まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

ついに合流!(え?)アステル&リヒターの登場ですvv
アステルって何となく、さらっといいそうな感じがするんですよね…
何しろ大人の中で子供が育ったようなものだし…九歳から研究院って…

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やはり、とおもう。
定期的に確認してみているマナの測定値。
かつては完全に安定というよりは偏りが目立ったマナの値は、
ここしばらく、完全に全ての属性がきちんと平等に満ちている。
それが数値的にも示されており、全ての測位点においてみうけられている。
すべては、シルヴァランドの再生の旅が始まった、という噂以降。
火のマナと相対する氷の精霊セルシスウス。
そのマナが流れ始め、そして安定の値をみせはじめたのは、
風のマナと相対する土の精霊ノーム、それらが流れ始めた直後ともいえる。
それにともない、今までみたことのない魔物の増加。
世界に何かがおこっている。
が、その何か、は人々にはわからない。
きになるのは、あふれるほどにあったばすのマナが、
まるで調整されたかのごとくに常に安定値を保っている、ということ。
エルフの里にでむいた調査員達も彼らから何も聞き出せてはいないこの現状。
だからこそ、自分達の足できちんと確かめる必要がある。
真実を突き止めるためにも。

光と闇の協奏曲 ~地の神殿と研究者~


神殿自体は、王都メルトキオからは北東に位置しており、またみずほの里からはほぼ西側にと位置している。
強いていうならば南西より、というべきか。
入り組んだ山の峰の間。
そこにぽっかりとひらいた洞窟らしき場所。
そこが地の神殿にとはいる入口、らしい。
「めずらしいな。エミルも一緒にはいってくるなんて」
「ノイシュもつれて、だけどね」
さすがに魔物達が襲うことがない、という理由もあり、
ゆえに少しでも怖がりを克服する必要がある、とばかりにエミルがいい。
さすがに親たる存在にいわれればノイシュとて行動しないわけにはいかない。
それゆえにびくびくしながらも、一緒になって洞窟の中へ。
一番の理由は、あのノームのことである。
絶対にいらないことをいう。
確信をもっていえるがゆえに、先に牽制をしておく必要性がある。
それゆえ、なのだが。
と。
「あれ?」
いきなり前のほうをあるいていたジーニアスがそんな声をあげてくる。
「どうかしたの?ジーニアス?」
今、先頭を歩いていたのはジーニアスとプレセア。
一番後ろにエミルとノイシュ、そのまえにコレットとロイド、そしてさらにその前にリフィルとリーガル。
ジーニアスとプレセアの後ろにしいなとゼロスが続いて進んでいたのだが。
ところどころ途切れている大地をつなぐは、一本の橋。
この洞窟自体は浸食され、別れ別れになっている大地そのものを橋という形でつなぎとめ、
足場を確保している場所らしい。
リフィルがそんな弟の声に反応して問いかけるが、
「みてよ。姉さん。これ……」
みれば、なぜか目の前にかかっている橋の上にたち、せいいっぱい両手をひろげている小さな人影ひとつ。
「おい。おめ~ら、勝手にはいってくるなよな~」
小さな体で通せんぼ。
をしているらしい。
「何だ?こいつ?」
それをみて首をかしげつつもいっているロイド。
「何だとは何だ。やんのか。おめ~」
どうやら威嚇しているらしいが、まったく威嚇になっていない。
「私たち、この先に用があるの。通してくれないかしら?」
リフィルがそんな通せんぼをしている小さな人影…クレイアイドルにむかって話しかける。
しばし考えたのち、
「う~ん。あにきももどってきたし、いいぜ~」
そのまま素直に道をあける。
「ありがと~」
「ほめんなよ~。てれるぜ~」
ほめてないのだが、どうやらほめられた、と感じたらしい。
「なんか誰かさんがいいそうな台詞だよね」
そんなやりとりをみつつ、ジーニアスがちらり、とゼロスをみつつそんなことをいっているが。
「え~?俺様ってこんな感じか~?ショック~」
「奥にいこうぜ」
そのまますたすたと奥にむかってあるいてゆくロイド達の姿。
「…つっこみも相槌もなし?」
おもわずがっくりとするゼロスにたいし、
「ゼロス君。ゼロス君とあの小さい子は違うように思いますよ」
「プレセアちゃ~んv」
「プレセア。会話には間合いがある。今の場合のゼロスは無視してもいいところだ」
わざわざプレセアのもとにきて、そんなことをいっているリーガル。
「そうなんですか」
「・・・・・・・あんたが話術をかたるかね?」
そんな会話をしつつも、先にいってしまったロイド達のあとをあわてておいかけているゼロス達。
一方。
『皆、元気そうだね』
一番背後からノイシュとともに歩いていたエミルは立ち止り、そこにいるクレイアイドルにと話しかける。
ちなみに彼らの原語でいっているので当然、もしもこの場にて気づくものがいても意味はわからない。
『あれ~?たしかエミル様っていわれましたよね?』
彼らはしらない。
ただ、センチュリオンとともにこの場にきたので、関係者だろう、ということくらいしか。
まあ、まさかラタトスク当事者だとしれば畏縮してしまい話しどころではないであろうが。
