここは、エルフの里。ハーフエルフはここを通ることをままらなん、毎度いってるとおもうが?」
ちらり、とみればいつも一人であったハーフエルフがなぜか増えている。
珍しく大人数であることもきにはなるが、それでも決まりはきまり。
挨拶をしてきたアステルにたいし、淡々と門番のうちの一人がそんなことをいってくるが。
どうやら毎回、毎回同じことをアステルはいわれているらしい。
「え~?いいかげんに慣れようよ~」
「規則は規則だ!ったく、毎回同じことをいわすな!」
一人が声をあらげる。
「そんなこというと、物資援助もってこないよ?」
「「ぐっ」」
「…えっと、どういうこと?」
「…アステルのやつはこの里にはいる条件として、
この地では滅多に手に入らない、香辛料とかで奴らをあるいみ買収している」
「「「うわ~」」」
横にいるリヒターにジーニアスがといかけると、さらり、と説明しているリヒターの姿。
おもわずその台詞をきき、声をはもらせるロイド達。
「初見のものもいるようだな。お前たちにも一応説明しておく」
アステルやリヒターは常連なれど、当然ロイドやコレットは初めて。
初めてみるヒトの姿をみとめそんなことをいってくる。
「これは、かつてハーフエルフに村を荒らされた我々の自衛手段だ。
それが嫌なら人間の侵入も許可できん」
口ぐちにロイド達にむかいそんなことをいってくるエルフ達。
『自衛…ねぇ。何もせずにいるのが自衛、というのか。お前たちは』
呆れてしまう。
エミルの口からもれしは、古代のエルフ語。
「あなた達は彼らを村にいれる必要性があるとおもいますよ?
我々がかつてこの村であったこと、あなた達が隠していることを知らない、とでもおもっていますか?」
突如。
目の前に闇が終結し、一つの形をなし、そのまま目の前にいるエルフ達にそんなことを言い放つ。
「…テネブラエ」
おもわずエミルがため息をついてしまうのは仕方がない。
絶対に。
『!!?』
エルフ達がその姿というよりその気配におもわずたじろぐ。
「あなた方は、ここにいる姉弟に説明義務があるとおもわれますが?いかがですか?
ああ、それともついにエルフ達は他者に冤罪をおしつけて自分達の罪すらみとめなれなくなったと。
なげかわしいことです。やはりあなたがたエルフからは、
加護を全て取り上げてしまったほうがいいかもしれませんね」
やれやれ、という形でそんなことをいいはなつテネブラエだが。
たしかに、常々そのようには彼らにエミルはいってはいる。
ゆえにテネブラエのいうことに嘘はない。
ちなみに、エルフ語にて話しているのでロイド達には意味がわからない。
この場で意味がわかるのは、リヒターとリフィル、ジーニアス、
そして興味本気から覚えているアステルのみ。
「あなた…たしか、テネブラエ、といったわね?」
「あ、テネブちゃんだ」
その姿をみてリフィルが注意深く観察しながら問いかけてくる。
アステルにみせられし、紋様と、テネブラエの瞳の中にある紋様。
それはあからきに一致しているのがみてとれる。
一方で、テネブラエの姿をみてにこやかにいっているコレットの姿。
どうやら彼女の中では、テネブラエの呼びかたは、テネブ、で確定しているらしい。
「そのよび方はやめてください。まったく」
あのとき、ぱっとみため、コレットは意識がないようにみえはしたが、
そこにいた精神体…すなわち、魂の姿はエミルだけでなくセンチュリオン達も把握していた。
精神体であったときからテネブラエのことをそう勝手にいっていたというのもある。
それゆえにおもわずコレットにたいし突っ込みをいれているテネブラエの姿がそこにはある。
「テネブラエ。呼んでもないのに勝手にでてこなくてもいいのに」
しかもいつもの姿で。
なぜにウルフの姿からこの姿にもどしているのだろうか、この子は。
ため息まじりにそういうエミルだが、それでもあらわれたテネブラエをゆっくりとなでる。
無意識なのであろう、その尻尾がはちきれんばかりに振られているのがロイド達からしてみれば気になるが。
その気配のありようからして、目の前の犬のような闇をまといし存在が何なのか。
エルフだからこそわかる。
わかってしまう。
「この姉弟はセイジ姉弟です。
ここまでいえばいくらあなた達愚かなヒトになりさがりかけているあなた方ですらわかるでしょう?