彼らの原語…クレイアイドル達が使用する、大地の言葉を使用してはなしかけているエミルにたいし、
首をかしげつつもこたえてきているクレイアイドルのひとり。
そもそも傍にセンチュリオンの気配をもつものがいるのも彼らは感じている。
ゆえに、様づけをしているのもしごく当然といえば当然なのだが。
『兄きも無事にもどってきましたからね~』
ソルムの目覚めの波動において、彼らもこの場から一時撤退していた。
何しろ大地そのものが狂うほどの波動。
大地とともにいきる彼らにとって、それはあるいみ死活問題で。
ゆえに、それぞれ理由を精霊に訪ねていけば、どうにもらならない、といわれ。
それぞれ旅にでていたのはついこの間までのこと。
大地のマナが安定したのをうけて、ここにもどってきたが、
その後、なぜか長男がサケなるものをもとめて旅にでた。
『そういえば、エミル様にそっくりなニンゲンがときどききますよ~?今もたしかきてるはずですけど』
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
あまり気にしていなかったが、どうやらあのアステル、という人間は今現在、ここにきているらしい。
「……センチュリオン達にセンチュリオンだ、と名乗らないようにいっとくか……」
まあマナの流れまで完全にわかるわけではない。
ゆえにまあ、名乗らせなければ問題ないだろう。
…おそらくは。
「…それだけでいいのですか?」
ちょこまかと背にのりつつ、横からなぜかソルムがそんなことをいってくる。
今現在、傍にいるのは、ハムスターの姿をしているソルムと、
そしてホワイトタイガーのような姿をしているウェントス。
この二柱。
「お前の場合は以前に通常形体であっているようだからな。あの形体にはあのものの前ではなるな」
「はい」
ノームのもとにくることもあり、とりあえず今回のみはエミルから傍にいるならば、というので指定をした。
他のものたちからはやっかみのような声もふくまれたが。
もっとも、ノームの口の軽さはセンチュリオン達の間でも有名なこともあり、
理由をきき全員が納得せざるを得なかったのだが。
「アイオトリスを服用しているゼロスもお前たちの姿は普通に姿をけしている状態を視ることが可能だしな」
あれは服用、というより無理やりに体内にいれられた、というほうが正解だろうが。
クルシスのいう天使の祝福、とはそういうこと。
アイオトリスは体内にて多少ではあるがマナを生産することができ、ゆえにそれを力にすることが可能。
正確にいえば周囲のマナを体内にとりこむことができる、というそれを体内にて生産できる、
と勘違いされているのだが。


「…あいかわらず、魔物の襲撃がないわね」
そこいらに魔物の姿はみえる、というのに。
まったく魔物達が攻撃をしかけてはこない。
しかも竜やら変わった魔物の姿もかなりみうけられる。
魔物から感じるマナの感覚からして、この場には様々な属性をもつものがいるらしい。
「ヴォルトの神殿でもおもったのだけど。こちらの神殿には仕掛けとかいうものはないのかしら?」
シルヴァランドの精霊の封印の場所は何らかの仕掛けがあり、それを解除してすすんでゆくしかなかった。
だが、ヴォルトの神殿にしろそれはなかった。
そして今、ここ、地の神殿とよばれし場所。
しかけらしきものはあるにはあるのだが、それらはもともと解除されており、
きちんとした道が確保されているのがきにかかる。
「そりゃあそうさ~。この神殿にはよく人間が研究とかいって出入りするからな~」
ふと、足元のほうからきこえる声。
みてれみば、そこには何かみおぼえのある姿が。
ちょこん、とした小さな人影。
「おまえらが兄きのいってたヒトかぁ。おいらはクレイアイドル五兄弟の三男さ~」
びしっと手をあげてそんなことをいってくる。
「人がでいり?」
リフィルがそこがきにかかり思わずといかける。
「そうさ~。何でも研究院とかいうところで精霊を研究してるヒトがよく出入りするのさ~」
おかげで好奇心旺盛な彼らに酒という概念がくわわったり、辛いもの、という概念がくわわったりしたはしたが。
それらはここに訪れた人間によって彼らの一応の好奇心はみたされている。
…酒のみはのぞく、といえるのだが。
そんなクレイアイドル三男、となのったそれの台詞に、
「ああ。それなら王立研究院所属の研究者達が精霊研究でよくこの神殿にはおとずれてるからね。
  マナの測定とか。あとこの遺跡をしらべたりとかで」
しいながシルヴァランドに向かう前などは、マナの乱れ、異常気象を調べるために、
よく研究者達がこぞって調べにでていた、という話しはしいなも聞いている。
しいなの言葉に、
「ここはそういう研究が進んでいるのね」
シルヴァランドではそういう機関はない。
あっても個人的でありその限度はみえている。
国がらみで研究していることと、個人ですること。
差がでてくるのは歴然。
それゆえにしみじみつぶやくリフィルの言葉にはかなりの実感がこもっている。
「今も、いつもの人間達がきてるぞ~」
さら、というその台詞におもわず顔をみあわせるしいなとゼロス。
「それって、まさかアステルとかいわないかい?」
「そんな名だったかな~?とにかくヒトとハーフエルフ、この二人がきてるんだな~。
  ノーム様に確認することがあるとかいってたけど」
そういうその台詞に、
「ノーム!?ではやはりここには地の精霊ノームがいるのね!?」
そこにリフィルがおもいっきり反応する。
「いや、俺としてはアステルって…あの例のエミルのそっくりさんってやつだろ?」
「うわ。あわせたらやばいひとがいるわけだ。姉さんとその人ってかなり危険な組み合わせだよね…」
その台詞をきき、おもわずひいているロイドとジーニアス。
あるいみしいなから話しを聞き及ぶかぎり、
ぜったいに合わせてはいけない人種だ、と判断しているがゆえの反応。
「ちょうどいい。アステルにいろいろと聞きたいことがあったんだ。俺様たち。な、しいな」
「あ。ああ……精霊研究においてアステルはもはやこのテセアラでは右にでるものはいない、からね」
ゼロスからしてみればアステルにいろいろと確認しておきたいこともある。
しいなも聞きたいことがあったがゆえに、ここにいる、というのは正直ありがたい。
…まあ、リフィルと会わすことになる、というのに不安を覚えるが。
「ん~。なら案内するんだな~。今、彼らはある場所でマナの測定をしているはずなんだな~」


「本当に瓜二つだな……」
目をぱちくりさせてくる深紅の髪をもつ男性。
たしかに、とおもう。
クレイアイドルに案内されてきた場所にいたのは二人の男性。
一人は鮮やかなる赤い髪をしており、もう一人をみたときにはさすがのロイド達も絶句した。
はっきりいって瓜二つ。
しいなが初対面のときにかなり驚いていたのがわかるほどに。
もう片方の男性はといえば、その目つきが多少鋭いような気もするが、
うまれもった面影はどうにもならないということをロイド達とて自覚している。
「髪の質とか色は多少違うようだし。あとは髪の長さか」
アステルの髪は太陽のような金髪であるが、エミルのそれは光りに応じてかわるような淡い金髪。
光の加減によっては色がかわってみえる、というかわった色彩。
ぶつぶつとリフィルが何やらつぶやいているが。
「うわあ。話しにはきいてたけど。本当に僕そっくりなんだ~」
アステル、とよばれた人物が目をきらきらさせてエミルをみていってくる。
話しにはきいた。
サイバックの研究所で、自分そっくりのシルヴァランド人がいた、と。
背の高さもさほどかわらない。
並んでいればまちがいなく、双子、で十分に通用する。
「あなたがアステルさん、ね。私はリフィル・セイジ。シルヴァランドで教師兼学者をしているわ。
  専門は主に古代における遺跡やそれに付随することよ」
「あ、これはご丁寧に。僕はアステル。こっちがリヒターです。
   しいなさんがシルヴァランドの人達をつれてきた、というのは聞いてましたけど…
   あ、ではそっちの女の子がシルヴァランドの神子ですね?なるほど。クルシスの輝石がありますね。
   …神子の要の紋とはまた違うようですが?」
ゼロスが体にクルシスの輝石を宿したとき、すでにそれと一体化して要の紋はあった。
今のコレットがつけているのは首飾りの形式の、しかもロイドがつくった簡易的なもの。
クルシスの輝石、とよばれしものの周囲にある首輪にもにた装飾はたしかに材質は普通のそれとはことなれど、
輝石を抑え込む機能としては果たしていない。
手をさしだすリフィルににこやかに対応し、手をさしだしているアステルの姿。
「あ。僕はエミルです」
とりあえずかるく頭をさげて一応挨拶。
エミルからしてみれば、視て一応確認はしていたが、彼にとっては初対面。
「ねえねえ。きみ、今いくつ?ちなみに、今僕は十六だよ」
目をきらきらさせて、エミルにとといかけてくるアステルにたいし、
「…さあ?」
エミルからすれば首をかしげるしかできない。
本気でわからない。
というか覚えていない。
そもそも、このエミルという名をつかいだしたのは、
大樹から地表をみるために産みだした仮初めの器の名として使用していたもの。
この惑星にきてからは一度たりともとっていなかったこの形状。
ちなみに、この惑星におりだってから…というのであればかるく一億年以上は経過している。
『さあ、って…』
「そういえば、エミル、親戚も親もいないっていってたから、正確な年齢とかしらないんじゃあ?」
今さらながらにそれにきづき、ぽそり、といっているジーニアス。
たしかに家族、とよんでいた子達がいるのはしっている。
いるがどうみてもヒトではなかった彼らたち。
センチュリオン、となのりしものたち。
「エミルって年下のようなときもあり、年上のようなときもあるからな~」
ロイドのその感想は嘘ではない。
時折、エミルは永い年月をえたようなそんな感じがすることをいうことがある。
まして、徹底している人嫌い。
それでも自分達と一緒にいることから、人嫌いでも避けたりする分野ではない、というのは把握してはいるが。
「おまえたちは……」
ふと、リヒターがそこにいる姉弟にきづき、眉をひそめる。
マナのありようからわかる。
同胞だ、と。
「しかし…リフィル・セイジ、だと?
  それはたしか十一年前に死亡した、といわれているバージニアというエルフの娘と同じ名だな」
さすがに同胞であり、あるいみ有名であったがゆえに、覚えていたらしい、
リヒターとよばれし青年がそんなことをいってくる。
ちなみに歳は十八らしい。
「そういえば。たしか研究院がその娘であるリフィルの頭脳を欲し、
  無理やりに招集しようとしてそれにさからって出奔した、だったっけ?