まったく。そもそも石すらも奪われたあげくに、かの書物も失われたことを隠し通しているなど。
あなた方がしていること、不干渉でありつづけるというのは、
逆に世界に対する裏切りだとわかってるのですかね?」
「いいすき。テネブラエ。それが事実だとしても」
「しかし、エミル様、事実は事実です」
ロイド達は気づいていないであろう。
今現在、ウルフの魔物がいきなりいなくなっている、というその事実に。
そしてまた、エミル達が何を話しているのかすらロイド達には理解不能。
ヴォルトが話していたような難解な原語。
似ている、とおもう。
あのヴォルトの言葉と。
事実、テネブラエと話している原語はエミルにとってはなじみ深いもの。
デリス・カーラーンで使われていた原初たる原語。
「セイジ…まさか…」
彼らがやった、とばかりにおもっていたが。
しかし調べるにつれ彼らが原因でないことも判明している。
そして、こともあろうに彼らを売ろうとしたのが純粋たる一族の一員であったことも。
そして、禁書の封印をといたのもまた、エルフであったということも。
あの当時、見張りをしていたエルフの民がわいろにつられ、道をあけた、ということを。
しかしエルフ達はそれを隠ぺいした。
全てはハーフエルフが悪いのだ、というおしつけともいえる責任転嫁のもと。
「で?いれてくれるの?くれないの?」
にっこりと、闇のセンチユリオンを従えているこの子供はどうみても普通の人。
だがしかし、センチュリオンが様づけをしている、ということは、
あきらかに世界樹カーラーンとかかわりがあるもの。
だからこそとまどわずにはいられない。
ゆえにしばし顔をみあわせ、
「…しばしまて。族長に確認をとっくてる…」
彼らからしてみれば、そういうしかできない。
センチュリオンの機嫌をそこねでもすれば、それこそ生活に影響する。
下手をすれば大樹の精霊にその報告がわたり、本当に加護が失われる可能性すらあるのだから。
「エミルはいかないのか?」
族長、という人の許可がでたらしい。
それでもハーフエルフを里にいれる、というのは族長の判断、とはいえ。
何かあってはいけない、ということもあり、限られた場所にかぎり、という注意はあったにしろ。
何をいっているのかわからずに、聞いてみれば、リフィル曰く、エミル達が話していたのは、
やはり古代エルフ語、とよばれるものらしい。
あのとき、ヴォルトが使用していた言葉。
なぜエミルが知っているのか、という疑問はつきないが。
エミルからしてみれば、知っているから、ですませているこの現状。
エミルの記憶がかつて曖昧になっていて、しかも記憶喪失…まだそう思っているロイド達からしてみれば、
そこにエミルの記憶の手がかりがあるのでは、などと思ったりもしているのだが。
「僕が用事があるのは、ここの族長でなくて、この先の森だからね」
トレントの森、とよばれし場所。
「この奥?」
「うん。トレントの森ってよばれてるみたいだけどね。ちょっとそこに用事があって」
「…エミル。あなたはなぜここのことに詳しいの?」
「え?だってこの子達も詳しいですし。ね?それに判るから、としかいいようがないですし」
いつのまにか先ほどいたはずのテネブラエの姿はないが、
エミルの傍にはあいかわらず魔物二体がつき従っているのがみてとれる。
本来ならば立ち入り禁止。
が、しかし、センチュリオンが様づけしていたようなヒトを止められるはずもない。
かの気配の波動はエルフの里にと伝わっている。
ゆえに、エルフ達からしてみれば、びくびくしているのが今の現状。
滅多と姿を現すことがないといわれている大樹の精霊の僕たるセンチュリオン。
その波動を感じてしまえば畏縮してしまうのはあるいみ仕方ないといえば仕方のないこと。
何より、なぜに詳しいか、といわれてもわかるから、としかいいようがない。
自分が世界の安定のためにある意味でいえば眠っている最中にあったことはわからないが、
すくなくとも、自分が眠っていた間、基本的に大地の変動はおこりえない。
司る存在がいない以上、大地が地表において動くことも、変化することもまずありえない。
ミトスが分けた二つの世界の当時のまま、今現在もこの世界の大陸という大陸は存在している。
そこにすまう生物なども新種、などというものすら発生していない。
すべては古代のままの生態系。
異なるは、かつての戦いにおいて絶滅してしまった本来、天使とよばれし種族がいなくなっている。
ということであろう。
古代大戦において開発された天使は、
本来いた無機生命体たる天使達を捕らえ研究した結果、うまれでた生体兵器。
彼らは人の手により結晶化され、その体を粉々にと砕かれた。
宿りし器がなくなった以上、彼らの魂とて世界に還るしかない。
人の伝承においては、彗星とともにやってきたのは、エルフだ、といわれているが、もう一つの種族があった。
それが天使、とよばれし種族。
精霊ラタトスクと共にいきることを望みし種族達。
無機生命体…簡単にいえば、無機質に宿りし精霊が実体化したものたち。
本体たる無機物が壊されないかぎり、彼らは生き続けることができる、そう理をもったものたち。
エクスフィアと呼ばれし石達が進化した先にある、あるべき姿の存在達。
しかし、今現在、そこまで進化しているものはまだいない。
あのときのまま、時が…古代大戦、とよばれし戦いののち、世界そのものの命の進化の時間はとまっている。
そのことにヒトは気づかない。
気づこうとすらしていない。
「というわけで僕はしばらく別行動しますので。用事がすんだらまた合流しますね」
さらり、というエミルにたいし、
「合流って。俺達もエミルの用事につきあうぞ?」
「そんなにたいしたことでもないし。それにこれは個人的な用事だしね」
「その用事とは何なのかしら?いったい?」
「用事があるから、必要性があるから、としかいえないんですけど…」
いってもおそらく理解不能。
というよりヒトにそこまで説明するつもりはさらさらない。
リフィルの問いかけににっこりとほほ笑み、
「んじゃ、またね」
そういい、
「いくよ」
傍にいる魔物達にと話しかける。
エミルに従うようについてゆくピヨピヨらしき魔物とウルフらしき魔物達。
と。
「ええ!?エミルはあの森にいくの!?僕もいってもいい!?」
きらきらきらきら。
「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」
目をおもいっきりきらきらと輝かせ…という表現がしっくりくる。
緑の瞳の中にどうみても、光りが宿っているのでは?というような表情をうかべエミルにいってくるアステルの姿。
「えっと…アステルさん?」
「僕がいくども森にいきたい、といっても却下されてるんだよね。
幾度かはいったことあるけど、なんでかいつも入口にもどってたし」
僕、それほど方向音痴でないはず…なんだけどなぁ。
そんなことをつぶやきつつも、エミルにいってくる。
まあ、オリジンの拠点でもあるかの森は空間が少しばかり歪んでいるがゆえ、
正確な道をたどらなければ確実にもといた場所にともどるようにと理がひいてある。
エルフ達が狩りをする場合、蝶に導かれ、またプッシュベイビー達に導かれ、
これまで事なきをえている、といっても過言でない。
「それにさ。リヒターがいれば戦闘になってもこまらないよ!」
「まて。俺にまるなげか。アステル!」
「え~?だって、僕が得意とする薬草類の攻撃は森ではつかえないよ」
『・・・・・・・・・・・・・』
さらり、という台詞にエルフ達まで無言になり、一瞬その場に静寂が訪れる。
「……アステルのやつの得意とするのは、毒物とかによる攻撃なんだよ。
自分で薬草類を調合して爆弾とかつくってる奴でもあるからね。ちなみに研究の一環だとさ」
「「うわ~」」
しいながため息まじりにおもわずひいているロイド達にと説明する。
それをきき、ロイド達はおもわず一歩後ずさっていたりするが。
おそらくその気持ちは普通ならば当たり前、なのだろう。
エルフ達からしてみれば、森で毒物をつかわれてはたまったものではない。
それゆえに許可をしていないだけのこと。
「…ついてきてもいいですけど、その毒物類のはいっているパックは預けていってくださいね?」
(よろしいのですか?ラタトスク様?)
『ここでことわっても無理やりについてくる可能性があるからな。下手に使われては面倒だ』
中和などをするのはたやすいとはいえ、面倒なことにはかわりがない。
心配そうにといかけてくるルーメンにさらり、とこたえるエミル。
エミルが発した言葉はルーメンやテネブラエにしかわからない。
ちなみにノイシュは村の入口のところでまつように、といっているので。
エルフからしてみても古代生物であるプロトゾーン。
この世界ができてうまれし初めての生物。
そんなノイシュをないがしろにするはずもなく。
あくまでもヒトに対して通用するようにしているソルムの幻影はエルフ達には通用していない。
そのようにはしていない。
ゆえにエルフ達はノイシュの種族を敏感にと察し、ノイシュに気配を加える気配はまったくみあたらない。
もっとも、水鏡の森をぬける最中、ノイシュはようやく自分が水に浮ける、ということを思い出したようだが。
その特性をもってして、体をすこし浮かし、浮かべられているだけの橋が沈むのを抑えていた。
エミルからしてみても性質を忘れてしまっているノイシュに本来のありようを思い出させるのに手っとり早かった。
といってもよい。
「かの森は異次元空間ともいえる場所ですから。まあ、迷って出られなくなる、ということはまずありませんが」
その前に入口にともどされる。
「いじ?」
「異次元空間だよ。ロイド。そんな森があるんだ…エミル、なんでそんなに詳しいの?」
エミルはシルヴァランド人。