  僕が研究院にはいったのが七年前だけど。そのときですらいろいろといわれてたよね。たしか」
「かの娘は幼いながらに様々な原語に通じ、また聡明であったらしいからな。
  もっとも、両親はあの研究所におくるのを断固として拒否してたらしいが。
  …わからなくもないがな。俺とて……」
両親としずかな人里はなれた場所でくらしていた。
全てがくるったのは十三のとき。
両親は殺され、自分はとらわれ、そして今にいたる。
バージニア、という言葉にぴくり、とリフィルが反応する。
「でも、あれって僕からしてみたら、たぶん、バージニアって人、子供達を逃がしたんじゃないのかな?
  とかおもってるんだよね。だって、見失ったというのが異界の扉でしょ?
  かの地はよく研究院達も研究にいってるけどマナの数値が半端じゃないし。
  特定の条件がかさなったときなんかは空間が歪んでいるのは確証済みだし。
  噂ではあの場所はシルヴァランドに通じてるって話しもあるし。…いまだに実証されてないけどさ」
研究所。
その言葉をきき、かつてのゼロスやしいなの説明を思い出す。
研究所につれていかれたハーフエルフ達の…末路。
「だと、いいがな…俺とて……」
「リヒター……まだ、ご両親のことをせめてるの?」
「あのとき、俺が、街にいきたい、とさえいわなければ…過ぎたことといっても仕方がないのかもしれない。
  だが…っ!」
かたくなにリヒターを街にいかせようとしなかった両親。
兵士から逃がそうとし、殺された両親。
いまだにそれらはリヒターを苦しめている。
「……気をつけたほうがいい。ハーフエルフ狩り、と称して。
  テセアラ全土を王国の兵士達がいまだにめぐっている」
『!!』
その言葉にリフィルとジーニアスの体が硬直する。
「…俺の両親は、俺が十三のとき、街にいきたい、といったばかりに、兵士につかまり…殺された。
  ここ、テセアラでは、ハーフエルフは最低の身分であり、
  人に紛れて生活していても見つかれば問答無用で処刑だ。
  そして…そんなハーフエルフをかばえば、人間とて同罪とみなされる。
  俺がこうしていきていたのは、たまたま運がいいだけだ。運がいいといえるのか。
  しんでいたほうがましだったかもしれないがな……」
淡々というその言葉には感情がこもっているのかいないのか。
むしろ自嘲にみちた呟きともとれる。
「…ごめんね。リヒター」
「お前があやまることじゃない。悪いのは…この国、この制度そのものだ」
しゅん、となるアステルにそういうリヒター。
「そもそも教皇もまぢかってるよ。今のようにひどくなったのは教皇のせいなのにさ。
  自分こそエルフと恋におちて、子供までつくっておいて?
  なのにハーフエルフを処刑なんていう制度を提案して国に採用させてさ」
その母親であるエルフが死んでしまったことに由来しているのだが。
母親であるエルフは殺された。
それも同族であるエルフに。
人と通じる、しかもマーテル教のものと情をかわすなどと、という理由にて。
エルフ達にとって、マーテル教は、いわば世界を裏切っている証拠ともいえる宗教。
偽りの宗教。
そしてまた、大樹そのものを裏切っているものの名。
許せるはずもない。
かといって、関係ないであろうものに手をかける、というその心もまた許せるのもではないにしろ。
「まあ、教皇のやつはなかなか尻尾をつかませないからなぁ。
  アステル君だって、だからあの暗殺未遂を表にださないでいるんだろ?」
「まあね。神子様のいうとおり。証拠、といっても彼らがつかっていた毒物くらいしかなかったし。
  すでにそれを服用させていた宮廷のものは教皇の手によってほうむられていたあとだし。
  僕がにぎっているのはあとは教皇の不正や横領。それが僕がしんだに明るみにでる。
  というかきちんとした場に預けているから手だししてこないだけだしね~」
さらり、と何やらかなり物騒なことをいっているアステル、となのった少年。
「なんだよ…なんだよ、それ!」
かばっただけで同罪?人とくらしていただけで処刑?
そんなの、間違っている。
それゆえのロイドの叫び。
「教皇さえどうにかできればな~…ほんと、魔物にでも殺されてくれないかねぇ?」
「あはは。物騒だねぇ。でもそれだと面白くないよ。
  やっぱり今までのしでかした罪を赤裸々に世間に知らしめて、いきながら地獄をみせたほうが…」
ずざ。
さらり、と笑みをうかべたままいわないでほしい。
しかもエミルの顔で。
「あれでもあいつは口先だけは達者だからなぁ。
  あの柔らかい口先三寸の口調でどれだけのものがだまされてるやら」
ゼロスの言葉はあるいみ確信をついている。
事実、そうなのだからどうにもならない。
すくなくとも、王侯貴族達がこぞってだまされている状態ではさすがに手だしができない、というのもある。
また、国王が教会との権力争いに関与しない、という姿勢をとっているがゆえにあるいみ教皇はやりたい放題。
「そういえば、古代の遺跡などを中心に、といっていましたけど、やはり精霊とかにも通じてるんですか?