そのはず。
なのにどうしてここ、テセアラの、しかも隠れ里ともいわれているエルフの住んでいる場所のことに詳しいのか。
ヴォルトの神殿のときもエミルは隠されているとおもわしき通路をしっていた。
だからこその問いかけ。
そんなジーニアスの問いにただエミルは笑みをうかべるのみ。
「で、アステルさん達はどうするんですか?」
ちらり、とリフィルと視線をかわし、
「ついていきます。あ、リフィルさん、これ、預けておきますね」
「ええ。預かっておくわ」
毒物がはいってるらしい、ウィングパックをリフィルにと手渡すアステル。
「…本気でついてくる気なんですか…まあ、いいですけどね…別に……」
かの森には人語をあやつれる魔物達もいる。
仕方ない。
名を呼ばないようにいっておくしかないか。
ため息とともに、
『ウェントス。この地にいるものたちに我の名をよばぬように命令を』
風にのせ、命令を発しておく。
エミルのそんな言葉をうけて、風が一瞬吹きつける。
その風に濃いマナを感じたのはおそらくエルフとそしてハーフエルフ達のみであろう。
「…一つだけいっておく。この村では英雄だ、と祭り上げられているあのミトスの話しは禁忌だ。
決してあれの話しはするなよ」
結局のところ、エミルはアステルとリヒターとともに奥にある、という森へとむかっていった。
エルフ達いわく、その森は彼らの狩場であり神聖な場所、でもある、ということらしい。
なのにどうして部外者たるエミルの立ち入りがあっさりと許可されたのか、という疑問はつきないが。
エルフ達は問題ない、その一点張り。
下手なことはいえない。
すくなくとも、センチュリオンが様づけをしていたヒトの子。
普通であるはずがない。
エミル達が森にはいってゆくのをせめて見送る、というロイド達の意向により、
入口まで見送り、そして向かうはこのエルフの里の族長という長老の家。
リフィルの顔が家に近づくにつれ固いものになっているのに気付いたのはゼロスのみ。
リフィル達姉弟は、エルフだ、といっていた。
思うところがあるのかもしれない、そうおもう。
シルヴァランドのエルフとテセアラのエルフ。
どう関係があるのかはわからないが。
案内してきているエルフの男性の表情は硬い。
セイジの性をもつものがやってきた、そう見張りのものから報告をうけ、
セイジ、で思い出すは、バージニア。
こともあろうにテラアラの教会のものと通じたエルフの女性。
世界を裏切りし宗教ともいえるものを信仰していたヒトと通じたエルフ。
それでも、彼自信はマーテル教事態に疑念をもっていたがゆえにエルフの里に住むことが許されていた。
かの人間がこの地にて国から命令されたのは、エルフ達が隠しているとおもわれしものを見つけ出すこと。
それは、古代大戦のさなかに産まれたという、魔族を封じた、という書物。
エルフ達曰く、封じた、というよりはあれは媒介のようなものであるらしく、
完全に封じ切れてはいないらしい。
だからこそ、マナにあふれし場所にて瘴気が漏れ出さないようにしているのだ、と。
それをしったが、彼はそれを国に報告することはなかった。
それより、バージニアと添い遂げることを選んだ。
本来あるべき姿に帰化した、といってもよい。
産まれた子供はハーフエルフなれど、極端に拒絶はされなかった。
それは、彼がその知識をもってして、エルフ達に貢献していたから、といってもよい。
少ない材料で効率よく、それらの技術的な知識をバージニアの夫となりしヒトはエルフの里にともたらした。
あくまでも自然とともにいきる、という前提のもと。
ゆえに、長老の命をうけ、バージニアをしるエルフが使いにと選ばれた。
マナのありようからして、そこにいる二人があのバージニアの子であることは疑いようがない。
人とエルフが入り混じったマナ。
そのマナには覚えがある。
利発な子だった、という記憶はある。
かの伝承者ですら自分の後継者にできないか、といっていたほどに。
…その不器用さはおそらく母譲りになってしまったのもしれないが。
そんな彼の心情をしるはずもなく、そういってきたエルフの青年に対し、
「何でだ?」
首をかしげてといかけているロイド。
「?」
横ではコレットも同じく首をかしげていたりする。
「説明する必要はない。いいな」
そんな彼らに一言だけいいはなち、そして、やがて一件の家の前にとたどりつく。
「長老様がお会いになるそうだ。失礼のないようにな」
長老の家、とよばれし場所は小さな集落の奥のほうにとあり、
その横にはなぜか、必要がないかもしれないというのに宿屋らしきものまでもがみてとれる。
食材屋、雑貨屋、武具屋、宿屋、それがこの集落にある施設の全て。
それらがだいたい中心に束ねられており、それ以後はまばらに家々があるのがみてとれる。
村にはいるとその自然と一体化している村の様子が嫌でもわかる。
美しい川が村の中を流れており、それらの川が村の中を縫うようにして流れている。
ぱっとみため、素朴ではあるが堅実な暮らしが営まれているのが手にとるようにわかる村。
おそらく自給自足のためなのか、それとも村の中で売買…する必要があるのかどうかはわからないが、
ともあれ川の横につくられし畑には収穫されたばかりなのであろう、野菜がつまれているのが目にはいる。
「なんとなく里ににてる」
おもわずしいなが無意識のうちにそんなことをつぶやく。
「そういえば、そうね」
だからなのかしら。とおもう。
みずほの里では、リフィルはとてもくつろげた。
とてもなつかしい気持ちになって。
自然とともにいきていると感じたみずほの里。
たしかに、ここエルフの里とつうじるものがある。
長老の家は長老、というのだからみずほの里のように大きな屋敷かとおもえば、
そうではなく。
こじんまりとした家。
案内されてきた族家にとはいったロイド達が目にしたのは、
あまりに質素な家の中の様子。
必要最低限の家具しかおかれていない部屋。
「お前たちか。やってきた客人、というのは。あの悪魔…でなかった、アステルとともにきたというものたちは。
……やはり、リフィル。か、ではそちらの子があのときの赤子だな?ジーニアスといったか」
ちらり、とリフィルに視線をむけ、ため息とともにいってくるは、
髪も髭も真っ白で、かなりの歳を経過しているのだろう、とおもわせしエルフ。
いきなり族長、とよばれしものがリフィルの名をよんだことにロイド達はおどろき、
おもわずその視線をリフィルへと全員がむける。
ジーニアスですら、
「姉さん?どういうこと?何でこのひと、僕らの名を名乗ってないのにしってるの?」
困惑した様子で姉にとといかける。
「…話していないのか?」
その言葉にリフィルはただ顔をふせたまま。
やがて、決意したように、顔をあげ。
「お久しぶりです。族長プラムハルド様」
プラムハルドという名は代々の族長が引き継ぐ名。
「…十二年。か。里のものはどういうかわからないが、わしはお前らに謝らなければならん。
お前たち家族が原因でこの里に災厄がもたらされた、そういう若いもの達をわしはとめられなかった」
何となく胸騒ぎがし、かの地を調べにいかなければまず今もまだごまかされていたままであったであろう。
こともあろうに封印の地をまもりしエルフが欲にまけて人に加担し、
封じられしものを外にだすなど、言語道断。
いきなりおこった魔物の暴走。
しかしあの書物が関係していたのならば、今ならばわかる。
かの書物からあふれた瘴気により魔物達が正気を失い、暴走してしまったのだ、と。
「姉さん?」
「「先生?」」
「おいおい。リフィル様?あんた……」
リフィル・セイジ、という名はあるいみ有名。
研究院が望みしハーフエルフであり、手にいれられなかったという聡明なるハーフエルフの子供。
殺した場合とてその死体は研究院が回収し、実験に扱い、捉えられしハーフエルフ達にまず希望はない。
そんな中で死体も何もなく、行方不明扱い、もしくは死体も確認されていないのに死亡扱い。
そのような扱いをされているその子供の名前は知る人は知っている。
もっとも、それは国に絡んだ上層部、もしくは研究院にかかわるものたちのみ、という注釈もつくが。
「ジーニアス。ここは、私たちが産まれ育った場所…私たちはここ、エルフの里で産まれたのよ」
それはあるいみジーニアスにとっても他のものにとっても驚愕する告白。
「ちょ、ちょっとまちなよ!ならあんたはシルヴァランド人でなくてテセアラの産まれだっていうのかい!?」
しいながいうが。
「嘘だ!だって僕にはシルヴァランドでの記憶しかないよ!こんな場所しらない!」
「知らなくても当然じゃろう。おまえさんは産まれてすぐに家族と村を出た…
いや、追われたといってもよい。お前たち家族を追放したのは…ほかならぬわしなのだから」
あるエルフものがいった。
やはり人を里にすまわしたから、魔物が狂ったのだ。
と、それに賛同したエルフ達。
その流れを当時の族長ですらとめられなかった。
すくなくとも、魔物にむかっていったエルフですら狂ったようになっていたあの当時。
まさか、とおもい封印の書を確認にいけば案の定。
瘴気を浄化させるには、自分達の手にはおえない。
そしてまた、瘴気は伝染してしまう。
エルフが使いし術においても瘴気を遮断する統べはない。
できることは、マナの濃い場所にそんな彼らをつれてゆくことのみ。
瘴気にとってマナは毒。
マナにとって瘴気が毒であるように。
「あの出来事の責任をすべてお前たち家族にわしらはおしつけた形になってしまった。
しかし、他のものはそれを認めようとはしない。情けないことじゃがの。
人をこの里にすまわせ、あげくはマーテル教に通じたものと子供をエルフがつくったからだ、といわれてはの」
「村を…追放?」
その言葉に、イセリアの村を追放されたときのことがよみがえる。