  リフィルさんは?」
ここまで差別がひどい、というのはたしかにゼロス達の会話からも察していた。
いたが国がらみで率先して捉えようとしているなどとはゆめにもおもっていなかった。
ゆえに動揺する心を何とかおしころし、
「あまり詳しくはないですけど。あなたはどういったものを専門に?」
何とかアステルの問いかけに逆に問い返す。
そんなリフィルの問いかけに、
「今、僕が調べているのは主に大樹カーラーンのことですね。
  かつての古代大戦、とよばれる以前のことです。大樹カーラーンの精霊、ラタトスク。
  生命の源たるマナを司りし精霊。魔物を使いマナを調整せしもの。
  魔界の扉、魔界ニブルヘイムとこの世界を隔てし門をまもりしもの。
  その門…ギンヌンガ・カップを護りしもの。いわば世界の守護者ですね。
  世界を護り、慈しむもの。…ま、真っ当からマーテル教の教えに反してますけどね」
けらけらとわらいながら、さらり、と何やら重要なことをいいはなつ。
「そもそも、古代の文書とかからはクルシスのクの字も、マーテルのマの字もないんですよね。
  あるのは、古代勇者、四勇者としてある名前のみ。
  マーテル・ユグドラシル、ミトス・ユグドラシル、ユアン・カーフェイ、クラトス・アウリオン。
  エルフの隠れ里に伝わりし世界を裏切りし存在達の名。
  レネゲードから得た情報によれば、クルシスの指導所はユグドラシルっていうみたいですし。
  もう胡散臭いことこの上ない…と、まあこれをいえば異端、といわれて処刑でしょうけどね。
  もっともそんなことしようとしたらつかんでいる様々なものをばらまくつもりですけど」
あっけらかん、というような内容ではないとおもう。
絶対に。
さらり、といきなりいわれ、おもわずエミルからしてみれば額に手をあてていたりする。
まさかさらっといわれるとはゆめにもおもっていなかったのもまた事実。
…センチュリオン、という名がもしも彼の口からでていたら、とおもうとおそろしすぎる。
リフィル達は、センチュリオン達がエミルのことを様づけでよんでいることをしっている。
また、彼らとしての姿をみせたこともある。
まあ関係者と思われるにさほど不都合はないにしても、である。
ラタトスクそのものだ、とおもわれればかなり面倒なこと極まりない。
まあ、それが事実だとしても、である。
「え?でも、マーテル教の教えでは、大地を護り、育みしマーテル様って……」
コレットの声が少し不安にゆれる。
ロイドからしてみれば、今いわれた名前に思わず目をみひらく。
クラトス、今、彼はたしかにそういった。
同じ名字もまったく同じというのは偶然なのか、それとも。
「それなんですよね。そもそも、マーテル教事態も胡散臭いというか。
  しってます?旅業、と称して旅にだしたものたちが行方不明になっている事実を。
  調べてみれば、何のことはない、行方不明になってたひとたちは生体実験の材料とされてましたし。
  国がらみでそれらを隠ぺいしてるんですよね。この国って。国にしろ教会にしろ」
これまたさらり、といいはなつアステルにたいし、
「レネゲードのユアン、というものがいっていたわ。マーテル教はクルシスが勝手につくったねつ造にすぎない、と」
「ユアン?四英雄と同じ名ですね。まあ、それだとすれば納得するんですけどね。
  そもそも、四千年前以降の資料がほとんどないんですよ。
  遺跡にしても人為的に壊されているものが多々とありましたし。
  もしも、クルシスという組織がその事実を隠すためにやったのだとすれば…
  古代大戦から四千年も経過しているんですし。人々が真実を偽りだとおもわず真実と信じ込むのもありですし。
  そもそも、世の中、世間に認識されてしまったものがたとえそれが偽りだとしても事実、
  と認識される傾向にありますしね」
「偽りの真実……」
よくエミルが口にしているその言葉。
やはり、エミルは絶対に何かしっているわよね。
しかしいつもきいても話しははぐらかされている今の実情。
「まあ、地の精霊ノームから聞いたんですけど。
  その古代英雄の一人、マーテルというヒトは、
  精霊ラタトスクより世界樹の杖、とよばれる品を貸し出されていたそうなんですよね。
  いわば世界樹の分身のような機能をもったそれをもつヒトをみて勝手に女神とかねつ造したのかな~とか」
世界樹の杖。
世界樹の小枝。
杖と小枝との差はあれど、おもわずロイド達はエミルをみる。
エミルがもっているというあの小枝も、世界樹の小枝だ、そういっていた。
そしてなぜか枯れていたような枝からはえていた新芽からはロイドですらわかるほどに何かを感じた。
リフィル達いわく、それは純粋たるマナの塊、だったらしい。
「まって。それより気になることがあったんだけど。魔物を使って…マナを…調整?」
ふとジーニアスがそこにきづきといかける。
「え?ああ。これはまだ過程なんだけど。そもそも不安定なマナの属性の箇所に、
  それらの属性魔物がここ最近ふえてきて、マナが安定……」
どうも話しがまずい方向に流れている。
それはもう確信をもっていえる。
「あ、あの?それより。皆?ここにきたのは地の精霊にあうためなんじゃ?