おもわずロイドの声に硬さが含まれる。
「姉さん?いったいどういうことなのさ?」
ジーニアスからしてみれば聞いたことのない話し。
物ごころついたときにはすでに姉しかいなかった。
ゆえにジーニアスがとまどうのも無理はない。
「…私たちは、この地にすまいし、バージニアというエルフと、そして村に迷い込んできたというテセアラの神官、
クロイツ・セイジとの間に産まれたのよ。ジーニアス。この村で、ね。
だけど、あるときを境に私たち家族はまだ赤ん坊であったあなたとともに村を出ていかざるをえなくなった」
すなわち、それは言外に自分達がハーフエルフである、とみとめる発言をしている、ということ。
しかしジーニアスには説明をする必要がある。
それゆえのリフィルの告白。
「へぇ。ここが先生の産まれた場所なんだ」
始めは驚いたものの、だけどもさらっとそんなことをいっているロイドの姿。
「…驚かないのね?ロイド。あなたは」
そんなロイドにしばし目をぱちくりさせたのち、おもわずといかけているリフィルであるが。
「え?だって、先生は先生だし、ジーニアスはジーニアスだろ?」
「うん。先生は先生だよね」
ロイドの言葉につづき、コレットも賛同する。
産まれた場所など関係ないとおもう。
リフィルがイセリアにきたのはリフィルが十八のとき。
それから五年間、ずっとともにいたのである。
すくなくとも、イセリアで共にすごした時間は彼らにとって嘘ではない。
ロイドやコレットにとってハーフエルフであろうが関係ない。
ディザイアンとよばれしものたちはたしかにハーフエルフかもしれない。
が、すべてのハーフエルフが悪いわけではない。
人の中にも悪事をするものがいるように。
あるいみ人のほうがタチがわるいかもしれない。
エミルもいっていた。
ヒトは優しい顔をしてちかづいて、そしてあげくは裏切る、と。
ハーフエルフにはそれがない。
自分達が誇りある血をひいている、という矜持があるがゆえ。
…他者を見下す傾向に育ってしまうものがいるのもまた事実ではあるが。
「テセアラ組はどうなのかしら?私たちはずっとあなた達に黙っていた。ハーフエルフということを。
やはりハーフエルトとともに行動はできない。そういうのであれば、私たちは……」
ここまできて隠しておくわけにはいかないであろう。
すくなくとも、長老が自分達の名をいい、自分から告白してしまった以上は。
だがしかし、ここにきた以上、真実を弟に話さないわけにはいかなかった。
ジーニアスとていつまでも子供ではない。
真実をいつかは話さなければいけない、とはおもっていたのだから。
同行が認められない、というのであれば自分達のみで世界を救う方法をさがすしかない、ともおもう。
そんなリフィルの心情を知ってかしらずか、
「まあ、あたしもかなりかわった血筋の一族だからねぇ。
というかあたしなんか自分がどこの子かもわからないし。あるいみお互い様だね」
「?」
しいなのそのいいかたに思わずリフィルが首をかしげる。
「ああ、話してなかったね。あたしは赤ん坊のときにお爺ちゃん…でなかった、頭領にガオラキアの森で拾われたんだよ」
さらり、というような内容ではないとおもう。
絶対に。
ロイドからしてみれば、しいなも俺と同じだったんだ、と逆の意味で親近感をもっていたりするのだが。
ロイドは三歳のときにノイシュとともにいたところをダイクにひろわれた。
その横には瀕死の母親もいたらしい。
手につけているエクスフィアはその母親の形見だ、とロイドはダイクより聞かされた。
そして、牧場でこのエクスフィアが母親を培養体…苗床としてできたものである、ということも。
「もしかして、あたしが召喚の力をもっているのもエルフの血が入ってるのかもしれないし。
つまり似た存在同士ってことさ」
しいなからしてみれば、一緒に旅をしてきた彼らが全て。
種族など関係ない、とおもう。
七歳のときからこのかた、ずっと里で迫害されてきたがゆえにしいなはそのあたりのことには聡い。
「少なくとも、リフィルさん達は私が幼いときからきいていたハーフエルフ…とは違います。それだけはいえます」
プレセアも幼き日よりハーフエルフがどれだけ野蛮か、なるものを村のものからきかされてはいた。
しかし父はそれは違う、そういっていた。
そう思う人の心こそが、何よりも醜く、争いの原因ともなりえるものなのだ、と。
「俺様は…まあ、正直、どっちでもいい、とはおもうけどな。
そもそも俺様だって天使の血が入ってるっていわれてるわけだし。
リフィル様はリフィル様ってね。ガキはガキでしかないけど」
「どういう意味さ!ゼロス!」
「ガキだろうが。実際」
「む~~!!」
つっかかってきそうなジーニアスをかるく片手でおしとどめ、じたばたするジーニアスをみてにやにやと笑みをうかべる。
この行為がジーニアスに対する彼なりの配慮だ、とわかっているのはこの場ではしいなくらいであろう。