  先に用事とかすませたほうがよくないですか?」
エミルの言葉はあるいみ至極もっとも。
そして、
「話しはどうもかなり長くなりそうですし。こんな場所で長話するのもどうかな~とかおもうんですけど」
たしかにここはかなり洞窟の奥深く。
万が一、ここで休むにしても薪などを得ることもできず、また逆に洞窟の最深部に近いことから、
下手に薪などをくべて火をつかうと煙で窒息死、なんてこともありえる。
「そういえばそうだね。ほら。二人とも。話しがもりあがるのはいいけど。
  本来の目的をわすれないでおくれよ」
合わせてはいけない人種だ、と常々おもっていたが。
どうやらその予感は正しかったらしい。
しいながそんなことをおもいつつ、しいなが軌道修正をかねて問いかける。
実際、このままここに二人をおいていてはいけない。
しいなの本能がそう叫んでいる。
「そうですよね。しいなさん」
「ああ。とりあえず、アステル。あんた、ノームのいる場所しってるんだろ?」
「え?もしかしてしいなさん、契約するつもりですか?」
「ま、まあね」
「なら、契約したらあれもこれもできますね!協力依頼しますね!」
「断固として拒否するよ!それだけは!」
目をきらきらさせていってくるアステル。
このような彼は幾度もみたことがある。
洒落にならないことまで研究、もしくは実験といってやりかねない。
だからこそ、しいなの拒絶はあるいみ当然といえる。
「…あの~?とにかくいきません?」
しばし、エミルの小さき声がむなしく響き渡ってゆく……

「…人の身において、失われし真実につきあたった、そこまでの根性と努力は認めざるを得ない…か」
それはあるいみ苦笑にちかい笑み。
真実をつきとめようと、あがく人がたどりつきし真の真実。
まあ、マーテル教の教えでは魔物は害たるもの、という認識であることから、
マナを調整しているのが実は魔物である、と誰も信じようとはしないであろうが。
しかし、数値的にそれが真実だ、という証拠もそろってきている今現在。
協会側はその真実を表にださないように厳重注意をするしかすべがない。
もしもアステルにその気があれば、それらの記録などをまとめ、本などを世の中に出版してしまえば、
人々は真実にたどりつく機会を得るであろう。
大地を護り育みしは、ラタトスクか、あるいはマーテルか。
信仰がある、とはいえ事実は一つ。
真実を覆い隠し、偽りを信じ続けるか、はたまた真実をうけいれるか、それは人の心次第。
先をゆく一行。
なぜか契約に興味がある、といいだしたアステル達を含んではいるにしろ。
ともあれ向かうはノームのいる場所。
前をゆく彼ら、特にアステルとリフィルの話しに花がさいている。
主にアステルがシルヴァランドの遺跡に興味があるらしく、リフィルが説明している模様であるが。
一番後ろをあるきつつ、そんな彼らの姿をみつつふとつぶやく。
「ノイシュにソルムの力で幻影をひとまずかけておいて正解ではあったな」
今現在、ロイド達には通用しないものの、第三者からみれば、ノイシュの姿は異なってみえている。
ゆえにアステルがノイシュをみてプロトゾーンだ!とさわがなかっただけのこと。
アステルがこの地にきている、というのをきき、エミルがソルムにそう命令をだしているに他ならない。

アステルに案内され、たどりついたは神殿の最深部らしき場所。
もっとも、エミルからしてみればそこが最深部ではないことを承知しているのだが。
やがて一つの部屋にはいるとともに、振動を周囲から感じ取る。
中にはいるのをとまどうノイシュのために、部屋の前でエミルは待機する、といい。
今、中にはいっているのはロイド達以外では、アステル達のみ。
しばらく振動がつづいたのちに、やがてあたりの地面から何本もの土柱があがっているのがみてとれる。
どん、どん、どん。
その振動はだんだんと大きくなり、やがて、
土柱は彼らの後ろから前方へと移動し、そして祭壇らしき場所から何かがスポーン、と飛び出してくる。
「みて!」
コレットがそれをみて思わず指をさす。
「大きなもぐら!…ってあれがノームなの!?」
ジーニアスが肩をすくめ、おもわず吹きだしそうになるのを何とかこらえる。
「こいつがノームか」
くるくると回転し、祭壇にすっぽりと収まったノームらしきもぐらもどきは、
ふくよかな体系をしており、手にはなぜかスコップをもっている。
「それより、ノームってかわいいね」
「そ、そうかぁ?」
コレットがにこやかにそんなことをいってくる。
「だって、頭のりぼんがこう、くるくるってまわってるんだよ?」
たしかにみれてみれば、りぼんらしきものがくるくるとまわっている。
「リボンだったらプレセアだってかわいいよ!」
「…私のリボンは…まわりません……」
ジーニアがなぜか負け時といいかえすが、即座にプレセアから突っ込みがはいる。
「てゆうか、あれ、リボンか?」
ロイドがそれをみてそんなことをいうが。
「いや。あれは削岩機のプロペラではないのか?」
リーガルがそれをみて冷静に指摘する。
「え~?そうなんですか?」
コレットがものすごく残念そうにいい、
「さずか。リーガル。鉱山関係のことにも詳しいねぇ」
ゼロスの言葉をさらり、と無視するリーガルの姿。
「ウンディーネとヴォルトが相対関係だったんだから、ノームの場合は……」
  イフリートを同時に目覚めさせればマナの流れを分断できるのか?」
ノームに対応する精霊を思い出そうと、ロイドがそういうが。
「シルフです!…もう、何度おしえれば覚えてくれるのかしら……」
あきれたようなリフィルの声。
「シルヴァランドの学力レベルは底辺にあわせているのか?」
そんなロイドをみてしごくまじめにリフィルにといかけているリーガルだが。
「ま、まあな」
「ロイドさん。それ、ほめられてません」
「ロイドが特別です。まったく……」
リフィルの声には完全にあきれが混じっている。
「…シルヴァランド人というのは賑やかだな……」
「だねぇ。お~い。ノーム様ぁ」
「うん?なんだ。アステルじゃないか。また何かようか?…って、げ」
ふと、上空にとある気配を感じ、おもわず固まってしまうものの。
「え、えっと。あ。そっ、そっちのお前、召喚士だな。俺はミトスと契約しちゃってるぞぉ?」
「え?…というか、しちゃってるって……」
やるよ、というよりも前にいきなり精霊ノーム…らしきものからいきなりいわれ、しいなとしてはとまどうしかない。
しかも口調がかなり軽い。
あるいみ出鼻をくじかれたようなもの。
『ノーム。いらないことをいったら前でまっているラタトスク様もだまっていませんよ?』
だらだらだら。
たしかに、入口の前のほうから懐かしき気配を感じはする。
どうやら直接、この場にはきていないものの、ここにまでやってきているらしい。
考えるだけでもおそろしい。
それゆえに内心、だらだらと冷や汗をながしつつ、それでいてきこえてくる土のセンチュリオン・ソルムの言葉に
こくこくとうなづくノームの姿。
「またミトスの名前がでたね。ミトスってすごいんだね~」
感心したようにコレットがいう。
事実、ウンディーネとの契約のときにもミトスの名はでている。
それゆえにコレットの言葉に嘘はない。
「我はしいな。ノームがミトスとの契約を破棄し、我と契約することを望む」
「ぷぷ。おまえ、かたっくるしいしゃべり方するなぁ」
「う…だ、だって。こういうふうにしろってならったんだよ」
精霊に笑われたくない。
というかどっちが、とおもうが精霊を怒らせた場合どうなるのか。
しいなは身をもってしっている。
それゆえにぐっと感情をおさえ、何とかいいつのる。
過去のヴォルトのようなことだけは何としても避けなければならない。
そしてまた、コリンのようなことも。
それゆえのしいなの反応。
それでもいらっとしてしまうのを何とかおさえるために、ぎゅっとその手をにぎりしめて言い返す。
「ふ~ん。まあいいや。ラタトスク様のこともあるしな。じゃあ、ちょっともんでやるからよ。かかってこい」
そういうや否や、祭壇からとびだしてくるノームの姿。
「は?ラタ?」
「…何でここで大樹の精霊の名が?」
「やっぱり、絶対に目覚めてるんだよ!大樹の精霊ラタトスクは!」
一方で、眉をひそめているリヒターと、何やらはしゃいでいるアステルの姿がそこにはある。
だから、あれほどいらないことをいうな、というのに。
とうもこのノームはぽろり、といってしまう。
それはもう昔から。
ソルムを通じて様子を視ていたエミルもその言葉にただため息をつかざるをえない。

「いくよ!」
しいなが札を指にとはさみいきおいよく放つ。
ノームはそれをまともにうけ、ころころと地面をころがってゆく。
「何すんだよ~!」
そういうとともに、くるくるとまわっていた頭のリボンもどきがさらに激しく回転しはじめる。
こいつ…やっぱり変。
そうおもったのはロイドだけでなく、どうやらジーニアスも同じであるらしい。
同じような表状をし、ぽかん、とし口をあけているものの、そのままノームの背後へとまわりこむ。

ただ叩いただけなのに、何すんだよ~、とおこり。
時折地面が突起し、ロイド達はバランスを失うものの、
それでもリフィルとしいなの攻撃で目をまわしたらしく、しばらすると、こてん、とその場にころげゆく。
くるくると目をまわしています、とばかりにその瞳の中の模様がおもいっきり孤を描いていることも、
やっぱり変、という認識をロイドとジーニアスに植え付けていたりする。
やがて、むくり、とおきあがり、
「おまえら汚ねぇな。四人かかりでボコボコにしやがってぇ。ミトスは一人だったのによぉ」
ぶつぶつ文句をいいつつも、
「まあいいや。誓いをたてやがれ。あ、でも。誓いをやぶったときには契約破棄な~」
さらり、と何でもないようにいってくるその姿には精霊としての威厳も何もあったものではない。
どうみても巨大なもぐら、にしかみえない。
「さっきあなたがいっていた、ラタ…とは?大樹の精霊のことなのかしら?」
「え?えっと…。…あぶないあぶない。また怒られるところだった」
すでにもう怒られるようなことをいっている。
が、それにノームは気づかない。
リフィルの問いにおもいっきり視線をそらせそういうが、おもいっきり説得力はない。
むしろ、すでに大樹の精霊が目覚めています、といっているようなもの。
「何かやりにくいねぇ。二つの世界がお互いを犠牲にしなくてもいい世界をつくるために。
  あんたの力をかしとくれ」
「ん~。まあいいや。俺の力、姉ちゃんたちにかしてやる。が、契約不履行とおもったときには破棄するぞ~?