彼らがハーフエルフと周囲に知られてしまった、とおもったときに感じる焦燥感や疎外感。
それらを全て払しょくさせるかのようなゼロスの言動。
ゼロスは昔から、こういう面がある。
それは幼き日より大人たちの権力という魑魅魍魎ともいえる仲で育った彼なりの処世術。
「まあ、そんなことよりさ。マナリーフをわけてほしいんだ」
そんなこと…どうやらロイドにとっては種族など些細なことであるらしい。
あれだけずっと悩んでいた自分がばかばかしくなり、おもわずそのばに脱力してしまうジーニアスであるが。
「…あいかわらず、ロイド君は空気よまないねぇ」
「?何がだ?ゼロス?」
「ま、ロイドらしいけどさ」
そんなロイドにおもわず呆れた視線をむけているゼロスとしいな。
あるいみ裏表がない人間だ、といえるであろう。
ロイドは。
感情のままにうごき、そして失敗する。
信用する、とおもったものはとことん信用する。
人を疑うことなかれ、だますよりだまされるものになれ。
それはダイクがよく言っていた言葉。
そのように育てられているロイドはあるいみゼロスにとっては眩しくうつるであろう。
どうやら今まで黙っていたようだが、同行者たちにハーフエルフだと。
しかし彼らの態度は変わりがない。
本来ならばあるべき人とのかかわりのありかたがそこにはある。
今ではエルフ達ですら忘れてしまったヒトとのかかわりかた。
ああ、だから、センチュリオン様がたがこのものたちとともにいたのか。
そんなことをふとおもう。
「…マナリーフ、といったか?」
いきなりそんな名がでてきたことにおもわず目を丸くする。
というか、さきほどやってきていたクラトスがいうとおり。
マナのありようからこの目の前の少年はあのクラトスの子供なのだ、とわかるが。
とても珍しい、とおもう。
無機生命体にちかしい天使とよばれしものと、人との間にうまれし、歪みをもたなき人の子。
無機生命体と有機生命体との間にうまれし、狭間の存在。
狭間、という点ではハーフエルフとあまり変わりがないのかもしれない。
が、すくなくとも、エルフと人は種族は異なるとはいえ、完全なる性質から異種族、というわけではない。
根本たる源の理をおなじくする種族。
が、目の前のヒトの子は異なる異種族同士の間にてうまれし命。
あるいみで奇跡というよりは、世界があらたな道を示すかのごとくにうまれている新たな種族たる生命体。
それもあり、だからこそエミル…ラタトスクはずるずると彼らの旅に同行しているのだから。
可能性を秘めしあらたな種族かもしれない、ということもあるがゆえ。
「ああ。それが必要なんだ」
目の前の人の子はその事実を知らないのであろう。
まちがいなくわかっていない。
なぜかそう確信がもてる。
きっぱりとそういわれ、だがしかし、そう簡単におしえるわけにもいかないのもまた事実。
それゆえに、
「あれは我々エルフが魔術のために利用している大切な植物。滅多なことで生息地を教えるわけにはいかん」
この場にあった最後の在庫は先ほどクラトスに手渡したばかり。
それゆえ、今ここには、マナリーフはない。
そしてまた、その植物を管理しているものの場所はほいほいと教えていいものではない。
特に愚かなるヒトは、かの存在をしれば排除しようと絶対にうごく。
テセアラという国やマーテル教などは率先して異端とか意味のわからないことをいって排除しようとするであろう。
それだけは確信をもっていえる。
だからこそ、かの伝承者のことはエルフのみにしか伝わっていない。
もっとも、どこからか王国やマーテル教はそのことをききつけ、
よくここに間者を送り込んできてはいるが。
アステルが知っていたのは何のことはない。
エルフを完全に強い酒にて酔いつぶし、聞きだしたからに他ならない。
…その酒の中に無色透明の自白剤を含ませて。
「……何とかならないのだろうか?その植物がないと最悪命を落としかねない仲間がいる」
ロイドの要の紋をつけてからコレットに症状はないようにおもえるが。
だが、リーガルの勘は、コレットが無理をしている、というのを見抜いている。
それゆえにそんな族長にと問いかける。
仕事柄、リーガルのことはブラムハルトは知っている。
その手枷の意味も。
使用に値するとはおもってはいる。
少なくとも、かの会社からエルフの里では手にはいらないものは無償で提供されているのだから。
それでも、やはり人間だから、という理由でエルフ達の視線は冷たい。
特に大人たちはかつての混乱時…魔物の大暴走と村の悲劇。
それをしっているものたちからしてみればヒトを排除しようとする傾向は果てしなく強い。
表面上はとどこおりなく接しているようにみえても、内面は常に人を冷めた目でみているのもまた事実。
「どういうことだ?」
命が危険、というのは穏やかではない。
しかもマナリーフを利用しなければいけない、という病気など、ほぼ限られている。
それゆえの問いかけ。
「病気の仲間がいるんだ。えっと、天使こうか……」
ロイドがどうにか思い出そうといい、
「違う、違う。たしか永久天使性……」
ゼロスがそんなロイドにかわり、説明しようとするが、どちらも間違っている。
「永続天使性無結晶症」
そんな彼らにたいし、淡々と突っ込みをいれつつも訂正をいれているプレセアの姿。
「そう。それにかかりかけてる……」
ロイドがいいかけると、
「!なんじゃと!?……それはマーテルの…だからクラトスが……」
「!何だって、今、マーテルっていったのかい?」
しいなが聞き返すと、族長はおもいっきり目に見えてあわてだす。
「それにクラトスがどうしたんだ!?クラトスは何をしにきていたんだ?」
ロイドからしてみれば、どうしてここにクラトスがいたのかがきにかかる。
しかしそんな彼らの問いかけに族長は口ごもるのみ。
やがて、
「クラトスのことはいい。マナリーフの生息地はここから東南にあるラーセオン渓谷だ。
霧深い山の奥にある。そこの奥地に住む番人にこの枝をみせなさい」
しばし考えたのち、ロイド達一人一人の顔をみわたし、ひとつの枝をさしだしてくる。
「族長…ありがとう!」
しいながおもわず感激の声をあげるが。
「プラムハルド様。この杖は…長老の許可たる証の……」
昔みせられたことがある。
「それは。お前さんがもっているといい。リフィル・セイジよ。
それはお前の役に立とう。…願わくばバージニアに会えることをいのっている」
「!?まって。お母様はいきているの!?」
「エルフは産まれしときより、それぞれ、守護木なるものがきまる。
エルフが死せしときに、その木もかれる。が、バージニアの木はまだ枯れてはおらん。
ゆえにどこかで必ず生きてはいるはずだ」
それが捉われの身であるのか、
それとも意識のない状態で実験体として無理やりに生きながらえされているのかはわからぬが。
小さくつぶやいたその言葉はゼロスと、コレットのみに聞き取れる。
「え?僕たちの…お母さんが…いきてる…の?」
ジーニアスに親の記憶はない。
物心ついたころから姉と二人で、小さいときに死んだ、そうきかされていた。
何が何だかいきなりいろいろとありすぎてジーニアスは混乱ぎみ。
「…人間。これ以上お前たちに話すことはない」
いくら表面上はある程度、人間にたいして友好的、とおもわれているエルフとはいえ譲れない一線はある。
人は真実をしると、その真実をしるものを排除しよう、とする勢力が必ず産まれる、というのを彼らは識っている。
ゆえに詳しくおしえたくない、というエルフの長老の言葉もあながち間違い、とはいえないであろう。
そんな彼らをしばしみつめ、やがてしばし目をとじたのち、厳しい口調でそんな彼らにと言い放つ。
そんなプラムハルドの言葉に、
「あ…でも」
まだ聞きたいこともある。
そもそも、あのエミルのことも何も話していない。
どうして彼らエルフが神聖視している、という奥の森にエミルがはいるのがあっさりと許可されたのか、とか。
「…ロイド。いきましょう」
しかしそんなロイドをリフィルが遮る。
「今、私たちがしなくてはいけないことは何?少なくとも、不完全な要の紋で症状を抑えている以上、
何かしらの副作用がでない、とも限らないのよ」
それは事実。
常にリフィルが懸念していること。
コレットをよくよく観察していなければわからないが、ときおりコレットは体をよじっていることがある。
どうしたの、ときいても何でもない、というばかりで。
「…族長。さすがにあの道は…」
「このたびは特例としてお前たちを招き入れた。が、里のものでないものにあの道はつかわせられぬ」
精霊の力をつかいし、次元の扉。
旅の扉とよばれしもの。
このエルフの里の奥にとあるトレントの森に聖なる祠があり、
その祠はラーセオン渓谷へと繋がっている。
「ラーセオン渓谷、たしかここから東南の方向にある渓谷だな」
リーガルがしみじみいい。
「ところで、エミル達はどうするのさ?」
森のほうにいったまま、いまだにエミル達はもどってこない。
「…しかたないわ。こちらはこちらで用事をすましましょう」
戻ってこない以上、またいつ戻ってくるかもわからない。
ならば、先に用事をすます、たしかにリフィルの言い分は理にかなっている。
ともあれ、ロイド達はエルフの里をあとにし、レアバードにてラーセオン渓谷、とよばれし場所へと向かうことに。
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あとがきもどき:
薫:守護木とかいうのは完全にねつ造さん。
自然とともに生きる種族なのでありえるかな~とかおもったり。
次回でエミルサイドですv
2013年7月7日(日)某日
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