  それでもいいか?」
「また?ウンディーネもヴォルトもそんなことをいってたよね?」
「そりゃあ……」
いいかけて、ぴくり、と反応する。
『ノーム?』
ノームにのみ聞こえてくる低い声。
「あ…あわわ。と、とにかく、これ、契約の証な~。うわぁぁん、ごめんなさぃぃ!」
それだけいいつつ、なぜか叫びとともにノームはかききえる。
「何で謝ってるの?」
「…つうか……」
今、たしかに、あの亀のようなものがそこにいた。
それがたしかに何かをいったとたん、ノームの態度ががらり、とかわった。
この場にてそれを認識できていたのはおそらくゼロスと、そしてコレットであろう。
「あの亀さん、ういてたね~」
『亀?』
コレットの言葉の意味はロイド達にはわからない。
「おまえらにはみえなかったのか?」
『??』
どうやらロイド達にはみえていないらしい。
あのときとおなじ。
屋敷にて、センチュリオン、となのっていたものたちの姿をロイド達が認識していなかったときと。
精霊が姿を消すとどうじに、しいなの手に一つの宝石…ルビーがはめ込まれた指輪がおちてくる。
「ノームとの契約って簡単なんだ~。お酒のまして気分よくしてたときに契約もちかけてたらしてくれたかな?」
「…お前はおそろしいことをいうな。もし契約できてたらどうするつもりだったんだ?」
「え?たとえばメルトキオに地震おこさせてさ。
  隠された実験施設をことごとく破壊してもらうとか。
  いくら何でも壊滅状態の中から人々が逃げ出してもそれは不可抗力でしょ?」
「・・・・・・・・・・」
後ろのほうでは何やらおそろしい会話をしているアステルとリヒターの姿が。
それえにおもわずそんな会話わききしいなは無言となりはてる。
「そんなことより~。無事に契約もすんだわけだし。とっととこんな辛気臭いところからはでようぜ?
  そんでそろそろ宿とかにいこうぜ?こちとら歩きっぱなしで棒が足になっちまったつ~の」
ちゃかしたような、それでいて心底つかれた、というようにいってくるゼロスの言葉に対し、
「棒が足になったんなら一本増えてよかったじゃないか」
さくっと一刀両断のごとくにいいはなっているしいな。
「足になる棒なんて…気持ちわるいです」
コレットがそれを想像してめずらしくそんな突っ込みをしているが。
「そうかな?僕はみてみたいな」
逆にジーニアスは興味心身、といった模様。
「おいおい……」
そんなお子様達の反応をみておもわず脱力せざるをえないゼロス。
「そもそも、足になる棒なんてありません」
そんなゼロスの主張に淡々とこたえているプレセア。
「…皆、俺様の主張きいてる?」
どうも主張していたことと、話題がずれている。
それゆえのゼロスの問いかけ。
「足になる棒?それはどこの遺跡で発掘されたのだ?」
リフィルはリフィルで逆の意味でその言葉にくいつきをみせ、
「あ、もしかしたら古代でよく使われていたという義足かもしれません」
そんなリフィルにとこれまたこたえているアステルの姿。
「おお。そんなものがあっのたか!?」
「ええ。古代大戦時にはよく手足を失うものが多発していたらしく、それを補うために開発されたのが…」
何やら二人して、古代の話しでもりあがりはじめている模様。
「…おいおいおい。リフィル様だけでなくアステル君までもかよ。ロイド。こいつらどうにかしてくれよ~」
おもわずロイドに救いをもとめるゼロスの行為は間違いではない、ないであろうが……
「なんか皆もりあがってるね。そんじゃ、この調子でげんきだしていこ~!まずはここからでないとな!」
「お~!…って、あり?」
何か言い含められたような気がする。
ゆえに首をかしげるゼロスは話しの論点がすりかわったことに気づいていない。
一方で、
「…いつもこうなのか?このパーティーは?」
「おおむね」
顔見知りでもあるがゆえにしいなにといかけているリーガル。
「……エミル、といったな。あいつもも苦労してるのだな」
「まあ、エミルのやつは基本的に傍観してるからね」
どちらかといえば精神的に苦労というか疲れてしまっているのは自分達のほう。
そうしいなはいいたいが、今はそれをいうときではない。
「…とにかく、ここからでようよ」
どちらにしても、ずっと扉の入口でまっているエミル達を待たせるわけにはいかない、のだから。
「そういえば、導き温泉の工事がそろそろおわるころですよね。
  僕たちもそろそろ外にでよっか。リヒター」
「だな。ここ数日グミしかたべてないからな」
『は?』
どうやらきけば、この神殿にきてから数日、グミのみでうえをしのいでいたらしいこの二人。
アステルとリヒター。
おもわずロイド達が唖然としてしまったのは…いうまでもないこと……


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あとがきもどき:
薫:編集している当日、ついにストックきれたこの話しv(まて
  さて、とっとと続きのエルフの里の打ち込みを…
  きちんと台詞とかの確認のために動画で確認(まて)してるからなぁ…
  ともあれ、ではまた次回にてv
  次回はユミルの森ですよーvv

2013年7月5日(金)某日

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